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シナリオ詳細

超級蹴鞠への誘い

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●闘技へと進化した蹴鞠
『蹴鞠』
 豊穣の貴族や武士に伝わる遊戯。元は「蹴魔離」と呼ばれ、魔に見立てた鞠を蹴ることで魔除けとする儀式であったが、時代が下るにつれて遊戯、そして闘技へと変遷していった。闘技としての蹴鞠については一般の蹴鞠と区別するために『超級蹴鞠』と呼ばれることが多い。
 (凜礼書房刊『素晴らしき蹴鞠の世界』より)

「これは……一体?」
 羽田羅 勘蔵(p3n000126)から渡されたレジュメを読んで、ベネディクト=レベンディス=マナガルム (p3p008160)をはじめとするイレギュラーズ達は一様に首を捻った。
「皆さんに挑んでもらう『超級蹴鞠』についての資料です」
「出典がどうも信用できないんだけどよ……」
「気のせいです、ええ」
 元の世界で似たような名前の出版社を見たことのある新道 風牙 (p3p005012)がツッコむが、勘蔵は強引にスルーする。
「そもそも、何で妾たちが『超級蹴鞠』とやらに挑むことになったのじゃ?」
 不思議そうにアカツキ・アマギ (p3p008034)が尋ねる。それに答えて勘蔵が言うには、イレギュラーズ達のことを聞きつけた『超級蹴鞠』界の猛者が、ローレットに試合を申し入れたのだという。そして、ここにいるメンバーが勘蔵の独断と偏見によって選出されたのだ。
「……この『超級蹴鞠』は、相手が鞠を落とすようにするものなのですね」
「『勝斗』に『襲斗』……空中戦や必殺技は楽しそうです」
レジュメを読み進めていた雪村 沙月 (p3p007273)のつぶやきに、しにゃこ (p3p008456)が続けた。
 普通の蹴鞠はどれだけ長く鞠を落とさずに蹴り続けられるかを競う。しかし、沙月の言うとおり、闘技となった『超級蹴鞠』では蹴った鞠で相手を攻撃し、相手が蹴り損なったり倒れたりするのを狙う。そのため、蹴り上げられた鞠を争奪する空中戦を行ったり、強烈な蹴りによって鞠で直接相手を狙うルールもあった。
「狙われた味方のカバーにも入れたりするんだね」
 笹木 花丸 (p3p008689)が目を付けたのは、『阿支須斗』と言う敵から狙われた味方に代わって鞠を蹴るルールだ。このルールがあるため、弱いプレイヤーを集中的に狙って真っ先に仕留めると言うことは不可能となっている。
「ところで……どうしてそんなメンバーの中に私が入っているんでしょう?」
 やや抗議めいた口調で、リンディス=クァドラータ (p3p007979)が尋ねる。冒険においても支援を中心に立ち回るリンディスに、『超級蹴鞠』のプレイヤーはどう見ても人選ミスとしか考えられなかった。
「ああ、すみません。皆さんをリストアップしてる時に間違って混入したみたいで……代役のプレイヤーは用意してますので、リンディスさんには実況解説をお願いしようかなと」
「そういうことでしたら、いいですけど」
 あっさりミスを認めて別の役割を振った勘蔵に、リンディスはすんなりと引き下がる。
「代役って誰なんだろ? もしかして勘蔵君自身?」
「ははは、まさか」
「……私だ。まさかこんなことに駆り出されようとはな」
バスティス・ナイア (p3p008666)の問いを、勘蔵は否定する。同時に、部屋の外から一人の女性が入ってきた。幻想北方に領土を持つウィルヘルミナ=スマラクト=パラディース(p3n000144)だ。
「……と言うわけで、ウィルヘルミナさんを含めた八人で、豊穣側のチームと対戦して頂きます。ローレットここにありと示すためにも、どうか勝って下さいね」
 何気にハードルが上がってないか? そう訝しみつつも、イレギュラーズ達は豊穣側のチームとの試合に臨むのだった。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。EXリクエストのご指名、ありがとうございます。『超級蹴鞠』、サッカーに寄せるか普通の蹴鞠に寄せるか迷った結果こうなりましたが、お楽しみ頂ければ幸いです。

