シナリオ詳細
<虹の架け橋>夢見る心地だにゃん!
オープニング
●Side: Charles
「ええと、保護したアーカンシェルの資料は……と、あった」
幾つも積みあがった紙束の中をごそごそと漁っていた『Blue Rose』シャルル(p3n000032)は目的の羊皮紙を見つけて手に取る。元々最近の出来事であったため上の方にはあったのだが、探す範囲が広いとそれだけで気疲れするものだ。
(ブラウにも整理整頓って言っておかなきゃな……)
まあ、あのひよこ姿では難しいかもしれないが。
羊皮紙に描かれた内容を確認し、探してきてほしいと言われた資料であることを確かめたシャルルは部屋を出る。
先日、妖精たちが妖精郷『アルヴィオン』とこちらを行き来するため使っていた門──アーカンシェルが使用不可となった。あらかじめ決められていた予定だとか、メンテナンスだとかではなく事故事件の類である。
「……魔物に魔種、ね」
羊皮紙の文字をなぞりながらシャルルは呟く。その眉は微かに、しかし剣呑に顰められた。
彼らが無理やりに破壊、突破したアーカンシェル。その姿は既に向こうにあるのだろう。狙いは妖精王か、それとも妖精郷か──いずれにしてもローレットとして放っておけない事態である。
「ブラウ、資料持ってき──」
先ほどまで新たな羊皮紙をずりずりと引きずり出していたひよこの元へ戻ったシャルル。だがそこにいたのは見慣れぬ1人の少年だ。くるりと振り返った彼はシャルルを見て人懐っこそうな笑みを浮かべた。
●Side: Blau
「んむ、む、むむ……!」
ずりずりずり、と新たな羊皮紙を引きずり出したブラウ(p3n000090)は嘴から離すと小さく息をついた。しかし休んでなどいられない。イレギュラーズを早く大迷宮『ヘイムダリオン』へ送れるよう準備を整えなければ。
「ええと、場所はシャルルさんが資料を探してくれているから後回しで……」
てとてと、とカウンターの上を行ったり来たりするブラウは書かなければならないことを口に出す。自らの耳で聞けば整理もしやすいというもので。
「よし、こんなもんですかね」
ブラウは1つ頷くとぴょい、とカウンターを飛び降りた。ここで本来ならぽふんと人型に戻って着地するつもりだったのだが──ブラウにそんな器用なことができるはずもなく。
「ぴよっ」
床でバウンドしてから人型に戻る。尻餅をついた少年ブラウは「いてて」とお尻をさすりながら立ち上がった。
人間姿の方がいろいろと便利なのはわかっているのだが、視線の高さも自らの体も多少の違和感が拭えない。あと素肌というのはいささか寒い。毛皮恋しい。
「早く書きあげて、さっさと戻る。これだ」
小さく呟いたブラウ。そう、流石にひよこ姿でペンは持てないのだった。
ペン先をインクに浸し、ブラウは羊皮紙に向かう。まず深緑と妖精の現状、そして妖精郷の存在。アーカンシェルを開く方法と大迷宮『ヘイムダリオン』について。
「これで、あとは場所と中の様子をまとめて──」
ぶつぶつと呟くブラウの背中に聞き覚えのある声が投げかけられる。その言葉は途中で切られたが、ブラウは振り返るなりシャルルへ笑いかけた。そんな彼に対してシャルルは何か言いたげな、それでいて何とも言えない表情を浮かべる。
「……、……珍しいね? ブラウがひよこじゃないの」
「だってひよこだとペン持てませんからね! どうしました?」
ブラウが首を傾げればシャルルは何でもないと首を振る。そして彼に頼まれていた資料を差し出した。
「ちゃんと情報屋らしい服着てるとブラウもそれっぽいなって」
「それっぽい、じゃなくて情報屋です!」
いつも依頼回してるじゃないですか、と言いつつもブラウの視線は若干泳ぐ。それもこれも自らの体質のせい──あまりにも不運に巻き込まれ過ぎて、自ら現場調査に向かえないが故だ。
シャルルもそれをわかっているのか、カウンター席に座ったブラウの頭をぽんぽんと撫でた。
「ま、出来ないところは皆に頼めばいいさ」
「はい。死にたくないですしね」
彼のギフトはささやかな幸福を運んでくれるけれど、それは死を覆すことにはならない。あくまで『不幸中の幸い』なのである。
依頼書を書き終えたらしく、ブラウがポン! と音を立ててひよこ姿に戻る。その勢いであわや椅子から転げ落ちそうになったひよこを抱き留め、シャルルは羊皮紙を見下ろした。
「完成? ……余白、多くない?」
「まだヘイムダリオンの中がわかっていないんです。というわけで、シャルルさん」
お願いできますか? という言葉にシャルルは視線を落とす。黄色いヒヨコが手元できゅるんとつぶらな瞳を向けていた。
●
「到着、と」
アーカンシェルの近くに居を構える住人達に協力してもらい、術詩『虹の架け橋』でアーカンシェルを開いてもらったシャルル。その先は本来ならショートカットされていた大迷宮だ。
辺りを見渡したシャルルは途端に引きつった表情を浮かべ、回れ右しようとする。しかし──『奴ら』は彼女を逃さない。
──ニャー!!
