シナリオ詳細
白薔薇同盟殺人事件
オープニング
●白薔薇同盟
練達は首都セフィロト。その中で凡才ながらも日々、『元の世界』への帰還が為に研究を続けている一人の旅人が居た。
『紅宵・満月(くれない・みちる)』――こと、本名は陽田・遥。
彼女はDr.マッドハッターが面白がって作成した『ゲーム研究室』で主任職に就き、日々、へんてこりんなゲームを作り続けているのだが……。
「特異運命座標の皆! 本当にごめんね!
あのぉ……私の研究室に居る夢女……ううん、研究員についてなんだけど」
満月曰く、ゲーム研究室に所属する研究員の一人に白き薔薇の精霊(※自称)の旅人である『ジュリア』という少女がいるらしい。少女の形をしているがその年齢は『ヒミツ』だそうだ。
「私の研究室では皆にテスターをしてもらった事のあるゲームとか……そういう『黒歴史』で『禁足事項です』な事をしてるんだけど。ジュリアにはそのゲームのシナリオ担当して貰ってて。まあ、担当キャラクターに1ペアは謎のCP(カップリング)が出来上がってるけど」
徐々に小声になっていく満月。キャラクターが濃くなければ彼女の研究室ではやっていられないのかとさえ気になってくる。
「まあ、ジュリアの個人的な嗜好は一旦置いておくんだけど……個人的に趣味で小説を書いてるらしいんだ。
その名前が『白薔薇同盟』。白薔薇の乙女が主人公の逆ハー、嫌われヒロインって感じで――」
専門用語が入り乱れた。
『白薔薇同盟』。ジュリアが個人的に執筆している小説(名前変換機能アリ)である。
舞台設定は中世。幻想王国の様な『架空』の王国『ルートヴィッヒ王国』
そこに生まれ落ちた庶民ながらその体に白薔薇の魔力を痣を有するヒロイン。
ルートヴィッヒ王国では白薔薇の魔力と痣を有する者は王家やその縁ある者だと決まっているそうなのだ。
ヒロインは好奇の視線にさらされながら白薔薇の痣を有する者のサロン――『白薔薇同盟』へと参加することとなる……。
因みに、白薔薇同盟に所属する者は全員男性であり、且つ、庶民であるヒロインを最初は迫害するが徐々に惹かれていき……。それが面白くないという侯爵令嬢はじめとする貴族令嬢に虐められるのだそうだ。
「――っていう感じの話なんだけど。
最近、白薔薇同盟をノベルゲームにしたら『ジュリアが居なくなった』の!」
また、満月さんはやらかしたようだ。
白薔薇同盟をノベルゲームとして作成してみたそうだ。
そして、満月は恐る恐ると自身の作成したノベルゲームをスタートさせる。
どうやら最初に設定したヒロインの名前変換が出来なくなっている。『ジュリア』と書いてあることを見て特異運命座標は「ああ」と落胆しただろう。
そう、つまりは――
「ノベルゲームにジュリアが吸い込まれちゃった……!
しかもバグが起こって、『白薔薇同盟』の中で殺人事件が起こっているみたいなの。
これは第一の殺人が起こった夜――第二王子トリドルが殺されたところ。
此の儘じゃジュリアがゲームの中で処刑されちゃう、から、とりあえずデータを戻したわ。
トリドルが殺される前までは何とか別データセーブがあって戻れたから、そこから。トリドルを殺そうとする犯人を倒してきて欲しいの!」
――ジュリアは?
「まあ、今出れなくっても、一先ず生き残れたらいいと思う!
