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シナリオ詳細

ヌマススリと紅草御前

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●夕焼けよりも遠い場所
 豊穣――カムイグラという、国の話をしよう。
 幻想鉄帝海洋深緑練達天義傭兵、大陸に名だたる主要七カ国が全てと考えていた混沌の民達にとって、新国家発見は極めて重大かつセンセーショナルなニュースだった。
 海洋王国がついに絶望の青を過去のものとし、『地図の向こう側』ともいうべき新天地を発見。
 その名も豊穣卿カムイグラ。
 春には桜、秋には稲穂、夏には蝉が鳴き冬には石灯籠に雪がかかる。ここはそんな国である。

「ふうむ、そちらが海向こうの神使かえ」
 色鮮やかな和装束。肘掛けによりかかるようにして足を崩す長い黒髪の美女が、ローレット・イレギュラーズたちの顔ぶれを眺めた。
 部屋には爽やかな香炉が炊かれ、畳をしいた床へ等間隔に並んだ座布団が、イレギュラーズを歓迎している。
 縁側から差し込む陽光が木目の床板をきらきらと光らせ、とおい川のせせらぎが風と木の音に混じって聞こえてくる。
 女は名を『紅草御前』といい、カムイグラでもそれなりの地位にある八百万(やおよろず)……大陸側でいうところの精霊種(グリムアザース)である。
「よい、よい。まずは海向こうの神使がどれほどのものか確かめねばならぬ。沼にすむというアヤカシを退治してたもれ」
 紅草御前がいうには、ここから北にいった場所にあるイバン沼という場所に化け猫が巣くっているという。
「妖怪の『沼啜り』は知っておろう? 海向こうにも……む、おらんのか?」

 改めて解説しよう。妖怪とは大陸側でいうところのモンスターのたぐいである。
 要するにこの依頼は『貴族からのモンスター退治依頼』なのだ。
 話を進めて、『沼啜り』。
「カムイグラの文献には、沼に住み毒の尾と牙をもつ妖怪とあるね。
 外見は太った毛のない猫に近く、灰色の肉と肌に覆われている……て。すごい絵だね、これ」
 『黒猫の』ショウ(p3n000005)は本をめくりながら苦笑した。
「沼に住むけれど、時々人里へ下りては稲田の泥に毒を流すので、この辺りの土地では毎年定期的に退治するきまりらしいよ」
 古くからの資料というのは便利なもので、戦い方や注意点までしっかり書いてあった。
「沼地は足をとられやすくて動きづらいことを連中も分かっているらしくて、できるだけそこから動かないようにしているらしいね。
 沼地自体広いから、安全な場所から弓で射撃したり沼の端まで引きつけて移動させたりっていう手は通じないみたい。過去に散々試したんだろうね、これは」
 沼地に入って正攻法で戦うしかないというのが現状で、だからこそ『それくらいのことは出来る連中だ』と紅草御前に示すのに丁度良い案件なのだろう。
 もっと言えば、万一失敗したところで怪我をして帰ってくるだけなのでお互い不幸がないともいえる。
「モンスター退治はローレットの十八番みたいなものだ。
 戦いづらい足場を考慮しながら、連携して沼啜りを退治しよう!
 そうすれば、ここでの『おぼえ』も良くなるだろうしね」

GMコメント

※これは豊穣依頼、つまりカムイグラでの依頼です。依頼の結果『豊穣名声』が獲得できます。

■オーダー
 沼にすむ妖怪沼啜りを退治します。

 毎年自然にポップするタイプの妖怪なので個体数は不明。
 話によると『いっぱいいる』とのことです。
 彼らは沼を住処としているため、沼へ入り込まれたら他へ撤退せず最後の一匹になるまで戦う習性をもつそうです。
 なので、戦闘方法としては『集団への強襲』。
 ならびに『対多数での長期戦』を想定していきましょう。20~30ターンにかけて一定の集中攻撃を受けるといった具合です。

・沼地でのペナルティ
 ここでの戦闘には『回避(中)・機動力(大)、FB(小)』のペナルティがかかります。
 飛行することでペナルティは消せますが、この場合(そもそもの足場がアテにならないので)低空飛行時でも高高度同様のペナルティがかかるものとします。
 以上のペナルティはある程度の工夫やスキルの行使によって軽減できるものとします。
 場合によっては事前準備やシェアも可能なので、集まったメンバーどうしで話し合ってみましょう。

