PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<巫蠱の劫>嘆けとて 月やは物を 思はする

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●月の光
 ぽっかりと月が浮かんでいる。無情な冷たい光を降り注がせる、真ん丸な銀の月が。
 それに照らされた女の頬には雫が零れ落ちていた。ひとつ、ふたつ。ほろほろと落ちる雫は止まることを知らず、彼女の纏う着物に透明なシミを作る。
 彼女とその夫は、決して仲が良いわけではなかった。結ばれたのも恋愛結婚ではなく見合い。元より愛など期待してはいなかったけれど、それなりに心は欲しかった。だから女は家と夫に尽くそうと思ったし、心を寄せようともした。
 ──けれど、もう無理ね。
 彼はきっと、涙を零す彼女を見ても何も思わない。それどころか憎々しいと言わんばかりの視線で彼女の心を切り刻むだけ。父と母のような恋愛結婚なら、このようにはならなかっただろうか。
(母様、父様)
 既に亡き両親を想い、女の頬に新しい雫が流れる。夜風で乾き始めていた頬を再び濡らしたそれは、不意に拭われた。
「──嗚呼、可愛い子。可哀想に……泣いているのねぇ」

 月明りは遮られ。
 蠱惑的ながら優しい瞳が女を映す。

「あなた、は」
「お母さんよぉ」
 にこりと笑う目の前の女は、決して母ではない。けれどもその言葉を聞けば不思議と『母を前にしたような安堵』が心に座り込む。かあさま、と零せば女の笑みは更に深くなった。
「ええそうよぉ。さあ、お母さんがずっと愛してあげるから、泣き止んで頂戴」
 抱きしめられ子供をあやすように背中を叩かれれば、体の力がふっと抜ける。
 違う、違うよ。この人は母様じゃないよ。心の中で叫ぶ小さな声は、注がれた甘い毒(言葉)に封じられて。
「もう、むりなの」
「ええ、ええ。お母さんに任せて。悪いことをする子はしっかり叱りつけてあげましょう」
 夫は伴侶を大切にするものなのだから、と『母』が言う。全て『母』に任せておけば良いようになるような気持ちになって、女はその体を委ねた。目を閉じて、抱きしめられて、まるでひとつになるような感覚に揺蕩って──。

「──それじゃあ、お説教の時間ねぇ」



「……それで、話って言うのは?」
「ああ」
 甘味処で団子を食べ終えた焔宮 葵へ『Blue Rose』シャルル(p3n000032)が問いかける。この男はどこからかシャルルが神使──イレギュラーズであると知り得たようで、たまたま通りがかった際に声をかけてきたのである。『大変心苦しいが、当主に助力頂きたい件がある』と。
「近頃、呪詛というものが流行っているのだ」
 もちろん流行って良いものではない。苦々しい表情を浮かべる葵だが、手の回らない規模は流行っていると表現する他ないのだろう。
 夜半の刻に妖の肉体を切り刻む。その血肉を媒介として呪詛はかけられるらしい。呪詛は呪い殺したい相手へとかかっていき、残った肉体も恨みの力によって強力な妖へと形を変える。今の京は祭りの騒ぎを乗り越えて平穏──に見せかけて、呪詛と妖により混乱へ落とされようとしていた。
「俺たち……ゼノポルタの者も含め、皆で警邏や討伐は行っている。しかし猫の手も借りたいほどというのが現状だな」
 深く重いため息を吐き出す葵。彼とて焔宮家の一員である、守るべき民を守り切れない今の状態にやきもきするのだろう。
「……まあ、伝えてはおくよ。多分依頼として出してもらうことになるけど」
「構わない」
 シャルルの言葉に葵は頷いた。彼は決して裕福とは言い難いが、神隠しによりカムイグラの地へ降り立ってから良い縁に恵まれ、とあるヤオヨロズの邸宅の警備を担っている。依頼を出すくらいの金は蓄えているらしい。
「ああ、もうひとつ」
 団子も食べ終わり、立ち上がったシャルルを葵は呼び止めた。シャルルは怪訝そうな顔で振り返る。
「これは極少数であるようだが……何人か、行方不明者が出ている。もしも見つけたら保護してもらえないか」
「行方不明者、ね」
 昨今の呪詛騒ぎと無関係とも思えない、しかし完全に関係があるとも言い難い内容だと言う葵。シャルルは覚えておこうと頷いた。

