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シナリオ詳細

カルネと鉄帝ハグルマミステリーハウス

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ハグルマミステリーハウス
 がしゃん、ぶしゅん、がしゃん。規則正しく重い音。蒸気の抜ける煙とわずかにのぼる鉄と灰のかおり。
 ここは鉄帝首都スチールグラード……の新名所、歯車大聖堂(ギアバジリカ)である。
 あるとき暴走のあまり無数の村々を建物ごと喰ったといわれ、その建材はいびつに入り組んだ巨大な聖堂へと再構築されている。
 いまはその機能をうしない、いびつで巨大なだけの聖堂と相成ったわけだが……。
「全てが解決した……って、わけじゃないんだね」
 歯車大聖堂内部。
 小さなチャペルにもにた部屋。
 一つしか無いベンチに腰掛け、カルネ(p3n000010)はあなたの到来を待っていた。
 あなたの姿を振り返り、にっこりと微笑んで立ち上がる。
「紹介するよ。今回の依頼人……いや、依頼霊、かな」
 手で指し示したのは、半透明になった名も知らぬシスターであった。
「『ああ、なんてこと。視してなお助けがあるとは。神はやはり人の中にあるのですね』……だってさ」
 霊魂疎通を用いて通訳をしたカルネは、そんな風に言った。
 どうやらこたび。
 幽霊の願い事を聞くことになるらしい。

 シスターはずっと昔に教会で亡くなった人物だが、その際大切にしていたロザリオを教会に納めていたという。
 しかし歯車大聖堂に建物ごと飲み込まれ再構築を受けた結果。ロザリオが無限生成ダンジョンの奥へと取り残されてしまったのだそうだ。
「『ロザリオが手元にないと思うだけで、眠れるものも眠れません』……と、こんな風に彷徨い出ちゃったらしいんだ。だから、今回の依頼は『ダンジョンを攻略してロザリオを手に入れること』だと思えばいいかな」
 シスターが振り向いた先。無数の歯車が組み合わさるようにしてできた不思議な扉。
 この扉から先が、入るたびに形の変わる教会風ダンジョンになっているという。
「歯車大聖堂の力で空間がねじれてるのかな。部屋や通路を進むたび、新しいフロアにつながっていくんだけど……ひとたび引き返すと最初の部屋……つまり今僕たちがいるこの部屋に戻ってきてしまうんだ。調査員が調べたら、一度ダンジョンへの扉を開くとその先半月以上は開かなくなってしまうから、行くなら途中休憩ナシの一発勝負だと思ってね」
 ダンジョン内は安眠を邪魔され怒っている亡霊達であふれている。
 話しがあまり通じない一般亡霊と、そもそも話し合いどころじゃないほど怪物化した狂暴亡霊の二種に分かれる。
「道中はこうした亡霊たちと戦いながら、終盤への体力を温存していくことになるかな。
 他にも、亡霊たちの仕掛けたトラップもあるらしい。混乱して周りに攻撃的になってしまったり、APを吸われたりする罠だそうだよ」
 カルネがあえて『温存』という言い方をしたのは、この最も奥。であると同時にロザリオのありかとなる部屋にとくべつ狂暴な亡霊が巣くっているからだ。
「調査員もその亡霊にやられて引き返すことになったらしくてね。
 大量の亡霊が攻撃的な意志だけになって密集した『集合体』って呼ばれてる亡霊だよ。
 これは相手を同じものにしようと襲ってくるうえ、エネルギーをかなり蓄えてる手強い相手だ。みんなで強力して戦ってね」
 余談になるが、調査員が体力温存のために途中でキャンプをしたりお弁当広げようとしたところひどいめにあったらしいので、それらも含めて休憩ナシで最後まで駆け抜けるつもりでいてくれとのことだった。
「それにしても……誰かの願いを叶えて幸せにできるなら、それが幽霊でも嬉しいよね。頑張ろうね」

