シナリオ詳細
絡繰魂百までも
オープニング
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『ンッ、かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁつ!!』
大声。衝撃、破砕音。
響くその地はカムイグラのとある村――いや廃村だ。
もはや住民の住まぬ、荒れ果てた土地。住民が退去した理由は流行り病であるとも、都の方へ移住したとも言われていて……さてまぁその辺りの真相はどちらでもいい、が。
かの村の中心部にて響き渡っているのは戦闘音だ。
そこに居るのは大きな『達磨』……である、が。あれをはたして達磨と呼んでいい物か。
四本の腕を携えて、それぞれに剣の様な刀の様な形をした大きな鈍器を持っている。
足はないが巨大であり、振るう一撃は地響きすら鳴らす程。
『おのれ外道たる侵入者どもめ! この地の民には指一本たりとも触れさせぬぞ!!』
そしてその口から放たれるは――些か妙な言動の数々。
どう見ても探してみても人っ子一人おらぬこの村。しかし達磨はまるでまだ誰かが住んでいるかのような口ぶりで、武器と闘志を振るってきているのだ。その様子からはとても嘘をついている様子はなさそうだ、が。
『往け我が小僧たちよ! 奴らを追い返すのだ!!』
問答無用なその様子。もはや狂っていると考えて差し支えなかろう。
更なる言を繰り出したと思えば――達磨の背の一部が開いて、その中から小型の達磨が大量に場へと出現。転がる様に『侵入者』へと迫って来れば、あわや危機も感じるモノであり。
「おのれ……こんな所になぜこんな『絡繰り』が……!」
「駄目だ退け退け! 囲まれる前に退くのだ!!」
村へ、とある目的をもって訪れた男たちは駆け足で遠のいていく。小型の達磨は追ってくるが――村の領域から出ればやがて親の達磨の下へと引き返すかのように戻っていった。
『我がいる限りこの村の者達には指一本触れさせぬぞ! 二度と来るでないわッ!!』
咆哮する声。それは大気すら揺らし、鳥を羽ばたかせて。
とうの達磨は満足げに。腕を仕舞って目を閉じ村の中心へと鎮座する。
あれは『絡繰り』
豊穣の地に時折ある――言うなれば『ゴーレム』の様な存在である。
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「――とまぁそういう『絡繰り』が発見された訳でしてな」
高天京。その地の一角で男が話す『絡繰り』なるモノは、豊穣の地に稀に在ったりするモノで――まぁ幻想の方でいえば『ゴーレム』という表現。練達の方でいえば『ロボット』と言えば、なんだか表現が近くなるだろうか。
言うなればそれらの豊穣版である。高度なゼンマイ仕掛けや、呪術などの類で作られるモノ。
それがとある廃村で発見されたらしい。
「調べてみれば元々は村の守護者として存在していた様なのですが……どうも長き年月を経て狂ったのか、村に足を踏み入れる者を全て問答無用で『侵入者』として判断するようなのです」
「ふ、む――中々危険な存在だな」
「ええ。まぁ足が無いからか動きは鈍いようではあるのですが……」
実はその村の周辺では土地の再開発計画が動いているらしい。新しい村を建てるというよりも、周辺を切り開き整った道を建設する事によって交通網を発展させる目的なのだとか。
その下調べで廃村となった地を訪れた者がいて――
「そしてその達磨が発見された、と」
「ええ。計画上、どうしてもあの辺りの土地が必要なのですが……とても退かせるようなモノでなく」
故にイレギュラーズ達へと話が持ち込まれた訳だ。
達磨は既に狂っているのか壊れているのか、言の葉は解するようだが『会話』は成り立たないので説得は不可能。もはや壊す他ないが――しかし暴れっぷりは凄まじく、生半可な者では逆に返り討ちにあってしまおう。四本の腕はそれぞれが動き、周辺を薙ぎ払わんとしてくる。