GMコメント

●成功条件
 闇狐の討伐

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。嘘はありませんが不明点もあります。

●エネミー
・闇狐×5
 黒い闇が狐の形を象ったようなモノ。『忌』と呼ばれる呪詛の発動体。けれどもそれは何者かの影響を受け、変質しているようです。実態はありますが半透明で、武器を振るえば対峙することが可能です。
 彼らは総じて命中に長けており、【火炎】【ショック】【狂気】などのBSをかけてきます。反応はそこまででもありません。
 依頼に失敗すれば闇狐は呪詛の向けられたヤオヨロズへと向かっていき、その使命を果たすでしょう。

●フィールド
 カムイグラの京、高天京の一角。夜の人気がない道です。月明かりは心もとないため、必要であれば光源を確保してください。
 大通りではないため横に全員が広がることはできません。

●行方不明者
 焔宮 鳴さんの関係者『焔宮 葵』が掴んだ情報です。
 昨今流行している呪詛ほどの規模ではないが、ちらほらと行方不明者が京で出ています。いずれも何かしらトラブルを抱えた者であり、失踪と時期を同じくして行方不明者から呪詛が放たれているという報告があります。

●ご挨拶
 愁と申します。相談6日です、ご注意を。
 呪詛が流行るってパワーワードだなぁと思います。どう考えてもヤバイので協力してあげて下さい。
 今回関係者は別の現場に向かっており、友軍としては参戦しません。また、『●月の光』は今回PCが知り得ない情報となっています。PLとして把握だけしておいて下さい。
 それでは、ご縁がございましたらよろしくお願い致します。

  • <巫蠱の劫>嘆けとて 月やは物を 思はする完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年08月27日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

夢見 ルル家(p3p000016)
夢見大名
焔宮 鳴(p3p000246)
救世の炎
如月=紅牙=咲耶(p3p006128)
夜砕き
彼岸会 空観(p3p007169)
鹿ノ子(p3p007279)
琥珀のとなり
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
小金井・正純(p3p008000)
ただの女
ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)
天下無双の狩人