●成功条件
 『超級蹴鞠』で豊穣側のチームに勝利する。

●情報精度
 OP序盤の出典を除き、Bです。

●ロケーション
 高天京の一画にある、蹴鞠場です。時間は昼間で、天候は晴れ。風は特になし。
 約25メートル四方のフィールドで、四隅の角に木が植えられており、木と木の間には高さ2メートルを示す縄が張られています。

●『超級蹴鞠』
 闘技に進化した蹴鞠です。元の蹴鞠は鞠を落とさないようにするものですが、『超級蹴鞠』は蹴った鞠で敵を攻撃し、相手に鞠を蹴り損なわせるのを目的としています。
 基本的には、自分の所に来た鞠を落とさないように受け止め、蹴りやすいよう整え、敵に向けて高く蹴り上げると言うのが一連の流れになっています。バレーで言うレシーブ、トス、スパイクを一人でやるような感じです。
 敵が『鞠を蹴れずに落としてしまう』か『鞠を2メートルより高く蹴り上げられない』と得点となります。そして今回は『百点試合』として、どちらかが100点を取れば勝利となります。なお、『超級蹴鞠』においては30~50点前後でもどちらも死屍累々となって後は生き残った側が一方的に点を入れていくだけになりますので、『百点試合』はそれだけ過酷なゲームとなります。

・普通に蹴り上げられた鞠を蹴る
 敵の能力を問わず、鞠を受ける段階で一度、命中で判定します。そして、敵に向けて鞠を蹴り上げる段階でもう一度、命中で判定します。

・『勝斗(カット)』
 空中高くに飛び上がり、蹴り上げられた鞠を相手を狙って蹴ります。「飛行」スキルが必要となります(「媒体飛行」「簡易飛行」は代替としては使用出来ません)。
 自軍が蹴り上げた鞠、敵軍が蹴り上げた鞠、いずれに対しても行えます。この空中での鞠の争奪戦が、『超級蹴鞠』の華とも言われています。
 判定は命中同士の対抗判定で行われ、勝利した方が相手を狙って再度命中判定を行います。この時、スキルを乗せても構いません。スキルを乗せる場合、距離については全て無視されます(例:超遠距離のスキルを乗せた鞠を至近の敵に向けて蹴ることが可能)。
 『勝斗』された鞠に対して『勝斗』を行うことは出来ません。

・『襲斗(シュート)』
 鞠を空中高く蹴り上げるのではなく、敵を目掛けて直接蹴ります。「飛行」スキルは不要です。ただし蹴られた鞠は一度は地上2メートルを超えなければならないために鞠の軌道は放物線となり、威力は8割まで落ちます。また、至近の相手に対して行うことは出来ません。
 スキルを乗せられるのは『勝斗』と同様で、距離については無視されるのも『勝斗』と同様です。ですから、至近のスキルを乗せて近距離以遠の敵を狙うことも出来ます。
 『襲斗』された鞠に対して『勝斗』を行うことは出来ません。

・『阿支須斗(アシスト)』
 敵に狙われた味方に割って入って、代わりに鞠を蹴ることが出来ます。「かばう」と違い、味方が狙われた時点でその味方の至近距離へと移動して割って入ることが出来ます。

・『勝斗』『襲斗』で放たれた鞠を蹴り返す
 まず、鞠を蹴ってきた際の敵の命中と自分の回避による対抗判定を行います。ここで回避に成功すれば、鞠を何のダメージもなく受けられたことになります。
 回避に失敗した場合、防御技術判定を経てダメージを算出します。ダメージが発生した場合、鞠を受けきれず落としてしまったり、2メートル以上に蹴り上げられなかったこととなり失点します。もちろん、このダメージは適用されます。
 鞠を受けきれたら、後の流れは普通と同じです。普通に高く蹴り上げてもいいですし、『襲斗』を行ってもかまいません。

・『犯奴(ハンド)』
 『超級蹴鞠』では手を使うことは重大な禁忌と見なされます。手で鞠に触れた、あるいは敵への妨害に手を用いた場合、即1点を失います。

・ラフプレーについて
 ラフプレーによる敵の妨害は可能ですが、許されるのは狙われた当人か、『勝斗』『阿支須斗』に関わっているもの――要は、鞠に関わろうとしている者への妨害に限られます。また、度を超したラフプレーは「雅ではない」「下郎の業」として嫌悪されます。

・鞠を蹴った者、『勝斗』『阿支須斗』を行った者の制限
 鞠を敵に向けて蹴った者、もしくは『勝斗』『阿支須斗』を行った者は、次に味方が鞠を敵に向けて蹴り終えるまで『勝斗』『阿支須斗』を行うことは出来ません。

