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シナリオ詳細

Plant22 ありふれざる不幸とその顛末

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●Plant22について
 カントリーミュージック・レコードが回転するトタン屋根のバー。鉄帝の田舎町に存在する、外部の人間はまず訪れないような店に、ローレット・イレギュラーズたちは集められた。
 無論、今回の依頼人と話し合うためだ。
 ビール瓶のキャップを丁寧に外し、大鎧をきた男がかぶとを外してくつろいでいる。
 奇妙に大きく丸みを帯びた鎧はどこか洗練されていて、彼は自分を騎士(ナイト)であると名乗った。
 彼が今回の依頼人だ。名を仮にナイトとしよう。
 席に着いたあなたにコーラやビールの瓶を適当に突き出すと、ナイトは前置きのように語り始めた。
「野菜は好きか? 俺は食べ物に恵まれない土地で育ったんでな、基本的に好き嫌いはしない主義だが……正直あのクチャっとした食感は好きになれなかった。こっちにはないらしいな、あの野菜は」
 急になぜ野菜の話を、と思ったが、どうやら本題につなげるつもりであるらしい。
 ナイトはどうも、話運びが得意ではないようだ。
 ああと低く唸って、ビールを一口あおる。
「ここからが本題だ。この先の谷をくりぬいた場所に農業プラントがある。
 古代遺跡を改装して作られたもので、人口光で植物を育てる実験をしていたらしい。
 ああ、そうだ。残念ながら実験は失敗したようだな」
 ナイトが示したのはひとつの写真だった。固いシェルターのような扉が全開になっており、まるで内側から吐き出されるかのごとく極彩色の植物が外へ咲き乱れている。
 もし鉄帝の植物に詳しい者がいるならわかるだろう。やせた土地でも力強く育つことで知られる植物で極彩草とよばれるものだ。
「プラントは廃棄され職員も撤収……したはずだが、ここから出たという職員の話は聞かない。中で何十年も暮らせるならともかく、このぶんだと生きてはいないだろう」

 ここまで話したところでピンときたかもしれないが、この『なにかしらの危険』が存在するプラントに侵入し、あるものを獲得してくるのが今回の依頼目的である。
「このプラント内に『バイオジェネレーター』という装置がある。これを回収してくるのが依頼目的だ。それさえ達成できるなら手段は問わないつもりだが……あまり深入りするのは勧められないな」
 ビールの瓶を置いて、大きなグローブを閉じたり握ったりしはじめるナイト。
「あのプラントにめぼしいお宝でもないかと潜り込んだ奴が数人いたが、どれも帰ってこなかった。
 奴らもそれなりに腕の立つ連中だったから、それ以降一人で潜るのは危険というのが最近の通説になっている。
 中にいる正体不明のモンスターに、まずは気をつけたほうがいいな」
 そこまで説明してから、数枚の紙にまとめた資料を突き出してくる。
「諸君等の無事を祈っている。そもそも、無事でいてくれなければ目的の品も手に入らないのだしな」

GMコメント

■オーダー
 正体不明のダンジョンと化したプラント22
 その内部に侵入、探索し目的の品を手に入れて帰るのが成功条件となります
 内部の探索にはそれなりの時間がかかるため、APやHPの管理に気を配るとよいでしょう。

 以下、若干のメタ情報になります。
 これをPCとしては『ある程度の探索で判明した事実』としてプレイングや相談に組み込んで構いません。

・モンスターについて
 内部では全身緑色の二足歩行型モンスターが多数出没し、彼らは主に巨大な植物のつぼみのような物体から殻を突き破るかたちで飛び出すか、または元からその辺をうろついています。
 彼らに人間並みの知能はなく、キーキーという高音の鳴き声を発します。
 総合して、身長150~200㎝の二足歩行。全身緑色でやや猫背。手には鉤爪がついており、かなり俊敏。こちらを見つけると鉤爪で斬りかかる形で攻撃してきます。
 攻撃力自体はさほど高くないが、【猛毒】のBSがついています。中には別のBS持ちもいるため、油断しないようにしておきましょう。

・プラント内部について
 長い通路が複雑に入り組んでおり、部屋が無数に存在する。
 どこにモンスターが潜んでいるかわからないため、長時間の休憩は困難と思われる。
 探索中2~3度、HPとAPを全回復する程度の休憩がとれると考えましょう。
 内部は人工的な建物でありながらあちこちが植物に浸食されており、水分をそれなりに含むためか焼き払うのも困難です。
 詳しくは説明しませんが、この植物は食べたり持ち帰ったりしないほうがよいでしょう。

