シナリオ詳細
<月蝕アグノシア>夏休みタント怪獣大進撃
オープニング
●なにも持たずに生まれてしまったの
「オーッホッホッホッホッホッ! 妖精たちを取り返しにきたんですのね?
けれどここまで! なぜならば――」
灰色の巻き髪、灰色の服。灰色の肌。その全てが急速に光り輝き、彼女は高らかに指を鳴らした。
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「――が、ここで皆様を足止めし尽くすからですわーーーーー!!」
フェアリーフェニックスフェスティバルポーズで光り輝く彼女を、あなたは知っているだろうか。
「…………たん、と……?」
顔からガスマスクをゆっくりと脱いだジェック・アーロン(p3p004755)は、白い眉間に皺を寄せて小さく首を振った。
「違う」
「ええ! ええ! まっっっったく違いますわ!」
おそらくは御天道・タント(p3p006204)の頭髪(ドリルの一房)から抽出されたであろう彼女の生命情報から、この人工生命体は作られたのだろう。
逃げてきた妖精達から伝達する形で、ジェックと懇意にしていた双子妖精のスミレたちから聞いた情報によれば彼女たちは『アルベド』という種類のホムンクルスであるらしい。
かろうじて人間形態をとれる泥人形であるところの『ニグレド』からもう一段階進歩したタイプで、彼女たちの中には生命核として『フェアリーシード』が埋め込まれているという。
……こういった細かい話をうっかり忘れてしまいそうになるほどの溌剌さで、アルベドタント(略して白タント)は首をぶんぶん振ってからY字のポーズをとった。
「わたくしは唯一無二の新生命! いずれ本物を超越する新たなるタントですわ! その証拠に、ごらん遊ばせ!」
キュピピと空間に十字の光がまたたいた。ジェックは何かを察してその場から飛び退くと、ついさっき立っていた地面が焦げ付き、後方の木が突如燃えながら倒れていった。
いわゆるところのリアルビーム。光の線が見えないタイプの、見て避けられないタイプの遠隔攻撃だ。
「わたくしは『タント』を参考に作られながらより高度なパワーを与えられたニュータント! わたくしのほうがずーーーーーーっと優れていましてよ!」
「…………」
ジェックは黙って、ライフルを構え直す。
そこへ。
「オーッホッホッホッホッホッ!」
かの声が、響いた。
さて、そろそろ詳しい状況を説明せねばなるまい。
悪しき錬金術師によって侵略をうけた妖精郷アルヴィオン。町や森や湖に暮らしていた妖精達は圧倒的な暴力によって倒され、または捉えられてしまった。
囚われた妖精たちはフェアリーシードへと加工され、イレギュラーズの遺伝子情報を元に作られたアルベドに埋め込まれてしまう。
妖精女王が彼らの手に落ちる寸前。最悪の事態を阻む形で妖精郷へとたどり着いたイレギュラーズたちは、かろうじて逃げおおせた妖精たちからの救援要請をうけ今まさに妖精郷奪還にむけた戦いを始めていたのだった。
ジェックたちが任されたのは湖畔に広がる妖精の町エウィン。その大通りに立てられたタワーを守ることだった。
タワーといっても身長30センチ程度の妖精たちがつかうタワーなので、てっぺんの高さがせいぜいジェックの背丈と同じかそれより低い程度だ。
オモチャの兵隊たちが町を守ろうと出撃したが、それを先ほどの白タントや動くぬいぐるみ兵団がことごとく踏み潰していってしまったのだった。
こうしていまや守りの無くなってしまった塔を……もとい塔に逃げ込んだ妖精たちを守るべく、『ちいさなタワーディフェンス』が始まったのである。
「食う寝るところに住むところ、タネガシマ様からの要請(妖精だけに)をうけて今――」
高らかに掲げた指を鳴らす。
\きらめけ!/
\ぼくらの!/
\\\タント様!///
「――が! 到着しましたわーーーーーーー!」
フェアリーフェブラリーライブラリーポーズでおでこをぺっかぺっか点滅させるタント。
「騙されてはだめですわジェック様! そのタント様は偽タント様ですわ!」
「しってる」
「どのような手をとろうとも、妖精タワーは守って見せますわー!」
妖精ハウスよりずーーっと背の高いタントが、ビッと戦闘のポーズをとる。
大通りを一歩でまたいでしまえそうな白タントが、バシッと戦闘ポーズをとる。
「面白いですわね。……いざ尋常に」
「「勝負ですわ!」」
こうして、光と闇ならぬ光と光の大怪獣バトル(妖精視点)が幕を開けるのだった。
