PandoraPartyProject

シナリオ詳細

酔いどれペンギン、森を行く。

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●千鳥足の大行進
「クァーッ!」
 ふらふらペタペタ、右へ行ったり左へ行ったり。
 覚束ない足取りで、頭にネクタイを巻いたペンギンや酒瓶を抱えたペンギンが道を歩いている。
 足並みは不揃いではあるものの、進行方向は同じだからか、ギリギリ"群れ"らしい列が維持出来ているような状態だ。
「彼らはこれがデフォルトなんだ」
 この奇妙な光景を邪魔しないよう少し離れた場所で見守りながら、境界案内人の神郷 蒼矢(しんごう あおや)が説明する。

「酔いどれペンギンっていう名前でね。ああ見えて、なんと渡り鳥なんだ。
 自分達のいる場所が暑くなったり寒くなったりして来ると、住み心地のいい場所を探して気の遠くなるような距離を旅するらしいんだけど……」
 ペンギン達は見ての通りの千鳥足。恐ろしく自己防衛力がない。
 遭遇したモンスターにあっさり食べられてしまったり、密猟者に狩られたり。
 あまりにも無防備すぎるので、年々その数を減らしてしまっているのだとか。

 チーン! と軽快にグラスを鳴らす音が響く。
 つがいの酔いどれペンギンがワイングラスをぶつけ合ったようだ。
 酔っ払いの群れは賑やかで、襲ってくださいと言わんばかりの盛り上がりよう。今すぐ何かに襲われてもおかしくないような状態だ。

「自己満足かもしれないけど、群れを見つけたらほっとけなくなっちゃって。
 頼むよ特異運命座標。彼らが新しい住処を見つけるまで、守ってあげてくれない?」

 ふらぺたぺたた。特異運命座標の目の前へ一羽のペンギンが近づいた。
「クァー!」
 差し出されるシャンパングラス。お近づきの印に一杯……という事らしい。

 そんなこんなで、特異運命座標とペンギン達の奇妙な旅がはじまった!

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
 ペンギンの行進を見守る依頼って可愛いかな? と思ったんですが気づいたら酒気帯び行進になっておりました……。

●出来る事
 出来る事は次のうちのいずれかです。

1.ペンギン達を守ってあげる
 森の中は危険がいっぱい!お酒を奪おうとゴブリンや山賊が襲いかかってきたり、密猟者の罠が仕掛けられていたり。
 スキルやアイテム、ギフトなど、様々な方法でペンギン達を守ってあげましょう。

2.ペンギン達と飲む
 旅の途中でも、ペンギン達は疲れると寄り集まって宴で身体を癒します。
 一緒に飲んで騒ぐもよし、宴会を盛り上げるもよし!
 彼らとの距離を縮める事で、守りやすい環境を作っていきましょう。

3.その他
 ペンギン達とやってみたい事があれば、なんでもどうぞ!

●「酔いどれペンギン」について
 その名の通り、常に楽しそうに酔っ払っている不思議なペンギン。
 頭にネクタイを巻いてるやつとか、酒瓶を抱えて寝てる奴とか、いろんなタイプの酔いどれがいます。
 個体によってワインがすきだったり日本酒が好きだったりと味の好みがあるそうですが、持っているお酒がとても美味しいため、モンスターだけでなく人にまで狙われているそうです。

●場所
 異世界『イキモノガタリ』
  不思議な動物が数多く生息している世界です。モンスターも人も普通に暮らしています。魔王が支配している訳でもなく、滅亡に瀕している訳でもなく、比較的平和な世界です。

●書式
 一行目に何をするかの番号(1.ペンギン達を守ってあげる/2.ペンギン達と飲む3.その他)、
 二行目に同行者がいる場合は相手のIDもしくはグループタグを記載してください。
 三行目からはプレイングをお願い致します。

例)
 一行目:1
 二行目:【トラップマスター】
 三行目:非戦スキルの罠解除で、密猟者の罠を解除するぜ!

