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シナリオ詳細

<禍ツ星>かくとだに えやはいぶきの さしも草

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 夜のビーチは視界が悪くも、決して無人ではない。むしろ視界の悪さが都合良いと恋人たちが逢瀬の時を過ごすのだ。
 ザザ、と寄せては引く波にぼそぼそとした声が紛れる。その遠くではカムイグラと遥か西にある海洋王国による合同夏祭りが行われているが、それよりも恋人たちにとっては互いと過ごせる時間の方が大切なのだった。

 けれども、そんな時間は悲鳴によって切り裂かれる。

「あ、あやかし、あやかしが……!」
 腰を抜かした女が手で砂を掻く。ちっとも後ずされない女の前で、大きな狼の如き妖異は彼女の恋人を呑み込んだ。噛み切った足がぼとりと砂の上に落ち、女へその血しぶきがかかる。むわっと鉄錆の匂いが女の鼻をついた。
 それでも女は動けない。何度も何度も砂を掻く手足は実質砂を撫でるだけで、女の体を後ろへ押しやりはしなかった。恐怖に目を見開く女の上半身をあやかしが飲み込み、それを咀嚼した後は残った下半身をもまたひょいと口に咥えて放る。飛び出た血が砂を濡らし、再び砂上へ着地する前にあやかしの口元へ入っていった。

 ぼた、ぼたぼた。

 あやかしの口元から飲み込みきれなかった血肉が零れ落ちる。暗がりでも見えるその赤に、茫然としていた人々がようやく動き出した。
 砂を蹴り、波を蹴って音の鳴る方へ。賑やかな夏祭りの光が非日常な日常へ人々を誘う。踏み入ってしまえば安心とまではいかなくても、自らが標的となる可能性はいくらか低くなるはずだ。他人を犠牲にしても自らが生きられるのならそう動かずにはいられない、ヒトとは須らく浅ましい生き物だった。
 しかしその光を遮るように大きな影が立ちはだかる。ぎょっと足を止めた人々は死神の笑う声を聞いたような気さえした。

 あやかしは、1体ではなかったのだ。



「皆さん! 皆さーん!」
 夏祭りの喧噪から聞き覚えのある声がする。ああそうだ、昼には呑気に溺れていた──。
「皆さん! 緊急事態ですっ!」
 ころんと人々の足元から転がってきたブラウ(p3n000090)がイレギュラーズへ必死に訴えかける。その体が誰かに蹴られてしまわないようすくい上げると、ひよこはもふんとイレギュラーズの両手へ納まった。
「カムイグラのビーチであやかしが出ているみたいなんです。お楽しみのところですが、助けに行ってあげてください!」
 夜のビーチと言えば恋人の逢瀬場所。現れたあやかしは人を襲い喰らっているのだと言う。目的のない者が行くような場所でもないが、からくも逃げ切った1人のヤオヨロズによって発覚したのだそうだ。そのヤオヨロズにも恋人はいたが、命には代えられなかったらしい。
 頷き動き出したイレギュラーズの手に収まりながら、ブラウはぶつぶつと何事か呟いている。おかしいとか、どうしてとか。どういうことかとイレギュラーズが問いかけると、つぶらな瞳が彼らを見上げた。
「僕、こちらに着いてからちゃんと情報収集してたんです。けれどあのビーチにあやかしが出るだなんて聞いたことがないんですよ」
 何か──人為的なものなのかもしれない。ブラウはそう懸念しているのだ。
 しかしまずは人に害為すあやかしを退治しなければ調べることもできやしない。イレギュラーズたちはブラウを安全な場所で離すと、目前へ迫ったビーチに向けて走り出したのだった。

GMコメント

●成功条件
 あやかしの撃退

●情報精度
 このシナリオの情報精度Bです。嘘はありませんが、不明点もあります。

●エネミー
・大狼×3
 人を呑み込めるほど大きな狼です。非常に気が立っており、人々を見つけ次第喰らいます。夜目が効くようです。
 本来であればこのような場所に現れるとも思えないあやかしではありますが、現にビーチへと姿を現しました。原因は不明となっています。
 攻撃力が高く反応はそこそこ。爪や牙で攻撃を仕掛けてきます。

