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シナリオ詳細

<魔女集会・前夜祭>夜の森で会いましょう

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●親愛なる【薬月の魔女】へ
【薬月の魔女】ノイジー・ブルーダリアは、椅子に腰掛け、医学的な意見を求める書簡に返信を書いていく。
『その症状であれば、考えられることは……』
 流麗な書き文字は、つらつらと専門的な知識を綴ってゆく。
 ペン先を削り、インク壺につけた。
 頭部が波のように揺れる。
「あらあら、もうこんな時間になってしまったわね」
 ノイジー・ブルーダリアの頭は海月のような異形の形をしている。かつての世界では恐ろしがられ、殆ど表に顔を出さない事もあってか、狂気の魔女、とよばれた事もあった。
 だが、今の世界でも、過去にいた世界でも。ノイジーが不実であったことはない。
 不老の身になってから得た様々な薬の知識を、世間様に還元し続けている、心優しい魔女だった。
 総合的に、善良で穏やかな老婆である。この世界においても、それは変わらない。

 コンコン。
 風が、窓をノックした。

 窓を開ければひらり、と舞い込む招待状。どこにいても、必ず届く魔女の招待状。ポップでキュートな、しかし無視できないような存在感を放つ招待状。
「まあ、ワルプルギスちゃん!」
 それは『夜の長』ワルプルギスから、愛し子たちへの、「夜(ナハト)」への招待状。
『今回の集会の会場は幻想よ
魔女集会で会いましょう、私の可愛い夜の子供達
ワルプルギスより』
 ああ、なんと見慣れた字!
 得意げにつんとすました、夜の長の表情が浮かぶようだった。
「今回は幻想なのね。ええ、行きますよ。喜んで!」 
 ノイジーはゆるやかに首をかしげる。顔つきはわからないが、泡が小さく楽しげに揺れるのを見れば、親しいものならおそらくは微笑んでいるとわかるだろう。
 孫のように可愛がっている相手からの招待である。行かないという選択肢はない。うきうきと支度を始めるノイジーは、どうやって客人をもてなそうかと考え始めていた。
(今の季節なら、そうねぇ……)
 ならば、お茶菓子と特製ブレンドティーは欠かせない。
 準備のために立ち上がったノイジーは、棚の不足に気がついた。
「あら「陽光草」がないわね」
 瓶の底にあったのはわずかな量だけ。これではお茶会は開けない。
「群生地は、ちょっと危険な場所にあるわね……とはいえ、この季節、このブレンドティーを出さないという手はないわ。そうね……」
 手を借りるとしようかしら。
 そんなわけで、イレギュラーズたちに依頼が舞い込んだのだった。

GMコメント

●目標
練達の森の奥の群生地にある陽光草の採取

・オプション
なるべくなら、陽光草も根こそぎはとらないであげたらいいわね。
(※滅ぼし尽くしたりはしないように、きもちだけでも採集の手加減してあげると嬉しいようです)。

●陽光草
 薬やハーブティーの材料になる、小ぶりな黄色い花。月の光の淡い夜になると花を咲かせて、小さく柔らかな光を発する。
 森の奥の群生地に生える。

●状況
 夜の森の奥の群生地へと向かう。

●群生地
 群生地は危険な植物がいる。
 とくにこの森で危険なのはキノコたちだ。
 陽光草を手に入れるためには、キノコたちを退治しなくてはならないだろう。

・ノラリガッサ【BOSS】
 体長1m50cmのキノコ。地味目の黄色いキノコ。別名:アルキタケ。
 はじめは地面に埋まっているが、近づくとなんと歩き出す。
 威嚇のたびにかさを揺すって、さまざまな異常状態を引き起こす胞子から、小さなキノコを召喚する。
 部位を間違えると毒性があるが、うまく軸をより分けて乾かして食べると美味らしい。

