PandoraPartyProject

シナリオ詳細

水面に潜む偽月

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●妖精郷の門、その危機
 『妖精郷アルヴィオン』。妖精ストレリチアとの接触をきっかけに知られるようになったそこは、深緑の奥に点在する門の先にある世界らしい。
 妖精郷の門(アーカンシェル)を通じて現れた妖精達は、人々に語られ、伝承として残り……今となって、現実であったと理解されるに至るのだ。
 尤も、それが知られたきっかけと現状が些か不愉快な現実とセットであるのが非常に心苦しいのだが。

「暗い……なんで? 今夜の『こっち』は満月じゃなかったの?」
 夜闇に包まれた空気をささやかに揺らすのは、妖精達の翅の音。迷宮森林の中、妖精達と比較的交流のある幻想種の村へと向かおうとしていたその日、彼女らは不幸に巻き込まれた。
 普段なら森の中にあっても、木々の合間から挿すはずの月光が見えない。
 雨が降ったあとの水たまりには、満月が垣間見えているのに。夜闇はどこまでも続くばかりで光明がわずかほども見えないのだ。
 そのくせ、水たまりには満月が浮かんでいる。どこまで飛んでも、どこに行っても、満月ばかりが水たまりに浮かんでいる――。
「あれ」
 その違和感に気付いた妖精の一体が、満月の光に、正確には『光だったもの』に巻き付かれてかき消えた。
 瞬間、残りの妖精達は悟る。
 この状況には2つ、思い違いが存在するのだと。

 ひとつは、『地面に浮かんでいるそれは満月の影ではない』こと。それは消えた妖精が証明した。
 もうひとつ、妖精達は大きな誤解をしていた。
 空間が上となく下となく、ぐにゃりと動く。そう、彼女らがアーカンシェルから出た先は満月の夜などではなく。

 ばくん。

●門に齧りつくもの
「森の中を夜な夜な蠢くバケモノ……と呼んでいいのかどうか。とにかく、そのようなものが居るのです」
 実物は遠くから見ただけだが、と幻想種の男はどう言葉を選んだものか、といった表情で告げる。
 イレギュラーズが現在訪れている集落の近くにアーカンシェルがあることは、幻想種達にも周知の事実であるのだ、という。
 妖精達との交流も頻繁ではないが途絶えず続き、近く妖精達が現れる時期だった、のだという。
 だが、それと前後してアーカンシェルの周囲にそのような存在が現れ、あまつさえアーカンシェルに近づいているというのだから始末に負えない。
「我々もこのあたりに住んで長いですが、あのような魔物は見たことがありません。黒い沼のような姿で、大顎を開けて門に覆いかぶさるように齧りつこうとして……あれはまるで」
 そう、あれはまるで門から出てきた妖精を丸呑みにでもしようとしているのではないか。
「それと、その魔物の口から何やら黄色い液体が飛び散ったのを見ました。それらも……動いていたように見えます」
 魔物本体のみならず、その中から生まれる相手も敵性生物である可能性が高い。そして、門を攻撃しているとなれば喫緊の事態でもある。
「詳細がお伝えできず恐縮ですが、是非撃退していただきたい。門が破壊されるのも、あのような得体のしれないものを放置するのもできれば避けたい」

GMコメント

 ホラーもミステリも得意ではないですが前提条件がまずおかしい流れはとっても好きです。

●成功条件
 地這い、偽月の双方を撃退すること

●地這い
 深緑の森を夜な夜な這い回る、平面のような奇妙な魔物。捕食時(?)と門の攻撃時は大口を開けるが、普段は平面の沼が動き回っているようにしか見えない。
 隠蔽能力が高く(=回避がとても高く)、攻撃力が高い。攻撃にはHP吸収がともなう。
 足元にまとわりつく(命中回避減少系BS)、大口で食らいつく(大ダメージ、精神系BS)などを行う。基本的に至近攻撃。
 ターン開始時に一定確率で偽月を2~3体排出する。しないときもある。

●偽月
 平面スライムのような黄色の異形。攻撃に映らない時は真円。
 基本的に巻き付き、まとわりつく(遠単・移・窒息系BS)のがメイン攻撃となる。

●戦場
 深緑・迷宮森林内、アーカンシェル近傍。
 イレギュラーズの初期位置はアーカンシェルを背にして戦う布陣となります。
 当然ですが正面から地面を這って不意打ちとかはあるでしょうが、背後からいきなり現れた、とかそういうことは(情報精度を抜きにして)起こりえません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 水面に潜む偽月完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年04月03日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アリシス・シーアルジア(p3p000397)
黒のミスティリオン
グレン・ロジャース(p3p005709)
理想の求心者
如月=紅牙=咲耶(p3p006128)
夜砕き
橘花 芽衣(p3p007119)
鈍き鋼拳
ラヴ イズ ……(p3p007812)
おやすみなさい
かんな(p3p007880)
ホワイトリリィ
アカツキ・アマギ(p3p008034)
焔雀護
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃

