PandoraPartyProject

シナリオ詳細

再現性東京2010:暗がりをのぞいて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●とんねるのなか

 ──ねえ、知ってる?
 ──あのトンネル、人を吸い込んじゃうんだって。

 そう噂されるのは再現性東京2010街という、特異運命座標であることを拒んだ者たちが作り上げた聖域。その、片隅。彼らが生きてきたこれまでの世界を限りなく再現しようとした『ちいさなせかい』の中だ。
 学園からの帰り道。シャッター通りを抜けて、目が痛くなる蛍光色のゲームセンター前を通り過ぎ、住宅街へ行く途中に件のトンネルは存在する。
 トンネルとは言っても開通しているわけではなく、事故によってトンネルが塞がってしまっている。そのように『再現』しているのだ。自分の住んでいた地域にはこんなトンネルがあったのだと、練達にきた誰かが言っていたから。
 そんな事故など実際は起こってもおらず、意図的に崩してそう見せているに過ぎない。それでもやはり不気味なものは不気味で、まっとうな人間であれば滅多に近づかないのが普通だ。調子に乗った学生だとかが所謂心霊スポット巡りとか肝試しの気分で出入りするくらいである。

 だから、皆知らない。
「いやだ、いやだ母ちゃん……!」

 そこで本当に人がいなくなっていることを。
「なんだよ、あれ……っ」

 再現をしているだけなのだから、本当に怪異など起こるはずもない。
「にげ、られな、」

 この街は安全で平和でいつも通りに、1日というルーティンを繰り返している。
「──!!!!」


 そう──皆、頑なにそう思っているのだ。


●カフェ・ローレット
 学園近くにあるお洒落なカフェ。それは再現性東京より外から呼ばれたイレギュラーズの集う場所でもある。そこでたむろしていたイレギュラーズは、ピロンと手元の端末が鳴ったことに気づく。
『夜妖<ヨル>発生
 人を吸い込むトンネルにて』
 指令だ。さっと概要を確認したイレギュラーズは立ち上がり、トレーを片付けると店から出た。空を見上げれば少しばかり赤が混じり始めただろうかといったところ。早く向かわなければ到着する頃には真っ暗かもしれない。
 イレギュラーズたちが練達にある再現性東京2010街、その希望ヶ浜学園に招致されたのはほんの少し前の事。学生か教職員として学園に所属することとなったイレギュラーズであるが、その理由は学校生活を謳歌してほしいから──では勿論ない。
 再現性東京2010街では怪異が発生している。日常を壊す非日常が生まれているのだ。不変を良しとするこの街では怪異など認めたくもないのだろうが、認めなければ日常が破壊される。それを防ぐため、イレギュラーズたちは希望ヶ浜学園の極秘目的により招致されたのであった。
 学園本来の目的は『モンスター退治をする人材の育成』。退治の専門家といえば、これまで数々の依頼をこなし魔種という怪物とまで渡り合うローレットのイレギュラーズであろう、と。
 イレギュラーズが歩いていると途中でばったり顔見知りに合う。知らない顔にも合うが、どうも行く先は同じようだ。軽くaPhoneを揺らして見せれば、相手も同じように返す。どうやら今回のパーティメンバーらしい。
 人を吸い込むトンネルは心霊スポットとして再現された場所だ。ただのスポットであれば、これから若年層を中心に多くが忍び込んで遊んだのだろう。けれども怪異が報告された今、放置すれば同じだけの行方不明者が出る。
 気が付けば同じ方向へ歩く者が8人。メンバーも揃ったらしい。遠目には件のトンネルが見えてきている。空はすっかり茜色だ。
 さあ、このひと夏をつつがなく過ごしてもらうため──ひと肌脱ぐとしようじゃないか。

GMコメント

●成功条件
 ヨルの討伐

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。嘘はありませんが不明点があります。

●エネミー
・悪性怪異ヨル『黒女』
 人を吸い込むトンネルの怪異。暗がりに入ってきた人間を奥へ連れ込むモノ。外見は顔の見えない黒髪の女。いつしか生まれた怪異はトンネルより外に出ません。
 昼間並みの明るさで見たならばその髪は触手であり、女は怪物が人間を模したものだと気づけるでしょう。
 髪による遠~超遠距離攻撃の他、体を使った物理攻撃を行います。