それだけではない。奴は背より『子』の様な小さき達磨を出現させ、侵入者の迎撃の一端とする事もあるらしい。そちらの方は力は強くなく、ともすれば蹴飛ばすだけで倒せそうな程度らしいが……囲まれれば動きが鈍る可能性はあろう。
そこを鈍器に薙がれては脅威。
「遠距離から撃てばなんとかなるってもんでもないか」
顎に手を当て考える様に。しかしその達磨も――哀れなものである。
もはやいない住民を守護する守護者……放置していればその達磨はこれからも守り続けるのであろう。いない住民を。誰もいない、村を。
せめてこの手で終わりを齎して――やるとしよう。
- 絡繰魂百までも完了
- GM名茶零四
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年08月30日 22時25分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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もう誰もいないのだとしても護り続ける――成程。
「一人となっても役目を守り続けるとは誠に天晴な忠義者でござるな。
尤も、もはや意味無き事となれば……哀れともいえるのでござろうが」
「平和的にどかせられたらいいんだろうけど、無理らしいね……仕方ない。力で排除するよ!」
進む先。件の達磨がいるのだと歩を進めるは『蒼海の語部』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)に『希望の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)だ。主の居ない村を護る絡繰り、ああ伝承によくある話であり実に見事と思わないでもないが――
正しき道理を見失い、誰しもに攻撃を仕掛けるというならもはや災厄に等しい。
眠らせてやるのが慈悲である。村へと近付けば、ああ向こうも気付いた様だ。
『ン、何者であるか貴様らァァァァ! 侵入者ならば死ぬがよいッ!!』
「侵入者でなくても殺しに掛かって来るのだろうに、なぁ?」
真昼の中でも達磨の瞳が妖しく輝いたのが『虚刃流開祖』源 頼々(p3p008328)にも分かった。起動する腕達。あれが情報にあった四本の腕か――絡繰りの事はよく知らんが。
「要は壊せばよいのであろう?」
「ええ、掻い潜って斬り落とすのみ。その腕、貰い受けます――!」
単純な話である、と。直上より振り落とされる一本目を頼々は『三者三刃』すずな(p3p005307)と共に躱し――尚前へ。
此れより先は近付く程に危険。遥か彼方へ振るう事も可能な腕だが、距離がある程に見切るは容易い……というのはつまり、至近に至る程にその精度が増すという事。ああしかしそんなのは望む所である。
ギリギリの視線こそすずなが欲するモノなのだ。背筋を撫でる死神の気配こそが――愛おしい。
だから進む。前へ前へ。誰も恐れず、その懐へと。
見上げれば巨大である事を更に実感する達磨のその懐へ!
「『彼』にとっての認識の上で、守るべき住人がまだいるのか、それとも何も分かっていないのか……いずれにしろ、その在り様は哀れだわ。ここで終わらせてあげましょう……!!」
すずなの剣閃が輝き、それに次ぐように『翼片の残滓』アルテミア・フィルティス(p3p001981)もまた奴を切り刻んでいく。思考の一部を極限に高め、自らの戦闘の加護とし、その片隅で思考するは――達磨への情ともいえるか。
しかし最早救えぬのであれば破壊こそ慈悲なのだろう。
その歯車をここで止める。歪なりし絡繰りの生を、ここで正す。
前衛として咲耶も。後衛たる頼々やアリア達の射線を区切らぬ様に注意しながら――
