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シナリオ詳細

<アイオーンの残夢>パンの雫を追う様に

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――風が吹いていた。
 妖精郷にも穏やかな風は吹く。今、かの地に悪意の波が押し寄せていようとも。
 それが何の関係があろうか。
 知らぬ存ぜぬ。風はただそこにあり続けるのだ。
 そして空気の流れは髪を梳かす。

 妖精郷、とばりの森。
 そこの一角にいたのは――エーリカ・メルカノワのアルベド。
 色彩なきその身にも命はある。『ソレ』を真実と見るか偽りと見るかは人によるだろうが……
「エーリカ!」
 その背から語り掛けるのは妖精だ。
 いや、妖精というと間違いではないが正確でもないか。彼女らは厳密には精霊。
 『密やかなる隣人たち』とも呼んだ――エーリカの友人達である。シルフィード、ウンディーネ、ベガ……三者はいつも一緒。風が運んできた噂である『妖精郷』に興味を抱き、ローレットの面々が通った『道』を通ってここまでやって来た。
 その中で見つけたのは己らが知古であるエーリカの姿。
 色彩の欠けた姿は別人である事を伺わせるが……されどタータリクスが創造せしアルベドの存在を知らぬ彼女らにとっては、風貌が瓜二つであれば異変を感じこそすれ、その上で声を掛けずにはおれぬ。
 どこへ行くのかと。どうしたのかと言葉を述べて――
 しかし。
 エーリカのアルベドはそんな彼女らを目にもくれない。
 声が届いていないのだろうか――向こうが風上にいるからこそ、声の手紙は風に弄ばれ。
 アルベドはまるで意にも介さぬ様に歩き続けている。
 散歩の様に。とばりの森の中をゆっくりと、ゆっくりと。
 されどその歩みに迷いはなく、確かにどこかへと向かっている様で……
「エーリカッ!!」
「だめよ、シルフィード。やっぱりあれはエーリカじゃないわ」
 水乙女たるウンディーネが、声を掛け続けるシルフィードを諫め。
 進み続けるアルベドの背を見据える。
 やはり、違う。姿は一緒でもその身に纏う雰囲気が。
 そして何か嫌な予感がしているのだ。これ以上進んではいけないような――
「ッ、あぶないわ!!」
 その時、ベガが二人を庇う様に
 寸後に飛び出てきたのは鋭き爪を持つ――魔物。
 それはアルヴィオンに住まう邪妖精(アンシリーコート)とも称されるモノ達だ。いまや妖精郷を襲撃しているタータリクスに操られており……ソレに道を塞がれてしまえば、アルベドを追おうにも追えない。
 魔種タータリクスが起こした妖精郷の襲撃事件はローレットの介入によりエウィンの街と、妖精女王の奪還を果たしたが、奴らを殲滅した訳では無いのだ。安全でない場所はまだ多く、このように魔物も襲ってくると成れば……
「っ、だめね。いちど、もどりましょう……!
 近くにローレットのニンゲンが……イレギュラーズたちがいるはずだから!」
 彼女らは戦闘の術を持たぬ。悪意の魔物が近くに居れば、逃げるのがやっとだ。
 幸いにして場所や、アルベドが行く先だけはその瞳に焼き付けている。
 とばりの森。エーリカのアルベドが向かう先にあるのは……

「ようせいの、おしろ……」

 未だ魔種に占拠されし、妖精城アヴァル=ケイン。
 ベガがふと、零す様に呟けば。
 周囲は夜の暗さに――満たされようとしていた。

GMコメント

■依頼達成条件
 アルベド・エーリカの捜索。
 並びに妨害を行ってくる邪妖精の撃破。

■フィールド
 とばりの森→妖精城アヴァル=ケインの付近 です。時刻は夜。
 中々薄暗いです。薄暗いので敵を見つけにくいですが、敵からも見つかりにくいかも……? 森の中ですので障害物はそこそこ多い形になります。

