シナリオ詳細
女騎士、芋スイーツに挑戦!!
オープニング
●女騎士、またまた危機
「くっ……。こ、こんなことで負けるものかっ!」
女騎士は困っていた。
殺魔騎士団という強敵(とも)から殺魔芋(デーモンスレイヤーポテト)を入手し、オークの襲撃を切り抜け、村々にも救荒作物として届けることができた。
しかし、ここで大きな問題にぶち当たる。
女騎士は、芋を料理できないのである。いろいろ、料理の仕方は教えてもらった。
レシピも授けてもらっている。
しかし、見るとやるとでは大違いであった。
女騎士は、料理がとても苦手であった。
見様見真似でやってみようと思ったものの、どうしてもうまくいかない。
「殺魔芋は甘い芋なので、もっとこうバリエーションを豊かにするべきではないだろうか?」
彼女には、蛇牙芋(スネークファングポテト)を料理した経験があり、そのときは“くっコロッケ”を揚げた経験がある。コロッケとかいう揚げ物を作った。揚げ物という難度の高い料理がいけたのだから、料理なんて簡単だと高を括ってしまっていた。あえていえば慢心であろう。
「だ、だめだ、どうしても殺魔芋の甘みを活かしきれてないような気がする! ……やはり、思い切ってアレンジしなくては!」
彼女は、誇り高いと同時に意識が高かった。
しかし、高い意識に技術と経験がついていかないのである。
「ま、待ってください、騎士様! お料理の初心者がアレンジをしてしまうと大変なことになってしまいます! 基礎をおろそかにしては」
そんな女騎士を制止するのは、彼女の従者を務める少年である。主人である女騎士が危機に陥ると、大抵はあわあわしたりドキドキしたりする役割が回ってくる。
「しかし、食卓には彩りがあるべきだろう? 食生活が貧しいままでは、いくら芋があっても代わり映えしなければ心が満たされぬままになってしまう」
困窮から逃れるために、作物を持ってきたわけだが、腹が減ったらこれを食って空腹を満たせというだけでは、あまりに思い遣りに欠けるというもの。
せっかく収穫した芋である。きちんと美味しく食べて、笑顔になってほしい。
実際、殺魔騎士と食べた殺魔芋料理は美味しかった。
できれば、その喜びを皆に伝えたい。
「そのお気持ちはわかります。とてもいいことだと思います。ですが、どんなお料理を作るつもりなんですか?」
「よくぞ聞いてくれた従者よ。殺魔芋は、そのまま蒸したり焼いても美味しかったのだが、こう甘みを活かしたスイーツも美味しいと聞いたので、それに挑戦したいのだ」
従者は仰天した。スイーツとか、分量とレシピの手順が大切なジャンルである。
最近ようやく“ひとつまみ”と”ひとつかみ”の差がわかったくらいの女騎士にはハードルが高い。
●求む、芋スイーツと食べる人!
「というわけで、皆さんにお願いにやってまいりました」
従者の少年は、ローレットの許を訪ねた。
彼がお仕えする女騎士に、殺魔芋を使った料理……特にスイーツの作り方を教えてあげてほしいというのだ。
「騎士様は、民衆思いで危険にも怯むことなく勇敢に挑む方なのですが……そのう、お料理は苦手でして」
心苦しげに少年は言う。
女騎士は、料理においても勇敢なのである。
レシピや料理の基本を知らずとも、果敢に料理に挑む。よくいえば言えばチャレンジスピリッツに溢れている。
ゆえに分量を正確に測ることはおろか、オーブンを予熱するという概念すらないのにスイーツ作りに挑戦しようというのだ。
基礎がない状態でのスイーツづくりは無謀もしくは蛮勇といっていい。
「どうか、騎士様に美味しいお芋のお料理、できればスイーツを一緒に作ってあげてください。それと、お料理ができたら食べてもらえる人がいると助かります!」
少年従者の願いは切実である。
女騎士の思いを無駄にしないためにも、お料理自慢と食いしん坊に集まって欲しい。
- 女騎士、芋スイーツに挑戦!!完了
- GM名解谷アキラ
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2020年05月25日 22時05分
- 参加人数15/∞人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 15 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(15人)
リプレイ
●そして芋スイーツづくりが始まる!
