PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<虹の架け橋>絆色ミーティア

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 星屑散りばめた夜空の回廊。
 絆の色――

 ギィギィと重い扉を開ければ、其処にはネプチューン・パープルの宇宙が広がっていた。
 足下には白い光の粒が集まって、路となり。長く長く何処までも続いている。

 あなたは一歩前に踏み出した。
 ペールホワイトの光輝がふわりと舞い上がり視界から消えていく。
 後ろにあった重い扉はギィギィと音を立てて閉まり、光の球になって霧散した。
 不思議な場所である。

 薄く光る路をゆっくりと歩いて行くあなたの足下から、ペールホワイトの光が浮かんできた。暖かく何処か懐かしい。
 その優しい光を覗き込めば。在りし日の自分と大切な相棒との思い出が映し出されている。
「これは……」
 街の武器屋で見出したものか。忘れられない死闘の末、手に入れた宝物か。
 森の中で出会った獣か。封印されていた妖精か。

 或いは。光の中に写るのは、まだ見ぬ出会いの欠片だろうか。
 あなたはその光にそっと手を伸ばす。

 星空の回廊。
 思い出を連れて――


「大迷宮ヘイムダリオンへ潜って、虹の宝珠を手に入れるのが、今回の目的、です」
 紫の瞳でイレギュラーズを見渡した『Vanity』ラビ(p3n000027)は地図を広げて頷く。

 妖精郷アルヴィオンへ通じる妖精門(アーカンシェル)が何者かに破壊、突破され、機能を停止させたという情報がローレットに舞い込んできた。
 多くの門をイレギュラーズが守り調査したからこそ妖精門が機能していない事実が分かったのだろう。
 機能を停止させているということは、門からこちらに来ていた妖精達も帰ることが出来ない状況らしい。

「だから、皆さんには、妖精門からここを通って、この扉の先にある、虹の宝珠を入手して貰いたい、です」
「扉の先、全部に宝珠があると?」
 あなたはラビに疑問をぶつける。
「はい。同時に開けないと、だめ、です」
「一人ずつでも大丈夫なのか? 罠やモンスターが居るんじゃないのか?」
 矢継ぎ早に質問してくる別のイレギュラーズにラビは首を振った。
「危険は無いです。ここは『星空の回廊』と呼ばれる場所、です」

 ――救世主、現る時。
 星空の回廊が開かれる。
 可能性の獣であるメシアの魂の記憶を対価に宝珠は顕現する。
 ただし、一人では足りない。二人でもまだ足りぬ。
 皆の魂が揃わねば宝珠は現れぬ。

「今回の妖精門を守護する村の伝承、です。たぶん、そんなに難しくない、です」
 ラビはこくこくと頷いて、あなたに拳を向けた。
 現地に行ってみれば分かるということなのだろう。
 激励の拳にコツンと手をあてて、あなたは深緑は大迷宮ヘイムダリオンへと向かったのだ。

GMコメント

 もみじです。初めてのEasyシナリオです。メルヒェン!
 相談期間3日です。ご注意ください。

●目的
・虹の宝珠を入手する
・そのために、武器やペット、お供の妖精等の思い出を語る

●ロケーション
 星空の回廊。ペールホワイトに光る路が続いています。
 路の途中で浮かび上がる光輝の中に相棒との思い出が映し出されます。
 どのような内容かは各自で違います。

●描写内容
※いずれか1つだけ描写します。

1、武器やペットとの出会い。忘れられないエピソード。
・自分で決めた武器等の相棒との出会いをプレイングに書く
・過去に起きた事

2、まだ見ぬ、新しい武器(盾やアクセサリー可)との出会い。おまかせ。オリジナルエピソード。
・アドリブしかありませんので、何でも許せる人向け。
・文字数は少なくてOK
・テンプレート
 武器の種類:
 好きな系統の色:
 どんな出会い方か希望があれば

