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シナリオ詳細

臥者は髑髏の顔をして

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●空想とは事実を知らぬ故にあり
 髑髏の怪異は多々あれど、山の如き威容を持つそれが俎上にあがる事例といったら片手に数える程であろう。
 人伝に広がった怪異見聞とは異なり、それは掌編のたぐいにのみ現れる異質のそれであった。それが尤もらしい理由と絵に紐付けられ、恰(あたか)も当然の存在として語られるのにそう時間はかからない。
 世界はいつのまにかそれが存在すると信じ、それは多くの無念の拠り所となった。……要は、無念や恩讐、雑念といったものが豊穣郷に『それ』を生み出してしまったということになる。
「……って言われても分かんねえよなあ、どう見てもオレの世界でいう『がしゃどくろ』だぜ、アレ」
「嘘が誠になることはまま在る話だ。……それにあれは、由来が違うからな」
 新道 風牙 (p3p005012)は元の世界で聞き知ったその怪異について思い出す。が、それが創作であり、ついぞ『魔』として見た事も無かったことも覚えていた。他方、赤羽・大地 (p3p004151)はそれが生まれた経緯と『物語』にこそ価値があると感じる派だ。それに、成り立ちが違うものがそこにいる、というのはどうにも興奮する。
「ああ、風牙の呼び名とは微妙に違う……あれは『臥者の髑髏』、無念に散っていった大地に臥したる者らが寄り集まってあの形を取った物だと聞いている」
「突き詰めるとあたしの同類……同類? まあ似た相手なのかなあ。死者だし」
 ベネディクト=レベンディス=マナガルム (p3p008160)が依頼書を読むと、バスティス・ナイア (p3p008666)は成程と1人納得したように頷いた。随分と数奇な縁もあったものだ。
「じゃあアレって全部骸骨が集まってできたの!? 花丸ちゃんすごく気になるよ!」
「……つまり、本体を叩いただけで倒しましたとはいかず、こぼれ落ちた骸骨が動く可能性もある、と」
 笹木 花丸 (p3p008689)は好奇心に染まったぎらつく目で対象を見るが、マルク・シリング (p3p001309)は彼女とベネディクトの言葉に思わず眉をひそめた。
 巨大なだけの敵、何かを永続的に生み出すたぐいの敵は数多く見てきた。が、傷つくほどに厄介さを増すような敵はあまり戦った例がない。此方の損耗と彼方の増幅が反比例するなんて、回復手にとって鬼門もいいところである。
「ですが、本体を叩けばその力を失っていくということでもありますね。……なんとかなるでしょう、私達なら」
「ああ、倒せない敵じゃない。強敵だが、同時に哀しい相手でもある。供養してやらねば」
 リースリット・エウリア・ファーレル (p3p001984)の確信に似た言葉に応じたベネディクトは、迫り来る臥者の髑髏をにらみ付ける。ひゅうひゅうと吹く風と響く空洞音は、髑髏達の悲鳴のようでもあり――。

GMコメント

 昭和時代の創作だったりイメージ画は全く関係ない江戸の読本(しかも未完→引き継ぎの合作!)をモチーフにしたものだそうですが、まあ雰囲気が出れば良いのさ。
 『臥者』に反応したヤツ正座な。

●成功条件
 『臥者の髑髏』撃破
 『髑髏兵』の殲滅

●臥者の髑髏
 天を衝くかのような威容を誇る(が、上半身のみ)巨大な髑髏の怪異。城跡を護るように立ちはだかっている。基本的に移動はしない。
 HPや抵抗が高く、攻撃は全て『範』が伴う。
 HPの減少率に応じて『髑髏兵』を生み出し、自信のサイズは小さくなっていく(総HPの減少、反応回避上昇。50%以下で『範』消滅)。
 拳の叩き付けは痺れ、足止が伴い、手の握り潰し攻撃は呪縛、致命などが伴う。
 その他、攻撃手段はそれなりに多く、中距離までをカバー。

●髑髏兵
 臥者の髑髏から生み出される(崩れた破片が動き出す)髑髏達。
 足が速く(機動5)、積極的にイレギュラーズを足止めにかかり、集団での集中攻撃を活用する。
 攻撃手段に乏しいが、全ての攻撃に『呪い』を伴う。

●戦場
 豊穣北部、城跡前。
 髑髏は基本的に、城跡の城門(推定)前を徹底的に護ろうとします。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 臥者は髑髏の顔をして完了
  • GM名ふみの
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年08月17日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