●豊穣側チーム
 豊穣で『超級蹴鞠』界を代表する2人の蹴鞠人(ケマリビト、特に『超級蹴鞠』のプレイヤーの意)と、それぞれの郎党3人ずつの8名によるチームです。なお、全員『勝斗』を行うための「飛行」スキルは所持しています。

・“力の”四万津 経忠(シマヅ ツネタダ)
 豊穣の辺境を拠点とする武士、四万津氏の一族です。いわゆる戦闘民族であり、能力は全般的に高くなっています。
 特に圧倒的な物理攻撃力に【防無】を乗せた『敵中突破襲斗』は多くの蹴鞠人を撃ち倒してきました。

・“技の”現在川 実氏(イマガワ サネウジ)
 高天京に住む武士、現在川氏の一族です。いわゆる「麻呂」ですが、能力はやはり全般的に高くなっています。“力の” 経忠に比べると攻撃力やHPは低いのですが、命中、回避、クリティカル値はこちらの方が高くなっています。
 敵の必殺襲斗をクリティカルによって難なく受けきったり、【弱点】を狙い澄まして来たかのような精密な『襲斗』を繰り出してきます。

・郎党 ✕6
 経忠の郎党3名、実氏の郎党3名です。
 スペックはそれぞれの主人を一回り格下げしたような感じになります。主に仕える主人のサポートを行います。

●NPCについて
 基本的に、リプレイ中では描写はされません

・ウィルヘルミナ=スマラクト=パラディース
 ローレット側チームの8人目。『超級蹴鞠』における能力は郎党と同程度となりますが、「飛行」スキルは所持していません。
 特に何の指示もなければ無難にプレーしています。

・羽田羅 勘蔵
 特に何の指示もなければ、記録係を担当しています。

 それでは、皆さんのプレイングをお待ちしております。

  • 超級蹴鞠への誘い完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年09月30日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
雪村 沙月(p3p007273)
月下美人
リンディス=クァドラータ(p3p007979)
ただの人のように
アカツキ・アマギ(p3p008034)
焔雀護
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
しにゃこ(p3p008456)
可愛いもの好き
バスティス・ナイア(p3p008666)
猫神様の気まぐれ
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華

