PandoraPartyProject

シナリオ詳細

高天京斬人譚

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●お奇遇ですね
「何じゃ、主か。珍しい所で会うたな――」
 黄泉津が都、夜の高天京――その五条が大橋にて。
 一先ずは中務卿・建葉晴明の顔を立てる事にして、実に忌々しい態度を見せた天香長胤の命じた怨霊退治を請け負う事にしたイレギュラーズだったが、この夜仕事場に赴いた彼等を待っていたのは『実に意外で見知った顔の持ち主』だった。
「――珍しい所とか、そういう問題じゃないだろ」
 呆れ顔をしたイレギュラーズに「そうか?」と涼しい顔をしたのは死牡丹梅泉。
 彼等とは因縁浅からず、幾度も刃を交えた『宿敵』の一人であった。
「どうしてこんな場所に……第一お前はクリスチアンの客将だろうに」
 梅泉は幻想北部に拠点を構える――これまた大変な狐である――クリスチアン・バダンデールという大商人の謂わば用心棒とも言える存在だ。何気に気の合うらしい二人は普段は共に行動し、何やら悪だくみをしている筈だった。幻想を中心に動く慎重派のクリスチアンがまさかこんなタイミングで高天京に触手を伸ばすとは思えないから、ここに梅泉が居るのは必然的に彼の独断となろう。何故も、どうやって、も。
「答えは簡単じゃな。第一にわしは特異運命座標ぞ。
 主等が『空中神殿(ちかみち)』を使えるならばわしに使えぬ道理もなかろう。
 第二に、此処には来た事が無かったのでなぁ。何せ鬼と怨霊の棲家というではないか。
 これ程胸の躍る遊び場も早々は無かろうよ?」
「そういえばそういうやつだった」とイレギュラーズは問うた事を後悔した。
「ああ、もう一つ追加するなら――
 クリスチアンはあれで怠惰な男故な。
 たまには己を動かしてやらぬでは身命も腐るというもの。
 それに小雪に時雨も残して来たのじゃ。概ね問題も無かろうよ――」
 成る程、梅泉の言い分は梅泉にとっては当然の事であり、おかしな所はないのだろう。
 彼は相手がクライアントであろうとイレギュラーズであろうと彼一流の流儀の他には動かない。てこでも動かないのだから、黄泉津に斬りたい相手がいると思えばそれ以外の理由等どうでも良い事に違いない。
 つまり、それ以上でもそれ以下でもなく。
 この出会いは『必然』だったとでも言いたいのだろう――
「さて、わしは今宵、この五条の大橋に現れると聞く『僧兵』を斬りにきた訳じゃが――」
「目的は同じだな。共闘するか?」
「戯け。誰がそんな退屈な事をするか。こうなれば主等も僧兵も同じ的よ」
 ぎらりと眼光を鋭くした梅泉にイレギュラーズは構えたが、
「……と、言いたい所じゃがな。
 この場は主等が切り開いた海の先。
 それについ先日は親父殿の供養も手伝って貰った身じゃ。
 この場位は――そうじゃな。たまには譲ってやるとするか」
 梅泉はイレギュラーズを一瞥してから大橋の先を見つめた。
 橋の中程には怨念が集い、一人の大仰な僧兵と武者数体の実像を結び出す。
 彼等こそ、今夜のイレギュラーズが仕留める事を要請された『刀狩りの怨』である。
「恩に着るぜ。着たくないけど」
 そう言ったイレギュラーズは道を開けた梅泉の前に出た。
 倒せば良い、結論は同じでも依頼を受けた以上、完遂は此方側に拠らねばならぬ。
 話はまとまり、やる気を見せたイレギュラーズの背中に梅泉が笑みを投げる。
「但し、わしを先んじようとするのじゃ。
 よもやつまらぬ戦いを――わしの興を削ぐような姿は見せまいなぁ?
 ゆめ忘れる事無くな。あんまり眠い様なら主等含めて全て斬るぞ?」

