PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<巫蠱の劫>大正義ツナマヨ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ツナとマヨが入ってるんだから美味いにきまってんだろ
 時は現代豊穣郷カムイグラ。夏祭りの裏で禍々しく暗躍した呪具騒動と肉腫騒動。それらが一旦の解決を見た矢先、カムイグラ京中では妖怪の一部を用いた呪詛が流行するという事件が相次いだ。
 手法は後に述べるがこれを用いることによって半透明な『忌』と呼ばれる実態無き妖怪が対象者の前へ現れ裂き殺してしまうという。この厄介な所は呪詛が仮に迎撃された場合呪詛の使用者にその呪いが復り同じ手法で裂き殺されてしまうというものである。始めたが最後どちらかが死ぬまで終わらない殺意のループ。
 なんという恐怖。なんという疑心。これでは隣人すら信じることが出来ず人々は日夜かたちなき悪意におびえ続けなければならな――
「ヤア! ボクツナマヨくん! ツナとマヨが入ってるんだ!」
 半透明な巨大おにぎりがいた。
 ごめんねいきなり。事実だよ。
 だから目をそらさないでね。
「ツナマヨパンチ!」
 巨大おにぎりから手足が生えたこの謎の妖怪は自称コンビニエンスストアこと蝋村屋の扉をべぎょーんと粉砕した。
「伝言があるよ! この世のおにぎりはツナマヨ以外認めない! それ以外のおにぎりをおくこの店は……コロスヨ!」
 巨大おにぎりは(やけに中央に寄った)スマイルでそういうと、拳を握ってカウンター越しの店員へと構えた。

●まってほしい、本当にツナマヨだけが正義なのか?
「蝋村屋は創業100年の老舗おにぎり屋でございます。昨今は広がる需要からその他の飲料や生活必需品やフライドチキンにいたるまで取りそろえ街のコンビニエンスストアとなりました。しかし……」
 黒縁眼鏡の男が、どこか悲しげに言った。
 青と白の縞模様をした制服を着用し、隣ではバイトの女性が泣いている。
「創業以来ライバルでありかつては親友として互いを高め合っていた文摩屋は商品の多様化を受け入れられず、創業以来常にツナマヨおにぎりだけを作り続けたのです。
 我々はそれゆえ袂を分かった。そんな彼が、まさか私の店舗を呪っていたなんて……」
 眼鏡をはずし、男……ていうか店長も泣き始めた。
 顔をあげてくださいと肩を叩くイレギュラーズ。
 そうここは実質的なローレット支部となっている団子屋の一角。
 今回はこの蝋村屋からの依頼を受けるべくイレギュラーズたちは集まっていたのだった。
 ここまで話をきいたイレギュラーズはさすがに察した。
 なるほどその呪詛によって差し向けられた妖怪を退治すればいいんですねと。
 ね、と。言ったそばから。
「あ、いえ妖怪は倒しました」
 スッと顔をあげて店長は眼鏡をかけなおした。光を反射するレンズ。
 オッケー、それじゃあプレイバックといこうか。

「伝言があるよ! この世のおにぎりはツナマヨ以外認めない! それ以外のおにぎりをおくこの店は……コロスヨ!」
 巨大おにぎりは(やけに中央に寄った)スマイルでそういうと、拳を握ってカウンター越しの店員へと構えた。
 あわや店長の顔面が眼鏡ごと粉砕されようかというその時。
「蝋村バックドロップ!」
 残像を残しながら背後から接近したバイトの女の子が巨大おにぎりを後ろから掴み、豪快なバックドロップによって粉砕したのだった。
「ギャアアアアアアアアアア! ボクを倒しても第二第三のツナマヨが――!」
 なんか魔王みたいなことを言って崩壊したツナマヨくん。
 蝋村屋の危機は去ったのだった。

 しかし破壊してみてから、ことの重大さに蝋村屋たちは気づいたという。
「文摩屋さんはツナマヨに拘り続けるあまり経営バランスを見失い、年々業績は落ち続けたといいます。
 先代から店を継いだ店長の文摩チキ太郎は業績の悪化や増え続ける借金に心を病み、自らを他者が貶めているという被害妄想を抱くようになってしまったのです。
 そうなってしまっては助けの手を差し伸べることもできず、どうにか自力で立ち直ってくれることを期待したのですが……」
 ゆっくりと首を振る店長。
「きっと今回の『呪詛』も悪いひとからそそのかされたのでしょう。あんなに弱い呪いをわざわざ差し向けてしまうくらいですから……」
 と、ここで若干話が見えづらくなってきたので要約することにしよう。
 店長は『改めて!』と叫んで立ち上がった。
「文摩屋は跳ね返された呪詛に詰めかけられ、命の危機にあるはず。
 どうか、文摩屋を助けてやってください!」
 頭をさげる店長。『もちろん有料で!』といって封筒を突き出すバイト。
 そう、今回は変わり種。
 『呪詛の術者を助ける依頼』なのだ。

