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シナリオ詳細

すてぃあすぺしゃる~シャークライト『氷剣教導』

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 エイプリルフールになれば、きっと彼女の名前はスティア・エイル・ヴァークライト (p3p001034)あらためスティア・エイル・シャークライトになるのかもしれない。
「スティア」
 美しい金髪の淑女はその時、頭痛がしていた。
 エミリア・ヴァークライト。ヴァークライト家当主代行たる彼女はアシュレイ・ヴァークライトの妹であり、スティア・エイル・ヴァークライトの叔母にあたる……が、最早お馴染みの苦労性の叔母様である。
「約束した、鮫の訓練の件ですが……。
 ええ、確かに私は皆さんに諭され鮫を制御できるようになればスティアにとっても新たな『可能性』が発露し、聖職者として正しい道に進んでくれるのでは無いかと淡い期待を抱きました――抱きましたけれど」
 訥々と語るエミリアの目の前には『サメちゃん』が三体居た。
「つ、つい~~」
「つい~~、ではありません! どうして……。
 義姉の忘れ形見である貴女を本当に慈しんで来て、兄が失踪し、それでも尚、家を残すためにと父上と誓ったあの日より、貴女のことを護り、そして見守ってきたのに。
 一時はこの国にも暗き闇が居りましたが……それでも尚、イレギュラーズとして世界を見て、自身の進む道を決定し、ヴァークライトのためにと切磋琢磨する貴女を見て『これで安泰だ』と思ったのも束の間だったではありませんか……どうして……」
「どうしてって二回言った!」
 ――二回言った!
 ががーんとするスティアにサメちゃんは首を振った。サメちゃんにも見放されている。
「スティアちゃん……」と目を細めたのはサクラ (p3p005004)であった。
「折角の機会だからエミリア様に教い――訓練に付き合って貰おう?」
「今教育って言いかけたよね!?」
 ががーんとしたスティアに気のせいだよとサクラは常の通りの笑みを浮かべている。
「ええ、よいでしょう。スティアと――サメ様にはしっかりとTPOを弁えて頂きましょう」
 訓練場へ出なさいとそう言ったエミリアは「着替えてきます」と部屋を後にした。

 一先ず、叔母様直々に訓練してくれることを氷剣教導と名付けよう。
 そして三匹の鮫ちゃんはシャークライトと名付けておこうではないか。

 ……ちなみに、スティアの『サメちゃんとの特訓』は自由参加制なのか幾人かのイレギュラーズが様子を見に来たのだった。

GMコメント

 リクエストありがとうございます。当シナリオは『すてぃあすぺしゃる~ががーんでぎゅいーんでごーん』『すてぃあすぺしゃる~ヴァークライトの試練』の続きになっております。

●成功条件
 叔母様との模擬戦を行う

●状況説明
『すてぃあすぺしゃる』(めちゃくちゃな量の料理とサメ)と戦った皆さんは主に見えないパンドラが減少しました。腹具合の脂肪(誤字にあらず)判定です。
 その後の茶会において、エミリア様からとっても叱られたことで文字通り『理解させられた』スティアさん。叔母様との模擬戦とサメちゃんの訓練のためにヴァークライト家の訓練場に集まったのでした……。

 スティアさんは前問の叔母様に後方のサメですが皆さんは模擬戦には自由参加です。
 叔母様に稽古を付けて頂くもよし、スティアさんに横やりを入れるもよし、叔母様と結託してサメとスティアさんを殴るもよし、この場では叔母様がルールなので叔母様が良いよと言えば何でも良いです。

 終わったらヴァークライト家でお茶会も楽しめますよ。勿論、叔母様がきちんとお持て成ししてくれますからね!
 お茶会の準備をしていても良いですし模擬戦を見ながら先にピクニックしててもいいですね!
 折角天義の貴族が揃っているので落ち着いて未来についてお話しするのも良いですよね。
 サメを何とか出来ればですが。
 サメを何とか……出来るのかなあ……。

●『サメちゃん』こと『シャークライト3匹』
 制御不能(現時点で)。ですが、ちょっぴりスティアさんに好感を覚えてる感じがするサメです。
 サメです。
 勿論ばくっと丸呑みです。ですがサメは模擬戦を理解してる賢いサメです。
 模擬戦だから命までは奪いません。賢いサメです。

 サメちゃん達は気まぐれで縦横無尽に動き回りますがスティアさんはこれを制御しなければなりません。
 時にスティアさんにだってばっくり行くかも知れませんね。頑張って……!