 この付近でエーリカさんのアルベドの姿が途絶えました。
 方角的に妖精城に向かっていったそうです。精霊たちは知古と同じ姿をした者の行方が気になり、そしてローレットは今後の事も考えると、妖精城付近の情報を集めるのも有益だと判断しており至急メンバーの編成を行った次第です。

 ただ。妖精城は依然敵の根城であり、その内部まで行くのは非常に危険です。
 妖精城の付近に到達した場合、伺う程度に留めておくのが安全でしょう。

■邪妖精(アンシリーコート)×??
 妖精郷アルヴィオンに生息するモンスターの通称です。
 精霊たちが目撃したのはナックラビー(水妖)のタイプ……ですが、他にオーガや小さい精霊の様なレッドキャップのタイプの邪妖精が存在している様です。総数は不明ですが、周囲を囲まれれば捜索に影響が出るかもしれません。ご注意を。

 能力値は比較的バラバラですが、近接に優れるタイプが多いようです。

■タイプアルベド:エーリカ・メルカノワ
 エーリカ・メルカノワさんのアルベドです。
 色彩こそありませんが、その姿は本人と瓜二つ。
 精霊達の話によると妖精の城に向かって歩いていたそうです。
 その姿を目撃できたのは偶々だったとか……
 徒歩での速度から考えると、まだ内部には到達していないかもしれません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <アイオーンの残夢>パンの雫を追う様に完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年08月10日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

エーリカ・メルカノワ(p3p000117)
夜のいろ
Lumilia=Sherwood(p3p000381)
優響の音色
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
ルウ・ジャガーノート(p3p000937)
暴風
ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)
神威の星
レスト・リゾート(p3p003959)
にゃんこツアーコンダクター
錫蘭 ルフナ(p3p004350)
森の善き友
アイラ・ディアグレイス(p3p006523)
瑠璃の片翼

リプレイ


 アルベド。誰かを模した、誰かの命。
 妖精を核にしている――偽りの命。
「……しかし、まさかエーリカさんのアルベドまで現れるとは。
 皆の力を取り込んで戦力の様にしているのだろうけど……この先には、一体?」
 場へと踏み込むのは『白獅子剛剣』リゲル=アークライト(p3p000442)だ。
 アルベド……元凶たるタータリクスの生み出した、奴の配下。
 何を企んでいるのか知らないが――出来るだけ情報を持ち帰り、未来へ繋げよう。
 歩を進めるイレギュラーズ。薄暗き、しかし夜目の対策を施している者は多く――その瞳には通常よりも鮮明に夜の世界が映っている。例えば暗黒を見据えるゴーグルを。例えば月の霊水を用いた目薬にて。
 見据えるのだ周囲を。この森には、敵が潜んでいるから。
「いざとなれば光源は作るが……さて、邪妖精には見つかりたくない所だな」
「ああ。せめて追いつける距離に詰めれるまではな――ったく。しかし俺達の姿ばかり真似てきやがるとは……気味が悪いぜ。タータリクスって奴は趣味が悪いな」
 故に暗黒に紛れる様に『神威の星』ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)は黒きローブを身に纏い『暴風』ルウ・ジャガーノート(p3p000937)は常なる警戒を強めている。どこから訪れようと対応しよう。どこから来ようと打ちのめそう。
 ルウは思考する。捜索そのものは――勿論行うが、他の者と比べればその術に優れている訳では無い。だからこそソレ自体は仲間を信頼し、任せて。己は暴威を振るう事に専念する――と。
 遠目に映る怪しげな影。早期に見つければ迂回し、慎重に進んで。
「……うん、なるほどね。分かったよありがとう――うん。気を付けて行く」
 更に『猫派』錫蘭 ルフナ(p3p004350)が自然の木々に語り掛ければ、おおよそではあるが危険な存在の方向性も分かったりするものだ。あくまでも彼らは自然。断片的であり精密とは言えないが……手段はそれだけと言う訳でもない。
 ルフナには精霊と通じる術もあるのだ。数多の声を拾い、前へ前へ。
 ――『彼女』のアルベドは、一体どちらの方へと進んだのか。