GMコメント

 YAMIDEITEIっす。
 不足しているとのことで一本。
 以下詳細。

●依頼達成条件
・『僧兵』の撃破

●五条の大橋
 黄泉津が都、夜の高天京、その大橋。
 橋幅は三メートル程もあり左右には欄干。
 比較的自由に動けますが少し傾斜がついています。

●『僧兵』
 巨大なる体躯に揺らめく妖しい薙刀を構えた僧兵。
 命中、攻撃力、防技、抵抗、EXA、EXFが極めて高いです。
 又HPは尋常ではない程高いです。
 以下、攻撃能力等詳細。

・僧兵は『棘』を持ちます。
・僧兵は毎ターン開始時HP、APを回復し、BS回復50を生じます。
・仁王立ち(瞬付・能力大幅増大)
・一喝(神自域・麻痺・呪縛・呪殺・Mアタック大)
・薙ぎ払い(物近列・威力大・乱れ・崩れ・体勢不利・出血・流血・失血)
・EX 勧進帳

●鎧武者
 怨霊が武者の姿をとるものたち。
 刀を備えるものと弓をもつものが三体ずつ。
 僧兵に従う雑霊ですが耐久力と攻撃力に優れます。

●死牡丹梅泉
 幻想サリューのクリスチアンの客将。
『出番を譲ってくれた』人斬り。
 不甲斐ない戦いをすると動き出します。
 どう動くかは不明ですが、動く条件は以下です。

・イレギュラーズの戦いがだらしない
・イレギュラーズが三分以内に戦いを決めない

 時限装置のようなものです。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●Danger!
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

 純戦ですが多少の変則ギミックを持ちます。
 以上、宜しければご参加くださいませ。

  • 高天京斬人譚Lv:25以上完了
  • GM名YAMIDEITEI
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2020年07月24日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)
生満つる夜の守人
雨宮 利香(p3p001254)
雨宿りの
赤羽・大地(p3p004151)
未来を、この手で
白薊 小夜(p3p006668)
盲御前
レイリー=シュタイン(p3p007270)
守戦卓越
桐神 きり(p3p007718)
長月・イナリ(p3p008096)
狐です

リプレイ

●第一幕
 ――但し、わしを先んじようとするのじゃ。
 よもやつまらぬ戦いを――わしの興を削ぐような姿は見せまいなぁ?
 ゆめ忘れる事無くな。あんまり眠い様なら主等含めて全て斬るぞ?

 何とも物騒で何とも剣呑な台詞がまずは夜を彩った。
「あなたが噂に聞く、スーパー剣客の梅泉さん!
 うん、感じるに恐ろしい人だわ……バッサリと怒られない様に頑張らないとね!」
「ただの怨霊退治だと思ったら、何やら物騒な方がいらっしゃったようで。
 これは三つ巴の大戦になるかとも思いましたが、どうにかそれは避けられたみたいですが」
 肩を竦めた剣客――梅泉に『狐です』長月・イナリ(p3p008096)が声を上げ、桐神 きり(p3p007718)が苦笑する。
 しかし、今夜数多あるというカムイグラの依頼に赴いた面々は一先ず最悪の状態を免れたに過ぎなかったとしか言えない。『怨霊退治』の現場にて彼等が出会った――出会ってしまったのは、旧知の人斬り――死牡丹梅泉なる剣士であった。依頼の場に居合わせた全く気楽に、全く物騒に『友好的な言葉』を投げかけた一人の彼の存在は否が応無く場の空気を引き締めている。
「前門の虎、後門の狼とはこの事か……?」
「噂に聞く梅泉殿の前で戦うなどむず痒いし武者震い。
 狩るべき敵も強大な怨霊なら、腕が鳴るってものよね――」
 イナリやきりの言葉に応じるように『双色クリムゾン』赤羽・大地(p3p004151)、『ヴァイスドラッヘ』レイリ―=シュタイン(p3p007270)が前を見据えた。
 今夜は蒸し暑く、時折吹き抜ける風も生温さを帯びている。
 粘つくような殺気と魔性を帯びた時間は『怨霊』なるカムイグラ特有の事情を現すに全く適切過ぎる風情を湛えていたが、『幽霊』に似合いの凍える夜とならないのはやはり季節(しちがつ)が故である。
「剣士を前に、鞭で戦うはファンの名折れ。
 良いでしょう。稚拙ながら磨いたこの剣であの悪霊の魂、喰らって見せます。
 敬意を以て戦わせていただきます――やっと見せられますよ、梅泉さん!」
「こんな夜更けに思いがけない巡り会い、思わずあの夜を思い出してしまうけれど。
 今回は獲物を譲られた上に発破もかけられてしまったわね……
 ふふふ、なんだか楽しい? いえ? これは『嬉しい』かしら?」
 さりとて、やはり蓼食う虫も好き好きか。リスクは時に唯のリスクに留まらぬ事もあろう。蟠る憤怒の怨霊の存在に関わらず、『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)や『盲御前』白薊 小夜(p3p006668)の声色は女子らしく華やいでさえいた。腐れ縁と呼べばいいのか、因縁深い彼は多くのイレギュラーズにとって最も危険であり、最も関わりたくない人間であり、同時に一部の人間には強い憧憬さえ感じさせる存在だとも言える。
「つくづく酔狂な連中よ。戯言は良いからとっとと斬れ」
「梅泉に見られながら戦うってのは、ぞっとしないが……
 でも、まあ。依頼に集中するべきだ。『不甲斐無い戦い』が何を呼ぶかを考えればな」
「賢い妾はベンケーとウシワカマルなる話をウォーカーの出入り商人から聞いたことがあるのじゃが、アレは似たようなものなのかの」
 半ば呆れたかのような梅泉の言葉に『星追う青』ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)が頷き、『共にあれ』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)が呟いた。