●『氷の騎士』エミリア・ヴァークライト
 スティアさんの叔母。スティアさんの父アシュレイの妹であり、『ヴァークライト一家断罪』の際にその刃を持って『家』を守った張本人。現在はヴァークライト家当主ですが、家督はスティアさんが継ぐべきと『当主代行』を名乗っています。
 二刀流&体術を駆使した変則ファイター。騎士としての実力で『不正義があった貴族』の中では真っ当な地位に居ます。
 スティアさんの事はスティアさんの母エイルの忘れ形見として大切に育てなくてはならぬと考えていました。だというのに――――!

 周囲に恐怖心を与えるギフトを所有しています(魔眼と同様、意志の強さによりそれは左右されます)!
 そんな彼女と模擬戦です! ギフトが無くともその雰囲気は冷たいです。氷剣教導ですしね!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はEです。
 なんたって相手はサメです。グッドラック。

  • すてぃあすぺしゃる~シャークライト『氷剣教導』完了
  • GM名夏あかね
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年09月23日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
リースリット・エウリア・F=フィッツバルディ(p3p001984)
紅炎の勇者
サクラ(p3p005004)
聖奠聖騎士
リンディス=クァドラータ(p3p007979)
ただの人のように
アカツキ・アマギ(p3p008034)
焔雀護
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃

リプレイ


 あらすじ――『サメ召喚士』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)は手料理を披露しようと友人達を自身の屋敷であるヴァークライト邸へと招待した。
 そんな彼女の手料理が美味ではあるが何時も量がバーストしがちだと云う事を知りながらも『聖奠聖騎士』サクラ(p3p005004)は『すてぃあすぺしゃる』に望んだわけだが……結果、鮫がヴァークライト邸を蹂躙する結果となった。
 勿論、鮫との熱烈なるマウス・トゥ・マウスを行った『未来綴りの編纂者』リンディス=クァドラータ(p3p007979)や、エメスドライブすれば助かる気がした『放火犯』アカツキ・アマギ(p3p008034)もそれはそれは酷い目に遭ったのだが――ヴァークライト邸にはスティアが一人で住んでいるわけではない。
 寧ろ特異運命座標として留守しがちの彼女の代わりに女主人として家を護る叔母エミリアが同居しているのだ。『春告げの』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)は憂いた――仮にも貴族令嬢であるスティアが鮫を召喚していたのだ。母代わりとして、そして父代わりとして騎士としてどのような逆境でも可愛い姪を、兄と姉の忘れ形見を護り続けていたエミリアのことを思うと涙も溢れそうになる。
 エミリアの悲痛なる想いを考えれば『曇銀月を継ぐ者』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)も此度、エミリアが行うと言った『訓練』は非常に重要な物であると認識したのだ。
 そう、大食いファイター並みにスティアの料理を食べ、叔母様に説教をされながらヴァークライト邸でのお泊まり会と休憩をした今! 此度は『サメちゃん』の訓練なのだ。
 同じ天義の貴族としてエミリアの実力に興味があると共に、『白獅子剛剣』リゲル=アークライト(p3p000442)はスティアの訓練に付き合おうと考えていた。ヴァークライト家の謎(?)に迫る良き切欠であると考えるアークライト夫妻。……ヴァークライト家はサメを呼び出す家系では、なかったはずですよ。
「スティアと言えばサメだが……そう言えばなんでスティア=サメなんだ?
 ヴァークライト家ではサメを召喚するのが普通なのか?」
 混乱する『優心の恩寵』ポテト=アークライト(p3p000294)の言葉に、その場の一同は首を振った。もう、誰も何故スティアがサメなのか分からないほどにスティアはサメに侵食されていたのだ。


