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シナリオ詳細

再現性東京2020:講師はつらいよ。休み明けは特にね。

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 夕暮れ時。周囲は塀で囲まれ、車も入ってこられないどん詰まり。近隣に民家もなく、たまたま高い塀で覆われており、昇降口のどれとも離れている非常に使い勝手が悪い場所にその門がある。
 何をしているのか。と問われたら、ごみを運んでいると答える。登校は私服通学が認められているので、とがめられることはない。
 学園章入り青いポリバケツの中にはちょっと種類がなんだかわからない何かが入っている。後は処理するだけだ。処理の方法は秘密です。すみません。
 学園内で発生した事案の後始末をするところだ。。
 まさに掃除屋のための門。校舎のどこからも、たまたまこの門は死角となっている。
「ねえ」
 それは、不意に声をかけてきた。
 掃除屋は、ポケットを探り、端末の緊急用のボタンを押した。
 この場所に、再現性東京の夢を見ている者が入ってこれる訳がないのだ。
 ここは、集団幻想の舞台裏。もっとも彼らが目を背けたい暗部。わざわざ入ってくる前に嫌な感じがして去るだろう。
 だから、その一。妙なことになる前に、ローレット・イレギュラーズに回収してもらう。
 その二。事が大きくなる前に、ローレット・イレギュラーズに倒してもらう。
「学校、行きたくないわよね?」
 長い髪。ぼさぼさの整えられていない眉毛。盛大にはみ出した色付きリップ。

 何と答えたら、生きて、このごみを処理できるだろう?


 緊急呼び出し音が、準備室に響いた。
 本来、各教科ごとに準備室を設けるのが正しいが、授業なんざ二の次三の次のローレット・イレギュラーズ講師は一か所にまとめておくがよろしい。ということになった。
 とはいえ、授業はしなくてはならない。一年分のカリキュラムを設定し、いけそうな枠数に割り、どうせその中に世界の危機が二つや三つや四つはねじ込まれるから余裕も考え、業者の持ってくる中からテキストを選び、いけそうもないのは自分でプリント作って配布し、何なら、特殊教室使用の許可を取り、長期休暇用の課題も今のうちにある程度設定しとかないと、あとで自分の首を絞める。そもそも、『東京』という異世界の風俗を学ばなくてはならない『東京』以外からのウォーカー及びカオスシードは、何それ、理解できないけどそれが当たり前というのを顔に出さないところから始めなくてはいけない。
 小規模でも両手の数、下手したら数十人の学びの機会をどうこうすることになるのだ。トラウマや苦手意識を植え付けることだけは避けてくださいねー。という学園上層部の笑顔が怖かった。
 授業開始まで間もない。準備期間がない。しかし、真マイク詩人は頑張った。やる遂げた。後は授業に臨むだけだ。
 ――のタイミングで、緊急呼び出し音である。
 緊急コールの後から、ずらずらと通知に夜妖の特徴が垂れ流されてくる。口頭で説明している時間はないと言いたげな文字情報。「読み上げはこちら」のリンクが逆に腹立たしい。

 夜妖、「青いセーラー服」
 *校内に一人でいると「学校、つらいよね?」と話しかけてくる。「そんなことないよ」などと否定すると顔を一瞬で真っ黒に塗られる。一週間は取れない。
*同調すると、「だよね。行かなくていいよね~」と言いつつ消える。が、気力が消え、一歩もその場から自力で動けなくなる。一週間は動けない。
 *上下真っ青なセーラー服。近隣にそういう制服の学校はない。長い髪の女学生。しくしく泣いていて、眉はげじげじで太く、顔色に会っていない色付きリップがはみ出している。
*対象が気絶するまでずっと見ている。
*遭遇したヒトはすべて気絶させないと、気がすまない。

「学園・よらずの門付近で目撃情報。至急排除せよ。「青いセーラー服」はヒトではない。夜妖である」
「青いセーラー服」は、学園の七不思議に数えられている。実際、被害者が出ているので始末が悪い。回復してもそのまま不登校になってしまうので、噂に拍車がかかり、青いセーラー服を増長させる原因になっている。

「通報した掃除屋がその後連絡不能。夜妖と接触したと思われる。生死関係なく保護されたし」
 
「よし、ストレスを解消しよう」
 手段と目的が完全にねじれている。しかし、なすべきことはなさねばならぬ。
「夜妖を退治してストレスを発散して、掃除屋確保して。そのまま打ち上げしよう!」
 よし、店は任せろ、予約した!