・沼啜り
 毒をもった妖怪です。
 『毒』系統のBSを用い、攻撃によっては『鬼道』の追加効果をもちます。
 そのためHP減少に注意してください。BS回復や無効化処理をもっていくと便利でしょう。

・沼の主(メタ情報含む)
 事前に収集していない情報ですが、この沼には『沼の主』が現れることがあります。
 条件としては沼啜りを効率よく沢山倒せた場合、それらを守るために現れるようです。
 イレギュラーズたちはこの情報を聞かされていないためアドリブでの戦闘になりますが、主の討伐は依頼にないため撤退してもOKです。
 なんとなく察しているかもしれませんが、この『不慮の事態と強敵』に対してどう振る舞えるかを紅草御前に試されています。

 沼の主は巨大な四つ足の妖怪で、沼啜りの単純強化版ともいうべきスペックを持ちます。
 攻撃方法には『疫病』つきの範囲攻撃や、必殺、追撃などバリエーションが増え火力が一気に引き上がる形となっています。
 ただし主は一体だけであるため、ダメージを上手にコントロールしながら戦いましょう。
 ※前半パートで沼啜りを上手に倒せた場合、主一体だけを相手にできます。逆に若干グダった場合複数体の沼啜りに邪魔されながら戦うはめになります。

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • ヌマススリと紅草御前完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年06月30日 22時12分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ハロルド(p3p004465)
ウィツィロの守護者
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
音呂木の蛇巫女
鹿ノ子(p3p007279)
琥珀のとなり
リンディス=クァドラータ(p3p007979)
ただの人のように
源 頼々(p3p008328)
虚刃流開祖
ボディ・ダクレ(p3p008384)
アイのカタチ
コスモ・フォルトゥナ(p3p008396)
また、いつか