●ポイント
・相談期間3日
・相談無しOK
・武器語り
・他人のPCは登場しません
・一人ずつ個別に描写します
・2なら、オリジナルの武器の名前と設定とエピソードを、もみじが手がけます。

 あなただけの絆の物語を彩ります。

  • <虹の架け橋>絆色ミーティア完了
  • GM名もみじ
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年04月29日 22時06分
  • 参加人数8/8人
  • 相談3日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
あたしの夢を連れて行ってね
ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂
ブーケ ガルニ(p3p002361)
兎身創痍
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
蒼穹の魔女
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
ハンナ・シャロン(p3p007137)
風のテルメンディル
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃

リプレイ


 拳を上げるラビの手にコツンと音を鳴らした『蒼の楔』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)は高い扉をゆっくりと開けた。
 ネプチューン・パープルの夜空がヨハンナの視界を覆う。
「星空の回廊――まるで本物の夜空みたいで神秘的な場所だなァ」
 一歩踏み出し光輝の路に靴底を落とせば、背後のドアがゆっくりと閉まった。

 ――――
 ――

 アッシュグレイの雲が空を覆っている。
 しんしんと降り出した雪はヨハンナの頬に当たって水滴へと変わった。
 雪を踏む音が耳に届く。
 寒さに赤くなった頬。冷たくなる指先。
「っ……!」
 なんて、見覚えのある風景なのだろう。
 煉瓦の色も。路地裏の薄暗さも。アガットの赤を帯びる液体が誰のものかも。
 知っている。
 忘れる事など出来はしない。復讐の悪としての原風景。

 ヨハンナの足が前に進むことを拒んだ。
 これ以上進んではいけないのだと本能が叫んでいる。
 けれど、己の意思とは裏腹に。
 薄暗い路地裏へヨハンナは足を踏み入れた。

 そして、見た。
 アガットの赤に濡れた地面を。
 何も無い地面だけを見た。
「な、んで」
 ヨハンナは目を見開く。
 あるべきものが其処には無かったからだ。
 何故。
 其処にあるはずの『レイチェルの亡骸』が無いのか。
 翌朝、憲兵に発見された妹の遺体を、この手で弔ったはずなのに。

 視線を上げる。
 血溜まりから靴跡が数歩続いていた。
 あの男の物ではない。ヨハンナの物でもない。
 この血溜まりから何処にも足跡を付けずに歩けるのは、ただ一人しかいない。

 ヨハンナの呼吸が乱れる。
 本当にあの亡骸は妹のものだったのか。
 誰かよく似た別の誰かだったのではないか。
 外見を似せる事なんて造作も無い。

 もし、レイチェルが生きていたのなら。
 時折幻聴のように聞こえた声が本物なのだとしたら。

 これは夢幻。揺らぎの幻影。
 けれど、ヨハンナの視線の先には朱殷の赤が煌めいて――

『アガットの欠片』
 血を固めたような深い赤を孕んだ石の欠片。割られた形跡がある。何処かに片割れが存在しているのかもしれない。パンドラの箱を望むのならば――



 目の前に広がる紫の宇宙を青灰の瞳が見つめていた。
 何処までも続く星の回廊に『殴り系幻想種』ハンナ・シャロン(p3p007137)は胸を弾ませる。
 ただ、光輝溢れる足下の路を歩くだけ。
 瞳に映り込む光景は不思議で。
 けれど、ハンナにとっては少しだけ退屈なもの。

「シャハルなら何か気が付く事もあったかしら」

 双子の弟は知識が豊富だから、きっとこの景色からも色々な事を見出すのだろう。
 拳が先に出てしまいがちな自分とは正反対の彼と一緒ならば、楽しい思い出も二倍になったのに。

「いつもこうして、二人で森の路を歩いたっけ」

 幼い頃に歩いた抜け道。
 ディープ・グリーンが視界いっぱいに広がる路を。手を繋いで歩いた記憶。
 そこで出会った精霊との約束をハンナは思い出していた。
 何故今まで忘れていたのだろう。

