PandoraPartyProject

シナリオ詳細

なないろの魔法

完了

参加者 : 7 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


『魔法を知らぬきみへ

 蝶が眦で煌めいた
 咲いた花道を抜け、大地の旋律を聞きながら
 欠月は次第に満月へ
 星降る夜に、きっと、魔法を愛する君を待つ

 ――七人の魔術師より』

 手を翳せばインデペンデンス・ネイビィの夜空が視界いっぱいに広がっている。
 一つの流れ星が弧を描いて頭上を走った。それは、星の魔術師が見せる叡智の旋律。
 瞳の中に落ちてくる星の輝きに少女は目を瞠る。

「どうかしら? 綺麗でしょう?」
 傍らに寄り添ったジルーシャ・グレイ(p3p002246)が少女に視線を送った。
 こくりと頷いた少女――ルーナ・パルファランジアは嬉しげに微笑む。
 森の奥深くに花咲き、その力を暴走させるだけだったルーナを救ったのはジルーシャと仲間のイレギュラーズたち。精霊を閉じ込めるほどの力を有していたがその殆どは失われ、今はただの精霊種だった。
「私、森の外に出たこと無かったから……すごくきれい」
 空の色を映すようにルーナの瞳がアメジストへ変わって行く。

「こ、怖くない?」
 恐る恐る蝶の魔法をつつく子供たち。
 此処に集まった子供達は魔法を知らない者達だった。
 年端も行かない少女だったり、怖がりな少年だったり。
 そんな彼等に魔法を知ってもらいたいと願ったのは村の大人達。
 世間に出れば少なからず魔法というものに触れて行くだろう。
 その時に怖がってばかりでは取り返しの付かない事になってしまうかもしれない。
 何事も知っていれば恐怖も和らぎ、冷静な判断が出来る。
 そんな、少し変わった依頼を引き受けたのが七人の魔術師だった。

「怖くないですよ」
 アイスブルーの瞳を細め、子供達に視線を合わせたアイラ・ディアグレイス(p3p006523)は青い燐光を放つ蝶を彼等の手に乗せた。
「わぁ! キレイ!」
「良いなぁ! 僕もぼくも!」
 せがむ子供達の目の前を小さな流れ星が通り過ぎていく。
「流れ星だ!」
 少年は声を上げて星を追いかけた。その先にはウィリアム・M・アステリズム (p3p001243)が待ち構えている。くるくると子供達の前で回る星達のワルツ。
「ほーら、あっちはもっとすごいぞ」
 ウィリアムが星を目印に夜空に視線を誘導すれば、其処には欠月と月が浮かび上がった。
 リア・クォーツ (p3p004937)の旋律に乗ってミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク (p3p003593)とアーリア・スピリッツ (p3p004400)の双月の魔法が踊り出す。
「綺麗な音色……すごいね、お姉さん」
「ふふ、ありがとう」
 ロンドの旋律は欠月と月を伴って夜空に咲き誇った。

 建物の影に隠れた少女をアレクシア・アトリー・アバークロンビー (p3p004630)は見つける。
 そっと怖がらせないように差し出した掌に花の魔法が開いた。
 手首には空色の石が揺れる。
「大丈夫、怖くないよ」
「ほんとう?」
 こてりと首を傾げた少女にアレクシアは微笑んだ。

「さあ、行こう」

 蝶、星、香り、花、旋律、欠月、月――
 七人の魔術師が織りなす一夜限りの祝祭をご覧あれ。

GMコメント


 もみじです。なないろの魔法を見つけましょう。

●目的
 魔法を使って子供達を楽しませる

●ロケーション
 夜の街の広場。とても広いので魔法が使いたい放題です。
 良い感じに黒い影が現れます。
 黒い影はラビとアルエットが魔法具で用意した安全なものです。
 子供達は最初とても怖がってしまいますので、魔法でやっつけましょう。
 そうすれば、心を開いて楽しんでくれるでしょう。
 ヒーローとして羨望の眼差しを向けられるかもしれません。