GMコメント

■成功条件:文摩屋店長の生存
 老舗おにぎりショップ『文摩屋』。
 この店はツナマヨのおにぎりだけを作り続けて百年というツナマヨ専門店である。
 最近ここのゆるきゃら『ツナマヨくん』の着ぐるみが長く使いすぎて妖怪になったと評判。評判……?

●ツナマヨくん
 元きぐるみの妖怪。付喪神的ななにかです。
 なんかこんがらがるので先に述べておくと八百万とは無関係です。
 文摩屋は一週間にわたってツナマヨくんを使った呪詛を送り続けましたが全部蝋村バックドロップによって粉砕されたので全部まとめていっぺんに跳ね返ってくることになります。
 途中で辞めればいいのになんで一週間送り続けたのかっていえば、文摩屋が100年ツナマヨ作り続けるくらい実直で単純な性格だからだと思います。

 皆さんはこの呪い返し的ツナマヨくんたちに今まさに襲われようとしている所に割り込みをかけ、文摩屋の店長を助けるべく戦うことになります。

・戦闘力
 ツナマヨくんは強いツナマヨぢからによる肉弾戦を得意としています。
 予想される個体数は7。フツーにぶっ倒してもいいですが、ちょっと工夫すると戦闘が楽になるかも知れません。

・ツナマヨくんの習性
 ツナマヨくんはツナマヨ過激派なのでツナマヨ以外のおにぎりを褒めたり美味そうに食ったりしてる人を見かけると『ア゛ア゛ッ』とかいいながら殴りかかります。
 数体ほどたおした後は、皆さん自分のすきなおにぎりを持ち寄ってツナマヨくんを取り囲みながらむしゃむしゃくってやりましょう。良い具合に翻弄できるのでお勧めです。

 折角なので相談時に自分のすきなおにぎりでも宣言してみましょう。

  • <巫蠱の劫>大正義ツナマヨ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年09月11日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
伊佐波 コウ(p3p007521)
不完不死
リンディス=クァドラータ(p3p007979)
ただの人のように
只野・黒子(p3p008597)
群鱗
バスティス・ナイア(p3p008666)
猫神様の気まぐれ
久泉 清鷹(p3p008726)
新たな可能性
柊 沙夜(p3p009052)
特異運命座標

