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シナリオ詳細

逆光騎士団と鳥籠の中の真実

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●これまでのあらすじ
 『我々は民の自由と意志を尊重し、罪をまねく心を赦し、悪を憎む心を赦し、未熟なる我らの学びと育みを尊びます』
 天義ノフノの街をまもる逆光騎士団は、連続児童誘拐事件の解決のため新人騎士プリクルとローレットによる合同調査を行いみごと『醜悪の呪い』によって怪物と化した通称『魔女』を倒し彼女たちのコミュニティである魔女集会をも壊滅。呪いの作法が書かれた『傲慢稚拙の書』を回収し事態は解決したかに見えた。
 だがあるとき、突如現れた牧師による非合理な魔女裁判によって逆光騎士団は魔女と決めつけられ、火刑が下された。
 それを助け出すべく唯一残ったプリクルと協力者のローレットたちは戦い、みごと牧師を倒したが……牧師に寄生していた赤き怪物が拘束されていた逆光騎士団へと寄生。
 怪物に寄生され価値観が操作されてしまった逆光騎士団を相手に、『取り戻すための戦い』が始まっていた。

●ロータスは気づいてしまった
 赤いものが赤くないと気づいたとき、黒いものが黒くないと気づいたとき、それを口に出すことが、大罪であると理解しているとき……。
「オドントネマ、リコリス。イレギュラーズをどうおもう」
「魔女やろ」
「世界の癌」
「この世界に滅びや疫病をもたらす元凶なんやっけ?」
「市民の平和を護るためにはなんとしても排除しなきゃダメでしょ。奴ら狡猾だし強いし、僕らのこと騙すだろうし。パンドラっていうのを溜めると世界が滅ぶんでしょ?」
 コーヒーカップとウッドテーブルを挟んで語る、同僚達の何気ない顔。
 逆光騎士団『黒風の騎士』ロータスは、ヘルメットを傍らにおいて慎重に息をした。
(彼ら……パンドラとアークの価値観が入れ替わっているのか。それだけではないようだが……)
 彼らが嘘偽りを述べているようには見えない。
 今日も民のため、身を粉にして働く騎士そのものの姿だ。
 彼らは誠実に、清廉に、極めて真面目にイレギュラーズを敵視していた。
 だが一方のロータスは、イレギュラーズが世界崩壊を回避するためパンドラを収集していることや、ローレットがプリクルをはじめとする騎士団や天義民にどれだけよくしてくれていたかを知っていた。
 自分だけが狂ったのか。それとも周りすべてが狂っているのか……。
「見回りに出てくる。派出所の留守を頼むぞ」
 ロータスはコーヒーを飲み干すと、外のホーリーバイクにまたがりキーを差し込んだ。
(まずはこの町を出なくてはな。事実を確かめなくてはならん)
 エンジン音。
 それに混じって、路地のあちこちから武装した兵士たちが現れた。
 道を塞ぐように立つ兵士。
 彼らの放つ殺気を、感じないロータスではない。
「……どいてくれ」
「なんやロータス。『逃げる』んか」
 頑丈な鎧を装備し、パイルバンカーを構えるオドントネマ。
「残念だよ。君が魔女のスパイだったなんてさ」
 いつのまにか高所に配置され、ボウガンを構えてたリコリス。
 自分の行動が遅かったのか。
 それとも相手の行動が早すぎたのか。
「かつての仲間かて討たにゃあならん。おどれが世界を滅ぼすなら、ウチは民の為におどれを殺す!」
「……熱血キャラが洗脳されるというのは厄介極まりないな」
 ロータスはいちかばちかアクセルを全開にし、兵士へバイクごとの体当たりを仕掛けた。

