シナリオ詳細
『太陽の種』争奪戦
オープニング
●シルヴァンスの白兎
「俺達シルヴァンスはノルダインみたいに血気盛んなつもりはないし、ハイエスタほど誇りを大事にしちゃいない」
小型兎の獣種達でまとまった一団。その前で演説をぶつリーダーらしき存在も、また小型兎の姿をしていた。目元を囲う黒の縁取りは生来のものだが、まだらに灰色に染めた体毛、そして鉄帽とミリタリーベストなどから外見以上に鋭く厳つい印象を与えるだろう。
居並ぶ兎獣種達も同様の装備を持ち、手に手に銃器を構えている。
「だけど、ちょっとはあいつらよりも賢い……と思うし、鉄帝の連中からガメた武器もある」
オウ、と意気込んで返した面々は、「しかしよぉ」と続けたリーダーの表情に一抹の不安を覚えた。
「それだけ、なんだよなぁ。ヴィーザルは実りも少ねえし、鉄帝の連中から食い物もなんもかんもガメて帳尻合わせてるだけの話だ。悲しい話だよなぁ」
兎達は一様に耳を垂れ、リーダーの言葉に項垂れる。だからといって戦いをやめよう、とかの弱い言葉が誰からも出てこないのは、リーダーのカリスマと彼に鍛え上げられた矜持からだろう。
「こんなに悲しい気持ちになるのはなんでか、俺は考えたワケだ。こりゃあ熱が足りねえ、草が足りねえ、陽の光も足りねえってクチだってよ。それで俺ぁ閃いたね」
その獣種……名をヴァイス・ブランデホトという彼は、不敵な笑みを浮かべ地図を広げた。
「ここ、鉄帝の連中の前線基地と俺達が今いる場所のちょうど真ん中にある遺跡に『太陽の種』ってのがあるらしいんだよ。そいつは今、別に誰のものでもねえ。なら俺達が貰っちまってもいいだろ?」
『太陽の種』とやらの正体はわからないが、と続けたので、一同はちょっと心配になった。けど兎は楽観的なので、「リーダーが欲しがるんだからいいものだろう」で解決する。
「よっしゃ、そうと分かれば野郎ども、行くぞ! 途中で鉄の連中見つけたら物資だけ奪って殺さないですっ転がしてやれ!」
ヴァイスの号令一下、20人からなる兎獣種の一団は遺跡へ向けて前進する。
……そこにいかなる罠が、防衛機構があるかなど考えていなかった。兎は楽観的なので。
●鉄帝辺境部隊の憂鬱
「俺達はさぁ、あいつらに物資奪われなきゃ、領地でドンパチ仕掛けられなきゃ深追いしたくないんだよね」
鉄帝北方駐屯地、その一部隊の司令室。イレギュラーズを迎え入れた部隊長は、幸薄そうな表情で机を指先で叩きながらそう切り出した。
「なにしろ今はまだ北方も冬のさなかだ。防寒装備なしじゃ動けやしない。こっちから仕掛けるメリットがないんだよ。君達もそうだろ?」
「は、はい……寒い、ですもんね……」
部隊長の言葉に、『蒼ノ鶫』ドロッセル=グリュンバウム(p3n000119)も冬用装備に身を包みながら、小刻みに震えて応じた。彼女は海洋のそこそこいい家のお嬢様だ。鉄帝のような実力主義とか厳しい自然というのは、比較的縁遠い種なので、部隊長の無気力さがある意味救いに感じたのは間違いない。
「しかし、だ。俺達の国の領内にある遺跡に手を付けようってんなら流石に黙っちゃいられねえ。それも『太陽の種』奪取ときちゃな……」
「『太陽の種』? なにかの種子なのですか?」
ドロッセルの問いかけに、部隊長は「兵器の動力部か何かだろ」とぞんざいに応じた。もしそうなら一大事なのだが、正体がわからないという。本当に種子だったら? もうダメになっているんじゃないか、と。
「どっちにしろ、遺跡の宝になるくらいだから大層なものだよ。ノーザンキングスの連中の手に渡らなきゃ、別にいい。遺跡が壊れるのもご法度だがね」