マルク・シリング(p3p001309)
軍師
リースリット・エウリア・F=フィッツバルディ(p3p001984)
紅炎の勇者
赤羽・大地(p3p004151)
彼岸と此岸の魔術師
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
リンディス=クァドラータ(p3p007979)
ただの人のように
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
バスティス・ナイア(p3p008666)
猫神様の気まぐれ
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華

リプレイ


「どこから見ても『がしゃどくろ』だよなぁ……まあ、人間だって色んな世界にいるんだ。その骨の塊だって色んな世界にいてもおかしくないよな!」
「さて、俺の世界だと、がしゃどくろというのは……まあ、今話してもしょうがないか」
 『翡翠に輝く』新道 風牙(p3p005012)は遠くに見える巨大な髑髏の姿を、目をすがめて見つめる。『双色クリムゾン』赤羽・大地(p3p004151)は元の世界で培った知識を脳裏から引っ張り出してその姿を思い返すが、伝承に聞く姿と大差ないその姿には驚くばかりだ。説明すらも無駄であろう、と思うほどに。
「死を以てしても現世に留まり何かを護り続けようっていうのは、見上げた気概……って言えばいいんだろうね」
 『猫神様の気まぐれ』バスティス・ナイア(p3p008666)は、髑髏の背後に見え隠れする廃墟や瓦礫を見て感慨を覚えていた。総てが死の国にある自分の世界とは違う、現世に残したものと繋がろうとする姿は哀しくもあり、いじましくもある。
「要するに、白骨を媒体としたアンデットの集合体……名称や形は文化によって様々だけれど、似たような存在はあちらこちらにあるものなのですね」
「あの大きさ、何人分の無念が集まったものなんだろうね」
 明確な呼び名はさておき、定義付けるだけの神秘はありふれている。『終焉語り』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)やマルク・シリング(p3p001309)らがそれに付ける明確な呼び名を持たぬとて、仲間達の言葉から、そしてその行動から、どのような存在なのかは容易に理解が出来るというものだ。
「臥者の髑髏……臥者……ガシャ? うっ、頭がっ!?」
「大丈夫か、花丸? そんなに名の知れた類いなのか?!」
「アー、気にすることじゃなイ。多分ナ」
 『新たな可能性』笹木 花丸(p3p008689)が髑髏の名を反芻し目を剥いた様子に、『Black wolf = Acting Baron』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)は驚き、問いかける。が、赤羽は呆れたような調子で(そして風牙も察したような表情で)その様子を見ていた。……彼女なりの冗談である。
「――さて、冗談はこの辺にしておこっか。大丈夫、花丸ちゃん達なら勝てるよ!」
「物語の、どこかの別れのその先で、無念を抱いてここにいるというのならば。終わりを与えましょう」
 花丸が気合いを入れ直すと、『妖精譚の記録者』リンディス=クァドラータ(p3p007979)も応じるように言葉を紡ぐ。
 哀しい想いから生まれ、この世から去る事が出来なくなった存在達。彼等の想いを汲んで、その上で打倒せねばならぬのは哀しいことだが、致し方の無い事実でもあり。
「この地に集いし、幾多の魂よ。今宵、鎮めさせて貰う」
「人の世に仇為す『魔』を討ち、人々の平穏を護る! それがオレの使命!」
 ベネディクトと風牙、そして仲間達はゆっくりと臥者の髑髏と距離を詰め、間合いギリギリで足を止めた。僅かに空気が変わり――そして、魔力を帯びたリンディスとベネディクトがまず、駆け出した。


