シナリオ詳細
邪神マリモッコス事件
オープニング
●
「強制捜査でごぜーます!」
ガラスをクロスチョップでかちわって突っ込んでくるマリナ (p3p003552)をご想像いただきたい。
ついでに青海の女神像がぼすぼす突っ込まれていくさまをご想像できるもんならしてみろ。
「ウワーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
実際こんな場面に遭遇したら誰だってびっくりするしそれが自分の上司だったら目ぇかっぴらいて絶叫するとおもう。
その当事者というのが、ナマズ海種ギョジョウ(40台独身無職自称マリナの運転手)である。
ことの始まりは一ヶ月前。
「ようお嬢ちゃん、この前はアクエリア島で大活躍だったんだって? 一万G貸してくれ」
ギョジョウが左手に競ロバ新聞右手に赤鉛筆という不安しかない格好でンなこといいに現れた。
「は」
言葉の前後があってねーぞと思ったがちょっと前(マリナが艦隊を率いたときとか)には画面に見切れる程度には活躍していたのでしゃーねーですねと言いながらガマ口財布からお金を出してやるマリナママ。
「ヒュー! さっすが船長! 倍にして返すぜー!」
上機嫌にすっとんでいくギョジョウ。どうせ帰ってこねーだろうなとマリナも思っていたしその様子をハタから見ていたリンディス=クァドラータ (p3p007979)や新道 風牙 (p3p005012)たちもそう思っていた。
ポテチの袋を抱えてぽりぽりする風牙。
「あのひと、マリナの部下を名乗ってるひとだよね」
「海洋王国で表彰されたあたりから頻繁に顔見るようになりましたけど……どういう関係だったんです?」
『貸した金は返らない』って本を読みつつ顔をあげるリンディス。
横で『ヤミ金ミノザワ君』っていう漫画読んでたセララ (p3p000273)が顔をあげた。
「死別した娘に似てるような似てないような気がするんだって」
これ娘の写真ね、といってセララはつい最近やった海洋王国の春フェス写真を見せた。ばりっばり最近の写真だし顔はナマズそのものなので、似てないし死別もしてないのがまるわかりだった。
「……だめなひとだ」
「……だめなひとですね」
「……だめなひとなんだよね」
ハァとため息をつくが、マリナがヒモみてーにお金貸してあげるのはなんでだろう。
ベネディクト=レベンディス=マナガルム (p3p008160)は腕組みシリアスフェイスをした。
「きっと、マリナには重い理由があるんだろう。ああみえて忠義深かったり、俺たちの知らない複雑な過去がマリナとの間にあったり……とにかく、よほどのことがなければいいのではないか?」
「なんじゃ、『よほどのこと』って」
『バレなければ放火じゃない』って本を読みながら顔を上げるアカツキ・アマギ (p3p008034)。
お紅茶片手にそれまで黙って聞いていたリースリット・エウリア・ファーレル (p3p001984)がふと口を開く。
「マリナの像を量産して高値で売る……とか……ですかね」
「はははまさか」
「そんなこと誰もしませんよ」
「みんなーーーーー!」
ルアナ・テルフォード (p3p000291)が頭上に女神像を担いでダッシュしてきた。
「『青海の女神像』が半額だって! すごいよみんな行こう!」
一斉に振り返る。
リースリットたち。
ルアナの掲げる女神像に、全員の視線が集中した。
目ぇかっぴらいた能面みたいな顔。
いまから鮭とる熊みてーな姿勢。
全体的になんかばりばりした仕上げ加工。
女神像っていうか等身大フィギュアみたいなカラーリングと素材。
「「――!!」」
全員の脳裏に『邪神マリモッコス』という単語が爆誕した。
「あそこで売ってたよ!」
ルアナがビッと指さすさきでは、ギョジョウが大量に並べた等身大フィギュアこと『青海の女神像(偽)』をたたき売りしていた。
ハッとして振り返るギョジョウ。
真顔のまま一斉に『詐欺のシメかた』という本に持ちかえる中、マリナががま口財布を握りしめた。
「……ギョジョウさん」
「ち、ちちちちがうんやお嬢ちゃんも儲かる仕組みなんや利益率80%なんや!」
「詐欺じゃねーですか!」
おりゃーと言いながらフリントロック銃を乱射するマリナ。
邪神マリモッコス像はばりんぼりんに破壊され、ギョジョウはうひーと言って逃げ出した。
「逃げたぞ!」