「……うん。きっと、こっち」

 とばりの森を、前へ、前へ。
 『夜のいろ』エーリカ・メルカノワ(p3p000117)は――その歩みを止めない。
 暗き闇に潜むのは何か。敵か、悪意か。
 ……想像するだけで体が緊張する。喉が震えて、肺が締め付けられそうだ。
 だけれども、進む。
 ――だってわたしはみんなに呼吸の仕方を教わったの。
 どれだけ怖くても、信じてる。
「……だから」
 逃げない。
 この先に――もう一人の『己』がいるのなら尚更に。
「エーリカ。こっちよ、こっち。歩いて行った、先は」
 故に『隣人』たちの声に導かれ、情報の在った方へと歩いていく。
 強い意志をその目に抱きながら。
「……おばさんも白い自分と出会ったのだけれど……何だか不思議な気持ちだったわね~
 鏡と言う訳でもなくて、かといって他人というのもちょっと違う気がして……」
 だからこそエーリカの力になろうと『遠足ガイドさん』レスト・リゾート(p3p003959)は呟く。
 黒きマントに身を包み。優れし耳で周囲を警戒して。
 思い起こすのは――自らのアルベドと出会った時の事。
 あの感覚は独特のものであった。説明しがたい、経験した者だけが分かる事。

 ――それと今から向き合うというのなら、その手伝いをしたい。

「ええ。誰でもなくエーリカさんが望むよう……収拾することを私も望みます」
「……エーリカさんのみちゆきを、必ず、ね」
 意思を同じくするのが『優響の音色』Lumilia=Sherwood(p3p000381)と『未来に幸あれ』アイラ(p3p006523)だ。Lumiliaは――アルベドという存在自体に特別な感情はない。タータリクスの生み出した錬金術の魔物の一つ……事実のそれだけを認識している。
 だが。その対象が他ならぬエーリカのものであれば話は別。
 道を繋ごう。彼女と彼女が出会う道を。
 その為なら……たいせつな友達の為であればとアイラも此処へ至るのだ。
「……そっくりな、いのちが、生まれた……」
 その事実はどこか恐ろしく、足が竦みそうだけれども。
 でも。彼女もきっと『エーリカさん』だから。
 その邂逅を必ず成し遂げたい。

 ボクの魔法を――『すき』と言ってくれた人の為なら。

 なにも怖くない。
 きっとこの歩みだって――続けられるんだ。


 とばりの森は暗く、邪妖精の陰に溢れている。
 森の狭間から猛る様な声が零れてきて……それでもイレギュラーズ達は慎重に。
 多くの者が夜目の為の手段を講じていたというのもあろう。それ自体は決して強くないが、多数で周囲を警戒していればカバーできる範囲が広がり、敵の見逃し――取りこぼしも無くなる。その上で黒き衣も纏えば敵からの視線も見つかりにくくなるものだ。
 そう――髪も、肌も、翼も、眼も。
 僅かな灯りの中ではより目立つのだとLumiliaは知っている。
「溶け込まなければ……困りものですからね」
 周囲を監視し、少し高い位置から目を使って。
 森の動きに気を向ける。
 草木の揺れが動物の動きを示そう。異質な風の流れが敵の気配を運んでこよう。
「こっちかしらね~エーリカちゃんの白い子と、はやく会えるといいのだけれど……」
 そしてレストは同時に虫をファミリアーで飛ばして偵察も担う。
 前を飛び危険が無いか。ルフナと同様に自然からも情報を得て――戦いを避け。

 それでも『どうしても』の時はあるものだ。

 前方。一、いや二体か。こちらへと迫ってきている邪妖精の気配がある。
 レストやアイラの耳にはっきりと感じている敵の足音。迂回――いや間に合うまい。障害物が少なく、恐らく発見されるのが先だ……なら。
「やむを得ないな。先手必勝だ、即座に奴らを無力化し……先に進む」
「はい――お星師さま」
 ウィリアムは決断する。敵の数は決して多くない……であればと魔力を収束させる。
 この場には弟子の――アイラもいるのだ。
 格好の悪い所など見せられようか。紡がれた魔法陣が敵を捉え、激しく瞬くは星の如く。