 ベネディクトが槍を掲げ、挑発的に振るってみせる。己を狙えと言わんばかりのその動きは、髑髏の視界に否応なく留まる……が、それは彼をあえて無視し、リンディスへと手を伸ばし、握り潰すべく迫る。
「ぶつけて来てください、あなたたちの抱えているものを。私は全て、全て受け止めて書き記させていただきます!」
「リンディス! ……耐えてくれ、頼む!」
 握り込まれた手を押しとどめ、辛くも脱出したリンディスの身についた傷は浅からぬもの。が、今の彼女は簡単に倒れるほどヤワではない。傷も、攻撃の規模ほど深いようにはとても見えない。
「これでも、喰らえッ!」
「さっさと地に伏しテ、灰に還りナ」
 風牙による斬撃と赤羽の放った魔術は、ともに髑髏の手を強かに打ち据える。脆く崩れ落ちた骨は僅かながら、新たな生物であるかのように蠢くそれらは、得体の知れない不気味さを思わせる。
「回復の為に高めた力……今は弔いのために、これを撃つ。だから、当たれ……っ!」
「守るものは既に亡いのでしょう。でしたら、正しく眠らせて差し上げなければ」
 続けざまにマルクとリースリットの放った凄まじい魔力が迸り、髑髏の手を貫く。骨が零れ落ち、欠損部を補うように胴から骨がざわざわと伸び上がる。地面に転がった骨達は水を得た魚よろしく組み上がっていき、瞬く間に6対もの髑髏へと変じた。――想定より増殖が早い。
「花丸ちゃんがみんなを受け止めるよっ! さあ、かかってきなさい!!」
 が、花丸は驚きもせず、動揺も見せずに堂々と名乗り上げて見せた。小型の髑髏達は彼女を見て即座に狙いを定め、一気に群がりに行く。必然、彼女の身のこなしを持ってしても幾度かは髑髏の指が届き、彼女の身を削り取っていく。
「癒し支えるがあたしの役目、ちょっと気合入れようかな!」
「私への治療は不要です……っ、どうか、そちらの皆さんの治療の優先を!」
 バスティアはリンディスの傷の深さを見て、そちらを優先すべきか、と逡巡した。しかし、本人から即座に否定されれば必然、その癒やしの力は花丸へと向けられる。
 やせ我慢の類いでは断じてない。彼女は、傷つき倒れようと立ち上がる実力があらばこそ、治療は不要と断言したのである。
「治療に回せる精神力も有限だ、可能な限り、敵は俺達が引き受ける。……行くぞ、臥者の髑髏!」
 ベネディクトは槍を構え直し、迫る髑髏の拳を正面から受け止める。巨大なそれの圧力は半端ではない。だが、逃げない。2本の槍を交差させて受け止めた拳をかちあげ、仲間達が狙い易い位置へと誘導する。
「花丸、耐えられるな?」
「今、そこの手合いを排除します……!」
 大地が聖なる光を、リースリットが電撃を放ち、花丸の周囲に群れた髑髏達を蹴散らしていく。花丸自身も、仲間の援護で弱った個体に強かに拳を叩き付けて吹き飛ばし、順当に数を減らしていく。
「髑髏は十分減らしたよ、風牙さん!」
「っしゃぁ、どんどん行くぜ!」
 マルクは行動に出来た寸暇の余裕を活かし、戦局を仲間に伝え、己の次の行動へと繋いでいく。
 風牙は押せ押せの状況に特に強く――然るに、僅かでも余裕があらば、士気を保つにはソレで十分。
 切り裂く刃、魔術、そして鬨の声。イレギュラーズの猛攻は確実に臥者の髑髏の巨躯を削り取っていき、徐々に、確実にその姿は縮んでいく。
 ……が、それと同時に異変も起きた。
 生み出される髑髏達が小型化し、同程度の攻撃を受けた際にあからさまに数を増やしたのである。
「小さい連中の攻撃は危険度が少ないけど、デカブツが動き出したら面倒だよねぇ……」
「数を増やした分、耐久は落ちているみたいですが攻撃力が変わっていない様子なのが……なんとも」
 バスティアと、とっさに治癒に回ったリースリットが歯がみする。殲滅速度はそう変わらないが、打倒するまでに花丸や、撃ち漏らした分の髑髏兵から他の面々が受ける傷は明らかに増えた。
 不幸中の幸いだったのは髑髏兵単体で仕掛けてくる不調はそう激しくないこと、ぐらいだが……。
「……いよいよもってそうも言ってられないようだ」
「それが貴方の物語だというのなら、私は記し続けましょう」
 ベネディクトとリンディスは、上半身のみのままゆっくりと前進しようとする臥者の髑髏に戦慄を覚えた。移動速度は速くはないが、確実に前に出ようと動いている。
 いよいよもって――それらは自分の存在意義をも見失ったというのだろうか。
「自分を見失うとハ、哀れだナ……そこまでこの地を守り抜いたんだ、さぞかし勇猛な人々だったんだろうけど」
「せめて、僕達の力で苦しめずに倒しましょう」
 大地は赤羽の皮肉を引き受け、髑髏達の悲哀と護り続けた日々とを思い、憂いを見せる。マルクは動き出した髑髏から目を背けず、最後まで倒しきることを強く誓う。そうすることでしか、死者に報いることができないのだから。
 ――戦局は加速し、戦闘は激化する。
 大なり小なり負傷を重ねたイレギュラーズはしかし、それでも気力を失わなかった。今ここで最も苦しんでいるのは、髑髏達だと分かっているゆえに。


