シナリオ詳細
大迷惑の大ワーム
オープニング
●鉄帝、春
米。
いわゆる稲からとれる果実に相当する物。
数多の世界よりの旅人のある混沌世界においても、それは存在する。
それは、例えばイレギュラーズによって普及されていたり、あるいは古来より存在する物だったりいろいろ種類はあるのだが、いずれにせよ、古来から、あるいは新たに、稲の栽培と米の取得に乗り出す農家は存在するのである。
鉄帝の寒村にも、主食として米――稲の栽培を行う村が存在した。
季節はちょうど、田植えの時期。寒村に対応した寒冷地でも育つ稲を植えるため、この村でも、農夫たちが作業にいそしんでいた。
と。
ずん、と――。
大地が揺れた。ような気がした。
農夫たちが田から顔をあげる――不思議気に、辺りを見回した。
ずん。二度目の揺れが起きた。ずん。三度目。ずん。四度目。それは断続的な揺れとなって、農夫たちを襲ったのである。
「な、なんだ……!?」
農夫たちが悲鳴を上げる――と、ずずず、と突如、田の土が割けた。その裂け目に水が流れ込み、途端、ずずず、と何かがはい出てくる。
「な……!」
農夫たちが目を丸くした。
それは、あまりにも巨大で、太い――ミミズだったのである!
農夫たちが口をパクパクとさせているうちに、大地を割って、次から次へと、ミミズがはい出てきた――その数、8匹。
巨大なミミズは、腹から下を土に埋めながらも、なおも巨大と認識させるほどに太く、長い。ミミズと言えば口も何もないように見えるが、土を食べ、飲み込むための口は確かに存在する。その巨大なミミズを見てみれば、確かに、口と思わしき箇所は存在した。それはぽっかりと虚空のように開いて、ぐちゃり、と音を立てて田の土を吸引し始めたのだ。
その余りにも異様な様子に、農夫たちはたまらず逃げだしたのである――。
●ワームを撃退せよ
「わーむ……みみずだね」
ちゅるり、とストローでコップの水を飲み込みながら、スライムの少女――【ぷるぷるぼでぃ】レライム・ミライム・スライマル(p3n000069)がふむふむと頷く。
ローレットの拠点となっている、鉄帝の酒場の一つ。集められたイレギュラーズ達は、レライムより、依頼内容を聞いていた。
鉄帝の農夫より依頼されたことによれば、以下のとおりである。
畑より、突如巨大なミミズが現れて、付近の田畑の土を食い荒らし始めた、と。
「みみずって、土を食べて、その糞を出して土を豊かにするの。畑にミミズがいると縁起がいい、なんて言われてるのはそのおかげだけど」
ぷく、とストローをコップから加えて取り出す。タバコのように、ぷは、などと息を吐いて見せると、
「こうなっちゃったら、畑も田んぼも滅茶苦茶、なんだよね」
レライムの言うとおりである。畑の豊穣の象徴たるミミズも、こうなっては迷惑な害虫の一匹に過ぎない。そして、それが一般人の手に負えないとなったならば、ローレットのイレギュラーズの出番、という訳である。
「みみずの数は、全部で八匹。あとは、べたべたした粘液を吐いて……んー……情報があんまりないね。まぁ、村の人も戦ったりしたわけじゃないからしょうがないんだけど」
むぅ、とレライムは小首をかしげた。そのほかには、なんとも断片的な情報が載っているのみである。例えば、ミミズの頭は見たことがあるが、しっぽの方を見たことがない、とか、常に八匹がまとまって現れる、とか、ミミズが動くたびに、地面も揺れる気がする、とか。
「少し面倒な依頼かもだけど。あたしも手伝うから、頑張って。それじゃ、早速行ってみようか」
と、レライムはイレギュラーズ達を、村へと案内すべく立ち上がるのであった。
- 大迷惑の大ワーム完了
- GM名洗井落雲
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年06月21日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
サポートNPC一覧(1人)
リプレイ
●水田の上
「つめたい……!」
『イカダ漂流チート第二の刺客』エル・ウッドランド(p3p006713)が思わず声をあげた。足元がずぶり、と泥に沈む感覚。周囲の気候も相まってか、水田に張られた水は冷たい。
イレギュラーズ一行は、村人たちからの依頼を受け、謎の巨大ミミズが暴れる水田へとやってきた。ミミズはまだ姿を現しては居ないが、村人の話によれば、おおむねそろそろの時間で現れるはずである。