GMコメント

 田奈です。
 新学期、大変ですね。講師生活、頑張ってくださいね。そういう訳で、登校ブルーな夜妖を用意いたしました。頑張って倒してください。打ち上げの分量はどのくらい速やかに倒せたかどうかにかかってます。

*「こんなに頑張ったから、ご褒美があっていい」制度。
 OPで言及した「授業準備」、皆さん具体的にはどのように頑張ったのでしょうか。その辺り、回想していただくと、田奈が打ち上げシーンでめっちゃねぎらいます。

 夜妖「青いセーラー服」
 *見た目、行動はOP参照。
 *「否定したら、こう」ロスト200 
 *「同意したら、こう」石化。
 
 夜妖「蝙蝠」×10
 *噛みついてきたり、目の前を飛んで視界をふさいできます。
  噛まれると「毒」状態になります。

場所:学園 よらずの門付近
 *人気がないからだれも使わないのか、誰も使わないから人気がないのか、とにかく人っ子一人通らない門。なんで、そんなところに門がいるかというと掃除屋さんのためである。今回は掃除屋さんからの通報。

掃除屋「モブ生徒」
 印象の薄い学園生徒として、日々掃除に励んでいます。
 門の辺りで、処分するモノの受け渡しをする予定でした。
 現在、「同意したら、こう」の影響下で石化しています。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 再現性東京2020:講師はつらいよ。休み明けは特にね。完了
  • GM名田奈アガサ
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年09月22日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アラン・アークライト(p3p000365)
太陽の勇者
夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
シラス(p3p004421)
超える者
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫
羽住・利一(p3p007934)
特異運命座標
シルキィ(p3p008115)
繋ぐ者

リプレイ


「慣れない事をやるのは楽しいものですが、中々疲れますわねー」
『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)が、音楽室に持ち込む楽器の数を数えながら目頭をもんだ。
「少しでも音楽に親しんでもらえたら。と思って」
 やんぬるかな、海洋王国のポピュラーな楽器と『東京』のポピュラーな楽器には隔たりがあるので、すり合わせが結構大変だった。貝を笛にしないんですかー? しなくはないけど、開戦のホルン扱い? まごう事なき次元を隔てた異文化である。
 そんな中、講師準備室に、独特のチャイムが流れる。
 目の下にストレス性の隈をこしらえた臨時講師という名のローレット・イレギュラーズ達が次々と教室を飛び出していく。
 生徒たちもめったに使わない廊下を全速力で歩き、昇降口で上履きを履き替える。
「授業と夜妖排除、両方やらなくっちゃあならないってのがイレギュラーズのつらいところだな」
『特異運命座標』羽住・利一(p3p007934)は、先ほどまとめた学習の狙いを思い返した。
「個人技術の習得」、「仲間との連携を通じてチームプレイの重要性を学ぶ」、「互いの長所を認めて尊重し合えるようにする」――ローレットの依頼にも通じるところがある。バレーボールの課題なのだが。
「あぁ、ちっくしょう……! こっちは寝る間も惜しんで授業準備終わらせたと思ったら夜妖かよ!」
『勇者の使命』アラン・アークライト(p3p000365)は、口は悪くて傍若無人だが、傭兵なので自分の武器の手入れはちゃんとするのだ。講師の武器は授業レジュメ。理科室の使い方は百遍読んだ。使わないのにガスの元栓開けて、それを忘れるバカは学年に一人、偏差値にかかわらず必ずいるのだ。それが社会の縮図。覚えた。
「もう! なんだってこんな忙しいときに限って夜妖は現れるのでしょう!?」
『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)は、声を大にして世界に問うた。指先は染料で若干染まっている。
「俺達にかかれば楽勝だろ。とっとと片付けてご褒美に預かろうぜ」
『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)の夫力が強い。妻の数値化されないやる気が上がる。
「ええ」
 見つめ合う新婚さんのアイコンタクトの間に割り込むと爆ぜる。
「既に被害が出ちゃってるし、掃除屋の子も心配だねぇ……」
『la mano di Dio』シルキィ(p3p008115)は保険の先生なので『調子の悪い』生徒の対応も仕事のうちなのだ。神秘による治療は不得手だが。
 つい今しがたまで知識をもとにプリントを印刷し、単元の後にやる小テストをこしらえていたのだ。業者テスト? 「再現性東京」にテスト業者など存在しない。ただ、それを誰も意識しないだけだ。
「……やり甲斐はあるけど、気の休まる時は中々ないもんだねぇ」
 シルキィはもう成虫なので、暖かな繭の中には還れない。大人ってちょっと辛いなぁ
「ま、打ち上げのお店はお任せください」
『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)は、端末の電源をオフにした。押さえましたという眼鏡の反射がまぶしい。
 人は、昨日の「うまかった一杯」と二時間後の「これから一杯」で生きていける。
『ご予約なしですかー。満席デース』や『申し訳ありませーン。数量限定で今日の分が出てしまいまして―』の悲しみを回避してくれる『新田の予約』
 席取りは当たり前。今日の限定おすすめもきっちり押さえているに決まっているのだ。だって自分が食いたいから。
「手早く倒してこんな日は飲み会です! 飲んで嫌なこと忘れちゃいますよ!」
 幻に一同は全力で賛同を示した。