どうせ、ジュリアの趣味の逆ハー嫌われヒロイン夢小説だし」
- 白薔薇同盟殺人事件完了
- GM名夏あかね
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年06月12日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
夢小説――決して古ではないし、今だって実は読んでる――それは、乙女たちの秘密の花園である。古来より様々なジャンルがあるそれは練達の一部界隈ではフルオープンであった。具体的には、紅宵・満月さんの研究所では、だ。
「夢小説、ね、母はその方面の猛者だったと聞いた事があるわ」
そう言った『特異運命座標』遠野・マヤ(p3p007463)の母のHPだけでも混沌に来てほしい。
「私自身は特にイケメンとの恋愛に興味はないからあまり嗜みはないけれど。
私的には別に黒歴史とは思わないし、そういうジャンルがあっても良いと思うのよね……キャラ同士のCPSSなら私も書くし」
そちらの者だった。自身と相手キャラクター(もしくは『創作オリジナル夢主と呼ばれる存在だ!』)の物語を描いているかどうかの話である。マヤはと言えば元から存在し得るキャラクター同士でのショート・ショートを描いているという事だ。
「懐かしい……ボクもかつては夢だったよ。
その夢が高じて、今では立派な現役夢美少年だ」
何時かはそうなりたいと万人が願っている――『性別:美少年』セレマ オード クロウリー(p3p007790)は「たまに書いたり読んだりするけど、読んでて気持ちよくなれるよね」とそう言って笑った。
「自分の思い描いた世界に行けるというのは状況さえよければきっと楽しい事なんだろうな」
大きく頷く『久遠の孤月』シュテム=ナイツ(p3p008343)。彼にとっては、きっと、アリスインワンダーランドだ。少女が物語に吸い込まれた様に黄金色の昼下がりを楽しんでいるような――そうであればよかったのだけれど、と言う顔をした『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)と『淡色』ネア・ア・メア(p3p008279)は何も言わなかった。
「ノベルゲーム……ですか」
首を傾げた『勇気は勝利のために』ソニア・ウェスタ(p3p008193)。元の世界には存在せなかったそれにいきなりセイバーダイブさせられるのだ。演者としてその物語を演じるのかという不安は大きい。
しかし、ノベルゲームと言う言葉にセレマは「ボクもかつては作ったよ。ボクの物語のノベルゲームを」と言い出し、ネアに至っては「簡単に作れるんですよね。キリ(以下略)」と口にしている。
「皆様の反応も含めて、この仕事の事を総括させていただきますね。
中々に香ばしい内容の物語でございますね、ですがジュリア様のご年齢を考えますと致し方ないのかもしれませんね。そういった物語を好む、いわゆるお年頃というものでしょうか」
穏やかに、理解者たる『移動図書館司書』アデライード(p3p006153)はそう言った。そういう年齢が『自分の浮かべる中世ヨーロッパ風オリジナル創作世界(何でもあり、時代考証なんて知ったもんか!)』を書いているのだってアデライードにとっては微笑ましい。
「けれど、穏やかではありませんわね」
表情を曇らせた『お嬢様』薫・アイラ(p3p008443)。そう、これが他人の夢小説を朗読するとかいう方の殺人事件だったらどれ程に良かったか!――いや、良くない! 本当に死んでしまう!
「ゲームの中で殺されてしまうというのでしょう。そんなの見過ごせませんわ。
虚構(ゲーム)は虚構ですもの。『白薔薇同盟』へと参りましょう。
わたくしもお嬢様として、このサロンのような場で求められる立ち居振る舞いを充分身に付けている物と自負しておりますので、お役に立てるかと存じますわ」
清楚可憐で豪華絢爛、瀟洒美麗にして大胆不敵なお嬢様。流石、現役のお嬢様は違うぜ!