リプレイ

●超級蹴鞠への意気込み
「超級蹴鞠、ですか……異国にはこのような闘技があるとは驚きです。
 参加するからには、負けるわけにはいきませんね」
 超級蹴鞠の存在に驚きつつも、負けられないと他のチームメンバーに呼びかけたのは、『月下美人』雪村 沙月(p3p007273)だ。幼い頃から武を学び技を磨いている沙月としては、闘技で負ける気は無かった。
(こないだのヘビメタといい、この蹴鞠といい、なんか異界文化を魔改造して取り込んでやがるなこの国!
 まあ、楽しそうだからいいけどさ!)
 『翡翠に輝く』新道 風牙(p3p005012)の元いた世界には、蹴鞠が存在していた。それだけに超級蹴鞠を異界文化の魔改造と解釈したようだが、それはさておき。
「フフンッ だが勝負事となれば燃えるのがこのオレ、新道風牙。
 そして、挑まれれば受けてたつのもこの新道風牙よ!
 豊穣の強者ども! 海の向こうから来た神使の力、とくと見よ!!」
 そう高らかに告げた風牙の視線の先には、狩衣姿の蹴鞠人が八名いた。豊穣側の蹴鞠人達である。彼らは、自信満々の神使の実力が楽しみで仕方ないと言う風に、笑みを浮かべた。
「なるほど、超級蹴鞠。理解したのじゃ。
 ……別にリンちゃんなら選手として入っても普通にやれそうじゃが、まあそこはよかろう。
 これ以上言うと後で怒られそうじゃし……」
 『放火犯』アカツキ・アマギ(p3p008034)は、読み終えた『素晴らしき蹴鞠の世界』を実況解説役の『未来綴りの編纂者』リンディス=クァドラータ(p3p007979)に渡す。その際のつぶやきにリンディスからのプレッシャーを感じたアカツキは、それ以上触れるのを控えた。
「しかし妾達に勝負を挑んでくるとは相手を見誤ったのう。何故か飛行持ちが多いこの面子に!
 ふははは、勝斗し放題の我がチーム……その名も『秋時雨』じゃ!!」
 アカツキは自信満々に言い放つが、それを言うならそもそも豊穣側のチームは全員飛行が可能であり、誰でも勝斗には参加出来たりする。
「ふっふーん、この蹴鞠の申し子と呼ばれたしにゃがいるチームに勝負を挑むとはいい度胸ですね!!
 いいでしょう、我々の恐ろしさ、その身で味わうといいです!!」
 『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)がいつ「蹴鞠の申し子」と呼ばれたのかツッコむのは、きっと野暮というものなのだろう。
「おっと、笹木さんは味方でも負ける気はないですよ! どちらが可憐にフィールドで舞えるか勝負です!!」
「受けて立つよ、しにゃこさん! 花丸ちゃんも負けないからねっ!」
 味方に対してライバル心を燃やすしにゃこに、『おかわり百杯』笹木 花丸(p3p008689)も負けじと返す。
「こうして指名されて勝ってこいって言われたからには全力で勝ちに行くよっ!
 相手を必殺襲斗でボコスカふっ飛ばせばいいんだよね!?
 うんうん、花丸ちゃん分かってる分かってるっ!」
 そして、花丸は豊穣側チームに目をやって言い放った。これが普通の蹴鞠なりスポーツであれば「いやそれはおかしい」「絶対わかってないだろう」となるのだが、超級蹴鞠においては花丸の解釈であながち間違っていないのが恐ろしい。
「超級蹴鞠……なんて言うか、フィールドの最後まで立っていた方が勝利、みたいな? 思い切った競技だねぇ。
 だけれど、同じ支援役なのにリンディスちゃんが解説であたしがフィールドに立つのはなんだかおかしい気がするぅ……やるけどさ! やるけどさぁ!
 いいよ、遥かなる数千年前、砂塵に消えた殺人球技『古代エジプト流サッカー』の恐ろしさを教えてあげるよ!」
 『猫神様の気まぐれ』バスティス・ナイア(p3p008666)も、超級蹴鞠を花丸と同じように捉えていた。まぁ、『百点試合』ではなく、決着が三十点以下であれば大体そこまで行かないのだが、それはともかく。
 戦闘においては同じ役割なのに、方や実況解説、方やプレイヤーと言う差にバスティスは不平を漏らし、ついでにヤケクソ気味に戯れ言を吐いた。
 途端に、ざわ、ざわとざわめきだす豊穣側チーム。これがただの与太だったと彼らが知るのは、試合が始まってしばらく経ってからのことになる。
(超級蹴鞠か…こういった闘技もあるのだな。良いだろう、面白そうだ)
 『ドゥネーヴ領主代行』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)は、これからの試合が楽しみと言った様子で笑みを浮かべた。
 さらにベネディクトは、つかつかと豊穣側チームの方へ歩いて行くと、怪訝そうにする蹴鞠人達の中から四万津 経忠らしき人物を探し出し、声をかけた。
「貴公が四万津 経忠殿だな? 剛の武士と聞いている。
 俺はベネディクト──この戦い、貴方に仕事をさせる心算は無い。勝負だ!」
「ほう、ベネディクトどんか。面白か、受けて立ちもんそ」
 ベネディクトの宣言に、経忠はニヤリとした笑みで応えた。

 その間に、リンディスはルールの書かれた書物を読み込み、超級蹴鞠のルールを一通り把握して実況解説の準備を整える。が。
「あ、リンディス。ルール教えてー」
「ええっ、今ですか!?」
 もうすぐ試合が始まろうというこのタイミングでの風牙の発言に、リンディスは驚きを隠せないながらも、一通りルールをレクチャーした。この風牙へのレクチャーは、リンディス自身のルールへの理解をより深めたようだ。
「リンディスさん、応援よっろしくーっ!」
「私は解説役ですから、始まったら贔屓は出来ませんよ?」
「……え? そ、そんなぁ!」
 応援をリンディスに断られた花丸が、がっくりと項垂れて地面に膝を突いた。

 そうこうしている間に、試合開始の時間が迫る。
「いきますよ、チーム『秋時雨』! キャプテンしにゃこについてこい!!」
 と言うしにゃこの檄は、ぽかんと言う反応で返された。突然キャプテンとか言い出さなければ、もっとまともな反応もしてもらえたに違いないのだが。
「やるからには当然勝ちに行くぞ! そうだろう、皆」
「そうですね。それでは秋時雨の皆様、頑張りましょう」
 改めて、ベネディクトがチームメンバーを見渡して檄を飛ばす。それに沙月が続くと、全員が真剣な面持ちでこくりと深く頷いた。