●登場人物
『境界案内人』神郷 蒼矢(しんごう あおや)
  動物好きな境界案内人。今回の依頼主でもあります。
  お酒に比較的弱く、飲ませるとすぐ酔っ払うそうです。
  赤斗と同じ身体を共有しています。
  「ペンギンを間近に見られる日が来るなんて……っ! 異世界ってすごいなぁ!」

『境界案内人』ロベリア・カーネイジ
  弑逆的な境界案内人。足を束縛する事で不思議な力を得ているそうです。
  お酒にどの程度強いか、酔うとどうなるかは不明です。
  「このペンギンの群れ、守るより引っ掻き回した方が面白そうですわぁ」

『境界案内人』神郷 赤斗(しんごう あかと)
  仕事人間な境界案内人。蒼矢に引きずられる形で半ば強引に連れてこられました。
  お酒は強い方ですが、酔わせるとワイルドな一面が見れる……かも?
  蒼矢と同じ身体を共有しています。
  「美味いな、この酒。切り盛りしてるバーのメニューに追加したいくらいだ」

●その他
 ・こちらのシナリオは一章完結の予定です。オープニング一覧から消えるまでプレイングを受け付けます。
 ・登場人物を同行者に指名する事もできます。

 それでは、よい旅路を!

  • 酔いどれペンギン、森を行く。完了
  • NM名芳董
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年06月21日 22時04分
  • 章数1章
  • 総採用数8人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

ミミ・エンクィスト(p3p000656)
もふもふバイト長

「ふらふらぺたぺた、滅茶苦茶無防備な生き物ですねえ……。
 これ放っておいたら絶対自然淘汰とかで絶滅すると思うのです、いやマジで」
 だってこんなとろいんですもん、なんて言いながら、ミミは目の前でフラついていたペンギンを抱え上げてぎゅっとする。
「ううん、モフいのです」
 捕獲されたペンギンは逃げる様子もなく、けぽっと息を吐いた後、片方のヒレを挙げて「うぃーッ」と陽気にご挨拶。
「あのヨチヨチ歩……や、只の千鳥足ですね、それもぼちぼち可愛く見えてくるですよ。
 足が短すぎて歩くのが下手ッピなのが愛嬌ですねえ……」
 ここまで来ると呆れを通り越して庇護欲さえ沸いてくる。涼しい木陰で膝の上に乗せながらよしよしと頭を撫でたら、気持ちよさそうに目を瞑った。
「クアー?」
 ふいに聞こえた物欲しそうな鳴き声は、他のペンギン達のもの。僕も私もと、構って貰いたそうにミミの元へ寄って来はじめた。
「全部ぎゅっとするのは大変ですね。……そうだ。お近づきのしるしに、どぞーなのですー」
『くるみ亭』自慢の葡萄酒をお酌すると、ペンギンの口に合ったようだ。
 飲めないミミはソフトドリンクで乾杯し、群れの休憩時間を盛り上げてーー。

「ミミ、そろそろ群れが動くよ。……あれ?」
 移動の気配を察して境界案内人が呼びに来ると、木の根元にはスヤスヤ気持ち良さそうに眠るミミと、身を寄せ合うペンギン達。
「……もうちょっとだけ、寝かせてあげようかな」

成否

成功


第1章 第2節

ユースティア・ノート・フィアス(p3p007794)
夢為天鳴

「あら……ペンギンが、たくさん
 見ていて不安になるほど弱って……え? 酔っているだけなのですか?」
 しかも其れがいつもの事?
 戸惑うユースティアの声に応じるように、ペンギンが「クァーッ!」と返事をかえす。千鳥足の不安定な動きとは裏腹に、確かに声は元気があった。
「不思議な生態です。……其れにしても、随分と賑やかですね」
 前情報で騒がしいと聞いてはいたが、それにしたってお祭り騒ぎが過ぎる。原因を探るようにユースティアが視線を巡らすと……ぴたり。足元に冷たい羽の感触を受けて、そちらへと意識を向けた。
「ふふ、レ・イゾーコも混ざって来ますか?」
『……』
 ユースティアの後ろに隠れつつ、ペンギン達の様子を伺うレ・イゾーコ。どうやら騒ぎの原因はこれらしい。新しい仲間が増えたとペンギン達は早くも祝宴ムードのようで、恐る恐る歩み寄ったレ・イゾーコをわっせわっせと胴上げしながら旅を続ける。
「受け入れて貰えてよかったですね、レ・イゾーコ」
 酔いどれ達に馴染もうとヨタヨタ歩きを学習するレ・イゾーコは傍から見ていて微笑ましい。
 だからこそ——降りかかる火の粉は掃わなければ。
 森の木々の囁きを受けて群れの先頭を追い越すと、そこには鈍色の輝きが。
「——其の悪夢を、断ち切ります」
 放たれた力の奔流は金属の鎖を打ち砕き、罠を道から退ける。
 追いついて来たペンギンの無事を確認し、ユースティアは柔らかく微笑んだ。