部隊長の言葉にドロッセルが考え込むと、イレギュラーズの1人がつまり、と話を切り出す。
「ノーザンキングスの連中を遺跡から叩き出せば勝ち、ってことだな? 『太陽の種』回収は必須じゃないと」
「そういうことだ。俺はね、正直な所『太陽の種』の正体は明らかじゃない方がいいとまで思ってる。
遺跡の宝として正体が割れない限りはそれは貴重品としての存在感を持ち続ける。どんな形であれ、正体が割れれば相応の価値が生まれるんだ。大なり小なりね。どういうことか、分かるか?」
イレギュラーズの言葉に首肯しつつ、部隊長は鉄帝民としては少しばかり毛色の違う意見を口にした。必ず持って帰れ、とは言わない。価値は不明のままでいい。……敢闘精神を疑われそうな言葉だ。
わからない、と返したイレギュラーズ。
「価値をもとに争いが起きるのは勘弁なんだよ。今回、遺跡に向かってる連中は『白兎』ってシルヴァンスの獣種部隊だ。名前どおりの連中だが、奴らは俺達を殺そうとしてこなかった。身ぐるみ剥がされて結果的に死んだヤツはともかく。そいつらは気合が足りないだけだ」
だから『はっきりした価値のもと殺し合い必須』よりは『曖昧なまま痛み分け』の方がいい。殺意の取り交わしではなく、相手の礼儀に則ってやろう。部隊長の意見はそんなところ。
「そんなワケだから、よろしく頼むよ。あ、防衛機構が結構ヤバ目だから『白兎』だけだと全滅すると思うんでね。そっちも頼むよ」
「いきなりハードル高くなってませんか?!」
- 『太陽の種』争奪戦完了
- GM名ふみの
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年04月25日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●迷宮は吹雪の奥に
「野郎ども、準備はいいか?! 準備出来てねえ奴ぁ置いてくぞ! 出来てる奴も遅い奴は置いてくからな!」
雪原の中、ヴァイスの叫び声が響き、そして吹雪に消えていく。『白兎』の面々は勇ましく応答しながら、整然と雪中行軍を続けていた。敵の姿はない。こちらから仕掛けても居ないのに、鉄帝がわざわざ手を出すことはないということか。
今に見ていろ、とヴァイスは思う。鉄帝に堂々と喧嘩を売りに行く気は無いが、吠え面ぐらいはかかせてやる、と。
少しずつ近づきつつある遺跡の入口を見た彼は、ひとりほくそ笑むのだった。
「こんな雪の中かきわけて対峙すんのがまーたゴーレムかよ……」
「遺跡とゴーレムは切っても切り離せない関係のようなものですからね。仕方ないのかもしれません」
鉄帝の北部に広がる大雪原を歩くイレギュラーズ達にあって、『風の囁き』サンディ・カルタ(p3p000438)はそのあまりの無情さに気が遠くなりそうだった。
砂漠でもゴーレム、雪原でもゴーレム。彼自身の経験はさておき、きっと果ての迷宮にもゴーレムは出ることがあるのだろう。寒さの余り、ドロッセルに暖を求めるのも無理からぬことであった。
ドロッセルはサンディの求めに逡巡してから、手袋に包まれた手で彼の手を包み、あたためようと試みる。
「太陽の種……何かの兵器のような気がしますがどうなのでしょうね」
『アデニウム』リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)は二人のやりとりをよそに、遺跡に眠る宝物についてふと考える。依頼人ですら名前しかしらない宝物。遺跡の場所も、あまり目立つ場所ではなく、入り口さえも分りづらい。そんな宝の価値はいかほどのものなのか。