 黒い影で遊んだ後はお祭りではしゃいでしまいましょう。
 魔法を見せてもいいですし、一緒に料理を食べてもいいです。

●子供たち
 ちょっぴり怖がりな女の子、興味津々なガキ大将、冷静に分析するけどへっぴり腰な少年、ぼんやりしている女の子、照れ屋な女の子など。
 色々な子供がいます。
 アルエット、ラビ、ルーナ・パルファランジアもいます。

●大人たち
 広場の隅で宴会をしています。
 料理やお酒を飲みながら、子供達を見守っています。

●料理
 それぞれの家庭料理が運び込まれ、花見の様なご機嫌な感じです。
 ミートパイにピザ、サンドウィッチに美味しいパン。
 ローストビーフに切ったステーキ、サラダやデザート。
 ジュースやワインなど。

●諸注意
 未成年の飲酒喫煙は出来ません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • なないろの魔法完了
  • GM名もみじ
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年09月22日 22時11分
  • 参加人数7/7人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 7 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(7人)

ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)
想星紡ぎ
ジルーシャ・グレイ(p3p002246)
ベルディグリの傍ら
ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)
キールで乾杯
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
蒼穹の魔女
リア・クォーツ(p3p004937)
願いの先
アイラ・ディアグレイス(p3p006523)
生命の蝶

リプレイ


 魔術とは、魔を操り奇跡を造る技術である。
 魔法とは、魔を以て奇跡を顕す法則である。
 ――さあ、一夜の奇跡をみんなで造り、顕そう

 ゆっくりと青い瞳を上げた『星空の魔法使い』ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)は舞台となる広場の影から会場を見渡す。
 今夜のウィリアムは七色に瞬く魔法の一つ。星を冠する魔術師ウィリアム・ミーティア・アステリズム。
 子供達の心の中にある恐怖心を拭う為、楽しさを知ってもらう為。この場に集まった七色の魔術師たち。
「やーん、可愛いお客様たちがたくさん! 腕が鳴るわー♪」
 ウィリアムの隣から顔を覗かせた『香りの魔術師』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)はくすくすと口元を抑えながら微笑んだ。
「フフ、思い出すわねぇ。アタシも魔法を習いたての頃は、怖がっては失敗ばかりでよく先生に叱られてたもの」
「ジルーシャにもそんな頃があったんだな」
 歴戦の魔術師といったジルーシャにも拙い時期があったのだとウィリアムは笑う。
「勿論よ! 魔法は決して、優しくて綺麗なだけのものじゃない」
 使い手次第で、猛毒にも凶器にもなりうるのだ。そして、一番危惧すべきは、怖さを知らぬ者が魔法を行使すること。
「魔法を恐れる気持ちがあるなら、お前が使う魔法は、きっと悪いものにはならないさって。アタシの先生も言ってたわ。だから、今度はアタシ達があの子たちに教えてあげる番よね」
 ジルーシャは広場の子供達に混ざるルーナ・パルファランジアを見つめる。
「ルーナちゃんもいることだし、今夜は最上級の香りを大サービスしちゃいましょ♪」
「ああ、見せてやろう。俺達の魔法を」
「そうだね。魔法が素敵なものだって思ってもらえるように精一杯頑張らないとね!」
 二人の声に『花の魔術師』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)の笑顔が重なる。
 アレクシアもまた師を持ち、魔法の大切さと怖さを学び、楽しさと喜びを得たのだ。
 身体の弱かったアレクシアにとって魔法とは外界と自分を繋げてくれる架け橋でもあったから。
 弱き者を救う力を得たことは生きる糧となったのだ。そんなきっかけと笑顔を子供達に与えたい。
「そうしたらきっと、その子がまた誰かに笑顔を広げてくれるから!
 今日の私は『花の魔術師』!世界を彩り、笑顔の花を咲かせてみせましょう、ってね!」
 広場に集まる子供達は、魔法を知らないのだと『旋律の魔術師』リア・クォーツ(p3p004937)は溜息をついた。正直な所を言うと、今回の依頼自体面倒ではあるのだ。
 教える手間だってある。大がかりな演目を熟さなければならないし、怪我をさせるなんてもってのほか。
 実地的に学んだ方が飛躍的に経験値は積まれるのだが。
「まぁ知らない事を知るってのはいい事ですし、付き合ってあげますか。仕事ですし。って、ヒーローショーやるんですか? ええー、あたしはやーですよ、めんどくさい」
「子供達のためだから! 一緒にやろ!」
 アレクシアの言葉に眉を寄せるリア。
「…………ま、まぁ子供達の期待を裏切るのは、まぁ。
 しょうがない、じゃああたしは「演奏」でお手伝いしてあげる」
「そうこなくっちゃ!」
 悪態をつきながらも、口元は笑っている。リアの心根は優しいものなのだ。

