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シナリオ詳細

<鎖海に刻むヒストリア>サメゴリラ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●シャークオンアタック
「くそっ、敵影の確認はまだかっ!?」
「まだです! くそっ、海中に潜られたら――船長、あれを!!」
 ここは絶望の青の一角。昼夜を問わず嵐が吹き荒れ、稲妻と高波の音が鳴り響く危険な海域だ。だが、それだけならば、それだけならば、操船技術に長けた海の男達にとって、抜けられない場所ではない。
 それに、味方は自分達だけではないのだ。
 ちらりと、自分達と同じ様に、いまだパニックから立ち直れていない友軍を見やる。
 ゼシュテル鉄艦隊。かつての敵であったのは間違いないが、情勢が変われば陣営も変わるもの。アルバニアを打倒するというそれを掲げ、手を組んだのだ。
 全てはかの大魔種を打ち倒すため。絶望の青を攻略せんと船を進めていた彼らであったが、この海域に入り、それを守護しているかのようなそれに襲われたのだ。
 いまだ敵影は確認できず、しかし船は断続的に大きな衝撃を受け続けている。
 ゼシュテル側もまた、引くか攻めるかを決めあぐねているらしい。おそらくは、こちらの判断に従うだろう。
 部下が指し示した方向を見やる。それはこの海では最も恐ろしく、しかし襲いくるものとしてある意味合点のいく相手でもあった。
「サメ、か……?」
 そう、それは並から出たサメの背びれであった。大きい。あのサイズから推測するに、人などまるかじりにできてしまうだろう。それが意思をもって襲ってきている。だが、敵の影が見えた以上、やりようはあった。
「撃て! 目標はあの背びれだ!!」
 用意されていた砲撃が始まる。ゼシュテル側も構えてはいたのだろう。一拍をおいてあちらからも大砲の音が聞こえ始めた。
 一通り、装填分を撃ち尽くして。波のどこにも背びれは見当たらなくなっている。
「……やったのか?」
 思わず、息を飲んだ。
 その疑問を口にした部下は、まだたきの瞬間に胴の上半分を失っていたのだから。
 送れて飛び散る血しぶき。だがそれ以上に、そこに立っていた怪物に眼を奪われていた。
「なんだ、これは……?」
 一見、ヒト型。毛深い体に、異常なほど発達した両腕と胸の筋肉を持ち、やや前傾姿勢。しかし頭部には明らかにホオジロザメとおぼしきものがついており、同様にサメの尾びれをもっている。
「ご、ゴリラ……いや、サメか?」
「どっちもあたりだ。頭がいいな」
 意外なことに、そいつは言葉を理解しているようだった。
「俺は、かつてゴリラだった。だけど、海の生き物になりたくてな。ずっと、考えた。どうすればいい。そこで思いついたのさ。サメになればいいってな」
「…………うん。うん?」
 気の抜けた声が出た。どうしよう、何を言ってるのか全然わからない。サメになるってなんだ。
「どうやったかは、賢いアンタならわかるだろう。ほら、あれだよ。『努力すればいつか夢は叶う』ってな。やっぱ努力を欠かしちゃいけねえな」
「お、おう……」
「いや、すまねえ。海の中じゃ話のわかるやつも少なくってよ。それじゃあいくぜ。俺はアンタらを皆殺しにして、この船もあっちの船も沈めなきゃいけない。残念だよ、違う出会いがあったら、友だちになれたかも知れないのにな」
 絶対無理だと思った。

GMコメント

皆様如何お過ごしでしょう、yakigoteです。
『絶望の青』にて狂王種と遭遇しました。これを撃退し、この海域を突破できるよう船を守ってください。

【エネミーデータ】
■ゴリザブロウ
・ゴリラのボディとサメの頭、尾びれ背びれを併せ持った狂王種。
・名前はややゴリラよりですが、お母さんからもらった名前を大事にしています。
・海中と船上を自由に行き来できますが、イレギュラーズが多い方に移動し、攻撃をしかけます。
・海中では反応・機動力・回避に長け、船上では攻撃力、防御、抵抗に長けます。
・どちらの場合でも、水中を高速移動して回り込むすべを持っているため、マーク・ブロックをすることはできません。
・以下のスキルを使用します。