リプレイ

●カムイグラ
 緑豊かな山中。獣道を進むうち、やがて沼が見えてくる。
 ショウの話では、妖怪『ヌマススリ』が住み着いている沼はこのあたりだというが……。
「……」
 『聖断刃』ハロルド(p3p004465)は一旦足を止め、戦闘準備を整えるべく剣の柄に手を触れた。
(俺の目的はこの地の魔種を滅ぼすことだが、奴らは政治の中枢にいる。まずはこの地の住民から信用を得なければ近寄ることすら出来ん)
 カムイグラという国の抱える問題について、否応にも考えてしまう。
 今回の本題からはやや離れるが、国を魔種が牛耳っているという事実はイレギュラーズたちにとってもかなり重大な、できるなら一日でもはやく解決したい問題である。
 国の支配など、滅びのアークが過去にどれほど、そして今もどれほどに生み出されているかわかったものではない。
 だがそこまで深く食い込み、誰もそれを疑えないほど国が『平和になってしまっている』以上、今すぐ強引にこの問題を解決するのは不可能といっていいだろう。
 ハロルドの言うとおり、こうして妖怪退治から初めて貴族連中に近づいていくのがベストだ。
 逆に言うと、イレギュラーズをかなりシビアかつビジネスライクに信用している人間はこちらからも信用できるということでもあるのだから。
「うんまあ、我としては鬼即斬であるが? 見たか? あの巫女の角。即座に手刀で折らなかった我、だいぶ空気を読んだであろう?」
 元の世界じゃそれはもう鬼という鬼をベッキベキにしてきたであろう『虚刃流開祖』源 頼々(p3p008328)が、こっちに来て急に元世界に近い空気にふれたことでちょっとテンションをあげていた。
「え、なに、そっちの世界でいう鬼へのニクシミってそんなに根深いの?」
 『戦神』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)が花の蜜をちゅーちゅーしながらいいかげんに会話に加わってきた。
「当然であろう。人の世を破滅させる悪しき怪物。思い出すだけでも切り刻みたくなる」
「お、おう」
 秋奈も思えば似たような立場だった気がするが、今急にテラフォーマーが『よ、やってる?』みたいなテンションで現れたところで別になんとも思わない気がした。
「染まっちゃったのかなー。世界に? それとも平和に?」
「何の話です?」
 リュックサックから沼歩きにそこそこ適していそうなズボンやら密閉性の高い長靴やらを取り出しつつ顔を上げた。
「しがらみの話、だと思いますよ」
 『レコード・レコーダー』リンディス=クァドラータ(p3p007979)が街で見つけたらしい本をぱたんと閉じて、泥によごれないよう麻袋に詰めて下ろした。
「いやあ、それにしてもこの国はいいですね。見たことの無い本が山ほどあります。新しい知識……すばらしい……」
 うーんと本の内容をかみしめるように目を瞑って天を仰ぐ。
「なんとなく……分かる気がします……」
 第三の目(?)を細めて、同じように天を仰ぐコスモ。
「『知らなかった』という感覚……斬新でした」
「その次元の新鮮さはちょっと理解の外ですが……わかってもらえて嬉しいです」
「なんとなく……分かる気がします……」
 『痛みを知っている』ボディ・ダクレ(p3p008384)が突然横にスウッて並んで(ー▽ー)みたいなフェイスシンボルを表示したまま天を仰いだ。
「肉体は人生を知っているのに、私はまだ人とはなにかすら学習しきっていなかった。この混沌にはラーニングすべき素晴らしい情報が満ちています」
「その次元での新鮮さもちょっと理解の外ですね……」
 リンディスは『今日のメンバー、濃いな』と頭の片隅で思った。
「ともかく、新天地での仕事です。頑張っていきましょう!」
「新天地!」
「良い響きです」
 やりましょう! みたいな空気が三人を包む一方、爪の間のよごれをとっていた『黒犬短刃』鹿ノ子(p3p007279)が『繋ぐ命』フラン・ヴィラネル(p3p006816)の肩をこづいた。
「話終わった感じッスか?」
「……たぶん?」
「昨日、ちょっとよく眠れなかったんで、終わったらシャワー浴びて寝たいッスね」
 ふわあとあくびをする鹿ノ子。
 そういえば仕事の内容を聞いてすぐに酒場に行ったよなこの子……と考えたところで。
(昨晩何があったんだろう)
「昨晩何があったの?」
 脳から直接言葉が出たフランであった。
「何っていうか、何も無かったというか……村の人に沼での動き方とか聞こうと思ったッスけど、逆に住所とか聞かれるばっかりで。聞いてどうするッスかね。海渡って来るッスかね?」
(そこ考えるとつくづくイレギュラーズで良かったよね)
「ナンパされたんだいいなあ女性の魅力」
「脳、脳から直で言葉がでてるッス」
 フランはぷるぷると首を振り、ほっぺを叩いて気合いを入れ直した。
「『絶望の青』を踏破して皆の死兆も消えて(あたしのイワ死兆は消えないけど)心機一転新天地、だもんね! 頑張って評価高めていこう!」
「ッスね!」
「ああ、ローレットも各国に顔見せした頃はラドバウに出場する程度のことでも難色を示されたが、今では立派にランカーだ。仕事の実績を積み上げるのは何にもまして力になる」
 ハロルドは腕組みをし、そしてずぶりと沼へと踏み込んでいった。
「それはそれとして最初が泥仕事って、依頼したあの偉い人だいぶあたしたちのこと試してるね!」
 言われてみれば。
 沼地で戦闘すること自体をわりと普通に受け入れていたイレギュラーズたちは、ハッとしながら沼に足を突っ込んだ。