薙ぎ払い:尻尾をぶんと振り回します。【乱れ】【飛】
跳躍:遠くの敵一帯へ向け一直線に飛び掛かります。【移】【出血】

●フィールド
 カムイグラのビーチです。所々に血の染み込んだ痕や、遺された人体の一部があります。生きている者も若干名いますが、喰われるのは時間の問題です。
 夜の時間帯で、月明りもありますが光源には心もとないでしょう。
 砂浜の砂は柔らかく、移動しなければならないような事柄でマイナス補正が発生します。

●ご挨拶
 愁と申します。
 早く倒さなければ、更なる被害も免れないでしょう。
 ご縁がございましたらよろしくお願い致します。

  • <禍ツ星>かくとだに えやはいぶきの さしも草完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年08月05日 22時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

R.R.(p3p000021)
破滅を滅ぼす者
鳶島 津々流(p3p000141)
四季の奏者
カイト・シャルラハ(p3p000684)
太陽の翼
アト・サイン(p3p001394)
観光客
湖宝 卵丸(p3p006737)
蒼蘭海賊団団長
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
シルキィ(p3p008115)
繋ぐ者
希紗良(p3p008628)
鬼菱ノ姫

リプレイ


 後方からは楽しそうな夏祭りの声。けれども『破滅を滅ぼす者』R.R.(p3p000021)の耳には確かに雑音が聞こえていた。破滅の未来予知。それはすでに破滅を始め、少しずつ大きくなっている。つまり少なからず被害が発生し、今も犠牲者が生まれ続けているということに他ならない。
 けれどもR.R.は──ルインは口端をにぃ、と持ち上げた。
(それでこそ滅ぼし甲斐がある)
 せいぜい今のうちに暴れまわってもらおう。彼らがヒトを狩ったように、今度はイレギュラーズが彼らを狩るのだ。
 けれどその悲鳴を聴覚で感じ取った『la mano di Dio』シルキィ(p3p008115)は顔を曇らせる。無理もない、まだ浜辺まではもう少し。辿り着くまでに命の断末魔をどれほど聞くことになるだろうか。それは『行く雲に、流るる水に』鳶島 津々流(p3p000141)もまた同じだった。
「何だか、よろしくない雰囲気を感じるよ」
 ほんの僅かに鼻孔を掠める血の香り。夏祭りの雰囲気に酔った者はほぼ気づかないほどの臭いだ。これが狼のものであるのか、ヒトのものであるのかはブラウの慌てようを思い出せば想像に難くない。
(狼がいる場所といったら、山とか森のはずだけど)
 あやかしだから関係ないのか。いいや、彼らとて生死があるのだ。中にはどんな環境にも適応する特異な存在もあるだろうが、今宵突然現れたというのならばそれも考えにくい。
「何はともあれ、海祭りを邪魔するなんて俺が許さないぜ!」
「うん! 正義の海賊としても放っておけないんだぞっ!」
 『小さき者と共に』カイト・シャルラハ(p3p000684)と『蒼蘭海賊団団長』湖宝 卵丸(p3p006737)が闘志を燃やす中、一同は浜辺へと辿り着く。全体を見渡せるそこからの光景に『全霊之一刀』希紗良(p3p008628)は息を呑んだ。
「昼間遊んだビーチが……」
 『胸いっぱいの可能性を』フラン・ヴィラネル(p3p006816)が絶句するそこは阿鼻叫喚とも言うべき酷い有様だった。生存本能ゆえに、生きるために食らっているのではない。これは只々ヒトを怯えさせ、恐怖に陥れ、命を屠るだけ。
「……ただの殺戮など、言語道断であります」
 希紗良は助けへ向かうため走り出す。それよりも速く駆けた卵丸の見えぬ刃は、一瞬と言えど圧倒的な攻勢であった狼を押しとどめるには十分だった。