「おう、水もそうだが、足元には気をつけなよ! 俺みたいな奴なら慣れてるが、転んじまわないようにな!」
ぶははっ、と豪快に笑う『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)。水田の泥は、意外と足を取られるものだ。何らかの対策を取らなければ、少々、動きづらいかもしれない。
「でも、どろどろでタノシイね!」
無邪気に笑うのは『『アイ』する決別』ナーガ(p3p000225)だ。
「たんぼ、っていうのかな? タノシイけど、ヒトがつくったものをカッテにこわしちゃうミミズは、めっ、だよね!」
ナーガの言葉に、頷いたのは『狐です』長月・イナリ(p3p008096)だ。
「水田を荒らすなんてね。稲荷神の眷属としても、許すわけにはいかないわ!」
ミミズと言えば、田畑にとっては豊穣の象徴だが、水田を食い荒らすようなミミズはお断りだ。イナリはむっとした表情をしつつ、戦場となる田んぼを見やった。
「こんなにいい水田だって言うのに……農家の人の苦労がよく分かるわ」
「そのミミズでござるが、聞いた話でござると、八匹同時で尻尾を見たことない&地響きする……って巨大な一匹でござらん?」
疑問の声をあげたのは『はですこあ』那須 与一(p3p003103)である。ふむ、と仲間達は唸り声をあげた。
確かに、村人たちの言葉通りなら……少なくとも、ミミズたちがそのシッポの部分を地下に埋め、見せようとしない、という事は事実である。そして、その先端が土の下で繋がっていたとしても、それは全く、不思議ではないのだ。
「ヤマタノミミズ……というと、なんとも情けない感じではござるが。そう言う可能性もあるでござるな」
とはいえ、あくまで状況証拠、今の所は想像の域を出ない……が。
「だったら、尻尾斬り落としたら剣出てきたりしてな」
『ルビア』……『小さな煌めき』エメリー・アステリズム(p3p008391)を構成する二つの人格の内、勝気なルビアが声をあげる。ヤマタノミミズ……ならぬ、八頭の蛇の伝説を思い出す。旅人の世界の神話であったが、しっぽを斬り落としたら剣が出てきた、という訳である。
(もぅ……八つ頭って決まったわけでもないでしょ。それより集中して! いつ出てくるかわからないでしょ!?)
ルビアの脳裏に響く、もう一人の人格、『サフィア』の声。サフィアの声はルビアのみに聞こえ、他の仲間達には聞こえない。
「わーってるよ、サフィアは夢が無いなぁ……おっと悪い、独り言だ」
だから、苦笑しつつ、ごまかす。別に隠しているわけではないが、ルビアにとっては当たり前のことを、説明するのは奇妙な感じがして、上手く仲間達には説明していなかった。とはいえ、それで問題はない。二人で一人、それで『エメリー』だ。
と。
ずずず、と地面が揺れた。水田の泥が少し沈んだような気がして、そこへと引き込まれるような感触がイレギュラーズ達を襲う。
次の瞬間、水田の底が割れて、水がずず、と引き込まれる。その割れ目の数は8。刹那、その割れ目から音をあげて、八つの影が飛び出してきた。
それは、巨大なミミズ……ワームだ! ワームはイレギュラーズ達に気づいたのだろう。大きな口を開き、威嚇するように鎌首をもたげる。
「デカい……! イトミミズなら水田にもいるっすけど、糸と呼べない、太すぎるミミズはお邪魔っすよ!」
『薬の魔女の後継者』ジル・チタニイット(p3p000943)が声をあげつつ、構える。ミミズから視線を外さぬまま、傍らにいたレライムへと声をかけた。
「作戦通りっす。僕が回復手をやるので、そのサポート、よろしくお願いするっすよ!」
「うん、任せて、ジルさん。またよろしくね」
うにょり、と身体をうごめかせ、レライムは回復術式を編み上げる構えを取った。
「さて……では、今回は水田に舞わせていただきましょうか」
『魅惑のダンサー』津久見・弥恵(p3p005208)が声をあげる。水田と言う牧歌的な場所に立ちながら、しかしその姿はどこかあでやかさを感じる。
「保護結界は展開したぞ! 遠慮は無用だ、全力で行こう!」
エメリーが声をあげるのへ、仲間達が頷く。
「ミミズがいるのは良い土って言うが……水田荒らすのは看過できねぇぜ。米づくりしてる豚さんとしてはな!」
ごき、と首を鳴らし、ゴリョウが叫ぶ――同時に、その身を漆黒の装甲『天狼盾『天蓋』』が包み込む! 戦闘態勢は万全だ!