リプレイ

●コンビニのおにぎりを選んでるだけで人生の2%くらいは楽しめる
「ふむ……ツナマヨは初めてみるのだが。動くのだな」
 豊穣の自称コンビに文摩屋の前にて、体育座りした『不完不死』伊佐波 コウ(p3p007521)がそこで買ったツナマヨおにぎりをもっふもっふ食っていた。
「動いてたまるか」
 その横で同じくもっふもっふしている『新たな可能性』久泉 清鷹(p3p008726)。
「そうか……。しかし、あれはあれで活きがよくて美味そうなのだが。
 活〆にして食うと美味だったりしないだろうか?」
 二人で同時に振り返ると、鮭おにぎりを食っていた通行人にツナマヨドロップキックを繰り出す『ツナマヨくん』がいた。
「ツナマヨ以外を食うやつは! コロスヨ!」
 妙に中央に寄ったシンプルな顔(・▽・)がヌッてこっちを向いた。
「ツナマヨは具としてあるのは知っていたのだが、目新しい物に飛びつく性格でも無かったのでな。この機会に試してみるのも悪くなかった」
「そうだね。うん」
 よそで買ってきたおにぎりの袋をぺりぺり開いていく『猫神様の気まぐれ』バスティス・ナイア(p3p008666)。
「ちなみに好きなおにぎりはネギトロだよ。
 熱々の白米にわさび醤油入りのネギトロを包んで優しく握ったおにぎり……出来立てを食べるのが至高だよね」
 左右からスゥってビニールをぬいていくナイア。
「冷めても美味しい焼き鯖。皮目がパリッとしてるのだとなお最高。
 焼き鮭はスタンダード。おにぎりといえばこれ、皆の心のおにぎり。最近はいくら込みの贅沢お握りもあるね。
 天むすも美味しかった。衣にまとった天つゆが味にアクセントをつけてくれる。
 特に海鮮が好きなんだよね。猫だからかな? 猫舌って程猫舌じゃないのは生まれ持った肉体に感謝だよ。
 ツナマヨ? 美味しいけど最高なわけじゃない。及第点。点数で言えば65点。
 あ、馬鹿にしてないよ。専門店のツナマヨがどれほどのポテンシャルを持っているかは未知数。だから文摩屋のツナマヨは気になるね……」
 とんでもねー密度で気持ちを語るナイアの横で、『翡翠に輝く』新道 風牙(p3p005012)がおにぎりを大胆に頬張って飲み込んだ。
「まあ、それはそれとして。
 ローレット神使隊見参だぜ!! フミチキはどこだ!!」
 その後ろからスッと顔を覗かせる『未来綴りの編纂者』リンディス=クァドラータ(p3p007979)。
(フミチキください)
「こいつ、直接脳内に!?」
「蝋村屋のからあげチャンでよかったですか?」
 そのまた後ろからスッてビニール袋と一緒に顔を覗かせる『群鱗』只野・黒子(p3p008597)。
「こいつ、いつのまに背後に!?」
「ツナマヨぢからと聞いて勇んでまいった!」
 そのまたさらに後ろからニュッて顔を覗かせて横ピースする『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)。
 傾けすぎて殆ど寝そべっていたが、謎の筋力でその姿勢のままぐいーって立ち上がった。
「美少女力(ぢから)の咲花百合子である!」
「こいつ、ナチュラルに自分の話に……!?」
「ちなみにおにぎりの具は『愚を握る』からきていて、生徒会長に反逆した美少女が梅干し大にまで圧縮され炊いた米に包まれて送られたというエピソードに由来している」
「こいつ、ナチュラルに美少女世界の常識を……!?」
「つなまよ君? 不思議なお名前やねえ。ねえ、つなまよって美味しいん?
 うち、食べたことないんよ。初つなまよ。ふふ。
 ……食べて戦うってようわからんね?ううん、大丈夫わかっとる。これ、深く考えちゃあかんやつなんよな。うん」
 謎の一列トークをしていた風牙たちを余所に、沙夜が手の甲を唇へ寄せた。
「人を呪わば穴二つ……せやけど、呪われかけた人が助けて言うとるからねえ。助けんわけにはいかないわ」
「こいつ、最後にまともなことを言って締めを……!?」