 物質透過や透視はやや有効です。
 ですが建物内を端から始まで透視するのはどうやら無理なようです。壁一枚程度が限界で、そこから先はろくに見えません。通り抜けも可能ですが、抜けた直後に奇襲をうけると危険なので単独でいきなりどっかへ行くのはやめたほうがいいでしょう。

・バイオジェネレーターとその他について
 プラントをある程度攻略していくと目的の『バイオジェネレーター』が組み込まれた部屋がひとつだけ存在します。これを回収することで依頼条件の半分が達成されます。あとはこれを持って帰るだけです。回収に専門技術は必要ないものとします。

 ジェネレーター回収後、その先に自然にできたらしい地下空洞へ通じる穴を発見できます。
 ここへ入るかどうかは、皆さんで相談して決めてください。

 このプラントで何が起きたのかは分かっていません。
 皆さんの探索で明らかになるかもしれませんし、ならないかもしれません。

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • Plant22 ありふれざる不幸とその顛末完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年06月25日 22時11分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
無敵鉄板暴牛
銀城 黒羽(p3p000505)
ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)
白き寓話
アト・サイン(p3p001394)
観光客
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
錫蘭 ルフナ(p3p004350)
澱の森の仔
クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)
宝石の魔女

リプレイ

●極彩草畑でつかまえて
 谷を進んでいくと、次第にかわった草花が目立つようになっていく。
 目にいたいほど鮮やかなその草が『極彩草』であることを、『儚花姫』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)は手に取って『拵え鋼』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)へと説明していた。
「どんな所にも咲くからひとのお庭に植えたらダメっていわれる草よ。見たところほかの草花を浸食してるから、この先には多分……」
 ヴァイスの話すとおり、プラントの前はサイケデリックに草花が咲き狂っていた。
「うっ、じっと見てるとクラクラしてくるデス」
 リュカシスは目元をおさえて深呼吸。
「ただ事じゃない……っていうのは一目リョウゼンだね」
 『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)が苦笑して極彩草のいっぽんを抜いて、そのへんに放り捨てた。
「野菜を育てるためのシセツがモンスターハウスになっちゃった経緯にも、関係ある退かな? この草は」
「それはなんとも……けどこの場所が古代遺跡を改装して作られたということは、歯車大聖堂のような力を秘めていても不思議ではありませんね」
「土地を調べず安易に家を建てると、よくないことがあるものよね」
 ヴァイスは細進め……るが、すぐに立ち止まった。
「大きすぎない?」
「ぬ?」
 後ろを歩いていた『宝石の魔女』クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)がヴァイスにぶつかりそうになってのけぞる。のけぞったまま首をかしげた。
「居住区つきの研究施設なんじゃ。このくらいのデカさはあるじゃろ。まあそれにしては扉が厳重すぎるようにも見えるが……」
 巨大な歯車めいた扉を指さし、クラウジアはからからと笑った。
 一方でヴァイスは『ちがうわ』と首を振る。
「この極彩草、あまりにも大きすぎる。突然変異にしたって異常よ」
 腰にかかるほど大きく伸びた七色の花に手をかざし、ヴァイスは顔をしかめた。
 これはヴァイスにしか理解不能な感覚だが、草花や吹き抜ける風が『もっと!』や『いや!』といった極めて原始的な、ともすれば言語化不能なほど単純な意思をうるさいほど放っていた。統一されず、ひどく入り乱れ意識を混乱させるので、ヴァイスは意識的に疎通能力を閉じることにした。
「とにかく、仕事はジェネレーターの回収だったわね。頑張って成果を持ち帰りましょう」
「リョウカイ。謎のプラントに潜入だなんてちょっとワクワクしちゃうね」
 イグナートたちは意気揚々と、プラントへの大きな入り口をくぐっていく。