──ウナァーン!
べしゃあと痛そうな音を立ててシャルルが潰れる。その上に乗る猫、猫、猫。満足気にシャルルの上で丸まり始める猫を押しのけ、シャルルはがばっと起き上がった。
「は、早くローレットに戻らないとにゃん……!」
にゃん?
「にゃん!?!?」
自分の言葉に驚くシャルル。喉や口に手をやるが、特段何かしらの変化はない。ない、が。
(にゃんって何だ!?)
尚も追いかけてくる猫たちから逃亡しながらシャルルは考える。考えると言っても混乱しているので大した思考は巡っていないのだが、とにかく何か言葉を出せば精神的ダメージを食らうことは分かっているので喋りたくない。
まず、第一声は普通だった。にゃんとか言ってなかった。
次に、猫に潰された。やばかった。前も追い掛け回されたが自分は異常なほど猫に好かれる何かがあるのだろうか。引っかかれるのでやめて頂きたい。
さらにその次、にゃんって付いた。
「何でにゃんっ!?」
もう嫌だ泣きたい。
その後、いくら経っても帰ってこないシャルルを保護するため、未完成ながらもブラウの書いた依頼書が張り出されたのだった。
![](https://img.rev1.reversion.jp/illust/scenario/scenario_icon/21873/4ddb6f74a1c9119602bc9053b5f2b4f3.png)
- <虹の架け橋>夢見る心地だにゃん!完了
- GM名愁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年05月08日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
安否の知れぬ仲間を保護するため、深緑にあるアーカンシェルを潜り抜けたイレギュラーズたち。その先に広がっていたのは──何とも恐ろしい光景だった。
(おっきいにゃんこにちっちゃいにゃんこ、人をダメにするふわふわクッション……)
なんということだ、と戦慄する『天穹を翔ける銀狼』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)。わなわなと震える彼だが、その視線はしっかり目の前の光景に釘付けである。
だってこんなの、夢見心地にならないわけがないじゃないか!
「──皆! こいつらの攻撃を受けないように気を付けてにゃん!」
不意に聞こえた声は聞き覚えがある、のだが聞き覚えのない語尾が付いている。そちらを向くと帰ってこないと言われていた件の仲間、『Blue Rose』シャルル(p3n000032)が自らの語尾に身もだえ蹲ったところだった。彼女を追っかけていた猫又ミニことミニにゃんこがにゃんにゃんにゃーん! と嬉しそうに飛びつき潰していく。
「「……」」
皆、理解できただろうか。この惨状を。
「……え、語尾変わる?」
そうだよ『真実穿つ銀弾』クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)。にゃんと言わざるを得なくなるのさ。
しかしここへ突入したイレギュラーズは皆『シャルルを保護しヘイムダリオンの攻略を任せられた』者たちである。ここでの撤退は失敗を意味するのだ。ついでにミニにゃんこに潰されたシャルルが救出できていない。
(うっそーん……覚悟決めるしかな、いのか?)