「……確かに訓練すれば或いは、とか言った記憶はあります。ありますが……」
 リースリットは愕然としていた。此度の訓練は確かに訓練すれば良い、と助言を行ったことで叶ったマッチなのだろう。そう、確かに助言をした。助言はした――が。
「とりあえず、そう。スティアさんの訓練ですね。なんとなく理解しました」
 この聡明なるファーレル家の二女でさえも『なんとなく』しか理解できないのが此度の惨劇なのだ。
「……で、このサメは何なんです? スティアさんの味方なんですかね、一応は……なんか増えてませんか?」
 数えれば1……2……3……。
 サクラは「どうして……」と呟いた。サメが増殖せず、サメの制御もなんとなく出来るようになった――そもそも、サメはどこから来るの? という幼子でも感じる疑問を忘れるほどにサクラはサメに毒されていた――筈だというのに、この大一番で大事故のように三匹居るのだ。
「……ね、ねえ、サクラちゃん……」
「どうしたの……スティアちゃん」
「もしかして叔母様ってサメちゃんだけじゃなくて私も狙ってきたりするのかな」
 サクラは答えない!
「そんな訳ないよね、ないって言ってー! わーん! 死ぬ気でサメちゃん制御しなきゃ死んじゃう」
 ソレよりも三匹の鮫ちゃんの方が気になって仕方が無いサクラは「そ、そうだね……」とさっと視線を逸らした。
「なんで3匹もいるんでしょう?」
 リンディスには、っとしたようにアカツキはスティアを見た。
「スティア・エイル・シャークライト」
「ああ……シャークライト家……恐ろしい家です……」
 此の儘では天義の貴族ヴァークライト家もサメに乗っ取られてしまう.リンディスは恐ろしいと目を伏せた。憂いを感じさせるその眸はそうっと三匹の鮫を捉えている。
「いいえ、しかし。お茶会でも言っていました通りスティアさんがサメの使役をものにすれば可能性だけではなく食べられることもなくなるはず……! 頑張ってくださいね、スティアさん!!」
「う、うん! ここに来て真っ当な応援で嬉しい!」
 此れまで「どうして」「なんで」しか問いかけられなかったスティアの心に染み入るリンディスの応援である。その傍らに立っていたアカツキはくいくいとリンディスの袖を引く。
「世の中には不思議なこともあるのう……賢いサメちゃんと再び対峙することになろうとは。
 すてぃあすぺしゃる、恐ろしい存在じゃ。妾、帰っていいかのう。駄目?」
「駄目です」
「そっかあ……」
 リンディスの眸は「まさかアカツキさん、私を置いていくなんてしませんよね」という色味が輝いていた。「そっかあ……」ともう一度呟いたアカツキは大人しくスティアの背後に綺麗に整列しているサメちゃんを見詰めた大きな溜息を吐いた。
 その時、ベネディクト=レベンディス=マナガルムは思った――俺達はこの場に何をしに来たのだったか。
「個人的には対人の心算だったのだが、何やらいつも夏子が食べられている鮫が数匹……どういう理論なのだろうな、魔法か何かなのだろうか……」
 目を伏せたベネディクトに「対人であれば私がお相手しましょうか」と冷ややかな声音で声掛けたのはスティアの叔母様――こと、エミリア・ヴァークライト。『氷の騎士』の異名を持つ彼女は周囲に恐怖心を与えるギフトを所有しているそうだ。
「ああ、いや……先ずはあのサメを抑えなくては……」
「そうですね……スティア! どうして――!」
 エミリアの悲痛なる声がスティアに降りかかる。「えーん、分からないよー」と「びえーん」するスティアを見てサクラは駄目だ早く何とかしないとと目を伏せた。
「シャークライト様。初めまし―――」
 ばくり。
「リ、リゲル!?」
 妻の悲痛なる声がするが「ははは」と爽やかな笑いがサメちゃんのお口の中から聞こえてくる。
「やれやれ、シャークライト様は過激な挨拶を行うのですね。
 改めて、リゲル=アークライトと申します。此方は妻のポテトです。エミリア様も――良かった、此方は人間だ――どうぞよろしくお願いします。夫婦共々、鮫使いとの手合わせは初めてで……何分ご迷惑をおかけするかと思いますが……」
「いいえ、アークライト卿。姪の鮫が大変失礼を。私は普通の人間ですし、鮫を召喚した事は一度もありませんのでどうぞご安心下さい」
 エミリアから感じる棘にスティアの肩身が狭くなっていく。癒やし手であるポテトは「シャー君、リゲルの丸呑みは禁止だ。OK?」とまるで母の様に言い聞かせた。
「エミリア様。アークライト家のポテトと申します。
 天義を母国とする者同士、手を取り合ってこの先も天義を良き国へと導く手伝いが出来たらと思います」
「ええ。こちらこそ。ルビア様にはヴァークライトも良くして頂いて……」
 挨拶を交えた二人と変わり、アカツキはにんまりと笑みを浮かべた。
「先日のお茶会ではお世話になりまして。改めましてアカツキ・アマギと申す者じゃ、よろしく!」
 挨拶は大事。先日の茶会では世話になったというアカツキは『とっても強いお姉さま』に挑むのが楽しみだと胸を高鳴らす。
「ご挨拶が遅れました。正式に聖騎士となりました、サクラ・ロウライトです。
 氷の騎士と名高いエミリア様の氷剣、兄より学んだ剣を更に生かすために勉強させて頂ければ。ご指南お願いします!」
「ええ。此方こそ。どうしてスティアはロイライト嬢のように真っ当なる力を身につけなかったのか……その心は今は切り捨て貴女の力となりましょう」
 真っ当なる力が無い姪だと思っていたんだ――サクラはスティアを不憫に思い振り返った刹那――

