PandoraPartyProject

シナリオ詳細

バッドステータスは「リリカル」

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●あそぼうあそぼう
 わざわざ部屋を空っぽにした。
 木目調のフローリングとオフホワイトの壁紙だけの広い部屋。きれいに掃除しちゃえば、まるでたったいま引越してきたみたいなカンジ。

 さあ何を詰め込もう?

 外の景色、いまどんな様子? そーね、新緑も芽吹いてきて昼間はあったかぽかぽか汗出てくる時もあるね、でもやっぱりまだ夜は寒いし、まだまだスプリングコートがほしくなっちゃう、そういう季節。

 じゃあさ、やっぱり最初に運び込むのはホットカーペット、決まりね。大きいの、どーんって広げちゃおうよ。そのうえから絨毯代わりに毛布しいちゃえば、ぬっくぬくだしパジャマでだって過ごせる。お外の寒風なんか、どこ吹く風でしょ。風だけに。いま寒いこと言ったの誰? ないしょないしょ、ということにしておいて。次に持ち込むのは何にする? 当然、クッション、ふかふかばんざい。くてくてでもふくふくでもお好みでどうぞ、みんなで持ち寄り。四角だったり、ハートだったり、抱き枕みたいに胴の長い猫だったり、好きなの使ってねと、お互いに言い合う。ちょろっと自慢入ってるのもないしょないしょ。(どーよ、かわいいでしょ、このクッション)。

 肩肘張らずに胸は張ります。今日はオフの日、おやすみホリデー。いつもは兄さん探しで忙しいあの子も、今日もかわいい突撃娘も、聖職者目指してるこの子も、落ち着いちゃってる既婚者も、絶対音感持ってるその子も、ガスマスクの一言で通じちゃう有名人も、パ・ル・ス・ちゃーんな炎の神子も、うぶでスイートな修道女も、久しぶりにみんなの休日かぶった、それはもう集まってくっちゃべりますかってなるに決まってるじゃん。どうせなら思いっきり楽しい空間、共有したい。誰? 人をダメにするクッション、みっつも持ち込んだの。ふふ、ないしょないしょ。これ並べて寝転がると最高なのですよ。

 さて、これで準備はOK? なんのまだまだ、足りませぬ。

 オールドファッションのラジオを部屋の隅へ、電源入れたとたん気分あがるテンション飛び出すから、すこーしだけ寄り道、みんなしてステップ、思い思いにダンス。手を繋いでジャンプ、サビだけはビシッとそろえてキメ! ……のつもりがクッション踏んで尻餅、やっちゃったやっちゃった、あはは! それでは準備の続きに戻りまして、壁へ飾りつけだよ。思い出のピンをキュートなマスキングテープで壁へ貼っちゃってさ。ぺたぺた、美術の時間の工作みたい。これ私のあの時の思い出、私のこれは初めての絵姿。なら私は夏の一時を。静まり返っていた壁が、どんどんにぎやかになっていく。ポップ&ゴージャス、シックorプリティー、おしゃべりの種をそこここへ撒き終えたら、仕上げに洒落たラタンのテーブルを中央へ。

 ガラスの天板へお気に入りのマグカップ並べて、ポットにはホットミルクたっぷり。お砂糖もシロップもご用意。甘いのが苦手な夜更かし希望さんのためにもコーヒーもあるの。紅茶はハーブティーのパック詰め合わせ。色鮮やか、見てるだけでわくわく。ドリンクはいくつあっても足りない。もっと足りないのはお菓子。女の子ってなんでできてル? 愚問愚問、お砂糖とお菓子とガスマスクとこの世のすてきなもの全部、今決めたんダヨ、反論は許さナイ。文句があるなら、あたしへ薔薇の花くらい持ってきてくださいね、マイディア。999本もなくったっていいわ、たった1輪あなたが私のために選んでくれたなら喜んで受け取るから。もっとも女心はいつだってオータムイエローだから、愛の告白は何度でもうれしいケドネ?