「追えー!」
●
古今東西、『逃げたぞ追え!』て言われた奴の行き着く先はどっかの倉庫や隠れ家と相場が決まっている。
そこへ冒頭のようにマリナたちが――というのは、あとのお楽しみにとっておくとして。
ここでは一転一方別ルート。
裏でひっそり動いていた連中のお話をしよう。
「ギョジョウの奴、いい稼ぎ口をみつけたようです」
女神像を摸した大容量オイルライターに火を灯し、かかげるアロハシャツの男。
葉巻の先端がちりちりと燃え、かぐわしい煙が広がっていく。
素肌に直接鮫革のジャケットを纏いテクノカットに眼帯というなかなかやべえ格好をした男が、葉巻の煙をゆっくりと吸い込んだ。
「ほぉか。なんやあいつ、永遠の無職とちゃうかったんかい」
「そのようで。なんでもパチモン販売で一儲けしたとか」
「大号令に従事してがんばっとるようやさかい見逃してやろか思うとったけど……そゆことなら」
葉巻をガラスの灰皿にじゅっと押しつけると、男はゆっくりと立ち上がった。
彼の背後には大きな金細工で『鮫島』の代紋が掲げられていた。
膝に手をつけ、独特の礼をするアロハシャツのおとこたちが十人単位でずらりと並ぶ。
眼帯の男……もとい鮫島はストッカーに立てかけられていた海洋マリーンズのロゴがはいった木製バットを手に取り、歩き出した。
「借金の回収といこか」
- 邪神マリモッコス事件完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年06月04日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談8日
- 参加費---RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●アニメで想像すると三倍楽しめる光景
ムーディーなジャズミュージックを背景に、『特異運命座標』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)は黒いマントを翻した。
木目のタイルの上を、革靴を鳴らして歩く。
バーカウンターに手を突いて、彼はなにを思うのか。
あと後ろに二十体くらい整列してる邪神マリモッコス像。
「まさかこの様な事になっているとは。これは捨て置けん。ギョジョウの悪事を止めねばなるまい」
「ごめんシリアスがもうどっかいっちゃってる」
『ご成約』という札のついたマリモッコス像を小脇に抱え、『絶望を砕く者』ルアナ・テルフォード(p3p000291)はゆるやかに首を振った。
二度見するマナガルム。
「何故買った」
「本物とはだいぶ違うけど、これはこれで愛嬌があると思うんだよね。半額だったし」
「半額だとしてもボッタクリだけどね」
レリック品が半分になってもノービス格差やばいよ、と『魔法騎士』セララ(p3p000273)は玄人みたいなことをいった。
「こういう詐欺はよくないよね。きっちり怒ってやめさせようね」
って言いながら『ご成約』って札のついたマリモッコスを自分ちの馬車(移動教会セララバジリカ)に積み込んでいた。
「だから何故買う」
「商品に罪はないよ。ほら見て」
直立不動の姿勢でひょいっと連れてこられた『マリンエクスプローラー』マリナ(p3p003552)と、横に並べたマリモッコス。
「背丈からしてもう30センチ強は違うよね」
「バストサイズが三倍くらい違うし」
「髪色が銀っていうかもう灰だし」
「表情に似せるつもりがみじんも感じられないけどこれはこれでクるものがあるよね」
「やめてくだせー……」
左右にマリモッコスを配置して邪神の儀式みたいにさせられたダークネスキングマリナは涙ながらにうったえた。
「偽物…………偽物、ですね」
ぽつりとつぶやく『レコード・レコーダー』リンディス=クァドラータ(p3p007979)。
世界には偽書っつーもんがあって、A0001地球世界でいうとジョルジュ・サルマナザールの考案した台湾誌などがあげられるだろうか。歴史に名を刻むレベルの規模となると莫大な利益を生んだりするが、小さな所では無許可で作られる祭りのお面や綿飴のパッケージなんかも立派なパチモン詐欺である。規模と利益と回収コストが見合わないので放置されるやつだ。
そこへくるとギョジョウの所業は多額のゴールドを荒稼ぎするというけっこうえげつない詐欺であり、助走をつけて殴っていい事件でもあった。