●伝令
 ローレットの一団および『茨の騎士』プリクルは走る馬車とその他無数の乗り物を用いて現場へと急行していた。
「ロータス先輩がゆがめられた事実に気づき、街を出ようとしているのは確かッス。
 洗脳をといた他の先輩たちからは『ロータス抹殺指令』が発令されたってリーク情報が届いたばかりッス。今頃ロータス先輩、取り囲まれてる頃ッスよ!」
 激しく揺れる馬車の中でつり革をしっかりと握り、伝書瓶をかざすプリクル。

 今回ローレットに与えられた依頼は『騎士ロータスの救出』である。
 現在洗脳された逆光騎士団に囲まれ抹殺されかかっている彼女を助けるには、強引に現場に割り込み場を乱し、そしてロータスを連れて現場を急速に逃走しなければならない。

「前回、ジブンたちが先輩を倒しきれなかったことでハンパに洗脳が解けたんだと思います。
 解けたこと自体は喜ばしいッスけど、逆光騎士団の中で解けちゃったのが問題ッス!
 他の先輩たちはジブンたちの仕事をフォローするためにあちこちで動いてくれてます。
 ジブンたちは一刻も早く――ロータス先輩を救出するッス!」

GMコメント

■オーダー
・成功条件:ロータスの救出
・オプションA:オドントネマの救出
・オプションB:リコリスの救出
・オプションC:?????

 オプション要素を満たそうとするたびに実質的な難易度が上昇します。
 オドントネマやリコリスをはじめとしてすべての兵士たちは不殺攻撃によって倒すと洗脳を解くことが出来ます。
 しかしチェイスバトル中に倒してもその場に放り出していくことになるので、回収まで計画にいれなければなりません。

 相手のHPは視認できないものとします。つまり『トドメだけ不殺攻撃』といったプレイングは無効扱いになります。
 不殺攻撃を徹底したい場合は、戦闘のどの当たりから不殺攻撃にシフトするかをリスクと相談して判断しなければなりません。当然戦闘難易度は上がります。

■作戦の流れ
 OP冒頭で語られたように、ロータスが囲まれた状況へ乱入する形で始まります。
 乱入の仕方はある程度は、急いで駆けつけてるという部分さえまもれば自由にしてOKです。勢いよくいきましょう。

 この後、ロータスを連れて街の外へと逃走します。
 当然逆光騎士団は必至で追いかけてくる(ないしは道を塞ぐ)のでチェイスバトルをもって突破しましょう。
 フィールドは町中。主に広い大通りを使います。

■敵対NPC
●『赤杭の騎士』オドントネマ
 赤い大鎧。パイルバンカー使い。
 超物攻。防御、抵抗やや高。
・物至単【災厄】【麻痺】【自カ至】
・物至単【防無】【恍惚】
・物中単【ブレイク】

●『朱金鳳の騎士』リコリス
 朱金鎧と赤いボウガン。
 ハイバランス+超抵抗+高EXA
・神至単【毒】【猛毒】【致命】
・神中単【弱点】【狂気】
・神遠単【治癒】

●天義の兵士
 同じように洗脳されている兵士たち
 個々の戦闘力は低いが数が多く、次々と投入される。

■味方NPC
●『茨の騎士』プリクル
 反射再生型タンク。
 自発的な攻撃は苦手で味方を庇うことで戦術的効果を発揮する。
 誰を庇わせるか。誰と連携させるかで判断するとよい。
 できるだけ『沢山攻撃を受ける人』を庇わせよう。

●『黒風の騎士』ロータス
 黒いライダースーツ風鎧。超高速戦闘
 超物攻。CTFBやや高。EXA超高。
・付自単アーリーデイズ
・物至単【連】攻撃
・物至単【連】【ブレイク】【必殺】【恍惚】攻撃

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • 逆光騎士団と鳥籠の中の真実完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年05月31日 22時36分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
ミニュイ・ラ・シュエット(p3p002537)
救いの翼
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
鬼怒川・辰巳(p3p008308)
ギャンブル禁止!