ないんです。
「俺は漢だ! 絶対、天地がひっくり返ってもにゃんなんて言わないぞ!」
『二人一役』Tricky・Stars(p3p004734)が片割れ、虚が声を上げる。次いで頷くのは自身──もう片割れである稔だ。
「然うとも。俺達がそんな間抜けな姿を晒すはずがないだろう」
仲間から離れるように駆け出した彼の手には闇色の月。周囲を漂っていたダメクッションがふよふよと低空飛行しながら彼らへ向かっていく。他のダメクッションは新たな客人を迎えんと近寄ってきていたが、そう易々とは近づけない。
「妖精達がひどい目にあっているのに遊んでられるか!」
早く妖精郷へと気がはやる『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)はダメクッションたちへ最大魔力を込めて放つ。数個がその勢いに飲み込まれ、しかしてそのふんわり力で持ちこたえたのかこちらもふよふよとサイズへ近寄り始めた。
「……やるしかない、か」
小さくため息ひとつ。クロバもまた動き出す。まずはあそこで潰れている可哀想なシャルルをどうにかせねばなるまい。肉薄して打ち込む一閃は、彼が”斬る”と決めたモノのみを傷つける。
「大丈夫か?」
「た、助かったにゃん……」
よろよろと体を起こしたシャルルに大きな外傷は見られない……が、大きな精神ダメージは追っているようだ。その視線があげられると同時、はっと大きく見開かれた。
「クロバ、上にゃん!」
「え、いっでぇ!?」
クロバが見上げようとした瞬間、後頭部に何かの衝撃。声を上げればびっくりしたのかミニにゃんこが飛び降りる。視線を巡らせると1匹のミニにゃんこがぺっぺと何かを吐き出す仕草をしていた。同時、だらりと頭皮を何かが──恐らくは血が──流れていく感触。
「か、噛みつかれた……にゃ……ん」
思わず出てしまう『にゃん』にぞわわわわ、と悪寒が走る。やべぇ気持ち悪い。あっ他のミニにゃんこもこっち見てる狙われてる。
「うわぁ」
そんな言葉を漏らしてしまったのは1人じゃないはずだ、絶対に。
(かわいいのはかわいいんだけど、加減を知らなさ過ぎてどうしようもないやつね……)
早速犠牲になったクロバへ前髪越しの視線を向けながら『緑雷の魔女』アルメリア・イーグルトン(p3p006810)は魔導書を開く。ぱり、と電気のはじける音がして。
「短期決戦よ、全力で当たるわ!」
うねる電撃が仲間を避け、にゃんこたちを攻撃。その間にも『新たな可能性』ソニア・ウェスタ(p3p008193)の放った聖なる光がクロバを癒した。
(初めての仕事もこなせないようでは、お姉様たちに笑われてしまいます)
自らを奮い立たせるソニアは、しかし──なんとも抗いがたい誘惑に視線が泳いだ。可愛らしいにゃんこを倒すのはどうもやりづらくて仕方がない。おどろおどろしい化け物でなかったのは幸か不幸か、果たして。
だが、どれだけ可愛らしくとも獣は獣だと『蒼海守護』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)は思う。特に魚の海種からすれば天敵であり、まさに脅威であると。帆立貝の海種である以上狙われはしないのだが、これはつまるところ仲間の仇をとる言わば敵討ち──。
(……いえ、違いますよね。宝珠をゲットしにいきましょう)
クロバへ群がるミニにゃんこへ聖なる光を当てるココロ。皆が戦う中、ソニアとココロの視線は誰を支援すべきかとめぐり続ける。
「さぁ、メーコも頑張るんだめぇ」
その中で1人猫又──でかにゃんこと対峙する『すやすやひつじの夢歩き』メーコ・メープル(p3p008206)。彼女の役割は仲間たちが戦っている間、でかにゃんこを抑える事である。遊ぶように幻惑のステップを踏む彼女にでかにゃんこは「遊んでくれるの!」と言わんばかりのじゃれつきよう。メーコが傷つこうが反動で自身が傷つこうがお構いなしである。
「みんなが来るまではメーコと一緒に遊ぶにゃん」
挑発するように言葉を紡いだメーコは束の間黙り込む。あれ、自分の語尾どこ行った。……まさかアイデンティティの危機か?