●ヌマススリ
 沼に住む妖怪というだけあって、『沼啜り』はフランたちが沼に踏み込むやいなや、水面からぼこんぼこんと何匹もいっぺんに現れ、水面を走るかのような素早さで集まってきた。
「やーいつるつる猫さん、かかっておいで!」
 両手を掲げ、うりゃーと気合いを入れて叫ぶフラン。
 上等だオラとばかりに毒の尾や牙をむき出しにした攻撃的なフォームで数匹が同時にジャンプ。
 フランのおでこに毒針の露出した尾が刺さろうかというその瞬間。コスモのマジックミサイルが直撃。
 ハッとして振り返った沼啜りめがけ、ボディの豪快な跳び蹴りが炸裂した。
 ゴムめいた素材の長靴が沼啜りの顔面にめりこみ、顔をゆがめるほどの勢いで蹴り飛ばしていく。
「フーウ……陸地と違って動きづらいですね」
 画面に大量の泥がはねたが、ボディは平手で拭って画面にサムズアップアイコンを表示した。
「ですが戦えないほどではありません!」
「確かに。浅瀬であればまだ膝から腰まで浸かる程度の対処で済みますし、ね」
 コスモは足でばしゃんと泥水を蹴った。
「ですが気をつけてください。突然深い場所にあたると足をとられて沈むかもしれませんから」
「こんなカンジ?」
 秋奈が肩まで沼に沈んでいた。
 いや肩っていうかもう頭まで沈んだし、突き上げた腕で親指だけ立ててゆーっくり沈んでいた。
 二度見するフラン。
「足をとられてるーーーー!」
「と見せかけて!」
 ドルフィンキックで水面から上半身だけ飛び上がる秋奈。
 毒の牙で食らいついた沼啜りたちを高速回転と斬撃によって振り払っていく。
「なるほど、その手がありましたか」
 リンディスは『未来綴りの章』を駆使し秋奈たちの強化や治癒を行うと、白紙だらけの魔道書にさらさらと羽根ペンを走らせていく。
「沼地になじむというより水生生物のようにごぼぼぼぼぼぼ……」
 走らせて行きつつの水没であった。
「いっそ自ら行ってるーーーーーー!」
「彼らの犠牲は無駄にせぬ――!」
 頼々は後ろで『死んでないです』と顔だけ出して語るリンディスを余所に、『具現鞘【頼守】』から在らぬ剣を抜刀した。
 なぜか身を乗り出す鹿ノ子。
「うおー! でたッス! 頼々パイセンは鬼を見ると殺(ヤ)る気をだすッス! あの毛の無い猫みたいな沼啜りは鬼判定でるのか、でないのか……!」
 頼々は抜いた不在刀の斬撃を極端に拡大し、水面もろとも沼啜りを切り裂いた。
「貴様ら今から鬼! 殺す!」
「鬼判定だーーーーーーーー!」
 『オニ』って書かれた札を掲げるフラン。
「沼啜りは鬼カテゴリ……っと」
 魔道書(ウィキ)にメモりはじめるリンディス。
「からの――雪の型『雪上断火』!」
 鹿ノ子が突如沼へとジャンプ。
 水面に姿を現していた沼啜りめがけて大上段から豪快に切り裂いていく。
 沼にはいっちまえばこっちのもんだとばかりに群がって毒針を突き立ててくるが、鹿ノ子は不敵に笑った。
「今日の僕に毒は通用しないッス。準備万端……!」
 からの、舞うような回転切りによって周囲の沼啜りを次々に切り裂き、沼を赤く染めていく。
「なるほどな」
 ハロルドは一連の流れを観察して一人納得すると、聖剣リーゼロットの柄をぎゅっと握り込んだ。
 ハロルドの八十八技(もっとあるかも)がひとつ『狂月』。青いオーラの刃が繰り出され、ギリギリかわそうとした沼啜りたちも戦闘への高揚感が無理矢理引き出され、牙を向いてハロルドへと襲いかかってしまう。
 ハロルドは自身もまた好戦的に笑いながら、周囲の沼啜りたちめがけてさらなるオーラの斬撃を繰り出しまくった。