・不吉のキノコ
 いかにもおどろおどろしい子キノコ。
 弱々しいが、倒すと、不吉を受ける可能性がある。不吉は、ファンブル+4。おいしくない。

・炎獄のキノコ
 燃えているキノコ。
 体当たりしてくる。触れると炎獄になるかもしれない。
 炎獄になると、毎ターンHPを200+最大値の2%失う。辛い。

・麻痺のキノコ
 広範囲に麻痺効果のある胞子を繰り出す。22%の確率でそのターンの能動行動が行えなくなる。おいしくはない。

●森の様子
・学者たち
 森の入り口には好奇心にあふれた学者たちがいる。森の生態を調査したいが、繁殖しているキノコが怖くて逃げてきたのだという。
 腐っても練達の学者。
「でも知りたいという気持ちは抑えられない!」と言っていて、今のところすぐにはチャレンジしないようだが、そのうち無理な調査をしかねない。
「危なくない程度に脅かせば良いかしら。いっそ私が姿を見せたら無理はしないでくれるかしら?」
 ノイジーは迷っている様子。対処はおまかせ。

・通り道
 次第に割と深い道になっていく。夜と言うことで足場が悪いので、注意。
 パラメーター的なペナルティはないが、多少冷えるかもしれない。

・帰り道
 ノイジーは「あなたたちも、暖かいお茶でもいかが?」とハーブティーを淹れてくれる。帰りに、途中でちょっと休憩してもいい。お菓子も振る舞ってくれる。

●同行者
【薬月の魔女】ノイジー・ブルーダリア
 毒々しい海月の頭部を持った人物。だが、見た目に反して非常に穏やかで優しい性格をしている。
 怖がるようであれば、「怖がらせてごめんなさいね」、怖がらないようであれば「あら、変わってるわね」とちょっと嬉しそうにする。
 調合が専門の魔女で、医学的知識は相当なもの。
 イレギュラーズが傷ついたら、ある程度は癒やしてくれることだろう。

 自身は不老であるが、【人生を生き抜いて死ぬ】ことは、素晴らしい事だと思っている。
「欲しい人達は急ぎすぎてるのよ。自分の時間でなんでもやろうとしちゃって、後の人に渡せられないんだから」

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • <魔女集会・前夜祭>夜の森で会いましょう完了
  • GM名布川
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年06月14日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
伏見 行人(p3p000858)
北辰の道標
マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)
黒鎖の傭兵
ロゼット=テイ(p3p004150)
砂漠に燈る智恵
錫蘭 ルフナ(p3p004350)
澱の森の仔
ジェラルド・ジェンキンス・ネフェルタ(p3p007230)
戦場の医師
エルシア・クレンオータ(p3p008209)
自然を想う心
古野 萌乃(p3p008297)
名状し難い軟泥状のもの

リプレイ

●海月の頭を持つ魔女
「ノイジー夫人の依頼はこっちに来て初めてだな……しかし材料の採取依頼で本人の護衛とは珍しい」
『かくて我、此処に在り』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)は仲間たちを振り返る。
 ノイジーはかなり奇抜な外見をしているが。どうだろうか?
 いや、おそらくは奇妙な状況すら楽しめるような者たちばかりだ。
(……そういえば、こういう時は急ぎの用事であることが多かったな。学者陣での打ち合わせでもあるのか? ともあれ、依頼だししっかり努めんとな)