リプレイ

●潜む月、隠れる魔性
「夜な夜な這いずる黒い沼……まさしくホラーじゃな」
 『放火犯』アカツキ・アマギ(p3p008034)は闇に沈んだ迷宮森林の中、背後に鎮座するアーカンシェルをちらりと見ながら軽く身震いする。
 追われた故郷に戻ってくる機会が思いがけず訪れたのも無論のことながら、倒すべき相手が恐怖を煽るような不可解な存在なのがどうにも良くない。
「アカツキも一緒の依頼か、今回も宜しく頼む。頼りにしている」
「う、うむ。頼りにしとるぞベー君」
 『特異運命座標』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)はそんなアカツキの心情など何処吹く風と、信頼できる仲間として彼女に声をかける。アカツキの声音が震えていることも、こういうものに耐性がないことも知っているだろうが、それでも頼れる仲間と見なす真摯な態度が見て取れよう。
「うへぇ……ドロドロで大喰らいとかイヤな感じだな……」
 『鈍き鋼拳』橘花 芽衣(p3p007119)もまた、敵の姿を思い浮かべて顔をしかめた。健全な育ち方をした女性にとってみれば当たり前の話ではあろうが、イレギュラーズである以上は否と言って無視はできないもので。
「……やはり、自然の生物とは思えない」
「他にも獲物はいるだろうに何ゆえ門を狙うのか……何者かの意思が絡んでいる様な気がしてならぬでござるよ」
 『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)と『始末剣』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)の2人は、一連の妖精絡みの事件に現れた魔物、ことアーカンシェルを攻撃する謎の魔物を訝っていた。形状も行動様式もバラバラのそれらが、判で押したようにアーカンシェルを襲撃する。不審がらない方が無理というものだ。
(私は、元の世界で……いつもお月様だけに見守られながら、1人で戦っていた。お月様には、思い入れがあるのよ)
 『おやすみなさい』ラヴ イズ ……(p3p007812)の表情は、とても穏やかとは言い難いものだった。何処か遠くを見るような目で闇を見据える彼女の視界に、月光は降り注がない。或いは、今日に限ってはそれでよかったのかもしれない。静かに怒りを与えた瞳が露わにならないのだから。
「美しい月は天高く空に一つで十分、ってな。アンタもそう思うだろ?」
「ええ。――何だか、許せないの」
 『不沈要塞』グレン・ロジャース(p3p005709)の軽口は、彼女の心境を知って口にしたわけではないだろう。ごく当然の問いかけとして、ラヴに投げかけたのだ。返ってきた強い口調には敢えて触れず、彼はいつもどおりに笑ってみせた。
「……あら、こちらの世界に来てからしっかり戦うのは初めてかしら」
 『実験台ならまかせて』かんな(p3p007880)はふと、そこで思い出したように呟く。『元の世界』ではいざ知らず、混沌に訪れてから平和を享受していたから、すっかり忘れてしまっていた……そんな様子だ。
「なに、気にすることでもないでござるよ。影に隠れて襲ってくるような姑息な手合い、恐れるまでもないでござる」
「そうそう、皆でかかれば怖くないって!」
 かんなの言葉に、咲耶と芽衣がすかさずフォローに入る。彼女らに限らず、そこそこ死線を潜った面々が並び立つ状況、夜闇の対策を十全に済ませたことから生まれる余裕と自信は大きい。
「ふふふ、明かり代わりの幻想種とは妾の事よ……」
「アカツキの火は便利だな。頼りになる」
 アカツキは掌に低音の炎を生み出し、周囲を照らす。ベネディクトはアカツキの炎が届かない場所へカンテラを向け、周囲を絶えず警戒する。一同の声を除き、周囲から音が響くことはなかった。……無い筈だった。
「――来たぞ!」
 ベネディクトはその音を聞き逃さなかった。微かに響いた草擦れの音を察知した彼は、槍を構え声を張る。ずるり、とひときわ大きく音が響くより早く、芽衣の蹴りが地面に突き刺さる。わずかに身をよじって躱した黒い影……地這いは素早く3つの個体を吐き出し、彼女を捉えるようにぽっかりと闇を広げ。
「私が相手。あなたはもう、おやすみの時間よ」
「お前らは俺が相手してやる! 来い!」
 芽衣が食いつかれるより早く、ラヴとグレンが声高らかに挑発し、地這いと、そこから溢れた偽月達を引きつける。グレンの声には偽月が、そしてラヴの声に地這いが。それぞれ敏感に反応し、各々へと向かっていく。
「地這いはともかく、偽月はさほど避けるのが得意ではないようですね。形がはっきりしない分、弱点が狙い難いですが」
 アリシスは、組み上げた術式を偽月に打ち込んでいく。一際精度の高い彼女の術式は、偽月相手なら過剰すぎるほどだ。
「敵味方識別完了……ということでおしおきの雷じゃー!」
「そちらが数を頼るなら、こちらは手数で押し切るだけだっ!」
 アカツキが雷撃を放ち、隙間を縫ってベネディクトの槍が突き出される。どちらが合わせるでもなく放たれた連携は、確実に偽月達の逃げ場を奪い、順当に手傷を蓄積させていく。
「このゴーグル、格好いいだけじゃなくて暗がりもちゃんと見えるのね。素晴らしいわ」
 かんなは、仲間の猛攻を縫って這い出た偽月をナンバーレスによる刺突で容赦なく刺し貫く。虚穿と呼ばれるその技能は、混沌での初陣というのが嘘のように鋭く、なめらかに偽月の急所を穿ち、その命を刈り取った。
「避けることにばかり得手で、当てることは不心得でござるか? だとしたら、宝の持ち腐れも甚だしい」
 咲耶は、ラヴを狙う地這い目掛け手裏剣を放つ。身を削って呪いを与えたそれは、滑らかな地這いの動きをあと一歩捉えること能わず。なれど、回避行動に無理があったか、ラヴへの攻撃は僅かに彼女の身を掠めるのみにとどまった。
「あの大口……口? 厄介ね。手伝ってもらっても、いいかしら」
「当然にござる。風流も弁えぬ無粋者を野放しにしておくわけにもいきますまい」
 冗談めかした言葉を交えつつ、咲耶の表情は不敵に歪む。
 仲間達が相手に劣っているようには全く見えない。優位に立っている、とすら思える。
 だがそれでも、意思を感じさせない黒泥は不利を嘆かず敵に怯えず、当たり前のように襲いかかってくる。生物としての自我がないかのように……だが、だからこそ。
「コイツ等は俺達で食い止める。門には一歩も近づけねえよ」
 グレンは、そして一同は、意思ある者として怪生物へと毅然と立ち向かうのである。