リプレイ

●鳥籠と鳥
 綺麗に舗装された石タイルの通りを、馬車の車輪が回っていく。
 小石をけって小さく揺れたその車内では、鬼怒川・辰巳(p3p008308)がこれまでの事件資料をぱらぱらとめくっていた。
 資料を下ろして顔を覗かせる。
「うわこっわ。よくわかんない生物に寄生されて自覚ないまま頭弄られてんだろ? ……これは流石に同情するわ。
 んで、そのことに一人だけ気づいちまった奴を助けに行くと」
「そういうこった。ゲハハハッ、美人を助けるのは大歓迎だぜ。一丁派手に暴れて、ヒーローになってやるとするか!」
 『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)は陽気に笑って馬車のスペースを大きく戦友していたが、馬車の横を虹色の尾をもった白馬で走る『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)はといえば、あまり笑っていられる気分ではなさそうだった。
「ここまでお膳立てされたのです。ロータス様をお助けできなくて如何致します。
 洗脳されたオドントネマ様、リコリス様、天義兵士の皆様には正気を戻して頂きたいですね。
 しかし……正義を盲目的に信じれば信じるほど、不正義になるのはなんなんでしょうね」
 正義というものの語源、ないし根幹は国家と社会にあるという。言い換えれば真の正義は社会正義であり、国家が定める規範にそったものである……とも、いえた。むろん、正義論は現代でも複雑に議論され続けている課題であり、真の正義がなんたるかは実のところ誰にもわかっていない。
 唯一言えるのは規範に盲目になった人間は規範の意図から離れていくということである。
 馬車の御者席で帽子を深く被り直す『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)。
「ロータスにリコリスにオドントネマ……確かボクたちが以前戦って、助けきれなかった人たちだよね。
 今度こそ助け出してあげないと! ね、プリクルちゃんっ!」
「はい……!」
 力強く頷いて、すこし伸びた金髪を手ぐしでなおすプリクル。
 いつかのように、触れれば砕けてしまいそうな精神状態からは脱したものの、未だに喪失の恐怖が抜けたようには見えない。
 助け出そうと決めはしたものの、プリクル自身はまだどう行動すべきか、どうしたいのかを自分の中で決めかねているようにも、焔には見えた。

 一方こちらは幻想国から調達した貸し馬車。性能こそおとるが、それなりの人数を積み込める信頼性と安定性の高い車種だ。
 『蒼の楔』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)はその御者席で頬杖をついて、くわえたまま手を離したパイプを上下にゆっくりと動かしていた。
(オーダーは絶対、俺は成功第一。……とはいったものの)
 壁と天井のない馬車の座席。もとい荷台に座っている仲間達をちらりと振り返った。
「ロータス以外の騎士も救いたいって他の奴の想いも全く理解出来ない訳じゃねぇ。ったく、報酬上乗せして欲しいくらいだが……」
 キセルを口から離し、深くため息とともに煙を吐き出した。
「やるぞ、今出来る最善を掴む為に」
「その方針で決まり、でいいんだな?」
 皆の方針が固まるのを待っていたのだろうか。『救いの翼』ミニュイ・ラ・シュエット(p3p002537)は荷台から立ち上がり、美しい翼を広げて風をうけた。
「私の性能なら一人攫うくらいなら訳は無い、けど……そういうことなら、欲張れるだけ欲張ってみようか」
 先へ行ってる。そう述べて跳躍したミニュイは、馬車の速度でうけた風を上手にとらえて一気に急上昇をかけた。確かにこれだけ素早く空にあがれるなら、そこらの兵隊程度では攻撃すらできないだろう。
 肩に立てかけるようにして保持していた槍を強く握る『特異運命座標』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)。
「洗脳をする化け物……か。
 今この場で全てを解決とは行かないが……今この場で出来る事を為す、それだけだ」
「そう。それが一番大事なことだよね」
 向かいで片膝を抱えて座っていた『海の女王のバンディエラ』秋宮・史之(p3p002233)が、眼鏡の奥で目を細めた。
「まずはプリクルさんのためにも、ロータスさんの救出をがんばろうか!
 俺もいずれはこの街も救いたい。そのための、大事な一歩だ」
 見えない悪意によって自覚無く支配された街。
 一度は失いかけたそれを少しずつ取り返し、いまここにいる。
 どこかの言葉によれば、敗北とは戦うことをやめた時なのだという。
 戦い続けているかぎり、まだ負けていない。
 そしてローレット・イレギュラーズは、戦い続けることには強かった。
「ところで、馬車のメンバーについて相談があるんだけど――」