●
物語には設定と言うのが付き物だ。特に夢小説は、『物語の世界に自身を没入』させるのが必要不可欠である。そうした世界を作ることが出来る存在をアデライードは『尊い才を持っている存在』として認識していた。
「世界に入るうえで、演劇の演者にならなくてはいけませんよね……台本も練習期間もないので不安ですが……私は給仕として参加するつもりなのです」
ソニアは元の世界では貴族令嬢であった。英雄と名高い将軍の四人姉妹の末娘だ。それ故に『給仕』という使用人になるというのは彼女にとっては新鮮だ。給仕についてまず、思い返してみよう。屋敷に居た使用人の事を思い返して礼儀作法等でカヴァーできるかと考えた。
「……ですが、怖いですね。このゲーム(?)内の世界と私の世界の作法が同じとは限らないですし……基本は変わらないと思いますが」
「ああ。そこはあまり心配しなくて良いと思う。筆者の情報から、そのあたりは適当だ。
つまりどういうことかと言えば『逆ハーレムヒロイン』になるが為に作られた適当与太ワールドと認識するべきだ」
自身こそ至高たるセレマは自分以外がちやほやされているという状況が気には喰わない。詰まる所、逆ハーヒロインとの相性は最悪だ。
「取り合えず向かおうか……ゲーム内とは言え、人が殺されるのを黙って見ているわけにも行かない。
騎士として何としても皆を守り切って見せよう! 服装が給仕ならとりあえず許されるかな……」
シュテムの呟きにアイラは「きっとそうですわね」と頷いた。身分相応のドレスを身に纏い、『さる高名な家系の貴族令嬢』という設定をその身に課したお嬢様にアデライードは「給仕に見えますでしょうか」と首を傾いだ。
「見えるでありますよ。設定は?」
「側付きの給仕です。両殿下のお側にて控えようかと思いまして……」
成程、とエッダは頷いた。因みに彼女の設定は壮大だ。†白薔薇同盟†に挑むのだから、設定は作者に負けない雰囲気が良い。
「自分はメイドというのは仮の姿で実はかつての神聖王国―セラフィックキングダムー王家の正当な血筋を引く王位継承者であるがそれを歯牙にもかけぬ人あたりの良さで老若男女に絶大な指示を得ているが実は天使と悪魔の両方の血を引いており左右の目の色が違って戦闘の際には光と闇を合わせた聖闇魔法を用いて戦う美少女であります」
「え?」
「どこの誰が何と言おうとそうだったらそうなのであります」
エッダの驚異的な設定にマヤが思わず「え?」ともう一度返したが彼女は歯牙にもかけぬ人当たりの良い笑顔で「そうなのであります」ともう一度返した。
「私は……(悪役令嬢になって「オーッホホホホ! 汚らしいですわよ」なんて言ってみたいけど)、普通に給仕にしておくわね。
ジュリアの側付きとしてのつもりなんだけど……第一王子に疑われるなら白薔薇同盟に入る為に急遽つけられたお目付け役的な雰囲気で行くわ!」
正統派メイド服よ、とマヤはクラシックなスタイルを推した。決してミニやスリット入りなどは許せないのだ。
「さて、いこうか」
体つきは女性そのものに。声も女性に近しくなるようにと変化させた。セレマは完璧な女装美少年として素晴らしい立ち位置を得ていた。
説明しよう。これは乙女ゲーム的展開の待ち受ける逆ハーレム夢小説だ。つまり、男性の立場であるセレマは逆ハーの一員としての攻略対照的な立場となり! そしてルート開拓やスポットが当たる可能性まであるのだ。ヒロインに対して普段は優しい給仕メイドであったのに性別と言う『禁則事項』がバレた時は高圧的に彼女に接することで俺様系とギャップ萌えを狙うのだ。
「そしてボクのプロフィールを確認してほしい」
「ふむ。確認もやぶさかではないであります」
「ふふっ、有難う、メイド」
「誰がメイドか!」
エッダの鋭い呟きと共にセレマのプロフィールを確認する。『あらゆる文化圏・種族から美の化身』であり『お耽美になる』事がよくわかった。
「…………いや、もう白薔薇同盟の一員に居てもおかしくないわね」
マヤの呟きは遠く――消えていった。
●
美しき白薔薇の園、そこに招かれるのは王族が多いのだという。白薔薇の魔力を有する者はその身に痣を顕現させる。故あって、臣下に下ったという姫の高貴なる血を引いた##NAME1##。
現在は伯爵の地位に落ち着いてはいるが、ふんわりとした髪が愛らしい##NAME1##――名前変換がバグっている!