リプレイ


 月明かりが仄かに照らす高天京。その一角で8名のイレギュラーズが佇んでいた。昨今で京を騒がせる呪詛『忌』の退治である。
「呪詛が流行りものとなってしまうのは、世も末でござるなぁ……」
「お祭りの事件以来、中々にガタガタですよね」
 『蒼海の語部』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)の言葉に頷く『不揃いな星辰』夢見 ルル家(p3p000016)は、カムイグラと海洋の合同祭事を思い出す。来年海洋で行われていた夏祭りだが、今年はカムイグラとの交友を深めたい意図もありこちらで開催されたのだ。祭りが賑わう一方で、突如人が暴れ出す、肉腫(ガイアキャンサー)の出現など事件も数多く起こった。イレギュラーズも混ざって対処に走ったが、そちらが収まった途端にこれである。
「何時の時代、どこの世界も呪いは無くならないもんだな」
 『弓使い』ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)は視線を巡らせながらも顔を顰める。呪いというものに詳しくはないが、そんな凡人でも『ヤバい』ということは知っているのだ。
 けれどこれだけ皆が何かしらの思いを抱え、呪いを実行しようとするという今の状況は異常──というか、何者かの思惑が絡んでいるように思えて仕方がない。人を破滅させんとする様子は魔種のようにも思えるが、果てさて。迂闊な手出しもなかなか難しい。
 ルル家が腰につけたカンテラと『黒犬短刃』鹿ノ子(p3p007279)のランプが辺りを照らすが、空は暗く星が瞬く。満点の星空でなくてよかった、と安堵しながら『星域の観測者』小金井・正純(p3p008000)は空を見上げていた。
 夜──それは星が瞬く時間。星をより感じられる時間。そして正純の体が痛む時間だ。しかしこの程度であれば戦闘中も十分動けるだろう。
「行方不明者も出ているんでしたっけ? 神隠し騒ぎみたいな話って何処にでもあるんですね……」
 『私の航海誌』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)は鴉のファミリアーを召喚しながら、又聞きで聞いた話を思い出す。どうして失踪するのかはわからないが、もしかしたら以前起こっていた神隠しと似た状況なのかもしれない。
「なかなかこの国も落ち着かないですね」
 呪詛だけでなく、失踪事件も混じっているのかと正純は眉根を寄せる。先を読んで立ち回れたなら被害は少ないのだろうが、あいにくそのような力は持ち合わせていない。
「後手後手ではありますが……まずは事件を潰していきましょう」
「ええ。連鎖は断ち切らねばなりません」
 先回りできないもどかしさはルル家も同じ。けれどまず目の前のことからと『帰心人心』彼岸会 無量(p3p007169)も頷く。
「民を苦しめる呪詛を赦さないの。絶対に守ってみせるの!」
 焔宮 葵──焔宮の者からの頼みとあって一も二もなく依頼を受けた『救世の炎』焔宮 鳴(p3p000246)は確固たる意志を炎に宿す。光源ともなるそれは鳴の思いを受けて苛烈に、けれど暖かな色で燃えた。
(古来、呪詛呪術は権力者や疎ましい政敵を殺すための手段でした)
 国の中枢に関わる者の用いる手段だったと知識を掘り起こす無量。それが民全体へ広がっているということは、この京は──。
「来ますよ!」
 ファミリアー越しに忌を視認したウィズィが叫ぶ。あたりに緊張感が走った。月明かりでかすかに動きが見える程度だが、その図体は狼のように大きい。それらは一直線にイレギュラーズたちのいる通りを駆け抜け、その先へ向かおうとしているようだ。
「ったく、鳴さんみたいな可愛い狐なら大歓迎なんだけどな!」
 そう叫びながらウィズィは身を躍らせるけれど、鴉の視界から見たそれは──なんとも、可愛らしい見た目とは程遠い。
「さあ、Step on it!! さっさと倒して人探ししましょう!」
 眼前に闇色の大狐たちが現れるも、ウィズィは怯まない。その後方より無量の額にある第3の目が狐の1体を見据える。
「私が相手致しましょう」
 静かに、しかしよく響く声が通る。その傍らでひと振りの炎の刀が顕現した。
「『呪詛の炎』を操る者として──私が『民を護る呪詛』をお見せしましょう!」
 実態を持つひと振りと、炎で形取られたひと振り。携え斬撃を放つのは焔宮家当主・鳴。いつもの無邪気な様子を潜め、当主としての顔を見せた彼女は鋭い斬撃で呪詛を断たんと迎え撃つ。炎の明るさが辺りを照らし、同時に影を作った。