「だ、だめ! さ、さめちゃん、だめぇぇぇ!」

 親愛の証だろうか.鮫がスティアにあんぐりと口を開いて襲いかかっていた。リースリットはその様子をエミリアの近くで眺め、ぽつりと呟く。
「スティアさんがサメと格闘している……あれは、召喚者として力を示して調伏する、とかそういうものでしょうか。
 悪魔とか精霊とか、従わせる上で過程としてそういう儀式を経る事もありますが……はたしてそれがサメに通じるのかどうか」
 一先ず齧られるスティアを癒やすが「ぎゃあー!」と激しい叫び声聞こえた。
「回復することで生きたまま齧られる恐怖がすごいよー! こ、ころしてー!」
「頑張れ次代のシャークライト! ほら! 噛まれてる場合じゃないよ!」


「何はともあれ、此処を越えねばならぬ事は確かだ。全力で望むぞ!」
 鮫を抑えなければ何も始まらないのだ。リースリット曰く『鮫の調伏』であるが、どうした因果か複数体存在するのだ。此れを抑えねばならないとベネディクトは走り出す。
 鮫の戦闘力がどの程度かは分からない以上、深追いはしない。油断もしない。そもそもベネディクト卿が味方が顕現させる鮫の戦闘能力について考えたことがあっただろうか。いや、ない。
 希望へと至る物語を描くために、蒼銀の槍を全力で振り抜いたベネディクトが放った一撃が鮫の怒りを買う。
「ふむ、サメちゃんか……サメが乱入してこようとも、妾は挫けない!
 アカツキ・アマギ、炎の魔女いっきまーす! 氷と名の付くものはとっても得意じゃぞ、燃やし尽くしてくれよう」
 エミリアとの模擬戦に挑むアカツキのその腕に刻まれた朱の刻印が光を帯びる。腕をなぞるように降りたその光は破壊的な魔術として変貌しエミリアの元へと放たれた。
(躱す――じゃろうな、じゃが、これはどうかな?)
 勿論、エミリアが躱すことなどアカツキには分かっている.そもそも相手は歴戦の騎士だ。『当たると思って挑む』方が間違いなのだ。直ぐさまに業火を放つ。悪夢を思わすその炎はアカツキの瞳の色に似ていた。
「成程、確かに炎の前では氷は無力――ですが、その炎を閉じ込める氷は如何ですか?」
 地を踏み締め飛び込むエミリアが『避ける』。その場所へと乱入するのは大暴れ中の一匹の鮫だ。
「むっ、サメちゃん! あの時破られたえめすどらいぶくんの仇じゃ、喰らえッ!」
 えめすどらいぶくんも仇を討って貰えて屹度喜んでいる。エミリアはその言葉に思わず笑った――一部始終を聞いていた彼女はスティアの料理を食べるためのエメスドライブを鮫ちゃんが見破ったことを知っていた。寧ろ、そこはサメちゃんの頭脳のなせる技だったのだ。
「此れが家を守りし氷の剣、ですか。鋭く……そして凜とした一閃。
 いいえ、それだけではない。突然のサメが襲い来たとしても臆することがないのです」