設定をし直そう。
【白薔薇のプリンセス、貴女の名前は――?】 【名 ネア】
ネアは伯爵家の美しい姫君である。しかし、その出自から白薔薇同盟に入ることが許された高貴なる娘だ。白薔薇同盟に懼れる様に踏み入れた庶民の少女・ジュリアは不安げに息を吐く。
「ご機嫌ようございます、殿下。それに、メア伯爵令嬢ネア様も……」
「ご機嫌ようございます、ジュリア様」
にっこりと微笑んだネア。便宜上、彼女の側ではシュテムが「お嬢様、葡萄ジュースでございます」とそっと差し出している。
「有難う、シュテム。殿下、私少しお花を見て参りますわね」
「ああ、ネア。君は白薔薇が好きだな」 ←突然生えた設定。
「ふふ、お母様の御身体にも咲いておりましたのよ、白薔薇。好きでない訳がございません」 ←ノル。
くす、と微笑んで席を立つネアの椅子を支えたシュテムは柔らかに微笑み、彼女の指示を受け、王子たちの給仕にあたる。和やかな茶会ではあるが、席に立つことなく遠巻きにそれを見つめているだけのジュリアは緊張と困惑が浮かんでいた。
(―――誰!? 私、こんな登場人物書いたっけ!? 口からすらすらっとお名前がでたけど!?)
因みに外では紅宵・満月がイレギュラーズの設定をゲーム内に落とし込んでいた。
役所を考えるアイラはシュテムに椅子をそっと引いてもらい「有難う」と微笑み席に着く。どうやら彼女は根っからのお嬢様と言う設定を受けて王子達と縁近い侯爵家ご令嬢と言う設定が付与されていた。
「御機嫌よう、ジュリア様。貴女様のご事情は伺っておりますわ。
普段、ご縁の無い所にいらしておりますと、大変なご苦労もおありでしょうね」
「アイラ様……」
ほっとしたようなジュリアへとアイラはにこやかに微笑んだ。
「所で、わたくしお紅茶が頂きたいのですが……お願いできるかしら?」
「え?」
ぴしり、と表情が固まる。ジュリアの視線の先ではソニアがにこやかな微笑を返しているが――顔所も侯爵令嬢の『役』を理解してか動くことはない。
「ジュリア様、侯爵令嬢アイラ様がおっしゃっておりますから」
そっとマヤがそう告げる。ジュリアは『自分に側付きなんていたかしら』等顔をして「ええ」と頷いた。
「恐れ入ります、アイラ様。ジュリア様は『高貴な方への』紅茶の淹れ方もあまり存じ上げておりませんので……」
「まあ。教えて差し上げたら?」
にこりと微笑んだアイラにマヤは頷き、ジュリアを影へと誘った。その頃、彼方からの侵略者たるエッダはゲテモノ料理をぐいぐいとトリドル王子に差し出していた。
そして、穏やかな顔をしてアデライードは珈琲をお勧めし続ける。ミルクや砂糖を特段否定するわけではなく、珈琲は美味しいのだと彼女はトリドルの前へとそっと差し出した。
「あら、『第一王子(名前を呼んだ!)』殿下は飲んでくださいましたよ」
――トリドルは飲んだ!
「……え、ええと?」
「ああ、御免なさいね。私はイレギュラーズ遠野マヤよ。貴女の上司、紅宵さんから貴女を救うように依頼されてきたわ」
其処から彼女に説明が入るが、ゲーム内では皆『そのように振舞っている』為に、一先ずはそう言うもんなんだなと対処してほしいとマヤはジュリアに懇願したのだった。
●
「ネア様?」
「あら、ジュリア様」
穏やかに微笑んだジュリアにそっと近寄ったネアは自身にわざとらしくぶどうジュースをかけて勢いよくすっころび、「キャーーー!」と大仰に叫ぶ。
「えっ!?」
「で、殿下! ジュリア様が、わたくしにジュースをかぶせて背を押して転ばせましたの!」
泣きながらネアはトリドルの傍へとそっと寄る。にやにやと笑った第一王子になど気を留めず、トリドルは「ジュリア!?」と驚愕したように彼女を見遣った。
「うう……わたくし、注意しただけですのよ。婚前の女子が若い男ばかり侍らせてはしたないと諌めただけなのに……」
一応ネアは生物学上では無性だ(滝汗)