 一閃、炸裂。

 華の如く咲き散る閃光は、魔を灼き、その身を滅ぼさんと。続くアイラが紡ぐのは、蝶で。
「――エーリカさんの邪魔は、させません」
 甘き鱗粉。齎す夢幻が、敵の身を揺らやかに。
 戦闘の最中に体を脱力させるのは達人でなければ命取りである。桃源に運ぶ蝶の魔力のは、残酷で。
「邪魔するなよチビ共、こちとら急いでんだ……纏めて吹っ飛ばしてやるぜッ!」
 そこへ出番が来たとばかりにルウの一撃だ。
 跳躍。闇夜を飛翔する様に一歩で前進――その腕に込めた全ての力を武具へと注げば。
 振るう。己が暴威を。暴風が如き暴力を。
 Lumiliaの援護――力を与える英雄の詩曲が皆を満たし、更なる力をルウは得ればより強靭に、怪力のままに敵を吹き飛ばすかの如く。ウィリアムらの攻撃の傷を抉る様に。
「オラオラァ! 死にたくなきゃ寄ってくんじゃねえぞ! それともぶちのめされてぇか!」
 猛攻を繰り広げるのだ。
 先述しているようにイレギュラーズ達の目標はエーリカのアルベドへ追いつく事である――故にこんな所で時間を掛けてはいられないのだ。即座に倒し、即座に往く。かといって攻撃一辺倒であれば……後衛側が襲われた時に対処出来ぬ。
 故にルウは前を見据えながらも突出しすぎないように立ち回る。
 いざとなればエーリカ達の援護に入れるように。
「無為な殺生をさせてくれるなよ――だがどうしても邪魔をするなら、斬り捨てるッ!」
 そしてリゲルは名乗る様に。敵の注意を引きつけ、斬撃にて対抗を。
 空気すら凍てつかせる氷の一閃は邪妖精の胸を穿ち――その生命を断たんとし。
 ――されば邪妖精も只で受ける訳も無し。
 鋭き爪を集約させ斬り裂く返しの一撃。血飛沫を舞わせ、浅くない傷を与える、が。
「敵の拠点になってる妖精城も近いんだ。戦闘を長引かせる訳にもいかないしね」
 そこはルフナの治癒が間に合うものだ。
 身体に満ちるマナを解放し、彼の抱く『澱の森』を顕現――
 変化を嫌う霊力は傷を負う『前』の状態に引き戻すのだ。満ちる体力が力を与え。
「あらあらごめんなさいね~でも、急いでるから……ね?」
 そしてレストの意志の力が衝撃波へと変換され。エーリカの眠りへと誘う力も放たれれば。
 敵を打ち倒す。
 水妖のナックラビーの姿をした敵。動かなくなれば、明らかに戦闘不能になった事は分かるが……戦闘の音がすれば流石に周囲に異変を伝えるものだ。すぐに移動するとしよう。
 ここまで慎重に進む事に専念したからか、戦闘はなるべく避けて進められている。
 余力は十分。万一の戦闘があろうと対応は出来るだろう。
 草木を掻き分ける音にすら気を付け。
 妖精郷の空気を肌に感じ。

「――いた」

 そして見つける。
 妖精城アヴァル=ケインの正に近く。木の根元に座り込んでいた――
 エーリカの、アルベドを。


 空を見ていた。
 妖精城アヴァル=ケイン――その天に映る光景を。
 ずっと、見ていた。
 この中に呼ばれている。戦力として、戦うための一人として。
 だけど、私は――