 ロータスのホーリーバイクがうなりをあげ、兵士の一人へと突撃する。
 ひとりを撥ねとばすことに成功するも、それ以上彼女のバイクが前へ進むことはなかった。
「これで決まりやな。もう容赦はせえへんで」
 回り込んでいたオドントネマがバイクをがしりとつかみ、パイルバンカーを彼女のヘルメットへと押し当てる。
「――!」
 インパクト――の直前。猛烈なスピードで白馬が走り、虹の軌跡を描きながらオドントネマを無理矢理跳ね飛ばした。
「なんや……!?」
 飛ばされつつもダメージを上手に受け流し、すぐに立ち上がるオドントネマ。
 一方で馬上の幻は彼女へ向けてステッキをつきつけつつ、ロータスへと視線を向けた。
「プリクル様から依頼されたイレギュラーズです。ここは僕が抑えますから、逃げて下さい」
「「イレギュラーズ!」」
 ロータス。そしてオドントネマたち。双方のリアクションは全く逆のものだった。
「ここで有ったが百年目ェ! これ以上善良な民を虐げさせへんで!」
 幻へと襲いかからんとするオドントネマに対し、またも猛烈なスピードで突っ込んでくる馬車。
 それは焔の操る馬車だった。
 御者席に相席していたプリクルが手を伸ばす。
「ロータスセンパイ!」
「ついてきて!」
 馬にほぼブレーキをかけさせぬまま急速にターンをかける焔。
 ロータスは頷きつつアクセルリングをひねると、馬車部分を切り離して軽量化した焔の馬と共に走り出した。
「逃がさないよっ!」
 ボウガンで狙いをつけるリコリス。
 が、彼の放つ矢は馬やバイクにあたることはなかった。
 切り離した馬車の中にスタンバイしていた史之が飛び降り、転がりながら理力障壁を展開。矢を防御する。
「あの障壁……厄介なやつだコレ」
「リコリスと……オドントネマだっけ。長いからおうどんでいい?」
「なんやとぉ!?」
 目をかっぴらいて振り向くオドントネマに、リコリスが鋭く声をかけた。
「おちついておうどん。こいつはできるだけ無視しなきゃ勝てない」
「なんやとぉ!?」
 そうこうしている間に焔とロータス。はそれぞれ戦場からいちはやく離脱。
 史之と同じく現場に残ったプリクルは幻を守るように剣を構えて陣取った。
「おうどんセンパイ、失礼します!」
「貴様もかァ!」
 ゆるさん! と叫んで殴りかかるオドントネマ。
 リコリスはため息をつきながらも彼女のフォローをすべく狙いをつける……が、咄嗟にはしった第六感からその場を離脱。
 屋根から転げ落ちるように路上へ着地する一方、天空から急降下突撃をしかけたミニュイは民家の屋根を貫いて破壊。二階の窓を突き破る形で飛び出し、翼をふった羽吹雪を巻き起こす。
「敵がまだいる。警戒して」
 ミニュイの攻撃を回避しながらもボウガンで反撃。ミニュイはそれを防御しながら屋根の上へと着地するが、一方でレイチェルの操作する馬車が現場へと突入。
「さて、殺さないように倒すんだったな……。
 連中は戦い慣れしている。ダメージを相手に悟られないように動くはずだ。一応俺が見る限り死にかけかそうでないかくらいはわかるが、アテにはするなよ」
 馬車から飛び降りると同時に魔術を発動。自らの腕にはしる魔術式をなで、鮮血のように吹き上がる炎をリコリスめがけて放射する。
 馬車にスタンバイしていたマナガルムが荷台から飛び、水平に構えた槍でリコリスへと体当たりをしかけた。
 押し倒されるかたちになったリコリスは腰のナイフをぬいて反撃。
 毒の塗られたナイフであることを直前に察知していたマナガルムは素早くリコリスから飛び退いて事なきを得た。
 リコリスはオドントネマと視線を交わした。
「数で負けてる。目的はロータスの回収みたいだけど……」
「みたいだけどなんや」
「僕らを拉致するつもりかも」
「拷問する気ぃやな!? チッ、外道めが!」
 正義感100%で怒りをあらわにするオドントネマに、グドルフはくつくつと笑って返した。
「なんだテメェ、怖いのかぁ? ママを呼んでやろうかぁ?」
 その横で、両手の人差し指で手招きしながら舌を出してみせる辰巳。
「『コワイヨー! イレギュラーズに攫われちゃうよー! 聖女さまタスケテー!』」
「あ゛あ゛!?」
 正義感で動く人間ほど侮辱や挑発に弱い。
 汚い手段をいくつも経験してきたグドルフや、高校間の抗争を拳で勝ち抜いてきた辰巳のような人間達は天敵ともいえた。
 そしてオドントネマたち逆光騎士団への侮辱は、彼女たちを敬愛する兵士たちへダイレクトに響いた。
 本人以上に怒りを見せ、辰巳たちを取り囲むように構えはじめる。
 ニッと笑ってグドルフとアイコンタクトをとる辰巳。
「おうおうかかってこいバカども。でもってとっとと中のモン吐き出しやがれ!」