 未来を綴るように。リンディスは記録を励起し、仲間を鼓舞すると共に、筆を折ることなく記録を続けていた。数多の文字を記録するリンディスはまじまじと記録を続けていたが、ふ、と目を伏せた。
「そうこうしている間にスティアさんが制御に成功……成功……?
 ……私、敵対しています。サメの敵。そこには制御に成功したスティアさん。導かれる物語の結末は――」
「リンちゃん逃げるのじゃーー!」
 エミリアとの模擬戦どころではなくなったアカツキの悲鳴が響く。リンディスは「ああ」と呟いて目を伏せた。変わるようにサクラが模擬戦を挑む。
 兄譲りの氷の刀技は冷ややかなる凍気を帯びる。聖刀に纏うのは享楽と安念を貪る魔石であった。
 精緻にして神速の居合。華麗なる斬撃はエミリアの剣とぶつかり合い桜の花を散らす。
「流石ですエミリア様。若輩の剣ではまだまだ届きませんね……!」
 地を踏み締めたサクラはそれでも尚、と手を伸ばすように剣を振るう。自身も、そして――サメに齧られてる――スティアも特異運命座標として様々な戦いを経て強くなってきたのだ。
「受け継いだ剣技と、学んだ殺人術! その複合! これが私の剣!
 ――とかやってたらサメが突っ込んできたー!? これ本当に制御できてるの!?」
 サクラのもとへと飛び込んできたサメちゃんは先程までアカツキとリンディスを襲っていた物だった。リースリットは目を伏せる。
「サメちゃんは中々に……強いのですね」
「ううんっ、そんなことない! 私のHPは危険水準(みんなサポートありがとう)だけど!
 諦めるわけにはいかないんだ! スティア・エイル・ヴァークライトが命じる! サメちゃんよ! 私に使役せよ!」
 サメちゃんシールドを得たスティアはその勢いの儘、叔母の元へとサメをけしかけた。
 リゲルをサポートし『耐える』戦いを主軸とするポテトも流石にサメを相手に耐えたことはない。
「リゲル、油断せずに」
「ああ。ヴァークライト家、ロウライト家。天義の貴族の名を冠する皆も、天義の復興や真なる正義の国を作るべく日々尽力している。
 俺も父上の意思を継ぎ、母国を守る。その為の研磨を怠ってきたことは無い。どんな試練が立ち塞がろうと、斬り開いてみせる――!」
 が、制御できているかどうか分からないサメちゃんが飛び込んでくる。ポテトが視線を送ればベネディクトと一匹の鮫は中々に交友を深めていそうだった。
「ふっ、やるな」とその整ったかんばせのスマイルにサメが使役され掛かっている様を見てリースリットは何もなかった振りをしてから微笑んだ。
「千里の道も何とやらと申します。
 ある程度でも進歩が見えれば、『今日は』そこまででも良いかもしれません。切り上げて、或いは休憩として、お茶会にするのも手でしょう」