「……しかし、碌な手入れもなしに長い時間、性能を維持し続け、言葉まで解する、とは。
実に、高い性能、だ。余程の技術者の手で、作られたのだろう、な」
『神話殺しの御伽噺』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)もまた、距離を取りながら雷撃を放つ。
球体へと変化した黄金の髪の中より生み出されし電気――それを雷弾と捏ねて。
あの絡繰り達磨という存在は興味深い。中身は一体どうなっているのだろうか――まぁ、デザインセンスに関しては些か理解しがたい所があるが、それはそれ。エクスマリアにとっては実に興味を惹かれる存在をしている。其れでも勿論破壊するに躊躇はないが。
「過ちを犯し続ける門番よ――このマヤ・ハグロ、ローレットの命を受け、いざ参る!」
そして『キャプテン・マヤ』マヤ ハグロ(p3p008008)は高らかと。
己が名を告げ注意を引かんとする――ズボンのポケットから取り出したラム酒を景気づけにと飲み干して。
「村人がいなくなったこの廃村を守護せし達磨よ、貴方の役目はもう終わったのよ? 周りを見なさい! この村のどこに住民が存在するのか――分かったら大人しく攻撃を止めなさい! 攻撃を止めないと言うのなら、この私が成敗する!」
『虚言を弄すか海賊め!! この村の民を馬鹿にするというなら、その口を永遠に動かぬ様にしてくれる!』
応戦するはカトラスの刃と銃の鉛玉。達磨の刃は激しく鋭く。狂っているが故にこそか――そして『賊』と名乗ったが故にこそか――達磨はマヤへと苛烈な狙いを定めているようだ。二本の腕と刃が一斉に襲い掛かってくれば中々に捌きづらいが、集中するは狙い通りでもあって。
「やれやれこんな有り様になる前に一体どのような物語が彼奴にはあったのじゃろうかな……浪漫のあるような話じゃと友達への土産話に良いのじゃがのう」
直後『放火犯』アカツキ・アマギ(p3p008034)も前へと踏み込む。
真相定かでないというのが実に残念だ。語るべき物語の詳細を知れぬとは。
残念無念。しかしそれならそれで目の前の戦闘に集中できると。
「ほれ、その目を潰して進ぜよう――絡繰りの『目』とは如何な仕組みなのかのう?」
人の目と同様なのか、それとも何がしか熱を感知するセンサーでもあるのか。
いずれにせよ目を潰せば有利となろうと……炎を放ち、達磨への攻勢と成すのだ。
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イレギュラーズ達はほとんどの者が前へと出ていた。
距離を取ろうと奴が攻撃出来るという故の特性もあるが――何より危険なのは。
『おのれちょこまかと……! 我が子らよ、奴らの足を止めるのだ!!』
放出される子達磨達だ。戦力としては大したものではないだろうが、アレに囲まれて動きを制限されるというのが非常に懸念の点であった。今こうして自在に動けている中でも、振るう刃の重さを確かに感じている。
子達磨達によって僅かでも回避の動きを鈍らせられたらどうなるか――?
「でも、その子達磨達の情報は聞いていたわ……そう簡単に足は取らせてあげない!」
故にアルテミアは対策として。ほんの少し後退し、自らに向かってくる子達磨達を視線に捉える。
直後、抜刀。高速の一閃が紡ぎ出すは青き焔。
それはまるで飛翔する朱雀が如く――眼前を薙ぐように飛ぶ一閃が、達磨達を呑み込んで、そのまま親にも当たらんとする。子達磨達は蹴飛ばすだけでも弾ける程度の戦力。ならば纏めて穿つ攻撃で倒せばよいのだとばかりに。
「あの胴にどうやってあの腕やこの大量の子達磨達を閉まっていたのか……
全く作り手の顔が見てみたいものでござるな!」
そして。恐らくは叶わぬことであろうが、と咲耶は自問自答し。
自らに向かってくる子達磨達に絡め捕られぬ様に跳躍する――それは後衛への射線を紡ぐ為。己よりも適任な者達に彼らの始末は任すのだ。