成否

成功


第1章 第3節

イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
キラキラを守って

 木の根元に腰を下ろし、足を投げ出したままイーハトーヴは手元の瓶をぐびりと飲んだ。
「可愛いペンギンさん達と酒盛りだなんて、その、あれだよね。ほら、あの……」
 役得、と言いたかった酔っ払いは思い出すのをあっさり諦め、おつまみの袋を開けた。ペンギンは魚が好きらしい。鮭とばを目の前へぶら下げてやると、短い足で懸命に跳ねて食べるのだ。
「ん、大丈夫だよ、オフィーリア。全然へーきだし、これはあの……そう、お仕事、だからね。
 皆と仲良くなったらあれだよ、その……守りやすく、なるれしょ?」
 名を呼ばれた兎のぬいぐるみは、まだ不安だと言いたげだ。
「うー、らいじょーぶらってばぁ。ちゃーんとまじめに…あ、ペンギンさん、ありがとー」
 もう何杯目だろうか。ペンギン達はお酌が上手い。すっかり気をよくしたイーハトーヴは微笑みながら、一冊の魔術所を取り出した。
「んー…かぁいい飲み友達の皆はねぇ、俺が守る、よぉ」

 キィン!

 高い音が響くと同時、魔導書が光りを帯びて独りでに捲れーー勢いよく放たれる衝撃の青。
 それは虚空に放たれたかのように見えたが、着弾した音と共に響く地響き。
 巻きあがった砂埃が収まると、なんとそこには気絶しているカメレオンの怪物が!

「こーやってねぇ、ドーンって……すりゅ…ぐぅ…」
 彼が寝落ちてしまった後もペンギン達は大興奮!
 命の恩人が風邪を引かないようにと、モフモフの体で寄り集まって眠ったそうな。

成否

成功


第1章 第4節

ユースティア・ノート・フィアス(p3p007794)
夢為天鳴

 ざわざわ、と揺れる木々の囁きに耳を傾ける。
「クアー?(何してるの?)」
 ペンギンに声をかられたところでユースティアは閉じていた瞼をゆるりと開く。
「左の道を進みましょう。もう片方は獣がうろついているそうですから」
 こういう時に彼女のギフトは大いに役立つ。人獣共存——語る言葉は彼らに伝わっているようで、助ける度にありがとうと律儀にお礼を返される。
「まだまだ先は長いでしょうし、少しでも多くの想い出を作りたいですね」

 意思の疎通が出来るからこそ、旅の合間の宴会が始まれば彼女はたちまち人気者だ。
 勧められたジュースはとびきり甘く、疲れたユースティアを癒してくれる。傍らに寄ってきたペンギンをぎゅっと抱きしめ頬を寄せれば、モフモフと柔らか温かい感触。
「……不思議なものですね。同じ種の中でも、此処まで多様な姿を持つペンギンが居るなんて」
 泣き上戸に笑い上戸。酔ってすぐに眠ってしまう者もいる。
 まるで人のようだと冷静な分析をしながらも、ついついモフり続けるユースティア。
「レ・イゾーコも、こう言った出逢いは貴重ですから——」
 いつも通り話を振ろうとしたところで、近くにレ・イゾーコがいない事に気づく。
 視線だけで姿を追うと、少し離れた所で何匹かのペンギン達に囲まれながら、楽し気にじゃれつきあっている最中だ。

(――あの子も、やはり沢山友達が居る方が幸せなのでしょうか。
 何だか……少し考えてしまいますね)