「けど、あの、一応うちのモンなので、お手柔らかに……」
と主張するダークネスキングマリナ。
彼ら視点における最大の被害者兼監督責任者がこう言ってるのでまあ命はとらないでやるか、みたいなテンションの仲間達であった。
「擁護の余地は正直ないのですが、まあ……」
スリットが性的すぎるチャイナドレスの裾をひらってやりながら振り返る『終焉語り』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)。
「どの程度で済ませるのかとか……」
リースリットとスリットをかけたギャグだと思われたくないから入念に語るね。リースリットの肩から腰からお尻にかけてのゆみなりにできたラインからも分かるとおり極めて理想的かつ健康的な体型をした彼女が見せる足の付け根から脇腹、そしてほどよく肉付きのあるあばら側面部を惜しげも無く見せるのみならずどう考えても履いてないことを想像させるこの肌色のデルタ湾。長い裾には意図的に重しでもついてんのかってくらいこの重要な部分が隠れる仕様に見る者の心は吸い寄せられるに違いない。あとなんでこの依頼にチャイナ着てきてんのかは私も知らないしきっと本人も知らない。
「この偽物をどうするのかとかはマリナさんのお好きなようにです。
……です?」
台詞の間にえげつねー地の文が挟まったことを薄々察する性スリット。じゃなかったリースリット。
「いや、オレは怒って良いと思うぞ?」
腕組みしてきゅっと背筋をはる『翡翠に輝く』新道 風牙(p3p005012)。
「あのナマズ? ウナギ? ドジョウ? のオヤジに弱み握られてるんでもねー限り、ぶん殴っていい案件だろ。
オレだったら頭蓋骨の形変わるまで棒で叩くね」
「死ぬ死ぬ」
『放火犯』アカツキ・アマギ(p3p008034)が両手にたいまつもってハチマキにろうそくさして灯油タンクを背負った姿で言った。
東京の町中で見かけたら即お電話する格好だった。どこに? 言わせんなよ。
「……白夜壱号って良く燃えそうじゃよな」
「怖くなるつぶやきをしねーでくだせー……!」
「おっといかんつい本音が」
「本音……!」
アカツキはダブルたいまつをファイヤーダンスみてーにくるくるしはじめた。
「詐欺はいかんのう、詐欺は……おしおきも兼ねて強制捜査と行くのじゃ!
そして権利と物資を没収してぼろ儲けするのじゃ!」
「後半でおかしなことをいわねーでくだせー……!」
「おっといかんつい欲望が」
「欲望……!」
気を静めるためにものを燃やそう、といってその辺で買ってきた木のぬいぐるみに火を灯し、両目かっぴらいてハァハァいいながら見続けるアカツキ。
おうちのお子さんがお庭でこんなことしてたら即電話する姿だった。どこに? 言わせんなよ!
「とにかく……!」
両脇にマリモッコスを置かれ即席祭壇に祭られた末背後で扇状にマリモッコスを配置されたダークネスキングマリナ荒覇吐大権現が拳を握りしめた。
「いくら儲かるったって他人を騙してお金を得ていーわけがねーでしょうが。
さすがにこれは看過できねーです。
関わったやつは全員捕えます。根切でごぜーます。
二度とこんなだっせー像作らさねーです。
ほらアカツキさん、全部燃やして今こそ鬱憤を晴らすので――ってもう燃えてやがりますね……!」
ハッて振り返ると扇状に配置したマリモッコスがごうごうと燃え上がっていた。
『アツイー!』『ヤメテー!』『タスケテー!』て声が聞こえた。
「い、意思が……」
「なんかの降霊術の媒体になっておるなこれは。除霊じゃ除霊。ガソリン追加」
『モヤサナイデー!』
まだなにも始まってないのに、もう地獄だった。
●章が進んでも地獄
「オラァッ! テメエらそこ動くな! マリナ様のTEIREだ!」
スチール扉をドロップキックでぶち破る鉄砲玉風牙。
「抵抗の意志が無いなら地面に這いつくばれ! 抵抗したり逃げようとしたら容赦なくシメんぞコルァ!!」
普段使いもしない拳銃(サタデーナイトスペシャル)で天井をバンバン撃つと、アカツキが火炎放射器をランドセルタンクに接続して突入してきた。
「御用じゃ御用じゃー!!
火付け盗賊改めならぬ、邪神像咎め隊のカチコミじゃ。
神妙にお縄に付くが良いわ、主らの貪った利権は全て没収させてもらうぞ!