「達磨といえば何度倒しても起き上がるもの! さぁお主はどこまで耐えられるか試してくれようぞ……真に達磨か否か、拙者の眼に見せてみよ!!」
己はとにかく親の達磨の方に専念す。家の壁を蹴り『地』として前進。
同時。彼女の手甲が業炎に染まる。それは殺意を具現化したぬばたまの業炎。
狂いし達磨よ壊れるべし――魂がなかろうとその全てを焼き尽くす一撃を奴へと。
「ああもう鬱陶しいですね、このチビ達磨達は! どいてください!」
されば、すずなの足元に纏わり付いてくる者達もいるものだ。
弾いても弾いても寄って来る連中……キリがないと、微かにイラつく様に。
故に一体を蹴飛ばし壁に直撃させて破砕すれば、跳躍。本格的に囲まれる前に動きを阻害される前にやはり大本を断つのが正解であると――その刀に五指の力を。
狙うのは特にその腕だ。機動なき複腕型となれば、その一つを落とすだけでも戦力は落ちる。
故に斬る。故に払う。故に突く――神速の連撃は空を穿ち音を置き去りに。
ただただ己が刃を振るおう。よほど頑丈な作りでも無ければ。
「――斬り落とせるでしょう。ええ、それとも頑強さを試してみますか?」
己が剣技が上回るか。
其が耐久が上回るか。
『ぬぅぅう煩わしいわ!!』
されど達磨も振るう刃を止めはしない。四つの腕が巧みに動かされ、巨腕の一撃が天井より。すずなや咲耶、前衛の者に対して特に振るわれる――蚊を払うかの様に。横に薙ぐ一閃は建物すら吹き飛ばして。
「はは……! でもね、海賊はそう簡単に倒されはしない! それにいくら数が多かろうと――雑魚が寄ってたかっても私達を倒すことはできないわ。みんなまとめて天高く舞い上がりなさい! そして――消えなさい!」
それでもと。戦うマヤの口端は吊り上がる一方だ。
身を刻む痛みが何だというのか。達磨が巨大で重く、子達磨が邪魔だからなんだというのか。そんなモノで私達を止められるものかと――カトラスで捌くように敵の攻撃を見て。
自らの足元に子達磨達が迫ってくれば先程飲み干したラム酒の瓶を放ってやる。
中央辺りに落ち、三、二の一となれば――
爆発。
多くの子達磨を纏めて吹き飛ばして、追い詰められる様に立ち回る――
「やつらに囲まれれば流石にやばいからの。このまま接近戦を挑ませてもらおうか……
なぁに危険はあれどもやりようはあるというやつじゃよ」
「達磨よ――こんなもので縛れると思うなよ。その身は必ず砕いてやる」
さればアカツキと頼々の一撃が子達磨達ごと全てを叩き潰す。
頼々の放った雷撃は地を這う蛇が如く。焼き尽くして道を切り開き、やはり見据えるのは四つの腕だ。とかく奴の攻撃源であるアレらの破壊こそが、被害の軽減にも繋がろうと刃を解き放つ。
それは空想。無であり、しかしどこかに確かに在った誰かの模倣。
存在せぬ刃の一閃。それが確かに腕の一つの根元を穿ち、その身を軋ませて。
であればよく聞こえる――アカツキの耳には奴の駆動音が。優れし五感が奴の内部の音を捉えて、まるでよく『見える』ようだ。そうであればと狙うのは子達磨達が出てくるであろう場所の特定と、出がかりを『潰す』事。
「さて、お主には耐えられるのかの?」
跳躍、放つは雷撃の一筋。
更なる援軍を放とうとしていた親達磨の内部へと届く――絶対なる衝撃。
『ぬがああああッ!!』
絶叫。達磨の腹の底より響くソレ。
鈍った動きは好機と成ろう。ならばと即座に動いたのがエクスマリアで。
「どうした、達磨。手も足も、出ない、か? ああ、無いのは足のみ、か」
再び放つ雷弾の一撃が、今度は達磨の口の中へと放られる。
伸縮自在の四本腕は厄介だが――胴体が達磨であれば目は正面のみ。それを理解しているエクスマリアは、顔の横側。視界の端に位置する所から攻撃を仕掛けたのだ。必ずどこかに死角はあろうと推察して。
「呪いの歌……絡繰りでも効くでしょ? そろそろ眠ってね……!!」