「世の中、謎は多いままのほうがいい。想像や噂話、色々な意味で楽しみが減るじゃないか」
「過ぎたる力は己を滅ぼす……それを求める過程でも、な。私は今まで何人もそういう奴らを見てきたんだ……」
『脚癖が悪い暴風バーテンダー』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)の言葉は道理だ。伝説の正体を暴く行為は、得てして無粋なものである。結果がどちらに転んでも。
そして『ディザスター』天之空・ミーナ(p3p005003)の言葉には、経験に裏打ちされた感情が滲む。鉄帝で先ごろ起きた事件など、その最たるものだったのだろう。破滅というのは、割とさりげなくその口を開けている。
「その力がどのようなものかは謎で、誰も知らないほうが幸せなのだろうな……ミーナ、じゃあ犠牲を出さない様にやっていこうか」
「ああ、いいぜレイリー。やってやろうか」
『展開式増加装甲』レイリ―=シュタイン(p3p007270)は知人であるミーナに語りかけつつ、ぽつりと見えた遺跡の入り口に視線を向ける。
想像以上に、質素な入り口だ。だが、その周辺は雪が溶けているのか、まるで雪が避けているかのようにわかりやすく空間が出来ている。いかにも、な外見だ。
「希望に縋るのは別にいいんだけど、謎な物は謎なままにしておいた方が幸せな事もあるよね。なるべく殺さない様に気を付けなきゃ」
『油断はするなよ?』
『穢翼の死神』ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)は、己の裡にある「神様」と対話しつつ、遺跡へとゆっくりと近づいていく。
両者ともに、全くの他人に対しては他の面々以上に冷徹だ。思いがけず命を奪うことも、そう珍しい話でもあるまい。……敵が『白兎』だけであれば、ティアの懸念も間違いではない。
「彼らにも家族がいるはずですもの。死者が少なくて済むなら、それが一番ですわ。目指すは全員救出!」
「おー、犠牲が出来るだけ出ない事がコノマシイのか?」
『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)が拳を振り上げ気合をいれると、『天然蝕』リナリナ(p3p006258)はわかったようなそうでないような、曖昧な表情で首を傾げた。目的と現状と相手勢力について、自分に言い聞かせるようにぽつぽつと口に出して反芻するリナリナの姿を見ると、どこまで理解できているものか不安に思わなくもない。無いが、彼女は彼女なりに思うところがあったらしく。
(遺跡の嘘をでっち上げてお宝への執着をへし折る事! コレ、リナリナの目標! ちゃんと理解すれば万事解決っ!)
彼女の目が常ならぬ使命感に満ちた輝きを宿したことに、気付く者は殆ど居なかった。
「あいつら、もう中にいるのかな……だったら面倒だよなあ」
「私達が先なら防衛機構の的はこちら、後なら的は彼らか。どちらにしても面倒なことだ」
深くため息をついたサンディの肩を叩き、レイリーは確認するように事実を述べる。気が重くなる二択もあったものだ。と。
「白うさ部隊の物理的排除! 防衛機構は無視!」
リナリナはハンマードリルをまっすぐ入り口に向けると、有無を言わさぬ勢いで遺跡へと降りていく。……ところで、原始的な格好で寒いと一言も漏らさなかった彼女の体温感覚とは一体……?