「にゃ、にゃん」
困っためぇって言えない。メーコはめぇと鳴いてこそなのではないだろうかにゃん。
「でも負けないにゃん。とにかく猫又さんと遊んで耐えるにゃん」
ふわふわボリューミィな髪を揺らめかせでかにゃんこと対峙するメーコ。喋っていても聞いていても同じくらいに違和感があるだろう。けれども仕方がない。そういう空間なのだから。
けれど逆に言えば、最初から「にゃん」と言っていればその他にはなんら困ることのない空間でもある。
「さあ、覚悟するにゃん」
めちゃくちゃ男らしい声で語尾を恥ずかしげもなくにゃんとする男、ゲオルグ。ちなみにまだ攻撃は受けていない。
その背に生み出した光の翼が羽ばたくと、零れ落ちた光が味方を癒すと同時ミニにゃんこたちを切り刻む。だが彼らにとってはまだまだお遊びに近いようで、散々クロバを構い倒すと今度はゲオルグへ突進し始める。
決してモフりたいとか、じゃれつきたいとか思っていたわけではない。そう決して。決して。
猫語のBSはBSにあらずと言うことなのか解けないが、せめて他の不調は整えんとソニアが小さな幸運で仲間を包む。ココロもそういった支援ができないわけではないが、彼女にはソニアに成しえない役目があるのだ。できるだけ専念してもらいたい。召喚によって家族と引き離されながらも、ソニアは自ら進むための1歩を確実に踏み出していた。
そんな彼女に元気いっぱいのミニにゃんこが突進してくる。その勢いはさながらメカ子ロリババアか、いやパカダクラかと思わせるほど。モロにくらって息を詰まらせたソニアへすかさずココロが大天使の救済を施す。
その耳に聞こえるのはにゃんにゃんにゃーんの阿鼻叫喚と──ムニャムニャとダメになっている声。
「俺たちは……負ける、わけには……」
「……ああ、そうだ……とも……スヤァ……」
思いっきり(ダメにされて)負けているTricky・Stars。その体を真白いダメクッションが抱擁し、さあ休んで良いんだよと言いたげなオーラを出している。
「ここはご自宅じゃないですよ! しっかりしてください!!」
ココロの声にはっとした彼らは簀巻きから脱しようともがき始めた。その傍らでさらに包めようとするダメクッションをサイズが切り払っていく。
「俺の刃に斬られてまともなソファに戻れるとは思わないことだ!」
血を纏った刃がクッションを切り刻み、千々にしていく。だがしかしダメクッションもダメクッションとしての矜持があるのか、その白が汚れることはない。ただただ中身だけが漏れ出して残念な感じに変貌を遂げていく。簀巻きから這い出したTricky・Starsのダークムーンがその運命を弄び暗きへ導き、ダメクッションは力なくその場へ崩れ落ちていったのだった。
「悪いが修理している暇はない! 妖精の緊急時だ!」
サイズが次へと視線を巡らせれば、ミニにゃんこに戯れ……遊ばれ……ひっかき傷を作るほどに攻撃を受けるクロバとゲオルグ。彼らを『シャルルより面白そう』とでも思ったのか、シャルルそっちのけで構い倒し始めたのだ。
だがしかしクロバは容赦ない。大気中に分散した生命エネルギーを剣へ集め、光を纏いし斬撃を放つ。
「にゃーん」
ぽふんと虹の宝珠へ変わるミニにゃんこ。クロバはそれを認め小さく口を開いた。
「1匹仕留めたニャ……ん」
「気を抜かないでにゃん、まだまだいるにゃん」
全力の雷撃を叩き込むアルメリアは口を閉ざす。勢いよく突進してきたミニにゃんこがその、かの情報屋などが見たら羨み妬み言えないあれやこれやを画策しそうな──何処とは言わないが──部位へダイブを決めたのである。
ミニにゃんこから素早く距離をとったアルメニアだが、その耳はそこはかとなく──赤い。
(……何でにゃんなの? な、なんかいや、媚びてるみたいでいや!)