成否

成功


第1章 第5節

アリシア・アンジェ・ネイリヴォーム(p3p000669)
双世ヲ駆ケル紅蓮ノ戦乙女

「ふらふらペタペタと……そうね、人間だったら何だか見た事ある光景ね」
 ペンギンの生態としてはツッコミ所が多いものの、人に置き換えてみれば途端に馴染み深くなる。正体の分からない相手を守るよりはよっぽど良いと、アリシアは前向きに考えた。
「新しい住処を見つけるまでの護衛との事だから、大事にならない様丁寧にこなすとしましょうか」
 膝のあたりをペタペタ叩かれ、何事かと顔を向ければ、ペンギンから差し出されるお酒の瓶。どうやら歓迎しているらしい。
「ありがとう。でも……お酒の勧めは、新しい住処を見つけてから戴こうかしら」
 護衛を頼まれた以上きっちりやり通す。それが彼女の信念なのだ。

 森の夜道を恐れず進み、群れを先導するように一歩先を歩きながら指先を少し傷つける。するとたちまち、滴る血液が蝙蝠の形を成してパタパタと空へ飛び去った。
「貴方達も手を貸してくださらない?」
 木陰から様子を伺っている森の精霊達にも声をかけ、偵察から戻った蝙蝠の情報と照らし合わせれば、浮彫りになる悪意達。

「チョロいもんだぜ。飛べない鳥を捕まえるだけで酒代には困らねぇ!」
「その話、詳しく聞かせてくださる?」
 突然かかった声に気づく頃にはもう遅い。盗賊が抜刀する前にアリシアの細剣が夜風を裂いて鋭く突く。魔力を纏わせた一撃は悪漢達を吹き飛ばし、あっという間に決着を着けた。

「噂通り、人にも狙われているのですね……今後も油断は禁物です」

成否

成功


第1章 第6節

ユースティア・ノート・フィアス(p3p007794)
夢為天鳴

 飛べない泳げないレ・イゾーコ。その性質はペンギンとして致命的であると思われていた。
 しかし、同じ性質を持つペンギンの群れが現れたとしたら?
 酔いどれ達は飛べも泳げもしない。社交的で、レ・イゾーコを受け入れる姿勢も取っている。
(友達に囲まれて、楽しそうにはしゃいで……)
「本当に、嬉しそう」

 ぺたぺた。
「——!」
 優し気でありながらも、どこか寂しそうな微笑みのユースティアの前へ、レ・イゾーコが近寄ってくる。仲間とのじゃれあいよりも大切なものがあると言わんばかりに、機械の頭を彼女へ向けた。
「クァ?」
 酔いどれペンギンが不思議そうに首を傾げる。何も気づいていない様子はきっと素なのだろう。実に彼ららしいと思いながら、ユースティアはレ・イゾーコを抱き上げた。
「でも、この子は私のパートナーなのです。取っちゃ、ダメですよ」
 少し拗ねたような声に誇らしげなレ・イゾーコ。またひとつ、一人と一羽の絆が深まった瞬間だった。

 楽し気な宴会の翌日、酔いどれペンギンが目を覚ますと、休憩場所の中央にホワイトボードが立っていた。
「自己防衛の為の勉強会です! あ、お酒は飲んでいても良いですよ。取り上げたりはしません」
 言葉が通じ、酔っているとは言え多少の理性が有るのであれば、学習能力もある筈だと推測したのだ。
「怪しい場所には近寄らない、唸り声が聴こえたらそっと遠回りする——出来る限りで良いのです、頑張りましょう!」

成否

成功


第1章 第7節

アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手

「ぺ、ペンギンちゃんだ!」
 寒い異世界ならまだ納得がいくものの、まさかこんな普通の森の中でペンギンの群れを見る事になるとは。事前の情報を受け取っていても、テリアの頭は混乱する。
「よちよち……あれ、酔ってる
 珍しいなあ! お酒は飲めないけど、あの子達を守ってあげたいね!」

 そうと決まれば善は急げ。精霊に声をかけ、外敵がいないか探ってみると……出るわ出るわ。山賊に腹ペコ狼にゴブリンまで!?
「満員御礼だけど、ペンギンちゃん達も敵を見たらパニックになっちゃうよね……」
 あれこれ思案するうちに、テリアの頭に閃いたのはーー。
「かんぱーい!」
 宴会への参加だった。盛り上げるために一芸見せます、なんて触れ込みで皆の前に立つと、彼女はすぅと息を吸い込む。