●ツナマヨくんの着ぐるみは実際のとこ欲しい
「ツナマヨぱんち!」
「ツナマヨバーストストリーム!」
 やりすぎたボディビルダーみたいな腕と美少女ブローが真正面からぶつかり合った。
 背景が七色に輝き集中効果線が激しく振動する。
 百合子とツナマヨくんの両目がギュバーンと輝き、両者スライドする目線カットインの末にスーパーラッシュを正面から浴びせ合った。
「百合百合百合百合百合百合百合百合百合百合百合百合百合百合ィー!」
「ツナツナツナツナツナツナツナツナツナツナツナツナツナツナァー!」
 絵面が頭の悪いアニメみたいになってきたので斜め上の空にツナマヨについて述べる百合子を半透明に浮かべときますね。
『ツナマヨはがつっと食べたいときによいであるな!
 から揚げほどには及ばぬがおかず感があり、しかして具としてのこなれ感はから揚げ以上!
 それにマヨの材料は卵! 油! そして酢!
 酢飯なるものがあるのであれば、マヨがご飯に合わぬ道理はなし!
 ツナマヨうみゃあーーーい! である!』
 その一方では、風牙が両手におにぎりを持って交互に上げたり下げたりしていた。
「ッカーーー! やっぱおにぎりと言えばツナマヨだよなあ! お店の定番! そして並んでる数も一番多い! 人気の証拠だよなあ!」
「君はツナマヨ食べる民なんだねそんな君にはツナマヨ勲章をあげ――」
 中央に寄った顔でニコッとするツナマヨくん。
 の目の前で。
「ッカーーー!! シャケ超うめぇぇぇーー!! この絶妙な塩味の塩梅と脂のバランス!! さいっこーー!!」
「ンア゛ア゛ア゛ッ!!」
 両目かっぴらいたツナマヨくんのパンチが殴りかかってきた。
 トゥとか言いながら華麗に回避する風牙。
「ツナマヨは大正義! 伝統的おかずお握り。庶民の味方、子供たちのヒーロー!」
 そんな彼をフォローすべくタンバリンを叩きながらあおる……じゃなくてツナマヨを褒めてやるナイア。
「こいつら……」
 ツナマヨくんは眼ぇかっぴらいたままじりじりと陣形を組み始めた。
「ツナマヨを褒めたりけなしたりの緩急をつけてくるヨ」
「騙されちゃダメだよ。ツナマヨを褒めながら他のおにぎりを食う異教徒どもだよ」
「異教徒とはオーバーですね」
 と、いつのまにかツナマヨくんの背後に立っていた黒子がネクタイを直した。
 途端、狭い空間が激しく歪み、反動を起こすようにツナマヨくんを吹き飛ばす。
「グワーッ!?」
 吹き飛んでころころ転がっていくうツナマヨくん。
 ここぞとばかりにリンディスは別のおにぎりをムシャりはじめた。
「私、うにくらげのおにぎりが大好きなんですよ。
 知ってます?うにくらげ。
 口に入れるとおにぎりの温かさと柔らかさの中でふわっと広がるうにと酒粕の香り、そしてお米とはまた違うコリっとした食感がとても良いハーモニーを奏でるんですけど。
 ツナマヨと同じように和えたものでは確かにあります、しかしそれとはまた別に独特の風味がとてもありまして。
 人の好き嫌いも結構あるのですが、合う人とことん合うんですよ」
「関係ないおにぎりの話はやめろァ!」
 起き上がったおにぎりが殴りかかるも、その拳をコウががしりと掴んで止めた。
「ならこれはどうだ」
 懐から取り出す自前のおむすび。
「うむ、やはり塩むすびは至高だな。素材の良さが引き立っているのが良い。
 梅干し入りも梅干しの酸味と塩気で米の甘さが引き立って一口また一口と食が進む。
 壷漬けの甘塩っぱさも箸休めに丁度よく、それら全てを麦茶でリセットしてからまた次へ……これはもはや永久機関なのでは?」
「さっきから和風かつシンプルに異教徒アピールしてくるよコイツ!」
「しかも異様に死なない!」
 四方八方からツナマヨくんがボコボコにしている筈なのに、コウは定期的に起き上がってはおむすびをもっふもっふ食い始めた。
「では、ここで改めて……」
 沙夜が懐からスッとツナマヨおにぎりを取り出した。
「初つなまよや。いただきますー」
 はむっとかじる沙夜の様子を、『お前は異教徒? ツナマヨ教徒?』みたいな顔でじっと見つめるツナマヨくんたち。
「……んん? まよねぇずってこの味なん? なんか不思議な味やな……んん、止まらんくなってきた。美味しいやんつなまよ。つなの濃い味とまよねぇずのまろやかな味のはーもにー? って言うんかしら。えっちょっとアレなこと言っていい?」
 一通り感想を言ったのち、沙夜は真顔に戻った。
「つなまよだけ食べたい」
「「ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!」」
 一斉に殴りかかるツナマヨくん。
 ――を、カウンターぎみに不意打ちする清鷹。
 一直線に走った刀の閃きがツナマヨくんたちを切り裂き、グワァといって一斉に転倒していく。
「この魚の身のなんとも言えぬうま味、ほんのり酸味の効いたマヨネーズがいい塩梅で引き立てている。なるほど……だが私はやはり、香ばしく塩の効いた鮭の握り飯が好きなのだ」
 振り切った刀をいまいちど鞘へと収め、ゆっくりと首を振る清鷹。
 後ろ手倒れたツナマヨくんに、沙夜がなんかの術でぺっちんぺっちんしていた。