GMコメント

■オーダー
・ダンジョンを攻略し、ロザリオを手に入れること

■ダンジョン攻略
 このダンジョンでは頻繁に敵とエンカウントし、また亡霊による霊力トラップが仕掛けられています。
・一般亡霊
 場の空気にあてられて暴力的になっている亡霊です。霊魂疎通などの能力があれば案外話し合いで解決できるかもしれません。
・狂暴亡霊
 完全に怪物化してしまった亡霊です。話がまず通じません。霊力による攻撃が主で、スキルでいうところの衝術にちょっと近いものになります。

・混乱トラップ
 このトラップにかかると味方をつい攻撃してしまいたくなります。
 移動中に限らず、戦闘中にもかかることがあります。罠を対処するすべをもっていたり、自制心を強くもつ工夫をしておくとよいでしょう。
 BSの【混乱】とは別物です。
・AP減少トラップ
 このトラップにかかるとAPにダメージを追います。(システム的に言うと【Mアタック〇〇】です)
 固定値ダメージなので、補填能力を生かしていっそぼすぼすかかっていくのもアリですが、たまに大きなダメージのところもあるのでご注意ください。
 罠対処などのスキルがあると発動率を抑えられますが、ゼロにはできないので『そもそも減る覚悟』をしておくのが吉です。
 また、Mアタック同様APがゼロになると大きなダメージとして降りかかるのでそこも注意しましょう。

■集合体
 最後の部屋に陣取っている亡霊の集合体です。
 亡霊がもっていた自我すら失い、ただの攻撃性の塊となってしまった哀れな存在です。
 EXA、AP、神秘攻撃力が特に高いようです。
・攻撃的意志(神超単【万能】【連】):意思を力に変えて攻撃します
・同調圧力(神中域【混乱】):攻撃的な感情を伝染させ、無意識な仲間割れを起こさせます
・自壊(ダメージ〇〇、BS大回復):集合体の一部に異常を押しつけ、切り捨てます

■味方NPC:カルネ
 今回はカルネくんが同行します
 彼は霊魂疎通のスキルを持ってきているので、亡霊に対して訴えたいことなどを通訳してくれるでしょう。
 また、戦闘時には同時行動のスキルを用いて連係攻撃を誘発させてくれます。
(依頼参加者は全員一時的に感情を抱いている扱いになります)

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • カルネと鉄帝ハグルマミステリーハウス完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年04月15日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
無敵鉄板暴牛
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
祈りの先
秋宮・史之(p3p002233)
若木
ラクリマ・イース(p3p004247)
守る者
天之空・ミーナ(p3p005003)
黒花の希望
フィーネ・ヴィユノーク・シュネーブラウ(p3p006734)
薊の傍らに
ヴォルペ(p3p007135)
満月の緋狐
スレイ・クラウン(p3p008089)