「練達以外にもこう…こんな変なものを作る人達っているんじゃね。引くわ……。
 奥の見えないダンジョンと化したサイト……移住区? 研究施設? まぁろくなことにならないのは噂の時点で……ね」
 仲間と会話をしながら歩く『こむ☆すめ』リアナル・マギサ・メーヴィン(p3p002906)。
 彼女の言うように、この場所が盗賊達に荒らされていないのはそれだけ『入りたくない』場所だからである。
 むしろ一人二人入ったっきり、中でどうにかなってしまったとも考えられるが。
「……」
 じっと黙り、メーヴィンの横を歩く銀城 黒羽(p3p000505)。
(何があったのかはしらねぇが、俺はいつも通り依頼を遂行するだけだ)
 そんな彼へ、あえて話をふることなく銃の様子を確認しながら歩く『観光客』アト・サイン(p3p001394)。
「最近船にゆられてばっかりだったからか、どうにも足下がくらくらするよ。ダンジョンに入ると落ち着くね」
「そういうもの?」
 ぜんぜんわかんない、という顔で話だけあわせる『猫派』錫蘭 ルフナ(p3p004350)。
「旅行から帰ると『やっぱり自宅が一番』ってなるじゃない? あの感じだよ」
「その感じを今感じてるとするなら、さすがに共感できないな……」
 冷静に返すルフナ。うーんとのびをするアト。
「まあダンジョンの定義は分からないけど、とりあえず予断のできない環境であるのは確かみたいだね。
 人工の建物なんだし、中の空間や道筋はある程度規則性があるのは幸いか」
「おっと、その考えはちょっと早計かもね」
 あとで分かるよ、とアトは背負っていた棒を手に取って言った。

●PLANT22
 固い壁に拳を叩きつけ、板の一部を引き剥がすイグナート。
「なにコレ? ツタ?」
 壁の内側から出てきたのは植物のツタをとにかくまっすぐにしたような物体だった。
 親指ほどの太さをもつツタは奇妙にみずみずしく、これが枯れていないことを見た目からも感じさせた。
「これじゃあ配管の位置が分からないよ。トニカクそこら中引っぺがしてみようかな?」
「やめたほうがいいかもね。多分ツタしかでないよ」
 ツタを入念に調べてつぶやくアト。
「ここまで探索してみて分かったでしょ。通路は不必要に入り組んでるし、食堂も小分けになってるし、何に使うか分からないようなカラッポの部屋があちこちに点在してた。まともな用途の施設じゃないよこれ」
「噂の時点で確定してたようなもんじゃがなそれ」
 クラウジアが『犬肉(仮)』と名付けた犬の頭をなでなでしながら言った。
「入ってすぐの通路をいきなりS字にした時点でもう怪しいし、それ以前に扉の厳重さがもう核シェルターじゃもの」
 進化しすぎた魔術が核融合を実現するというのは、なにもおかしな話ではないだろう。それが実現した社会がいかなる備えをもつかについても。
 クラウジアはその辺で粗相をしはじめる犬肉(仮)にメッてしながら話を続けた。
「育てやすい野菜の研究なんてひゃくぱーウソじゃろこれ。植物を操作してインフラにしておるもの」
 じゃろ? と話を振るとヴァイスは頷いてツタに手を触れた。
「わかるわ。このツタを今も生命力が伝ってる。少しくらいの魔法を使える程度には、ね
。たとえばほら」
 天井を指さすと、そこにはこうこうと通路を照らす電球があった。
 が、電球の中には何かの果実めいたものがキラキラと光っている。イチゴのような植物を用いた発光魔術で施設内の照明をまかなっているのだ。
「ははあ……バイオジェネレーターって、そういう……?」
 イグナートはなんとなく納得しかけたが、そこでリュカシスが咄嗟に身構えた。
「皆さん警戒して! 足音デス!」
 背負っていたとげとげシールドを装備すると、同じく身構えた黒羽とともにかすかに足音のする方向へと書けだした。
 全身を緑色の何かで覆った人型のモンスターが数体。リュカシスと黒羽めがけて飛びかかってくる。
 黒羽は淀んだ闘気で自らの身体を覆うと、食らいついてくるモンスターのかぎ爪を防御。相手の顔面を掴むと近くの壁に後頭部を叩きつけた。
 一方のリュカシスは鉤爪の攻撃をとげしーるどで防御。
 勢い余って怪我をした敵を蹴りつけてよろけさせると、盾側面の自動車バンパーめいた部分でシールドバッシュを打ち込んだ。
 思い切り殴り飛ばされた敵が壁をバウンドして転がる。
「畳みかけましょう!」
 ルフナとメーヴィンが後ろに下がり、かわりにイグナートが突撃。
 アトはその後ろから銃で援護射撃を繰り返した。
「上、気をつけて」
「ン?」
 アトの一言で何かを察したメーヴェインはすぐ隣のルフナを抱きかかえてその場から飛び退いた。
 天井をやぶって落下してくるモンスター。
 鉤爪がガキンと床板に穴をあけた。
「あ、ありがと」
「安心するのは早いな」
 メーヴェインは追撃の鉤爪を畳んだ扇子で防御すると、猛烈な勢いで飛びかかってきたクラウジアへと場を譲った。
「ろっけんろーるじゃ!」
 背中に手を突っ込んだかと思うと魔力で形成したギターを取り出し、ネック部分を掴んでおもいきりモンスターへ叩きつける。
「どうじゃ儂のまいぶーむ。音楽に魔力をのせるヤーツじゃ!」
「のせてないのせてない」
「うっかりしておったのじゃ」
 途中でへし折れたマテリアルギターをぽいっと投げ捨てるクラウジア。
 直後、ヴァイスの放った激しい魔力がモンスターを壁に叩きつけ、そのまま強引にプレスする。
 緑色の液体があたりへ散り、ヴァイスはその液体を指にとってみた。
「うん……うん……」
「どう。何か分かった?」
 アトの問いかけに、ヴァイスは深く呼吸をして、使い捨ての懐紙で指を拭った。
「植物だけど、植物じゃないわ」
「……?」