「蒼蘭海賊団団長、湖宝卵丸参上! これ以上お前達の好きにはさせないんだからなっ!」
「それでもって言うなら、まずは遊ぼうじゃねーか」
 砂を羽ばたきの風で舞わせ、緋色の大翼を広げたカイトがにっと笑みを浮かべる。鳥目であろう彼の視界は目薬のおかげで良好だ。
 注目がカイトへ集まった隙にフランは生存者たちの元へと駆け出す。その足元から草花が生え出し、驚く人々を余所にそれらは歌い出した。
「ささ。この場はキサ達に任せて、後ろを振り返らずに遠くに走るであります!」
 その間にも希紗良は腰の抜けた女性を支え、フランの治療であっても怪我の治りきらない男性を助け起こしながら誘導する。一見無傷に見える少女が茫然自失としているのは、恋人を殺されでもしたか。
(心のケアも必要でありますね……)
 ただ逃すだけで何もなかったとは言えない。小さく唇を噛み締めた希紗良は、それでもまずは命と生存者の救助に奔走する。より陸の方へと向かう希紗良と反対方向に桜吹雪が舞っていった。
「ええっと、こういうのを確か……そう、固定砲台って言うんだよね?」
 踏み出さなければ砂に足を取られることもない。津々流はなるべく動かず済むように、と狙われにくい後方より桜吹雪を操る。フランが傷を癒し、希紗良が誘導するのであれば自分の役目は足止めだと言うように。ただ人を守ると言っても、1人の力なんてたかが知れてる。故に津々流は仲間たちがより救助しやすいよう協力するのだ。
「さあ、今のうちに」
 津々流の言葉に頷いた希紗良がその横を抜けていく。更にルインの魔弾が援護するように放たれ、『観光客』アト・サイン(p3p001394)は救助の手は充分そうだと判断して狼の方へ駆け出した。
(救助が他に任せられるなら、僕はこの事件の奇妙な点をほじくり出すしかないな)
 奇妙な点とは勿論、既にイレギュラーズたちが考えていること。どこに生息するあやかしであるのか、どのようにここまで来たのか。そして何故ヒトを喰らうのか。
 音速の殺術が狼へ迫り、その注意がアトへ一瞬向けられる。それを封じるかのように卵丸の声が響いた。
「お前たちの相手は卵丸なんだからな、間違えるな!」
 良く響く声はその勘に障ったか、狼の1匹が尻尾を勢いよく振り回す。カイトは間一髪で逃れたが──今の一撃をモロに食らったのならば、骨の1本や2本は折れるかもしれない。
(だが、当たらなきゃ問題ない)
 ひらりひらりと躱し、受け流すカイトは機動の慣性で敵の肉を、肌を削ぐ。それは相手からすれば些細な傷かもしれないが、その役目は大きなダメージを与える事ではない。要救助者に、仲間に攻撃が向かないよう引き付け続けることだ。
「全くもって、目まぐるしい動きだね」
 津々流は淡く光る桜吹雪を器用に操り、狼を追いかけさせる。目薬による暗視効果と、自らに宿ったハイセンス。昼間ほどでなくともそれに近い感覚を得た彼だが、それでもようやく狼の動きを追えるといった程度だ。用意するに越したことはない。
「希紗良さん、避難は」
「完了であります。キサも加勢に入るでありますよ」
 津々流の問いに希紗良が答え、武器を握って脇を通り抜けていく。月明かりに艶やかな黒髪が照らされた。柔らかな砂を踏みながら、希紗良は身体強化魔術で自らの体を補強する。
「サポートはまだまだいけるよ!」
 任せて、とフランの声が緑の魔力を伴って仲間の士気を上げる。自然の魔力と高い親和性を持った彼女は一切の攻撃をせず、仲間の回復や支援に徹していた。適材適所というやつである。
(攻撃はからっきしだけど、その分こうやって支え続けるんだ!)
 その姿はさながら大地にそびえる大樹のようであるが、脳裏にはふと昼間の光景がよぎる。楽しく遊んだビーチには危ないものなど出る気配もなかった。だというのに──。
(ううん、考えるのは後)