 イレギュラーズたちの作戦は結果としてうまく機能した。
 プリクル、幻、史之による連携はオドントネマと相性がよく、一方でミニュイ、レイチェル、マナガルムの連携はリコリスと相性がよかった。
 兵士達のヘイトはグドルフと辰巳が担当したことで妨害らしい妨害も入らず、敵陣をかき乱したまま適切にオドントネマとリコリスを無力化することに成功したのだった。
 ゆえにこの結果は当然のことと言えよう。
「クソッ、強い……」
 オドントネマはついに膝を突き、気合いで立ち上がろうとしてそのままうつ伏せに転倒。
 リコリスも壁に叩きつけられた状態でずるずると崩れ落ちる。
「レヴニールさんの言うとおり、だった……」
 がくりと気を失う二人。二人の口から慌てたように飛び出した赤い塊を仕込みステッキで切り捨てると、幻はグドルフとミニュイにそれぞれ合図を出した。
「まかせて」
 ミニュイは比較的小柄なリコリスを抱えると、急速に離陸。
 一方のグドルフもオドントネマを担いで加速装置をオンにした。
「しゃあ、ズラかるぜェ!」
 二人を持ち逃げさせまいと構えていた兵士たちも、まさかここまで急速に離脱されるとまでは思っていなかったようで、彼らのガードをすりぬけてグドルフたちはいちはやく現場から撤退してしまった。
「リコリス様が――!」
「追え、逃がすな!」
 警笛が鳴り響き、塔の鐘が鳴らされる。
 飛行可能な兵士や馬にのった兵士がそれぞれ飛び出し、グドルフたちへと襲いかかった。