 それからしばらくのこと。
「備えあれば憂いなし……とはいえこの程度の備えじゃ足りないがね」
「いや、充分だよ。力を合わせるのっていいね」
 安全を確保した部屋から出る一同。メーヴィンの配った『ソリッド・シナジー』の効果は皆の継続戦闘能力を引き上げるのみならす、ルフナのAP回復術と高充填能力にかけあわせることで殆ど休憩なしで探索を続けることが可能になっていた。
 これによって休憩地点を慎重に渡り歩く必要がなくなり、かつAP消費を控えることなく目一杯戦うことが可能になっていた。
 おかげで道中の戦闘で不自由することも、更に言えば撤退によって探索が妨げられることもなくなった。
 主にメーヴィンとルフナの活躍によって順調に探索は進み、多少迷いこそしたもののバイオジェネレーターのある部屋へとたどり着くことができた。
「資料にあったとおりだね」
 ガスボンベ程度の大きさがある円柱状の物体。計器やなにかがちょこちょことあるが、それがどういう装置なのかを理解するのは難しい。
「こいつを背負っていけばいいのか?」
 あらかじめ持ち込んでいたスクーバダイビングジャケットめいた道具を用いてジェネレーターを背負う黒羽。
 だいぶ動きは悪くなるが、ここまでの探索の容易さを考えればさして危険な状態ではないだろう。
 では早速こんなところからはオサラバよときびすを返した、その時。
「犬肉(仮)! どうした犬肉(仮)!」
 クラウジアが連れてきた犬が激しく壁に向かって吠えていた。
 シュウというごくごくわずかな空気音。
 鼻につくわずかなにおい。
 耳にツンとくるような圧迫感。
 それぞれがそれぞれの知識や感知能力でもって、それを察知した。
 要するに。
「――爆発する!」
 防御や退避。それぞれがそれぞれのやり方で爆発を逃れた末、ひょっこりと顔を出したルフナは壁に大きな穴が開いたことに気がついた。
 そしてその大穴の先には、地下に続く空洞があることも。
「うわ……いかにもだ」
「行ってみるか? おい犬肉(仮)……犬肉(仮)?」
 先行させて様子をみようかと思ったクラウジアだが、犬肉(仮)はウウと唸ったきり穴の先には断固として進まない構えを見せていた。
「なんじゃ? この先になんかあるのか?」
「あー……あるっぽいね」
 アトは袋からだした変な紙切れを空中でぱたぱた振ってから、それを凝視してそんなことをつぶやいた。
「具体的には……ヴァイス、わかる?」
「そう、ねえ……リュカシス?」
 ヴァイスはリュカシスを指で小突き、彼の感じた詳細な空気の様子をメモっていった。
「地下空間の空気が汚染されてるわね。多分呪いの一種だと思うけど、長時間いるのは危険よ」
「つまり?」
 メーヴィンが、黒羽のほうをちらりと見た。
「ぱっと行ってぱっと帰ってくればいいわけか? HPAPが減り続けるくらいなら、今までの応用でいけそうじゃが」
「そうね、一定時間までならそれで良いと思う」
 含みのある言い方をするヴァイス。
 メーヴェインはそれで、『長時間の滞在はHPどころの被害じゃなくなる』ということを察した。
「わかった。ぱっと帰ろう。黒羽は?」
「構わない」
 黒羽はハアと息をつき、ジェネレーターを背負い直した。
「キマリだね。事態のゲンインが分かればよし、余力があればゲンインを排除。敵が居たら全力で!」
 イグナートはグッと拳を掲げ、仲間達を先導するように歩き出した。