 おおおおおおお……!

 夏の夜気が怨嗟に揺れていた。
 戦いに到る前の僅かな猶予の時間は最早一杯か。
 大橋の上で具現化を果たした今夜の大敵は戦いを見守る邪剣士の存在如何に拠らず、イレギュラーズに簡単に勝ちを譲るような相手には見えない。
 なればこそ、この戦いは『時限装置つきの死闘』なのである。
 一先ず譲り、戦いを見守る梅泉が飽きるより前に望まれるのは決着だ。
「梅ちゃん。しばらく妾のペットを預けていく故頼むのじゃ」
 いまいち締まらないデイジーの頼み事を、
「あの、戦いの前にこんな事を言うのもなんですけど。
 もし、もしですよ――ご満足頂けたら――ご褒美に死なない程度に遊んで下さいな。
 貴方を『手ぶら』で帰すわけにはいきませんし、望む結果には然程変わりないでしょう?」
「そうだな。私からもお願いできないだろうか? 一つ手合わせを」
「戯け。もう勝った気か? その後の話なぞ気が早いわ。
 死ぬか死なぬかなぞ主等次第じゃ。このわしが知るものかよ」
 振り向かずに秋波を送る利香の、レイリーの願いを手で追いやって梅泉は口の端を歪めていた。
 内心でつくづくも風変わりな連中と嗤っている。
(まぁ、そうよな――さてもお手並み拝見か)
 死牡丹梅泉はまずは観客である。特異運命座標が見事敵を破るならそれは天晴れ。
 醜態を晒すならばそれもまた良しである。
 元より彼に損は無かった。