- <月蝕アグノシア>夏休みタント怪獣大進撃完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年07月15日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●妖精怪獣マーチ
「お待たせしました。『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)、只今参上しましたわ!」
崩れる瓦礫を鋼の腕でささえ、ヴァレーリヤは妖精たちに道を作るとゆっくりと大空へむけて立ち上がった。
屋根の上を防災頭巾を被って飛ぶ妖精を見下ろし、ゆっくりと頷いた。
「家を壊してしまうけれど……ごめんなさいね。貴方達の仲間はきっと助けてあげるから!」
「オイラもいるぜー!」
突如、妖精たちが普段から水浴びをしていたシャンパン池に巨大な水柱があがった。
ちょび魚たちが驚いて飛び出し、地面をぴちぴちとはねる。
今度はなんだと驚いて振り返った妖精が見たのは、あまりに巨大なアザラシ――『受け継がれるアザラシ伝説』ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)であった。
妖精をひとのみにしてしまいそうな巨体には、あろうことか巨大ガトリングガンが備わっている。
それをヴゥーンとうならせ、ワモンはぬいぐるみの行列めがけて砲撃を始めた。
放物線を描いて飛んでいく大量の巨大イワシ。
弾ける爆発が大通りを赤く染めていく。
「陸から池から、ニンゲンがこんなに……」
「見て、空からも!」
少年妖精が空を指さすと、青い空が暗黒に遮られていた。
いや、翼を大きく広げた『救いの翼』ミニュイ・ラ・シュエット(p3p002537)がタワーめがけて降下していたのだ。
「……まぶしいな」
ミニュイは絶妙な操作でタワーの頂上へと立つと、ぬいぐるみ軍団へと翼を広げて威嚇の姿勢をとってみせた。
ごくりと息を呑む妖精ジジイ。
「聞いたことがある」
「おじーちゃん!?」
「街に災いふりしとき、陸に鋼腕の聖者、海に巨砲の海豹、空に塔守の怪鳥が現れるであろう……」
「おじーちゃんそれ昨日僕が作った奴」
「どおりで」
ニッコリするおじーちゃんたち。
塔の窓から身を乗り出した少女妖精は、両手を組んで祈りの姿勢をとった。
「このニンゲンたちなら、あの白い怪物を倒してくれるかもしれない。今は、このニンゲンたちを信じましょう!」
さて、視点は変わって人間サイド。
塔から妖精たちが花びらでできた旗をふりながら『ガンバレー!』と叫ぶのを聞いて、『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)はぐっとファイティングポーズをとった。
「タント様の偽物を作るだなんて……ボク達の太陽は2つもいらないってことを教えてあげよう!」
「オーッホッホッホッホッホ!」
口に手をかざして高笑いをするアルベド・タイプタント。通称白タント。タント様のロールから抽出した情報によって完成したというホムンクルスの暫定完成形である。
「あ、あの、すごい笑いながら光ってるんですけど……! アルベドっていうのになるとああして光るんですか!?」
『放浪の剣士?』蓮杖 綾姫(p3p008658)は焔を盾にするように後ろからひょこっと顔を出した。
「いやうーん、光ってるのは元からだね」
「元からなんですか!?」
「あのおでこがすごい固いよ」
「固いんですか!?」
「あと名乗るとみんなが合わせるよ」
「お金も貰ってないのに!?」
初見のひとにとってタント様ってちょっとした都市伝説みたいなところあるね、って焔ははなしながら思った。
「と、とにかく……引き受けたこの仕事と使命、まっとうして見せます!」
鞘に美しい模様の描かれた剣を握り、すらりと抜刀する綾姫。
「この剣を持って進むのみ、です」
こうしてやる気を出す仲間達もいれば、白タントを見て悲しみをあらわにする者もいた。
(アルベド……愛もなく生まれて、オリジナルを越えている、という形でしか自分の存在意義を持てぬ悲しき存在、か)
『虹の橋を歩む者』ロゼット=テイ(p3p004150)は被っていた帽子を胸に抱き、はあとため息をついた。
(心臓すら他人を代用にして。本当、どうしようもないぐらい空っぽなんだね。少し、自分と似ているように思うよ。きっと――)