 エミリアとの模擬戦は確かに厳しい物だった。容赦なく(サメもいる故だろう)攻撃を重ねる彼女との模擬戦はポテトにとっても有意義であったのだろう。
「有難うございます。そうだ、天義の今後に関しては私も聞きたいと思っているんだ。
 良い方向に変わって行っていると良いんだが……」
「ああ。激しかった……ヴァークライト家の試練は心躍るものだな! でも、ポテト。シャークライト様のことをいつの間にニックネームで呼ぶようになったんだ?」
「対サメ時の咄嗟のシャー君呼びは、リゲルが丸のみされて焦っていたんだ……! 突然の丸のみはびっくりするぞ!?」
 シャー君と呼ばれたサメは心なしか嬉しそうなので其の儘でも良いだろう。リゲルとポテトは此れからの国の行く末についてじっくりと語りたいと席に着いた。
 復興について、そして、国作りの基盤となる次世代の者達の笑顔のために何か出来ることはないかと真面目に語るその声を「ふんふん」と頷き聞いているスティア。
「スティア」
「はっ。せっかくだし、ヴァークライト家……というか叔母様はどういうことをやっているのか聞いて見たいんだ。私だってヴァークライトだし」
 シャークライトじゃないよ、と首を振るスティア。国の基盤となる観光産業でも特産品を用意して地域の産業を活性化させることで復興に繋がらないかと勘案する.例えば、紅茶などが良いだろうと彼女はふんわりと微笑んだ。
 その様子を眺めるのは幻想貴族たるリースリットだ。天義の国作りに口出しはしないが――次世代、そして『現在の指導者』達の考えは何処まで一致しているのかが気になってくる。彼女の母国はと言えば……口にせずとも、といった実情だ。
 菓子をぱきり、と食べたアカツキは実はちんぷんかんぷんなのじゃ、とちょこりと座り菓子を握りしめる。アイコンタクトをベネディクトに送ったのは「分かっておらんじゃろ?」アピールだろう。
「何をするにしても、長い時間をかけて布石を打ちながら少しずつ変化を望むしかないだろうな」
「なっ――!」
 べー君に裏切られたとアカツキはショックを覚えた。彼も統治者。考えることはあるのだろう。
「……大きな変化がある時は、誰かの血が流れる時だ。無論、それを是とし推し進める事も出来るかも知れんが──叶うなら、無辜の民の血が流れる様な出来事は起きては欲しくない物だが……」
「ええ。旅人の方が持ち込んだ本の中にも宗教国家の隆盛のお話など過去から得るものもあるでしょう。
 ですが、あくまで最後は今を生きている方々が紡ぐ物語――私たちでもお手伝いできることがあれば、どうかその時はお申しつけ下さい」
 にこりと微笑むリンディスはアカツキを真似て菓子を一口かじる。隠された優しい甘さはまるで姪を慈しむエミリアのようだと感じられた。
「けれど、色々あったけど、今はみんな前向きに復興が出来ている気がするね。
 多少寛容になって助け合って前よりも良い天義になりそう!
 その一方でアドラステイアみたいな事件も起きてるから、まだまだ油断は出来ないけど……みんなで頑張って天義を前以上に素敵な国にしていこうね!」
「アドラステイア、ですか――」
 ふと、呟くエミリアに「叔母様?」とスティアは首を傾ぐ。自国の中に出来た新たな『不和』を気にするような素振りを見せたエミリアは「皆ならばきっとよりよい未来を拓けるでしょう」と微笑んだのだった。
 ……因みに、サメちゃんはいつの間にか一匹になりスティアの云う事を聞くようになっていた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 この度は有難うございました!
 叔母様もそろそろサメちゃんを家族と認識してきた頃だろうと思います。

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