 というわけで、お皿にはポテチからチョコ入りマシュマロまで盛りだくさん。出来合いのもいいが、せっかくだからお手製のを持ってきたぞ。やった、待ってました。あがる拍手パチパチ。拙者のもいかが? いいねえ、よだれ出てきた。まあなんせ公にも食べていただきましたし? ボクも作ってきたよー! 気がつけばみんながみんなして甘いの辛いのホームパーティー。これでおなかも膨れて、話に花も咲きそう。

 さあそろそろ本番いこう、順番にシャワー浴びて、この日のための戦闘服に着替え、テーブル囲んで座って目配せ。今宵は月も見てないし、枷は外して楽しんじゃおう。頭ちょいゆるゆるがちょーどいーね。だって、乙女のハートは広大無限、飛び交う秘密は壮大夢幻。ぜんぜんまだまだ、ときめき足りない、キラキラは今ここから。

GMコメント

みどりです。リクエストありがとうございました。最近異世界ニホンはいきなり夏になってますが、混沌なのでまだまだ初夏です。テーマは女子会。女子会といえば……。

やること
1)パジャマパーティーだ!

●内容
やりたいことを2~3点プレへ書いてください。
ただ単にだべってもいいし、開始直後から寝息立ててもいいし、持ち込んだものや思い入れのあることについて語ってもいい。もちろんコイバナしたり未来予想図とブレーキランプの回数を事細かに説明してもいい。こまごまと世話を焼いてもいい。
もしピンナップなどのイラスト商品について語りたければ、アルバムにあるイラスト名をプレへ記入してください。特殊化アイテムやスキルの場合は活性化してきてください。シナリオやSSはタイトル名をお願いします。その際出てくる、直接参加していない方はプールに入ってる塩素くらいうすーく描写します。

●乙女の戦場
みんなで飾りつけた広いお部屋。ポップでごきげんなミュージックが流れています。
ごろごろしながら夜更かししてしゃべり倒すのです!

  • バッドステータスは「リリカル」完了
  • GM名赤白みどり
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年06月04日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

夢見 ルル家(p3p000016)
夢見大名
クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)
安寧を願う者
ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
蒼穹の魔女
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
ジェック・アーロン(p3p004755)
冠位狙撃者
リア・クォーツ(p3p004937)
願いの先

