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シナリオ詳細

曼珠沙華と回らない木馬

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●曼珠沙華の庭
 一面の赤い赤い花咲く庭に混じって、手のひらにのるほど小さな妖精が寝そべっていた。
 赤い和服を着込んだ妖精は、うっすらと、ぱちぱちと、あなたをみとめて目を開いた。
「あらぁ、どなた? まって、当てるから」
 妖精は立ち上がると、花火のように美しい放射状の華を羽にしてあなたの顔の高さまで飛び上がった。
 あなたの顔をまじまじと見つめ床か唐突にくすりとわらった。
「わかった。ローレットのひとね? ストレリチアが言ってたとおり」
 否定するようなこともない。あなたに対して、妖精はくすくすと笑い続けている。

 妖精ストレリチアとの出会いについては割愛するとして、彼女とのつながりの中でローレットの得たいくつかの知識を説明しておこう。
 彼女たちは妖精郷アルヴィオンからやってきた妖精(妖精)である。一般性共通項として身長が30センチほどしかなく、花の要素を含むことが多いとされる。
 彼女たちは『妖精の門(アーカンシェル)』という異空間ゲートを通してこちらへやってくるが、このゲートを通れるのはアルヴィオンからやってきた妖精たちだけだという。
 このあたりで勘のいい読者諸兄はお気づきのことと思われるが、彼女たちがローレットに依頼する内容のほとんどは、このアーカンシェルがらみであった。
 そしてまた、今回も例外ではない。

「ねえ、ローレットのひと」
 赤い花の妖精は、『いとしいひと』と同じトーンで、艶っぽくあなたをそう称した。
「私がお気に入りにしてるゲートがね、おかしな魔物に襲われてるの。
 きっとゲートを壊すつもりなんだわぁ」
 はあ、とけだるげにため息をつて、妖精は懐から小さな小さなキセルをとりだした。
 指先をぱちぱちとならし、小さな火をおこしてキセルに火をつけると、煙をゆっくりと吸う。
 三秒ほどだろうか。
 沈黙が続いたそのあとに、妖精は艶めいたため息と煙草の煙をまぜて、あなたに囁いた。
「あの魔物、倒してくださらない?」

●回らない木馬
 妖精が『お気に入り』と称しているゲートは、こことはまた別の場所……リコリス・ラジアータの咲き乱れる野原の中心にあった。
 宙に浮かぶ虹色のサークルで、普段は招かれざる客を拒むべく結界がはられているが、今まさにその結界の破壊が行われているというのだ。
 そんな状況にあってなお、花の中で眠れる妖精も豪胆ではあるが……さておき。
「見えるところまで行ってみればわかるわ、ほら」
 キセルの先端で指し示す妖精。
 言われるままに結界の周りをみてみると、ぱっからぱっからと木馬が走っていた。
 馬をかたどった木製の乗り物で、柱が縦にとおっている。
 メリーゴーランドから馬と柱だけが抜け出たものと述べればわかりやすいだろうか。
 木馬のうえには人間サイズのデッサン人形がまたがり、これまた木製の槍や剣や盾を装備している。
 おもちゃの兵隊。
 悪い冗談。
 悪夢の顕現。
 どのように述べてもよいが、少なくともあれらが敵意と悪意で動いていることだけは確かだった。
 くるり、と首だけをまわしてこちらをみる人形たち。
 こちらの気配に気づいたのだろうか。彼らはカタカタと人間ではありえない関節動作をとると、どこからともなく無数の歩兵人形が現れた。
 彼らもまた木でできたデッサン人形。木の武器を手に、一斉に構える。
 どうやら戦闘は、避けて通れぬ様子である。

GMコメント

■オーダー
・成功条件:魔物をすべて倒す。もしくは撤退させる。

■エネミーデータ
 エネミーは多数の人形歩兵と8体前後の木馬騎士によって構成されている。
 沢山の雑兵を蹴散らすためのプレイングを前半、自分と同等かそれ以上の敵と戦うためのプレイングを後半に分けて書くとよいだろう。

・人形歩兵×多数
 木製人形の歩兵。結界破壊中の木馬騎士に近づかせないために展開している兵隊なので、まずは彼らを倒しきらないといけないだろう。
 ここの戦闘力は低く、関節部分ももろくてだいぶ壊れやすい。数だけは沢山いるので、効率よく蹴散らしていこう。
 後半に消耗しすぎるといけないので、使うスキルには気をつけていきたい。

・木馬騎士
 飛行能力を有し、木でできた剣や銃を用いて攻撃する。
 神秘攻撃力と命中に優れ、高コストだが【防無】や【必殺】といった攻撃スキルを有している。
 範囲攻撃は得意としていないが、想定火力が高いため攻撃対象の集中をさけることが望ましい。
 推奨戦術は分散による各自同時制圧。他者連携やサポートによって強みを発揮する場合は相談のうえ同数との戦闘を考慮するのもよい。

