PandoraPartyProject

シナリオ詳細

其の名は神無月

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●彼の地での再会
 それは『お嫁殿と一緒』黒影 鬼灯 (p3p007949)が豊穣の地にてとある亡霊を始末した日の夜の事であった。
 暗闇に紛れ夜の町を飛ぶように移動する鬼灯の耳に、聞きなれた怒号が響いたのは。
「頭領ともあろうものが! これほどの霊を連れて気がつかないのでございますか!?」
「む――っ!?」
 振り返った鬼灯の顔面に無数の御札が叩き込まれ、体勢を崩された彼は瓦葺の屋根に倒れ込む。背中を打った瞬間、鬼灯は自分の身体から何かが抜け出て溶けていく様な感覚へと陥った。
「弱かったからいいもののこのお馬鹿さんっ! 久しくお会いにしていないと思ったら!」
『その声、神無月さんなの?』
 鬼灯の片腕に抱えられた嫁殿が声を発すると、その青い瞳の黒装束の男は嫁殿に軽く会釈をする。
「はい、奥方もお久しぶりでございますね。頭領もお元気なようで何よりです」
 深く息を吐いて穏やかに挨拶したその男、神無月は鬼灯に手を差し伸べる。
「久しぶりだな、最近姿を見ないと思ったが――こっちに来ていたのか?」
「はい、まさかわたくしが物の怪の類に憑かれ『呼ばれる』とは……予期せぬ事態でございました」
 聞くところによると神無月は混沌にいる存在が問答無用で豊穣の地へと呼び出される『バグ召喚』、すなわち一方通行の神隠しに合い途方に暮れていたという。
「幸いにも僅か数週間で頭領が来てくださいましたので、あの地へ戻る事も今はできるのでございますが……一つ問題がございまして」
「何かあったのか?」
 問いかける鬼灯に神無月は頷き、すっと御札を広げると――
「そうですね、まずは腕利きを7名ほど――あてがございますか?」

●数日後
「……というわけでな、俺の部下、神無月から――『自分の神社の祭りの準備を手伝ってほしい』と言われたのだが」
「数週間で神社って建つものなの?」
 所は変わりローレット。『猫派』錫蘭 ルフナ(p3p004350)の言葉に鬼灯はどうとも取れない感想のリアクションを示した。
「方法はさておき、今ではその神社がある村の名所になるほどらしいが――何せ突貫工事で作ったらしくてな、雨漏りやら装飾の欠けがやや酷いらしい」
 神無月の神社は夏祭りの時期に合わせ小規模ながらささやかな行事を催そうとしている。縁日とも言うべきその日に備え、神無月は工員をいくらか雇い修復作業に当たっていたそうだが……彼らはある日突然にして消え失せた。
「このまま見つからないでいると神社の修復が間に合わず祭りは開けない……もし見つかったとしても治せる精神状態とも限らない。そこで皆の力が欲しいという訳だ」

 神無月の要望通り、集められたのは7人――どれも鬼灯の見込んだ精鋭たちだ。
「あの国で行方不明ってなると……神隠しか妖怪の仕業って事かい?」
「もしかして、素敵なお酒の香りに釣られてどこかいっちゃったのかしらぁ?」
『精霊の旅人』伏見 行人(p3p000858)と『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ (p3p004400)はのんびり歓談を交わしながら、鬼灯の話に耳を傾けている。口先では呑気に語り合うが、このような興味深い事件を見逃す彼らではあるまい。
「神無月様ほどの方が悪霊の類を見逃すとは思えません、もしや人さらいにあったのでは……」
「大方そういう事だろうな」
 鬼灯の部下、『星を墜とす者』星穹 (p3p008330)と『暦の部下』流星 (p3p008041)の話に割って入る様に「悪い奴なら殺してもいいかな?」と『Felicia』逢華 (p3p008367)がひょっこり顔を出し話に割って入る。彼女達は言われずとも頭領の仕事の手伝いを喜んで買って出るであろう。
「さらったのはどんな奴かは知らないけど、何かを直そうとする人を傷つけようとするなんて許せないよ、俺も手伝ってもいいよね!」
 意気込む『おもちゃのお医者さん』イーハトーヴ・アーケイディアン (p3p006934)の言葉に鬼灯は頷く。これで7人、集まった。

「あとは現地に行けば全てわかる事だろう。場所は豊穣の南方、大きな裏山がある神社――みんな、よろしく頼んだぞ」
 鬼灯の言葉に頷く6人――ルフナだけは、「えっ、僕も行くの?」ときょとんとしていた。

