PandoraPartyProject

シナリオ詳細

可憐なる花を求めて

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●どうしよう

 どうしよう、ああ、どうしよう!

 妖精は困っていた。実に困っていた。
 久しぶりにこちら(混沌)へやってきて、綺麗な花束を作って持ち帰ろうと思ったのに。丁度綺麗な花畑があったから、少しばかり拝借して持ち帰るつもりだったのに。
 それが、嗚呼、あんな魔物と出くわすなんて!
 びっくりした妖精は思わず逃げた。そりゃ逃げるさ、おっきくて怖い魔物だもの。森の中をよくわからないまま全力で飛んで、飛んで。それでもまだ追いかけて来るから必死に逃げた。
 もう力尽きそうだ──そんな折に耳の長い大きな人間と出会った。彼らはたまーに、時には頻繁に交流を交わす者たちだと妖精は知っていた。
「たすけてーーー!!」
 飛びつくと人間は驚いて妖精を見た。その真ん丸な目には追ってきた魔物も映っていて、人間は眦を吊り上げて武器を構える。
 だがどうしたことか、人間は魔物を威嚇しながら先ほどの妖精と同じように逃げ出したではないか。
「なんでにげるの!」
 そう問えば、
「逃亡ではない、撤退だ」
 と返ってくる。一体何が違うんだ。
 けれど魔物はいつの間にか追いかけてきておらず、2人はそのまま話をしながら近くの村まで行くことに。その道中で人間はどうして『てったい』したのか教えてくれた。
「最近は力の強い魔物が多い。私1人では返り討ちになりかねん。ローレットに依頼を出した方が良さそうだ」
「ろーれっと?」
 それは様々な場所から集まった者たちの組織で、所謂何でも屋のようなものだという。一般的に善であることから悪であることまで、依頼されたならそれこそ何でも。
「彼らに依頼すれば追い払うなり、倒すなりしてくれるだろう。……そういえば妖精、貴殿は何をしにここへ?」
「それはね、はなたばをつくりに──あれっ?」
 これだよと見せようとした妖精は気づく。手に持っていたはずの花束はどこへ?
 人間へ問えば、遭遇した時にはもう持っていなかったという。つまり、あの魔物から全力で逃げる際に落としてしまったのだろう。
 それがただ道に落としただけなのか、それとも魔物が持って行ってしまったのか。いずれにせよ、花畑でまた作らないといけないだろう。
「なら、魔物を追い払ってもらった後に行くと良い」
「そうしたい……んだけど」
 困った。妖精はまたしても困ってしまった。
 ……あの花畑、どこだろう?


●花畑を探して
「……なんというか、災難な妖精が多いんだよな」
 彼らの不遇を憐れむべきか、それともよく襲われる無防備さに呆れるべきか。
 『Blue Rose』シャルル(p3n000032)は何とも言えない表情で依頼書を眺める。同じ依頼書へ視線を向けるイレギュラーズの存在に気づくと「ボクはもう見たからここどうぞ」と場所を譲った。
 依頼内容は魔物の撃退と、妖精が花束を作ったという花畑探し。花畑ならどこでも良いのではという話もあったが、妖精がその花畑にとびっきり素敵な花があったのだとえらく執心しているのだとか、何とか。
 そんなわけで代替品はない。妖精を保護したという地点から人海戦術で花畑を探し、また魔物を探して撃退し、妖精を連れて行ってあげなければならないのだ。

 ──そんなわけで求む、花畑探しを手伝ってくれるイレギュラーズ。

GMコメント

●成功条件
・魔物の撃退
・花畑へ妖精を誘導する

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
 森です。道というほどの道はなく、獣道があったりします。
 昼間なので視界もそこまで悪くありません。

●妖精
 幼い口調をした精霊種。30cmほどの少女です。花束を作るためにやってきました。
 いかんせん花束を見つけたのもたまたまであれば、魔物に追いかけられた時もがむしゃらに逃げてきたので道が分かりません。
 花束を作っている最中にとても綺麗な青の花を見つけており、それをどうしても花束に加えたいのだと言っています。