□二倍お得
・サメとゴリラ。襲われたらヤバい生き物がダブルで来たので、戦場にいる限りターン毎の最初に抵抗判定を行い、失敗すると混乱・崩れが付与されます。

□サメアゴ
・単体への攻撃です。判定の結果、1以上のダメージを受けた場合、致命がつきます。船上に出ると、海中に戻るまで1回の使用制限がつきます。

□ドラミング
・範囲攻撃です。強烈な音で攻撃します。怒り。海中では判定に使用する数値が半減します。

【シチュエーションデータ】
■絶望の青(の、一海域)
・常に嵐が吹き荒れています。
・海中で戦闘する場合、砲撃支援が受けられます。
・海中で戦闘する場合、特定のスキルを所持していなければ行動にペナルティや呼吸などの制限が付く場合があります。
・海中から船上への攻撃には判定にペナルティが生じます。船上から海中への攻撃も同様です。

●重要な備考
<鎖海に刻むヒストリア>ではイレギュラーズが『廃滅病』に罹患する場合があります。
『廃滅病』を発症した場合、キャラクターが『死兆』状態となる場合がありますのでご注意下さい。

  • <鎖海に刻むヒストリア>サメゴリラ完了
  • GM名yakigote
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年05月22日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ジル・チタニイット(p3p000943)
薬の魔女の後継者
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
コゼット(p3p002755)
ひだまりうさぎ
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
枢木 華鈴(p3p003336)
ゆるっと狐姫
カンベエ(p3p007540)
大号令に続きし者
ヴィクトール=エルステッド=アラステア(p3p007791)
懐中時計は動き出す
リーシェ=フィル=シトロニア(p3p008332)
銀翼の拳

リプレイ

●船上0m
 小さい頃から海の生き物になりたかった。だが残念なことに、ゴリラは森の生き物だ。海の生き物じゃない。どうやっても海で長時間生息することは叶わないし、そもそも海じゃ、自慢のパワーも発揮できないし、ドラミングも響きやしない。俺は途方に暮れたよ。生きていて何の意味があるってんだ。でもさ、ある時だ。異世界の話を耳にしたんだ。