 まずは全力で皆をバックアップしなければ。フランは前を向き、狼と戦う仲間たちに視線を向けた。
 卵丸は酷く傷つきながらも、更なる増援はなさそうかと周囲へ気を配る。この狼たちが突然現れたと言うのであれば、増援も同じようにやってくるかもしれない。しかし一向にして出てこないという事はこの3体だけなのか、それとも仕掛けがあるのか。
(まだまだ要注意だ)
 気を抜いた瞬間にくるかもしれない。卵丸は警戒しながらも目の前の狼にすかさずトドメの一撃を放ったのだった。
 さて、残り2体を相手取っていたカイトは非常によく目立っていた。身体的特徴である緋色の翼に、それを生えさせる夜闇色の軽いマント。そして特徴的な三叉の槍を持った彼の姿に2体は釘付けだ。けれどもそれは同時に、食欲を感じさせる視線にも感じられて。
「俺は食材じゃないからな!!!!」
 力いっぱいの否定に向けられたのは大きな口と鋭利な牙。それは偶然か、果たして。
 その目の前を桜色の奔流が流れ、狼たちを足止めする。後方に佇む津々流は穏やかな佇まいであったが、奔流の勢いは彼の印象を覆すようなそれだ。まるで呼吸もできなくなりそうな圧迫感に狼は苛まれ、低く唸り声を上げる。
「力を借りるぞ、フラン」
 絶大な支援を向けるフランへひとこと呟いたルインは、包帯が焦げ落ちていくことを肌で感じながら引き金を引いた。絶大な威力を誇るその一撃は、それだけ制御も難しく。押さえつけるようにして軌道を合わせ、狼へ届かせんとする。シルキィの指先から反垂れる魔力糸もまた同様だ。
 そうして追い詰め、追い詰め、傷つけて。
「これ以上の狼藉は許されないのであります」
 覚悟──深く間合いへ踏み込んだ希紗良の刃が狼の命を絶つ。あと1体。
 津々流の操る桜の奔流とも呼べるような吹雪が敵を翻弄し、狙いすましたようにルインの弾が足を撃ち抜く。シルキィの放った魔力糸が絡みついて食い込んでいくが、それでもなお狼の視線はカイトへ注がれている。当の彼はといえばここまでの苛烈な攻撃に無傷とはいかず、けれどもその体で粘り強く立ちはだかっていた。
「絶対に逃さない。倒れるつもりもないぜ!」
 装備に緋色の翼と夜闇をものともせず目立つカイトへ鋭利な牙が伸びる。けれどもそのまま倒させるようなフランではない。すぐさまカイトの周囲に緑の葉を舞い散らせ、温もりと共に癒しを与える。
「さあ、そろそろ……っ」
 殺さず戦意を喪失させるナイフを放ったアトは、直後迫った尻尾から咄嗟に急所を庇う。それでも肺から空気は押し出され、苦痛に歪んだ。
 手負いの獣はそれまでよりも厄介だ。まさに、そう──今のように。
 ぶおん、と風を唸らせながら尻尾が狼の周囲をことごとく叩く。希紗良の体もたまらず宙に浮いて、受け身も取れずに浜辺を転がっていった。けれども起き上がった希紗良は誰もが予想するよりも、ずっとピンピンしていた。自らに満たされた運命力がその身を守ったのだ。
(吹き飛ばされようが、血を流そうが痛くも怖くもありませぬ)
 起き上がった希紗良が目にしたのは亡くなった者唯一の痕跡。風化して消えてしまう血だまり。彼らの恐怖や無念、諦め、絶望……そんなものに比べたら!
「あともうちょっと、頑張ろうっ」
 狼の攻撃から仲間を庇ったフランは自らのパンドラを輝かせる。ここまできたのだ、倒れてなるものか。
 狼の傷は深いのか、動くたびに赤黒いものが砂を湿らせているのが見える。けれどもそれはイレギュラーズも同様で、苛烈なる手負いの獣を前に手加減など出来ようもない。殺さず倒す手段を持つ者に任せようという者もいたが、ルインは瞳を眇めた。
「──仕方ない」
 はらり、とルインの体に残っていた焼け焦げの包帯、その切れ端がまた落ちていく。ここで決めなければ喰い殺されるかもしれない。
(破滅になど滅ぼされるものか。俺は『滅ぼす側』だ)
 その憎悪と憤怒を弾丸に込めて──ルインは狼の脳天を撃ち抜いた。