●光なく寄る辺なく
「チッ……そう何度もは、容易く当たってはくれないか!」
 ベネディクトが突き出した槍、その穂先に身を削られながら、偽月の1体がするりと門へと向かっていく。
 地這いから次々と吐き出される偽月達は、率直に言って賢かった。否、『そうなりつつあった』のか。
 生み出された直後から、イレギュラーズを避けるように大回りの軌道をとってアーカンシェルに向かおうとし、或いは距離をとってイレギュラーズを責め立てる。性能が上がったわけではなく、動きが有機的になった、と言えるだろうか?
「ふぅ、月もこう多いと余り風情が無い。こうチカチカ眩しいと月見酒も不味くなろう物でござる」
「本当にっ……邪魔、だね!」
 咲耶の軽口に合わせ、芽衣も苛立たしげな声と共に拳を振るう。勢いと意思を以て振るわれる彼女の拳、その精度は決して低くはない。だが彼女を引き付け、距離をとって攻めてくる偽月はいかにも相性が悪く、消耗を余儀なくされていた。
「ええと……集中攻撃で逃げ場を奪えばいいのよね?」
 かんなは慎重に、しかし確実に歩を進め、仲間達が仕留めきれなかった個体へと狙いをつける。戦闘経験の浅さは、仲間との連携と情報共有で補える。
 少なくとも彼女は、徒に動いて消耗し、付け入る隙を与えるようなことはしない。
「素晴らしい槍の冴えだな。少し、見惚れてしまった」
「褒め過ぎだわ。あなた達が追い込んでくれたからよ」
 ベネディクトとかんなは、槍使いとして通じるところがあったのだろう。互いの技を讃えつつ、しかし戦闘中であるがゆえに表情は全く緩む様子がない。
「随分と臆病な個体がおるのじゃ! あ奴、あのまま門に取り付こうと……ええい!」
 そんな中、アカツキは逃げるように動き、門目掛けて動く偽月を見逃さない。狙いを定めた悪意の一撃は、門に張り付く直前のそれを貫いて破壊する。
「あなたが、偽の月を産み出すのね」
 ラヴは地這いを引きつけつつじりじりと、着実に門から距離を取る。
 偽月が門に近付く時間を稼ぐ意味もあるが、それより何より、彼女が偽月を生み出す行為そのものを許せないというのもあるだろう。
 地這いは彼女の思考など知ったことではなく、ただそうするのが当然であるかのように大口を開けて。
「大口を開けてくれるなら狙いやすくて助かります。……本当に」
 ラヴが身を捩り、致命打を避けた先でアリシスが術式を練り上げ、待ち構えていた。ラヴには戦うべき理由も、敵意を向ける動機もある。だが、それ以上に仲間を信じる心構えがあったのだ。
 そうでなくては戦えない。偽月を排除する仲間がいるからこそ、地這いの対処に専念できたのだ。
 アリシスの術式を受けて身を捩った地這いは、未だ余裕があるように見えた。むしろ、身を削った彼女のほうが苦い表情をしているくらいだ。
「ベネディクト、アカツキ! こっちの連中は俺が潰す! ラヴは任せた!」
「頼りになるのじゃ、それでは妾はそこな不埒者を潰すとしようか……なあ、べー君」
「任されたからには仕留めなければな。時間を貰えた分、ヤツの行動は理解したつもりだ」
 新たに吐き出された偽月2体を受け止めたのは、誰あろうグレンだった。
 ラヴが地這いから距離を取れず、偽月がイレギュラーズを避けるなら。最終的に狙うであろう門をかばう形で偽月に立ちはだかれば受け止められる。彼の咄嗟の機転が奏功し、イレギュラーズに十分すぎる余裕を与えたのだ。
 そうなれば、偽月の対処にとられていたアカツキとベネディクト、かんな達はその猛攻をただ一体に向けることができる。
 地這いがするりと地面に溶け込み、かんなの槍を避け、アカツキの魔術をすんでで躱し。
 そして、攻撃に転じようとしたそれを油断なくベネディクトの槍が貫く。
「『おやすみなさい』。あなたはここで消えるの。輝く月はひとつでいいんだもの」
 祈りを体現した弾丸が、地這いを貫く。素早く再装填された弾丸と共に、彼女は大きく開かれた口へ飛び込み……驚異的な加速と共に、地這いを内部から両断した。
 瞬間、彼女の頬を痛覚が襲う。頬を裂かれた、と理解するより早く、何かが蠢き、消えていく感覚があった。その動きは他のどれよりも早く、追うことは敵わないように思えた。幸いなのは、それが「逃げた」ことだろうか。