「一丁上がり」
 馬車の荷台にオドントネマを転がし、グドルフはエネルギー切れになった加速装置を放り投げた。
「お疲れ様。あとは防御よろしくね。……っと言ってるそばから敵襲! 前方と両側面!」
 史之が苦笑しながら馬車を走らせ、理力障壁を展開。飛来する銃撃を弾きながら馬のプレッシャーで押しのける。
「後ろからもお客さんだ。手ぶらで帰っちゃくれねぇもんかね」
 レイチェルは転がしたオドントネマを一瞥してから、弓を構えて狙いをつけた。
 矢に彼女の血が這い上がるようにまとわり、赤くキラリと先端を光らせる。
 発射すると、馬上の兵士を見事に打ち抜いて転落させた。
 そんなレイチェルの射撃をかいくぐり馬車へ追いついてくる馬。
 馬上から兵士がジャンプし、馬車の荷台へと乗り込んできた。
「あー、コレ、映画でよく見るやつだな?」
 辰巳はこきりと拳を鳴らすと、這い上がってきた兵士の顔面を殴りつけた。
 必死になって殴り返してくる兵士と幾度も殴り合いをかわし、最終的には根性で兵士を馬車から蹴り出した。
「オラッ! 帰れ!」
 しがみつこうとした荷台の板ごとはずれ、地面を転がりながら遠ざかっていく。
 別の兵士達を相手しながら合流してきた幻とマナガルム。
 マナガルムは呼び寄せた愛馬をたくみに操ると、槍をぐるんと回してみせた。
「両側面の対処は任せてくれ」
「よろしくお願いします。ですがくれぐれも――」
「分かってる。殺さない」
 馬車へ迫ってくる騎馬兵と併走すると、咄嗟に繰り出した相手の槍に自分の槍を打ち当てた。
「退け。言葉で退かせられぬというなら、我が槍を馳走しよう!」
 その一方で幻はステッキを振って虹の幻影を作り出すと、銃撃をしかけてくる騎馬兵を虹でからめとってしまった。
「僕は手加減が苦手でございます。早めに退くことをお勧めしますが……」
 こうして彼らは、プリクルと共に馬車を守りつつ無事に街からの脱出に成功したようだった。

 オドントネマとリコリスの回収が上手くいっているその一方。先んじて戦場を離脱していた焔は真っ赤な馬を駆りロータスと併走していた。
 迅速な戦場離脱によって追っ手がろくに先回りできない状態を作ったのがよかったのだろう。
 たまたま居合わせた兵士がちらほらと路上に飛び出しては焔たちを止めようと武器を構えるが――。
「悪いけど、押し通らせてもらうよ!」
 胸の谷間(谷間!)から引き抜いたお札を投げつける焔。札からは縄上の炎が吹き出し、兵士をからめとって拘束、転倒させてしまった。
 その上を馬で飛び越えていく焔。
 ロータスはそんな戦いぶりを見て、フウと息をついた。
「君たちが来てくれて助かった。礼を言う。ええと……」
「焔だよ。プリクルの……おともだち?」
 首をかしげる焔に、ロータスはフルフェイスヘルメットの下で笑った。
「あれはだいぶコミュニケーションが下手だが良い奴だ。仲良くしてやってくれ」
「それはもう、もちろん!」
 彼女たちはそれ以上追っ手にかかることなく、街を安全に離脱したのだった。




●真実の先の先
「またひとつ、派出所が削り取られました」
 目を布で覆ったシスター服の聖女『逆光』が、膝を突いて祈りを捧げている。
 教会の中には赤くおぞましい物体が浮かんでは飛び回り、ベンチに並んで眠る人々へと寄生していく。
 彼らは地元の権力者や人望のあつい者たちらしく、それなりの身なりをしていた。
 こんな異様な光景にありながら、『逆光』は祈りの姿勢を解かない。
「やはりイレギュラーズは悪なのですね。この世界を……いいえ、すべての世界を破滅させる、癌。
 いかにイレギュラーズが強大であろうとも。罪なき人々を守るため、悲しき災いを払うため、私たちは剣をとります。どうか見守ってください」
 『逆光』は顔を上げ。
 彼女を見下ろす、一人の男へと手を伸ばした。
「――神よ」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――ロータス、リコリス、オドントネマを救出し、仲間にしました。
 ――ノフノの街で何かが置きようとしているようです。

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