 普段は誰かを守る為に敵を傷つける魔法ばかりだから。こうして子供達を楽しませ、笑顔にするための魔法が使えるなんてと『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)は胸を弾ませた。
 彼女の傍に寄りそうように佇む『キールで乾杯』ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)も小首を傾げながら微笑む。
「魔法について、ですか。たしかにちょっと変わった依頼ですこと」
 けれど、未知のものは恐れに繋がるもの。知っている事は、知識は大切だとミディーセラは頷いた。
「魔法は便利に使えますし、綺麗なところもありますけれど……けしてそれだけではなく、万能でもありません。文字通り、使い手次第なのです」
「そうよねぇ。今日はそれを知ってもらわなくちゃね」
 広場に集まる子供達がいつか魔法に携わる時が来たときに、どんな道を選ぶのか楽しみでもあるとアーリアとミディーセラは微笑み合う。
「ふふ、もうすぐ始まるかしら。上から見ていましょう?」
 子供達の為に用意するのはヒーローショー。
 子供が見ても分かりやすく派手なテーマで展開していく魔法劇だった。
「さあ、始まるわよ」

 ――――
 ――

 かつて、ボクが魔法に怯えたように
 そして。ボクが魔法に憧れたように

 アイスブルーの瞳は真っ直ぐラピスラズリを散りばめた夜空を見上げた。
『蝶の魔術師』アイラ・ディアグレイス(p3p006523)は胸に手を当て思考の狭間を揺蕩う。
 魔法は強い力を秘めている。美しく繊細で素敵な魔法たち。
 そんな素晴らしい魔法のことを誰かに知ってもらいたい。
 叶うのならば、興味を持ってもらいたいのだとアイラは頷いた。
「だから、こども達にとびっきりの魔法をお届けしましょう!

 広場の灯りが落とされ、子供達が静まりかえる。
 ジルーシャの焚いたラベンダーの香りが仄かに漂い出す。
 不安げな表情で当たりを見渡す子供達の前に一人の魔法使いが現れた。
「ご機嫌よう。蝶の魔術師の、アイラ・でぃ……ディアグレイス、です!」
 アイラが声を上げた場所から青い蝶がひらひらと舞い上がっていく。
「わぁ!」
 子供達は暗闇の中から蝶と共に現れたアイラに驚きの声を上げた。
 アイラは何かを探すように広場の中央に駆けてくる。
「あ、あれ……迷子になっちゃった?」
 視線を巡らせるアイラの様子に気がそぞろだった子供達も興味を示した。

 其処へ現れる黒い影――

「あれは何!?」
「きゃぁ! 怖い!」
 ラビとアルエットの声が広場に響く。
 同時にリアの旋律が何処からともなく広がった。
 手元に魔法のヴァイオリンを顕現させ、銀に輝く美しいTyrfingで旋律を奏でていく。
 それは、黒い影の怖さを助長する音色。それでいて何処か落ち着きを促すもの。
 子供達がパニックにならないように、添えるヴァイオリンの音。
「って、見つけた! よくも逃げてくれましたね?」
 アイラは子供達を庇うように手を広げ黒い影の前に立ちはだかる。
 影に怯える子供に帽子を託したアイラは影へと近寄り氷蝶の楽園を描いた。
 光は一瞬だけ大きくなるが、たちまち黒い影に飲み込まれる。