しかしどれだけ嫌でも逃れられないのである。それこそ回避が人並外れてる者でもいない限り、今回の作戦では皆「にゃん」と言わざるを得ない。
「ダメにされてしまったところを見られるよりはいいですにゃん」
ひっかき傷からの出血を止めるソニアはさあ次と自らの役目を忠実にこなす。これだけ数が多ければ誰かしらがダラダラ血を流している。幸いクッションはほとんどがボロボロにされてしまったのであと一息といったところだろう。
茨の鎧をまとって応戦するメーコ、彼女を庇うココロを尻目にイレギュラーズたちはミニにゃんこを掃討する。翻弄される様はソニアが立て直し、ココロもゲオルグも補助をすべく仲間の治癒を行うが──いかんせん、数が多い。子どもの如く元気いっぱいである。
もはやなってしまったのだからと必要最低限以外黙り込んだアルメニアがチェインライトニングを撃ち込む。蛇のようにうねるそれは確実ににゃんこズを狙っていた。そこへシャルルの攻撃が、そしてサイズの魔砲が追撃を食らわせ、ぽぽぽぽんとにゃんこたちが小さな虹の宝珠へ変化していく。
「もう少しニャ……ん」
どうしても「にゃん」ではなくて「ニャ」と言いたいクロバ。だがしかしそんなことはにゃんこ様が許さない。
「にゃーん!」
「うにゃっん!?」
突如躍り出たでかにゃんこにクロバが奇声を上げる。だがしかしすぐさま体勢を立て直したクロバはでかにゃんこの前へと立ちはだかった。
「さあ、来るならこぉい!! ……だニャ、」
最後に呻くような「ん」が出てしまったが、これはもはやどうしようもないのか。いやだって「にゃん」より「ニャ」の方がなんかマシだと思わないか思うだろう思うと言ってくれ!!
至近攻撃の格闘魔術で最後のダメクッションを落としたTricky・Starsが仲間たちに追いつくと同時、
「うなぁん!」
でかにゃんこの尻尾フリフリに皆が巻き込まれる。その寸前、稔は主人格を虚へ押し付けた。
「お前が死ね」
「にゃんっ!?」
……お分かりであろう。前者が稔で後者が虚(にゃんこの攻撃を受けた後)である。その精神ダメージは計り知れない。
ココロがさっと距離をとって仲間たちの回復を請け負う。咄嗟にサイズが投げた壊れた木箱にでかにゃんこは嬉々としてその手を伸ばし──ぺいっと手が当たって変な方向へ飛んでしまった。
えっ何遊んでくれるの?
などと言いたげなでかにゃんこであるが、クロバがそこはがっちりガード。アルメニアがにゃんこの雪像を作るかのごとく冷気を敵へ纏わせる。
(……かわいい猫だけど、ここは情を見せちゃダメ。倒し切らないと!)
何せこの猫の──猫たちのせいで自分たちはにゃんなどと言っているのである!
というわけで徹底的にでかにゃんこを打ちのめすイレギュラーズ。勿論その中にはシャルルも混じっているし、ココロの様子を見ながらゲオルグが声援を送ることで支援する。深手とならないよういち早く治癒するのはソニアだ。
敵の疲弊に合わせて魔砲を撃つサイズ。その光を追うようにクロバが駆け、ソウルイーターの力を強制発動して生気を奪う。彼は息つく暇もなくガンブレード内の弾丸へ魔力を装填した。
「さあ、終わりだニャ……ん」
いまいち締まらない決め台詞。しかしそれと共に舞った爆炎は彼の実力をしかと発揮した必殺の連撃だ。
攻めに次ぐ攻めの多彩なる連撃。それを受けたでかにゃんこは──とうとう白旗を上げた。
●
にゃーん。
お目目をバツマークにしてぽふん、と虹の宝珠へ変化した猫又。拾い上げれば猫の瞳にもにたそれがきらりと光る。
「! 道の続きができたぞ」
空間の奥を見たサイズが声を上げる。シャルルも頷き、そっと口を開けて。
「……大変な目にあった」
良かった、にゃんとか付いてない。見てわかるほどにホッとした表情を浮かべたシャルルは、クロバにぽんと肩を叩かれた。
「お疲れさんだ」
「アンタもね」
2人がきょろりと辺りを見回すと、周囲の安全確認を終えたゲオルグが指先で魔法陣を描いている。完成したそれは一瞬光り輝いて。
ぽふんっ!
可愛らしい音とともに現れたのはふわもこフレンズ──手乗り羊のジーク。ふわっふわのそれをモフって彼は幸せそうだ。
「もふもふにゃん……」
((にゃん……?))