さっきノリで像をファイヤーしてしまったので妾の魂はアラブっておるぞ! 怪我をしたくなければおとなしく両手を挙げて焼けた鉄板に膝をつけることじゃなあ!」
「グレード。グレードが何段階があがってる」
鉄板を備えたキャリー(楽しくバーベキューをするための道具だよ☆)の『トングをかけるとこ』を押して撤去していく風牙。
「こんなの使わなくて良いだろ。リースリット、やれ!」
「おまかせやがれ、です」
スリットをなびかせて現れたリースリットはチャッてピースサインを作ると、右目にあわせて横ピース。
すると指の間っていうか目からリースリットビームが発射され天井をハート型にくりぬいた。
ばごーんと音をたてて落ちてくる天井板。はうあといって潰されるギョジョウとエロフィギュア職人『内牌 彫蔵(ナイパイ ホルゾウ)』。
「逃げない方が身の為ですよ。大人しく捕まれば程々で済ませますが、逃げたら――徹底的にやらざるを得ません。理解りますか?」
横ピースのままおどしをかけるリースリット。
こんな横ピース見せられたら降参せざるをえませんなあって具合に、ギョジョウとホルゾウは手を上げたのだった。
「本物と偽り売るのは論外です。模倣し、何か高めるということでしたら精神性として評価はしたかもしれません。しかしなんですかこれは原典に敬意の欠片も感じられないやっつけ仕事のような出来。やるにしてももう少しするべきディティールアップがあるでしょう。ちょっと職人の方そこにある鉄板に正座してください。良いですかそもそも模倣というのは古くを知り新しいものを生み出すために彼らの思念理想を学ぶために行うものであり……」
「………………」
移動式バーベキューセットに正座させられてる造型師を、マナガルムはなんともいえない目で見ていた。
たしかこのリプレイって詐欺犯罪を摘発する探偵モノみたいな雰囲気で始まったよねって思ったか思わないか……。
「逃げるなよ、そうされると我々も動かざるを得なくなる」
あっ思ってないなこれ頭のなか100%真面目なことでいっぱいだこの子。スリットに目を奪われない系男子だこれ。
一方で。
「燃えてる……」
フィギュアと機材は燃やさないという制約のもと『じゃあ他はぜんぶいくか』って汚物消毒装置(隠語)で消毒されていくさまをみて、ルアナはキャンプファイヤーの歌をうたっていた。
「でもたしかに、像をせっかく造ったのに燃やすのもったいないよね。みんなが虚ろな目をして向かう闇市とかにしれっと流せば買い手がつくかもしれないよ」
「やめてくだせー」
鳴き声をあげるキングマリナファイヤー孔雀スペシャル。
セララがらみこみしながらキャッキャと語り始めた。
「だよね。例えば魔除けの邪神マリモッコス像として売り出す分には良いと思うの」
「やめてくだせー」
「狂王種も裸足で逃げ出す邪神マリモッコス像! これは売れるよ!」
「やめてくだせー」
「このままじゃ売れそうに無い? じゃあバリエーション増やしてみたらどうかな!」
みてみてーといってナースマリモッコスやチャイナマリモッコスや水着マリモッコスやキングマリモッコス(シークレット)を食玩パッケージみてーにデザインしてみせるセララ。
「やめてくだせー……!」
こんな具合に話が纏まりつつある(?)中。
「えぇ音聞かしぃや――」
ショッキングピンクの装甲馬車が、燃えさかるガレージに突っ込んできた。
バトルパートの始まりである。
●襲来、鮫島組
ガレージの壁が吹き飛んだのを、当初壁に半分ほどめり込んだ馬車のせいだと考えた。
しかし馬車に馬がくくられていないことや、破壊が放射状に広がっていたことから、それが馬車などではなく一人の男によって行われていたと……リンディスは結論づけた。
「皆さん下がってください。危険です」
それは同時に、非常に高い戦闘能力をもった存在がカチコミをかけてきた事実をさしていた。