 アクアマリンを讃える泉の傍。
 月光に輝く花を慈しむように寄り添っていた老木の精霊。
 その身は瘴気を吸収し浄化すると語る、嗄れた声を覚えている。

『――この身が枯れる時、瘴気は解き放たれる。『恵みの森』よ。どうか、その時は』

 森の均衡が崩れる前に燃やしてほしい。
 命潰える樹精に託された願い。
 集められた澱を一つの剣にして、持っていていてほしい。
 その中には悲しみの無念と。僅かばかりの希望が一欠片入っているのだという。

 ああ、きっと。私は駆けるのだろう。
 貴方の元へ駆けるのだろう。
 もう『その時』は目の前に迫っているのだから。
 そして願いを聞き届ける。必ず聞き届けるから。

 どうか、どうか――
 待って居てほしい。
 貴方の最期の言葉を聞かせてほしい。

 ――
 ――――

 ハンナは光輝の幻影から意識を浮上させる。
 先の未来を見る事は出来ただろう。
 けれど、ハンナは樹精の最期の言葉を聞かずに戻って来たのだ。
 なぜなら、自分の耳で確かめたいから。
 青灰の瞳でハンナは光輝の路を蹴り出した。

『森澱サンドリヨン』
 ティール・グリーンの刀身を持つ細身の曲剣。森の澱が剣の中に封じられている。揺らめく黒き邪念を打ち破り、いつの日か灰被りの原石が輝くことを祈って――



 ホリゾン・ブルーの空に薄くおぼろ雲が掛かっている。
 空に手をかざした『蒼海守護』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)は、瞳を細めて陽光の温かさを噛みしめていた。
 薄桃色の花びらがココロの視界に入り込む。
 ひらひらと揺れて落ちていく花びらを追えば、いつの間にか学校の校門へとたどり着いていた。
 視線を上げると、大きな校舎。
「今日からここで頑張るんだ」
 ぎゅっと手を握りこんで気合いを入れる。

 そこは、医療を学ぶ学校。
 人と関わることで、言葉を交すことで、ココロの中に訪れた変化。
 この手で人の営みを、命を助けたい。
 もしかしたら、この手からこぼれ落ちる命もあるかもしれない。
 けれど、自分に医学の知識があれば、少しでも救える魂が生まれるはずなのだ。
 
 そうしてココロは医学校の門をくぐった。

 ――――
 ――

「うーん……」
 小さな声でうなるココロ。
 授業で出てきた難しい知識に少女の頭はパンク寸前だった。
「こんなに難しいなんてぇ……!」
 もっと実践的なものなら依頼で使えそうなのに。
 けれど、知識を正しく識る事は多角的な思考を生み出す鍵となる。

 だからココロはこの学校に併設された図書館へと足を運んでいた。
「魔法、魔法っと」
 自分の得手から難しい知識を紐解くのは有効である。
 ずらりと並ぶ魔法理論書の背表紙をゆっくりと眺めるココロ。

 ザザザ……

 ココロの耳に波の音が入ってくる。
 呼ばれるように。引き寄せられるように。その音が聞こえる場所へと近づいていく。
 図書館の中に潮の香りが溢れ、足下を波が駆け抜けた。
 これは幻影だ。
 魔力を持った本が主を喚ぶ時の声だ。
 さみしがり屋でひとりぼっちの海の歌。

「やっと、見つけた」

 冷たい海の色をした。深いふかい海神の子守歌。
 ゆっくりとココロの指先が魔導書の背表紙に触れた。

『揺蕩う海音』
 ブルーゾイサイトが散りばめられた魔導書。深く冷たい海の中で揺蕩う子守歌。織りなす術式は、優しく包み込むように癒やしの揺り籠をゆらす。



 赤――
 全てを塗りつぶして尚、赤く。
 ぼやけた視界は真っ赤に染まっていた。

 目を瞬いた『Ende-r-Kindheit』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)は、覚束無い視界の中でゴポリという音を聞いた。誰かが目の前で咳き込んでいる。
 もう一度、目を瞬く。
 ゆっくりと焦点が合わさって像を成した。