ぐすぐすと泣いたネアの声を聞きつけたように白薔薇同盟のサロンに参加している取り巻き女(王子の婚約者候補ともいう)はネア様になんてひどい事をと叫び出す。
「期待通り」(ぉ
「ネア?」
「いいえ、何もございませんわ」
肩をトリドルに抱かれた儘、ネアは小さく笑っていた。その様子をまじまじと眺めながらアイラの傍に立っていたシュテムは「成程」と呟いた。
「王子、衣服が汚れます」
そっと手を差し伸べたシュテムに「ああ、有難う」と王子は小さく頷く。
「……第一王子殿下?」
如何なさいましたかと問いかけるソニアの言葉に彼は「何も」とだけ返した。
「珈琲をお飲みいただいているのも嬉しかったのですが……恐れ入ります、殿下。刺客が」
穏やかにそう言ったアデライードの言葉に第一王子は「君は、その為の側付きか」と小さく呟いた。
「兄上?」
「いや……ああ、分かった。此処は任せよう。トリドル、お前も――」
「いや、俺は往きます」
そう言って前線へ繰り出そうとするトリドルの襟をぐい、と掴んでアデライードは背後へとぽいとやる。あまりにあっけなく後方へと投げられる第二王子の様子にジュリアはあんぐりと口を開いた。
「ええっ!? 何!? マヤさん!?」
「貴女も下がって」
ジュリアを守るようにイレギュラーズは布陣する。呆然とするトリドルは少々ばかり可哀想ではあるがエッダは気にする素振りも無く堂々と言い放った。
「ていうかぁ自分思うんでありますが相互リンクってなれ合いの温床でありますよねぇ」
エッダの鋭い一撃! 相互リンクに (← 親友 ) とか書いていた時代の人にクリーンヒット!
王子ははっとしたように「無礼者!」と叫ぶ。
「良いから下がってなさい! 守るべき人間に前に出られたら邪魔なのがわからない!?」
「……俺に指図するなんて、面白ェ女」
トリドルのフラグが立ったマヤであった!
「どうせ**ツール! とか言って陰から攻撃してくる奴いるであります。
ウェブリング……ぶっちゃけ使いづらいけど当り引いた時は嬉しかったのでたぶんCTとかEXA型でありますな」
堂々とそう言ったエッダ。その傍らでセレマは堂々とその美しさを誇る。
「ボクは現役夢美少年だぞ! 痛々しいと思っている過去なんて1つもない!」
なんてことだ。彼の前では黒歴史なんてなかった。寧ろ現役なのだ!
襲い来るバグの嵐の中で、アデライードは背後の第一王子に「君たちは刺客の襲撃を知っていたのかい?」と問いかけられている。
「また後程」
静かに返すアデライードの眼前では癒しを送るソニアが首を傾いだ。
「しかし……いまいち攻撃の正体がつかめないのが恐ろしいですね。
あんこくびしょう? きりばん? だみーえんたー? くろれきし? うらぺえじ……?
こ の世界の元になった小説を作成したというジュリアさんの世界では、一般的な言葉だったのでしょうか……」
「ウグッ」
ダメージを喰らったネアであった。同盟バナーも直リンしてやるし、ダミーエンターはソースコードもチェックチェック。パスワードはメール請求は照れちゃうし、キリバンは拍手で報告。此処まで義務教育なのだ!
(すごい文化だな……)
呆然とするシュテムの傍らでアイラはそっと立ち上がる。
「わたくしが暗黒微笑など浮かべながらびんb……庶民であらせられるジュリア様にお声賭けしてしまうと、それはもう、皮肉で意地の悪いご令嬢の図となってしまいます」
「びん」
「いいえ、何もありませんわ」
暗黒微笑のアイラ様を見たら第一王子にが興味を示してしまうだろう!
バグと戦うエッダやイレギュラーズの凶器のような言葉を聞きながらもジュリアは美しき白薔薇令嬢を演じていた。
「この攻撃をさばき切るなんて、おもしれー女――!
ジュリアとか言ったでありますか。その名前、覚えておくでありますよ」
「えっ……」
百合の花が咲きほこりそうな空間が出来上がっている。エマージェンシー!