「あらあら、ようこそ。こんなところまで、ごめんなさいねぇ」
「くらげ」
『砂漠の冒険者』ロゼット=テイ(p3p004150)はふんふんと鼻を鳴らす。ノイジーの水の揺れにあわせて、ゆらゆらと首をかしげる。
「海種みたいなものなのかな。森にいるなんて不思議なかんじするね。ふふふ」
「はじめまして、僕は奇術師の夜乃幻」
『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)は、ノイジーに芝居がかった優雅な一礼をする。
「お初にお目にかかります……エルシア・クレンオータです」
『自然を想う心』エルシア・クレンオータ(p3p008209)の声はかすかにふるえている。緊張のためだ。
(魔女様が森の主とでも言うべき方であるのなら、きっと恐れる事はないのでしょう)
 エルシアはきゅっと自分の手を握る。
「丁寧にありがとう。そう、かしこまらなくて大丈夫よ」
 ノイジーは、微笑んだように思える。
「ブルーダリアさん………ああ、ノイジーとお呼びしても?」
『精霊の旅人』伏見 行人(p3p000858)は穏やかに夫人に握手を求めて手を差し出す。
「ええ、ええ! もちろんよ。是非ノイジーと呼んでくださいな。……私の姿が恐ろしくはないかしら?」
「うん。でっかいクラゲ……怖くはないよ、どちらかと言うと精霊みたいな姿で物珍しいかな」
『猫派』錫蘭 ルフナ(p3p004350) の若葉の瞳は好奇心できらきらと輝いている。
「レディに優しくは俺のモットーだ」
『戦場の医師』ジェラルド・ジェンキンス・ネフェルタ(p3p007230)は、すぐに人好きのする笑顔を浮かべた。一見とっつきにくそうに見えるジェラルドだが、話してみれば穏やかな人間だ。とくに女性や子供には優しいジェラルドである。
「ああ。言葉が通じて意思のやり取りが出来る。ならば恐れる理由が俺には無いかな。それに……」
 行人は、懐から小瓶を取り出す。瓶を揺らすと、透き通った湖の色の液体が揺れた。ノイジーの頭の中とよく似たそれは、ブルーダリア・エリクサーだ!
「まあ、なんてこと……」
「貴女の薬は俺も世話になっていてね」
「嬉しいわ。ほんとうに。自分の知識が誰かの役に立てるほど、嬉しいことはないものね」
 この場のだれもが、ノイジーの奇妙な風体は気にしていないようだ。
「TKRy・Ry……! 植物採集であるか!」
『名状し難い軟泥状のもの』古野 萌乃(p3p008297)の鈴のような声が響き渡る。
「そして我のような賢いスーパー天才な頭脳が必要という訳であるな!」
 萌乃は胸を張る。
「ふふふ、頼もしいわ」
「陽光草か……」
 行人はどこか楽しそうに目を閉じる。誰かを思い浮かべているのだろう。
「ふーむ、知っているのであるか?」
「あぁ、俺にも貴女のような薬学に長けた魔女の知り合いが居てその時に少し、ね」

●森の入り口
 森へと進む一行たち。
 入り口には、学者がたむろしている。
「学者であるか……!」
 装備は軽くなんとなく見ていて危うげだ。
「練達の学者か……思い込んだら一直線、というのはままあるが……」
「好奇心旺盛なのは良い事だが、危険な森に戦闘能力が乏しいのに入るのは自殺行為だ」
 行人の言葉にジェラルドが頷き、渋い顔をした。
「せめて、護衛を雇うとかそうゆう頭は無かったのか……」
「同じ科学者として彼らの好奇心は理解出来る……が、いささか危険であるな!」
「森の厳しさを知る幻想種としては、興味半分で森を荒らされたくはありませんが……」
 エルシアは目を伏せる。
「そうでございますね……。ここは、先へ進みましょう。諦めないのであれば……いざというときは。ブルーダリア様、協力していただけますか?」
「あら、いたずらをするのかしら?」

 入り口に足を踏み入れたイレギュラーズたちは、案の定、学者たちに声をかけられる。
「学者さんも研究熱心だねえ、危ない事はお勧めしないけど。命あっての物種だよ、死んじゃったら研究効率ガン下がりだよ!
 キノコのかけらあげるから、これで手を打たない?」
「き、キノコ?」
 ロゼットはひょっこっと懐からキノコのかけらを出した。
「おおお……?」
「キノコは菌の子実体だから、動かなくなっても元気だし、培養すれば増えるから
ちゃんとした施設で研究できるよ。フィールドワークも悪くないけどね!」
「ほほう……」
 拾ったものをくれたわけではなく、理にかなったプレゼントらしい。学者たちはつい感心して聞き入った。
「我らも専門家だ。ここは、代行調査するということで納得してはくれぬだろうか!」
 萌乃もまた素晴らしい科学の知識を持っているのだとわかる。
 ロゼットと萌乃の言葉に、学者たちは相談し始める。
「……しかし、どうしても自分の目で見たいというのが好奇心でして」
「そうですか。ご同行下さる分には構わないでしょう」
 エルシアはため息交じりに頷いた。
「……但し、私達と離れ離れになってしまえば、生きて帰れぬかもとご覚悟下さい……この森には、“知るべからざる者”もいますので……」
 エルシアは努めて恐ろしい存在をほのめかす。
「僕達は貴方がたの護衛は一切いたしません」
「うむ。我はそこまで戦闘に長けてる訳じゃないのだ! 頭脳専門だからな! よって、彼らを護衛しながら進むことは出来ないぞ!」
 幻と萌乃の念押しに、学者たちの表情に不安そうな色がよぎる。
「それでもと言うのなら……貴重な薬草が群生している地域だからね。調査の後にも来る気かもしれないが、この森を妄りに踏み荒らしたりしないように約束してくれるかい?」
 ジェラルドがすごむと、学者たちは神妙に頷いた。