リプレイ

●女の子ってなんでできてる?
「かわいいー! がまんできなーい!」
「続けー!!!」
 ぬいぐるみクッションの山へ突撃したのは『新たな道へ』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)、ついで『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)。
「ふふっ、この子とってもかわいい。お土産にしたいくらい! 決めた。今日の私のお膝はこの子のものだよ」
 でっかいひよこをスティアはお膝に乗せた。けっこう大きいので顎を乗っけるのに丁度いい。
「ふふふふ~、これから女子会が始まると思うとわくわくするね。部屋の飾りつけみんなでがんばったもんね。さあ、これから語り明かしちゃうよ!」
 青みがかったグリーンに、白のドットが入ったパジャマを着て、スティアはぬいぐるみで口元を隠してにんまりした。
 一方、モーモー柄にフードの付いたパジャマを着込んでいる焔は、部屋中を眺め回した。なんだか遊園地を思い出させるカラフルさだ。
「これが女子会なんだね! 頑張って夜更かしして皆とお喋りしたいな! お菓子にジュースも美味しそう! ……でもこんな時間にこんなに食べちゃって大丈夫かな」
 スティアが名案を出す。
「食べた分動けばいいんだよ」
「そうだね。よし、明日はトレーニングの量をいつもより多くしよう!」
 対象的にもじもじしているのは『ラサコレクションデザイナー』ジェック(p3p004755)。白のゆったりしたTシャツに、ラサ風の巻きスカートを合わせてパジャマの代わりにしている。頭は当然ガ・ス・マ・ス・ク。
「アタシ、こういうのハジめてダカラ……。ちょっとドキドキしちゃうナ」
 はたしてここへ来てよかったものかとまでジェックは考え始めていた。だがそんなジェックの肩を押すように、というか実際どーんと押して『婚活ファイヤー』夢見 ルル家(p3p000016)が保冷バッグの中身を取り出した。
「はいはーい、ジュースどうぞ! 好きなのとってくださいね! これが女子会! 拙者生きているうちにこのような催しを楽しめるとは感涙です!」
 青空模様のパジャマを着たルル家は保冷バッグからどんどん瓶入りジュースを取り出して並べた。リンゴにブドウ、パインにオレンジ、グレープフルーツ、宇宙味。瓶は透明で中が透けて見える。フルーツはともかく、最後の一つは何故か光が渦巻いている。
「ルル家、コレなに?」
「宇宙味です!」
「ウチュウ」
「宇宙味です! コップに注ぐと銀河が見えてきれいなのですよ?」
「アジは?」
「保障しません!」
「……了解」
 デモ一口くらいは飲んでミヨウか。瓶の中の宇宙はきらきら輝いて万華鏡のよう。ルル家のおかげで少し勇気が出てきた。
「夜フカしも、皆のハナシを聞くのもタノしみ。お菓子はタベれないけど、ルル家の持ってきたジュースをノんで、普段はキケない話イッパイ聞こっと」
「よかった。ジェックさんの緊張がほぐれたみたいで。……私までうれしくなります」
『祈る者』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)が微笑んだ。シンプルな水色のパジャマがよく似合っている。緊張しているのはじつは自分も同じなのか、両手で抱えたクッションを強めに抱きしめている。
「パジャマパーティー……。似た年頃の女子が集まって、一晩語り合ったりする催し物と聞いております。そこに私が参加させて頂くことになるとは……。よ、よろしくお願いいたします」
 皆へ体を向け、つっかえつっかえこの日のために考えた口上を述べる。うまくいえなくて顔が熱くなった。恥ずかしい……。
 その背をぽんぽんたたいて紫から白のグラデーションパジャマの『旋律を知る者』リア・クォーツ(p3p004937)がさわやかに笑いかける。
「気にしない気にしない! もっと肩の力抜いていきましょう? クラリーチェさんの旋律、とっても涼やかで澄んでますよ。普段、ここの皆とは戦場とかでしか会ってないし、こういう機会って貴重ですよね」
 そしてテーブルの上に並べられたジュースの瓶に目をキランと光らせる。
「用意がいいなルル家、あたしもおかし持ってきたよ!! さぁ、じゃんじゃか開けて、どんどこ語り合いましょう!」
『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)が、零れ落ちんばかりの机の上を見て苦笑する。
「でもこのにぎやかさこそ女子会というものかも。テンションあがってきたー!」
 ネイビーブルーに真珠のビーズがあしらわれたパジャマのまま、失礼と、座布団代わりにどでかいクッションへ座った。
「なかなかこうやってみんなでお話する機会ってないし楽しみだな! どんな話しよう? あ、その前にお菓子食べる? ポテトさん、キッチン借りていい? お茶淹れるね! ジュースがいい人は言ってよ! そうそう、会場貸してくれてありがとうね!」
「ん? 気にするな。みんな楽しそうで私もうれしい」
 緑の落ち着いたネグリジェを着た『優心の恩寵』ポテト=アークライト(p3p000294)はふっと笑顔に切り替えた。
(女子会か……。お洒落はあまり詳しくないので、美味しいお店の話が良いかな)
「今日は旦那も娘も実家だからな。騒ぎ放題だ」
「「やったー!」」

