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シナリオ詳細

逆光騎士団と終わらない魔女裁判

完了

参加者 : 8 人

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オープニング

●魔女裁判は終わらない
 天義、ノフノ。この街は逆光騎士団によって守られ、平和と秩序が保たれていた。
 騎士は民の模範となり、民のために傷つき、民のために戦い、民の平和をなによりも重んじた。
 だがいまは、その歯車がひとつだけ狂っている。
 たったひとつだけ。
 それだけで、街では魔女裁判がとまらない。

「初めてこの街に触れる方もいるでしょうから、ジブンから説明します」
 幻想の外れ、天義との境界にある酒場の個室にて。
 そう語ったのはプリクル。逆光騎士団に所属し『茨の騎士』の称号をもつ……いや、もっていた女だった。
 ベリーショートだった金髪は長く伸び、片目を隠してしまっているが、目にはかつての生気が戻っているようにも見えた。
「あるときバイラムという男が街を変えました。イレギュラーズや、それに協力する人間を『魔女である』と断定し、その疑いひとつであらゆる反証を却下して対象を火あぶりにする。そういう魔女裁判が起こるようになりました。
 ジブンの逆光騎士団もその標的にされ、拘束された仲間を助けるためにジブンはローレットの皆さんと共に動きました。けれど……」
 目に暗い光をおとして、プリクルは顔を背けた。
「ジブンたちは知らなかし、気づかなかったのです。バイラムに怪物が寄生していたこと。
 その怪物が次の寄生対象として逆光騎士団の聖女や先輩たちを狙ったこと。
 街の中心だった逆光騎士団は、イレギュラーズやその協力者を魔女であるとして次々に処刑し始め、今も街には黒い煙が上がっています。
 なすすべはないと……そう思っていたのですが」
「奴らを切り崩す方法が見つかった。そうだな?」
 部屋に、四人の騎士が入ってきた。
 カリアン、コディマリー、アンスズ、リンゴスノー。いずれも逆光騎士団の先輩達である。
 リンゴスノーは己のこめかみに指を当てて見せた。
「あの裁判の日以来、俺たちのアタマが例の怪物にいじられていたらしい。
 『騎士は民の模範となり、民のために傷つき、民のために戦い、民の平和をなによりも重んじる』……誓いをそのままに、イレギュラーズとその協力者が悪しき魔女だと信じて疑わなくなってしまっていた。
 俺たちは民を守るため、本気であんたたちに剣を向けたことになる」
「けど、怪物は寄生対象が使えなくなると離れる性質があるみたいね。私たちを【不殺】攻撃によって倒したことで、偶然にも突破口が見つかった形よ」
 アンスズが壁に寄りかかって腕を組む。
「私たちとプリクルは、同じ逆光騎士団のメンバーを寄生状態から解放するために動くつもりよ。
 とはいえ相手は人数的にも組織規模的にも大きすぎるわ。少しずつ切り崩すために……さしあたって、その作戦に協力してもらいたいの。もちろん『お願い』なんてしないわ」
 アンスズは袋に詰まったコインをテーブルに置いて、イレギュラーズのほうへと差し出した。
「これは正式な『依頼』よ。といっても、プリクルをここまで逃がしてくれたのはあなたたちだし……やり方はあなたが選んでいいわ。私たちは、それに合わせる」

●ケーキを切るように
 怪物の支配地域を少しずつ切り崩す。それが今回の作戦意図である。
 逆光騎士団はあれ以降ノフノ周辺の街に派出所のような支部をたて、民を守っているらしい。
 働き方は今までと変わらないが、民が全体的に『魔女への増悪』を持ち続けているという変化があるようだ。
「ここでいう『魔女』はイレギュラーズとその協力者全般を指す用語です。
 一般的……というとヘンですが、箒に乗って空を飛んだり黒いローブを被ったりするひとを指すわけじゃありませんし、性別も関係ありません。
 とにかく、そういうもの全般を憎むことで、むしろ彼らの精神衛生や民同士の協力やコミュニケーション能力が上がっているようにも見えました」
 偵察が得意というコディマリーはフードのはじをひっぱりながら語った。
「私たちが攻撃可能な派出所は三箇所。
 そのうち一箇所をカリアン、コディマリー、アンスズ、リンゴスノーの四人が担当します。
 残り二箇所をイレギュラーズとプリクルが担当してください」
 けど……と、カリアンが難しい顔をして付け加えた。
「魔女の疑いをかけられて投獄されている人たちがいる。過去にイレギュラーズに協力的だった人々だ。
 彼らは遠からず魔女裁判にかけられて処刑されてしまうだろう。
 できれば助けたいが……位置的に派出所の攻略を後回しにはできない。仮にトライするなら、同時に攻略する必要があるだろう」