「うーん、ボクだけじゃあ力が足りない……!」

 アイラの声に子供達が動揺を見せる。助けに来てくれたヒーローが負ける所は見たくない。
「負けないで!」
「やっつけてー!」
 子供達の声にアイラはにっこりと微笑んだ。
「大丈夫! ボクには頼れる六人のなかまが居るんです。きっと後から追ってくれたはず!
 折角だから、助太刀して貰っちゃいましょう! 皆も一緒に呼んで! ジルーシャさん!」

 ラベンダーの香りがぐっと濃くなる。
「あらぁ! アタシを呼んだかしら?」
 パッとライトアップされるジルーシャに視線が集まった。
「アタシが使うのは《香術》――香りで精霊を呼び寄せて、その力を借り受ける魔術」
 香水瓶を揺らし、漂わせる紫香のラベンダー。子供達の怯えを中和する香りだ。
 ジルーシャの影からはブラックドックのリドルが召喚されて飛び出した。
 大きな黒い犬の姿に子供達は吃驚して後ずさる。
 されど、リドルは子供達を守るように立ち塞がった。
「フフ、怖がらないで大丈夫。――さ、目を開けて。次の魔術師たちがお出ましよ♪」
 ゆったりと弾けるリアの旋律に乗って、精霊達が流れていく。
 銀色の五線譜は空を走り、七色の音符が踊りだす。
 黒い影の上を飛び回り、牽制するように押し返すリアの精霊。
「あれは何?」
 子供達が口々に目の前に広がる精霊のロンドに首を傾げた。
 魔法を見たことが無い子供達にとって精霊は本当に未知の存在なのだろう。
「あれは、精霊よ。怖くないわ」
 子供達の中に混ざるルーナが微笑む。その意図をくみ取ったリアは精霊達を子供の目の前に誘導した。
 手を差し出す精霊におそるおそる指先を乗せる子供。
 掌から伝わる感触はほんのりと温かく安心できるものだった。

 精霊達が旋律と共に舞い上がる。次に現れるのは夜空の魔術師たち。
 欠月の魔術師は箒にのってやってくる。
 大きな尻尾にとんがり帽子。ひらりと舞い降りた魔法使い。
 子供達が魔法使いに憧れるように。魔法使いっぽくやってみようではないかとミディーセラは微笑む。
 欠ける月の魔法は黒い影を縛り付けた。
 そこに重なるように弾けた星の魔法。クリスタルスターの煌めきに花開く光。
 黒い影に当たっては消えて行く星の瞬きに子供達は感嘆の声を上げる。
「欠月と星だけじゃあ、夜空は寂しいでしょう? なぁんて」
 月に掛かる階段は煌めきを帯びて子供達を魅了する。
 美しい大人のレディの色香を纏い降りてくるアーリアに少女たちは目をきらめかせた。

「さぁさぁ、月の魔術師――アーリア・スピリッツがお相手しましょ」


 黒い影との闘いは続いていた。
 拮抗する戦線に魔術師が苦戦する様子に子供たちもハラハラと見守っている。
 飛ばされたアーリアが地面を転がった。
「あいたた……!」
 アーリアに迫る絶体絶命のピンチ。近くに居た男の子に視線を合わせたアーリア。
「君は女の子達を護ってあげて!」
 鬼気迫る表情に男の子は女の子を黒い影から遠ざけていく。
 アーリアを庇うように立ちはだかるミディーセラの背に男の子は目を見開いた。
 あんな風にかっこよく守れる人になりたいと、憧憬を抱いたのだ。
「大丈夫か?」
 優しい言葉と共にアーリアの頭上に星が瞬く。にっかりと笑ったウィリアムが夜空の星の輝きを持ってアーリアの傷を癒やすのだ。
「ええ、大丈夫。夜空の魔術師はこんなところで負けたりしないわ!」
「そうですねえ……せっかくですし、夜の空に浮かぶおつきさまの魅力も知ってほしいところ。いつだって、見守っていてくれるのですよ」