「それでは、大迷惑の大ワーム……その討伐、始めましょう!」
弥恵の言葉を合図に、イレギュラーズ達は一気に駆けだした――。
●まずは、八匹
「集中――ハチの巣にしてやります!」
エルの目が冷たく光る。その眼が一匹のミミズを捉えると、間髪入れずに拳銃が火を噴いた。どん、と言う音と共に、ミミズの筋肉へと銃弾が食い込む――声帯のないミミズが、ぎぃ、と悲鳴を上げたような気がした。
「舞台は水田――ですが、私のステップは、些かも衰えはしませんよ!」
凛、と水田に舞う弥恵――その腕が振るわれるたびに、心地よい香気があたりに漂う。それは、嗅覚ではなく、思考を直接犯す甘い香り。囚われた者は、弥恵から逃れることは出来ない。
「チャンスね……一気に仕留めるわ!」
イナリは刹那、その身に殺人剣の極意を宿す――きっ、と見据えるその眼。そこに見える、相手を殺しきるための道筋。
「天孫降臨!」
イナリに宿るは、加具土神の力。すべてを焼き尽くす神威の炎。すっ、と差し出されたその手に導かれ、加具土命の炎は、ミミズたちへと降り注ぐ。
弥恵の舞に脳裏を解かされていたミミズは、無防備に陥っている。そこに放たれた炎は、ミミズの懐深くまでを強く、焼き払う!
ぎぃ! ミミズがのたうち回り――やがて大地に身を横たえ、動かなくなる。その様子に、残るミミズがその身を強くこわばらせた
「やっぱり! 動きが連動している……絶対変よ!」
イナリが叫んだ。上空に飛ばしていたファミリアーによる視点から見た、俯瞰図。それが、ミミズたちの奇妙な連動の姿を捉えていた。
「音も捉えています……やはり、地中で何か動いています」
音の反響から、地面に大きな何かがうごめいているのを感じ取ったのは、弥恵だ。
「なるほど、まとめて一匹か! なら――」
水田の水を巻き上げて、ゴリョウは突撃する――反動推進エンジンから巻き起こるブーストが、ゴリョウの動きをさらに加速。ミミズの一匹に、正面からぶち当たった!
「まとめて相手してやろうじゃねぇか!」
突撃してきたゴリョウに、残る七匹のミミズが襲い掛かる――鈍い、砂袋で殴りかかられたかのような衝撃が、ゴリョウの身体に走った!
「ハッ! 痛ぇ……が! 俺を落とすにはまだまだ口説きが足りねぇなぁ!」
「おっちゃん、無理すんなよ!」
エメリーが、迫るミミズの打撃をいなし、カウンターの一撃を加えた。ばさり、と斬りつけられた傷跡から、粘性の液体がぼとりと流れ落ちる。
「相手は残り七匹……4・3で抑えよう!」
「ぶははっ、良いぜ! なら俺が、4、抑える!」
「しょうがねぇな、あたしが3か!」
がぁ、とミミズたちが、二人の前に鎌首をもたげ、口を開いた。それは、ミミズと言うより、巨大な大蛇のようにも思える迫力であった。
「ははっ、やっぱり、しっぽに剣があるんじゃないのか!?」
(ちゃんと構えて! 来るよ、ルビア!)