 夜妖は狩られるものだ。タイミングを間違うと、理不尽な目に遭って駆られることになる。
「さあ、楽しいお時間の前にお仕事ですわー」
 ユゥリアリアは、総員抜刀の号令をかける。戦の旗振りはキレイドコロだと士気が上がる。
『ねえ、休み明けに学校行くの嫌よネええええ?』
 青いセーラー服はそう語りかけながら、距離を詰めた。
 大きな蝙蝠がその周囲を飛び、間もなく夜であるとローレット・イレギュラーズにしらしめす。
 すなわち、残業。世を忍ぶ仮の身分に残業手当はつくのだろうか。そもそも給料は払っていただけるのだろうか。
 そのあたり、得意でしょう。と、スカウトされた新田氏には、不当労働が発生しない様頑張っていただきたい。やりがいはもっとも公共性の高い価値――すなわち金銭で還元すべきである。
「テメェ厄介ごとに巻き込まれやがって……安心しろ。助けに来てやったぞ」
 何はさておき、アラン、『モブ生徒』を確保に成功。掃除屋稼業ご苦労さん。明日、遅刻すんなよ?
「そんじゃ、今日は特別授業。『夜妖の解剖実験』だ。わかんねーことは質問しろよこの野郎」
 モブ生徒の体はこわばっている。心臓は動いているし、呼吸もしているので内部にまでは至っていないらしい。
「シルキィ、お間、保健の先生とかいう奴だろ。こいつ見てろ。俺は今からあいつらまとめてぶっ飛ばす」
「無理」
 シルキィの返事は端的だった。
「あ?」
「ごめんねぇ、アラン君。正直、治癒は苦手なんだ。もっぱら攻め手でね。この子に何もしてあげられないんだなぁ。ここはさっさと片付けて癒し手のところに駆け込むのが得策だよ。速攻、速攻!」
 アランのあごがかくんと落ちた。いや、担当教科と個人の適正がマッチしてないのは仕方のないことだ。
「――あいつら、まとめてぶっ殺す!」
「うんうん、そういう感じでいこう。 じゃ、ちゃんと弱らせとくよ。任せて。それは得意だから」
 絞り出されるアランの地を這う低音に、シルキィは軽やかに相槌を打った。
 移動中のアランへの攻撃を遮るためにに立つシラス(p3p004421)の身分は数学担当の教育実習生。同年代なのでこれがギリギリ妥協点だ。童顔で押し切る。
 授業内容はイレギュラーズになってから勉強した内容と大差はなかった。
 それ以上に頭に叩き込まなくてはならない「東京」の常識。つい、口をついて出そうになる混沌の常識。
『え~。シラスン、その考えやばくね? なしよりのなしだわー』
 非常識や世間知らずは、あっという間に浮いてしまう。のっぺらぼうのJK(概念)にプークスクスされる悪夢が一息ついた昼休みの転寝にインサートされる。
『ねええ、学校今日もつらかったでしょおおお。あしたはもっとつらいわよおおおお?』
 青いセーラー服の慟哭。
 思考回路の最適化の中、泡沫のように浮かぶ所感。
(子供たちはみんな幻想とは違った)
 同い年だけど、彼らはまだ子供であることを許されている。
(良い意味で甘ちゃんばかりなんだよ。平民とも貴族たちともまるで違う)
 彼らにはスクールカーストはあっても、本当のカーストはない。一つしくじったら立場がなくなることはあてたも、何をしても罰を受けなかったり、逆にどれだけの偉業を果たしても這い上がることもない不変の身分差はない。
(この街を再現したい、守りたいっていう気持ちが俺にも少しだけ分かったぜ)
 馴れ馴れしくて、こっちを舐め切ってて、でも何かあるといちいち言いに来る奴ら。抵抗する手段を放棄し、長い夢を見る彼ら。
(――だから夜妖は必ず退治してやる)
 刹那ではじき出される結論――ロストなんか知ったことか。
「いいや、毎日だって行きたいね」
 どるん。圧倒的な怖気と共にシラスの中から何かが抜け落ちた。だから、どうした。若干の体力を代償にして、シラスは青いセーラー服の鼻先に立った。
『きひっ!?』
 反射で薙ぎ払われるはずだった白洲は青いセーラー服の真後ろにいた。振り返ろうとする隙にシラスの一撃が見事にめり込んだ。