 一旦整理しよう。
 イレギュラーズはプリクルを加えた9人でチーム編成を行う。
 この時、今回の達成目的に『協力者の救出』を含むなら3チーム。含めないなら2チームで作戦にあたることになる。
 当然チームをわけたほうが個々の戦力が下がるので、失敗リスクは上がるだろう。
 カリアンは最後に付け加えた。
「俺たちは、協力者の救出が今回最後のチャンスだとまでは思っていない。
 いち早く助けたい気持ちはもちろんあるが、安全策をとりたいというのが四人の意見だ。
 プリクルは……」
 ちらりとプリクルを見ると、深く呼吸をしてプリクルが頷いた。
「ジブンは、ローレットのセンパイたちを信じてます。センパイの選択に、ついて行きます」

GMコメント

■オーダー
・成功条件:派出所AおよびBの攻略
・オプションA:すべての騎士を不殺攻撃で倒す
・オプションB:半数以上の騎士を不殺攻撃で倒す
・オプションC:協力者たちを救出する
・オプションD:?????

 相手のHPは視認できないものとします。つまり『トドメだけ不殺攻撃』といったプレイングは無効扱いになります。不殺攻撃を徹底したい場合は、戦闘のどの当たりから不殺攻撃にシフトするかをリスクと相談して判断しなければなりません。当然戦闘難易度は上がります。

■それぞれの戦闘フィールド
 派出所への突入、ないしは街への侵入をもって戦闘を行います。
 騎士達もなまじ優秀なのであからさまに侵入すれば撃退に動いてくれるでしょう。
 協力者たちの収容所は騎士とは別の兵隊が防衛しています。
 戦闘難易度が若干低く、推奨人数2~3人といったところです。

■派出所Aの戦力
●黒風の騎士。黒いライダースーツ風鎧。超高速戦闘
超物攻。CTFBやや高。EXA超高。
・付自単アーリーデイズ
・物至単【連】攻撃
・物至単【連】【ブレイク】【必殺】【恍惚】攻撃

●赤杭の騎士。赤い大鎧。パイルバンカー使い。
超物攻。防御、抵抗やや高。
・物至単【災厄】【麻痺】【自カ至】
・物至単【防無】【恍惚】
・物中単【ブレイク】

●朱金鳳の騎士。朱金鎧と赤いボウガン。
ハイバランス+超抵抗+高EXA
・神至単【毒】【猛毒】【致命】
・神中単【弱点】【狂気】
・神遠単【治癒】

■派出所Bの戦力
●紫電の騎士。鋼鎧に電撃の剣。
高回避、高命中、P【反】
・物至単【災厄】【麻痺】【自カ至】
・物至単【泥沼】【停滞】
・物至単【必殺】【恍惚】
・物至単【防無】

●氷華の騎士。氷の大鎧。巨大パンチグローブ。
高回避、高防御、高抵抗。
・物至単【乱れ】【凍結】【麻痺】
・物至単【ショック】【ブレイク】
・物至単【恍惚】【致命】

●虹蝶の騎士。蝶を操る魔法使い。
高回避、高防御、高抵抗、高再生、飛行
・物至単【出血】【痺れ】
・物近単【致死毒】【炎獄】【失血】【致命】
・物遠単【乱れ】【崩れ】【ショック】