●魔物
 妖精曰く『とても大きくて怖いやつ』だそうです。
 保護した幻想種は四つ足で素早く、大きな熊のような姿であったと言っています。
 逃亡しながらだったためはっきりとではありませんでしたが、長い尻尾を見たような気がするということです。

●第1章
 妖精が保護された地点からスタートします。
 わかっているのは妖精が飛んできた方向のみ。皆さんの力で妖精の辿ってきた道を探してください。
 魔物の痕跡や他に何か繋がりのありそうな跡を見つければ、それを元に追うことができるでしょう。

●プレイング内容確定・章進行に関して
 今回は以下の進行ペースを考えています。全3章。

 全ての章において、抽選で6人~10人程度のプレイングを採用します。全体人数によって多少前後する可能性があります。
 各章のみの参加も歓迎致します。その場合は『依頼を知って後から追いついてきたら、現在の展開になっていた』という形になります。もちろん連続しての参加も大丈夫です。

・1章
 執筆開始は3/20~とします。そこまではプレイングの確認を一切しない予定ですので、プレイング送信可能期間中は何度でも修正頂けます。
 それ以降は1~2日おきに不定期の確認&執筆となります。
・2章、3章
 それぞれ章移行日~次の日の23:59までは確実にプレイングの確認を致しません。
例:3/22に1章から2章へ移行→3/23 23:59までは確認しない
 それ以降は1~2日おきに不定期の確認&執筆となります。

●ご挨拶
 愁と申します。ラリーシナリオを出してみました。
 初回は全体依頼のリプレイ執筆期間が被っているため、多めに時間を取っています。リプレイが早く書き終わっても確認しませんのでご安心ください。
 最近は何とも不幸な目に遭う妖精が多いですが、皆さんの力で何とかしてあげましょう。
 ご縁がございましたら、よろしくお願い致します。

  • 可憐なる花を求めて完了
  • GM名
  • 種別ラリー
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年04月06日 20時50分
  • 章数3章
  • 総採用数28人
  • 参加費50RC

第3章

第3章 第1節

 それは、歪な生き物だった。

 それは、屈強な生き物だった。

 それは、自然を荒らす生き物だった。


 開けた視界の中、奥の方に花畑が見えた。見覚えがあると喜ぶ妖精フィラに、けれどイレギュラーズたちは表情を硬くしたままだ。
 その花畑から──何かが、来ている。先ほど聞こえたシューシューという音も一緒に。遅ればせながら妖精も気づいてあっと声を出した。
「あれ! とってもおおきくて、こわいやつ!」
 それは聞いていた通り、大きな大きな熊のような獣だった。熊のような、とつくのは尻尾らしきものがあるからだ。
 尻尾らしきものというのも随分と曖昧だが、尻尾ではないものが『まるで尻尾のように収まっている』のだから、こんな表現になっても致し方ないだろう。

 はなたば、はなたばが。

 何かに気づいた、気づいてしまった妖精フィラの嘆きがイレギュラーズたちの耳を打つ。妖精が心を込めて作った花束はソレの口から垂れていた。
 ソレが咆哮を上げると花束が口元から落ち、踏み出した足によって無残に踏みつぶされる。
 共に潰されたのは小さく可憐な青い花──ネモフィラの花。
 獣の敵意はイレギュラーズと、その背後に庇われた妖精へ向けられている。イレギュラーズたちはそれぞれ武器を構えて突進してくる獣を睨み据えた。


●魔物(補足)
 熊のような風体の獣で、尻尾に該当する部分には3匹のそこそこ大きな蛇がくっついています。それぞれの尻尾となる部分が接着されたような姿です。
 熊と蛇はそれぞれが意思を持っているようですが、仲違いするような様子は今のところ見られません。
 爪や牙での強攻撃がある他、蛇たちも攻撃を行うようです。

●ロケーション
 森の中ですが、開けた土地のため視界・行動に障害はありません。
 少し離れた場所に花畑があります。

●情報精度
 この章における情報精度はBです。
 まだ敵に対する不明点もあります。

●執筆に関して
 3/31 23:59までプレイング確認致しません。その後はOP解説に記載してある通りです。


第3章 第2節

クロバ・フユツキ(p3p000145)
背負う者
ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)
蒼銀一閃
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
マルク・シリング(p3p001309)
軍師
太井 数子(p3p007907)
不撓の刃
レニー・エメディア・オルタニア(p3p008202)
半百獣のやんちゃ姫