●おにぎりフルボッコタイム
 無数のツナマヨくんに囲まれてボッコボコにされてるのになんでか死なない不死身のコウちゃんをみんな覚えてるかな。
 幾度のツナマヨパンチをくらっても立ち上がり幾度のツナマヨキックで踏みつけられても起き上がった彼女が、今……!
「んぐぅ!?」
 食べたおにぎりを喉につかえ白目を剥いてぶったおれていた。
「伊佐波いいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「おにぎりは喉に詰まりやすいからお茶と一緒に飲めとあれほど……!」
「最悪死ぬぞ!」
 ウオーと言いながら突入しコウを回収。追いかけてくるツナマヨくんたちに、黒子がくるりときびすを返した。
 ここは任せてくださいとばかりにフィンガースナップをうつと、突如としてツナマヨくんたちが一斉に転倒。
 その隙を突く形で仲間達の『かこんでおにぎりを殴る』作戦が炸裂した。
「……ハッ! 自分は一体!?」
 喉に詰まったおにぎりをパンドラ茶でながし、コウは深く息をついた。
 一方のツナマヨくんは眼を血走らせて両手の指をコキリコキリ鳴らしている。
「オォーン? ぼくの仲間を沢山屠ってくれたみたいだけど……ぼく実は、一人でも……”強い”よ?」
 イキり散らすツナマヨくんの周囲をザッと取り囲む百合子たち。
 かかってこいやオラァと言いながら蟷螂拳の構えをとるツナマヨくん……に対し、百合子たちは一斉におにぎりを取り出した。
「鰹節で作る故にうま味タップリであるし、簡単でお安い母の味である!
 吾、母の顔知らぬが。作ってくれたの面倒見のいい従妹であるが。
 そして塩むすびも良く作ってくれた! これは漬物との組み合わせが最高であるな!
 素朴な味であればどんなものともよく合う!お味噌汁とか欲しくなってくるであるな……文摩屋! 文摩屋! 味噌汁をもてい!! 無いか!?」
「アァン!?」
「実は私が好きなのはネギトロお握りなんだよね」
 ネギトロおにぎりをむしゃつくナイア。
 その横で清鷹は予告通り(?)鮭おにぎりをぱくついた。
「私も実は鮭の握り飯と昆布の握り飯が好きだ。
 この香ばしく焼けた鮭と香りとともに、パリパリの海苔の食感を味わいながら食べる。これほどの贅沢があろうか。
 そしてこの昆布。
 噛みしめるほどに味がある佃煮と塩の効いた握り飯と海苔の絶妙なバランスはいつ食べてもやみつきになる味だ。
 海苔弁当の海苔の下に昆布の佃煮があるのは皆が美味いと認めているからなのかも知れぬな」
「うちは鮭昆布。やっぱり美味しいわー。素朴な味よねえ。鮭の塩っぱさがご飯に合って、ふふふ。こんぶはそれよか落ち着いとるけど、これはこれで堪らないわあ。
 あ、皆お新香いる? きゅうりとたくあん、いっぱい持ってきとるからね。うちも食べよ。
 ……あ、あかんわこれ。お新香美味しい。とまらん。もぐもぐ。ぽりぽり。美味しいわ……」
「ンア゛ア゛ア゛!?」
 誰へ殴りかかればいいか分からずぐるぐる回り始めるツナマヨくん。
 リンディスと風牙はちらりと顔を見合わせると、眼を光らせて二人同時に文摩屋のツナマヨおにぎりを取り出した。
「それはそうと、やはり『極めた』おにぎり素晴らしいものでして。
 おにぎりに合うように調整した具の味付け、そして決してお米の持ち味を殺さないように長年繰り返された最高の力加減での握り方。
 また、お茶の濃さや漬物一つ。そう、おにぎり一つとは言いますが長年積み重ねられるものが後押ししていくのです。
 マヨネーズの選択、味付けや濃さ、ツナの選択一つにもとても長い試行錯誤があったものと思います」
「わかる」
「わかる」
 同時に頷くツナマヨくんと風牙。
 二人は顔を見合わせ、握手を交わすようにそっと手を出し――た直後、風牙の貫手がツナマヨくんの心臓(?)を貫いた。
「俺が一番心に残ってる味は、お母さんの作ってくれたおにぎりかな。
 ただの塩むすびなんだけど、なんでかすごくうまかったんだよな。
 ……もう一度、食べたかったな」
 しみじみと語り、腕を引き抜く風牙。
 せつない心の色を浮かべながら、ツナマヨくんはその場に崩れ落ちたのだった。

 最後急にしめっぽくなったが、こうして文摩屋への呪い返しは帳消しとなり、蝋村屋からの依頼は達成されたのだった。
 一応後日談らしいものを述べておくと、呪い返しにおびえた文摩屋や心を入れ替え再びいちからツナマヨ道を歩み始めたという。親友である蝋村屋との付き合いも再開したようだ。
 めでたしめでたし――である。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 余談ですがこの後に高級ツナマヨおにぎりが振る舞われました。
 べらぼうに美味しかったそうです。

PAGETOPPAGEBOTTOM