「なぁんやあ? ワイより先に取り立ててた奴がおった……わけやない、のお?」
テクノカットに眼帯というサイケな格好をした男は、金属バットをくるくると回しながら言った。
セララをはじめとする顔ぶれを見て、これがローレットのイレギュラーズであることを察したようだ。
「かくいうそちらは借金取りの方ですか」
「代行や代行。ギョジョウはあっちこっちから金かりっぱなしにしとったんやさかい、俺が一本化して回収したるっちゅーわけや」
「なるほど……借金取りですね」
リンディスは会話を引き延ばしながらも『空に焦がれた男の詩』を既に展開し始めていた。更に『海を駆けし戦武者の奇譚』をセットしつつ、手をかざして語る。
「この仕事の杜撰さどう思われますか、許されてはいけないと思いませんか
確かにお金は返すべきです。ですがそれでも矜持が必要です。そうですね、相いれないこともあるようですし……」
リンディスのいわんとすることを察し、仲間達が一斉に構える。
その様子を見てアロハシャツの男達はざわめくが、テクノカットの男……鮫島五浪だけは目をカッと開いて笑った。
「『お話』しましょうか」
「せやなあ、ちとオジサンと『お話』しよおやァ!」
キエェエヤッ! と独特の奇声をあげて殴りかかる鮫島。
リンディスへ直撃するコースだったバットを、マリナはフリントロック銃を挟み込むことでギリギリガード。
かと思えば真横からセララが砲弾のごとき速度と威力で体当たりをしかけた。本来大きな予備動作が必要なタックルを即座に打ち込むと言うのが彼女の強みである。それを察してか、鮫島は笑いながら吹き飛ばされていく。
「オヤジがやる気や!」
「続け続けェ!」
アロハシャツの男達が徒手空拳のまま一斉に挑みかかる。
ルアナはグレートソードを突きつけると、彼らを迎え撃った。
「いう事は分かるけど、とりあえず落ち着こうよ? じゃないと話が進まないじゃーん」
「うちのモットーは『即断即決』じゃい!」
繰り出した拳をギリギリのところで防御しつつ、ルアナは自らを強化。鎧に赤い勇者の光を纏わせると、それを剣にまで波及させてアロハを殴りつけた。
「ま、とりあえず借りたお金は取り返さないと、鮫島のおじさまも損しかないよねぇ。お話し合いはその後かなあ」
「いってえ……! こいつつええぞ! やれ、ダイサク!」
「ウス!」
金色のマイクと焼酎の瓶をそれぞれ持ったモヒカンヘッドの男が前に出ると、瓶の中身を飲み干してからマイクパフォーマンスを始めた。
「30秒や。それでノす!」
「おもしれえ、受けて立つぜ!」
槍を攻撃的な姿勢で構える風牙。
シャラァというかけ声と共に繰り出される変則的な打撃と回避術。
「こいつ……酔拳使いか!」
風牙は攻撃をモロに受けて殴り飛ばされつつも、空中で身をひねって着地。まるでバネ仕掛けのように高速で突っ込んで膝蹴りをたたき込んだ。
「ぐおふ!? こいつも強え、てか速え!」
「……くっそ、オレなんでギョジョウのために戦ってんだ!?」
「そりゃあ、金のためじゃないですかね」
黄色い安全ヘルメットを被った男が長い角材を手に身構える。
「いや、悪いが俺は金のために戦ってるわけじゃない」
対するはマナガルム。
二人は槍と長棒の間合いを違いにじりじりと奪いあうように円を描くようにしてすり足移動しはじめた。
キッと目を光らせるヘルメット。かけ声と共に身を回転させ打撃をしかけてくるが、マナガルムはそれを槍のこじりを用いてピンポイントでうち弾き、その反動を使って槍の矛先をヘルメットの喉元へと突きつけた。
「元金は必ず返させるし、そちらの言い分に筋が通っているのは解っている。……だが一度お帰り願おう」
「ぐう!? ま、まずいですよこいつも強い」
「強いやつばっかじゃねえか」
「かまへんかまへん、やったれやったれェ!」
一方こちらはセララたち。
「輝く魔法とみんなの笑顔! 魔法騎士セララ、参上!