 嵐が吹き荒れる海域は、それだけで船員が忙しい。
 船は刻一刻と変わり行く波を読み、操舵してやらねばならず、それだけでも人手が取られ、トラブルに回せるだけの人員は少ない。
 つまりそれは、少数精鋭で目の前のそいつに対処しなければいけないことを表していた。
 揺れる船、降り立った怪物。迅速な対処が求められるこの状況で、しかし『薬の魔女の後継者』ジル・チタニイット(p3p000943)は肺活量いっぱいに叫んでいた。
「生物的に滅茶苦茶中途半端っす!」
 そりゃそうだ。だって毛むくじゃらのゴリラボディに鮫肌の頭とかヒレとか生えているのだ。たぶん陸でも海でもなんか邪魔になるに違いない。
「なんでこうなったっす?!」
「夢を叶えたからさ」
 サメゴリラが大きく胸を張った。
「ぶはははっ、なるほど確かに夢を叶えたってやつか。大したモンだ。故に惜しいなぁ!」
『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)は諸手を叩いてその存在を評価する。生物という垣根すら超えた努力の結晶。本当に、敵でなければどれだけ良かっただろうか。
「だが、強敵と書いて『とも』と呼ぶのは吝かじゃねぇ。いっちょ良い喧嘩しようじゃねぇか!」
「『喧嘩』たぁ粋じゃねえか! 胸ぇ貸してやんぜ!」
 ゴリラ部分な胸を強く叩いた。
「こんにちは、ゴリラさん、サメさんかな?」
『ひだまりうさぎ』コゼット(p3p002755)は首を傾げる。このような生き物をどうカテゴライズすればいいのかわからないのだ。大丈夫、人類の誰もわかっていない。
「『努力すればいつか夢は叶う』いいこと言うよね。もう夢はかなったのかな? それともまだ途中なのかな? どっちにしろ、ざんねんだね……今日でその夢、終わっちゃうから」
 ラスボスみたいなこと言いやがる。
「いい努力だ、ゴリザブロウ。御主は、夢を叶えるという事の何たるかをよく理解しているようだ」
『五行絶影』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)もまた、サメゴリラに感心していた。一般的に不可能と言われることを実現させる。その努力は想像を逸するものに違いない。
「だがしかし!」
 汰磨羈は顎を伝うそれを手の甲で拭う。じゅるりと音を立てながら。
「フカヒレを身に付けたのは失敗だったな?」
 え、食べるの?
「努力でなんとかなるにしても、流石に限度があると思うんじゃがなぁ……」
 努力の内容をひけらかさないサメゴリラ。しかしただ頑張ったというだけでは『ゆるっと狐姫』枢木 華鈴(p3p003336)は納得しかねるようだ。
「なぁに、お嬢ちゃんにも、いつかわかる時がくるさ」
 来ないと思う。
「……狂王種で理性的な会話が出来る相手って、とんでもなく貴重そうなのじゃ」
 流石は元森の賢者。
「ゴリザブロウ、確かに、お前とは友としての関係を築けたかもしれない」
 たぶん今、『大号令に続きし者』カンベエ(p3p007540)は脊髄反射でものを言っている。
「お前がなったのがサメではなければなぁーーーーッ!!!! シャークハントじゃああああ!!!!」
「な、なんだこの気迫は!?」
「ゴリザブロォーー!! フカヒレを寄越せえーーーー!!!!」
 ヒレだけの為に狩られるゴリラ。象牙だけの為に狩られるゾウ感あるね。
「サメって魚類ですよね!?」
 そうだね、軟骨魚綱板鰓亜綱だね。
「ゴリラって霊長類ですよね」
 そうだね、霊長目ヒト科ゴリラ属だね。
「サメゴリラ……もしや、霊魚類か魚長類。えっ、強そうですね?」
 たぶん今、『忘却の揺籠』ヴィクトール=エルステッド=アラステア(p3p007791)も脊髄でものを言っていると思う。ていうか、脳で考えたらこんな生物誕生しない。
 ツッコミ忘れたけどその分類だと哺乳類だね。
「サメ、ゴリラ…?」
『特異運命座標』リーシェ=フィル=シトロニア(p3p008332)は混乱している。無理もない、こんな生物を目の当たりにして正気を保つほうが難しい。
「……なるほど、君の熱意と努力は恐らくよくわかったよ」
 たぶんまだ混乱している。
「友人になれたかどうかはともかく、ああ、そこはともかく!」
 ちょっと持ち直したようだ。
「僕たちも先に進むため、全力で相対させてもらうよ!」
 いや、まだ混乱しているように見える。

●メガゴリラ
 なんでも、異世界じゃあ人間になるって夢を叶えた話はごまんとあるらしい。人間は複雑な生き物だ。あいつらの指先の器用さったらゴリラかたなしだ。そんな複雑な生き物になった伝説が存在する。それじゃあ、それじゃあだ。俺だって、海の生き物に、サメにくらいならなれるんじゃないのか? 心が踊ったよ。世界が初めて、輝いて見えたね。

 船が大きく揺れて、誰もがたたらを踏んだ。
 その一瞬の無防備さに、誰もが緊張を走らせたが、サメゴリラが攻撃を仕掛けてくることはなかった。
 訝しむと、『かかってこいよ』とでも言わんばかりに人差し指で自分の分厚い胸板を軽く突くサメゴリラ。
 なんとフェアな漢であるのか。その実直さに感涙しつつ、戦いは始まるのだ。

●ゴリラタイフーン
 俺はサメになるために特訓をした。海の中で生きていける時間を少しでも長くしなければサメとは言えないしな。人間になった奴らへの敬意を表した潜水1万回。あれは彼らの心に届いただろうか。海の中でゴリラ並のパワーを出す訓練もそいた。そうすると地上ではゴリラ以上になってしまったが、鍛える度に海の生き物に近づいている気がして嬉しかった。

 サメゴリラとブタゴリラの頂上決戦が今始まる。いや、どこの頂かわかんないけど。
「ぶはははっ、ゴリラの腕力とサメの牙、どっちも強ぇが果たしてこの豚を食い切れるかなッ! 来なッ!」
「食うのは後で焼いてからにしてやるよ。ブタは生で食うと腹壊すからな!!」
 迫る大顎。牙の並ぶその口に、ゴリョウも強烈な圧力を肌で感じていた。
 既のところで腕を引っ込めた。そのつもりだったが、右の肘から先がズタズタに割かれている。複雑な傷に雨粒。それでも痛みを感じていないのが、脳がまだ気づいていないのか、それとも戦うために痛覚が脳内麻薬で麻痺しているのか。
 だがいまさら、それで怯むようなブタ生を送っちゃいない。
「ぐっ、この視線は……!?」
 ねっとりと意思を込めて睨めつける。ゴリラである部分も鮫肌立っているに違いない。
 負けじと胸を叩くサメゴリラ。オークの視線とサメゴリラのドラミングが今、嵐の船上でぶつかりあう。
 途中からよくわかんなくなったな……。