呼吸を整え、帽子を放り投げる。
戦うためにはいらない。
ポケットの中のコインと、戦うための覚悟だけがあればいい。
「きっと生まれて来なければ良かったね。君も」
登場、満を持して。
「オーッホッホッホッ!」
きれのいい高笑いと共にどこからともなく飛んできた『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)と『お姉チャン』ジェック・アーロン(p3p004755)が、手を繋いで妖精大通りへと着地。
「笑止ですわ、アルベド。
あなたがわたくしよりどれだけ優れていようとも……人は、一人で生きているわけではございません」
手を繋いだままバッと背中合わせにつないだ拳を突き出す二人。
「わたくしがこれまで歩んできた軌跡!」
双方反転して向かい合って反対側の拳も繋いで突き出す二人。
「繋いできた縁!」
ほっぺとぽよんてくっつけてウィンクする二人。
「紡いできた愛!」
どこからともなく壮大なクラシックミュージックが流れる。
「その! ――すべてが!!」
\きらめけ!/
塔から声をあげる妖精たち。
\ぼくらの!/
二人の左右からポージング&スライドアウトする仲間達。
\\\タント様!///
全員の声が重なり、BGMが一区切りした。
「――なのですわー!!」
ジェックとタントはシンメトリーポーズをとり、最後にジェックはガスマスクをスッと被った。
「サ……始めヨウか」
●ページのない神話
「うぬぬぬ……!」
白タントは名乗りの勢いに若干押されつつも、対抗して指を鳴らした。
「数ならこっちの勝ちですわ! いきますわよ――!」
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\\\ !///
妖精の街を破壊しながらつきすすむぬいぐるみの列。
街をはさんで白タントとタントがにらみあい、互いにきらりとおでこを光らせた。
「皆様! APのケアはわたくしとロゼット様にお任せ下さいましー!」
「うん……」
治癒能力を発揮させるロゼット。
(正直、同情を禁じ得ないのだけれど。その同情を現実から逃げる理由にするのも、被害を拡大させるのも、ナンセンスな話だろう)
仲間達が人形軍団へと突撃していくさまを見守りながら、ロゼットもまた身構えた。
「せめて何も気づかず、冗談のように死ぬといい。
それが、多分許される唯一の慈悲なのだろうから」
そんなロゼットの横を豪快に駆け抜けるヴァレーリヤ。
妖精たちからすれば激しい地鳴りのような足音でずんずんと大通りを走ると、勢いよくジャンプして妖精教会を飛び越え空中で詠唱を開始。
「『主よ、慈悲深き天の王よ。彼の者を破滅の毒より救い給え。毒の名は激情。毒の名は狂乱。どうか彼の者に一時の安息を』――」
太陽のごとく燃え上がる炎がメイスを包み込み、ヴァレーリヤはぬいぐるみ軍団へとたたき込んだ。
「――『永き眠りのその前に』!」
激しい炎の柱がおき、ぬいぐるみが崩壊する。
「おそらくぬいぐるみの弱点は縫い目……もしくは、おでこですわ!」
「なるほど! ……なるほど?」
迫真の顔で振り返るのでうっかり頷いてしまったが、『ほんとに?』という顔で綾姫が後に続いた。
「とにかく思いっきり叩きつければ倒せますわ!」
「確かに!」
綾姫は納得100%で剣を振りかざし、自らの魔力を剣へと載せた。
「斬ります!」
大上段から打ち込まれた斬撃が、衝撃の波となってぬいぐるみたちを破壊していく。
流れで真っ二つになった妖精学校にあちゃあという顔をしたが、ヴァレーリヤは親指を立てた。
「ぐっじょぶですわ!」
「あ、どうもです!」
親指を立てて返す綾姫。
「みんな、油断しないで! 相手が数で攻めてくるうちは手数が勝負だよ!」
焔はぬいぐるみたちの放つ謎のぴかぴかビームを建物に身を隠すことで防ぐと、手の中にボール状の火炎を生み出した。
親指で押し込んで圧を加え、内部のエネルギーがふくらみ始めた段階でむくりと建物から顔を出して投擲。
放物線を描いて飛んだファイヤーボールが、圧力に耐えきれず激しい爆発を引き起こした。
「タント!」
焔の呼びかけに頷くタント。
塔の前で両手を腰に当てた『巨人のポーズ』で立ち塞がると、キラキラと輝きながら叫んだ。
「ぬいぐるみたちを近づけてはいけませんわ! ワモン様! ジェック様! ミニュイ様!」
「おう!」
左右から現れたワモンとジェック。