●お砂糖と
「本当は、夜中の甘いものはご法度ですが。今日くらいは許されますよね」
 クラリーチェが取りいだしたるは手作りワッフルと木苺のジャム。
「おいひいっ! こえ、こにょ、ふわあまで、そきょにジャミュが……」
「リアさん、落ち着いて。もう一枚焼いてきましたので。木苺のジャムもたくさんありますから」
「木苺といえばさ……!」
 アレクシアが何か思い出したのか、懐かしげに目を細める。
「深緑は森の中にあるからさ、木の実とかフルーツとかが色々豊富でね! それを使ったケーキがとっても美味しいんだ! 特に私の実家の近くにあったケーキ屋さんが大好きで!」
「おお、それは気になります。拙者『路地裏カプリチオ』というカフェをやっているのでスイーツ情報には目がないのです。どんなケーキを売ってるのですか?」
 ルル家が食いついた。アレクシアはあの甘味を思い出したのか天井のあたりをうっとり見つめる。
「木の実の入ったふわふわのパウンドケーキとか、色んなフルーツをたっぷり載せたフルーツケーキとか! さくさくっとした食感のミルフィーユとかもあってさ! お父さんがたまに買ってきてくれるのが楽しみで! みんなで深緑に行くことがあったら、一緒に行って食べてもらいたいんだ!」
「拙者は食べるのも大好きですが作るのも好きです。これでも結構腕前には自信があるのですよ! これは視察にいかねばなりませんね! お店のメニューを増やすいい機会、皆さまお店にも是非遊びに来てくださいね!」
「いいなあふたりとも。思い出のケーキ屋さんに手作りスイーツのカフェかー、ボクはーうーん、パルスちゃんの試合とかライブを観によく鉄帝の方まで行ってるんだけど……」
「鉄帝のスイーツ! ……鉄帝にスイーツってあるの? くわしく」
 スティアがぐいっと前へ乗り出した。焔は重々しくうなずき、一転にやける。
「なんとなんと、あのパルスちゃんが通ってるクレープ屋さんがあるんだ!『鉄帝のオンナノコに人気のお店』って雑誌にも書かれるくらいで、チョコレートが名物!」
「鉄帝に、クレープ……!」
 スティアは衝撃を受けたようだった。
「うん、甘党が通える店が少ないってパルスちゃんも嘆いてたよ。はあ~間近で見るパルスちゃん、くらくらするほどかわいかったなー。色なんかこーんな白くてね。スラッとしててお顔も小さくてだけどとっても勇敢で……!」
 焔は、はっと両手で口を押さえて、上目遣いで様子をうかがった。みな微笑ましそうにパルスを見ている。
「え、えーとお、スティアちゃんのオススメは?」
「そうね、オススメと言われればやっぱり天義のワッフルのお店ね。私のお気に入りもチョコのやつかな」
「チョコレートいいよね。生クリームもおいしいけど、味に存在感があるっていうか」
 スティアの言葉に、うんうんと焔もうなずいた。スティアは興奮気味にまくしたてる。
「あとね、『見習い騎士』の子に教えてもらったんだけど、野菜を練り込んでいるスコーンを売ってるお店があってそこも美味しいの! 紅茶にも合うからついつい食べ過ぎちゃう、えへへ」
「わかるぞ、あの子に教えてもらったタルトもおいしかった。つい食べ過ぎるんだよな……うん」
 ポテトが会話に入り込んできた。皆から注目を向けられ、ポテトはこほんと咳払い。
「んー、そうだな。私のオススメというと召喚前の世界になってしまうからな。だが幻想はさすがに国の最大手だけあって色んな食材が集まるから美味しいものが多くて嬉しいな。やはり畑だけでは賄いきれないものも多いしな。先日リゲルと行ったアフタヌーンティーが楽しめる店もよかった。他にも紹介したいスポットはたくさんあるが、ひとまずその店だな。立ち寄ってみるといい、女子同士でも、デートにでもお勧めだ」
 ナルホドと、ジェックがうなずいた。
「ミンナ、意外とスんでるとこバラバラなんだヨネ。ローレットで会うカラあんま気にしたコトなかったけど」
「言われてみれば、たしかに」
 ポテトもうなずいた。
「ジェックはどんなところに住んでいるんだ?」
「アタシが住んデルのは幻想のハシっこだよ。ダレが領主ナンだろ……キにしたことなかった。ボロいとこだから招待トカはできないケド……自然がオオいから、落ちツくかな」