●クロス・クロス・ファイア
「なんだ、アイツら?! 話と違うんじゃねえか兄貴!」
遺跡に突入して暫くして、悲鳴にも似た『白兎』の一人の声が上がる。炸裂音、発砲音、暴力に次ぐ暴力を経てしかし、床面は微塵の傷も残らない。
それがいかなる技術の結晶によるものかは分からない。が、白兎の一党は果敢で楽観的でそして統制が取れているため、その程度で足を止めることはない。
「違わねえよ、何も違わねえ! この遺跡の熱は間違いなく何か隠してるって感じだぜ! 野郎ども、邪魔する奴らは蹴散らせぇ!」
応と返した軍人達は点ではなく面で対象を狙い、相手に逃げる隙を与えまいと迫る。果たして、彼らは追い詰められているのか、それとも。
「ミーナ、出来るだけ私達の方に誘導しましょ」
「ああ、そうだな……余り引きつけすぎも問題だが!」
白兎達の砲火の先は、主に3つに大別された。
ひとつは防衛機構、ひとつはレイリー、ひとつはミーナ。
白兎達よりワンテンポ早く突入できたイレギュラーズは、2箇所の侵入経路に戦力を振り分け、それぞれから降りてきた相手を迎撃し、ひきつけ、遺跡から追い出さんとする。
当然、防衛機構はイレギュラーズも対象とするが、無理に突っ込みさえしなければ捌けない圧力ではない。
「主よ、天の王よ。この炎をもて彼らの罪を許し、その魂に安息を。どうか我らを憐れみ給え」
「……ぐっどらっく」
ヴァレーリヤの祝詞が響き、リュティスの宵闇に生まれた矢が光芒を引いて白兎達の頭上を掠め過ぎる。光を避けずに突っ込んできたのはヴァイスぐらいなもので、部下達は一様に頭を下げ、一瞬だけだが縮こまる。
「お前ら、あのおっかないお嬢さん達にコテンパンにされない内にベソかいて逃げた方が賢いと思うぜ?」
サンディは背後で繰り広げられる仲間の攻勢をちらりと見て、笑みを浮かべながら語りかける。軽い口調と飄々とした雰囲気はいかにも御しやすそうな彼だが、入ってくるなり部下がビビり散らした防衛機構を、複数体受け持って抑え込んでいる時点で並ならぬ実力者であることは、鈍感な彼らにも窺い知れよう。
「るせぇ! ここにどえらい宝があるのは間違いねえんだよ! そうでなきゃここの出来に説明つかねえだろうが!」
ヴァイスは、サンディの警告に声を荒げ反論する。銃把とナイフの猛攻でレイリーを攻め立てる彼は、確かに他の連中とは出来が違うのだろう。
「腕は確かなようだけど、それも兎達の中では、の話ね。それじゃ私達を倒すこともできない」
「これ以上ここに留まって、私達の相手をするというのなら容赦はしないよ」
『力の差を理解出来たなら退け。お前達を殺すのはわけもないし、止める理由もないのだぞ?』
ティア「達」もまた、白兎達を次々と斬りながら縦横無尽に駆け回る。同じ敵に拘泥せず駆け回るのは、致命傷を与えない意味もあるが、単純にその戦い方が合っているからだろう。
怒りに囚われなかった者達が銃を向けるが、せいぜいがカス当たりだ。
「この先に進むのは、たとえ貴方たちと私たちが協力しても無理だと思うぞ」
「この野郎……っ!」
モカの蹴りは、密集していた白兎達の頭部を軽々と打ち抜き、意識を凍りつかせていく。威力を抑えながらも精度を高めたそれは、足止めとしては十二分だ。
「……ったく! こいつらを乗り越えて奥へ行けるのかよ!? まだ奥側にはわんさかいやがるぜ!」
遺跡の奥から聞こえるのはミーナの声。にわかに数を増やし始めた防衛機構に向け、闇の領域を展開した彼女は、畢竟、白兎達と防衛機構の両面からの攻撃に耐えねばならなくなる。
その身の守りがそうそう貫かれることはなかろうが、数の暴力というのはじわじわと動きの精細を奪うものだ。
「私達は、貴方達に死なれては困る方から依頼を受けて来ましたの。私達に勝てないようでは、戦力不足は明白。命を賭けてまで太陽の種を手に入れる理由はないでしょう。ここは、退いて頂けませんこと?」
