PandoraPartyProject

シナリオ詳細

海から人間へ

完了

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オープニング

●優しい人間

 人間の住んでいる町は、大層美しいと聞く。人間は、魚よりもまた獣物よりも人情があって優しいと聞いている
人間は、この世界の中うちで一番優しいものだと聞いている。そして可哀そうな者や頼りない者は決していじめたり、苦しめたりすることはないと聞いている。一旦いったん手附けたなら、決して、それを捨てないとも聞いている

……でも、本当にそうかしら。人間は飽きっぽいとも聞く。目新しいものを見つけるとすぐに古いものを捨ててしまうと聞いている
人間の心が本当に優しいのかこの目で確かめてみよう

 北風がぴゅぅっと吹き、海を凍えさせる。海の生き物は皆その寒さにびっくりして身を震わせた



 人間の住んでいる町は美しい。木造建ての家屋が礼儀正しく、石畳の道の端へ肩を寄せ合い並んでいる。港には何艘もの船が浮かんでおり、漁師達が毎日せわしなく働いていた。町の高台から見える昼間の海は美しく、太陽の明かりに照らされて水面がキラキラと光り輝く。ここは港町


 厚く、黒い雲が空に覆いかぶさっている夜。ざざーん、ざざーんと唸る波の音を聞きながら砂浜を歩いていた。……暫くふらふらと歩いていたが、藻がこびりついた岩の上に、何かが置いてあるのが見えた

 なんだろう

 と、ソレに近づき持ち上げてみる。真っ暗でよく見えなかったが、こんな真っ暗な夜に眼に留まるとは何かの縁だろう。もしかすると神様からのお授けものかもしれないと、不可思議なソレを家へ持ち帰ってみることにした


 ちゅんちゅんと鳴く小鳥の声が硝子戸の外から聞こえてくる
 朝、眠りから覚めてからソレを見てみると――であった
 ずっと昔に手放してしまい後悔したモノ。大切な人が持っていたモノ。長年探し求めていたモノ

これは大切にしなくてはならない

 昨夜砂浜で拾ったソレを手に取ると、静かに呟いのであった

NMコメント

こんにちは、こんばんは。佐茂助と申します
二度目のラリーです。よろしくお願いします

人魚と赤い蝋燭という名作をご存じでしょうか? 日本のアンデルセンとも言われている作家小川未明の傑作をお借りして考えてみました
今回の流れとしては

一章目:夜の海で拾ったものを見てみる(ソレはあなたに所縁のあるものです)
二章目:拾ったものを売ってくれないかとお願いされるので断ってください。大金を積まれますが断ってください
三章目:相手は諦めず交渉に来ます。売るか、売らぬか決めてください。理由もお願いします

という感じです
因みに今回のNPC? である冒頭に出てきた人は。人間であり、人間であらず。海に住まう人間に憧れた者です。でも疑心暗鬼が働いて人間(あなた)を試すようなことをしています

――あなたはいったん手を附けたソレを手放してしまいますか? それともずっと取っておきますか? ……ソレがあなたにとって大事なモノだとしても


皆様のご参加お待ちしております

  • 海から人間へ完了
  • NM名伊与太
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年04月01日 22時05分
  • 章数3章
  • 総採用数9人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

アト・サイン(p3p001394)
観光客

 アトが昨夜拾ったのは拳銃だった。片手にずっしりと重さを感じる、黒く怪しげな光を放つ美しき銃
 それは自分のものであることは間違いない

「おや、どうしてコイツが……」

 混沌に召喚されてから銃を手に入れた
 銃は弓矢や投げナイフよりも簡単に遠距離攻撃できるからダンジョンで重宝する

 アトは部屋の隅に置いてある皮のソファーに深く腰を下ろし、銃を分解して管手入れを始めた
 ニスが塗られてるせいか、朝日を浴びてつやつやと光る木製のテーブルの上。ネジ一本に至るまで、全てを外してバラバラにする

 彼はこれまで幾度となく冒険で銃を使ってきた。様々な国を渡り歩き、何度も事件を解決へと導いてきた。事件解決の為にこの身を危険に晒したこともあったっけかな
 その思いを振り返りながら油をさし、ブラシで磨く

 今は銃を手放せない……少なくともこの混沌では

 カチャリと最後の部品をはめ、下から見上げてみる。銃はハンマーからトリガーに至るまで綺麗に磨かれており、磨かれる前よりもどこか嬉しそうに感じる

「よし、ピカピカに磨いた」

 綺麗になった銃を眺めながら、アトは満足そうに呟いた。そして今日も榛色のクロークに身を包み旅へ出かけるのだった

成否

成功


第1章 第2節

ゲンセイ(p3p007948)
七星御剣

 銀色の髪を揺らしながら、ゲンセイは寒気を感じて瞼を開く
 見渡すと幻想的な月明りが紺碧の海原を照らしていた
 ……どうやら眠ってしまっていたようだ

「なんで寝ていたんだっけ?」

 ざぁざぁとぶつかり合う波の音を聞きながら、ゲンセイは首を傾げた。ふと、目頭が熱くなっていたことに気が付く。海風に吹かれた冷たい手を下瞼置くとヒリヒリと痛んだ

『ああ、そうか
 悲しくて苦しくて
 誰かに見られないように泣いていたんだ
 そのうち穏やかな潮騒が心地よくなって眠ってしまったのだろう』

 ふらりと砂浜を歩き出す。さらさらと乾いた砂が宙を舞う
 ふと何やら光るものを見つけ手に取ってみる

「これは……二胡の駒、だろうか」

 指先ほどの大きさで艶のない黒色をした楓の油煎駒だ
 油で揚げられていて豊かな音が表現できる

「高名な奏者も使ってる品だからキミにあげるよ」

 と、そう……言って、自分にくれたのは誰だったか?
 ……下手な演奏をいつも聴いてくれていたのは誰だったか?