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • 曼珠沙華と回らない木馬完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年03月26日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

鶫 四音(p3p000375)
カーマインの抱擁
ルウ・ジャガーノート(p3p000937)
暴風
グレン・ロジャース(p3p005709)
理想の求心者
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫
アリーシャ=エルミナール(p3p006281)
雷霆騎士・砂牙
フィーネ・ヴィユノーク・シュネーブラウ(p3p006734)
薊の傍らに
アルメリア・イーグルトン(p3p006810)
緑雷の魔女
長月・イナリ(p3p008096)
狐です

リプレイ

●妖精と人形
 杉の枝に腰掛けて、胸元にひっかけていたキセルをくわえなおす曼珠沙華の妖精。
「どのくらい、かかりそうかしら」
「そう長くはかけねえよ。見てな」
 『暴猛たる巨牛』ルウ・ジャガーノート(p3p000937)は背負っていた剣を頭の上へかざし、腰にさげていた短剣を左手で抜く。
 相当なパワースタイルで構えるルウに、しかし妖精は驚くこともなくフウと煙をはいた。
「おねがいね」
「……調子狂うな。だいぶ艶っぽいが、妖精ってのはみんなああなのか?」
「うーん……」
 『かつての隠者』アルメリア・イーグルトン(p3p006810)は脳裏に妖精ストレリチアのイメージをうかべた。『なのなの!』と言いながら元気に跳ねる子供のような妖精である。おそらくは、あれがスタンダードだろう。
「凄く珍しいタイプの人、ね。お母さんと気が合いそうというか………」
「妖精にも、いろんな方がいるんですのねー」
 『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)は喉の調子を整えるために指で喉元をなで、戦いの準備を進めていた。
「このゲートが、お気に入りだとかー」
「気に入るのも分かる気がするわね……」
 『新米の稲荷様』長月・イナリ(p3p008096)はフードの下でなでつけていた耳をたて、曼珠沙華でいっぱいのゲートを見た。結界で閉ざされており、その結界を破ろうと木馬にのった人形が槍でがしがしと攻撃を加えている最中である。
「ヒガンバナ、リコリス・ラジアータ、狐華……どことなく親近感がある花ね」
 革の袋におさめていた剣を抜き、印をきって権能をアンロックするイナリ。
 彼女たちの様子に既に気づいているのだろう。
 召喚された人形歩兵たちはそれぞれ人間と同じように立ち人間と同じように剣をとり、しかし人間とはまず思えない重心動作でこちらへと身構えた。
「一面の曼珠沙華に、一面のデッサン人形……タチの悪い冗談としか思えない光景ですね」
 意図的に、そして本能的に拒絶の意思で精神障壁を作り出す『支える者』フィーネ・ヴィユノーク・シュネーブラウ(p3p006734)。
「曼珠沙華だけであれば美しくもあるのでしょうが……妖精さん、あとで一輪いただけますか?」
「あら」
 妖精はキセルをくわえたまま口の片端で笑って、一秒ほどの沈黙をはさんだのち煙をはいて言った。
「野花に持ち主なんていないわ。好きなだけ、摘み取ればいいのよ。残っていれば、ね」
「そのためにも、結界は守っておかないとな」
 『不沈要塞』グレン・ロジャース(p3p005709)は鎧に固定する形で持ち運んでいた槍と盾をはずすと、それぞれ両腕に装備した。
「これから摘む花が踏み散らかされたらたまらん。
 奴らもワラワラとまぁご苦労なこった。誰が造ったか知らないが、趣味も出来も悪い玩具共だぜ」
「作った、ねえ……」
 『カーマインの抱擁』鶫 四音(p3p000375)は背から伸びた骨の方で自分の腰を抱くと、もう一方の骨腕で顎に手を当てた。
「見ようによっては可愛げのある相手とも言えますけれど、こうも露骨に殺意を向けられては……」
「木偶人形の兵士と騎士。この手の魔法生物は大抵魔力を吹き込んだ者がいるのですが……近くにはいないようですね。それとも、この世界では木に人形の兵士が実ったりでもするのです?」
「まさか」
 剣を抜く『流転騎士』アリーシャ=エルミナール(p3p006281)。
 四音もぱたぱたと手を振り、骨の腕と共に身構えた。
 人形歩兵たちが剣を振りかざし、ガチャガチャとした不自然な足取りで一斉に襲いかかってくる。
「ともあれ、悪いおもちゃはかたづけてしまいましょう」
 これもきっと、降りかかる火の粉というヤツなんだろうから。