 砂浜がようやく静けさを取り戻す。最も、そこはすでに恋人との逢瀬が出来るような姿ではなかったが。
「……随分な犠牲者が出たものだな」
 ルインは視線を巡らせ、夥しい血痕に目を留める。自分たちが討伐した狼のそれもあるだろうが、戦った覚えのない箇所に染み込んだ痕はヒトのものだろう。けれどもほとんどは狼に食われ、転がるのも腕や脚といった一部分のみ。何人と明確な数は出しようがない。
「俺は暫く周辺を警戒してるから、何かあったら知らせてくれ」
 カイトは緋色の翼を広げ、空へと飛び上がる。見る間に仲間たちは小さくなり、砂浜全体を見渡すことができた。上空は空気の流れも早く、地上に比べて新鮮な潮風がカイトの鼻を掠めた。
(変な動きをしているヤツはいない、か)
 眼下で新たな敵の姿が見えないこと、そして動きの怪しいヒトがいないことを確認するカイト。彼はこの事件に関して人為的であると考えている。
 そもそもこのような場所に狼が現れること自体おかしいのだ。狼たちは海へ進んではいるような動きも見せなかったことから、特段水中適性を持っていたとも思えない。ならば何かの道具を用いて狼たちを誘導したとでも考える方が自然である。
「あ、精霊さん!」
 フランは狼から逃げていたと思しき精霊の姿を認め、声を上げる。精霊は辺りに残る血の香りに落ち着かなさげだったが、自然を大切にする心得の持ち主にどこか安堵したような様子を見せた。
「ねえ、教えて。あの狼が出てくる直前、怪しい人はいなかった?」
 フランの言葉に精霊はたどたどしいながらも返答する。その知性は高いものでもないようだが、精霊の言葉からするに今夜は『不思議な人間』はいたようだ。
「禍の根は断つべきだな。更なる考察が要される」
 フランを介して伝えられた精霊の言葉にルインは視線を巡らせた。行き着く先は狼の死体を観察するアトとシルキィだ。
「生きては……いなさそうだねぇ」
 残念、とシルキィは狼の姿を見下ろす。軽く見ただけでは眠っているようにしか見えないが、多量の血痕と濁った眼が狼の絶命を教えていた。
(狼からも色々聞いてみたかったけれど、無理だねぇ)
 今この瞬間、霊魂疎通があればまた違ったのかもしれないが過ぎた話である。
「いけるか?」
「うーん。何らかの痕跡くらいは見つかるかもね」
 ルインの言葉にアトも唸る。生け捕りにできたら上々であったが、できなかったならば仕方ない。今からでもわかることを拾い上げていかなければ。
(死んだ時点で証拠隠滅されてる可能性はあるけど、言ってもどうしようもないしね)
 殺すより生け捕りの方が数倍難しく、かつオーダークリアが優先されるべき事項だ。
「こういうのが苦手ならば眼でも瞑ってるんだねぇ」
 アトは仲間たちに忠告し、狼の体を弄り始める。少しでも情報が得られると良いのだが。
(ここに現れたことがないのなら、本来の生息域はどこだ?)
 狼の身体特徴は確かにこのような場所で生息するそれではない。どちらかと言えば森や野原に住むような姿だ。最もここから近い場所を考えても、おおよそ自分たちから出てくるとは思えない。ならば『運ばれた』と考えて然るべきなのだろう。
(物理的にか、それとも呪術によるものなのか)
 一体どのような手段を用いたのか──アトの問いは程なくして答えが出ることになる。
「これは……勾玉でありますか」
 浜辺を調査していた希紗良は何らかの力を感じる勾玉を見つけていた。食い殺されたヒトの、転がった腕に絡んでいたのだ。フランがそれから精霊へ視線を向けると、嫌がるような素振りを見せて勾玉を持つ希紗良から離れていく。
「これを持っていたのが不思議な人間?」
 返ってくるのは肯定だ。イレギュラーズが持ってもなんともならないが、このまま置いておくのも危険だろう。
 それらしき呪具を回収し、狼の調べ上げも済ませればあとは撤退するばかり。カイトもこれ以上狼は発生しないだろうと空から降りてくる。希紗良が砂浜へ向けて黙祷を捧げる傍ら、ルインが銃を空へ構えた。
 カムイグラの宗教様式はわからない。だから彼なりの弔いだ。

 葬送の銃声が、静けさを満たした砂浜に響き渡った。

成否

成功

MVP

希紗良(p3p008628)
鬼菱ノ姫

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした、イレギュラーズ。
 すでに助からなかった命もありましたが、皆様のおかげで最悪の事態は免れました。

 またのご縁をお待ちしております。

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