 見慣れた顔がそこにはあった。
 初めて好きになった人。
 アルフレッド。

 今でも出会った日の事を鮮明に覚えている。
 薄汚れた路地裏で、虚ろな瞳をしたミルヴィにパンを分け与えてくれた。
 あたたかな眼差し。この世で一番美味しいと思えた一口。
 煤けた野良猫みたいなミルヴィを救い上げてくれたひと。

 そんな彼が。なぜ目の前で血まみれになっているのだろう。
「……そんなモンに、負けるな」
 苦しげに言葉を吐くアルフレッド。
 負けるなとはどういうことなのだろう。
 ブルブルと右手のイシュラークから武者震いが伝わってくる。
「はぁ、はぁ……お前は優しい人間だ、お前の、音楽と踊りが……俺は大好き、だ」
 ミルヴィの意思とは裏腹に。右手のイシュラークはアルフレッドの腹を突き刺した。
「……っ!」
 アルフレッドの肩越しに見える死体の山。
 状況は。全て肯定している。
 ミルヴィがこの惨状を作り出したのだと。

「泣くな、笑え……っ」
「だっ、て……!」

 血まみれの手でアルフレッドはミルヴィの頬を撫でた。
 命の灯火が消えるまで、懸命に愛を示したのだ。

 イシュラークの呪いは薄れ。
 昇華していくはずの運命は。悪戯に弾ける。
 魔種になったアルフレッドは再びミルヴィの前に現れた。
 あの時のまま。
 けれど、決して戻れない時の流れは残酷に。堕ちていく。

 イシュラークに伝うアガットの赤も。微笑みながら死んでいくアルフレッドも。
 あの時と同じだというのに。
 ミルヴィだけが未来に進んでいく。
 涙はゆっくりとこぼれ落ち、地面に小さな染みを作った。

 全てを肯定し、微笑んだアルフレッドの魂は。
 イシュラークに宿ったのだろう。
 鼓動と悲しみを抱えて。
 ミルヴィは明星と共に歩いて行く――



「ふふ、ラビちゃんにグータッチで鼓舞されたんなら、頑張らんとねえ!」
 萌黄の瞳を細めた『兎身創痍』ブーケ ガルニ(p3p002361)は小さな同胞に手を振った。
 扉を警戒しながら覗き込むブーケにラビはくすりと笑う。
 帯の下に見える黒い尻尾が愛らしい。

「あかん、やっぱり気がゆるむわあ」
 ほわんと表情を緩ませたブーケは星屑の空を見上げる。
 月ばかり見上げていたから。散りばめられた瑠璃の夜空は何だか新鮮で。
 鼻先が何だかくすぐったい。
 白い光輝を見つめて。神話を思い返す。
「女神様のこぼれた母乳なんやっけ」

 ぼんやりと、母親の事を考える。
 記憶も朧気で曖昧だけれど。ある日、どれだけ待っても帰ってこなかった母親のことを。
 子供ながらに聞いてはいけない気がして。親戚の家では口を噤んでしまったのだ。
 父親は物心つく前から居なかったけれど。あの日出て行った母は元気にしているだろうか。
「今も生きてるんかなあ」
 誰に聞かせるでもなく。ぽつり零れた言葉。

 いつも怒るか泣いている母親が、珍しく酒に酔って紡いだ言葉はよく覚えている。
『遠くに小さく海が見えるからお父ちゃんとこの家に決めてん』
 嬉しそうに微笑んだその母の瞳。濡れたような赤い目は今でもはっきりと思い出せる。
「元気かなあ。元気やといいねえ」
 何処に居るかも分からない人を捜し当てるには、途方もない時間が掛かるだろう。
 諦めに似た無情感。

「ってあかんあかんあかん」
 ぱたぱたと手を振って、頬を染めるブーケ。
 星屑の空に向かって指を口元に当てた。
「変な話してもうたのは、内緒ね?」
 返事をするかの様に流れ星が細く流れていく。
「心にもあらで憂世に永らえば……って言うけど、なんだかんだ生きるもんやねえ」