GMコメント

 リクエストシナリオの発注、誠にありがとうございます。
 以下、簡易的な内容です。

●依頼内容
 神無月の祭りを成功させるお手伝いをする。
 依頼成功の暁には小規模ながら神社でお祭りをするようです、皆で楽しみましょう。

●成功条件
 ・ならずものの成敗
 ・神社の修復
 この依頼の成功に必要なオーダーは2つです。どちらを担当するか皆で相談しプレイングに記載してください。

●神無月
 依頼人、黒影 鬼灯 (p3p007949)様の関係者。
 極大なまでのAP、神秘攻撃力、低FBを保有し、神楽で味方を癒しつつ除霊術で敵に甚大な被害を与える事を得意とする暦が一人。
 ただし非常に打たれ弱く、命中が高い方ではないので真価を発揮するにはサポートが必須。
 その対象を問わずありとあらゆる存在に好かれ寄進を受けるギフトを持ち、『神隠し』にあってもなお神社を建立するほどのカリスマを併せ持……ったはいい物の、いかんせん突貫工事の為に少々ガタが出始めているようだ。
 夏祭りに備え大工を雇ったはいいものの、修復作業の最中に失踪し困り果てている様子。
 
 余談だが、「霊より除霊する神無月さんの方が怖い」ともっぱらの噂である。
 
●ならずもの
 大工たちをさらい、神無月から身代金をせしめようと企む鬼人種の悪人。その数は5~15名ほど。
 神社裏の山に素朴な小屋(アジト)を建て身を潜めている、その大まかな場所は神無月が調査済み。
 体力と攻撃力が高いものの左程強い相手ではないが、敗北を悟ると悪あがきで怪しげな呪符を用いたり小屋に火をつけてしまうかもしれない。
 
●大工
 神無月が雇った大工たち。修復作業中にならずもの達にさらわれ、彼らの小屋に幽閉されている。
 救出後は修復作業に戻ってくれるはずだが……相当酷い目に合わされたのか怯えて作業が手につかない様子。
 彼らを励ましたり、代わりに作業に当たってあげましょう。

●Danger!
 当シナリオにはお祭りプレイングに拠らないお叱り判定が有り得ます。
 予めご了承の上、とりつかれないようにお願いいたします。
 
●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 其の名は神無月完了
  • GM名塩魔法使い
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年07月30日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

伏見 行人(p3p000858)
北辰の道標
錫蘭 ルフナ(p3p004350)
澱の森の仔
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
キラキラを守って
黒影 鬼灯(p3p007949)
やさしき愛妻家
流星(p3p008041)
水無月の名代
星穹(p3p008330)
約束の瓊盾
逢華(p3p008367)
Felicia