●スパイスと
「そうだった。ジェックP殿、先日は拙者をコーディネートしてくださりありがとうございました! アレクシア殿とも服を買いに行きましたが、あんまり服揃えてないのですよね。今着てるのも、動きやすさ重視って感じですし」
「そうそう、スポーティーでかわいいと私は思うけど、もっと女の子らしいのも欲しいみたい」
 ルル家の言葉にアレクシアも同意した。
「ソンナに気に入ってクレタなら嬉しいよ。紙がアれば簡単なデザインくらいデきるけれど」
「ぜひお願い! ねえねえポテトさん、何か書くものある?」
「あるぞ」
 焔に頼まれてポテトが用意した紙とペンで、すらすらと何かをデザインしていくジェック。それをみんなに渡し、照れたようにうつむいた。
「今の季節ナラ水着とか浴衣カナって……。どうカな?」
「ふおおおおお! 全銀河がひれ伏す級のかわいさ、略して全銀級! 拙者の魅力を余す所なく表現してますー!」
 かわいいー! うそ、いいの、こんなのもらっちゃって! クラリーチェは興奮のあまり頬をほてらせ「今年はこの新しいコンセプトにチャレンジしてみましょうか」。みんなの感想がかしましく重なる。スティアが目を輝かせたままジェックを振り向いた。
「ファッションかぁ~女の子を彩るスパイスだね。なるほど、誰かに選んでもらうっていうのも楽しそうだよね。普段と違う自分になれそうだし! ジェックさんって普段からお店回って下調べしたりしてるの?」
「あんまりオミセ、知らないンダ。デモ、お洒落はスキだよ……コッチに来てカラ好きにナった」
「知らないのにこのレベルでデザインできるの? すごいねー」
 ほえーとリアがつぶやく。きっと今彼女の旋律は素朴な感動の音色に違いない。