●知るべからざる者
「いいか、危ないことになったら、即座に逃げろ、と伝えておく。依頼は先約があるし、流石に数が多いと守り切れないからな」
 マカライトが最後の念を押す。
「わ、わかりましたっ」
「はあ……俺はなぁ〜あんまり賛成しない……まぁ、どうしても行くって聞かないなら……仕方ないか…」
 ジェラルドは学者たちを心配そうに振り返る。実のところ、一番彼らを心配しているのはジェラルドかもしれない。
「ついてくるなら、ちゃんといい子にみんなで行動する事、いいね?」
「は、はいっ」
 ルフナは学者たちに話しかける。恐怖心と緊張をほぐすためであり、キノコが現れた拍子にバラバラに逃げ出されちゃたまったもんじゃないからだ。
 幸いなことに、精霊たちや植物たちに通じるものたちが多い。
(群生地の方向を知るにしてもキノコの奇襲に備えるにしても十二分だろうさ)
 ……不意打ちを受けることはないだろう。
「え、えっと?」
「なんなら、おてて繋いで歩いてあげるよ」
 ふんすと胸を張る。イレギュラーズの近くがいちばん安全と思ってもらうのがいい。余裕綽々の態度。それは
「こっち、だな」
 行人は森の精霊に語りかけ、群生地までの案内を頼む。
「……」
 エルシアの周りを、仄かに発光する契約精霊達が照らす。精霊たちはなにやらおしゃべり中のようだ。
「仲が良いんだな」
「気のせいかもしれませんけれど、彼女達、ほんのり温かみも感じる家族達です……」
 そうして、彼らは森の奥へと至る。

●びっくりさせよう
 ピタリと精霊が止まる。行人が立ち止まったことで、仲間たちは察した。エルシアが頷く。
(この先にいるんだな)
 学者たちはおっかなびっくりではあるが、ついてきているようである。
(怖じ気づくかと思いましたが、さて……それならば)
 幻は後ろからこっそりとついてきているノイジーの方へと抜けた。
「ブルーダリア様。僕達がこれから言うことは嘘ですから。ブルーダリア様の優しい心根はわざわざ危険を冒してまで魔女の皆様の為にブレンドティーを作ろうとしていることから明らかですから」
「ええ。ちょっとしたいたずらでしょう? これで少しは懲りてくれるといいわね」

「じゃあ、ちょっと協力してくれるかな?」
 ロゼットのお願いに答えて、精霊たちはふわりとその場を離れる。
(ブルーダリア様のことを思えば、心が痛みますが……)
 水をはじいたような、パアン、と大きな音がした。振り返ればそちらにいたのは、頭部がクラゲの女性である。
「あらあらあら、こんな森に、どうされたのかしら?」
「ひ、ひいいい!」
 現れたノイジーに、学者たちは悲鳴を上げた。
 そして、同時にキノコがこちらに気がついたようだ。
「ば、化け物ーーーー!!!」
 思わずマカライトは眉をひそめる。
(……ノイジー夫人は罵倒程度で凹む人ではないのだが)
 驚くのはわかる。だが、あんまりな言いようではないか。
「……お逃げになった方がよいのではないでしょうか?」
 学者たちはばらばらと逃げてゆく。
「うまい具合に道を引き返してくれたね。無事に帰れたかな?」
「……私には、幸運を祈る事しかできませんね……」
(どんな姿でも意思疎通のできるレディなのは変わらないんだがな……やっぱり、着いてこさせるべきじゃ無かったかもな。ノイジーを悲しませたくなかった)
 ジェラルドはふと思った。なんとなく懲りなそうな連中である。
(……いや、練達の学者ならノイジーに興味を持つんじゃないか? 調査と称して危害を加えないよう念を押しとくべきか……?)