そしてアリアの紡ぎが達磨を更に刻む。
それは呪いの調べ。罵声、蔑み、暴力――数多の呪詛をこの一声に仕込んでいる。
正さねば、滅せねば。沸き立つ義務感が村を焼く紅蓮の蛇と成るが如く。
達磨の身を焼いていく。
呪いで、滅びで、蝕む様に。
『おのれおのれおのれええええ!! やらせんぞ!! やらせんぞおおお!!』
が。
それでも達磨は諦めない。
振るう刃の苛烈さは更に増す――確実に滅びが近付いているというのに、闘志が増すのか。
『この村は、己が護るのだあああ!!』
「強情な……! そういうのは素面で言わないと――誰も嬉しくないんだよ!!」
ならば終わらせてやろう。
竜巻が如く暴威を振るう達磨を。その軋みを絶対のモノとする為に。
アリアは紡ぐ。更なる呪いを。終わらせる為の――全てを。
●
高まる戦意は達磨の存在意義か故か。
この村を護らんとする意思が鈍く輝いている――成程、ならば良し。
「誰もいない村を護り続けていた守護者の本懐と言った所でしょうか。健気、と言いたいですが、ここまで狂っていれば哀れなとしか……ならば、さぁ引導を渡して差し上げましょう」
すずなにも迷いはない。この達磨の運命をここで断ち切る。
霞構えより意識を前へ。達磨の各所は傷つき、絡繰りの内部が見える程であれば斬り所はある。
往く。邪魔をせんとする子達磨達を風の如く薙いで、流れる様に解き穿ち。
「命を。その矜持、頂戴致しますッ!!」
村を護ると使命を燃やす達磨の総てを。
この刃にて斬り捨てる。
――衝撃音。紡がれたのは腕の一つの其の付け根。硬い。それでも落とすと誓ったのならば。
椿の様に、落とし仕る。
『ぐぉぉお!? 貴様アアア!!』
「余所見はいけないわね――まだ終わっちゃいないのよ!!」
「ここからが……本番だよ。主の居ない村を護る絡繰りのお話は――ここで終わるんだ!」
直後。民家の中に潜んだマヤが窓の隙間から放った銃弾がまた別の腕へと。
精密なりし射撃が確実に達磨の体力を奪っていく。一で駄目でも何発でも。
さればアリアの放つ黒きキューブが更に達磨の力を削いでいく――
「それそれどうした? 意気揚々とした割にはいきなり出鼻を挫かれておるではないか」
「安心しろ、子達磨達も後で全て残らず送ってやろう」
そこへアカツキの炎と頼々の一閃が紡がれる。
強靭なる絡繰りといえどついに限界が見えてきたという事か。ならばこの機を逃す理由なしとばかりに。子達磨の放出も随分と減っている……それはもう残量が無いのか、常々のダメージによって生み出す余力がないのか。
どちらでもよいがこうなれば後は只管に壊すのみ。
「それなら我、得意である」
穿つ。頼々の一撃がより深く。
腕を一本失い、二本目も限界近い。おのれおのれおのれ――
『村は――村は我が護るのだあああ!!』
「ッ、相変わらず強い意志ね……! 一体どこにその原動力があるのかしら……!!」
狂っている事に間違いはない。それでも何か――理由があるのではないかとアルテミアは達磨の一撃を躱しながら思考を巡らせる。民家の影に飛び込み敵の視界を断って。
「もしかして――墓地――?」
ふと。見た先にあったのは、簡素な墓地の跡だ。
全く手入れされておらず荒れ果てているが――間違いない。
もしや――あの達磨はこれを『村人』と認識して――
「だが、どうであれ、この達磨、は。破壊されねば、ならない」
エクスマリアの足元に寄ってきた子達磨達。それを彼女は一瞥し、顕現させしは光の翼。
敵のみを穿つソレが子達磨達を一掃する――やはりどこまでも耐久力のない連中だ。
辛うじて範囲外に居た者達も、蹴飛ばせば済む程度であれば彼女の変幻自在の髪が振るって飛ばす。小さい故か膂力も無く、この程度ならば己が『髪』でも十分対応出来そうだ、と。
「諸行無常……お主の過去は知らぬが、その縛られし役目もここで終わりでござる!