「花が……っ!」
 ミーティア──『磨石のミーティア』太井 数子(p3p007907)は花束に手を伸ばすが、それは遅く、手を伸ばすには遠すぎた。なんという事を、と『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)は低い声で呟く。
「……フィラさん。あの花束は残念だったけど……負けないくらいに素敵な花束を、後で一緒に作ろう?」
 魔物を睨みつけながら『蒼銀一閃』シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)が背後にいるフィラへ語りかける。リゲルは彼女の言葉に頷いた。
「無事でありさえすれば、また花束を摘むことができるんだ」
 小さく澄んだ音が鳴り、それは広がって結界を作る。意図的な破壊以外をさせない保護結界だ。
「最後の最後に心無い事をするようで、ふふ」
 うっそりと笑った『砲撃用意!』ヨハン=レーム(p3p001117)は魔物へ鋭く声を発する。
「氷のように動じず、同じように心無く、冷酷にお前を討つのみ! ……ミーちゃんが」
 最後に付け足された言葉を聞き、それまでうんうんと頷きながら聞いていたミーティアが「えっ!?」と言いたげに振り向いた。が、敵から目を離すわけにはと慌てて視線を戻し。
「……そう! 私がお前を討つわよ!」
 とりあえずヨハンの言葉は間違っていない、前で戦うのは私だと剣を抜くミーティア。その脇を蒼の蝶が飛んで行った。
「これが妖精様を困らせる悪しき動物なので御座いますね。僕が蹴散らしてみせましょう!」
 狙うは後方の蛇。夢と現を溶かしてしまうような、願望を映す夢が彼らの前に現れていることだろう。
「──あいつを倒したらまた、花を摘もう。色とりどりの花束を作る為に、行ってくる!」
 『真実穿つ銀弾』クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)が地を蹴り、駆ける。その手に持ったガンブレードへ周囲の草木が放つ生命エネルギーが集まり、クロバの敵を倒す力としてまとまって。
 より一層力強く地面を踏んだ彼の姿が一瞬搔き消える。魔物が追いかけるのはすでに残像で、あらぬ方向からクロバは光の斬撃を放った。直後、ガンブレードの弾丸へと魔力が流れ込む。魔物の体を爆炎が包み込んだ。
 その後続くように飛び出した『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)は鎌へ魔力を纏わせ、尻尾のようにくっついた蛇の根元を攻撃する。
(バカでかい魔物だ)
 ギフトを使わない姿でも、妖精サイズなら尚更サイズにとっては大きな魔物だ。それでもあの妖精の事を思えば負けるわけにはいかない。
 不意に鋭く、断罪の斬撃が魔物へ飛来する。その放った先にいるのは妖精を守り導いた1人の騎士。
「さあ、こちらへ来い!」
 リゲルに挑発されるがまま、魔物は血をぼたぼたと落としながら追いかけ始める。
 熊のような巨体がのしかかり、次いで蛇たちが魔的な力を溜めて吐く。銀閃を煌めかせながら反撃するリゲルの眼前で、嵐のような斬撃が彼を避けて荒れ狂う。血を撒き散らす魔物をシャルレィスは睨みつけた。
「尻尾が蛇になった熊、か……まるで噂に聞いた『鵺』だね」
「あの魔物、合成獣(キメラ)ってやつ?」
 恐らくは、と頷くマルク・シリング(p3p001309)。『半百獣のやんちゃ姫』レニー・エメディア・オルタニア(p3p008202)はふぅんと魔物を観察した。
(あんなのが居たんじゃ確かに花は摘めないね……)
 妖精フィラとあの魔物ではまずサイズが違いすぎる。妖精など丸呑みにされてしまいそうではないか。
 それ以前に、この自然の中ではやはり『不自然な』生物だ。
「はぁい君! なんでそんなに怒ってんのさ、大人しく帰っては……もらえないよね」
 やっぱりダメか、とレニーは肩を竦める。まあ、試すだけ試してみるものである。
「じゃあ実力行使! 悪く思わないでね!」
 とん、と地を蹴ったレニーは一気に敵の懐まで入り込む。手甲を嵌めた手をぐっと握って──まずは1発。
 熊のような巨体と戦う間にも、尻尾の蛇たちは自立して他へと狙いを定めていく。魔力弾が飛ぶ中、幻はシルクハットをひらめかせた。