こちら:髪による締め付け。同時に奥へ進ませようとするでしょう。【窒息】【10m黒女に近づく】
おいで:髪による範囲攻撃。串刺しです。【出血】【乱れ】

・救われなかったモノ×???
 ヨルにより犠牲になった人間。ゾンビのようなやつです。ヨルの操り人形で、怪異とともに人を掴んで奥へと引き摺り込んでいきます。死ねば砂となり、遺体は残りません。
 数名は行方不明届が出されていますが、行方不明になった全員が出されているとも限らないため数が不明です。確定で6人。
 【足止】の攻撃を使ってきます。存外力が強く、しかし結構脆そうです。

●フィールド
 トンネルの中です。そこそこ広く、特に奥行きがあります。
 明かりはつかず真っ暗です。命中回避に大きなマイナス補正が発生します。

●ご挨拶
 愁です。もうすぐ夏ですね。
 真夏が来る前に倒してしまいましょう!
 ご縁がございましたら、よろしくお願い致します。

  • 再現性東京2010:暗がりをのぞいて完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年08月10日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

R.R.(p3p000021)
破滅を滅ぼす者
サイズ(p3p000319)
カースド妖精鎌
リュグナー(p3p000614)
虚言の境界
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
ヨハン=レーム(p3p001117)
帝国軽騎兵隊客員軍医将校
ルチア・アフラニア(p3p006865)
決死行の立役者
ロト(p3p008480)
精霊教師
シュヴァイツァー(p3p008543)
宗教風の恋

リプレイ


(泡沫の夢のような街をここまで築き上げるなんてね……)
 『「Concordia」船長』ルチア・アフラニア(p3p006865)は目的地まで駆けながらその街並みを眺めていた。現代日本、と呼ばれる場所をルチアは見たことがない。これらは全て旅人(ウォーカー)たるこの街の住人が『再現』してみせたものなのだろう。ここまでしてでもこの世界を受け入れず、そして元の世界に帰りたい、元の生活を営んでいたいということか。ルチアとしてはその気持ちも決してわからないものではない。けれども──。
「──『こんなもの』が出現している時点で無理があると思うのは、私だけかしらね?」
「愚かさを糾弾するのは簡単だが、誰もが英雄と為れる訳でも無い」
 その呟きに答えたのは合流した『破滅を滅ぼす者』R.R.(p3p000021)だ。その視線は真っすぐと前に、件のトンネルがある方角を見つめている。R.R.──ルインからしてみれば、東京と呼ばれる場所はどこか懐かしくもあった。己の故郷にも似たような都市があったのだ。最も、そことここは似て非なる場所であるが。
 希望ヶ浜学園の生徒、あるいは教師と扮したイレギュラーズは徐々に集まり、トンネルの前では8人が揃う。
「悪性怪異ヨル、か」
「得体の知れぬ存在という意味では興味深く、同時に厄介なものだな」
 『特異運命座標』ロト(p3p008480)の言葉に『虚言の境界』リュグナー(p3p000614)は頷く。無から有が生まれるはずもないが、ならばどうして、どのように生まれたのか。2人の好奇心を非常にくすぐる存在だ。
「可能性のある行方不明者ですが……結構いるみたいですね」
 aPhone(アデプト・フォン)を開いた『特異運命座標』ヨハン=レーム(p3p001117)の表情はどこか苦々しく。そこには希望ヶ浜で出されている行方不明届の情報や、SNSによる誰それが何日から行方不明になっているなどの情報がまとめられている。勿論デマや関係のない件も混ざっているだろうが、それでもそこそこの人数が上っていた。これだけあって話題にならないのは、敢えて人々がこれらから目を逸らしているのだろう。それほどに怪異──非日常は容認されない。
(俺、というか妖精もこの街じゃ怪異扱いか)
 『妖精の守り手』サイズ(p3p000319)は自らの姿を見下ろして思わずため息をつきそうになる。混沌全体で見れば妖精など──珍しいかもしれないが──忌避の対象にもならない。だと言うのにこの再現性東京と呼ばれる場所においては怪異と疑われてしまうのだと言う。
「なにはともあれ。人の命を奪う奴は許せませんよ!」
「そうだね。先ずはこれ以上の犠牲を無くさないと」
 ヨハンの言葉にロトを始めとした全員が同意する。これ以上無力な人々を喰らわせてやるわけにはいかない。『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)はトンネルの中を満たす闇を見て小さく笑みを浮かべた。
 奥に潜むのは人食いか、殺戮者の類か、果たして。
(人食いならば気が合いそうなのだけれど……)
 食べた人間はどのような味がしたのだろう。そんな話もできれば楽しいのだろうが、そうでなくても楽しいひと時にはなりそうだ。