リプレイ

●十の月
「いや、神社建ててしまうって何事?」
 豊穣、夏の風が自然の小さな生命達に活気を与える季節。目まいがするほど力強い日光を我先にと伸びる竹が生い茂る裏山の竹林にて、神無月と再び相まみえた『お嫁殿と一緒』黒影 鬼灯(p3p007949)の第一声は突然の質問であった。
「突然でございますね」
「仕方ないだろう、頭領聞いてないし」
 能力は知っていたが納得がいかんと不満気に愚痴る鬼灯を宥める様に、神無月は目を細めてさらりと答える。
「必要以上の情報は不要、そして永住の地に居を構えるのは自然と言う物でございます。流星さんもそう思うでしょう?」
「あ、ああ? 確かにそうだな、拠点に神社は必要だ……神社」
 鬼灯をなだめるために不意に質問を投げかけられた『黒き断頭台』流星(p3p008041)は思わず肯定の意を示す。彼女も若干納得がいかないが、暦ならできて当然なのだろうと道理を通す事を放棄したといった方が正しいのだが。
「それに知っていて当然と思ったのでございます、逢華さんには伝えていましたから」
「うん、神無月お兄ちゃんに頭領さまの居場所を教えたのは私だよ」
「な!?」
『Felicia』逢華(p3p008367)は無邪気に笑って神無月に手を振った。鬼灯の顔が赤くなったように見えるのは気のせいではないだろう。
『もしかして先に会ってたの?!』
「奥さま正解……というか見ていたけど、黙ってた方が面白いかなって。神無月お兄ちゃんも言っていたでしょ?」
 嫁殿に逢華は正解の仕草を贈ると、鬼灯にトドメの一撃を与えるのである。
「『7人ほど当てはないか』って」
「はい、部下は居て当然でございますから」
「始めから俺は数に入ってなかったのか……」
 そうがくりと項垂れる鬼灯の様子に、『精霊の旅人』伏見 行人(p3p000858)は「まったく賑やかな頭領だ」と上を見上げるのであった。神無月の建てた神社といい、竹林と言い、この豊穣という地は日本という異世界に本当に良く似ている。
「早い所済ませて夏祭りを楽しもう、神無月さん、よろしく頼むよ」
「そうでございますね、では――」
 行人の言葉に神無月は了承の意志を示すと竹林をかきわけ道を急ぐ、数分ほど後にたどり着いたのは、無骨に地面から生えた巨大な灰色の岩であった。
「こちらに」
 慎重に近づき岩越しに様子を伺えばなるほど、竹藪で良く見えなかったが目を凝らせばほんの数十メートルほど先にはあばら小屋。そしてその手前で中々手強そうな大柄の野盗どもが焚火を取り囲んで酒をかっくらって爆笑している。
「一体何が面白いのやら」
 流星は肩に止まった黒い鷹に合図を送ると、静かに宙に放ち偵察とする。
「頼むぞ、玄」
 まるで自らの体の一部の様に、意のままに飛ぶ流星の相棒は空に大きな翼を広げ、小屋の周囲を睨みつけながら旋回する。
「どんな感じだい?」
 行人の言葉に流星は首を振ると岩に軽く見取り図を描く。そのあばら家に正面以外の出口は無く、窓もない。だが裏には川があり、精霊達の助けを借りれれば使えそうだ、と。
 鬼たちは玄に気がついたようだが、肉の匂いに釣られたのかと警戒するそぶりも見せない。
「見張りもいない。力はありそうだが、知能は雑魚そのものだ」
「それじゃあすぐに終わりそうだね」
 さっさと済ませてしまおう――行人が顎をあげる仕草を取ると、突然突風が吹き、竹林が騒めく。風に吹かれた竹が小屋へと激突し激しい音を立てると鬼達がぞろぞろと小屋の様子を見に行く。
「何だぁ? 随分と強い風だ……がっ!?」
 鬼達が散り、背を向けたその瞬間を行人は見逃さず――風纏う片刃の剣を振りぬく。
 行人が暴れ出し、好機と見るや神無月は手に持った数十の札に霊力を込め空中へと飛ばし小屋を取り囲む巨大な輪を形成する。
「――逢華」
「任せて……!」
 逢華が神無月に手を添えるかのように力を籠めると、周囲を取り囲む式神たちが蒼い炎を纏う――二人の癒しの力が共鳴する守護の結界が展開され、あらゆる厄をはじき返す。この中で戦えば怪我をする事などありえまい。
「化け物神主の手先か! 無駄な抵抗を――」
「行ってくれ! 玄!」
 金棒を振り上げた獄人の顔面に玄が爪を立てて飛び掛かる。思わず鬼の体勢が崩れた瞬間を見逃さず流星は鉄拳が腹部へと食い込ませると、鬼を勢い良く殴り飛ばした。
「人さらいの上に悪者扱いとは、恥を知れ!」
 周囲の鬼が流星を狙い飛び掛かればひらりと身を躱し、爪を振るいその一切を薙ぎ払う。鬼灯の魔糸がその傷口へと添えられ、鮮血を散らして肉を抉り飛ばす。魔毒が傷口を蝕み、卒倒するかのような悶絶を生む。
「う、うげ」
「痛かろう、痛いだろうな。だが容赦などしない、貴殿らとて人質を取っただろう」
 鬼の目が見開かれた瞬間――行人の一瞬の動作すら見逃さぬ流れるような一撃が鬼の顎を撃ち、一気に彼の意識は空へと吹き飛ばされた。
 怪我を恐れず全力で戦える環境において、全力で戦えばその殲滅には一分もかからない。次々と仲間が倒れ、地に伏していく状況に親玉らしき、特に体が大きな鬼人種が震える目でこちらを睨みつけ、一歩後ずさる。
「て、てめえら、人質が中に居るんだぞ! 俺に手を出したらわかってるのか!」
 焚火から燃え盛る木を引き抜き恐喝する親玉に対し、行人は不敵に笑う。
「この小屋は燃えやすい、あっという間に火だるまだ!」
「そうか、なら試して見ると良いよ」
「舐めた真似を、後悔しても知らないぞ、あ、あれ……?」
 火をつけるなど想定済み。幾ら燃え盛る松明であろうと水に濡れた小屋の前では煙すら起こさず――鬼は振り上げた体勢のそのまま鬼灯に体勢を崩され地へと叩きつけられてしまった。
『今なら神無月さんに叱られるだけで許してあげるのだわ!』
「そ、それなら牢屋の方がまだましだ!」
 嫁殿の説得にも応じず、大柄の男は最後の力を振り絞り、懐から何かを取り出し鬼灯に突きつけると炸裂させた。
「隣町から盗んで来た巫女姫様のありがた~い御札だ! これでも喰らえ!」
「ぬうっ!?」
 紫紺の火柱が鬼灯の体を包み込み、鬼灯の体は行人の方へと大きく弾き飛ばされる。その鬼の男はどこか嘲笑の様な笑みをうかべ、地に顔を伏せた――
「大丈夫かい?」
「ああ、何ともない」
 鬼灯はゆっくりと立ち上がると倒れた野盗どもの数を数える。一つも減ってない事を確認すると神無月へ指示を出した。
「うまい事縛って動けないようにして置いてくれ、流星に役人の元へ運んでもらおう」
「ではそのように」
 癒しの呪符とは何やら違う物を出した神無月に、逢華は「ねえ、殺さなくていいんですか?」と不満気に鬼灯へ語り掛ける。
「その、なんだ。……今祟られたら困る」
「どんなに怖いんだ、あのお兄さん」
 はっきりと拒否の意思を示して小屋の中の大工達の安否を確認しに向かう鬼灯に対し行人は苦笑を浮かべる。そんな彼に流星は「知らないからそういえるのさ」とどこか暗い声で呟いていた。
 なにはともあれ後始末と行こうではないか。軽い仕事を終えた特異運命座標達は肩の力を抜くと、人質達を次々と解放していく。