どさっと並んだ、大量の殺魔芋。これを料理していくことになる。
「……ううむ、やはりこう、みんなザクザクに切って砂糖とひとつまみまぶせば、芋スイーツのできあがりなのではないか?」
芋は大量にある。皮を向いたり下ごしらえは、見るからに面倒そうであった。
そうなると手は抜いていいかと考えがちである。
手を抜く、手間を省いて効率的に料理するのも必要だが、怠けるのはまた別だ。
しかし、基礎ができていない女騎士にはそれもわからない。
「ご機嫌麗しゅうございます、レディーナ様」
「おお、これはシズカ殿。その節は、その助かった」
「……ふふ、このご挨拶もすっかりおなじみになってきましたね」
にこりと微笑んだシズカ・ポルミーシャ・スヴェトリャカであったが、表情は厳しいものになる。
「さて、レディーナ様。貴族や騎士には作法がお有りかと存じます」
「お、おう……」
唐突になんだと思いつつも、ただならぬシズカの気配に女騎士レディーナも当惑した。
そんな女騎士に、つらつらと語るシズカ。
説教モードに入ったのだ。思わず固唾をのみ込んで身構える。
「考えてみてくださいませ、作法のなってない貴族に成功は有り得ませんし基礎のなってない剣術で闇雲に突っ込めば死あるのみ」
「しかし、今は料理をわけで関係ないのでは……」
「いいえ、レディーナ様。今の貴女がまさにコレです!」
ズビシィ! とシズカは女騎士を指差した。
「なん……だと……!?」
今の女騎士は、剣の振り方もわかっていないトーシロー同然、そのように指摘した。
女騎士も、霊圧が消えそうなほどの衝撃を受けた。
「料理の基本も分からないのにお菓子を作るのはかなり無謀です、前回のコロッケを作る時もそうでしたけど……」
メイドとして、シルフィナも女騎士の無謀を指摘した。
予熱を忘れればシュークリームは膨らまず、泡立てをおろそかにするとスポンジケーキはふわふわにならず、発行をおろそかにするとパン生地もふっくら焼けないのである。
「そうか、私は基礎をおろそかにしていた……」
「今日は芋けんぴを作ります、簡単ですから」
「ぜ、ぜひ!」
「あーあー、料理下手の中でもコッテコテの奴。ホントに居るんだ。笑える」
「むっ……!」
言ったのは、鬼怒川・辰巳である、
見るからに悪ガキという感じだが、すでに調理の準備も済ませている。
フライパンにエプロンと、身支度整えたその姿はなんか可愛かった。
「今日は簡単なの教えてやるから、それくらいは覚えていきなよ」
といって、辰巳は大学芋を作り始めた。
「くっ、なんということだ! あんなに手際がいいとは……」
悔しがりつつも、女騎士は手順をメモする。
「あらー、花嫁修業ー?」
「い、いや!? 別にお嫁さんになりたいとか、そういうのではなくて、だな」
柄にもなく、照れてしまう女騎士であった。
その様子に、にっこり微笑む嶺渡・蘇芳(p3p000520)。
「ふふっ、美味しく調理しましょー♪ でも、まずは手を洗う所からねー」
蘇芳と一種にじゃぶ一種に手を洗う。
なんだが、お母さんに料理を習う娘のようになってしまった。
ずっと剣ばかり奮っていたから、こういうのも憧れる。
「……花嫁か」とか小声で呟いたりもした。
「それじゃあ、簡単スイート殺魔餅を作りましょー」
「ほう、芋が餅に?」
女騎士に、衝撃走る。餅は、米をついて作るものばかりだと思っていた。
包丁の使い方を教えてもらい、皮の向き方を真似する。ちょっと楽しい。
「切ったお芋をお鍋に入れて、沈むくらい水入れて、中くらいの火で茹でるわー」
「中くらいの火……」
中火の概念は、女騎士には難しい。
火力と言ったら全開だからだ。火力は常に全開が信条だ。
「木の串がすっと入るまで煮えたら、お湯を切って、マッシュマッシュー♪」
「マッシュマッシュー♪ だなっ!」
女騎士も楽しそうに芋を潰す。やはり、料理は楽しい。
米粉、砂糖、バターを入れて混ぜ、形を整える。
「これを楕円にして、熱してバターを溶かしたフライパンで、弱火で両面焼き目を付けて完成よー♪」
「おおっ!」