ワモンは地面にぺたーって腹ばいになると、尾びれと背中でガトリングガンを固定しながら連射。
激しい音と紅蓮の雨がぬいぐるみたちを襲う中、ジェックはライフルのスコープ越しに、そしてガスマスクのレンズごしにぬいぐるみたちの中で防御が若干かたい層を見つけ出した。
「ソコだね」
呼吸をとめた一瞬。
引き金に連動したきわめて精密な仕組みによってチャンバーへ爆発力が送られ、押し出された弾はライフリングの溝にそって回転しながら銃身を進み銃口より飛び出していく。
先端に花のような彫刻の施されたライフル弾は空中で一度二弾ロケットのように分離をはかるとさらなる加速と回転をかけ、ぬいぐるみの一体に命中。更にそれを貫いて後方の家屋と別のぬいぐるみを貫通させ、最後には煉瓦をしいた地面にめり込んで数百フェアリーメートルをえぐっていった。
ばさり、と暴風を味方につけて飛び上がるミニュイ。
「修繕なら後で手伝うから……」
妖精の街なみを見下ろし、今よりそれを破壊せねばならない宿命に目を細めた。
「私にも人形ハウスで遊んだ少女時代ぐらいある」
大きく羽ばたく翼より、数本の羽が発射される。
羽は空中で魔術的に分裂すると、大量の爆薬フレシェットとなって降り注いだ。
街が爆ぜ、ぬいぐるみ軍団ごと燃え上がっていく。
妖精タワーの上階でその様子を見守っていたおじーちゃん妖精が、ガッツポーズで窓から身を乗り出した。
「よっしゃあ! やったぜぇい!」
「おじーちゃんおちついて落ちる落ちる!」
「ぬいぐるみ軍団をやっつけたぞい! 今夜はカツ丼じゃ!」
「おちついてまだいるまだいる!」
妖精の声にぴくりと耳を動かすタント。
「なんですの? まだ……?」
両手の指で円をつくって両目にあてる。
燃えさかる街の中、左から右へと光の線が薙いでいく。送れて聞こえたキュンという音に続いて、激しい爆発が全てを吹き飛ばした。
「ここまでは小手調べ、ってことかな」
ロゼットがつぶやいた通り。
それまでのぬいぐるみ軍団とは一線を画する個性的なぬいぐるみたちが勢揃いし、それぞれがふわりと空中へと浮かび上がった。
タワーを、というよりそこに立ち塞がるタントたちへと指を指す白タント。
「ここまではほんの小手調べですわ!」
「それさっき言った」
「スーパーぬいぐるみ軍団! やっておしまいなさい!」
「あっごまかした! いまごまかした!」
銃や剣を構えて突撃してくるぬいぐるみ軍団。
前衛を担うぬいぐるみが焔へと密集するが、焔はそれを引きつけながら槍を振り回して戦い始めた。
そこへ遠距離から射撃を浴びせるぬいぐるみ。
焔は飛来する弾丸を槍ではじくと、バク転をかけてさらなる攻撃を回避した。
「その子に攻撃し続けても無駄ですわ! 他の子から、他の子からやるんでございますのよ!」
再びブレた口調で指事を出す白タント。
ぬいぐるみ軍団の一部は焔を飛び越えるべく高高度をとって進むが、すさまじい速度で急上昇をかけたミニュイの翼がそれを打ち落とした。
「戦場をまたぐとは無粋なことをする」
ミニュイは翼で激しい風を巻き起こし、ぬいぐるみたちを引きつけ始めた。
彼女たちを取り囲んでいくぬいぐるみ軍団……とはまた別に、左右から迂回する形で別のチームがタワーへと迫っていた。
チームの中心でぺかぺか光るぬいぐるみに狙いをつけ、ヴァレーリヤが突撃していく。
「役割分担を作ったようですが、そういうときこそヒーラー狙いですわ! これでも喰らいなさい!」
「――!」
突撃するヴァレーリヤに対抗するように飛び出してくる複数のぬいぐるみ。
盾や剣をぶつけることでメイスのスイングを受け止め、逆にヴァレーリヤへとタックルを仕掛けてくる。
思わず転倒して家屋をぺしゃんこにしたヴァレーリヤだが、この程度の戦術で怯む彼女ではない。
すぐさまメイスの持ち方をかえ、タンク役のぬいぐるみへと勢いよく叩きつけた。
ゴッという妙な音がして地面に落下するぬいぐるみ。
「魔剣、解放……!」
タントやロゼットたちからAP回復支援をうけながら、自分のもてるかぎりで最大の攻撃を打ち続けた。
地面をえぐるかのごとき内角スイングが本当に遊歩道と街路樹と噴水をえぐりながら衝撃を放ち。ヒーラーぬいぐるみやスナイパーぬいぐるみたちを蹴散らしていく。
一方で別のチームがタワーへ接近。
今度こそ出番だとばかりに腕まくり(?)したタントはぬいぐるみ軍団めがけてダッシュした。
「こういうときは勢いが大事ですわ! ちょああー!」