●激闘! 超級蹴鞠
「『秋時雨』対『神威神楽無双』、超級蹴鞠交流戦がいよいよ始まりました」
 試合が始まり、リンディスのアナウンスが響く。
「『神威神楽無双』は超級蹴鞠界でも名を馳せる蹴鞠人、”力の”四万津 経忠選手と”技の”現在川 実氏選手を擁するドリームチーム。普段は別のチームとして技を競い合っているというこの二人が、果たして今回はどのような連携を見せるのか。楽しみですね」
 リンディスがそう語る間にも、ポーン、ポーンと鞠は何度も高く蹴り上げられる。やがて、経忠が勝斗のために宙を舞った。
「悪いが、その鞠……俺が頂く! おおおおおッ!!」
「現在川どん以外でオイに勝斗で勝つとは……さすがは神使にごわすな!」
 だが、後から追ったベネディクトが勝斗を決めた。勝斗に敗れた経忠は、感服を交えながら笑う。
 鞠は黒い大顎に包まれて、実氏に襲いかかる。実氏は巧みに捌こうとするものの、その威力を御しきれずに弾き飛ばされた。
「四万津殿以外の鞠を麻呂が返し損ねるとは……やるでおじゃる!」
 ――この勝斗争いを契機に、試合は勝斗や襲斗が入り乱れる激しいものとなった。先制点は『秋時雨』が挙げたものの、序盤は超級蹴鞠への慣れ故か『神威神楽無双』がリードする。

 実氏の放った襲斗が、虹色の軌跡を描きながら沙月に襲いかかる。
「さすがの襲斗ですね……でも、止められないわけではありません」
 しかし沙月は、襲斗の勢いを上手く殺しながら鞠を空中高くに蹴り上げる。
 すぐさま四万津の郎党が勝斗に向かうが、その左右からアカツキと花丸が高く飛び上がって、同時に鞠を蹴った。
「「ツインファイヤーショット!!」」
「アカツキ選手と花丸選手、これは炎! 炎を纏った鞠が空から襲い掛かります――!」
「経忠様、ここは某が!」
 業炎に包まれた鞠から主君を守ろうと、別の四万津の郎党が阿支須斗に入るが、鞠を上手く受けきれずあらぬ方向へと飛ばしてしまった。

「勝斗で勝てんなら、襲斗を決めるだけでごわす! チェースト!!」
 勝斗された鞠を受け止めた経忠は、猿叫を放ちつつ四万津に伝わる戦術を乗せた襲斗をバスティスめがけて繰り出す。
「おっと、そいつはさせないぜ!」
 確実にバスティスを仕留めると思われた必殺の襲斗は、しかし瞬時に阿支須斗に入った風牙に受け止められる。風牙は襲斗の勢いによろけつつも、二度鞠を蹴り上げる間に体勢を整えてから、鞠を高く蹴り上げた。
「行くよ、しにゃちゃん!」
「行きますよ、バスティスさん!」
 勝斗せんと飛び上がった実氏の後を追って、バスティスとしにゃこが同時に飛翔する。
「「白銀閃光!」」
「バスティス選手としにゃこ選手の連携勝斗が実氏選手に競り勝ちました! 聖なる光に包まれた鞠は実氏選手を弾き飛ばし、経忠選手を狙います!」
「ええい……ぐあっ!」
 主君を狙う四万津の郎党が阿支須斗に入ったが、鞠を包む光に焼かれて動きを遮られ、鞠を地に落としてしまう。

 そうしているうちに、『秋時雨』も超級蹴鞠に慣れてきたのか得点は『神威神楽無双』に追いついて、三十三対三十三。互いに三十点を超えていながら誰一人倒れていないのは、『秋時雨』も『神威神楽無双』も流石であった。だが、ここから『秋時雨』が引き離しはじめていく。