 ただ一人、神無月だけはその眉を微動だにせず、鬼灯の背中を睨みつけていた。
 
●神無月の神社
 ちょうど、神無月と同行した仲間達がならず者と戦いを繰り広げている最中――
「わぁ……!」
『おもちゃのお医者さん』イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)の目を輝かせたのは、一番損傷の激しい神社の至る所に飾られた彫像の数々。神使とされている狐、猿、鶏――悪霊を払うというその動物達の険しい顔つきに彼は思わず惹かれてしまったのだ。
「かっこよくて素敵だけど。でも一個ぐらいは可愛いを入れてもいいかな、オフィーリア」
 ――もう、後で怒られても知らないわよ
 彼の腕に抱えられ揺れる。うさぎの人形の呆れた様な忠告はイーハトーヴの耳に入ったのだろうか。どちらにせよイーハトーヴがその顔をひとたび可愛く掘り始めれば、その可愛さへの探求心は決して止まらなくなってしまうのだが。
 一つでは足りない。もう抑えきれない――

「いや、大きくない?」
 今回はうまくサボれると思ったのに――そんな『猫派』錫蘭 ルフナ(p3p004350)の思考は、開かれた見取り図の前に跡形もなく吹き飛ばされていた。
 流石に大規模とはいかないが敷地も神社も小さいとは決して言えない。突貫工事で補修が必要とは言え、むしろ補修で済んでいるだけ凄すぎる。これならまだ神主に成り代わったと言われた方がしっくりくる。
「体一つでこんなところに飛ばされて一月でこれって。ニンジャってみんなこうなの……?」
 忍者ならできるかもしれない、真相は全て闇の中。ルフナはどこか途方に暮れた様に空を見上げながら、遥か彼方、宙に浮かぶ一つの影を眺めるのであった。
 神社の空からゆっくりとその影が舞い降りる、石畳の上に着地したそれはどこかメルヘンな箒に重い籠をぶら下げ、資材を運ぶ『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)。
「ひぃ、ふぅ、みぃ。ええと、頼まれたのはこれぐらいでよかったかしらぁ」
 アーリアは箒をゆっくりと降りると籠を掴み、彼女が幾度も往復して出来上がった資材の山の上に積み上げる。修繕に当たる人員が更に増えれば再びアーリアの手によって高く運ばれる事となるだろう、彼女の仕事はこれからだ。更に頑張るためにと、アーリアがどこからか取り出したのは一本の赤葡萄酒が入った瓶。
「それじゃあ、景気づけに一休み――」
「やあ、精が出るね」
 行人の声にアーリアは慌てて瓶を隠し振り返る。
「あら行人くん、もう終わったの?」
「ああ、バッチリだ。ただ一つ問題があってね」
 伏見が親指を向けた先には彼が連れてきた筋骨隆々の男達。恐らくあれが捕まっていた大工達なのであろう……だが、その誰もが蒼い肌を更に青ざめて、お互い抱きしめ合うように震えていた。
「俺達は連中を突き出してくるから、お姉さん達が励ましといてくれないかな」
「勿論よ、大変な目にあったみんなを一杯慰めてあげなくちゃ」
 ああ、頼むよ――神社の入り口側へと歩いていく行人とすれ違う形で『星を墜とす者』星穹(p3p008330)がアーリアの元へと駆け付けると、即座に事態を把握しアーリアへ提案をする。
「彼らのお心は私にお任せを、アーリア様は休んでいてください」
「でも休むわけにはいかないわ……そうだ、私は皆を元気づける為にお味噌汁とおにぎりでも作ってきましょうか♪」
 手を振るとアーリアは再び箒に跨り空へと浮き上がる。星穹はすぐさま震える大工達の元へと駆け付け、背伸びをして彼らと目線を合わせるのだ。
「初めまして、私は星穹と申します」
 其の名を伝えた星穹は確かな意志と祭りへの情熱をもって、その心を振るわせようと語り掛ける。星穹はか細き女の身なれど、その誠意は確かに彼らの同僚として、仲間として、共に祭りを成功させたいと願う存在であると伝えるにはそう長い時間はかからなかった。