●第二幕
 互いに語る言葉を持つような関係でもなければその後は早かった。
「さあ、魔術師の戦い方――見て貰おうじゃないか」
「攻めたい所だけど。まずは、ね――」
 ウィリアムやイナリの言葉の通り、この戦いは血を望む割に知的なパズルのようなものである。只でさえ倒すに易くはない難敵を精々が三分という時間の間に仕留めるというのだからそれも当然の事だ。ウィリアムはまず先手を取るも自陣のきりによる支援を待つ事を選んでいる。一方のイナリはほぼ同時に動き出しまず自身に物理神秘両面に対しての強力な防御の備えを用意している。
「マ、そこに誰が立ってようト、やることは変わらねぇガ――
 ぞっとスルってのは確かだナ!」
 比較的鈍重らしい僧兵の先手を取るのは難しい事では無かった。
 大橋の上でまとめて具現化した怨霊共は気を吐いた大地の格好の的であり、邪悪な魂魄を切り裂くように強く瞬く神気の閃光が戦いの始まりを告げる号砲となる。
 僧兵に先んじて武者、弓兵の怨霊が動き始めるが、
「こんな現場なら、これは一番分かり易いですからね!」
 先の『おねだり』も含めて気力の充実は格別か、利香が迷わず前に出て敵の目を自身に集める。
 まず集まった猛攻を並々ならぬその技量で捌き切った利香がちらりと視線を外へ投げた。
「まったくだわ。観客もいらっしゃることだし、情けない所なんて見せるなんて死にたくなる。
 如何してもこの手で僧兵を斬って落としてみせましょう」
 利香の思惑に応えたのは彼女を軽く追い抜き、薙刀を構えた僧兵に肉薄する小夜である。
(『全力』を見せればいいなんて思わないけれど。
 『私』はそんなに無欲では無いけれど――)
 せめても、もう少し時間が欲しい、もう少し期待していて欲しいと思うのは彼女の絶えて久しい何とも剣呑で何とも物騒な『乙女心』が故である。
「――『行くわよ』」
 宣誓の通り自己強化を瞬時に果たした小夜は始まると同時にそのギアを跳ね上げていた。
 抱く気力の、強い想いのその通りに獰猛な獣の如く僧兵に喰らい付き前のめりな剣で傷を刻み付ける。

 おおおおおおおお!

 されど、挨拶代わりと呼ぶには苛烈すぎる斬撃の波にも僧兵は微塵も揺らがない。お返しとばかりに跳ね返った打撃の余波に、衝撃波さえ伴った怒号の一喝に小夜や利香、イレギュラーズの表情が僅かに歪む。
「うーむ、これを早く倒せ、じゃったか?」
 デイジーの口にした『ベンケイ』の逸話の如く、大橋の上で仁王立ちをする敵は堅牢である。
 パーティの今夜の相手は高天京、五条の大橋の上に陣取る極めて強力な怨霊である。
 カムイグラ首脳の望んだ仕事の内でも特に危険とされたこの討伐は決して簡単な話ではない。旧知の梅泉との出会いはむしろ想定外の事態であり、その想定外を置かなかったとしても敵はかなり手厳しい。
「しかし、それは想定の内。
 戦好きが獲物を譲らせたならば、やはりそれなりの戦いを見せなければなりませんね。
 皆さんが十全以上の力を発揮できるよう、全力で支援させて頂きます!」
 成る程、敵が強いのが先刻承知なのはきりの言う通りである。
『三分の時限は極めて短いが、言う程短いものでもない』。それは矛盾する二項だが、全力で仕掛け続けるには多少の工夫が必要なのは確かだった。それを埋めるのがきりの支援であり、主立って余力のコントロールを引き受ける少女の役割は極めて大きい。
 同時にコントロールと言うならば、
「むず痒いがな、ここは『見参』とさせて貰おうか!」
 最も遅く利香や小夜が突っかけた前線に並んだ千両役者(レイリー)を外して語る訳にはゆくまい。
 彼女の役割は強固なフロントを形成する二人を守り続ける事にある。攻め手には優れぬ彼女だが、イレギュラーズの中でも有数に突破し難き『壁』である事は言うまでもない。
 急かされる戦いにも緩急はあろう。
 長くて短い三分をどう使い切るかが勝負であった。