 ぼんやりと漂うあたたかい感触。
 母の胸に抱かれて揺蕩うようで。
 手を伸ばそうとしても、届かない。
 言葉を成そうとも。口から漏れるのは泣き声だけ。
 母の優しい声が聞こえた気がした。

『来路花の香玉』
 赤い小さな花が象られた丸い香玉。甘くて優しい香りがふわりと広がる。その香りは誰かの面影を感じさせるのかもしれない。



『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)の赤い瞳に縁日の灯りが映り込む。
 夜空は星屑を煌めかせ、祭り囃子の太鼓が耳を擽った。
 橙色の灯りは提灯から零れる優しい光。
 元の世界によく似た場所。
 懐かしさと同時に一抹の寂しさを感じてしまう。
 けれど。と焔は首をぶんぶんと振った。
「お祭り!」
 はしゃぐ焔の傍らには友人達が居る。
 見慣れたいつものメンバーに焔は安心した表情で笑った。
 無辜なる混沌に来てから出来た親しい友人たちに焔は信頼を寄せている。

 金魚掬いに、射撃、輪投げ、コマ。
 懐かしい縁日の屋台ばかりで、焔の感情は高ぶって。次第に髪の先が燃えていった。
「うん? 解れてる?」
 友人が指さした先。巫女装束の袴の端が解けて、少し破れていた。
「ううーん。替え時かなぁ」
 けれど、この衣装は元の世界でお世話になった神社の人達が作ってくれた思い出の品だ。
 簡単に捨てたりはできない。

「あら、お嬢ちゃん。大分ボロになってるじゃないか」
「……ボロ」
「よく使い込まれてるって意味さ。こっちにおいで」
 巫女服を着た女に手招きされるがまま、縁日の喧騒から離れて神社の中に入っていく焔。
 桐の箪笥から引っ張り出してきた着物を並べる巫女。
「どれがいい。好き名なものを選んで良いよ」
「え、でもそんなにお金持ってないよ」
「はは、良いのさ。いっぱい持ってるからね。一つぐらいお嬢ちゃんにあげるよ」
 巫女は手を広げ、選択を促す。

 萌黄に空色、京紫に一重梅。
 袴の色も考えなければならないか。

「ああ、これなんかどうだい」
 深緋に白と金の刺繍が施された華やかな柄の着物と、紫紺から藍色への移ろいが美しい袴の組み合わせ。
「わぁ! 綺麗!」
 色彩の調和に目を輝かせる焔。

 早速着付けてもらい、鏡の前でくるりと振り返る。
「よく似合ってるよ」
「えへへ」
 嬉しそうな焔の笑顔に場の空気がほんわかと和んだ。

『深緋紫紺』
 深い緋色の生地に白と金の刺繍が華やかに施された着物。袴は紫紺から藍色へ移ろい、白い花が刺繍されている。焔の赤い髪を引き立てる色彩。



 星空の回廊へ。白い光輝の路を往き。
 かざした手の先。
 溢れる光に目を瞑った『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)は、ゆっくりと瞼を開ける。

 高い煉瓦が折り重なり、光も届かない薄暗さ。
 遠くから聞こえる怒号と何かが割れる音。
 薄汚いタープの下に物乞いが膝を抱えている。
 よくあるスラム街の風景だろう。

 これはきっと誰かの夢だ。
 未来ではない過去にあった記憶の反芻。
 何故なら、誰もアレクシアの事なんて見えていない。
 少女は外側からの観測者だった。

 ふと、横を見れば少年が立っていた。
 灰色の髪からピンと尖った兎の耳が覗く。
 アレクシアと同じ碧眼の少年。
 その少年を追いかけて、数人の男達が走ってきた。
 やれ、泥棒だ。やれ、殺してやるだ。罵詈雑言を吐き連ね、少年を追い立てる。
 弱肉強食の世界で、弱き者は奪われるだけ。