●汚染領域
 イグナートが地下空洞にやってきて最初に見つけたのは、白骨化した死体だった。
 服や道具類もそのまま残っており、中でも『いかにも』であった手元に落ちた手帳を拾い上げる。
 紙が劣化しているのか何かがしみてしまったのか、あちこち黒ずんでちゃんと読めなかったが、どうやら『研究が成功した』という旨が書いてあり、その後に『制御に失敗した』と書かれていることがわかった。
「…………」
「…………」
 ゆーっくりと振り返るイグナート。
 ゆーっくりと頷くメーヴェイン。
 だまーって首を振るクラウジア。
 その直後、ズシンという音と共に近くの岩が砕け、木の幹ほどはあろうかという太い植物が突き出てきた。
 先端についたつぼみが開き、ムッと周囲に甘い香りを漂わせる。
 さらには大量のツタが腕のように伸びあがったが、彼女たちは素早く飛び退いて距離をとる。
「よおしルフナ殿! ミニライブじゃ!」
「えっ……」
 マテリアルギターを構えるクラウジア。なんとも言えない顔で振り返るルフナ。
「ジョークじゃ」
 クラウジアはウィンクすると、ギャインと魔法の弦をかき鳴らした。
 音にのって展開した治癒空間に、ルフナが強制的に展開した『澱の森』再現空間が重なり仲間達を甘い香りの誘惑や毒から守っていく。
 その一方で、ジェネレーターをかついでいたことで動きの遅れた黒羽がツタにからめとられ、近くの岩壁へと叩きつけられる。
「……っ」
 あちこちぶん回されたくらいで死にはしない。黒羽というのはそういう男だ。
 だが、いつまでも『それだけ』でいてくれるとは思いがたい。そういうヤワな相手ではおそらくない。
 黒羽はジェネレーターが壊れていないことを簡単に確かめると、元来た道を戻るために走り出した。
 そこへ、地下空洞に入ってから今までまるで出現してこなかった例の緑色のモンスターたちが押し寄せてくる。
「どういう理屈だ」
「あの香りで呼び寄せたのよ」
 ヴァイスは黒いアバターを纏うと、激しい魔力を解き放ってモンスターたちを吹き飛ばしていく。
「道を」
「ハイ!」
 リュカシスは盾を鋼の拳でガンガンと叩くと、背につけたスラスターからのエネルギー噴射でモンスターの群れへと突撃。
 ボーリングのピンよろしく蹴散らすと、メーヴィンへと合図した。
「今の内に!」
「ああ、嫌な予感はしたんだ」
 地下空間を抜けたとしても、ダンジョンを入り口まで駆け抜けねばならない。
 途中でガス欠を起こさないように、メーヴィンは再び『ソリッド・シナジー』を仲間にかけると残りのバフ妖術で仲間を強化。
 アトはそれに短く礼をいうと、追いかけてくる大量のモンスターめがけて『盜火線』を放った。激しい爆発を起こす弾丸。
 黒い煙に包まれる通路。
 それを駆け抜け、イグナートたちは出口を目指した。
「礼のアレ、倒さなくて良かったの?」
「んー……」
 アトは小さく唸って、こう続けた。
「負けはしないと思うけど、ジェネレーターは壊されてた気がする。だってあんだけいたのに黒羽だけ狙ったでしょ。偶然かもしれないけど、意図的に『ジェネレーターを』狙ったなら、今回のミッションが失敗したかもしれない」
「ナルホドね」
 イグナートは納得し、拳をぎゅっと握り込んだ。
 通路に立ち塞がるモンスターを爆発四散させる勢いで殴りつけると、そのまま出口めがけて走って行く。
「今回の目的は浄化でも解決でも、まして世直しボランティアでもないもんね。依頼内容は『ジェネレーターの回収』。これを忘れちゃダメってことだね」

 こうしてPLANT22を脱出したイレギュラーズたちは、無事に人里まで到達。
 モンスターたちは施設の外まで追ってくる様子はなかったが、念のため近隣の人間に封鎖をよびかけることはしたようだ。
 あのあと施設がどうなったのか。
 地下空間に現れた巨大な植物はどうなったのか。
 続報は、まだない。

成否

成功

MVP

ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)
白き寓話

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete
 true end 2――『サイケデリックエデン』

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