リプレイ

●歯車仕掛けの
 チャペルにもにた部屋。奥にあるのはステンドグラスでも壇でもなく、歯車仕掛けの扉だった。
 前に立つのは、祈りの姿勢をとるシスターの幽霊。
「必ずやロザリオを手に入れますからネ。ボクはリュカシスと申します」
 『無敵鉄板暴牛』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)は胸をどんと叩いて、周りの仲間の名前も紹介してみせた。
 というより、リュカシスとシスターの間に立ったカルネが一通りの通訳をした次第である。
 さささっとカルネの後ろに隠れるようにして、顔を出すリュカシス。
「ええとあの、シスター、お名前は……?」
「なんで隠れるのさ」
「幽霊って物理で解決できなさそうで苦手デス」
「なるほど……」
 カルネは頷いてから、シスターに名を訪ねた。
 シスターはまさか名を聞かれると思っていなかったという顔で驚いてから、虚空を三秒ほど見つめて固まった。
「『ええと、すみません。忘れてしまいました』」
「幽霊って自分の名前忘れるモンなのか?」
 一通りの話を聞いていた『ディザスター』天之空・ミーナ(p3p005003)が小首をかしげるも、なんとなく予測らしいものはついた。
 この世界の常識ではないので、本当にただの予測になるが……。
 死後霊体が超物理的に残留するとして、そこに記憶野をふくむ脳組織が物理的に残ってはいない。さらに述べるなら、人間を人間たらしめる物理的組織の一切が消失した状態に、いかほど当人らしさが残るのかという議論にまでなってしまう。
 ちなみにこれは21世紀日本でも『ミキサーにかけたヒヨコとそうでないヒヨコの差は何か』といった哲学研究にも関わる考え方であり、令和の今でも未だ研究中の課題である。
 といったあたりをふまえて述べると、幽霊は『死後当人へのイメージがアストラル体によって新規構築され生前のイメージと置換されたもの』というみかたが、一部では成されていた。
 これらをまとめて、ミーナの世界では『幽霊に期待してもムダ』という言い方をする。
「ま、いいさ。任せとけシスター。死神が幽霊の使いってのもヘンな話だが、きっちり望みの品を取ってきてやる」
 な? と首を反対側にかしげて話をふるミーナ。
 話を振られた『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は、他人事ではないという顔で手を祈りの形に組んだ。
「迷惑を掛けてしまってごめんなさいね。貴女の大切なものは、きっと取り戻してあげるから」
 歯車大聖堂ができあがるまでに至った一連の事件には、無数の人間の想いや陰謀が入り交じり、決して誰かひとりのせいにはできない事件ではあったが、その一部に少なからず関わっていた人間として、ヴァレーリヤは責任を感じているようだった。
 よって、目を見開いて強く宣言した。
「大船に乗ったつもりで待っていて下さいまし!」

 一方。
「このダンジョン、亡霊が凶暴化してるんだよね?
 静かに眠っていたのに、そりゃ腹も立つよね。けど俺らに八つ当たりするのはやめてほしいなあ」
「うーん、探し物だけならよかったんだけど……仕方ないよね」
 『マスクド秋宮』秋宮・史之(p3p002233)とスレイ・クラウン(p3p008089)はダンジョン内の亡霊たちについて、ベンチに腰掛けて話し合っていた。
「俺、実は死後の世界に心当たりあるんだけど……どういう所だと思う?」
「……? さあ……?」
 問いかけ方の不自然さにスレイが首をかしげると、史之は眼鏡を外して語った。
「インドネシア現象って言ってね、そこが死後の世界でなかったとしても、観測した人間がそうだと定義づけた途端そうなってしまうんだ。だから、本当にそうかどうか俺はしらない。行ったことがあるって、そう定義づけてるだけでね」
「……?」
「難しい話はいまはいいのです」
 『協調の白薔薇』ラクリマ・イース(p3p004247)がベンチの後ろからヌッと顔をだした。
「トラップやら吸収やら、やっかいなダンジョンなのです。
 早くロザリオを手に入れてさっさとこんな所おさらばするのです」
「もしかして怖――」
「断じて亡霊が怖いからではないのです!!」
 このタイミングで言うと本当に怖がってる人みたいだなって思ったけど黙っておくオトナの史之である。
「気持ちわかるよ。意思の疎通をしようもんならだいたい乗っかられるからね。苦手なんだおにーさんも」
 『満月の緋狐』ヴォルペ(p3p007135)もベンチの後ろからヌッと顔を出した。
「嫌いな食材をお皿に山盛りで出されたみたいなカンジ?」
「わかります」
 だろ? といって握手をかわすヴォルペとラクリマ。
 多分二人の間にはえらいすれ違いが起きてるはずだが、それも口に出さないオトナな史之である。
 とかやっていると、二人の間っていうか後ろから『支える者』フィーネ・ヴィユノーク・シュネーブラウ(p3p006734)がヌッと顔をだした。
「幽霊とはいえ、困っている人を見過ごすワケにもいきません。
 ロザリオの為、ダンジョン攻略……微力を尽くさせて頂きましょう」
「「そうそれ」」
 皆が最終的に言いたいことを言ってくれたな、という顔で四人はビッと指をさした。