●第三幕
 射程を持つ敵の存在は後衛を脅かす確かな危険だったが、利香のチャームは『自身に』攻撃を集め続けている。そして、実際の所。実に珍しい事に今夜は利香さえも庇われる身である。
「……っ、まだまだ!」
 放たれた矢を、振り抜かれた薙刀の重撃を『レイリーが唯一人で受け止めた』。
 利香辺りならばこれを堪えようが、研ぎ過ぎた日本刀のような小夜はそうはゆくまい。
 弓兵の攻撃が、武者の斬撃がレイリーに深い傷を刻んでいく。
 並の戦士ならば立ち所に倒れよう猛攻だが、彼女は武蔵坊の如くそこで踏み止まり続けている。
「ごめんね! でも、この後は私に任せてね――」
 気遣った利香にレイリーが「何、まだまだ」と嘯けば、
「責任重大ね。重大だわ、楽しいし嬉しくなっちゃう」
 小夜は戦いの最中にむしろ艶然と微笑んだ。
 元よりパーティの布陣の、作戦の肝は見事なまでのダメージ・コントロールにあった。攻め手に優れぬレイリーがまず盾となるのは最も合理的だ。一方で利香は極めて高い防御能力を誇るがこちらは攻めもそう不得手ではない。彼女がレイリーの『後』に入るのは最も攻撃に振り切った小夜を一秒でも長く万全に前線に居座らせる為の『当然』である。
 一方で守りを要しない者もいる。
「その命、稲の様に刈り取らせてもらうわね!」
 サイドステップから瞬時に僧兵の死角に潜り込み、天孫降臨・猿田彦命ノ霧――狂気の霧を撒く神技を閃かせれば敵陣には確かな乱れが訪れた。
 元より無差別に周囲を巻き込む大技だが、荒っぽいその動きを完全に担保するのはやはり最前線に立つレイリーであった。狂気さえ彼女を侵すには不足が過ぎる!
「詰め手をお願い!」
 イナリの言葉は誰かの名前を呼ばなかったが、応じるのが誰かは分かっていた。
 強固なフロントが攻めながら時間を稼げるならば、仕事を果たすのは後衛も同じである。

『魔術師の戦いを見せる』。

 そう大見得を切ったウィリアムの攻勢は果たして見事なものになっていた。
 ブレイドオブアステリズムは彼の練り上げた魔術である。蒼く輝く剣が流星の如く夜闇を切り裂いた。魔力より創造された星の剣は、彼の意志力を刃と成す。戦いに向かう彼の心を反映するかのように鋭さを増し、強烈な威力で鎧武者の一を貫いた。
「――次だ!」
 攻撃力は極めて高いが燃費は悪い。彼の『全力』は野放図ならば三分は持つまいが、そこは先のきりの動き――ソリッドシナジーが物を言う。暴れに暴れる僧兵を調伏せんとするならば、可能な限り速やかにその他の怨霊を片付けてダメージを集める必要があるのは明白となろう。
(攻めは予想以上に強い。それにあの僧兵、相当に粘り強い筈――)
 ウィリアムと共にパーティの賦活も担うきりは或る意味で最も気の抜けない立場である。
 多くの場合と今夜も同じだ。どれ程理想的に手段を詰めたとしても敵うかどうかは別問題。
 勝敗の分水嶺の上で迷いに迷う女神を引き寄せるのは常に最良の人為のみ。
「アア、まったク! 楽をさせてくれねぇナ!」
 一声を発した大地がダーティピンポイントで鎧武者の頭部を射抜いた。
 何れもしぶとい怨霊だが、この一撃でぐらりと揺れた一体が大きな隙をパーティに晒す。
「ナイスアシストなのじゃ!」
 そこで畳みかけたのはこの場で最高の火力を誇るデイジーだった。
 態度よりも大きい魔光閃熱のその波は一瞬で怨霊の全身をさらい、跡には何も残していない。
「ニョイノワタシのカンジンチョー。
 たまたま持っていた巻物を偽の勧進帳として読み上げたと聞く」
「俺の世界で聞いたものと似ているなら……
 確か、主君のために、白紙の本を読んで、関所を通り抜ける話だったが……」
「うーむ、それは。見たいような見たくないような。どの道簡単にさせはせぬがな!」
 自身に応えた大地の言葉にデイジーは口元を歪めた。
 今日は真面目な所を見せる彼女の大威力はまさに大見得である。
 激しい戦いは尚も続いた。
「……ああ、やってくれる。それはそうか」
 唇から毀れた血を手の甲で拭い去る。
「だが、ここからだ。簡単に超えられると思って貰っては困るな!」
 怨霊達も攻め手を強め、気を吐くもレイリーの余力は急速に失われている。
 最早この戦いは『どちらが先に決壊するか』のものとなり、予想通りに――予想以上に際どい瞬間の連続は迷い惑って行末を決めかねているかのようだった。
 望む望まないに関わらずあと一分――一分もすれば全ての決着はつくだろう。
 だが、そのタイムリミットを是とするようなイレギュラーズはいない。
 それを知らぬ怨霊以上に、彼等は鬼気の如くその闘志を揺らめかせていた!