「皆様の優れた技術を、そしてどうか、笑顔も見てみたいと……傲慢乍らも、思うのです」
 星穹の言葉を聞き、お互いの顔を見合わせる大工達。彼らの震えは、もはやない。
「すまない……職人の俺達が腑抜けちゃあいけないよな、星穹さん」
「はい、その通りです、そうでなければ神無月先生に怒られてしまいますよ?」
 握手をした後口元を隠して笑い、彼らと共に工具を手に取り神社の壁を修理に向かう星穹。そんな彼女の姿を、ルフナとイーハトーヴは後ろから眺めるのであった。
「あーあ、あんな女の子の手握っちゃって、あの人たちが握るのは金槌、釘打ち、あとこの見取り図ぐらいで十分なのにさ」
 そう怠そうに揺らすルフナの見取り図には、修理すべき場所がびっちりと記されてあった。やる事はやるショタ、ルフナである。
「ルフナ、それじゃあ俺達も手伝いにいこうか」
「イーハトーヴ、僕はやらないよ? 面倒だし力ないし、代わりにあの人たち魔法で休ませないから」
「結構えげつないね!?」

 とは言えそうでもさせて急がねば夜には間に合わない。祭りを成功させるために彼らに休む暇など残されていないのだ。
 修繕が終われば祭りの準備、続いてアーリアの料理のお手伝い、やる事為す事はまだまだある。
 準備は十分、あとは祭りに向けて突っ走れ、イレギュラーズ!

●楽しいお祭り?
「それじゃ、再会と、素敵な出会いと、お祭の夜に――乾杯!」
「乾杯~!」
 夏の夜空に大輪の花が咲く。豊穣伝統のその花火と用意した肴に心を躍らせ、山吹色の髪をゆらめかせるアーリアは大工達と日本酒を呑みかわす。完全に酒が回り恍惚としたアーリアに流星、もとい、リュゼ・フロワは可憐な浴衣姿で大工達を楽しませながらてきぱきとお酌をして回る。
「さあさあ、どうぞどうぞ、皆様お疲れさまでした」
 絶やさず、溢れさせず、急速に消費される酒の量に足りないかリュゼは若干の焦りを覚えながらも小休止に一度息を吐くと、後方で盛大に賑わう露店の盛り上がりを眺める。
 露店の一つ、何やら土産物が並んだその店の前では、行人が力を貸してくれた精霊たちに混沌の大陸から持ち込んだ高価な菓子を持たせながら、一仕事を終えた彼らに労いの言葉を投げかけていたのである。
「みんな本当によくやった。八百万は豊穣の神というからね、遠慮なく持って行ってくれよ。それと、あと一つだけ――」
 祭りに近づく不埒な輩がいないか確認すると、夜景を眺めに風で浮かび上がった行人の姿。思わず彼の姿にリュゼの意識が引っ張られる。
「――嗚呼、此れは、美味しい」
 透き通るような、味。一つ口に含んで、甘い吐息を吐いた星穹にリュゼは気が付くと徳利を手に駆け寄った。
「酒とは、美味しい物なのか?」
「はい、初めて飲むものですが……」
 星穹の盃に酒を注ぎながら、リュゼは行き交う会話に頭領の声が無い事に強い違和感を覚えた。
「そういえば、頭領は? 逢華殿もいないようだが……」
「久方ぶりの会話を弾ませているのではないでしょうか? 神無月班にしかわからない事もございますし」
「そうか……」
 変装した身で無理に探る事もあるまいとしたリュゼは、ルフナの声に気付くと彼の元へと駆けて行った。酌を取るものに休みなどないのだ。
「ルフナ殿も呑むのか?」
「一応注いでもらうだけ、あと僕前にも行ったけど56だからね?」
 そしてルフナが酒の香りを楽しもうとその盃を顔に近づけた時、一際大きな花火が上がり、眩い輝きと共に炸裂する。
「たーまやー、うふふふ……♪」
 そんなアーリアの楽しそうな声を聞きながら、ルフナは「悪くはないね」と一人呟くのであった。
 豊穣の夏祭りより一足早く訪れたその縁日は、村中の鬼人たちが集まり大賑わい、神無月もこれでより村人から怪しまれるような存在では無くなるだろう。めでたし、めでたし、そうルフナは盃を手に呟くのであった。
「まあ、僕はめでたしじゃないって知ってるんだけどね」
 そうルフナが見つめた神社の社の中では――