 ひたり、ひたり。
 トンネルの外から少しずつ風は吹きこんでいるようだが、抜け道のない空気はそこで淀むしかない。埃っぽい匂いを感じながらいくつものランタンがイレギュラーズたちの動きに合わせて揺れる。
「……いるね」
 マルベートが仲間たち以外の発する音を耳にする。這いずるような、そんな音。しかしイレギュラーズたちは臆した様子も見せず、『宗教風の恋』シュヴァイツァー(p3p008543)ははっと小さく笑った。
「顔の見えない黒髪の女? こちとら顔の見えない赤髪の女だぞ。なめんなよ!」
 ズズ。ズズズ、ズチャッ。
 シュヴァイツァーの叫びに呼応したか、より音が大きくなる。同時にマルベートの耳は複数の足音を捉えた。
「オールハンデッド! 武器を構えろーっ!」
 ヨハンの声がトンネル内に響き渡る。そこに含まれた色が恐怖でないことに這いずっていたモノは一瞬怯んだようだった。これまで立ち向かってくる獲物などそういなかったのだろう。それの姿を見れば誰もが怯え、恐れて逃げ出そうとしたに違いない。
 マルベートが伝える音とカンテラたちの光を元に、サイズは呪いの陣を地面へ描く。そこから飛び出すのは業炎を纏った刃だ。その後方でリュグナーは自らの目を覆う包帯に手をかける。
「悪いが、我はまだそちら側に行く訳にはいかぬのでな」
 借り受けしは地獄の大総裁オセの狂気。包帯の隙間から見えた金色の瞳は暗闇でも的確に近寄ってくるモノを映し、その精神力と注意を奪い取る。
(あれらは……黒女に囚われ、救われなかったモノたちか)
 暗闇をも苦としない視界に映ったのは、人とよく似た形の生き物。いいや、もうあれは生き物とは──生者とは呼べまい。黒女によって仲間にされた人間。ゾンビとでも言うべきか。
 自らの発する光に照らされたソレを見たシュヴァイツァーは思わず顔を顰めた。ガスマスクの下では見えるはずもないが、それはもう思いきり。本当に人の形を保っているだけ。ぐちゃぐちゃで今にも崩れそうなくらいに脆そうだ。シュヴァイツァーは片袖の魚を指で振り回し、生まれた炎は救われなかったモノたちへと飛んでいく。畳みかけるように黒炎がゾンビを燃やした。
「君たちは……美味しくなさそうだけれど。珍味の類かな?」
 歌うように、楽しそうにマルベートはディナーナイフとディナーフォークを振り回す。それらを模した双槍から放たれた斬撃は黒炎を纏い、その表皮だけでなく内側まで燃やしているようだ。
 同時、闇の中を同じ色が過ぎていく。それはルインの腕へと巻き付くなり、その体を勢いよく奥へ引いた。ルインは前進させられた分すぐさま後退し、フューネラルを構える。黒女のペースに巻き込まれてはたまらない。
(……多いな)
 救われなかったモノを数えたルインは、すぐさまそのうちの1体に銃声を響かせた。ヨハンが調べていた程ではないだろうが、それでも確実にここで行方不明になったとされた人数よりは多い。ペースコントロールが必要だろう。
 ロトは精神力の摩耗が早いであろうヨハンへ祝福の囁きを贈り、次いでルチアが声援を送る。2人の支援を受けたヨハンはカンテラの光でぼんやりと見える黒女を見据えた。
「ははあ、髪による攻撃。なんとも見た目通りですね!」
 ルインへ聖なる盾のオーラを顕現させると同時、ヨハンは味方を立て直す大号令を放つ。息苦しさがなくなったことを感じながらルインは再び銃を構えた。
 暗闇の中でいくつものカンテラが揺れ、光に怪物たちが照らされては闇に紛れる。赤黒い蛇を放って敵を縛り付けたリュグナーは小さく息をついた。