●第四幕
 果たして、決着の時は近かった。
 粘りに粘り最高の仕事をしたレイリーが遂に倒された。
 利香が防御に回ったならば攻め手はその分削られる。きりの活躍もあり持久力を得たウィリアムは、極めて持久的に戦う事に優れたきり、後衛の大砲としてエネルギータンクのような頼もしさを見せるデイジーは、要所で楔の如く仕事をする大地等後衛はまだ継戦能力を残していたが、幾分か漏れ始めた疲労とダメージは確かに状況に綻びをもたらしつつあったのだ。
「……っ、まだまだ、これからです!」
 幾度目かきりが仲間達を強く激励した。
 鼓舞礼賛の強き魔性は、
「まだ倒れてくれるなよ!?」
 ウィリアムの点す輝星瑞光――沈まぬ星は次々と訪れる危機を打ち払う頼みとなる。
「これだけ盛り上げてくれたのだもの。簡単に折れてあげる訳にはいかないわね!」
 何度跳ね返されようと果敢に飛び込むイナリが渾身の一打で敵を打った。
 撹乱と打撃力、防衛力を併せ持つ彼女は『牛若丸のように』敵陣を跳んで魅せている。
(とは言え……まずいですね)
 だが、利香は荒い呼吸でそう考えた。
 前衛の武者三体を消滅させるに成功していたパーティだが肝心の僧兵はその回復能力もあって倒し切れていない状態だった。パーティの編成は元より防御的である。『時限』がないのであれば依頼を成功させるに悪くはない布陣だったに違いないが、今夜については――利香個人的には喜ばしい事だったのだが――梅泉という『余計』がいる故に諸手を挙げて喜べる状態ではなくなっている。
「でも、絶対に崩させませんよ! なんとしても隊列とペースを保ち続けるんです!」
 防衛は愚直だが自分に出来る事が何かと考えればまずやはりそれだった。
 攻撃が最大の防御ならば、防御も時に最大の攻撃となる理屈も通ろう。
 崩れず攻め手を維持すれば『短い三分さえ長いチャンスの時間となる』。
「分かり易いって言えば分かり易いがの! いい加減倒れるのじゃ!」
 例えばデイジーや小夜が『超』のつく猛攻を突き刺し続けるならば勝機は決して消えはすまい。
(不甲斐ない様は見せられないんです。大切なのは臆しない事、制圧し続ける事。
 それが攻め手であろうと、守り手であろうと――変わらないでしょう!?)
 故に血が滲む程に唇を噛み締めた利香はその一線を譲らない。
 斃されたレイリーと同じく運命の炎を特異運命座標の矜持を燃やし、その場所を譲らない。
(試したいんです 貴方のための剣技がどこまで通用するか。
 示したいんです 私がただの厄介者じゃない事を。
 ええ、きっと。期待には答えてみせますよ。私、死ぬ気で戦うのは大好きですから!)
 隙を見つけ反撃に天衣無縫を叩きつけ、遂に倒された時――利香は確かに笑んでいた。
 前線の壁が倒された。
 故に状況が決着を望み始めたのは確かであった。
 より攻勢を強めたイレギュラーズの総攻撃が仁王立つ僧兵に吸い込まれた。
 さしものそれとて余力は薄い。イレギュラーズと同じである。
 あと幾度も受け止められよう筈も無い。
 それでも猛烈な攻め手を受け止めたそれは大仰な構えを取り、見栄を張り。
「――さあ、来るぞ!」
 デイジーの強い警告を引き出した。最後の最後、約束されていたかのように動き出した大技はイレギュラーズの勝機を挫く一打となろう。
「……」
『観劇』を愉しむ梅泉の眉がぴくりと動いた。
『何が起きるかを知るまでも無く、ギリギリの攻防の肌感覚でそれを誰もが知っていた』。
 だからこそ、小夜はこの一瞬刹那を待っていたとも言えるだろうか?
「――魅せたいって言ったじゃない。少なくともこの場で余所見なんて許さない」
 揺らめく魔性を纏う小夜の口にした執念はまさに宿業の如しである。
 遠き時間の彼方に刀を握ったその瞬間から――『少女がそんななりをした女怪に成り果てたその時より先に』。遥か霞む高みの彼方だけに焦がれた彼女は毎夜来たるこの刹那ばかりを望んでいた。
(貴方にはまだまだ遠く及ばないでしょうけれど。
『今の』私の全力を、この刃に乗せて――斬るッ!)
 身を低く痩身小躯に秘めたるそのバネを極限まで引き絞り。
「はああああああああああああああ――ッ!」
 彼女には珍しく『はしたなく』裂帛の気合を吐き出した一撃は。