 黒い影は一つに集まり、より大きくなっていく。
 ボコボコと膨れ上がる巨大な影に魔術師たちの顔の表情が険しくなった。
 負けそうになる心を感じ取った子供達は、ぐっと拳を握りしめ叫び出す。

「そんなヤツやっつけて!」
「負けないで!」
「大丈夫だよ! 魔術師さんたちは強いから!」
「負けるなー!」

 子供達の純粋な心にアーリアたちの胸が熱くなる。
 魔術師たちには演技だとは分かっていても、偽りの無い言葉を託してくれる子供達の声は本物だった。
「この夜は魔法使いの時間。俺達が負ける理由はない。そうだろう?」
「ええ。まだ。私たちは戦える! そうでしょう! アレクシアちゃん!」

 広場に舞い散る花の魔法――
 花吹雪と共に現れる一人の魔術師。
 蒼穹の瞳を讃えたアレクシアが子供達の視線を引きつける。
「あの黒い影は皆の気持ちを一つにしないと倒せないの。だからみんなが使える『言葉の魔法』を私たちに貸してほしい!」
 アレクシアの言葉に子供達が自分の口元を押さえる。
「ぼくたちが魔法をつかえるの?」
「そうだよ! 心のこもった言葉や応援は魔法になる。君たちにも覚えがあると思うんだ。頑張れって応援されたら勇気が湧いてくるのを」
 出来ないと思っていたことが出来るようになる。
 それは誰もが持つ『言葉の魔法』なのだ。

「さあ、行くよ! みんな応援して!」

 子供達の声援の中。魔術師達は一つ一つの色を重ねていく。
 ウィリアムが解き放つは鮮烈なる赤。スカーレットの煌めき帯びたアンタレスの輝き。
 激しく鮮烈に。心の火を燃やす色――熱情の赤。
「頼むぜ皆……アレクシア!」
 夜空に瞬く欠月はシルバーアッシュの仄かな光を纏う。
 降り注ぐ儚い灰銀はミディーセラの魔法。思い出にずっと残る程に美しく。
「アレクシアさんに託しますわあ」
 灰銀が薄らと赤みを帯びた。七色の魔法の花火、アーリアの色は桃色に染まる。
「愛と、想いの色だから――ね、みんなの声援を頂戴?
 照れ屋な女の子も、がんばれって声をお願い!」
 子供達にウィンク一つ投げてアーリアは微笑んだ。それに応えるように子供達も声を張り上げる。

 桃色の花火が今度は紫に変わっていく。芳しい香りの魔法と共に温かな熱気に包まれた。
 ジルーシャは普段より威力を弱めた烈花のグロリオーサをアレクシアの花火に重ねていく。
 目で見るだけではない、香り温かさ。それに音。
「……まぁ乗ってあげるわよ。仕方なくね、仕方なくですよ」
 小言を紡ぎながらもリアは最高の旋律を奏でる。
 リアが受け取るクオリアは子供達の声を心に響かせるのだ。それを束ねてリア自身の音に乗せる。
 皆の想いを束ねた藍色の魔法が広場を覆った。
「昔、友達と一緒にやったことがあるんだけどその時の応用!」
 アレクシアの花は明るい緑を咲かせる。想いを重ね。広場に舞い上がる花の魔法。
「さあさ、ご覧あれ。とびきりの、なないろの。ボクらの描く魔法を」
 アイラの青は蒼穹を表す色。空高く声を――希望を!