「噛み砕け、黒顎──!」
「オ――ォォォ!!」
 ベネディクトは直死の一撃を叩き込み、髑髏と、生まれた兵達の波状攻撃を真正面から受け止める。治癒を受け付けぬ呪いを受けた彼に対し、リンディスが即座に治療に回る。
「魔力の消費は抑えているはずですが……まだ戦えますか?」
「聞くなよ、野暮な話だ」
 2人は軽口を叩き合い、しかしその猛攻を受け止め、反撃し、重ねていく傷に一顧だにすることはない。
 仲間の治療も、援護も、そして髑髏兵の排除も十二分に期待できると理解しているからだ。
「兵隊の数が増えてきてるよ! このままじゃ、ちょっとバラけるかも……!」
「狙いは私達です! 状況が変わった今、散開して戦う理由もありません……2人を残して一箇所に纏まりましょう!」
 バスティアが増え続ける髑髏達の動きを見て呻くが、即座にリースリットが号令をかける。思えば、後方での散会陣形は臥者の髑髏が『そのまま』前進した際の次善の策だ。
 規模が小さい状態で前に出るというなら、互いにカバーできない距離で戦う方が余程危険だ。
「あいつらの攻撃が集まったら、治療してくれるんだろ? 頼りにしてるぜ、戦友!」
「勿論! その分、死に損なった人たちはちゃんと倒しきってよね!」
 風牙はバスティアと軽口を叩き合い、近付く髑髏兵を蹴散らしていく。マルクとリースリットの放つ術式は激しさを増し、ギリギリの魔力量の中で確実に髑髏達の体力を削りとっていく。
「花丸ちゃんは……まだ倒れないよ! 来るなら、こっちだよ!」
 花丸は、数を増やし勢いを増す髑髏兵を前にしても、自らへと引き付けることをやめなかった。仲間が一箇所に集まったとて、癒やしは有限。なれば自らが猛攻を受け止めるべきだ、と固い決意のもと、声を張った。
 増えれば仲間が倒す。発生源は、『2人が』いずれ倒す。
 仲間への信頼あらばこそ、己の身を差し出せる。
「自分を保てないほどに疲れたなら、もう戦わなくていい。無理に戦いを続けなくていいんだ」
 だから、無理をするんじゃない。ベネディクトはそう告げながら、臥者の髑髏を正面から受け止め続けた。退かず、そして逃がさず、仲間達へとたどり着かせることはしない。
 そして、せめて。彼等が守ろうとした場所で、その怨念を終わらせたいと。
 カムイグラの道理を彼はしらない。知らないながらも、最後まで前で止め続けることを誓ったのだ。
「まだ生きたかった、守りたいものがあった。……嘆きのような攻撃から伝わる想いがありました」
 髑髏達の必死さは、翻って思い残した情念の重さでもある、とリンディスは気付いている。
 何度も何度も受け止め、その情念の強さは恐らく、生き延びた誰かの心にも残っているのだろう――根拠はないが、そう確信していた。
「なァ、もういいだろウ」
 赤羽は聖なる光で髑髏兵を蹴散らしながら、皮肉の中に一片の哀れみを織り交ぜる。
「十分戦っタ。十分ダ。……よくやった、それでいいじゃないか」
「お勤めおつかれさん。あんたたちは充分使命を果たした。……そろそろ休もう?」
 大地と、そして風牙の労るような言葉、そしてそれに合わせ、彼等の勇猛をたたえるように放たれる、おのおのの猛攻。
 臥者の髑髏が、がらがらと崩れていく。その破片達は、再び動き出すことはもうない。
 髑髏兵達は、それでも動いた。戦った。だが、新たな発生が見込めなければ消えるだけの運命だ。
「貴方達の居た過去は、誰かの下で。また、刃を交えた私たちの物語の中で――未来へ紡がれる礎となります」
「何人分の霊を弔えばいいのか分からないけれど……どうか安らかに」
 リンディスとマルクが祈りを捧げ、他の面々も(この国の作法は知らぬなりに)それぞれのやり方で、髑髏達を弔った。
「君達の無念、君達の心残り、それは何だったのかな? ……もしかして、あの城跡?」
 バスティアの問いかけに、髑髏に宿っていた霊魂が肯定を返す。もう戻らない日々と、繁栄の跡。
 それを今、直してやることも慈しむ事も出来はしない。
 ……いつの日か、彼等の献身が人々の心を打つ日がくるならば。一同の誰もが、そう願ってならない。

成否

成功

MVP

リンディス=クァドラータ(p3p007979)
ただの人のように

状態異常

なし

あとがき

 彼等は護るべきものを失ったけれど、誇りを失うことなく弔われた、ということでしょう。

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