●ハグルマダンジョン
 聖歌を口ずさみながら皆の先頭を歩くフィーネ。
 戦闘においてタンクやアタッカーに属さない、比較的後衛寄りな彼女がわざわざ先頭を歩くには意味がある。
 混乱トラップを踏んで味方に殴りかかった際も、APトラップを踏んで消耗をうけた際も、フィーネならチーム全体規模でダメージが少ないと判断したためである。
「きっと私が、最適ですから……先頭は、お任せください」
 とは彼女の弁である。
 といっても、トラップがワイヤー切断や重量感知のような物理トリガータイプではないらしく普通に隊列中央や後方でトラップが発動することもあるのだが、割合としてやはり先頭のフィーネがほとんど吸ってくれていたようだ。
 といった具合で、自分をぺちぺち叩くフィーネを軽く取り押さえつつ罠の位置を探るヴァレーリヤ。
「あの壁の絵、目が動いてますわ。リュカシス!」
「はいデス!」
 リュカシスは腕まくりをすると、スチールプレートで強化した拳で絵画をおもむろに殴りつけた。
「神秘系の罠は物理的に壊すに限りますネ……」
 絵をべきゃあってやってから、手をグーパーさせるリュカシス。
「どうやらこの罠。絵にとりついた悪霊がにらみつけた対象に敵意を伝染させる仕組みのようですわね……跡形もなく壊れてますけれど」
「壁とか天井のシミすらトラップになりえるから、通行には注意したいよね。といっても……」
 ヴォルペは隊列最後尾からここまでの通路を振り返った。
「一歩あるくたびに探索してたんじゃキリがないし、流石に亡霊戦でガス欠するよね」
 幽霊にだいぶ苦手意識があるらしく、ヴォルペはうんざりした顔をした。
「こうなると空中浮遊もあんまり意味がないな……」
 隊列中央で周囲に意識をくばる史之。
 物理トラップの場合踏むと矢が飛び出す床や足下にのびてるワイヤートラップを注意すればいいし、赤外線センサーや臭気センサーといったものならちょっと注意の仕方もかわるもの。
 一方でこういう亡霊トラップは……。
「例えば、鏡」
 通路の途中にある壁掛け鏡。一見史之自身が映っているように見えるが、よくみれば彼に偽装した亡霊だとわかるだろう。
 ヌッと鏡を飛び出して伸びてきた手を、史之は途中でつかみ取った。
 神威を込めて破壊――しようとした途端、背後の壁のシミが突如として顔の形になって笑い始めた。
 振り向く史之。気づけば史之の姿に化けた亡霊たちに取り囲まれている。
 皆こちらを見て笑い、手を伸ばしてきた。
 反撃のために斥力発生をおこそう……として、咄嗟に叫んだ。
「カルネくん一発殴って! 早く!」
 つい発射されてしまった斥力を突き抜けて、カルネの拳が史之の胸を打った。
 思わず突き飛ばされる史之。
 一方で直撃をくらって吹き飛ぶカルネ。
 二人は壁にぶつかり、そして……。
「やっぱり、罠か。いざくらってみるとすごく嫌な感じだね」
 亡霊のしかけたトラップから、ようやく史之は解放されたようだ。
「これで一安心かな?」
「いや……」
 ミーナが剣を構える。
 がしゅんがしゅんと蒸気機関の音を立て、通路の壁が広がっていく。
 軽くダンスでもおどれそうなほどの広さになったところで、あちこちの肖像画や彫刻からはみでるように亡霊達が現れた。
「ちょいと、アンタらのお仲間のシスターの依頼でな。ロザリオさえ回収したら私達はすぐに帰るさ。
 もっとも、死神たる私の邪魔をするならば……安らかな眠りより程遠い苦しみを与えるだけだが?」
 剣を突きつけ、すごみをきかせるミーナ。
 一部の亡霊は無駄な争いを避けようとひっこんでいったが、逆ギレしだした亡霊たちはそのまま狂乱し襲いかかってきた。
 スレイがジャマダハルを抜き、攻撃を開始。
「罠関係のスキルを持ってないからそこは他の人に任せるしかないけど……その代わり戦闘では頑張るよ……」
 彼女が亡霊と格闘している間、他の仲間達もおのおのにそこらじゅうの亡霊たちと戦い始める。
 そんな中でも特に戦闘に注力していたのはラクリマだった。
「『ソーサリーローズ 』――!」
 タクトを振った途端、編み上がった魔力の白薔薇がムチとなって亡霊をはねのけ、そして締め上げていく。
 一方メイスで格闘していたヴァレーリヤが振り返り、ラクリマへと声をかけた。
「数が多いですわ。消耗には気をつけなくては……」
「そんなときのための『祈雪のベネディクトゥス』です。多少振る舞っても大丈夫ですよ」
 パチンとウィンクするラクリマ。
 ヴァレーリヤは彼の力に安堵すると、『そういうことなら!』と聖句をとなえはじめた。
「『主よ、天の王よ。この炎をもて彼らの罪を許し、その魂に安息を。どうか我らを憐れみ給え』――!」
 通路を激しい炎が突き抜けていく。