タントは横向きに寝っ転がるような姿勢でぬいぐるみたちにダイブすると、数体まとめて押しつぶした。
そのままばんざい姿勢で街をごろごろ転がるタント。
「皆様! 今のうちにー!」
「エ……」
ジェックはライフルを構えたままどうしたもんかと顎をあげたが、横のワモンは目を光らせた。
「わかったぜ! オイラにまかせろー!」
ワモンはガトリングを一度手放すと、ぬいぐるみたちめがけて横に寝っ転がるような姿勢でダイブすると、数体まとめて押しつぶした。
「とああー!」
「ワモン……」
街を踏み潰しながら転がりまくる御嬢様とアザラシ。
この攻撃は案外効果があったようで、ぬいぐるみたちは二人に対応すべく陣形を組み直しているところだった。
組み直すということは接続のきれた対象がいるということ。
ジェックはその隙を突くようにして、狙い澄ました一発を撃ち込んだ。
ぬいぐるみ軍団から、パッと光が消える。
と同時に、ジェックは敵からの攻撃の気配を感じ取った。
「っ――!」
今度はよけきれそうにない。
ダメージ吸収の方向に舵を切るべきかとライフルを抱く姿勢をとったところで……。
ぼぼんと目の前で爆発が起きた。
「……けっふ」
両手を広げ、立ち塞がるタント。
「アルベド、あなたはひとつ勘違いをしていますわ」
崩壊した街を挟んで、タントと白タントはにらみ合っていた。
「御天道の光は、地を灼き尽くす為のものではございません。
暖かな光なればこそ、こうして……皆様の力を育むのです」
「そんなこと……!」
白タントは歯をぎりぎりとやって、タントを強く指さした。
「そんなこと、知りませんわ! 誰も教えてなんてくれなかったですもの!
私はあなたより強くて、優れていて、特別製ですのよ! 証明なさい、ぬいぐるみ軍団!」
オーケストラを指揮するかのように腕を振り上げると、新たなぬいぐるみたちが出現、起動する。
「やはり……分かっていませんのね」
タントは目を瞑ってゆっくりと首を振った。
「わたくしが強く見えたののだとすれば、それは、わたくしだけの力ではありませんわ」
タントの脳裏を、深い深い思い出がよぎった。
思い出のすべては出会いであり、ふれ合いであり、笑い合う日々であった。
めを見開き、輝きと共に白タントへと指を突きつける。
「今の私が、どうやってできたか教えてあげますわ!」
空と大地をなでるような無数のビームの中を、綾姫は勇ましく駆け抜けていく。
ぬいぐるみの火炎放射を剣で切り裂くように突撃すると、ぬいぐるみを切り裂いた。
空を美しく滑空するミニュイが、飛行ぬいぐるみたちの悉くを撃墜しながらバレルロールで突っ切っていく。
メイスに罪の炎を宿らせ、すぅっと側面を指でなぞるヴァレーリヤ。
槍に祈りの炎を宿らせ、手のひらでなぞっていく焔。
二人は全く同時に炎を放ち、猛牛の如く突撃してくる騎士型ぬいぐるみたちを焼き払った。
ロゼットのさらなる回復支援をうけながら、ワモンが大空へとジャンプ。
空から打ち下ろすようなガトリング射撃でぬいぐるみ軍団にイワシの雨を降らせると、側面に回り込んだジェックが狙い澄ましたショットでぬいぐるみたちをまとめて打ち抜いていく。
「タントォ!」
そんな中、白タントはタントめがけてまっすぐに突撃していた。
その攻撃をセルフヒールと防御ではねのけながらまっすぐに迎え撃つタント。
両者が真正面から激突するか……と思われたその時。
「うっ」
白タントは頭を抑えて立ち止まった。
「なんですって? けど、けど……うううう……!」
歯ぎしりをして、その場から回れ右をする白タント。
「今日のところはここまでにしてあげますわ!」
まるっきりの捨て台詞をはくと、白タントは一目散に逃げ出した。
『ありがとー!』とタワーの窓から手を振る妖精たち。
それにこたえて手を振るロゼットたち。
そんな中で、ジェックはガスマスクを外した。
「あれは……もしかしたらタントだったのかもしれないね」
「……?」
なんで? という風に首をかしげてのぞき込むヴァレーリヤと焔。
「誰にも愛されず。誰ともふれあえなかった……そういう、タントだったのかな」
歯を食いしばって敗走する姿を想像しながら、ジャックは振り返った。
タントが灯台のように笑いながら、妖精たちを両肩にのせてまわっていた。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
――防衛成功!