 大がかりな奇術も幻にかかればあっという間。夢を見せたかと思えば己の罪を暴くようなスクリーンが彼らへ迫る。
「まだまだ奇術は続きますよ」
 けれども夢から覚めれば現実が待っている。蛇たちは覚醒するとあちこちへ魔力弾を吐き出した。
 それらのうち1つは真っすぐ、遠くへ──フィラの元へ。
「──っ!」
 はっと何人かが振り返る中、射線を遮っていたマルクが身を挺す。彼の背に守られたフィラは無傷だ。
「こちらは任せて、皆は魔獣を!」
 彼の言葉に仲間たちは頷き、再び魔物の方を見る。リゲルの銀閃が真一文字に引かれ後ろへと強く押し出される魔物。敵へ武器を向ける仲間たちの消耗具合を見ながら、マルクは攻守柔軟な動きを見せた。
(皆と連携して戦わないと、厳しそうだからね)
 体力が減った者には治療を。そうでなければ神聖なる光で敵を打ちのめす。胴体の熊と尻尾の蛇は苦しむように身をよじらせた。
(……こんな歪な姿、きっと望んで生まれた姿ではないのだろうけれど)
 剣を振るいながらシャルレィスはぐ、と目元に力を入れる。複雑な思いを押しとどめるかのように。
 本来ならば可哀想な生物なのだろう。けれど──倒さなければ。
「せめて、自然に還れますように……!」
 シャルレィスの振るった剣が蛇の頭を跳ね飛ばす。その血は剣を濡らすかと思われたが、纏う風によって地面へと落ちていった。
(まずは1匹、か?)
 それを視線で追いながらサイズは鎌を持つ手に力を籠める。まだ終わっていない、熊1体と蛇2匹が残っている。
 自分がどこまで戦えるか、敵がまだどれだけの力を隠しているのかはわからない。けれども戦えるところまで戦う他ないのだ。
 部位を破壊しようと魔力撃で迫るサイズ。レニーが素早くコンビネーションで敵を翻弄し、追い詰めていく。
 そこへさらに畳みかけていくのはヨハンに庇われたミーティアだ。
「いつも可愛らしいけど、やっぱり大先輩ね。格好良いわ!」
「ふふん、僕も最前線で戦うことを本職としていた時期があるんです」
 リゲルの剣に我関せずと言わんばかりな蛇の攻撃を受け止めながらヨハンがにっと笑う。いつもとちょっと違った彼にミーティアは場違いながらも心ときめくのを抑えられない。
(ヨハンくんが一緒なら全然怖くないわ!)
 がむしゃらに戦うだけでは後ろまで助けられない、と戦闘スタイルを変えた彼。臨機応変に守ってくれるヨハンとともにいればどんなに恐ろしい魔獣だって倒せてしまう。
「やってやるわよ! 真っすぐ行ってブッ飛ばす!」
 ミーティアはその言葉通りに駆け、深く間合いへ踏み込んで大剣を振るう。魔物が悲痛な声と共にもんどりうった。しかし魔物はそれでもまだ立ち上がり、花畑の花を踏む。
「──花を踏んだな、お前」
 低く、重く。クロバが魔物を鋭く見据える。
 言葉がわかるのならば、花如きと笑うのだろう。ただの花だと。そうでないものの区別などつくわけがない。
 そこに込められた想いだって──理解など、きっと。
 ガンブレードに魔力を込めてクロバは肉薄する。残った蛇の魔力弾を受けようとも止まらない、止まれない。
「これ以上、花を、想いを踏みにじるな!!」
 至近距離の爆炎。クロバは1撃目で熊の背へ深い傷をつけ、2撃目でその先にいた蛇の頭をまた1頭落とす。直後に肩へ鋭い痛みを感じて視線を向けると、残った1匹が食いついていた。
「まだやるってんなら──聞き分けない君にお仕置きだ!」
 熊が威嚇し、最後に残った蛇がクロバの血に濡れた牙を剥きだしにする中レニーが飛び込む。掌底から獅子の顔を象った魔力を叩き込み、爆発によって吹き飛ばす。ごろごろと転がった魔物は素早く起き上がった──が。
 低く唸りを上げながらもイレギュラーズたちを、その後ろにいる妖精を睨みつけた魔物。それは身体の至る所から血を流しながらも、森へ飛び込むようにして姿を眩ませる。
 花畑を荒らす可能性は考えていたものの、まさか真逆へ向かうとは思っていなかったイレギュラーズ。慌ててその後を追おうとするが、そちらはこれまで通ってきた薄暗い場所だ。
「逃げた? まさか……」
 サイズは考える素振りを見せ、けれど緩く頭を振る。今はひとまず、妖精のことを考えるべきだ。
 もう大丈夫? と問うフィラにマルクは恐らくはと頷く。ほっとした表情を浮かべるフィラとは少しばかり離れた場所で、幻は手元に何かを出しているようだった。