ヴァレーリヤは、白兎達の劣勢を見て取るとそう告げてメイスを相手に突きつける。数で言えば圧倒的優位な彼らが、しかし徐々にだが押されつつあり、しかも率直に言って『手心を加えられている』のが明らかな状況。
「成程な、そういう考え方もあるのかもしれねえ」
ヴァイスはひとつ息を吐くと、その言葉に頷きを返した。納得してもらえたか? そう安心できれば楽だったのだが。
「でもなァ、俺達ゃ聞き分けが悪いンだよ。……俺達だって手前等を殺しゃしねぇ。邪魔すんじゃねェ!」
ヴァイスの声に合わせるように、白兎の中で戦意旺盛な者は得物を構え、イレギュラーズへ……ではなく、防衛機構へと斉射を行う。逃げに転じたのは、出口際から階段に押し込まれた3分の1程度か。
「下手に攻撃の手を強めたら死なせてしまうのよね……ああ、もう!」
レイリーは白兎達を押し留めながら反撃に出、或いは引きつけるために名乗りを上げる。だが、今の彼女は寸止めで彼らを倒す術が無い。今の彼女には、耐えて仲間の妙手を待つほかはない。
モカは白兎達を蹴倒し、動けなくなった相手を入り口近くまで全力で放り投げ、再び踵を返し戦いへ復帰する。常ならぬ疲労に襲われた彼女の動きが精彩を欠くとしても誰も責められまい。少なくとも、相手方の一人ひとりに比して圧倒的優位であったし、防衛機構から彼らを守る余裕を見せただけ、格別の活躍だった。
「モルダー! 階段がちょっとキツいけど頑張って引きずってくれ!」
モカが放り投げた者達は、ドロッセルの手によってサンディの幌馬車へと積み込まれていく。小柄な体では限度があるのか、時折衝術で押し込んですらいるが。
モルダーのポテンシャル的に、短いとはいえ階段を登らせるのは結構骨であるのでそこでもドロッセルが苦労していた。彼女にそんな働きしかできない、とも言えるが……。
ともあれ、イレギュラーズの消耗は徐々に高まりつつあり。白兎達は、数を減らしつつも引き際を見つけられずにいる様子だった。あと一歩、何かきっかけがあれば。
「白うさ部隊、この奥行っても危険以外なーんにも無いゾッ! 防衛機構トッパする、無駄骨三昧! お宝無し! コレ、親切百パーセントの忠告!」
そう感じた一同の耳に唐突に響いたのは、リナリナの言葉。
遺跡の半ばあたりから白兎達を蹴散らし投げ飛ばして向かってきた彼女は満身創痍だが、それだけに凄味と説得力を兼ね備えていた。
……そして、彼女の一世一代のペテンが幕を開ける。
●太陽の種、その真実(改竄済)
「太陽の種が何だか知りたいカッ? それは聞いて驚け、ヒマワリの種だ!」
「……は?」
「へ?」
この言葉に反応したのはヴァイスとミーナだ。激しいぶつかり合いとともに、時折防衛機構を協力して叩き落としていた両者は顔を見合わせ足を止める。なお、防衛機構は湧き続けているのでヴァレーリヤの一撃が薙ぎ払っていった。
「本当だとしたらちょっと……だよね」
『真実を話さない優しさもあったんじゃないのか?』
ティアと神様は信じているのか話に乗っているのか、どこか鎮痛な響きを伴ってそんなことを。なお、両手は別の生き物のように防衛機構を叩き落とし、白兎達を追い払っている。
「この遺跡はヒマワリの種から油を作る工場! 暖かいのもヒマワリの栽培のため! 古代の鉄帝人御用達の『ヒマワリ油』! 現代の鉄帝にもオマエ達にも価値のないハズレ遺跡!」
よくもまあ、すらすらと嘘が流れるものである。
この言葉をどの程度、真実と思う者がいるだろうか……だが、その言葉は確実に、戦場の空気を変えつつあった。
「隊長ォ! あの言葉信じるんですかい? もしマジだったら俺達このまま死に損だ!」
「るせぇ! ちょっと黙ってろ! ……いや、まさか……」