●銀弾の騎士。大口径拳銃二丁。銀の弾丸使い。
ハイバランス+高命中。
・物至単【弱点】【出血】
・物中単【防無】【ブレイク】
・通常攻撃レンジ4

■収容所の戦力
●兵隊×5
通常攻撃レンジ1

このエリアでは兵士を倒し、鍵を奪って収容所を開放。協力者たちを馬車等に乗せて運び出すまでを必要とします。
協力者はおよそ4~5人とみられており、馬車1~2台あれば充分とみられています。
撤退時、別の兵隊が追いかけてくる可能性もあるので、チェイスバトル(逃走側)の用意もしておいてください。

■オマケ
逆光騎士団過去のシナリオ
とくべつ知っていなくても大丈夫です
https://rev1.reversion.jp/scenario/replaylist?title=%E9%80%86%E5%85%89%E9%A8%8E%E5%A3%AB%E5%9B%A3&penname=&type=&attr=

  • 逆光騎士団と終わらない魔女裁判完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2020年04月20日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アラン・アークライト(p3p000365)
太陽の勇者
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
シラス(p3p004421)
超える者
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
サクラ(p3p005004)
聖奠聖騎士
ルリ・メイフィールド(p3p007928)
特異運命座標

リプレイ

●『魔女』はいつもそこにいる
 困難に惑うとき、理不尽に踏みつけられたとき、やり場のない怒りや憎しみを、ひとは『魔女』にぶつけるという。
 時にそれは人を傷つけた罪人であり、時にそれは過ちを犯した悪人であり、時にそれは無実の罪をかぶせられた被害者である。
 『魔女』は誰にでもなれて、誰にでもかぶせられる。
 であるが、しかし。
 きわめて不自然なことに、ネメシス聖教国ノフノ市を中心に『イレギュラーズとその協力者は魔女である』という説が強く信じられ、市民はイレギュラーズにおびえ騎士達は強い正義感と使命感からイレギュラーズと協力者を断罪し続けるという異常状態が続いていた。
 それが怪物の洗脳であると結論づけたローレット・イレギュラーズは、洗脳を解いた騎士数名の助けを借りながら怪物からのノフノ奪還をめざし戦い始めたのであった。
「プリクルとは魔女集会の夜以来だが、あれから色々あったんだな……」
 これまでの報告書を読み、『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)は深く目を閉じた。
 失ったもの。取り戻せるもの。自分たちのできること。
 それらはもう、ハッキリしている。
 つまりは、やるべきこととやりたいことが一致した瞬間が、訪れたのだ。
「理不尽な世の中で、正義を糺す事は至難だ。
 だが心折れても砕けても、歩みさえ止めなければ未来へ進める。
 さあ行こう。騎士達を奪還し、その輝きを取り戻す!」
「センパイ……」
 立ち上がり剣を掲げたリゲルに、プリクルはどこか悲しげに目を細めた。
「すみません。巻き込んでしまって……」
「そんなことないよ、プリクルちゃん」
 『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)はプリクルの手を取ってわらった。
 膝を抱いて泣くことしかできなかった騎士が、少なくとも立って戦うことができるようになった。それは大きな進歩だと、焔は思う。
「今回、行先は別々だけどお互いに騎士団の人達を取り戻せるように頑張ろうねっ!」
「……はい! センパイたちも、お気をつけて!」