 皆様これを、と幻が配ったのは写真だ。それを覗き込んだフィラが目をまん丸にする。
「あおいはな! とじこめられちゃった!」
 初めて見たのだろう。素直な感想に笑みが漏れる。本当は写し取っただけ、なのだけれど。
「これを元に探してみましょう」
「そうだね。まだ荒らされていない所を探せば、花束を作ることはできそうだ」
 マルクが辺りを見渡して頷く。ここがダメなら他の花畑も探してみようかと思っていたが、奥の方には無事な花が沢山咲いていそうだ。
「それじゃあ、花畑に行って花束を作ろっか!」
 シャルレィスの言葉に頷き、そちらへと移動した一同はフィラとともに花を摘み始める。色とりどりの花が咲き乱れ、青でなくたって珍しく美しい花ばかり。
「妖精様、こちらも如何でしょうか」
 幻の美術センスがこれだと告げた、その花を見せるとフィラはぱっと表情を輝かせる。
「きれい! ねえ、はなたばにいれてもいい?」
「勿論です」
「フィラちゃん、」
 微笑んで頷く幻。その傍らへ歩み寄ったミーティアがはい、と手に持っていたものを差し出した。
「これ、新しい花束。青いお花集めてみたの」
 それはミーティアの、どうにかして元気になってほしい気持ちがこもった青のミニブーケ。受け取ったフィラは嬉しそうにそれと幻からの花を抱えてくるくる回る。
「おや、親愛なる友人はすっかり元気いっぱいだな」
 その言葉にフィラが振り向くと、手に小さな花束を持ったリゲルが微笑んでいる。笑顔が見たくて作った花束だけれど、不要だっただろうか?
「いいえ、いいえ! そんなことは!」
 リゲルの周りをくるりと飛んだフィラはもらった花々を一旦花畑へと下ろして。その近くにあったものを「よいしょ!」と持ち上げる。
「おおきなヒト、そのおおきさにみあったはなたばをどうぞ!」
 皆が自分と同じサイズで花束を作ったから、自分もあなたたち(イレギュラーズたち)に見合ったサイズの花束を。
 受け取ったリゲルはそれに目を丸くして、それは嬉しそうに相好を崩した。まさかこの大きさの花束を作ってくれるとは思わなかったから。
「ちゃんともくてきのもの、つくれたよ!」
 嬉しそうに新しく作った花束を見せてくれるフィラ。それはきっとアーカンシェルの向こう──妖精郷の友人へ贈るものなのだろう。
(君が無事で良かった)
 友人がこうして、笑顔を見せてくれて。
「フィラ。今は少し危ないかもしれないが……また遊びに来てくれると嬉しいよ」
「もちろん! やくそく!」
 差し出された小指にフィラは目を瞬かせ、破顔してリゲルの指を両手で握る。まるで握手のような指切りげんまんを経て、フィラは沢山の花を土産にアーカンシェルへ飛び込んでいったのだった。

成否

成功

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