●人形歩兵
 空から糸でつったかのような動きをする人形たち。
 木でできた剣を振りかざし、腰部分でぐるぐると無限回転しながら斬りかかる。
 グレンは盾をはさんで斬撃をうけるが、回転ノコギリばりの斬撃に歯を食いしばった。
「四音、フィーネ。俺の後ろに隠れてろよ!」
 盾を一旦押しつけ、足で裏から蹴りつけるようにして人形と距離をあけるグレン。
 そんなグレンに対し新たに四体ほどの人形が一斉に襲いかかり、まるで一個体の人間が意思をもって動かしているかのごとく全く同じ動きによる上段斜め斬りが打ち込まれる。
 猛攻につぐ猛攻。槍を水平にかざして剣を受けるが、さしものグレンといえどこれだけの攻撃を重ねられてはHPがいくらあっても足りないといった様子だった。
 が、それでも心は折れない……もといカッコはつけるのがグレンである。
「美しい花々とレディ達は傷付けさせないってな!」
「お上手ですね」
「レディって、私のことですか?」
 グレンを文字通り盾にしていた四音とフィーネが後ろから顔を出した。
 防御がままならず腕や足、腰といった部位に斬撃を受け出血するグレンに、四音が七色の粘菌集合体を流し込んで傷口を強制的に塞いでいく。
「う、うお」
「倒れてしまっては困りますからね? がんばってくださいね?」
 きらめくような笑顔で述べる四音。
 苦笑いするグレンに、今度はフィーネが『喪失の否定』を開始した。
 フィーネがきわめて限定的に生み出した精神感応フィールドの中で、グレンのうけた肉体的損傷が『なかったこと』に変えられていく。
「妖精さんの『お気に入り』を守るためです。がんばりましょう」
「こうもレディたちに応援されちゃあやる気も出ようってもんだ」
 在庫処分セールのごとく気合いを振り絞って、グレンは槍ごと人形たちを押し返した。
「防御は任せろ、今のうちに――」
「今のうちに、『こう』ね!」
 イナリは大地に剣を突き立て、剣を通して権能を行使。
 地中の鉱石その他が瞬間的に凝固、圧迫され、いびつな石壁となって飛び出した。
 次々と柱状の石塊が飛び出すなかを、人形たちは飛び退くように回避……するが、避けきれない者が石によってカタパルト式に放り投げられ、結界を今まさに破壊しようとしている人形騎士たちの足下へと転がった。
 落下のショックで砕けたらしく、足にぶつかった頭をけりつけて人形騎士は首だけで振り返った。
「一箇所に纏まっててくれるのは楽でいいわね」
「そういうこった。でもって、こうして散ってるともっと楽なんだよな」
 ルウは短剣を握った拳で大地を殴ると、変則型クラウチングスタートの勢いでダッシュ。
 肩に担いでいた大剣をショルダータックルの勢いで一個体に叩きつけると、その場で腕の引き締めを解放。バーストしたコマのように大回転を始めた。
 たとえ相手が常人であっても五体がバラけて飛んでいきそうな猛攻。各関節部の接続があやうい人形歩兵など、まるでそういう仕掛けのおもちゃのごとく手足を爆散させていった。
「うざったい木偶共だぜ! オラ、纏めて片付けてやるよっ!」
「なるほど、ああいう戦い方もありますか」
 一方のアリーシャはといえば冷静に状況を見極め、グレンの誘導にかからなかった人形歩兵へ回り込んで剣を両手持ちでしっかりと構えて見せた。
 剣道でいうところの正眼の構えである。
 人形は彼女の頭をかちわらんばかりに剣を振り上げ、体重移動などあったものではない動きで振り込んでくる。
「――」
 間合いを引いて剣をよけ、素早く詰めて相手を横切る。
 人形歩兵とすれ違った後に残ったのは、首から上をおとされて崩れる人形と、剣をコンパクトに振り抜いてすぐさま次の動作にうつるアリーシャであった。
 孤立した対象を狙うべき。人形はそう判断したのだろうか。複数体の人形が先ほどと全くにたような動きで剣を振りかざし、アリーシャへと集中する。
「10秒だけ耐えて」
 声。アリーシャは無言のまま防御をがっちりと固めると、四方八方からの打撃に歯を食いしばった。次にもう一度集中攻撃を食らえばまずい――が、声の主はそれを許す様子はなかった。
 よじ登った木の枝から飛び、頭上から強襲をかけるアルメリア。
 開いた右手には三重にした分厚く描かれ濃い模様のようにすらみえる魔方陣。
 その中央だけを安全地帯とし、アリーシャ周囲の円形エリアに電撃によるプレスを仕掛けた。
 仕掛けた……だけではない。接触と同時に左手に仕込んでいたもう一組の魔方陣を起動。オクタコアによる魔方陣による強引すぎるプレスにより、人形歩兵たちをごりごりにすりつぶしていく。
「ユゥリアリア、仕上げよ」
「かしこまりましたわー」
 ユゥリアリアは短く圧縮された詠唱(うた)を行使すると、彼女の眼前に氷の銃が生まれた。
 唱銃をとり、新たに召喚された人形たちへと水平に構える。
 姿勢としてはC.A.R Systemの至近銃撃フォームである。さておき、ユゥリアリアが氷のトリガーをひくと超圧縮された詠唱が『キュン』という音となって発射され、人形たちへと着弾。爆発。のろいの渦をまき砕いて殺した。
 散った破片が木馬にぶつかり、今度こそこちらへ振り返る人形の木馬騎士たち。
 人形歩兵では足止めにもならないと判断したのだろう。
 結界の破壊をやめ、剣や槍を構えてこちらへ突撃の姿勢をとった。