 『特異運命座標』ルリ・メイフィールド(p3p007928)、『勇者の使命』アラン・アークライト(p3p000365)、そして『ラド・バウC級闘士』シラス(p3p004421)は来たるべき戦いに備えてそれぞれの武器(?)を手入れしていた。
 裏表の同じコインを指の上でクルクルとまわし、握って開いて三つに増やすシラス。
「天義の逆光騎士団、か。ウワサと資料がマジなら、俺らと対等に戦えるくらいの連中なんだろ? 腕が鳴るぜ。なあ?」
 話をふると、ルリはふああとあくびでもするように口に手を当てた。
 彼女たちの肩をぽんと叩いて身を乗り出す『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)。
「ノフノへの偵察から戻った酒場で、解決の糸口があるって聞いた時どんなに嬉しかったか……」
 アーリアは唇を舐めて笑った。
「やってやろうじゃない、おねーさんはやる時はやるんだから!」
「おう、派手に暴れて、本体を炙りだしてやろうぜ! なんなら今すぐノフノに突っ込んでやってもいいんだがな、ゲハハハハ!」
 肩に斧を担いでげらげらと笑う『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)。
「そうだね。けど、まずは切り崩せるところから……」
 『恋桜』サクラ(p3p005004)は剣の柄をしっかりと握りしめ、戦いに心のピントをあわせていった。
「事件は解決する。
 操られた人も、捕まった人も助け出す!」
 今回目指す目標は三つ……いや四つ。
 三つの派出所へ同時に襲撃をしかけ、逆光騎士団のいびつな支配から解放すること。
 そのうち一箇所は仲間に加わった逆光騎士団カリアン、コディマリー、アンスズ、リンゴスノーが担当し、残り二箇所をイレギュラーズとプリクルが担当する。
 加えて、魔女裁判にかけられるために収容されているイレギュラーズ協力者たちの救出に人員をさいた。
 もちろんこれだけでもギリギリなのだが、そのうえで彼らは敵対する逆光騎士団を殺さずに倒すことで怪物を除去し、洗脳をとくことを目標に加えた。
 ギリギリどころかかなり高い精度での行動を求められる作戦目標だが、やるからには全部を狙うと決めたのである。
 仮に失敗したなら、イレギュラーズはもちろん倒されたはずの逆光騎士団が関与していることが露見しノフノの魔女裁判がより過激に強行されたり、警戒が更に引き上がることになるだろう。どころか、民衆がより過激な行動に出ないとも限らない。
 だが、決めたのだ。
「平坦な道じゃないと分かっていても、全てやり切って見せる!」

●収容所にて
 イレギュラーズが逆光騎士団に関わってから随分な月日がたち、その間に幾度も事件を解決してきた。
 もちろんその中で情報提供や物資の提供など様々な形で協力してくれた民間人が何人もいる。
 彼らは『魔女への心棒者』であるとして騎士団に拘束、収容され裁判の日を待つ身となっていた。たとえパンひとつ与えただけであっても。
「派出所への助力が出来ないのは心苦しいが、今協力者達を救い出せれば後の優位となるだろう。確実に、全員を救助する!」
 馬車の御者席へ飛び乗り、馬に鞭をかざすリゲル。
 彼のサポートとして馬車に乗り込んだのはルリ。いつでも砲撃ができるように構えると、リゲルに『いつでもどうぞ』の合図を出した。
 頷き、リゲルは馬車を走らせた。
 目指すは罪人収容所。
 守りを突破し、協力者たちを助け出すのだ。