「出してええええ! 俺頭領だよ、出してえええええ!」
『出すの、出すのだわ!』
 確かに自分は嫁殿と神無月と三人で特製の酒を飲もうと神社の中に誘われたはず、それが気が付けば軟禁されている。
 拳を社の扉に幾度も幾度も叩きつけ、鬼灯が泣き叫ぶ、ついでに嫁殿も泣き叫ぶ。
 幾ら泣き叫ぼうとも扉はピクリとも動かず、向こう側から「出せないよ、頭領さまでも」という冷酷な逢華の声が響くだけ。
「権限を振り回そうと無駄ですよ、『責任はとる』と既に伝達済みでございます」
 鬼灯が振り向くと、そこには漆黒のオーラを放つ神無月――既に彼の足元には全身に御札を貼られ、悶えるイーハトーヴの姿もあった。
「可愛いは、正義だと思ったのに……」
「確かにあれはわたくし好みですが、全部可愛くては宗教の意味がないでしょうが!」
「その通り、だね……」
 諦念に満ちた言葉と共に動かなくなったイーハトーヴを見やった神無月は再び鬼灯たちへと目線を動かし、その眼力で彼らを睨みつける。
「そして御二方様も残念でございます。この神無月、腹は白かろうとも目が白くなる事はありませぬのに」
「待ってくれ、俺には心当たりが無い! 何も悪い事はしていないし取り憑かれた覚えはない!」
「では、これに見覚えは御座いませんか?」
 神無月の示した物に鬼灯が固まる、そして扉は開かない。
『さっきの御札だわ……』
「はい、そしてこれは――かなりの厄憑きでございます」
「なんだって!?」
 嫁殿の言葉に鬼灯が気付けどもう遅い――まるで平手打ちされたかのような御札の圧力が頬で散り、彼の体は横に吹っ飛ばされる。
「このお馬鹿さんがっ! よりによってこの私の前で憑かれるとは!」
「ひいっ!?」
 まるで5秒が数分に引き延ばされたかのような恐怖の中、鬼灯は神無月の蒼い瞳を見つめる。宙に無数の御札が浮き上がり、鬼灯とイーハトーヴの全身という全身を埋め尽くさんと狙いを定めている――ああ、逃れられない。
「二人とも、今宵はたっぷりと自慢の除霊をお見せ致しましょう……よろしいですか?」
「「いやだぁぁぁぁぁ!」」
 拒否権は無い。二人の叫び声は社の壁に呑まれ外に響く事も無い。
 そして、戦慄の夜が訪れた――

成否

成功

MVP

星穹(p3p008330)
約束の瓊盾

状態異常

イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)[重傷]
キラキラを守って
黒影 鬼灯(p3p007949)[重傷]
やさしき愛妻家

あとがき

 お叱り歓迎なんてプレイング貰うの最初で最後だと思う。
 神無月さんの関係者シナリオはこれにて終了となります。ぐおお、文字数……!
 中々面白い設定で動かしてて楽しかったです。神無月様はそう思わせる魅力的なキャラクターでした。
 忍者ってすごいですね。

 この度はリクエストありがとうございました。また機会がございましたら宜しくお願い致します。

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