できあがったスイート殺魔餅に目を輝かせた。
ふにふにで美味しそうである。
「スイーツ作りと聞いてきました!」
ミルキィ・クレム・シフォンの登場である。
「パティシエのはしくれとしてスイーツ作りと聞いちゃあ黙ってられないよね♪」
「パティシエ! あの、お菓子を作る職人という、あれか!」
期待が高まる。
芋けんぴや殺魔餅のような素朴なお菓子もいいが、本職が作るスイーツも、またいい。
ミルキィが作っていくのは、殺魔芋を使ったモンブランである。
「それじゃあ騎士さんも一緒にレッツクッキング☆」
手順を説明しながら、芋を黄金色のクリームに仕上げていく。
見るからにゴージャスで美味しそうだ。
「妾、料理はそこそこじゃが火加減に関しては自信があるのじゃ」
「アカツキちゃんの火の扱いの腕前は評判だよねー。楽しみにしてるよ!」
サクラとアカツキ・アマギは、落ち葉を集めて芋を焼く。
焼き芋、シンプルイズベストである。
落ち葉の掃除にもなる。
「妾自慢の火加減による焼芋じゃ、オススメなので一度サクラちゃんにも食べてみて欲しくてのう」
火力ならば任せろとばかり、殺魔芋を放り込んだ落ち葉の山に点火、ぼうっと勢いよく燃える。
ただし、燃えすぎてもいけない。じっくり、仲間で火が通るように焼いていくのだ。
焼き上がった芋をほっくり半分にして、冷たーいバニラアイスを乗せる。これが溶けて絡む。
「うーん、すっごく美味しい! 甘いしあったかいお芋さんと冷たいアイスがまたすっごく合うね!」
「ちょっ、ちょっといただこう! ……ほうっ」
熱々の次に来る冷え冷え、これである。
焼いた芋にアイスを乗っけるという簡単なものだが、美味しく食べるにはこんなのでいいのだ。
「よし、素材の味を活かした代物で勝負してみるわ」
長月・イナリもシンプルに殺魔芋を調理する。
とはいえ、準備は入念だ。
彼女のギフト、稲荷の加護・五穀豊穣祭によって殺魔芋を栽培して増やしつつ、形のいい小石を土鍋に入れる。これで石焼き芋を作るのだ。
「料理はほぼ未経験です。女騎士様と比較的近い目線で料理ができるかと」
「そうか、初心者がいると私もちょっと安心できる」
仮面をつけた雨紅が女騎士の横に並んだ。
雨紅が飲食を楽しみだしたのは、レガシーゼロとして起動しての後だ。
お互い、自分と同じくらいの初心者がいるとホッとするも。
そんな雨紅は、お料理の本を広げてお手本通りに作っていた。
「料理本の類は、プロの方が作っています。手を入れすぎると、それがわかりにくくなってしまうかもしれません」
「基本に忠実に、だな」
女騎士も学ぶ。いきなり大胆なアレンジは禁物である。
「私も、今日はスイートポテトケーキを作ってみようと思うんです」
「ふむ、スイートポテトケーキか。菓子の類だったかな? さすがに知らない物は手伝えはしないな」
その横で、ティミ・リリナールとベネディクト=レベンディス=マナガルムが料理をしている。
こちらもスイートポテトを使ったケーキだ。
ふと、ティミの手が止まる。
「……リリナール、手の動きが止まっているが大丈夫か?」
「あっ、すみません。ちょっと家族の事を思い出していて。姉さんがよく作ってくれましたから」
「家族、か」
ベネディクトは、ふとこの世界に来る前のことを思い出す。
「姉や兄か。俺にも兄はいたが、さすがに料理をできるる様な間柄でもなかったからな……」
「でも、ベネディクトさんといると何だか兄さんや姉さんと一緒にいるみたいに、あたたかい気持ちになります」
「……さて、もうすぐ仕上げかな? 完成が楽しみだ」
ちょっと話題をそらすベネディクト。
正面から見つめ合うのは苦手なようだ。
「僕、知ってる。昔誰かと作った気がする
一緒に並んでスイートポテトを作るのは、アドラ・ドール・シュタイフである。
人形のように可愛らしく(実際お人形さんだが)、料理を作っている姿を見ているホ微笑ましくなる。
「君は、誰かと一緒に作ったことが?」
「確か……女の子の……?」
首を傾げる仕草に、思わずきゅうんとする。
いけない、今は料理に集中せねばと女騎士は言い聞せた。