(よほど我を連れて行きたいと見える)
 それとも連れて行くのが容易いとでも思われているか。しかし残念ながら、思う様には動かない。
「今、在るべき場所へ送ってやろう」
 手痛い攻撃をかいくぐり、リュグナーの持つ鎌が刃を光らせる。既に生者でない者が在るべき、相応しい場所──彼岸の向こう側へ。傷ついたリュグナーをルチアが癒す。効率を上げて皆の支援をしていたロトはその付与が切れると同時に仲間へとかけなおした。
 もう辺りに救われなかったモノの存在は見当たらず。あるのは小さな砂山と黒女ばかり。ヨハンがすぐさま態勢を立て直さんと皆の士気を上げていく。
「さあ、ヨル狩りだ」
 サイズの鎌が煌めき、黒女へ向かって肉薄していく。妖精鍛冶師の不思議な種火がぼんやりとサイズの周辺を照らす中、魔力を帯びた鎌は黒女へ一直線に振り下ろされた。
「”破滅”よ。俺達はイレギュラーズ……破滅を滅ぼす為にやってきた」
 銃声1発。ルインは先ほどよりも踏み込んでその精神力を弾丸へと変えた。一段上がった火力で黒女の身体を撃ち抜く。暗視を持つ者はもうわかっているだろう、あれは女ではなく女を模した怪物だ。髪は触手、体は触手の集合体。悍ましいそれに、しかしルインは動じない。
「おっと」
 マルベートは突き抜ける触手をひらりと避ける。敵味方の合間を縫ってその矛先を集めんと動いていた彼女だったが、今や敵と呼べるのは黒女1人。近からずも遠からずの距離を保ったマルベートはナイフとフォークを操る。
(怪異は恐れずとも、未知は警戒しなくてはならない)
 相手も同士、優れた捕食者。油断をすればこちらがぱくりと食べられてしまうだろうから、と。
「ルチアさん!」
「ええ!」
 触手による突貫攻撃に回復手2人が癒しの力を放つ。傷を癒し、止まらぬ出欠を止め、乱れた体勢を立て直す。ルチアは自らの防御力を高めるように閉じた聖域を作り出して皆の支援を継続する。
「──皆、気を付けて。また来るよ」
 不意にマルベートが聞きつけたのは奥からの足音。生存者がいるわけもなく、在るとすれば救われなかったモノの増援だろう。
「OK。すぐ現れなかった救われなかったモノは俺に任せて」
 身を翻すシュヴァイツァー。その指が振り回す片袖の魚からは炎が生まれ、奥から現れたモノを翻弄していく。
(ダジャレとしてはかなり苦しいか?)
 先ほどの声掛けに、しかしまあいいやとすぐさま思考を打ち切って。シュヴァイツァーは罰を与えんとする炎を苛烈に燃やした。
「黒女を倒したら消えるのかな」
 支援を行っていたロトもシュヴァイツァーだけではとそちらの対応へ回る。まだ増援が現れないとも限らない。犠牲者の数も分かっていないのだから。
「さて、ここいらでフィナーレでしょう! ルチアさん、任せましたよ!」
 その言葉と共にヨハンが敵と味方の間へ躍り出る。彼は回復手でありながら同時に盾ともなりうる強靭な防御を誇る。その力はギリギリまで戦っていた仲間の防壁となり、最後の一手を撃たせる時間を作り出すのだ。
 マルベートが切り刻んだ血肉を貪欲に喰らい、サイズの鎌が触手の塊を翻弄する。悪あがきをするように髪がイレギュラーズたちを貫くが、ルチアの響かせる天使の歌は仲間の敗北を許さない。
「無辜なる者を破滅に誘う怪異よ、滅びを知れ」
「貴様は"一人"で、地獄に落ちるが良い!」
 ルイン、そしてリュグナーがそれぞれ放った精神力の弾丸は、黒女の核となる場所をも貫き──怪異を消滅させた。