――妖精タワーの妖精たちは守られました。
――白タントは逃走しました。
――わずかに行方のわからなくなった妖精がいるようです。
GMコメント
■オーダー
妖精タワーの防衛
エウィンという大きな町の一角にある妖精タワーとそこへ続く大通りが戦場になります。
大通りといっても妖精ハウスはドールハウスばりにミニチュアなので、皆さんは並ぶドールハウスの中で(相対的に)スケール感のデカいバトルをすることになるでしょう。
戦闘は休憩なしのウェーブ形式で区切られるため、長期戦用のスキルないし装備を調えるとよいでしょう。
■敵陣
敵味方がちょうど大通りを挟んで向かい合うように、大きく距離をとって陣取っています。
敵である白タント様は部下にしたぬいぐるみ軍団をけしかけ塔への侵略を目指しています。
皆さんはその間に陣取り、真っ向から向かってくるぬいぐるみ軍団を撃破しまくることになるでしょう。
(OP時点でいきなりバチバチにやり合っていましたが、この後互いに距離をとって陣形を組み直した扱いになります)
・ぬいぐるみ軍団
全長1メートル弱くらいのでかい二等親ぬいぐるみが微妙に浮いてる状態で攻めかかってきます。あとちょっと喋ります。
攻めてくるぬいぐるみの種類(?)は後述するウェーブごとに異なります。
・1~3ウェーブ
白タントのぬいぐるみ。着色されていないぬいぐるみがペカペカ発光しながら向かってきます。
徐々に攻めてくる数が多くなるので、否応にも密集していきます。範囲攻撃チャンスな気がする。
・4~6ウェーブ
様々な個性をもったぬいぐるみが、魔法のミニチュア武器を使って戦闘を仕掛けてきます。
この辺りから軍団に役割分担ができ、チーム単位で隙を埋めるかたちで堅実なバトルを行うようになります。
好きに動かれるとこちらの作戦を封殺したり連携を分断されたりととにかくヤバいことになるので、
敵の陣形や連携をかき乱したりしながら『好きな動きをさせない』ことを軸に戦っていくうとよいでしょう。
・最終ウェーブ
ついに白タント様が参戦します。
白タント様は白タントビームによる苛烈な攻撃と高い耐久性能を持っているため、可能な限り『足止め』しましょう。
なぜ足止めかというと、白タント様のHPを零にして勝つより周りのぬいぐるみ軍団を零にして判定勝ちしたほうが現実的だからです。
ビームの種類は複数ありますが、単体攻撃、列攻撃、識別つき広範囲攻撃の三種と考えればよいでしょう。ちなみにBSはつきません。強いて言うなら発動時にまぶしいくらいです。
■補足情報
・アルベド(白タント様)について
このアルベドは人工生命体の器にタント様のドリル髪とフェアリーシードをあわせたことで完成しました。
そのため体内に埋まっているフェアリーシードを破壊すればこの白タント様も死亡することになります。ただしこの場合、フェアリーシードに格納されている妖精も同時に死亡することになるでしょう。
白タント様は能力と癖だけ与えられて作成されましたが、オリジナルタント様の経験や記憶をもってはいないので自分なりにタントを演じているようです。そのため端々の口調が若干異なったり、とても明確な振る舞いの違いが出たりしています。
■■■アドリブ度■■■
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。
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