「悪いがここから先へは通さぬでござるよ」
 その影を縫うように走り抜け、狐たちの死角から咲耶は急所を狙う。狐は悲鳴をあげるようになどを震わせたが、完全に実態ではない狐たちから声は出ないようだ。
「ええ。このまま通してしまえば……呪詛が広がれば徒に人々の心乱れましょう」
 正純の手にした神弓から、眩い一矢が放たれる。山谷に光るそれはまるで星のように瞬いて、狐たちへ不幸をもたらすのだ。追いかけるように接敵した鹿ノ子はツインテールを靡かせ刀を振るう。上手くハマった一撃に、しかし闇狐は大した風もなさげであったが、鹿ノ子はにやりと笑った。
「耐えていれば凌げると思ったら大間違いッスよ」
 一撃。もう一撃。繰り返していけば増えていく。塵も積もれば山となり、傷も嵩めば致命傷だ。
「皆、射線を開けてくれ!」
 後方より響いたミヅハの言葉に、仲間たちがとっさに両脇の塀ギリギリまで立ち退く。直後、放たれた魔砲が狐たちを飲み込んだ。
 しかし──。
「ま、そんな易々とやられないッスよね」
 平然と立っている狐たちに鹿ノ子は呟く。その程度は了承済み、むしろこの程度で倒れてしまったらイレギュラーズは8人もいらなかったことになる。
 狐たちはウィズィへ、そして内1体は無量へと爪や炎で襲いかかる。鋭い動きは確実に2人の体力と余裕を削いでいくが、こちらとてそこまでヤワではない。しかし不意に1体の狐が無理から外れた。
「もう注意が? いや、」
 そう見せかけていたのか、とウィズィは直感する。呪詛の元となった妖とどれだけ似ているのかわからないが、この忌は多少知性がありそうである。
 ウィズィと無量の手をすり抜けた狐は、しかし他のイレギュラーズを目障りに思ったらしい。1体のみで戦線を抜けるのではなく、その力で持って排除にかかる。あたりに闇色の炎が吹きこぼれ、イレギュラーズたちの肌を舐めるように燃やした。その只中でルル家は銃を構える。
「いかなる理由で湧いたのかはわかりませんが、調伏させて頂きます!」
 直後、発砲音と狐に迫る弾幕。なんとしても食い止めるという鋼の意志を表すかのよう。
(呪詛を行った者も、『何もなければ』しなかったかもしれません)
 流行るということは誰かが広めているのだ。それを良いように利用したい者かもしれないし、只々悪いことのために唆したのかもしれない。いずれにせよ、断じて許されないことだ。
 肌を焼かれ、人によっては残るに熱に苛まれ続ける中、鳴が意識を集中させる。発動するのは呪術の1つでありながら、他とは一線を画するもの。
(確かに呪は誰かを傷つけ、苦しめるモノかもしれない)
 その在り方の方が正しいのかもしれない。今の状況こそが呪としての在り方なのかもしれない。けれど。
「──誰かを護ることだって、出来るの!」
 放たれたそれは魂を癒し、肉体を癒す。攻撃を転用させたそれは鳴の力に応じて味方を立ち上がらせる。直後、無量が今度こそ敵の視線を取った。
「皆、行くよ!」
 ウィズィの握られた拳が闇を突き抜け、狐の弱点──核にあたる部分に当たった感触を受ける。ルル家の弾幕が消えた直後を狙った咲夜の暗殺術は的確に、慈悲なくその念を霧散させた。休む間もなく猛攻を仕掛ける間、先ほどとは打って変わって鹿ノ子が艶やかに舞う。風を切る軽やかさはまるで蝶の様でありながら、同時に刃を得た嵐のようでもある。
「僕の連撃から逃れられるものなら逃れてみるッス!」
 いくら的確に狙ってこようとも、こちらの攻撃を躱せなければ倒れるのは必至。そのカウントダウンを早めるように鹿ノ子は攻撃を重ねていった。彼女を、そして仲間たちを避けるよう器用に正純は鋼の驟雨を降らせる。標的は段々と移り変わり、最後は無量の引き付けていた1匹へ。
 無量は敵と相対し、攻撃を重ねながらその様子を観察していた。『忌』と呼ばれる呪詛であるが、他の場所で見られる呪獣とは何が違うのだろうか、と。
(呪獣は呪われた対象……ならば、忌は対象に名ならかの感情や危害を加える者の総称?)
 考えながら、握った刀は敵へと振りながら無量の頭はその予想に否をはじきだす。仲間たちという援軍を得て一気に攻勢へ寄りながら、無量は命を削られる狐を見た。
(恐らく表裏一体。呪獣が生まれ、忌を走らせまた呪獣が生まれる?)
 もし、もしもそうなのだとしたら。疫病か、それよりも性質が悪い。加えて他のモノよりどこか異なる雰囲気を持つのは何かしらの手が加えられたか。
 その実態も、元の姿も知らない今。無量はその刀を振るいながら、それが倒れて霧散するまでつぶさに観察する他なかった。