 いつものように見張りに就いていた兵士達。
 交代制なのか、二人の兵士がやってきたところでそれまで立っていた兵士はため息をついて休憩所へと歩き出す。
 が、三歩あるいたところで大きなくしゃみをした。
「おいなんだ、身体でも冷やしたか?」
「いや……なんだろうな。花粉症じゃあ無いと思うんだけど」
 兵士はハンカチで鼻を拭うと、収容所を振り返った。
「それにしても、あいつら可愛そうだよな。パンひとつ売っただけで死刑が確定してるんだぜ。よく逃げないよな」
「逃げだそうものなら家族友人までしょっ引かれるかもしれないし、第一抵抗したところで騎士団にはかなわない。逆らうだけ無駄ってもんさ。……大体、オマエもなんでまた魔女の協力者に肩入れするんだ?」
「……なんでだろうな? そういえばわからん。魔女も協力者も死んで当然なのに」
 兵士は鼻をすすってから、自分でもなんでそんなことを言ったのかわからないという顔で首をかしげた。
 と、その時。
「そこをどけ! 俺はローレット・イレギュラーズ。リゲル=アークライトだ!」
 リゲルは輝く剣を掲げながら、馬車を兵士達へと突っ込ませた。
 慌てて飛び退き、そして腰にさしていた聖拳銃を抜いて反撃をはじめる兵士。
 飛来する銃弾を剣ではじくと、リゲルは御者席から飛び降りた。
 ドリフトでもするように車体が滑り、収容所の壁にぶつかって止まる。
 天井へと飛び移っていたルリはぴょんと飛び降り、収容所のドアノブを握った。
 どうやら鍵がかかっているらしく、鍵を持っているのはいまリゲルが戦っている兵士たちのようだ。
 しばし兵士とドアノブを交互に見た後、ルリは『ん』と短く力んでドアノブを無理にねじった。
 べごきんと音をたててドアノブがはずれドアが開く。
「あ、ありがとう。ローレットの人か?」
 恐る恐る訪ねてくる髭の老人に、ルリは頷いて馬車をゆびさした。
「はやく乗ってください。ゆっくりしてる時間はないとおもーです」
 そんなルリの行動を、もちろん兵士達は見逃さない。休憩に入ろうとした兵士たちまでもが舞い戻り、ルリへと襲いかかってきた。
 手をかざし、衝撃の青を一発叩きつけただけで馬車に舞い戻るルリ。
 一台しかない馬車に、収容所の人々はぎゅうぎゅうに詰まって入り込んだ。一部は外に若干はみ出した状態ではあるが……。
「協力者は馬車に詰め込みました。兵士が集まってきます。はやく」
「わかった、ありがとう!」
 リゲルは豪快な回転斬りで兵士達を追い払うと、馬車に飛び乗って馬を走らせる。
「逃がすな。追え!」
 倒された兵士が叫び、あちこちから兵士が集まっては馬へ飛び乗る。

 走る馬車へ打ち込まれる無数の銃撃や爆弾。
 馬車にしがみついていた民間人の一人が銃撃にさらされて転落。それを助けようと手を伸ばした女性を、追いついてきた兵士が剣で斬り付けた。
 あがる悲鳴を聞きながら、ルリは兵士に渾身の『衝撃の青』を発射。
「民間人が狙われてます。このまんまじゃまじーですね」
「くっ……!」
 リゲルは器用に馬車を操り、路地を猛スピードを維持したままカーブ。
 馬で曲がりきれなかった兵士が突き当たりの民家に突っ込んだり馬から転落したりしていくなか、残った兵士が銃撃を浴びせてきた。
「ルリ、しばらく運転を交替だ。
 害為さなければ攻撃はしない。
 だが立ち塞がるなら容赦しない。
 道を切り開く!」
 リゲルは御者席から馬車の屋根へと飛びうつると、馬を寄せて馬車に飛び移ってきた兵士を斬撃や炎の嵐によって振り払っていく。
「皆さん、近くのものに捕まって。しばらく荒っぽくなります!」