「お姉さん、料理苦手?」
「い、いや、心配ない。みんなに教えてもらって美味しいものを作れるようになった」
「じゃあ、一緒に作ろう。おイモは蒸す。皮ごと潰す。生クリーム混ぜる。形を作る。焼き目付ける為に焼く――」
正確な動作で、スイートポテトを仕上げる。
「お姉さん、食べてみる? はい、あーん」
「いいのか? じゃあ、あーん……」
気恥ずかしかったが、抗いがたい誘惑に駆られ、一口ほおばる。
美味しい、ねっとりとした甘みが広がっていく。
影で、少年従者がなんか悔しそうにしている。
「皆にも食べて貰いにいこ? お姉さん……」
「ああっ!」
きゅっと服を握られてちょっととろけた顔をしている女騎士。
どうも、スイートポテトが甘かったからだけではなさそうだ。
「なるほどのう。精進して高みを目指すその心意気や良し! 実にあっぱれじゃ」
一条 夢心地は、戦国大名と呼ばれた領主であった。
贅沢三昧をしつつも、自分で食べる分を作って楽しむということをエンジョイしている。
そして、ただ食べるだけでなく美味いものを作ろうという風雅な志に感じ入った。
「ならば麿も相応の覚悟をもって、おいもスイーツを作らねばならぬ」
そして芋をうすーくスライスする。この薄さは、なかなか真似できない。
これをぱりっと油で揚げて、さっと油を切って塩をぱらりと振る。
見事なおさつチップスあ。蛇牙芋ではなく殺魔芋というところがポイントである。
「さあさ、皆も存分に食べるが良いぞ」
「いただきマス!」
さっそく食いついたのは、ウツボカズラのオジョ・ウ・サンであった。
「オジョウサンはー、いっつもとってもオナカすいてルんデス……今日は!! イッパイ殺魔シマスヨ!!!」
出された者を女騎士と一緒に食べていく。
本体はウツボカズラなので何でも入る。
おさつチップスも芋モンブランも、スイート殺魔餅もなんでも食べる。
「……!」
漂い始めた甘い匂いに、アルペストゥスもやってきた。
姿は古代竜であるが、まるで子犬のように振る舞う。
「よおし、お前も食べたいんだな? 私のでよければ」
女騎士は、皆から教えてもらった料理を差し出す。
殺気から、殺魔芋もかじっていたのだ。
ちょっと首を傾げたのち、女騎士のスイートポテトや大学芋なんかを食べる。
「ふふっ、美味しいか?」
一度口をつけると、お行儀良く食べる。
こくんと頷いて平らげると、ごちそうさまの意思を伝える。
オジョ・ウ・サンも満足げで、思わず笑みが溢れる。
「とびきりのお茶をお淹れしましたよ♪」
シズカがティーポットにお茶を淹れて、ずらりと並んだ芋スイーツに添える。
料理を学びながら、美味しいものがたくさん集まり、女騎士も満足であった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
芋スイーツ、皆さんお疲れさまでした。
女騎士の料理もスキルもランクアップです。1レベルから2レベルに勇躍飛翔し、皮より身が多く残るようになりました。
味付けはまだまだです。今後とも、彼女の成長を見守っていてください。
なかなか美味しそうな芋スイーツが多く、結構お腹が空きます。
またこうした食べ物系の依頼もやっていこうかと思います。
それでは、またお会いしましょう。
GMコメント
■シナリオについて
皆さん、こんちは。解谷アキラです。
いろいろあって特別な芋である殺魔芋をゲットした女騎士ですが、これからこの芋を使った料理、特にスイーツを作りたいと思っています。
もちろん、スイーツ以外の料理を用意していただいても構いません。
楽しく美味しく殺魔芋を食すのが、彼女の望みです。
そしてまた、作ったからには食べてもらう人員も必要です。
というわけで、女騎士とともに芋料理を作って食べる依頼となります。
是非とも、奮ってご参加ください。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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