 声のする方に おいで おいで
 甘い声のする方に
 祝いの席を 邪魔する奴は お仕置きを お仕置きを

 不思議なメロディに手を叩いて楽しむペンギン達。射程範囲の外にいた彼らは気づきもしないーーこの歌が"呪い歌"である事を。
「いでで! なっ、何だこの歌ッ、頭がァ!」
 慌てて逃げ帰る山賊やゴブリン達と、尻尾を巻いて逃げ出す狼。その様子を精霊がこそっと教えに来れば、テリアはほっと息をつく。
「良かった。これでちゃんとペンギンさん達の宴会に参加できるよ」
 今度は作戦ではない本当の歌を。愛する音を伝えよう。
 沢山の拍手に迎えられながら、テリアは紡ぐーー喜びの歌を!

成否

成功


第1章 第8節

リック・ウィッド(p3p007033)
ウォーシャーク

 ペンギン達に盃を勧められ、リックは少し困り顔だ。
「年齢的には酒を呑めるはずだけど、体が小さいからあんまり呑めねえ……あ、ペンギンサイズならちょうどいいのか?」
「それなら、ひと仕事終わった後にどうだい?」
「確かにな……そうするか」
 蒼矢の助言もあって、まずは護衛だと意気込むリック。
「外からの安全対策は他の皆がしてくれてるから、おれっちは群れに付き合いながら安全対策していくか」
 ペンギンの歩調に合わせてゆっくりと一緒に歩きつつ、戦略眼で動きを把握。はぐれそうなペンギンの翼を軽く引いたり、千鳥足を支えたり。
「おっと危ねえ」
 フラッフラで茂みに頭を突っ込みそうになったペンギンを一羽抱えると、羨ましいのか周りのペンギン達も我さきにと茂みにつっこもうと歩き出す。
「待て待て、後でちゃんと抱き上げてやるから! 行進してる間はしっかり歩けよ!?」
「あっはは! まるで引率のお兄さんみたいだね、リック」

 ペンギンに足並みを合わせると、過ぎ去る時も緩やかだ。
 絶海の海で死線を何度もくぐり抜け、刻一刻と迫る破滅の気配に追われていた時とはまた違う時の流れに、たまにはのんびりするのも悪くないな……と目を細める。

「クアーッ!」
「おう、乾杯だ!」
 そしてお待ちかねの宴の時間。今度は盃を受け取って、グイとリックは酒を煽る。
 途端にぐらりと揺らぐ視界。勧められた一杯は酒っ気の強い一杯で、不思議な世界へ彼を誘いーー。

成否

成功


第1章 第9節

 ペンギン達の一歩は小さく、とても頼りない。
 それでもローレット・イレギュラーズは根気よく彼らに付き合い続けた。
 道から逸れる者の翼を引いて、一緒に宴で楽しく騒いで。

 そんな日々を繰り返し、辿り着いた旅路の果てはーー。
「わぁっ! すっごい……!」
 共に付き添っていた蒼矢が大きく目を見開いた。
 満点の星空の下、色とりどりの花が咲く美しい花園で、ペンギン達は嬉しそうにわいわい騒ぐ。
「酔いどれペンギン達はね、住んでいる場所が住みづらくなると、
 本能的に"お花見"が出来そうな場所を求めて旅路を行くんだよ。僕も話には聞いていたけど……いい場所を見つけられてよかったねぇ」

 これから暫く群れは花園で過ごすのだろう。
 道中は色々なトラブルがあったが、護衛の仕事もこれで終わりだ。
 貴方がそっと離れようと花園から踵を返すと……ひしっ、と足元に纏わりつく感覚。
「クエー?」
 離れたくない、一緒にいたい。
 酔いどれペンギンはすっかり貴方に懐いてしまっているようだ。
「そんなに悲しい顔しないでおくれよ。これでお別れって訳じゃないさ。君達が毎日楽しく過ごしていたら、またきっと会いに来る」

 そう、いつかまた。
 旅路で宴をしたように、この花咲く庭園へ会いに来よう。
 どうしようも無いほど千鳥足だけど、ほっとけないモフモフの友の元へ。

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