『わたしの声が、きこえる?』

 そこへ語り掛ける一つの声。それは――『エーリカ本人』のモノだ。
 ハイテレパス。互いに声を出さず語る事の出来る術。
 驚かせぬ様にエーリカは己がアルベドへと声を。優しく、静かに。
 それがわたしであるなら――この子もひどく臆病な筈だから。
 寄り添う様に。隣にいる様に。
「――だれ?」
『わたしは、『あなた』』
 怖がらないで。決して傷付けたりなどしないから。
 言の葉だけを交えたい――『あなた』の前に現れたい。
 どうか。
 一歩を進むことを許してほしい。
 貴方にして――私よ。
「……エーリカさんのアルベドだ。きっと優しい心を持ち合わせているだろうが……」
「ああ。直接ではないにせよ……彼女以外まで『そう』だとは限らない」
 同時に、油断してはならないとリゲルとウィリアムは思考する。
 アルベド自身に悪意がなくても利用する奴がいないとは限らない。もしかしたらこの一連はエーリカを誘き寄せる為……そんな可能性もゼロではないのだ。万が一の有事を警戒し、会話をするエーリカを守護せんとする。
 アルベドは元となった人間と同じとは限らない。
 妖精と交じり合った時の影響――或いはタータリクスの操作の可能性もあるか――
 元は優しくても暴虐を尽くすものもいよう。
 同じ顔で。同じ声で。
 それでも。
「エーリカさんは、信じてます」
 Lumiliaは確かに感じていた。エーリカの事を、彼女と瓜二つのアルベドを。
 そしてエーリカが抱いている――想いを。
 ……ならば彼女に全てを任せよう。自らは周囲を警戒し、誰の邪魔もさせぬ様に。
 交わす言葉一つ二つ。様子を見る限りアルベドは怯えている――いや、驚いている様だ、が。
「いけそうか――?
 通じ合って、ここらで連中が何考えてるか少しでもわかりゃいいんだがな」
「なら、後は対話する間の時間稼ぎが必要かな。何もなければ一番だけれど」
 ルウとルフナは見た。アルベドの様子が、落ち着いた様を。
 こちらの方を見ている――影に潜んでいるのでハッキリと見えている訳では無いだろう。
 それでも確かに。戦闘の意思を見せるのではなく、服の胸元を掴んで緊張する様に。
「……さ。エーリカちゃん、いってみましょうか~」
 レストの声も掛かれば――往く。
 二人が安心してお話出来るようにと周りを注視しながらも、影から出て。
 歩む道のり。やがて二人は其処へ至りて。
「――はじめまして、『わたし』」
「――はじめまして、『あなた』」
 思わずかけた言葉に、二人は微かな笑みの色を。
 まるで鏡を見ているかのようだ。勿論この場にそんなものはない。
 だからこそ微笑む。確かにそこにある――『わたし』と『あなた』の現実に。
「はじめまして、『エーリカさん』……ボクと同じ色をしていたはずの、お友達」
 故にアイラも言葉を紡ぐ。怯えさせぬ様に武器を隠して、彼女も微笑んで。
 勿論近くにいる者として警戒も怠らない。誰にもこの邂逅の邪魔なんて、させないから。
「どうして、たたかうすべを殆ど持たないわたしに? あなたは……誰に呼ばれているの?」
 戦いたいの――? 誰か、と。
 語るエーリカ。しかし『あなた』が『わたし』なら
「分からない。でも……わたしは、たたかいたくなんて、ない」
 そういうだろうと思っていた。
 ……取り込まれた妖精もそのような性格だったのだろうか。いずれせよ暴力との親和性はなく――エーリカのアルベドは戦いを拒否している様であった。妖精城に入らず、ここで止まっていたのも『そういう』事だろう。
 呼んだのは、さて。アルベド達の親玉であるタータリクスだろうか。
 しかし目の前のアルベドは悲しんでいる。
 『自分』が生まれた理由は戦う為なのかと。
 ……どうしてエーリカのアルベドは生まれたのかと、アイラは不思議であった。が、その様子を見てなんとなく察した――『理由は特にない』のだ。
 ただタータリクスは、イレギュラーズは『使えそうだから』と言う理由であちらこちらの者達へと手を伸ばしたのだろう。だからエーリカの様に……心優しい個体が出現したりもする。ただただ勝手な都合と意志により生み出されただけ――