 チームで活動するローレット・イレギュラーズにとって、消耗管理もまたチームワークである。
 戦闘を続けてるだけでダメージのかかるヴァレーリヤはライフアクセラレーションによってそれを補うが、その消耗をラクリマがAP回復させることで補填する。
 一人で全てを補うことは困難だが、こうして力をあわせることで不可能を可能にできるのだ。
 彼らはこうして罠や亡霊による妨害を突破し、いくつもの部屋をぬけ、ついに……最後の部屋へとたどり着くことができた。
 待ち受けるのは……。

●空気という名の亡霊
 幽霊をイメージであると仮定したならば、集団に対してもつイメージはバイアスが強まりやすい。
 たとえば企業。たとえばスポーツチーム。たとえば政治団体。たとえば国家。どれをとっても個々人の歴史や思想や小さな事情を塗りつぶすように、集団のイメージで個々人が扱われるようになりがちだ。
 このダンジョンの奥地にて待ち構える『集合体』もまた、そうしたイメージでできあがった攻撃性の塊であった。
「う……これはまた……」
 大量の『顔』だけが集まり、巨大なヘドロの塊のようになった物体。ぼこぼこと浮き上がっては何かの恨み言を叫んで空中にかき消えることを繰り返す怪物に、ラクリマは口元を押さえて半歩ひいた。
 対して集合体は攻撃的意志を鋭利な刃物の群れに変えて射出。
「攻撃力とEXAが高いとなると長期戦は危険。
できる限り攻撃を叩き込んで短期戦にしたいところですね」
「では私は、治癒と支援に専念させて頂きましょう」
 ラクリマに抱えられる形で隊列中央へとさがるフィーネ。
 追いかけようと伸ばされる多量の『悪意の手』を、カルネとスレイが同時に相手取った。
 掴みかかっては悪意を流し込んでこようとする手を剣で切りおとしながら、ラクリマやフィーネによる回復術のフォローを受けていく。
 先ほどチームワークを述べたが、ここでも役割分担はできていた。
 体力の治癒はラクリマが、BSの治癒はフィーネが優先的に対応することにした。
 集合体のもつ【混乱】攻撃を無効化するメンバーが何人かいるとはいえ、全員をフォローできるとは言いがたい。そして前衛チームが密集していると混乱による同士討ちリスクが高まるからだ。
「ひとつひとつを、そぎ落とすイメージで……」
 リュカシスは拳の金属に融合させた義賊のエンブレムに力を込めると、集合体めがけて猛烈なパンチを繰り出した。
 防御として打ち出される切り捨て用の亡霊体を勢いよくぶち抜いて、集合体そのものへと打撃を通す。
 ボッと音を立ててはぜるが、すぐに新しい場所に集合して再結成。さらなる攻撃を与えるためにバッシングの言葉を波にしてリュカシスに打ち込もうとする……も、間に割り込んだヴォルペがそれをうけ負った。
「まったく……これだからゴースト関係は苦手なんだ。殴って壊せるのがまだ救いかな」
 銀の粉を握りしめ、掴みかかってくる大量の手を殴りおとしていくヴォルペ。
「けれど、いつまでも付き合う義理はありませんわ」