「おう、いくらでも、こい!」
『サフィア』の言葉に、『ルビア』が応える。重い砂袋の打撃を、エメリーは刃で受け止める。
「無茶は禁物っすよ! 二人とも、っす!」
ジルは回復術式を編み上げると、すぐさま二人に向けて放った。その神聖なる輝きが、ゴリョウとエメリー、二人の傷を癒していく。
「皆も! 足元気を付けて、気張って下さいっす!」
戦ってみれば、確かに水田の泥は足に絡まり、些かの動きづらさを感じさせた。ジル自身は、足元を取られぬ程度の低空飛行を行い、柔軟に動いている。
「まかせて! うごきづらくても、とおくからあてられれば!」
ナーガが声をあげ、握り込んだものは、足元の泥である。それを力強く振りかぶって、投げる――その膂力によって投げられたものは、なんだって凶器となる。それがたとえ柔らかい泥の塊だったとしても、さながらホローポイント弾のように着弾後広がり、傷口を深くえぐる!
ぎぃ! と身体を硬直させて、一匹のミミズが地に身体を横たえた。残り、六体――!
「その通りでござる! ミミズの狙い撃ちと行くでござるよ!」
与一が放つ魔弾が、ミミズの一匹を撃ち貫く。どう、と深い穴が開き、中から粘性の液体が鮮血時見て吐き出された。
ぎぃ、とミミズが怒り狂うようなそぶりを見せ、口から粘性の液体を吐き出す!
勢いよく吐き出されたそれが、次々とイレギュラーズ達へと襲い掛かった。べちゃり、と叩きつけられたそれは口元を覆い、呼吸の阻害する!
「くっ……」
白濁とした液体で体中を汚しながら、頬を赤らめた弥恵が眉をひそめる――口元をぬぐえば、えぐい臭いが鼻を突いた。酸素を求めて、自然、呼吸が荒くなり、さらに頬は体温の上昇に伴い赤く染まる――。
「な、なんか危険な感じがするっす! 治れーっす!」
ジルが慌てて回復術式を飛ばす。傷と共に窒息状態を解除された弥恵が、ふぅ、と深く息を付いた。
「ありがとうございます。助かりました!」
ジルがぐっ、と親指を立てて返す。なんだか、あのままだと特に危なかった。そう感じたのであった。
さておき。イレギュラーズ達の反撃が始まる。エルの放つ銃弾がミミズを撃ち貫き、
「先ほどの攻撃の、お返しです!」
弥恵の放つ鋭い蹴撃の雨が、ミミズに強かに傷をつけ、大地へと横たえらせた。
「迦具土神よ、今再び力を!」
イナリが放つ、再びの業火! ミミズはその身体を炎に焼かれ、やがて地へとその身を横たえらせる――残り、3体!
「うぉらぁッ! ヤンチャし過ぎだこのミミズ野郎! 流石の俺でもカンカンだぞコラァ!」
ゴリョウは手にしたガントンファーの炸薬を破裂させ、勢いを増してミミズを殴りつける――果たしてミミズは泥に顔面を突っ込んで、動かなくなる。
「てやぁぁっ!」
エメリーが刃を煌かせ、ミミズを斬りつける。ぎぃ、と悲鳴を上げ、ミミズはその身体を投げ出した。
「ナーちゃんでとどめだよ!」
おしりペンペン――と言う名の攻撃ではあったモノの、お尻にあたる部位が見つからなかったため、ナーガはミミズの背を強かに叩きつけた。骨があったならばそのまま砕けそうな衝撃を受けて、ミミズが背を反らせる――そのままくたり、と力を手放したミミズを、しかしナーガは手放さず、抱え込んで見せた。
「それから――ショウタイ、みせろーっ!」
ず、とナーガは両脚を地に踏み込んで、力を入れる――ず、ず、ず。地面からゆっくりと、ミミズが引きはがされ――どん、と言う音と共に、ナーガはそれを引き抜いた。
最初に見えたのは、8つのミミズの後端――それらはまとまる様に接続されていた。そこから、さらに巨大な、一本音ミミズのしっぽが現れて、ナーガはそれを宙へと投げ出した。
「やはり、こいつら……いや、こいつ! ヤマタノワームでござったな!」
与一の言葉通り、それは、八本の頭を持つ、巨大な一匹のミミズであったのだ! イレギュラーズによって正体を暴かれたミミズは、空中で態勢を整えると、ずん、と水田へと着地する――八本の頭を再びもたげ、イレギュラーズ達を威嚇するように口を開けた!