にわかにざわつき始めた部下を制し、ヴァイスはうさ耳を手で折りたたみ「聞かざる」の構えを取る。悩んでいるともいう。
「私達も一緒に撤退します。これ以上戦っても無意味ですから、宝物が手に入らないなら……痛み分けというわけにはいきませんか?」
リュティスは部隊の部下達を出口へと誘導しつつ、防衛機構の攻撃を多く受けた者達には治療を施してすら見せた。単純に奪い合う敵なら、そうはすまい。
「この遺跡本当に頑丈ですわね!? 足止めに崩すことも出来ませんわ! ……貴方達、花の種の為に死にたいんですの?」
そして、ヴァレーリヤの危機感あふれる言葉が最後のひと押し。
ヴァイスの号令一下、白兎部隊は次々と踵を返して出口へ続く階段へ殺到する。
「畜生、覚えてろよ! この借りはなんかしてやる!」
返すのか上乗せするのか。それはともかく、白兎部隊は遺跡から姿を消していった。そして残るは、撤退戦だ。
「なぁリナリナ、さっきのアレ……マジか?」
「勿論、大嘘っ!」
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
お疲れ様でした。
全体的に整っていたと思います。委細、リプレイとプレイングとをご参照下さい。
嘘とかペテンは嵌るとかなり大きな効果を上げます。趨勢を決したとかそういうわけではないですが、そこそこ効果的だったようです。
さて、ヴァイス達は逃げおおせましたが、全く懲りてない感じしますね……。
GMコメント
白状しますと「このままだとドロッセルの冬服お披露目が来冬になってしまう! そうだ鉄帝!」みたいなノリなんですよ。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●成功条件
『白兎』部隊の遺跡からの排除。
この際、部隊の2/3およびリーダーの生存を含む。
●『太陽の種』遺跡(仮称)
鉄帝北方の某部隊とシルヴァンスの一部が住む地域の中間地点にある遺跡のひとつ。
『太陽の種』の正体は不明だが、高エネルギーの出力炉だとか、一粒で多大な実りをもたらす植物の種だとかいろんな説がある。
鉄帝の部隊長は正体不明であることが望ましいと思っている。
フロアは地下1階のみ、非常に広いフィールドになっている。
●防衛機構×多数
浮遊型の自動迎撃ゴーレム群。個体の能力は高くないが遠距離からの収束レーザーによる集中攻撃(神超単・弱点等)で侵入者を確実に排除しようとする。
破壊しても遺跡内から補充される。一気に倒して退路を作ることは出来るが、『太陽の種』安置スペースに近づくに連れ攻撃が激化するので、奪取は現時点のイレギュラーズ+『白兎』の全滅覚悟の特攻でもちょっとばかし無理ゲーではないかと思われる。『白兎』は協力意思薄いし。
階段に足をかけた相手はターゲットから外れる。
●『白兎』部隊(20人……人?)
全員がサブマシンガンを所持したミリタリー色の強い兎獣種。リーダーの『ヴァイス・ブランデホト』の知能がOPの通りで、部下がそれ以下。つまりお察しってやつだ。
鉄帝に対しては緩めの交戦派で、殺す気はないけど未必の故意で死んだら仕方ねえよな、ぐらいのメンタリティ。
イレギュラーズに対しても攻撃を行ってくるが、そもそも命大事に、な集団なので生き残る公算が強ければなんだってやる。
●ドロッセル
基本的にはプレイング内で指示頂ければそれに沿って行動します。
特に指定がなければ、遠距離術式と衝術メインで『白兎』を追い立てるように動きます。
一応、彼ら1人ひとりと比較すれば彼女の方が上手です。
以上、いつもと毛色が違いますが、宜しくおねがいします。
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