鮫島さん、しばらくボクと付き合って貰うよ!」
「アァ? なんで俺がンなこと付きあわなあかんねん」
「そうだそうだ」
「アンタは俺らが相手してやる」
「兄貴はそこで見ててくだせえや」
ドスを抜いた黄色いアロハ。ブレイクダンスの構えをとる赤いアロハ。拳銃を取り出す青いアロハ。
「そういうことなら」
三人とセララが一斉に構え――たその瞬間、彼らの頭上を飛び越えて鮫島がセララに殴りかかった。
「オラァ!」
「うわぁ!?」
咄嗟に剣で防御するセララ。
慌てて回復支援をはかるマリナ。
「と見せかけてェ――魔法極道ゴロー、見参やァ!」
アロハたちが加わろうとしたところで、左右からスライドインしてきたリースリットとアカツキ。
「……個人的には引き渡していいのではないかという気がしてきたのですけれど。
どうやらそういう事のようですので……申し訳ありませんが、鮫島組の皆様
どうか今日の所は、お引き取りくださいませ」
「ギョジョウはともかく像は渡せぬな……かかって来るがよい、ピンク馬車のアロハ軍団!」
「「鮫島組じゃボケェ!」」
それぞれに襲いかかるアロハ三兄弟に対し、リースリットビームとアカツキファイヤーが炸裂。どう炸裂したのかは劇場版の追加映像でご覧ください。
「「グワー!?」」
大事なところをカットして吹き飛ばされるアロハたち。
一通りの勝負がついたらしいことを察すると、セララを割と一方的にぶっ飛ばしていた鮫島が『ほな』と言ってその辺に転がっていたパイプ椅子に腰掛けた。
「言い分を聞こか」
「真っ当に働かせて必ず返させます」
突如として聞く姿勢になった鮫島に若干戸惑ったものの、マリナは白目むいて逆さに回転してるギョジョウの頭をぺちぺちしながら頭をさげ(?)させた。
「迷惑料として海洋で儲け話があったら紹介もしますから…それで手打ちでおねげーします」
「儲け話」
「はい」
ンーとうなり、斜め上を見る鮫島。
「ま、それでええわ。『青海の女神像』が言うんなら損もないやろ。邪魔したわわ」
ぱたぱたと手を振って、部下を回収して帰って行く鮫島。
えらいところに貸しを作ったような気がしたが、マリナはそれ以上考えないことにした。
「起きたらあとで説教ですね」
白目むいたギョジョウのひげをひっぱって、マリナはげんなりとつぶやいた。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――ギョジョウの借金に返済猶予ができました。
――鮫島組とコネクション(?)が生まれました。
――ギョジョウが翌朝ボッコボコにされて船首に吊されてました。
GMコメント
このシナリオは前後編のパートに分かれていますが、PCたちがあらかじめ知っているのは前半パートのみとなります。
後半は偶然居合わせたハプニング扱いになるので、驚いたり話し合ったりするロールプレイを挟むとよりお楽しみいただけます。
■前半:ギョジョウおしおきパート
エロフィギュア職人『内牌 彫蔵(ないぱい ほるぞう)』と金で雇われた数人のバイトがひそむ偽装ガレージ。
ここがギョジョウが用意した偽女神像もとい邪神マリモッコス像の製造アジトであります。
ここへカチコミをかけ、製造中のマリモッコスを破壊したり逃げ出すバイトやフィギュア職人をつかまえたりギョジョウを吊したりしておしおきしましょう。
おしおきの方法やカチコミの方法は問いません。ガソリン撒いて外から火ぃつけてもいいよ今回は。
ただしギョジョウはなんだかんだでマリナの部下なので、死なない程度のおしおきにとどめてあげましょう。
・ギョジョウ
マリナに『死に別れた娘にそっくりなんだ』とかホラふいてついてきたナマズおっさん。二ヶ月に一度娘に会わせてもらえる立場の40台独身。
趣味はギャンブルとキャバクラ通い。夜の島リリスガーデンでは常連。
なにげに船舶の操縦能力諸々がうまく、実際役に立ったこともあるのでそうダメなやつでもないらしい。
具体例は以下の二件。
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/2637
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/2835
■後半:借金取りから守ってやろうパート
ギョジョウのお仕置きが一通り済んだあたりで海洋でぶいぶいいわせとるYAKUZAがピンク色のダンプ馬車で登場します。
彼らはギョジョウが今回の事業(?)をするにあたってあっちこっちから借りまくったヤミ金の回収代行として動いていますが、額が額なのと組長がなんか運動したくなったからっていう気まぐれな理由で乗り込んでくることになりました。
ギョジョウをとっつかまえてゼシュテル漁船に乗せて北海に流すつもりのようです。
社会悪みたいな話は別として、彼らも彼らでだいぶ筋の通った理由で来ているので一旦バトって帰って貰いましょう。
戦闘対象としてアロハシャツのヤクザが10人規模。
加えて鮫島五浪というリーダーの男がいます。
・『鮫島組組長』鮫島 五浪
年齢不詳のウォーカー。自分がゴローという名前であること以外の記憶を失って召喚されたがイカれた獰猛さと謎のセンスで幅広く事業を展開し、海洋を拠点に『株式会社鮫島建設』を設立。裏社会的には『鮫島組』の組長として知られる。
日々刺激に飢えており、特に喧嘩がだいすき。
様々なバトルスタイルを使い分けるが、今回はバットを使った大胆な戦い方をする。
戦闘力はだいぶ高く、戦鬼暴風陣やクラッシュホーンを主体としたアルデバランクラス。クラス特徴からも分かるとおり攻撃力に秀でたバランス型。
■■■アドリブ度■■■
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。
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