「必殺技があります! 聞いてください!」
「聞こうか」
ネアの言葉にセレマは頷いた。
「相互さんになりませんか! 幻想同盟のバナー配布してます!」
突然の死がバグに訪れたのだった。
「ほら、自分もそれなりにそういう絵物語は嗜んでいるでありますし。
騎士だから貴族だし。……次のも期待してるでありますよ、先生」
エッダのその言葉にジュリアは「良い人!」と飛び上がったのだった。
●
「貴女……『夢美少年』って……」
ジュリアはセレマをおずおずと見遣った。白薔薇の咲き誇るその場所で、草臥れたトリドルを開放するイレギュラーズの中で、セレマは息を吐く。
「だから?」
「だ、だからって――貴方、まさか――」
男、と言おうとした口をがしり、と抑える。ジュリアとセレマの距離は近い。自身の掌で彼女の唇を覆ったまま、その手の甲に口付ける様に美少年は言った。
「だから何だよ、浮かれお姫様。……どんな格好してようとボクの勝手だろ」
――とくん、と胸が高鳴った。
「ま、待って……!?」
ざあ、と薔薇の花が吹き荒れる。それが第一夜のクリアであると同時に天より「お疲れ様ー!」と言う紅宵の声が降ってきたのだった。
成否
大成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――白薔薇同盟には女と見紛う美しい女装メイドが追加されたとかされなかったとか……。
ジュリア「ひやひやしましたよ(爆」
トリドル「ふん、お前がグズなのが悪いんだよ」(←
ジュリア「でもイレギュラーズが来てくれてよかったですね♪ トリドル死ぬ所だった(ぉ」
トリドル「……ったく、お前も危険だったんだからな?」
ジュリア「わかってますって(笑)それではまた次回~!」
作者あとがき:いや~!満月さんが居なかったらどうなってたんだろう!?(滝汗
案外、第一王子とかメイドくんとの恋愛が始まったりして?(←ヤメロ
それでは『白薔薇同盟』第1夜でした~!
【拍手ボタン】
GMコメント
「ふーん面白い女」って言われる小説を小学生の頃は呼んでましたね。夏です。
●成功条件
第二王子トリドルの殺害阻止
●『白薔薇同盟』
白薔薇の精霊を自称する旅人『ジュリア』が作成していた夢小説をもとにしたノベルゲーム。
『逆ハー(男性キャラに好かれるハーレム)』で『嫌われヒロイン(周りの女の子に虐められる)』な『夢小説(名前変換機能付き小説)』です。
ルートヴィッヒ王国では王家に連なる者は白薔薇の魔力と痣を有すると言われています。婚前の者達を集めた白薔薇同盟と呼ばれるサロンに『庶民出身』でありながら参加することとなった『ヒロイン』……。
好奇の視線に晒され、その出自から迫害される事もありますが、彼女は次第に白薔薇同盟では欠かせない存在になるのだそうです、が! 『システムバグ』によって、メインキャラクターである第二王子トリドルが殺されてしまいます。
エマージェンシー。このままではやばいので、満月の力を借りてノベルゲームの世界に突入してください。
そして、第二王子トリドルを殺害されないように防ぐのです!
怪しまれないように、今日からお前は貴族令嬢か白薔薇同盟に入れる給仕だよ! 第二王子トリドルは莫迦だけど、それっぽく振舞わないと第一王子にバレるぞ!
(服装は満月がゲーム内に転送するときに指定できるらしいです。ご指定下さい)
●第二王子トリドル
殺されます。俺様系王子。「へえ、面白い女だな。俺に盾突くなんて」とか言います。
第一王子がデキがいいのでちょっぴりコンプレックスです。
第一王子とサロンで過ごしています。
●第二王子を殺すコンピューターバグ*10
第二王子トリドルを白薔薇同盟(白薔薇のサロン)で殺すバグです。
ドットの靄がわちゃくちゃしてきます。
トリドル(と、第一王子、ジュリア)を守りながら戦ってください。
以下、やばい攻撃
・黒歴史を思い出させる『同盟バナーアタック』
・思わず暗黒微笑を浮かべさせるビーム
・ダミーエンターひっかけアタック
・裏ページのパスワード難しいアタック
・秘儀:『キリバンスルー禁止』!
必殺だわ……。
●ジュリア
自称は白薔薇の精霊である旅人。実年齢は秘密。中学生くらいの少女の外見をしています。
白いロングヘアーに赤い瞳、服装は『白薔薇同盟』の効果か、それっぽいものに入れ替わっています。
所謂『夢女子』『俺様系好き』、満月の部下にあたる研究員です。今はノベルゲームの中に閉じ込められています。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
それでは、よろしくお願いします。
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