「八匹だろうが八本だろうが……やる事は一緒だ!」
エメリーの言葉に、イレギュラーズ達は再度武器を構え、ヤマタノミミズへと向かい合った。
「そうです。迷惑者は、ここで討伐します」
エルが言う。その言葉に、イレギュラーズ達は応えた。そして再び水田をかけると、正体を現した巨大ミミズへと肉薄したのであった。
●そして、一匹
「今まで奪った田んぼの命、償わせてやるっす!」
ジルは一度回復の手を休め、攻撃に転じる。ここまでくれば、一気に片を付けるのみだ!
放たれた神聖なる光が、ミミズを身体を貫いた。その痛みに、ミミズが威嚇するように鎌首をもたげ、八本の首を次々と振るい、イレギュラーズ達を殴りつける!
それらを受け止め、あるいは回避するイレギュラーズ達。バシャバシャと水田の水が跳ね、泥が跳ねる。
「おらぁ! 暴れるんじゃねぇぞ!」
ゴリョウは再びブーストを展開してミミズへと肉薄。その頭をその身一つで受け止めて見せる。ずん、とゴリョウの脚が、深く地へと沈みこむ。
「少しでも、ゴリョウさんの負担を軽くしないと……!」
吐き出された粘液をぬぐい取りながら、エルが放つ銃弾が、ミミズの口へと突き刺さる。ぎぃ、とミミズの頭が鎌首をもたげるのへ、
「舞台はもうお終い。無粋なお客さんには、お仕置きが必要ですね」
再び振るわれる、弥恵の五月雨の如き襲撃――その一撃一撃がミミズの頭を捉え、蹴り飛ばす!
「まずは丸裸にしてやる!」
それに倣い、エメリーは刃を振るい、ミミズの頭に斬撃をお見舞いした。二本目の頭が斬り飛ばされ、体液がぼたぼたと水田へと零れ落ちる。
「ひゃっはー! ヤマタノワーム退治でござる!」
与一の魔弾がミミズの顔面を貫いた。ぎぃ、と頭を反らせるミミズ――そこへ、ナーガの強かな打撃がお見舞いされる!
「えーいっ!」
可愛らしいその声とは裏腹な、肉を断裂する一撃が、ミミズの頭をへし折り、みちみちと切り裂いた。
ヤマタノワームは、その頭の半分以上を破壊されている。だが、その生命力は未だ足を止めることを知らない。残る頭を振り回し、イレギュラーズ達に必死の抵抗を続けるが、それらの打撃を受け止めたのは、ゴリョウとエメリーと言う二つの盾だ。
「うおおおりゃぁっ!」
ゴリョウのトンファーが、ミミズの頭を強かに打ち付ける――、
「あわせるぜ、おっちゃん!」
そこへ、エメリーの斬撃が追撃されて、ミミズの頭を再び地面へと潜らせた。
残る頭が、断末魔のように粘液を吐き出すが、もはやその攻撃がイレギュラーズ達を捉えることは無い。
「ふっ……!」
強く息を吐きながら放たれる、弥恵の蹴りの一撃が、ミミズの頭を浮かせる。そこへ突き刺さる、ナーガの鋭い拳の一撃!