「とっとと終わらせて呑みに行くぞ!」
 飲み会への決意が固い。
「私は体育講師・羽住利一だ。かかってこい」
 利一の挑発に大蝙蝠が吸い寄せられる。全て思惑通りだ。
 極めて局地的にご自分の存在をお諦め下さい。鋼のゲリラ豪雨と光の羽根が同時に降り注ぎます。蝙蝠は役には立たないでしょう。
 綺麗に利一をさけて、大蝙蝠の上にだけ銃弾の雨が降り、利一だけを選んで蝙蝠を切り刻む羽根が毒消しのやさしさを見せる。
 ジェイクのリボルバーと新田の仕込み傘。ユゥリアリアの背中で光の羽が優雅にはばたく。
 やがて、蝙蝠の悲鳴は絶え、激しく石畳とアスファルトを穿つ音に変わる。
 誰にも肯定されない青いセーラー服は、幻の奇術に翻弄されていた。
『大嫌い。私の大好きな私を嗤うヤツらが大嫌い。学校なんか行きたくない。がっこうなんかだいきらいいいいいいいいい』
 青いセーラー服に甘美な恋はない。徹底的な自己愛の果て、そうでないものになろうとする者の足を引っ張る。
「貴女は、学校が辛いのですか?」
 新田は、青いセーラー服の言葉じりをとらえた。
『つらあああああああいい。い。い。い。い。い。い。いひひひひひひひひひひひひ』
「い」の音が残響する。
 首が、ごきゅんと真後ろに折れた。顎が天を向く。人間なら気道が圧迫されてろくに呼吸もできない角度だが、夜妖はけたたましく笑い続ける。
「どんな点が辛いのですか?登校が義務化している所? 皆に合わせなければならない所? それとも……いじめ、ですか?」
 規則正しい登校がままならないなら、リモートでもフレックスでも導入しよう。団体行動ができないなら、余計だ。いじめ、ダメ、絶対。
「あなたはつらくない、のおおおおおおお。ないのねぇぇぇ? ばぁぁぁぁかぁぁぁっ!」
 馬鹿って言った。酒飲んだ新田寛治は素敵にお馬鹿さんだが、素面の新田寛治に、面と向かって馬鹿。幼い面罵が青いセーラー服のどうしようもなさを示す。
「学校に来てくれないと、授業の準備に苦労した甲斐がないじゃないか!」
 利一は、異形の生徒の因果に介入しようとする。伸ばした手指がその手首をとらえた。捩じ上げた関節がひとならざる感触。ああ、これはヒト由来ではないのだ。
「うるさい! ばぁか! ばあああああかああああ!」 
どれほど深い示唆も、青いセーラー服には理解できない。幼さと愚かさと恐怖と嫉妬と馴染めない悲しさを練り合わせてできた夜妖が時節に誘われて現れるのだ。幽霊なら成仏させることもできただろう。しかし、これはそういう存在ではない。あくまで倒されるだけのものだ。「再現性東京2020」という美味しい料理を作る過程でどうしても発生する灰汁のようなものだ。除去し続けなければ、料理は破綻する。
「何を聞いても、聞かなくてもつらいだけの存在かぁ。なら、もう少しつらくなってもあんまり変わらないよねぇ」
 弱らせておくってアランと約束したんだよねえ。と、シルキィは呟いた。
 仲間の攻撃が利きやすくなるように。青いセーラー服の足元に真っ黒の展開図。ぱたぱたと折れ曲がり、青いセーラー服を直方体の中に閉じ込める。満たされたあらゆる苦痛が青いセーラー服を苛む。
「俺の分はとってあるな!?」
 モブ生徒を安全な場所まで退避させ、全速力で取って返してきた勇者。
 その手には、不規則な赤いフレアをまとった血肉を叩いて伸ばして作った異形の剣。「殺意」のオーラにおののき、いつもよりまぶたや口の開閉が多い。
「「こっちは疲れてんだよ! いいからさっさと死ね、ゴミがァ!」
 いや、疲れ切ったところに生徒絡みの面倒ごとに巻き込まれてブチ切れてる生物講師アランだ。
 後に、回復した掃除屋『モブ生徒』は、帰城にも現場に戻り、一仕事終えた新任の生物講師に問うた。
「アラン先生。ぐちゃぐちゃすぎてどこが筋肉でどこが内臓かわかりません」
 ヒト由来じゃなかったようだからな。と、利一がこぼした。夜妖は得体のしれない何かなのだ。少なくとも解剖の授業には向かない。
 