「終わり……みたいですね」
 ヨハンは静かになったトンネル内に小さく言葉を零す。何事も起こらず消えていく音の反響に、一同は小さくため息をついた。
「遺体は全て砂になったか」
 ルインは視線を巡らせれば、暗所に慣れた視界にはいくつもの小さな砂山が見える。先ほどまで戦っていた救われなかったモノの成れの果て。残骸だ。そこには纏っていた服も靴も装飾品でさえも残っておらず、当然ながら髪の一筋だって存在しない。
「ふむ……救われなかったモノたちは奥からやってきたようだ。そこにならあるのではないか?」
 同じように暗視で眺めていたリュグナーがトンネルの更に奥を示す。完全な闇を湛えたそこは、もう何もいないとわかっていても不気味だ。皆で固まって進むと、いかにも途中であると言う光景を再現したのか──行き止まりには岩肌が覗き、それ以上先はない。
「ここにもなさそうだね。黒女が食べてしまったのかな?」
 マルベートはランタンをかざし、周辺に何も残っていないことを確認した。もはや彼らが、そして黒女がいた痕跡は先ほどの戦闘地にある砂山しかない。あれもトンネルへ吹き込む風によって少しずつ崩れ、何であったかもわからなくなってしまうのだろう。
 出るか、とサイズが疲れたように呟いた。誰からも否やは出なかった。1日過ごして、その最後に怪異退治を任されたのだ。良い子はもう家へ帰る時間である。
 トンネルを出たシュヴァイツァーは顔を上げた。ガスマスク越しの視界には星の瞬く空がある。あればかりはきっと再現ではないだろう。いや、この再現性東京に住まう者で空を見上げる者がいるとしたら、星座さえも再現されているのだろうか。
「──この街は残酷だ」
 同じように空を見上げ、ルインが淡々と呟く。その視線は下ろされ、先にあるのは未だ明るい街の光。人々がこの時間になっても活発に活動していることがすぐわかる。戦わず、戦えず、ただ平穏な日常を享受するための街は、怪異にとって格好の餌食なのだろう。
(戦えぬ者たちを救済しているように見えて……いや、)
 ルインは思いかけて、けれど頭を振った。例え人命を呑み込むような怪異があったとしても、最後まで何も知らないことはある意味救済なのかもしれない。現実を見ないことは愚かだが、同時に心を守るための楯ともなっているのだろう。
「帰ろう。寄り道しないで真っすぐ」
 シュヴァイツァーの言葉に一同は頷き、それじゃあと軽く手を上げて解散する。寮へ戻る者もいるだろう。ローレットへ戻る者もいるだろう。はたまた、自身がギルド経由で借り受けた宿に戻る者もいるだろう。シュヴァイツァーも自身の『帰る場所』へ向かって歩き出し、ふと自身の身体をぼんやり発光させた。もう少し明かりを身近に感じるようになるまでの間、と思いながら。
(……後日新しい都市伝説になったらどうしようか)
 それはそれで仕方が無いか、とシュヴァイツァーはすぐさま思考を切り替える。別に悪性怪異というわけでもないし。
 後日、本当に『発光女』の噂が流れることとなる。しかしそれはたった一夜の目撃証言しかなく、その後再び目撃されることもなかったことから噂は沈下されていった。

 同時期、ロトは紙とペンを相棒に机へ向かっていた。紙の上部に書かれたタイトルは『悪性怪異ヨル『黒女』 レポート』。下には事件のあらましや戦った時の様子、その最期まで丁寧に記載されている。ひと段落したところでロトはふと視線を上げた。
 トンネルに潜む怪異、黒女。彼女とともに現れたゾンビは幾人かが行く不明届を出されていた人物たちであったと記憶している。
(生者を仲間に……か)
 あの怪異は仲間を増やすことを習性としていたのだろう。救われなかったモノたちは恐らく全てが仲間にされた生者たち。
 ロトは再び紙へ視線を落とし、所感として最後に書き込む──願わくば犠牲者の無念が新たな怪異とならない事を祈る、と。

成否

成功

MVP

ヨハン=レーム(p3p001117)
帝国軽騎兵隊客員軍医将校

状態異常

なし

あとがき

 ──貴方の住む近くにあるトンネルは、大丈夫ですか?

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