「ぜんりょく、パンチだーっ!」
言葉の通りの全力の一撃が、ミミズの頭を殴り飛ばした。その勢いにミミズの筋肉は耐え切れず、ぶちり、と頭が千切れ飛ぶ。
「とどめっすよ! イナリさん!」
ジルが叫ぶのへ、イナリは力強く頷いた。
「死体も残らないくらい、焼き尽くしてあげるわ! 加具土神よっ!」
放つ、イナリの神威の炎。それが、水田の上で激しく燃え盛った。ミミズはその炎に焼かれて、本体をぎちぎちと収縮させていく。
やがてその炎がすっかりと止むと、そこにはイナリの言葉通りに、僅かな炭のようになったミミズの欠片が残っていただけであった。
●そして、静かな水田で
「ふぅ……やっぱり、大変なんですね……」
エルが額の汗をぬぐいながら、顔をあげた。
足元には荒らされていた水田があって、イレギュラーズ一同は、それを直している所だ。
見事ミミズを倒したイレギュラーズ達は、そのまま荒らされていた水田の補修を買って出たわけだ。
「ほんとっすよ。お米作るのって大変なんっすねぇ」
ジルが笑いながら、そう言った。大変、とは言うモノの、どこか楽しそうな様子ではあったけれど。
「ゴリョウさんとか感心するっすよ……全然疲れてなさそうっすもんね」
「ま、俺は慣れてるからな! こんなもんよ!」
ぶははははっ、と豪快に笑うゴリョウである。ゴリョウは水田の補修以外にも、農家の人間と話をして、米の品種や、稲作の相談なども行っていたらしい。まるで本職の様だ。
「補修が終わったら、私のギフトで稲を定着させるわ。ちょっとずるいかもだけど、田植えの時期が遅れちゃったものね」
イナリが言う。イナリのギフトは、五穀を成長させる事のできる能力だ。多少、生育の手伝いをしてやってもいいだろう。
一方で。
「これで、ぜんぶだよー!」
ナーガは焼却され残ったミミズの死体を担いで、水田の外へと積んでいた。これだけ巨大となると、一般人では片づけるのは容易ではないだろう。
「さすがに大きかったですね。後は、小さく解体して、土に埋めてしまう事にしましょうか」
弥恵の言葉に、仲間達は頷いた。それが一番いいだろう。土から出てきたものは、土に還してやるのがいい。
「所で……剣は出てきたでござるか?」
冗談のように、与一が言う。ヤマタノオロチの伝説にならば、その体内から剣が出てきたというが。
「さすがにないだろ……ミミズだぜ?」
エメリーが笑う――さて、ミミズを小さく解体しようとしたエメリーの刃に、
「んっ?」
こつん、と何かが当たったのであった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
ご参加ありがとうございました。
皆さんのご活躍により、寒村の平和は守られました。
今年も美味しいお米を作ってくれることでしょう。
ちなみに、ミミズの体内からは、本当に――なまくらでしたが――剣が出て来たようです。
誤って飲んで、消化しきれなかったのでしょうね。
GMコメント
お世話になっております。洗井落雲です。
突如鉄帝の寒村に現れた巨大なミミズ。
これを討伐しましょう。
●成功条件
『ミミズ』の討伐
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●状況
鉄帝の寒村。今は田植えの時期で賑わっているはずのこの村の田んぼに、突如として巨大な八匹のミミズが現れました。ミミズは地より這い出て、辺りの土を無差別に食い荒らし、田畑を滅茶苦茶にしてしまっています。
皆さんは、これ以上の損害を防ぐため、このミミズを撃退してい下さい。
作戦決行時刻は昼。戦場となるのは、水の張った田んぼであるため、対策が無ければ移動に少々のペナルティが発生する可能性があります。
なお、周囲は充分に明るく、広いものとします。
●エネミーデータ
『ミミズ』 ×8
特徴
突如現れた巨大なミミズです。村人の話では、八匹存在するそうです。
巨体を活かした近距離物理の『体当り』攻撃には乱れが、
吐き出される遠距離神秘の『ねばねばした粘液』攻撃には窒息が、
それぞれBSとして付与されています。
村人の話によれば、『常に八匹まとまって行動している』『しっぽを見たことがない』『動くたびに地面の底が揺れるような気がする』との事ですが……さて。
●同行NPC
【ぷるぷるぼでぃ】レライム・ミライム・スライマル(p3n000069)が同行します。
タイプとしては、攻撃、回復をどちらも其れなりにこなせる万能型。言い方を変えると器用貧乏。ステータスなどは、全てイレギュラーズの皆さんよりは下回っています。
盾にしてみたり、足りない所を穴埋めさせたり……ご自由にお使いください。
以上となります。
それでは、皆様のご参加をお待ちしています。
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