「やめて!」
 アレクシアが駆け寄り暴漢達に叫んでも誰も聞こえていない。
 目の前で行われる凄惨な暴力は見るに堪えないものだった。
 肺を刺され、腹を割かれ、それでも少年は手を伸ばす。
 目をくりぬかれて尚、生きようと足掻き続けた。

 その視線をアレクシアは追う。
 高い煉瓦の隙間に見える、歪な三角。
 少年が生涯追い求めた。希望の蒼穹。

「まだ……」

 少年は手を伸ばす。空を見たいと。まだ、諦められぬのだと。
 その命の灯火が消える寸前の指先に。
 アレクシアはそっと触れた。

 刹那。
 少年の身体は青いガラスとなって弾ける。
 粒子は二つに別たれ。
 一つは何処かへ歩き出した。
 もう一つはこの場所に座ったまま。

『ねえ、三角の空色、綺麗でしょ』
「うん綺麗だね」
『君に見つけてほしかったんだ』
「そっかぁ、待たせちゃったね」
『いいよ。そのかわり僕のお願いきいてくれる?』
「きけることなら」
『この場所から連れ出して欲しいんだ。沢山のまだ見てない空を見たいんだ』
「うん。分かった」
『ふふ、ありがとう』

『空色の瞳』
 まだ見ぬ空を。希望の蒼穹を追いかけた少年の願い。空色の石が埋め込まれたブレスレット。三角の魔法陣が展開し所有者に加護を与える。



 ペールホワイトの眩い光が『特異運命座標』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)の角膜を刺す。

 ベネディクトは一本の槍だった――

 青銀に輝くルナディウムで作られた槍身は美しく洗練されて扱いやすい。
 折れず曲がらず幾千もの敵を打ち倒し、何時しか時の王に献上される程、栄華を極めた。

「出陣――!」
 槍の持ち主である王が馬上から突撃の合図を吠える。
 白き馬を繰り、先陣を切って駆けていく姿は、民を鼓舞し士気を高めた。
 その民たちの視線の先に輝くのは、ベネディクトだった。
 王と共に敵の首を撥ねた。王と共に民の命を救った。
 栄光は、王による統治は、長く続いた。
 闘争本能を鈍らせる程には平和で豊かな暮らしだった。

 けれど、どれ程の繁栄を遂げようと、終わりは必ずやってくる。
 王は戦った。民は戦った。
 抗い、叫び、それでもどうしようもなく。終焉は訪れる。
 それをベネディクトは見ていた。
 王の傍らで、彼の命が潰えるまでずっと傍に居たのだ。

 気付けば、ベネディクトは敵国に渡っていた。
 美しく気高い王の象徴たるベネディクトを奪う事で、残った民を従わせる魂胆なのだろう。
 国境の城壁に配された、ガーディアンにベネディクトは伴われた。
 王が愛した民を。王が護った民を。
 この身で突き刺し引き裂く苦痛を、幾度となくベネディクトは味わった。

 何千万もの民を殺し。血を浴びて。
 それでもベネディクトは青銀に輝く槍身を失わなかった。
 月の加護を受けた神槍を穢すことは、何人にも叶わないのだろう。

 いつしか。
 敵国も滅び。文明さえ潰え。
 古代のものと称されるようになっても。
 ガーディアンとベネディクトはその場から動けなかった。

 幾星霜の時が過ぎて。
 朽ちていく己の身。輝きは失われ。折れた柄は足下に転がっている。
 きっと誰にも見つかること無く。星の終わりを迎えるのだろう。
 願いがあるとしたら。
 もう一度、誰かと共に戦場を――

『曇銀月』
 煤けた槍身は折れている。かつての栄光を忘れること無く身に刻み、朽ち往くばかり。拾い上げる者あるならば。銀月は再び輝くのだろう。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。如何だったでしょうか。
 いつか出会うかもしれないパンドラの箱。それを開けるかは皆さん次第です。

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