 ――なら。

「一緒に、いこう」
 エーリカは手を伸ばす。
 叶うなら彼女を保護したい。行きたくないなら行かなければいいのだ。
 『わたし』が貴女の理由になる。
「――――」
 差し出す花の一輪は、赤きアネモネ。
 灯る花言葉はたった一つ。
 『あなたを愛す』
 だから、行こう。
 こんな所にいてはいけないと――言の葉を紡いだ。

 瞬間。

「ほっほっほ――戯言」
「ッ――上だッ!!」
「来やがったか……邪魔ぁさせねぇってんだよ!!」
 周囲を警戒していたリゲルとルウが反応した先。妖精城から跳び出してきたは人影一つ。
 高速で飛来する『ソレ』はアルベド……いや、違う!
 ソレの抱いている『圧』はもはやアルベドではない。もっと強大な――何か。
 放たれた斬撃を防ぐリゲルとルウ――そしてアイラ。が、重い。
 思わず弾き飛ばされんとする程の勢いを、しかし絶対の意思を持って退かない。
「……なんだ一体? 今大事な所なんだ――空気の読めない真似をすんなよ?」
 次いで即座にウィリアムの魔法陣。放つ天からの魔法が『敵』を捉える。近くに至り、ハッキリと見えたその姿は……邪妖精などでは決してない。
 アレは、アレはイレギュラーズの姿だ。和服に、特徴的な風貌を持つ彼は『ユメゴコチ』なる人物で――しかしアルベドの姿とは違う、それは。
「キトリニタス」
 エーリカのアルベドは言う。それは『アルベド』の進化。
 妖精と深く融合し――もはや完全に一個体と化した『手遅れ』
 代わりに得たのはアルベドを超える強さ。その力たるや、イレギュラーズにすら十分な脅威。
「……もはや苦しむ欠片すらないのか。完全に、一体化したからこそ……」
 様子を見ていたルフナは気付く――もしもアルベドの体内で苦しんでいる妖精がいれば助けたいと思っていたが、キトリニタスの中に別の生命は一切感じない。フェアリーシードが見えている訳では無いが、なんとなく『感じる』のだ。
 命の灯火を燃やし続けるどころか『燃やし尽くした後』だというのか、アレは。
 タータリクスは――そこまでするのか。
「――にげて」
 だから、言う。
 自分を。こんな存在の自分を受け入れんとしてくれたみんなを、傷付けさせはしないと。
「ほっほっほ……反逆するつもりかえ?」
「みんな、にげて。お城から、まだたくさん来るから……!!」
 逃げてと紡ぐ。ここは敵の根城の近く――押し寄せて来れば流石にひとたまりも無い。
 大丈夫。わたしは大丈夫だからと。
「だめ。一緒に……!」
「くっ……急ぎましょう――敵が来ます!」
「相当な数がいるわ……動くならすぐにしないと……!」
 エーリカは手を伸ばし、Lumiliaはそれを支援するかのように一撃を敵へと。魔力で剣を編み出し、意思をもって敵を穿つ――それでも見える敵の姿は多い。今退かねば、もはやタイミングはなかろう。
 レストが飛ばしたファミリアーが城を偵察せんとするが、見えたのはキトリニタスに続かんとする敵の尖兵達。まだ距離はあるが、余裕があるという程ではない。リゲルも敵の大いなる数を感じている――
 エーリカと同じ、優しきアルベドは託す。エーリカに……ふと、足元にあった花を一つ摘まんで。
「これを、あげる」
 だから行ってと。笑顔で託されたソレは。
 紫のアネモネ。
 花言葉は……

 『あなたを信じて待つ』

 どうか行って。やさしい『わたし』
 きっとまた――会えるから。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ。

 新たに現れた存在――キトリニタス。

 彼らとの合流を拒んだエーリカさんのアルベドはどうなるのでしょうか……すぐに分かると思います。ありがとうございました。

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