「このような出会いでなければ友達になれたかもしれない、ゴリサブロウ様。あ、間違いました? ごめんなさい、ゴリザブロウ様」
「オウ、気にすんなよ。俺もヤマザキさんとヤマサキさんでよく間違えるしな」
 それは異世界の極一地域のみではなかろうかと訝しみつつも、ヴィクトールは仲間の前に立ってゴリラの攻撃を受け止めた。
 内骨格が軋むのを感じる。むしろゴリラパンチ受けて軋むだけとか非常に丈夫である。普通の人はチャレンジしてはいけません。命方面が限界を迎えます。
 ゴリラの長く太い腕から繰り出される殴打。立っているのにパウンドのような角度から放たれる拳を、ヴィクトールは受けきってみせた。
「…………これだけですか?」
 意識が自分から逸れないよう、言葉に挑発を混ぜてやる。
「マジかよ、すげぇな。それじゃあほら、そっちの番だぜ」
 今度は打ってこいとばかりに、ゴリラはどっしりと足と腕を広げて構えてみせた。

 思っていたより自分の立場は重要ではなかろうかと、戦いが始まって早々にジルは気づいていた。
 サメゴリラの威圧感がヤバい。何がヤバいってこの嵐でてんやわんやしてる船員が威圧感に負けるのがヤバい。
 威圧感による混乱から立ち直らせ続けなければ、転覆もありうるという事実に、ジルは危機感を覚えていた。
「驚いてる場合じゃ無いっすよ!」
 サメゴリラへの恐怖に腰が抜けた船員に術式で喝を入れていく。戦いはこっちに任せていいので、操舵に集中してもらえるよう声を飛ばす。万が一にも船がひっくり返ろうものなら、たとえ海中でサメゴリラに勝利したとしても帰還すら危ぶまれてしまう。
 船上を走り回るジル。回復のための術式を編み込みながら、頑張れ、サメゴリラに負けるな、力の限り生きてやれと激励を飛ばしていく。
「僕のゴリラ力で、気張って下さいっす!」
 意識を取り戻した船員は思ったという。
 ゴリラ力ってなんだろう。

「こんな見た目なのに、ゴリザブロウって、ゴリラまるだしで変な名前だよね」
 コゼットがサメゴリラを挑発する。ゴリラの膂力で叩きつけられる攻撃は確かに強力だが、力に対して重要なのは方向性である。それをこちらで定めてやれるのなら、やりようはあった。
「こんな名前だから、どっちも中途半端なんじゃない? そんな適当に付けたみたいな、なまえ捨てちゃえば、いいのに」
「あー……嬢ちゃん」
 ぼりぼりと、サメゴリラが太い指で後頭部を掻く。だが顔がサメなのでやっぱり表情は読めない。
「言い間違いは、良いんだ。こんなナリだし、半端な扱いをされてるのも慣れてるさ。でもな、お袋を馬鹿にしちゃあ、いけねえよ」
 静かな怒りを内に抱えている。そう察せる声音に、ちょっと言い過ぎたかなってコゼットは内心反省した。あとで謝ったら、許してくれるかな。
「お尻ペンペンじゃ、済まさねえぜ」
 それはちょっとセクハラっぽいなと思った。