 ――こうして、リゲルたちは民間人約7割ほどの救出に成功した。

●正義とは
 机に向かい背筋を伸ばし、羽根ペンをカリカリと動かし続ける青年騎士。壁により掛かってゆるく腕組みしていた大柄な男性騎士が顔をしかめて彼を見た。
「よくもまあ、事務仕事ばかりできるな。身体がムズムズしないか?」
「怠惰な発想はいけませんよ。我々は民の規範。誠実に労働する姿を見せなくてどうします」
「ウウム……確かに」
「あんたはもっと働いたほうがええんや。トレーニングばっかりしてても民はまもれんぞ」
「何だと? 護るべき時に筋肉がなくてどうする」
「三人とも、仕事も鍛錬もいいけど、武器の点検もちゃんとしてるの?」
 小柄な女性が机に並べた銃のパーツをひとつひとつ点検しながら磨いていた。
「いざってときに武器が使えないとか、騎士の恥――」
 言葉を言い終わる前に、部品をサッと集めてとてつもない早さでくみ上げる。
 そしてドアの方向に向けて三度発砲した。
 驚く大柄男。
 撃ち込んだ銃弾……が、ドアの外で構えていたプリクルの鎧で止まる。
「センパイ、失礼します!」
 衝撃を跳ね返すかのように、剣を振り込んで斬撃を『発射』する。
 切り裂かれた扉。飛び退く女。
 大柄な男は鎧の腰に手を当てるとガチャガチャと展開した鋼のパンチグローブを肘まで装着。扉を突き破るようにして飛び出すと、プリクルめがけて殴りかかった。
「裏切り者のプリクル。ついに姿を現したか。せめて我々の手で葬ってくれる!」
「ヒッ――!」
 先輩勢の強さを知っているだけに顔が引きつるプリクル。
 が、今は一人きりじゃない。
「プリクルちゃん、いけるね? 頼りにしてるよ」
 横から割り込みをかけたサクラが氷の太刀による突撃を敢行。
 が、割り込んできた騎士が電撃を帯びた剣でそれを受けた。
 窓を割って吹き出す蝶の群れ。
 それがすぐそばで不意打ちを狙っていたシラスへ群がっていく。
「チッ、こいつら場慣れしてやがる……!」
 手袋に刻んだ魔法の手刀で蝶を振り払うと、シラスは大きく飛び退いた。
 派出所の中へ突入したいが扉と窓を二人の騎士が通せんぼする形で展開したせいで室内から銃で狙う騎士に攻撃しづらい状態だ。
「倒したい順番を決めてはいたけどぉ……」
 逆の立場だったとしてもそう簡単に食わせるわけがないわよね、とアーリアは目の光を鋭くした。
 そんな彼女たちに、拳をがしがしと打ち鳴らす騎士が声を上げた。
「魔女だな。逃げ隠れせず姿を見せたことは褒めてやろう。おとなしく捕まるのであれば手荒なマネはしない」
「そう言われて捕まるヤツいないよな?」
 肩をすくめてみせるシラスに、騎士はフンと鼻を鳴らしてヘルメットを被り直した。
「では名乗ろう。俺はオステオスペルマム。氷華の騎士!」
「ブッドレア。虹蝶の騎士です」
「サントリナ。銀弾の騎士」
 室内から顔をちらちらと出す形で名乗りを上げるブッドレアとサントリナ。
 ええ、名乗るの? という顔で眉をゆがめてから、剣を構えたまま騎士が名乗った。
「紫電の騎士だ。名はアザレア。プリクル及び魔女ども、ノフノの街も民の心も、卑劣なお前達には渡さない。護ってみせる!」
 覚悟! と叫んで斬りかかる『紫電』。プリクルは彼の剣をいばらの剣で受け止めると、サクラたちへ頷いた。
「紫電の先輩は私が止めます。ショージキ苦手ッスけど……!」
「うん……誰よりもこの国に尽くしてきた優しい人達に、これ以上非道をさせるもんか!」
「何を言っている。非道を働いているのは貴様らだろうが!」
 拳にすさまじい冷気を纏って殴りかかってくる『氷華』。
 サクラは対抗――をせず俊敏にその右脇を転がってスルーした。
「何――ッ」
「アンタの相手は俺だ、よ!」
 シラスが派出所の壁を蹴るようにして飛び、『氷華』たちめがけて神気閃光を発射した。
「こいつは効くだろう? ネメシスの坊主から習った術だぜ、皮肉なもんだな」
「魔女が、不正義な……!」
「あ、やば」
 『氷華』たちが逆ブロックされたことで派出所がかえって袋小路になったことに気づいた『銀弾』は二丁拳銃を水平に構えて乱射。
 サクラは窓を突き破るように室内へ転がり込むと、剣で銃弾を弾きながら急接近。そのままタックルを浴びせて壁に押しつけた。
「アーリア!」
「おねがいねぇ、『ヴァージン・マリー』」
 手袋でパチンと指を鳴らすと、幻影の少女が現れて『銀弾』へとまとわりついていく。
 『虹蝶』は状況を一通り観察してから、大量の蝶を呼び出してプリクルへ浴びせかけた。
「分散は不利。壁から打ち崩しましょう」
 たちまち黒い炎につつまれるプリクル。
 しかし……。