「風牙君、行くよ!」
 現在川の郎党に勝斗で競り勝ったバスティスが、調和による癒やしの力を鞠に乗せて蹴る。
「サンキュー、バスティス」
「バスティス選手の癒やしを乗せた勝斗が、度重なる阿支須斗で傷ついた風牙選手を回復しました。
 『秋時雨』がまだ誰一人として倒れていないのは、バスティス選手の支援があってこそと言えます」
 リンディスが解説したとおり、バスティスが『秋時雨』のメンバーの継戦能力を支えているのは大きかった。勝斗に成功すれば勝斗で割って入られないのを活かして味方を回復するという行動は、この後の超級蹴鞠世界に大きな衝撃を与えることになる。

「風ちゃんばかりに面倒はかけぬよ」
 四万津の郎党の強烈な襲斗に、アカツキが阿支須斗で割って入る。
「それ、お返しじゃ! ライトニングファンタズム!」
 襲斗を受け止め、一度高く蹴り上げると、アカツキは足に雷を纏わせ鞠を蹴った。
「アカツキ選手、襲斗に襲斗で返しました! 鞠は雷を纏いつつ、左右にうねるような軌道を描きます!」
「ぐああああっ!」
 郎党は不可思議な鞠の動きに対応出来ず、足ではなく身体で鞠を受けてしまう。同時に身体を雷に包まれ、力尽きその場に倒れた。

「くらえっ! これがオレの彗星蹴撃(ブルーコメット)だー!!」
「ここまで阿支須斗に専念していた風牙選手、牙を隠していました! これも策略か――!」
 得点が六十対五十になったところで、これまで阿支須斗ばかりであった風牙が攻勢に出た。今回も鞠を高く蹴り上げるだけと見せかけて、経忠めがけて襲斗を仕掛ける。
「むっ――!」
 風牙が蹴った鞠は、瞬く間に――郎党が阿支須斗に入れないほどのスピードで経忠に迫った。虚を衝かれた経忠は、鞠を蹴ることすら出来ず派手に吹き飛ばされる。
「雲耀の如くでごわすな……効きもしたけんど、まだ倒れもはんど」
 経忠は立ち上がってきたが、彗星蹴撃のダメージは大きかったらしく、足がふらつくのは隠せなくなっていた。

 さらに試合が進み、得点は七十二対六十。立っているのは『秋時雨』八名、『神威神楽無双』六名。
 ここでしにゃこが、ベネディクトに視線を向ける。
(覚悟を決めたんだな、しにゃこ……ならば、それに俺も応えよう……!
 走れ、黒顎……! しにゃこを導け……!)
 高く蹴り上げられた鞠に、現在川の郎党が勝斗に向かうべく飛ぶ。それと同時にしにゃこも空中へと飛び、ベネディクトはそのしにゃこをめがけて黒い大顎を繰り出した。
「――!?」
 狙いがわからず、困惑する『神威神楽無双』のメンバー。
「ベネディクト選手の黒顎の威力をしにゃこ選手が利用し一気に勝斗へ入り込む!! 荒鷲の如く襲い掛かります!」
「黒顎スカイラブリー勝斗! ……って、これめっちゃ怖いんですけど! 誰ですかこんなの考えたの!?」
 大顎がしにゃこを押し、現在川の郎党よりも先に鞠へと届かせる。そしてしにゃこは大顎の勢いに乗って、鞠を強かに蹴った。
「経忠様……ご武運を……」
 最後の四万津の郎党が阿支須斗に入るが、しにゃこの勝斗の威力に耐えきれずに倒れた。

「チェーストゥ!!」
 八十対六十四。満身創痍となった経忠が最期の力を振り絞り、必殺の襲斗を沙月めがけて放つ。だが。
「私を倒すには、少し足りませんでしたね」
 一時的に邪剣の極意を身に宿した沙月は平然と経忠の襲斗を受け止め、流れるように襲斗を返す。その動きの美しさは、この場の全員の目を奪うほどであった。
「沙月選手、冷静で確りとした鞠回し! 流水のような武士の動きで反撃です!」
 鋭い襲斗が、経忠に迫る。だが、目を奪われた分経忠の対応は間に合わない。
「……うぐっ、見事……!」
 腹に鞠を受けた経忠は、ズン、と地面に倒れ伏した。