――しからば、御免!」
そして咲耶が往く。この哀れな達磨を解き放つ為に。
昔は人を、村を護る優秀な守護者であったのかもしれない。
しかし未来を妨げる悪鬼と成るならば――拙者は刃を振るうのみ!!
彼女の暗器が形を紡ぐ。大型の手裏剣が鋭利な刃として。
放つ一閃は――達磨の胴を抉り、そのバランスを傾けさせて。
『ぬぉぉおお! 我は、吾は……!! 村長……皆……!!』
残った腕で自重を支えんとすれば、衝撃でまた一つ腕が折れた。
内部の歯車仕掛けが壊れていく。軋みはやがて全身に。
動かぬ場所が増えていく――壊れていく場所が増えていく――
激しい破砕音が数刻。後、やがて土煙だけを残して鎮まっていく。
「――終わった、な」
「ああ。完全に沈黙した……アレはもう動かない」
やがてエクスマリアが達磨の最期を確認し、マヤがカトラスを鞘へと仕舞う。
残っているのは達磨の残骸のみ。崩落に巻き込まれ、子達磨も全て逝ったか。
「……しかしこんなの、誰が何の目的で置いたんだろうね? 用心棒?」
「達磨の言葉を全て真とすると――恐らくそうかと」
アリアがふと、達磨へと近寄りその体の一部を触りながら疑問を口にすれば。咲耶が紡ぐは――達磨の過去。用心棒として村の者が置いたのだろう、やはり。
であればとアリアは瞼を閉じて祈りを手に。
狂った存在であったと言えど、せめて最期は安らかにと……
「……もしそうなら。いいえ、きっとそうなのでしょうけれど――
だったらせめて、その魂の安寧の為に、依頼主にはお願いしておきたい事があるわね……」
そしてアルテミアは探す。達磨の、起動の核と成っていたものが無いかと。
村人達を想い。この地を護り続けていた守護者。
――きっとその魂は気高いモノであったから。
後日。
イレギュラーズの活躍によってこの地の開拓がついに始まる事となった。
工事は進められ、やがて新たな交通網が切り開かれる事であろう。
が、その道の一角にはとても不思議な『置物』が置かれる事になったそうだ。
「なんだべさこれ?」
「ああ――なんでも見守り主らしいだべよ」
道行く者が不思議に思う。その『置物』の形は。
とても大きな――達磨の形をしていたそうだ。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ!
達磨の魂は、朽ちてようやく正しい形へと練り直されたのでしょう……
ありがとうございました!!
GMコメント
■依頼達成条件
『達磨』の撃破。
■戦場
豊穣のとある廃村。人は一人もいませんので、住民に気を使う必要はありません。
時刻は昼でも夜でも選択可能とします。村の中人に後述する達磨が存在していますので、撃破してください。周辺の障害物はそこそこあります。もはや誰も住んでいない民家などが……
ただし達磨の攻撃は激しく、ともすればボロ民家なら薙ぎ払って攻撃も可能かもしれません。姿を隠す事は可能かもしれませんが、射線区切りにまで使えるかはご注意ください。
■絡繰『達磨』
幻想ならゴーレム、練達ならロボットとも言うべき存在です。
巨大な達磨が原型。全部で四本の腕を持ち、それぞれが巨大な鈍器を持っています。
この達磨非常に機動力は低い存在です。
ただし四本の腕はある程度自在に伸ばせるようで、繰り出す攻撃は『超遠距離』にまで届きます。ただし威力が高いのは自分に近ければ近いほどであり、遠距離に至る程些か威力が落ちる様です。
また、背から小さな達磨を射出してくることがあります。
この子達磨達は独自に動き、侵入者の周りを取り囲んで極小ダメージを常に与えてくるようです。能力自体は高くないので蹴飛ばすだけでも倒せますが、非常に数は多いです。
また全方位を囲まれると機動力・回避に大きなマイナス補正が掛かります。ご注意ください。
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