1人語尾が抜けないゲオルグに目を瞬かせる2人。恐らくただ癖がついてしまっただけなのだろう。だがしかし、男性らしい男性のゲオルグとふわもこ羊とにゃんの語尾、大変なギャップであった。
(あーでもあれだな)
そのモフりっぷりを見てクロバは思う。柔らかい、ふわふわの布団に埋もれたいな、と。天日干しされた日差しの匂いがする布団とか最高ではないだろうか。いや真新しいふかふかも諦めがたい。
「……今度新しいのを見繕ってみるか」
帰りに見るだけでもしてみようか。そんなことを思うクロバの傍らでは、ソニアがこれまたじーっとふわふわ羊のジークを見つめている。あのにゃんこたちも羊と同じくらいふわもこな毛並みだったと思い返しながら。
(本当なら1匹くらい連れて帰りたかったんですが……)
はぁ、とソニアはため息ひとつ。だってどれだけ見渡そうともにゃんこはいないのだ。悲しいが仕方ない。せめて帰りに道端のにゃんこを眺めて癒されよう。
かくして、先へ進むための道を切り開いたイレギュラーズたちはその報告をするため──そしてシャルルの無事を知らせるため──ローレットへ一時帰還した。
その帰路で「にゃぉん」と鳴き声をあげた野良猫にびくっと肩を跳ねさせた者も数名いたのだが、それはまた別の話である。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
お疲れさまでした、イレギュラーズ。
リプレイ中の猫又ズがにゃんこ表記になったのはゲオルグさんのせい(?)です。にゃんこ可愛い。
それでは、またのご縁をお待ちしておりますにゃん!
GMコメント
●成功条件
エネミーの撃破
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。『戦闘上で不利になるような』不測の事態は起こりません。
●エネミー
・猫又×1
3mほどもある猫ちゃんです。尻尾が2本に分かれています。
人懐っこくじゃれついてきますが、力が強いのでもはや攻撃です。
素早く攻撃力が高いです。防御技術はそこまででもありません。
1度でも攻撃を食らうと語尾に「にゃん」とつきます。強制です。BSではないようなので解けません。
じゃれる:物近単:すごくじゃれつかれます。痛い。【出血】
尻尾ブンブン:物中扇:猫ちゃんが嬉しそうです。【飛】【乱れ】
・猫又ミニ×10
普通サイズの猫ちゃんです。こちらも尻尾が2本に分かれています。
人懐っこくじゃれついてきますが、力加減は上記猫又と同じです。つまるところもはや攻撃なのです。
元気いっぱいHPいっぱい、皆で連携してじゃれてきます。
1度でも攻撃を食らうと語尾に「にゃん」とつきます。強制です。BSではないようなので解けません。
噛みつく:物至単:はぐはぐしちゃいけません!【流血】
突進:物超貫:(カエルが潰れたような声)【体勢不利】
・ダメクッション×10
例の人をダメにするブツです。無機物ながらもふよふよ低空飛行して迫ってきます。
人を包み込んでダメにしようとします。スヤァ。
防御技術に優れています。攻撃力はそこまででもありません。
ダメにする力:神至単:ダメにされます。【怒り】【恍惚】
簀巻き:神至単:スヤァ……【封印】【恍惚】
●大迷宮『ヘイムダリオン』
妖精郷アルヴィオンと混沌の間にある大迷宮。妖精郷の門『アーカンシェル』はこの迷宮をショートカットする機能を持っていました。しかしアーカンシェルが使用不可になったことで、正規ルートであるこちらを突破することになります。
ヘイムダリオンは全てのアーカンシェルと繋がっており、虹の宝珠と呼ばれるアイテムによって先への道が開きます。大迷宮には独特な空間がいくつも広がっており、果ての迷宮と似ているとも言われています。
●NPC
『Blue Rose』シャルル(p3n000032)
元精霊の旅人。皆様が到着するころ、エネミーたちに追い掛け回されています。
戦闘はそこそこできます。皆様から指示があればその場で従います。
●ご挨拶
愁ですにゃん。
難易度はNormalですので、頑張らないとクッションと猫ちゃんにダメにされますにゃん。お気をつけてくださいにゃん。
虹の宝珠は猫ちゃんを倒すとドロップしますにゃん。
ご縁がございましたら、よろしくお願い致しますにゃん。
Tweet