●ステキなもの全部!
「夜も更けてまいりましたね」
 クラリーチェが言う通り、机の上のお菓子は半分以上片付けられている。ちょっと眠気でぽんより。距離はぐっと近くなって、なんとなーく小声で話すのは。
「……え、私の気になる殿方……? ううん……。宗教上個人に対して特別な感情を、というのは禁じられているようでして……」
 一瞬陰ったクラリーチェの表情に、目ざとくジェックが気づいた。
「ソウなの? ソレって、サミしくない?」
「……いいえ、そんなことは……。それに私は修道女なのですから……」
 脳裏をよぎるのはまぼろし。クラリーチェは軽く頭を振ってやり過ごす。薄い笑みを浮かべ、ジェックと顔を合わせた。
「そういうジェックさんこそ、意中の方がいらっしゃるのでは?」
 今度はジェックが沈黙する方だった。
「アタシは…………好きなヒトはいないヨ。ダレかと付き合うトカ、そういう経験もナイからね
リアの話とか、ポテトの話トカ、聞いてみたいナ。イイ奥さんって、ドンナなんだろう……ネ。皆のイケン、チョット聞いてミタイかも」
 いい奥さんかあ~。その一言でそろって視線がポテトへ注がれた。
「ん? なんだ?」
 料理が得意で家事もできる。家庭菜園が趣味。夫と娘と仲良く過ごし、たまの休みはコロッケパーティー。女だって忘れてない。健康的な体つきなのに、出るところは出ていて、甘そうな肌にはシミひとつ無い。これで数々の戦歴を打ち立ててきた歴戦の勇者だったりもするから公私ともに最強。いい奥さんの見本。
「いい奥さんなら拙者も負けられません! 拙者は広大な領土を持ち、極めて豊富な財産をお持ちの男性と結婚し! 悠々自適な生活を送るのです!」
「それは願望というやつじゃないか?」
 ポテトがくすくす笑いながら自作のアップルパイをつまんだ。
「私は……リゲルといると、いつもドキドキして幸せ感じるな。普段は一緒にいると幸せで、嬉しくて、もっと沢山リゲルを支えたくて、でも支えられてて、びっくりドキドキさせようと思ったら逆にこっちがびっくりドキドキさせられて……うん。いつも色んなドキドキと幸せがいっぱいだ。私が作ったご飯を美味しいって食べてくれる姿も好きだし、ソファーでうたた寝してる無防備な姿も嬉しい。依頼で見せる凛とした姿も格好いいし、私を見て笑ってくれる笑顔を見ると幸せなんだ。それにリゲルは料理も上手なんだ。あったかい味で、私も娘もリゲルの作るご飯が大好きだ。いつも幸せを沢山くれて、何度でも惚れ直させてくれる、最高で最愛の旦那様だ」
 指輪を撫で、微笑む姿は慈母のそれでありひとりの女でもある。またも周りがはあ~とうらやましげなため息をついた。
「恋ってどんな感じなんだろう。私はまだあんまりよくわからないし。うーん、好みのタイプ……強いて言うならサクラちゃんより頼りになる人が良いかも? えへへ、いつも一緒にいるからどうしても比べちゃうね」
「スティア君の言い分もわかるな。好きなタイプの話をするけど、色んな冒険に付き合ってくれて、誰かを思いやれて、笑顔が素敵な人がいいかなあ。なかでも笑顔が一番大事! 誰かの笑顔を見るのはとっても好きだし、きっとそういう人といるとあたたかい気持ちになれるから」
「わかる! さすがアレクシアさん!」
「でね、デートプランは、普段住んでる町の思いがけない景色が見られる場所とか、ちょっと路地を入ったところにある地味だけど美味しいカフェとかに行くの! なんだか冒険してるみたいな気分になれるじゃない? そうやって、日常を楽しく暮らせたら幸せかなあ、なんて! へへ、改めて口にすると照れくさいな!」
「そこまで詳しく考えてるんだ。私なんか、景色の良い所とか、雰囲気の良いお店でゆっくりしたりくらい? 特別にこれが良い! ってことはないけど一緒に楽しめる何かができれば嬉しいよね」
「恋のお話、ボクもよくわからないんだよね。でも皆のお話を聞いてるとこっちまでドキドキフワフワした気持ちになって来ちゃうしボクもそんな素敵な恋がしてみたいな。好みのタイプは、この世界の全部よりもボクを選んでくれる人、かな」
「おおっ、意外とヘビーなとこ行くね!」
「そうかなあアレクシアちゃん。元の世界で果たさなきゃいけないお役目がいっぱいあるから、帰れる時が来たら帰らなきゃいけないし、その時もついてきてくれるくらい愛してくれる人がいいなって」
「そゆことね、焔ちゃん巫女だもんね」
「なのなの。ねえジェックさんはどんな恋してみたい?」
「恋……好きな人はイナイけど……特別だったヒトなら、いるよ」
 みんなが、おおっと目を見開いた。ジェックはふいと顔を背けた。
「皆のハナシを聞いてるウチに、あの気持ちがそうナンダって気付いたの。それ以上は、ナイショ。だって、ホラ………ハずかしいでしょ?なんてネ?」
 ネエ、マックスウェル。短い間ダッタけれど、本気でアタシを好いテくれたヒト……。ジェックが感傷に浸る間もなく、ルル家が次の話題を切り出した。
「リア殿はどうなのですか? 本日一等賞間違いなしです! さぁさぁ早く!」
 強引に水を向けられたリアは両手を組み替えながらつぶやき出した。
「えっとー、ハンサムで~」
(ガブリエル公だ……)
「美と芸術を愛してる方で~」
(ガブリエル公だ……!)
「緑のゆるふわロングの方!」
「ガブリエル公かな?」
((言っちゃったー!))
「いや、その、ポテトさん、あたしはその、そんなおこがましい気持ちなんて、で、でも、えっとその……実は、伯爵の音色に触れた時……優しくて綺麗なのに、力強くて……少しだけ悲しげなあの方の音色に触れた時ね、もっと、あの方の事を知りたいと……その旋律を聴きたいと思ったの。苦痛でしかなかったあたしのクオリアに、あたしの世界に新しい色が満ちていくのを感じたの。だから……その…………ア”ア”ア”ア”ア”ア”!!!」
 クッションを頭からかぶり、ぶっ倒れてごろごろするリアだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

女子会!
ときめく響きですね。

楽しく書かせていただきました。ありがとうございます。
いかがでしたか?
それではまたお会いしましょう!

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