●弔いは未来の可能性へ
「……妖精の残骸らしきものは残っていませんね。まだ襲われていなかったのか、それとも……」
「遺骸が残ったのは僥倖でござる。調べられるところは調べておかねば」
 アリシスと咲耶は、素早く地這いの死骸を回収すべく手を回す。彼女らの推測通りなら、これは錬金術師の所業だが……不気味極まりない。
「確かに妖精は小動物みたいだけど、慣れてる森でこんな危険な目に遭うもんなのか?」
「……いえ、狙いは妖精というより、多分門だから」
 グレンの当然といえる疑問に、ラヴが返答しようとして言葉を切る。門を狙う理由はなにか? 仲間の言葉通り、それを作った者たちがいるなら何が目的なのか?
 そして……彼女の頬を裂いた偽月らしきものが、門を狙わず逃げた理由はなにか?
 考えるべきことはまだまだ山積している。村へ戻るにあたり、倒れた芽衣を抱えて戻らねばならないというのもある。
「ひとまず、今宵は月でも眺めながら帰ると致そうか。具合良く、今になって顔を見せてくれたでござるし」
 咲耶は、木々の切れ間を仰いで一同にそう語りかけた。
 見れば、先程まで姿を見せなかった月が、雲の切れ間から顔を覗かせていた。その姿は真円を描いている。満月であることは疑う余地もない。
 今宵が満月であるとするならば、妖精達は助かったのか……それとも随分と過去の話であったのか、何れにせよ、彼らは妖精達の『これから』を救ったのだ。
 月の光の下を帰る一同のなか、殿を歩くラヴの表情が僅かに緩んだのは決して間違いではあるまい。

成否

成功

MVP

ラヴ イズ ……(p3p007812)
おやすみなさい

状態異常

橘花 芽衣(p3p007119)[重傷]
鈍き鋼拳

あとがき

 お疲れ様でした。
 回復とかそういう関係上、そこそこの痛手は負っていると思いますが、結果的には万々歳です。
 でも不穏だなあ。そう思うかもしれませんが、きっと妖精の被害はなかったのだと思えば!

PAGETOPPAGEBOTTOM