 八十八対六十六。『神威神楽無双』で残るは実氏のみとなった。実氏は『秋時雨』の勝斗や襲斗をよくしのいでいたが、それにも限界が訪れていた。
「笹木さん、これで閉めと行きましょう!」
「わかったよ、しにゃこさん!」
「「花丸しにゃこラブリー襲斗っ!」」
「てやーッ!」」
「いっけーっ!」
 しにゃこと花丸が、同時に鞠を蹴る。鞠はハート状のビームに包まれながら、実氏へと迫った。
「花丸選手としにゃこ選手の可愛さが光る一撃! 見惚れた実氏選手へ襲斗が襲い掛かる!」
「嗚呼……美しいでおじゃるなぁ……」
 恍惚とした表情で、実氏は鞠を身体に受け――倒れた。『神威神楽無双』、全滅。
(う、うっわー……自分で言ってて何だかすっごい恥ずかしいんだけどこの技名っ!?)
 そんな花丸の動揺にかかわらず、試合は進んでいく。しかし、もうこの時点で勝負は決まっていた。後は死体蹴りのように得点を積み重ね、百点に届かせるだけである。

●試合後は死屍累々にて
「はい、どうぞ。お疲れ様でした」
「ありがとう、リンちゃん。いやー楽しかった! こういう文化的な遊びはいいのう。
 まあちょっぴり身体を張りすぎてる競技な気もするが、豊穣独特な感じがしてとっても良いと思うのじゃよ!」
 試合終了後、リンディスは『秋時雨』のメンバーにタオルを渡して回る。超級蹴鞠をしっかりと満喫した様子のアカツキは、受け取ったタオルで汗を拭いた。
「それにしても、武術のような試合でしたね……なるほど、確かに過酷なゲームのようです」
 死屍累々と言った風情で倒れ伏している『神威神楽無双』のメンバー達を見ながら、沙月は試合を振り返る。これはこれで、良い鍛錬にはなりそうに思えた。
「……介抱が必要かな、コレ」
 花丸は苦笑しながら、バスティス、リンディスと共に『神威神楽無双』のメンバー達の介抱を行っていく。
(やはり、この球技、継戦能力とリソース管理に秀でたチームが有利)
 そのバスティスは、介抱の傍ら超級蹴鞠についてそう分析するのだった。確かに今回の試合において、バスティスの回復によって味方チームメンバーがフィールドに立ち続けていられたことは大きかった。

「とても素晴らしい闘いだった。機会があればまた戦おう」
 回復した『神威神楽無双』のメンバー達に、ベネディクトが手を差し出した。その手を経忠がしっかりと握り返す。
「次に出会う時までには、技にさらなる磨きをかけておくとしよう」
「おう。オイ達も鍛え直して、今度は負けもはん」
 ニヤリと、経忠が笑って応えた。それを切っ掛けに、握手と共に互いの健闘を称え合う時間が始まる。
「君達も十分強かったけれど、あたし達がそれを上回ったそれだけの事。楽しかったよ、またやろう」
「うむ。麻呂達も神使の実力を目の当たりに出来て、楽しめたでおじゃるよ。再戦はぜひしたいものでおじゃるな」
 差し出されたバスティスの手を、ホホホと笑いながら握ったのは実氏だ。
「いい試合だった! 楽しかったぜ!
 もしよかったら、海外でもやってみないか? きっと楽しくなるぜ!」
「それは、妙案にごつなぁ……神威神楽の外で超級蹴鞠とは、考えただけでわくわくしてきもんした」
 爽やかな笑顔と共に、風牙は四万津の郎党の手を握り返す。風牙の誘いは、相手の想像力を大いに刺激したようだった。
「ふっ……貴方達の蹴鞠も中々やりますね! またやりましょう!
 それまでに我々も更に腕前を上げておきますよ!」
「もちろんでおじゃる。その日を楽しみにしてるでおじゃるよ」
 しにゃこも、今回の試合を満喫した様子で手を差し出した。現在川の郎党はその手をしっかりと握り返しながら、しにゃこに応えた。

 なお、両チームに再戦の日が来るかどうかは、神のみぞ知るところである。

成否

成功

MVP

バスティス・ナイア(p3p008666)
猫神様の気まぐれ

状態異常

なし

あとがき

 リクエスト、どうもありがとうございました。豊穣チームとの交流戦は、ローレットチーム『秋時雨』の勝利で幕を閉じました。楽しんで頂けましたら、幸いです。

 MVPは勝斗でチームの継戦能力を支えたバスティスさんにお送りします。本文中にも少し書きましたが、勝斗や襲斗による攻撃、阿支須斗による防御しかなかった超級蹴鞠に回復の概念を持ち込んだことは、今後の超級蹴鞠に大きく影響することでしょう。

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