 七人の魔術師が織りなす大輪の花火。
 ラピスラズリを散りばめた夜空に咲き誇った――


 魔法の花火と共に消え去った黒い影。
 オレンジ色のランプが灯り子供達の緊張も解れていく。
 お祭りの時間が始まる――

「魔法は、こうやって人を幸せにする事ができるんです。わかりましたね?」
「はーい!」
 リアの言葉に子供達が元気よく答えた。片方の目を開いたリアは「……よろしい」と紡ぎヴァイオリンを構え直す。
「じゃあ、特別にもう一曲聞かせてあげましょう」
 それは子供達に贈る祝福の音色。これから先の人生でこの『七色の魔術師』が奏でた色を思い出して欲しいから。リアは未来へ導く調べを旋律に乗せた。

 子供は良くも悪くも影響を受けやすい生き物だ。興奮冷めやらぬ表情を見れば分かる。
 だからジルーシャはぐっすり眠れるようにラベンダーの香りを披露する。
「ルーナちゃんもこっちに来なさい」
 ジルーシャはルーナに手招きをして子供達の輪に入り込ませた。
「せっかく森の外に出たんだもの、お友達を沢山増やさなくっちゃ勿体ないわよ!」
「……ありがとう」

 憧れるだけでは危険だからとミディーセラは興味を持った子供に教示する。
 実際にやりたいと思うアクティブな子は他の魔術師に任せ、慎重な子に合わせた言葉を繰るのだ。
「けして飲み込まれないこと、恐れを忘れないこと……。心のどこかで覚えておいてほしいですねえ」
 こくりと頷いた少女の頭を撫でるミディーセラをアーリアは微笑ましく見つめた。
「子供達が外の世界を知ることは大事だものね」
 それを見守る大人達の存在があってこそ子供は育つ。
 いつか自分達にも、と儚い思いとミディーセラの姿が重なる。
 トクリと酔いしれた頬にアーリアは指を添えて俯いた。
 その旋律をリアは聞き逃さない。
「……おねーちゃん? なんか貴女から変な旋律聞こえてきますよ?」

 アレクシアは物陰に隠れている女の子の前に手を広げる。
「大丈夫、怖くないよ。一緒にやってみよう?」
 その手を恐る恐る掴む小さな手に微笑んだアレクシアは力強く広場の中央へ誘った。
 広場にはウィリアムが作り出した星の魔法が散りばめられている。
「こうやって、手から光を生み出すんだ」
 ウィリアムは掌に小さな星を出現させた。一つ二つと増えていく星の光。
「夜空に浮かぶ星のような、小さな光。それでも確かに夜を照らし、集まれば眩い輝きにもなる光だよ」
「うーん? 難しいよ」
「何かコツみたいなのないの?」
 中々上手く行かない子供達は簡単な方法は無いのかとアイラに疑問をぶつけた。
「コツ? そうだなぁ。ちゃんとイメージして、形にするんだ。ボクなら蝶」
 アイラが手を開くと青い蝶がふわりと浮かび上がる。
「たぶんみんな色々やり方はあると思うんだけど、私が大事にしてるのは「想い」だね」
 アイラの言葉にアレクシアが重ねる。
「どういう気持を込めるかで、どんな魔法になるかっていうのが決まると思ってる。
 だから、楽しい気持ちを込めてみればさ、素敵な花が開くと思うよ!」
 花の様な笑顔でアレクシアは少年を見つめた。
「キミの魔法を、ボクにも見せて?」
 微笑みながらアイラは少年の手を握った。アイラの手の温もりに励まされ少年は自分の色をつかみ取る。
「わ! ……ふふ、上手だね? 何回も練習したら、もっと上手になれるよ」
「本当!? 僕にももっと凄いのつくれる?」
「うん。上手になったその時は、ボクにも見せてくれるかな。小さな魔術師さん?

 心に魔法を。心に光を。未来を照らす星の導き。
 ラビへと声を掛けたウィリアムは夜空を見上げフェアリー・ピンクの流れ星を指さした。
「ローレットに来る切っ掛けになった日にも、流れ星が見えたらしいな。
 今のが魔術による物か、それとも本物かは……その心次第だ。なんてな」
「はい」
 小さく頷いたラビの表情はどこか嬉しげで。

 この場。七人の魔術師が集う夜に祝福の色彩がふわりと揺れた――


成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。如何だったでしょうか。
 ななつの色の魔法。夜の夢。ご参加ありがとうございました。

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