「そのアゴによる攻撃、さては連打が……よもや、エラ呼吸必須か?」
「よく気づいたな」
 汰磨羈の考察に、拍手を送るサメゴリラ。
「その通り。これは俺がサメになる過程で手に入れた技だ。そのため、使用は本来、海に限られる」
 それでも一度だけ地上で使用できるのは、それもまた努力の結晶だろうか。
 汰磨羈は濡れた船上を滑るように舞うように移動すると、手にした双刀を繰り出していく。
「サメはサメらしく! フカヒレ置いてけ!」
「くっ、避けにくい突起部分を狙うとは、やるな!!」
 ヒレを狙う汰磨羈。サメらしいパーツを切り取れば、海に戻ることは難しくなるのではという算段もあるが、それ以上に高級食材である。ひっついている本体はゴリラだが、それはそれとして高級食材なのだ。
「血抜きはエラを切って行うらしいぞ?」
 完全に魚類を狙う猫の目をしている汰磨羈。魚だ。あれは魚なのだ。
 口の中が涎で溢れてきて、思わず生唾を飲み込んだ。

「海ではサメ、陸ではゴリラと言う感じじゃな……ある意味使い分けておるのかのぅ」
 いくらゴリラとサメの間の子みたいな生物になったとしても、どちらものいいとこ取りとはいかなかったのだろう。華鈴から見て、サメゴリラは船上で戦う限り、サメらしさを見せることは殆どない。威圧感は半端ないが。
「……もしかして、脳も二つあったりするんじゃろか?」
「どうだろうな。同族にあったことがないのでそのへんは検証結果がないしわからん」
 口をついて出た疑問にも、素直に答えてくれるサメゴリラ。なんでこいつ敵なんだっけと思わず首を傾げそうになった。
 繰り出されるゴリラパンチを躱して、毛むくじゃらのボディに剣を叩きつける。天然の鎧を裁断することはかなわないが、それでも確かな手応えは得ていた。
「母からもらった名前を大切にしとるとの事じゃが、その母はどうしておるのじゃ?」
「ああ、田舎で元気にやってるよ。盆と正月には顔を見せてる」
 海の生き物とは。

「そもお前がサメになるにふさわしいゴリラか、見極めなければならんだろう!!」
 カンベエの言っていることはマジで意味不明だったが、サメゴリラの心には響いたらしい。サメゴリラは今までよりも大きな猛りをあげて胸板を強くたたき、それは嵐の中でも皆の心に強く響いた。それはそれはゴリラだった。
 雨の中、しっとりと濡れて毛が艶を帯びているゴリラ。それを見て、カンベエはふと思い立ったそのままを口にした。
「ちなみにゴリラって食えるんでしょうか。あ、筋っぽい? 脳みそはイケる? 成程わし船酔いからか気持ち悪くなって参りましたよ!!」
 言い出したやつが悪い。カンベエの言葉に気持ち悪くなったのか、船員の何名かは口を抑えている。
 どうしてヒトは動物を見ると食えるのかなって言ってしまうのか。野生と理性はわかりあえないということなのか。この場合どっちが野生なのか。わからないまま戦いは進んでいく。
「今日の敵は明日の友、そんな言葉があるように。ゴリラと人間が分かりあえる日も、いつか……」

「生憎、僕に出来るのは僕自身が倒れるまで殴ることだけだ!」
 まさかのゴリラとド付き合いである。どれだけ視線をくぐった戦士であったとしても、ゴリラと正面からしばき合うことができる者はそうそう居ないだろう。リーシェ恐るべし。
 既に、サメゴリラは満身創痍である。同じように、リーシェも綺麗な顔のままではいられなかった。
 如何にサメとゴリラの力を合わせ持っていたとしても、どれだけ気のいいヤツであったとしても、戦いとはいずれ決着がつくものだ。嵐を行く船の上、その時は刻一刻と迫ってきているのである。
「ウオオオオオ――――!!」
 最後の力を振り絞り、ドラミングを行うサメゴリラ。力強さは胸を打ち、ゴリラの雄大さを人々に伝えていく。
「このドラミング力は普通に森でも王者になれたのではないかな……!?」
「王になりたかったわけじゃねえさ。俺はただ、海の生き物に……」
 膝をつくサメゴリラ。それは倒れてもなお、大きな存在であった。
「……いつか、君のぬいぐるみでも作っておくよ」
 なんだこれ。

●GORI
 で、なんやかんやあってサメになった。

 嵐の海域をようやっと乗り切って、一息つけばやることは。
 手を合わせることだった。
「ほら、一応食べることで供養になったりもするから……」
「食えそうか? 食えそうか?」
「ほんとに食べるの??」
「友達になれたかもしれませんが、出会いが違ったので……」
 何をとは言うまい。真偽は隠したほうが良いこともある。

 了。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

海は広い。

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