●キノコたちとの戦い
 わさわさとキノコたちがやってきた。
 キノコが胞子をまき散らすよりも、幻が早かった。
 目にもとまらぬ素早さで、しかし、ひとときも慌てるそぶりはなく。まるで日常の動作のように、ステッキ『夢眩』を繰り出す。
 奇術『昼想夜夢』が展開され、美しい明かりがあたりを照らす。幻想的に舞い落ちる風景。それは永劫にして、一瞬のこと。
 夢が醒めるように、盤面が動き出す。
「お次を、どうぞ」
「ん」
 ルフナが呼吸をする。身体に満ちるマナがあふれだし、ルフナの故郷を描き出す。
 そこにあったのは、「澱の森」。幻想種以外の立ち入りを拒む森……。変質を嫌う霊力が、仲間を常住の状態に戻そうとする。
 停滞を。しびれかけた体は一瞬にして元に戻る。
 鎮守森の故郷を、ルフナはわずかに思い出す。
 森の外に留まることを選んだ。
 エルシアは呼吸を整え、戦場に立つ。戦いの気配は、慣れない。
(私がやるべき事は、みなさんの邪魔にならないような位置での補佐、ですね……)
「下がっていてくれ、ノイジー夫人」
 マカライトが素早くキノコの体当たりを受け止める。燃え上がるキノコの攻撃は、ただマカライトから伸びる鎖を赤々と照らすのみだった。
 キルストリークによる返す刃が、小さなキノコを縦に切り裂いた。
「仕事を受けた以上、きっちりとやる」
「ええ、もちろん頼りにしていますね」
「こっちだ」
 行人が蔦纏う刀を振り抜き、キノコたちを引きつける。
「ん、この者も相手になるよ」
 ロゼットはぺちぺちとキノコを挑発する。麻痺の胞子も、ロゼットを止めることはできない。
「炎獄、麻痺ははへーきだけど、このキノコはやだなあ」
「ひ、ひいっ」
 様子が気になって逃げ遅れた学者がいた。木の根に足が挟まったらしい。そちらの方に飛び出す小キノコを、ジェラルドが殴りつける。
「アタシは戦闘得意じゃないのよ! コッチ来ないで!!
アンタ達も逃げなさいよ!」
「わ、す、すみません!」
「とうっ!」
 萌乃がSPOを投げつける。
 キノコが毒を浴びて苦しみだした。
「TKRy・Ry……! 下級なキノコの分際で、天才科学者である我に楯突くとは、いい度胸なのだ! 望みどーり排除してやるのだ!」
 おびえてか、あるいは怒ってか。
 キノコはふるふるとかさをふった。

「では、再演といきましょう」
 幻が華麗に攻撃を避ける。手に持っていたステッキは、いつのまにやらカードに変わる。そしてそれも白昼夢の花へ。
 美しい景色は幻想を帯びて、この世のものとは思えない風景を見せる。
 攻撃を受けたキノコたちは苛烈な反撃を試みる。
(どうか……)
 エルシアは祈る。戦いが、犠牲なく終わりますようにと。
「ゴホッ…こ、これはOrorororororo……キッつい……のだ……Ororo……」
 胞子にあてられて、萌乃が吐いてしまったようだ。
「ちょっとぉ、大丈夫!?」
 ジェラルドが慌てて背中をさすり、SPDをくりだす。萌乃もまた自身のSPDでなんとか意識を保った。
「うむ……うむ、反撃だ! いくのだ!」
 萌乃はSPDを仲間に投げつける。
「我の代わりにっ!」
「この者の力を、少しだけ分けるよ」
 ロゼットのミリアドハーモニクスが、ぽん、とマカライトと行人の背を次々と押した。元気が流れ込んでくるようだ。
「ありがたい」
「ここで退くわけにはいかないな」
 ディフェンドオーダーで守りを固め、マカライトは武器を構え直す。