「そういうこと。恨み言を聞いてあげる義理も、応えてあげる義理もない。破壊するのみ――だ!」
 ヴァレーリヤと史之がそれぞれ並び、シンメトリーに拳をひいた。
「祭神降臨。――きこしめせと、かしこみかしこみもうす! 縁あれかしや!」
 神威をそのまま炎のエネルギーに変えて拳から打ち出しにかかる史之。
「『主よ、慈悲深き天の王よ。彼の者を破滅の毒より救い給え。毒の名は激情。毒の名は狂乱。どうか彼の者に一時の安息を』――『永き眠りのその前に』!」
 一方で法衣やメイスに刻まれた聖句を力に変え、炎の衝撃にして打ち出しにかかるヴァレーリヤ。
 同時に発射された炎が二重の螺旋になって混じり合い、集合体をべりべりと破壊していく。
 最後に残ったのはおもわず防御姿勢をとったひとりの亡霊のみ。
 集合していた無数の意識がそぎ落とされたことに気づいて再集結をかけようとするが……。
「悪いが『賛同者』はもういない。アンタの負けだ」
 ミーナの剣が突き刺さり、ナイフとフォークの要領でそえられた鎌が亡霊の肉体を真っ二つに切り裂いた。
 切り裂く勢いにのってくるくると回転し、ブレーキ。
 亡霊はかすみのごとく消え、そして気配すらも残らなかった。

●祈りの価値
 ラクリマやフィーネが、扉を開いて戻ってくる。
 顔をぱっと明るくして振り返るシスターをみて、ミーナとスレイはそれぞれ頷き合った。
 ヴォルペやカルネに背を押されるようにして前へ出るリュカシス。
「あの、シスター。怖がって申し訳ありませんデシタ……。
 どうか、安寧を。おやすみなさいませ」
 差し出されたロザリオ。それが社会的にはなんら特別なものではないことを、彼らはもう分かっていた。
 もはや名も忘れたような幽霊が生前大切にしていただけの、しかしそれだけ重要な品だということに。
「『ありがとうございます。これで、やっと……』」
 シスターの姿が淡く光ったかとおもうと、空気に溶けるように消えていく。
 史之はお供え物をして、自分なりに手を合わせて祈った。
 また異なる手の組み方で祈りを捧げるヴァレーリヤ。
「主よ、彼らの旅路を照らし給え
彼らの魂が冥府への道で迷わぬように。貴方の元で永久の安息が得られるように
貴方の元へと旅立つ魂に、どうか慈悲を」
 彼らの後ろで、ダンジョンの扉が分解されていく。
 扉すらもなくなり、幽霊の気配もまた消えた。
 亡霊は、そしてダンジョンもまた、歯車大聖堂から消えたのだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

スレイ・クラウン(p3p008089)[重傷]

あとがき

 ――mission complete

 亡霊達のダンジョンは消えました。
 しかし歯車大聖堂の中に広がる不思議な空間は、まだあなたの冒険をまっているかもしれません。

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