「あまりいかがわしい場所のは御免ですわよー」 
 味が良ければ、場所の治安は問わぬという剛毅な御仁は海洋王国にもそれなりにいる。令嬢たるユゥリアリアは自分の身辺に気を配らなくてはならないのだ。
「敢えてターゲット層を絞らない戦略で、多種多様なメニューにハイレベルで対応した居酒屋、いわば『大人のファミレス』とでも言うべきお店なんです」
 もちろん、そつない酒飲みはそういうところを学園講師の打ち上げ会場として選ばない。PTAが存在するのだ。「再現性東京」だからして。
「それではお疲れさまでした。乾杯!」
「乾杯ー!」
 幹事さん、ありがとー!
「準備と夜妖退治お疲れ様だよぉ〜!」
 いい店はお酒飲めない者にも優しい。飲めないシルキィが迷うほどソフトドリンクの種類がある。
「お褒めの言葉、痛み入ります」
 新田の仕切りはてきぱきしている。もはや、芸の域である。
「あまり飲みすぎませんようにー。授業に差し支えますわよー」
 かく言うユゥリアリアは、こうかな酒をちびちび飲みつつ海鮮をつつく所存だ。
「持ってきたドリンク剤をあげるねぇ。二日酔い防止になると思うよぉ〜」
 転ばぬ先の杖は大事である。
「シルキィさんのやさしさに拍手! はい、それじゃお料理お願いします!」
 おいしそうなものが次々来る。
「仕事終わりに呑む酒は美味すぎるな!」
 このたびは、何はなくとも、泡あふるるビール。利一の上唇に泡の髭。
「最近飲めて無かったからなァ! 今日は死ぬほど飲んで食うぞ!」
 アランの目の前に、本日のスペシャリティ、刺身の盛り合わせとたこの唐揚げと日本酒が出てくる。
 再現性日本のいいところは、普通に日本酒が存在しているところだ。日本だからして。
 見様見真似のなんか違う気がする現地品でもなければ、カムイグラからの流通コストでとってもお高いということもない。新田を拝むしかない。
「それにしてもトウキョウって調べれば調べるほど本当に凄い街なんだな。入ってみたい店が山ほどあるんだ」
 シラスは目を輝かせた。あまりきょろきょろするもんじゃない。子供に見えるぞ。
「とりあえず今日はパフェを食べたい、苺のやつ!」
 シラスは、目を輝かせた。だって、未成年だもの。イチゴパフェは半年前の季節限定でー。
「大丈夫ですよ」
 新田がほほ笑んだ。ジョッキが空いている。ちょっと失礼。と、席を離れた。厨房に嫌われない程度に交渉する気だ。
 デザートのページが厚い店は、よいお店。
 ほどなく、イチゴパフェが出てきた。季節じゃないのに。ピッカピカの真っ赤な苺だった。
「――子供達に先生みたいな蝶の翅つけてみたいなんていわれて、奇術師としても、美術教師としても嬉しいじゃないですか」