「さあ、受け取りました。そろそろ、幕引きといたしましょう」
 3度、戦場で風を切るのは幻だった。めくるめく昼想夜夢が、あたりを包み込む。幻想と現実がめまぐるしく入れ替わる。
「きゃっ……」
 エルシアが攻撃を受け、後退する。
「甘い! まだだ!」
 行人は、度重なるキノコの突撃にも、防御姿勢を崩さなかった。アイアースによって戦場の最前線に身を置き続ける。
「TKRy・Ry……! 油断したようであるな!」
 小さなキノコに回り込んだ萌乃の、レジストパージが炸裂する。
「お返しというわけであるな!」
「そろそろ終わりだね」
 ルフナの神奈備が、澱の森の力を引き出す。変化を嫌う森の力。戦いがないがごとしに、傷が癒やされてゆく。
「思いっきり、やっちゃってぇ!」
 声の裏返ったジェラルドが叫んだ。
「ああ、終わりだっ……!」
 マカライトの揺れる鎖が、敵を狙い定めてぴたりと静止する。
 そして、勢いを増す。
 ざしゅと。
 伸びたストライクチェーンが、大キノコを貫通する。
「あ、動かなくなったね」
 ロゼットはぺちぺちとたたきのめした小キノコをたたいた。まだ生きているが、抵抗力はなさそうだ。
「ちっちゃいのはこのままでもいいかな?」
「TKRy・Ry……! みたか! これが我の力である!」

●収穫はお茶会で
「……俺はあまり戦闘面で役には立てなかったが。ノイジー夫人、その、先ほどは」
 ジェラルドはノイジーの様子を伺う。
「うふふ。大丈夫よ」
(美醜で人が決まるわけではのに、恐ろしい見た目といわれ、迫害されても、尚、善良であり続けるということは、どれほどの我慢をされているのでしょう)
 幻はノイジー夫人を誇り高い人物と思った。
「すっかり冷えてしまったわね。これが終わったら、少し休憩していきましょうか」
「南極出身の我にはどーってことない寒さなのだ! しかし、温かい飲み物は有難いのだ!」
 肉体改造の影響で、萌乃の消化器官は弱いのだ。戦闘で吐いてしまったこともあり、満たしておきたいところだった。
「今回は良い経験を、ありがとう」
 行人は、気は抜かずに周囲を警戒しつつ、道案内をしてくれた精霊に角砂糖を渡す。
「ん、ありがと」
 ロゼットが頷く。
 この土地が。精霊が優しく思えるのは、仲間たちが敬意を払っているからだろう。
 エルシアがふわりと笑んだ。

「さて、お待ちかねの陽光草の採取だ。どの位のが取り頃だろうか?」
「そうね。このくらいの、7分咲のものかしら。根はなくてもいいわね」
「このようなものですね」
 幻は芽を避け、大きなものだけを柔らかく摘み取っていく。
「ん、そっちのはもう少し大きくなりたいんだ。こっちのならいいんだね。ありがと」
 ルフナは自然会話を交わして花を摘む。
 エルシアは自然を慈しむ仲間たちにいとおしそうに目を細めた。戦いは忌むべきものではあるけれど。こういった交流は、きっと外でなければ生まれないものなのだろう。
 そっと葉先を手で撫でると、摘み取った。
(ギリギリまで採り尽くすつもりなんてありませんけれど……全員がお茶を楽しめる程度の余裕は持っておきたいものです)

 そうして、お茶会が始まる。
「TKRy・Ry……! 格別である!」
 萌乃はカップを手に持ち、飲み干した。
「暖かいお茶を貰えるとなれば断る理由もない、有り難く味あわせて貰う」
「おいしい……です」
 エルシアが息をつく。
「うんうん、まったりしたいね」
 ロゼットがふんふんと頷いた。
「どう? 深緑茶風に、花を浮かべてみたよ」
 ルフナがカップを揺らす。
「まあ、素敵! 次の集会に、いいかもしれないわ。喜んでくれるかも……」
「急ぎの依頼とは、珍しいとは思っていたが。何かあるのか?」
「ええ、この依頼はね、そもそも……魔女集会のためなんですよ」
「魔女、魔女かあ。そういえばあんまり考えた事はなかったけど。この者も案外そういう存在に近しいのかもしんないねえ」
 ロゼットがふんふんと鼻を鳴らす。
「あら、お仲間ね」
 かくして、イレギュラーズたちは魔女とのひとときを過ごしたのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

リクエストありがとうございました!
とても楽しんで書かせていただきました。
恐ろしい外見をしつつも心優しい魔女であるノイジー夫人。
イレギュラーズたちの活躍により陽光草を手に入れて、魔女集会はきっと楽しいものとなることでしょう。
彼女たちが集う日を楽しみにしています。そこには、イレギュラーズのみなさんもいるのでしょうか。
気が向いたらまた一緒に冒険いたしましょう。

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