 ――いつかきっと、貴方にも届かせてみせるから。

 立ち塞がる巨影の先に別の何かさえ見て。
 花葬五連、今夜の戦いそのものを斬り捨てた。

●終幕
「ふぅ、本当に大変な相手だったわ……」
 イナリの吐き出した言葉は心底からの安堵であった。
 結果は弓兵を掃討したイレギュラーズの勝利に終わっていたが、それは返す返すも紙一重の結果であったと言えるだろう。危ないシーンは山程あったし、勝てたのはレイリーや利香の献身、きりの支援、ウィリアムやデイジーの火力、楔となった大地に小夜の決め打ち、勿論イナリの撹乱のお陰としか言いようが無いだろう。
「預かりご苦労なのじゃ」
「何もしてはおらぬがな」
 鷹揚に言ったデイジーの一方で恐縮したかのようにペットが頭を下げている。
「もう少し手間取るようなら出番かと思ったがな?」
 からかうように言った梅泉だが、どうやらイレギュラーズの戦いぶりは彼の眼鏡に叶ったらしい。楽し気に笑う彼に殺気は無く。怨霊の去った五条には人心地が戻っていた。
「いやー、敵ながら相当な強者でしたね、あの僧兵。
 死牡丹さんがこんな所まで出向いてくるのも頷けます。
 それはそうと……本当にこの後『余興』をするんですか?」
 きりはちらりと利香やレイリーを見た。
 無事に倒せば自身等と一太刀交えよと言っていた二人である。
 だが、些か不運な事に――いや当然と言うべきか。戦いの最前線で最も苛烈に敵の攻撃を受け止め続けた二人にはまるで余力というものが残されていない。
「友人から話を聞いて、凄い武人……いや人斬りと聞いて憧れていたのだが……」
「うぐぐぐ」
 痛恨に口惜しくレイリーが呟けば利香の方は言葉にもならず何とも難しい顔をした。
「余興ね……よくやる気になるもんだ」
「俺は一応尊重するがナ……この場は無理だと思うガ」
 やり合う気は無いが止める気も無いウィリアムや大地だったが、私見は決して間違ってはいまい。
 無理を押してやり合えばいよいよ命に関わるし、万全全力が尽くせずして挑んだ所で意味は薄いのだから二人としても『分かっている話』であろう。
 故に項垂れる二人は大上段の剣士につまらない駄々をこねる事は無い。一応は。
「いいじゃない」
 そんな一方で笑みを含んでそう言ったのは小夜だった。
「満足して貰えたのなら、次の機会をくれないような人じゃないでしょう?
 いいえ。次の機会を期待せずに、味わわずにいられるような人じゃないでしょう?
 だからこの戦いは次に繋がるもの。焦らなくても呼ばれるわよ」
 彼女は梅泉に「ね、そうでしょう?」と念を押す。
「……まぁ、そういう事にしておくか。
 主等の健闘――特にそこの娘共の受けに免じて」
 視線を送られ、ほぼ名指しで褒められたレイリーと利香が少し華やぐ。
「妬けるわね」と零した小夜は深く息をして最後に梅泉に流し目を送る。
「ねぇ。異国の夜道は物騒でしょう? そこまで送ってもらえないかしら?」
 誰しもが「誰がその口で言う」と考えて、誰一人何も言わなかった――

成否

成功

MVP

レイリー=シュタイン(p3p007270)
守戦卓越

状態異常

雨宮 利香(p3p001254) [重傷]
雨宿りの

あとがき

 YAMIDEITEIっす。
 ちょっと遅れてすいません。
 EXプレイング一杯来たのでちょっと字数多めです。

 シナリオ、お疲れ様でした。

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