●はじまりのはじまり
 金と白の装飾がはしったバイクが派出所のまえに止まり、ライダースーツ風鎧の女が降車した。
 ヘルメットを外し、金髪をゆるくふる。
「オドントネマ、リコリス。帰ったぞ」
「おう、おけーり」
 ボウガンを磨いていた軽装の男性騎士が手を振る。
 奥では大鎧を脱いだスタイルのいい女性が事務仕事をしていた。
「魔女は見つけたんかロータス。国に侵入したのは確かなんやで」
「なんやでと言われてもな……おっと」
 脱いだヘルメットを被り直し、派出所の窓を叩くロータス。
「向こうから来たぞ」
「マジかよ」
「ゲハハハ! このグドルフさまが遊びに来てやったぜえ!」
 路地からふらりと現れたグドルフが、手にしていた斧をおもむろにぶん投げた。
 窓をかち割って飛び込む斧。
 事務机から飛び退いて大鎧にがちゃんと収まる女。
「赤杭の騎士オドントネマ、出るで!」
「朱金鳳の騎士リコリス、いきまーす」
 床に転がった矢を取って壁に身をつけ、射撃を開始する『朱金鳳』。
 一方の黒風はグドルフの突撃を受けたがすぐさま飛び退き、激しい跳躍で派出所の屋根へととびのった。
「黒風の騎士ロータス。……まて、名乗るヒマすら与えないつもりか魔女!」
「おれさまは山賊だぜ? どうにかしねえと、街の連中がどうなるか分からねえぞ!? オラオラ、つべこべ言わず掛かって来やがれ!」
 まずは『黒風』からだと集中攻撃を始めようとするアランや焔たちに対して、扉をショルダータックルで突き破ってきた『赤杭』がマークをかけてきた。
 繰り出されるパイルバンカーショットと『黒風』のスターゲイザーキック。さらには『朱金鳳』の援護射撃が加わる。
「絶対にあの化け物から取り戻すっ! 痛いけど我慢してね!」
 焔は槍をぐるぐる回して炎をおこすと、『黒風』めがけて突撃した。
 炎をまとった槍が『黒風』の脇腹をとらえてなぎ払う。
 吹き飛ばされた『黒風』はバウンドし、転がり、スピンしてすぐさま起き上がった。
「強いな。だが負けない。私の後ろには愛する市民の笑顔がある……!」
 身構える騎士たち。
 対して焔もまた、槍を構えてニッと笑った。
「ボクも『そう』だよ。だから、見過ごせないんだ。かならず取り戻してみせる!」

●成功と敗走
 それから、しばらくの時がたち……。
 何人かの民間人を乗せた馬車が、プリクルたちの仮活動拠点へと到着した。
 そこにはひどい怪我をした焔やグドルフ、アランたちが待っていた。
「ごめん。いいところまでは行ったんだけど、途中で残存戦力差がつきすぎちゃって逃げるしかなかった」
「そうでしたか……けど、三人とも無事でなによりです」
「んー」
 リゲルとルリは馬車を降り、そしてアーリアたちの方を見た。
 シラス、サクラ、プリクルたちはそこそこの怪我はしていたものの無事。さらに奥のベッドではオステオスペルマム、ブッドレア、サントリナ、アザレアたちが眠っていた。
「そっちは成功したみたいだな」
「なんとかねぇ」
「センパイたちのおかげッス。ギリギリで……」
「けど、ロータスさんたちは助けられなかったし、派出所もおとせなかったから……」
「んん……」
 シラスは顔をしかめ、天井をみあげた。
 一進一退。状況はまた激しく動こうとしている。
 彼らの未来は、いかに……。

成否

失敗

MVP

なし

状態異常

アラン・アークライト(p3p000365)[重傷]
太陽の勇者

あとがき

 ――逆光騎士団オステオスペルマム、ブッドレア、サントリナ、アザレアが仲間に加わりました。
 ――協力者民間人の数名を救助し、仲間にしました。
 ――逆光騎士団ロータス、オドントネマ、リコリスの派出所攻略に失敗しました。

 ――こちらの活動がノフノに知られました。粛正活動のさらなる激化がはじまったようです。
 ――この場合すぐに処刑されるはずだった協力者たちは救出されたため、処刑は行われませんでした。

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