 人の呪わば穴二つ──とは言うが、イレギュラーズたちの倒した闇狐は霧散したきり怨念がどこかへ戻っていくような気配もなく。追いかけたイレギュラーズは顔を見合わせた。
「戻らなかった……いや、戻れなかったのでござろうか?」
 咲耶は散って行ったその場所を訝しげに見つめるが、なくなってしまったものが応えることはない。行方不明者の件もあり、手分けをして探してみようとイレギュラーズは2人1組に分かれて捜索を始めた。
 とは言え、先の戦いで傷を負った者もいる。ウィズィと無量は近くの手頃な場所に腰を下ろし、そこからできる限りの調査と考察を行うこととした。
「矢張り、何処か妙ですね」
 情報整理していた無量の言葉に、ファミリアーへ意識を向けていたウィズィは首を傾げる。
「妙って、何が?」
 無量曰く、この状況はそもそもありえない事態なのではないか、ということらしい。京というものは、まじないから京全体を守護するために風水を敷くことが一般的。『呪詛が流行る』などという現象は何者か──呪術師的な存在──が手を引いているのではないか、という考えのようだった。
「その呪術師が余程腕の立つ者なのか、もしくは……」
 言い淀んだ無量は小さく頭を振り、そちらはどうですかとウィズィへ話を振る。彼女は小さく肩を竦めて見せた。
 戦った場には闇狐の痕跡、香りが薄れつつあるが残っている。それをファミリアーに嗅がせ、近い匂いを探させているのだが結果は芳しくない。
「途中で途切れてるみたい。時間も経ってるからかな?」
 離れるほどその匂いは薄れゆく。感覚共有したファミリアーは、今や何処へ向かったら良いか分からないようだった。多少彷徨ったものの、大きく術者から距離を取れないこともあり踵を返してくる。せめて、とウィズィは匂いの途切れた場所を記憶した。
「不幸な星を感じ取ればいいのでしょうかね」
 空を見上げる正純は、痛みと引き換えに星の存在をより濃く感じる。無数の中からそれを掬い上げられるなら、この事態も解決するのだろうか。
 けれども今、この京では呪詛が流行っている。不幸を抱える星はまたいくつも存在しており──。
「た、たくさん引っかかるッス……」
 鹿ノ子の人助けセンサーも多くの存在を感じとる。いやしかし、今のところはこれらしか手掛かりになるものはないのだ。
「順番にあたっていくしかないッスね」
「ええ。行方不明者が見つかると良いのですが」
 1人は危険だから、と共に行動する2人は真夜中の訪問を詫びながら、時にこそっと覗いて観察しながら助けを求める人を探す。その間には全く関係のない願いだったり、果てには事前に呪詛を防ぐこともできたりしたのだが──件の行方不明者は見つからない。
 ミヅハが深い傷を負っていることもあり、咲耶はルル家&鳴ペアに混ぜてもらう。応急処置をして近くで休んでいると言う彼の容体を気にしつつも、咲耶は視線を巡らせた。
 鳴の纏う炎が道を照らすが、そこにあの闇狐らしき足跡はない。呪詛とは須らく想いの具現であるため、見えて攻撃することができたとしてもそこに居たのは『念』であると言うことだろうか。
(あれほどの呪詛、術者本人もただでは済むまい)
 被害者も加害者も生きているのであればやり直すことができる。けれど、もしかしたら既に──。
「探すと言っても、手掛かりが少ないのですよね……」
「あの呪詛が向かった方向を調べてみるとか……なの?」
 小首を傾げた鳴にルル家は頷く。もしくは血肉の臭い、そして儀式を行った場所からの足跡か。流石に加害者が足跡のつかない──人ならざるモノとも思えない。
 周囲を注意深く観察しながら歩いていたルル家は、ふと生臭い香りに鼻をひくつかせる。この先からしているようだ。鳴と咲耶を先導し、ルル家はそっと1軒の家を伺う。
「人気……なさそうなの」
「無人なのでしょうか」
 お邪魔します、とひと言声をかけて敷地へ踏み入る3人。そこまでくれば微かな臭気は常人にも感じ取れる。咲耶は庭の隅に放られているナニかを見つけ、2人を呼んだ。
「……なんと、酷い」
 切り裂かれた小さき妖は呪詛を破られたことも関係しているのか──完全に息絶えてしまっている。冥福を祈りつつも視線を巡らせるが、3人以外の足跡は見つからない。鳴の耳にも不自然な音は聞こえて来ないようだった。
「ここまででしょうね」
 ルル家が捜査の切り上げを告げる。元より手掛かりらしい手掛かりもないのだ、これ以上どうしようもない。
「もう、何もないといいけど……なの」
 鳴は視線を妖の亡骸へ落とす。妖の骸、その周りに漂う残滓はどこか──懐かしいような、気がした。

成否

成功

MVP

焔宮 鳴(p3p000246)
救世の炎

状態異常

ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)[重傷]
私の航海誌
ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)[重傷]
天下無双の狩人

あとがき

 お疲れ様でした、イレギュラーズ。
 行方不明者は見つかりませんでしたが、鳴さんは何かを感じたようですね。
 その正体はいつかわかる──かも、しれません。

 MVPは今回癒し手として仲間を支えた貴女へ。

 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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