●沼の主
 倒れた木を瞬間的な足場にして、コスモは沼の水面から勢いよく跳躍。
 空中で身をひねると、こちらを見上げる沼啜りめがけて宇宙の欠片をばらまいた。
 えもいえぬ情報爆発が巻き起こり、沼啜りたちが崩壊。まるで泥の泡のごとくはじけては消えていく。
 伸ばした丸太のようなボディ・ダクレの腕に着地するコスモ。
「さて、こんなところでしょうか……」
「殆どの沼啜りは倒した筈ですね」
 ボディもきょろきょろと沼を見回すが、全て倒してしまったのかそれとも他の沼啜りが恐れて隠れてしまったのか。これ以上襲ってくる気配はない。
 応援と実況解説に集中していたフランとリンディスも、戦闘の気配がないことにホッと胸をなで下ろした。
「依頼は達成ってことでいいのかな。早くシャワーあびたい」
「沼はだいぶ臭いますからね……」
 フランたちがまるで抵抗感を示さなかったので障害らしい障害にもならなかったが、依頼人である紅草御前はこういうふつうは人が行きたがらない場所に向かわせても文句を言わないかどうかを、まず最初のハードルにしたようである。
 ローレットにとってハードルでもなんでもないが、確かにそういう段階で足のひっかかる外注業者がないわけでもない。そしてそういう相手とは、紅草御前はきっと二度と取引をしてくれないだろう。
「けどこれで終わるって気もしないんだよね。だって妖怪とは言え沼の生き物を沢山殺したわけだし……」
 と、沼に背を向けて帰ろうとしたその時。
 ドッと大地の揺れる衝撃と共に、沼の中央が爆発でもしたかのように一瞬膨れ上がった。
 誰よりも鋭く反応したのはハロルドだった。
「雑魚退治に飽きてたところだ、丁度良いぜ」
 降り注ぐ茶色い雨の中、ハロルドはギラギラと笑って『それ』へと挑みかかった。
 沼中央。水面に立つ巨大な虎の如き姿。シーサーとガーゴイルの中間めいた、単色ながらもきわめて厳めしいそれの名を、この場の誰も知らない。
 強いて述べるなら、『沼の主』。
「ははははっ! こいつは楽しめそうじゃねぇか! なら俺も奥の手ってやつを見せてやるぜ!」
 ハロルドは温存していた『AKA』を使用し、『聖罰の剣』を繰り出した。猛烈な勢いで接近し、武器と共に激しい雷をたたき込む『雷鎚』スタイル。返す刀で暴風を纏って殴りかかる『獄嵐』スタイルのコンボである。
 一方。
「こ、この姿……」
「はい……」
 フランとリンディスが、『沼の主』の頭部あたりを凝視した。
 厳めしく額からつきあがる一本の角。
 顔を見合わせ、そして全く同時に――。
「頼々先生! これは!?」
 突然の顔アップ。濃い集中線。
「鬼だ!!!!!!!!!!」
 今日イチのテンションでいきなり屈強なボディに変化すると、頼々は在らぬ刃を連続で繰り出していった。
 幾重にも交差されたX字の斬撃が力ある光となり、『沼の主』へと叩きつけられる。
「「鬼判定だーーーーー!」」
 拳を握りしめて身を乗り出すフランとリンディス。
 が、『沼の主』も伊達に主をやっているわけではないようで、二人の攻撃を受けても尚咆哮し、沼から大量の大蛇を呼び出した。
 否、大蛇の形をした泥だ。
 仲間達が吹き飛ばされるのを、フランとリンディスがタイミングよくキャッチ。
「頼々パイセン! ハロパイセン!」
 今日なぜかパイセン呼びがマイブームになったらしい鹿ノ子が振り返るが、フランたちがビッと親指をたてて返した。
「大丈夫、二人のことは任せて!」
「鹿ノ子さんはそちらをお願いします!」
 言われるままもう一度『沼の主』へ振り返ると、今まさに口を大きく開き爪をむきだしにして飛びかかってくるところだった。
 周囲からは身を潜めていた沼啜りたちが次々と浮上し、鹿ノ子へと牙や毒の尾を繰り出してくる。
 退くか退かぬか。その二択になったなら――。
「押し通るッス!」
 精神力をマックスにして猛烈な連続攻撃を繰り出す鹿ノ子。
 秋奈はそんな彼女の横から豪快な回転をかけながら乱入。
「私もまーぜてーっ!」
 刀を両手にもってくるくる回るという一見単純な動きだが、触れる者みなみじん切りにしていく芝刈り機めいた凶悪さで沼啜りたちを切り払っていく。
 それによって牙の折られた『沼の主』。
 浅瀬での戦いは不利と考えたのか、深いエリアへと後退した。
 だが――。
「逃がしません。リヴァイアサンとの戦いの中で鍛えたこの――」
 『沼の主』の真下から腕組み姿勢でドッと飛び出してくるボディ。
 頭のディスプレイが3、2、1とカウントダウン映像を流し、真っ赤な画面に多きく『IGNITION』と表示された。
 拳に込めたハックプログラムを、猛烈なラッシュによってたたき込む。
 コスモはそんなタイミングを狙って、沼の浅いエリアから大きくジャンプした。
 両手を揃えて突き出し、宇宙の光を放射。
 直撃をうければろくなことにならないと本能で察したのか、『沼の主』は大きく飛び退いて回避。
 かすったことで身体がボロリと崩れた。
 そして。
『――戦いをやめよ、人間』
 沼の主はそう、語りかけてきた。

 それからの流れを、かいつまんで説明しておこう。
 沼の生態系を守るべく戦った『沼の主』は、これ以上沼を荒らさないなら今年沼啜りを麓へおろさないことを約束してくれた。
 ボディたちもこれ以上戦いが長引けば自分たちもタダではすまないと察したようで、『沼の主』の条件を呑んで山を下りることにした。
 こうして、 紅草御前の要求を達成したイレギュラーズたち。彼らに新たな、そして本格的な依頼が舞い込むだろう予感を、彼らはうっすらと抱いていた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――依頼達成!

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