 ぐるぐると渦巻く記憶を一つ一つ手繰り寄せ思い出していく。だが、どうしてだろう……どれだけ手繰り寄せても思い出せないのは

 震える手に、ぽたりとまた雫が落ちた


 ――太陽はまだ沈んだまま

成否

成功


第1章 第3節

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー

「ん? これ……なんだっけな……?
 ……! 思い出した」

 昨夜海岸で拾ったソレを朝日に翳しながら葵は目を丸くさせた

「初めてオヤジに買ってもらったサッカーボールじゃないスか」
 葵が小学生の時に父親に買ってもらった4号球の作家ボール。柄も擦り切れてほとんど真っ白に近い。随分使い込んでいたようだ
「懐かしいな、土で汚れまくるわ柄がほとんど消えるわ、ミスって川に落としてアレじゃねぇと嫌だとか駄々こねて……うっわ、思い出しただけで恥っずい……」
 あの時はめっちゃ嬉しかったっけなと、目を細めながら抱えたサッカーボールに視線を落とした
 ご飯の時間も忘れてただがむしゃらにボールを蹴っていた。気づいた時にはいつも、日がすっかり落ちていて、辺りは真っ暗になっていた

「いや、でも何でこんなトコにあるっつーか、流れ着いいたっつーか……」
 葵はうーんと首を傾けた
「あーなるほど コレ、さてはオレの記憶から出てきたタイプのアレっスね?」
 指の上で白くなったボールをくるくると回しながら葵は、この際何でもいいけどよと、呟く

「しかしどーすっかな?
 今更これを使うわけにいかねぇし……」

 髪をガシガシと掻き上げながら葵は小さくふうっとため息をついた


成否

成功


第1章 第4節

ハルア・フィーン(p3p007983)
おもひで

 ――ああ……懐かしい音
 優しいやさしい海の音
 海は荒れ狂う時もあるけれどそれも海の大切な役目で
 だけど優しい海の音もやっぱり凄く良い――久しぶりに聴いた気がする

 ざざーん、ざざーん

 波が爪先を撫でた。冷たい
 金色の丸い月が黒い海の水面に写っている
 海風がボクの長い髪を優しく解かす。それがあまりにも心地よくて、瞼がトロンと下がってしまいそうになる


 朝日がカーテンの隙間から差し込み、薄暗かった部屋を照らし出す

 ボクは穏やかな気持ちで海から帰ってそのまま眠ったんだね
 何を持って帰ったのかな
 眠り眼で枕元を見つめる

「……ススキ一房」
 枯れたやつじゃなくて、瑞々しく生きているの。月白のふわふわと垂れさがった花々が可愛らしい

「……懐かしい」
 ボクの覚えている、ボクのいた世界で見た気のする景色、月の綺麗な一面のススキ野原
 ……あれはここにくるすぐ前のこと? それとももっと

 ハルアは紫水晶の瞳を閉じて思い出してみる。記憶のずっと奥深く、きっとこれは大切な思い出のはずだから。……でも不思議とそれを思い出せはしない
 ハルアはそっとススキを持ち直す。あぁ、懐かしい
 額の石に触れる時みたいな、優しさだ

 いつか、近いうちに思い出せるのかな

 そうしてハルアはもう一度、紫水晶の透き通った瞳をゆっくり閉じた

成否

成功


第1章 第5節

ペッカート・D・パッツィーア(p3p005201)
極夜

 ――俺はこれを失くした筈だ。
 本を拾った。魔導書だ。いや本はどうでもいい。肝心なのはその本に挟まっている栞だ

 ペッカートの手には一枚の栞

 元の世界で人間の友達にもらった薔薇。枯れないように魔法をかけて栞に加工した

 なぜ栞なのか……そう、あの頃は魔術の習得のために本を良く読んでいたからだ

 この薔薇の栞は宝石のように綺麗で何があろうと壊れない。あの人間もそうであるように、いつまでも隣にいてくれるように。そんな不可能な願い(呪い)を込めた代物だ

 美しく気高い燃えるような真っ赤な赤。愛する人に捧げる贈り物。だが、決して安易な気持ちで近づいてはならない。薔薇の纏う鋭く尖った棘に刺されてしまうから

 俺はこれを失くした筈だ
 正しくは失くしたことにして棄てた
 人間が枯れた(老いて灰になった)ときに人間との思い出の全てを俺が燃やしたんだ。読み掛けのこの魔導書ごと……

 生きる時があまりにも違い過ぎる俺と、あの人間と。同じ時を過ごすことは許されなかった
 永遠の愛など馬鹿らしい。そう、人間はいつか枯れる。薔薇も同じだ。枯れない、枯れることができない俺は……棄てる(諦める)ことで自分の気持ちを枯らしている

 ペッカートは薄ら笑う

 ……困るぜ。せっかく忘れてたのに

成否

成功

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