 幻は、クピクピとワイン飲みながら、今日の授業の反省会に突入している。
「張り切って学生の数だけ針金で蝶の翅の型を作って、その上に和紙を張って、翅も動くように細工をして、更には色の科学を楽しんでもらうために、紅茶のピカソ・ブルーみたいに科学反応が起きる液体を集めて絞ったりして、すっごく準備に時間がかかったのに、一部の生徒には好評だったんですけど」
 学園は共学である。そして、幻の担当している美術は一年生は必須である。
「流石に全員楽しめるとはならなくて残念でしたね」
 つまり、体育会系男子には町長の羽の模型はあまりにも繊細が過ぎた。染料の中で金魚掬いのポイよろしく破く者続出。FXで財産溶かした人のような彼らの顔が幻の脳裏をよぎる。和紙を破る乱暴さとは。次はもう少し力任せに行けるのも取り入れるといいかもしれない。
「そうか、そうか」
 女性には、まず共感を示すのが肝要である。その点でジェイクは第一段階は突破した。
「俺の方の技術科の授業は本棚を作ったり、椅子を作ったり――そういったものの作り方や、道具の扱い方を教えるんだ」
 さすがに、生徒にバックスタブの仕方を教えるわけにもいかない。となると、手先の器用さから技術科ということになったのだ。
「だがな、ハンダゴテだっけ? アレの使い方がよくわからなくて、手に火傷を負ったってのもいい思い出さ。むしろ俺のほうが色々と教わる感じで楽しかったぜ」
 電気ゴテは、練達や鉄帝の工房でないとなかなかない。ましてや、ガラパゴス的魔改造を極めた2020東京・教育仕様など。
 幻は、ジェイクの手を取ってしげしげと見聞したが支障が残っていそうな後はなかった。
「しばらくの間は、ここで教師をやるってのも悪かねえな。出来れば幻も一緒にな」
 大人のファミレスで手と手を取り合う新婚さんから目を背けて杯を煽るしかなかった僕たちに励ましのお便りを。講師準備室宛で届きます。
「予約ありがとうな新田よォ。しかし、俺たちがこれから教師だ、なんてなァ……」
 語尾が消え入りそうなアランだが、みな大丈夫だよな。と、顔を見合わせて頷いた。
 夜妖をどつきまわす前に、生徒を対比させることを優先できたのだから、多分、きっと、大丈夫だ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでした。掃除屋は元気。夜妖は倒し、翌日に響いた先生はいませんでした。きれいな飲み会。ゆっくり休んで次のお仕事頑張ってくださいね。

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