●木馬遊び
 一斉攻撃――に先んじて、四音は木馬騎士へと突撃。
 迎撃の構えから薙ぐように剣を振り込んだ騎士を回避し、四音は大きく跳躍した。
 騎士の頭上を飛び越え、反転しながら七色の粘菌を発射。
 一回転して着地すると、騎士を無視するように走り始めた。
 顔に粘着した粘菌を拭い取り、じゅくじゅくと溶け始める頭部の様子を無視して四音を追いかける騎士。
 が、それを強引に阻んだのがイナリであった。
 剣による突撃を、地面から飛び出させた石壁で防御。
 それすらも破壊した剣がイナリの身体に刺さるも、肉体までには届かなかった。
 なぜならば……。
「壊れた玩具というのは少し寂しさを催される物ですが、作った方はどうなんでしょうね?」
 四音が対抗して放っておいた増殖粘菌が銀色の生体装甲となり、イナリの身体に鎧としてまとわりついていたためである。
 サイドから飛び込んできた騎士の突撃も鎧で受け止め、イナリは古剣に力を込める。
「『将を射んと欲すればまず馬を射よ』――ね」
 イナリは攻撃に対する防御や回避をあえて捨て、粘菌装甲にカウンターヒールを任せると、至近距離から『天孫降臨・軻遇突智砲』を発射した。
 火の神の権能を剣に宿し、細く精密な熱光線によって馬の足だけを切り取っていく。
 転倒し落馬した騎士達が起き上がるより早く、イナリは剣にさらなる力を込め、巨大な炎の剣へと変化。騎士たちの間をジグザグに駆け抜け、彼らの胴体を斜めに切り取っていった。

 一方こちらはフィーネ。四音たちのやりとりを見ていたフィーネは、すぐそばの騎士まで近づくとべちんと木馬の尻部を平手ではたいた。
 誰とてそんなことをされれば注意を向けざるを得ない。騎士は首だけを180度まわしてフィーネを見、そして腕をふりあげ槍を頭上でぐるぐると無限回転させはじめた。
「う……」
 フィーネは露骨な威嚇に対して半歩ひき、そのまま背を向けて走り出す。
 彼女の背めがけて騎士が槍を突き込もう――としたその時。
「偉そうに馬なんか乗ってんじゃねぇぞっ! コラァッ!」
 横合いから飛び込んできたルウの拳が騎士の側頭部に命中。
 短剣を握りこむことで圧をましたパンチで、騎士はおもわず木馬から落馬した。
 どういう仕組みになっているのか、木馬は騎士を失ったことで力も失い、その場にがくんと崩れ落ちる。
「さて、次はお前らだぜ。こいつらと一緒に材木にでもなりやがれっ!」
 剣の柄についたわっかに手をひっかけ、ぐるぐると回転させはじめるルウ。
 起き上がった騎士は槍をルウの腹に突き刺し、加勢した別の騎士がルウの背後から槍を突き込んでくる。
 前後からぶっすりと差し込まれた槍が彼女の肉体を貫通し、口から血を上らせる……が。
 ルウは構わず騎士をぎろりとみおろしていた。
「効かねえ!」
 非常識なほどの腕力によって繰り出された剣が、騎士を縦に切り裂いていく。
 後ろから槍を刺していた騎士を、身体をひねることで逆に振り回して吹き飛ばすと、今度は短剣を投げつけた。
 刺さるまえにがしりとキャッチする騎士。
 と、そこでフィーネはルウの背後に隠れ、彼女に自らの異能を伝達させた。
 『いたくない』という気持ちと『傷つきたくない』という意思がルウの肉体を因果ごと変容させ、刺さっていたはずの槍が脇へと落ちた。
 それでも傷を塞ぎきることはできないが……。
「サンキュー。下がってな」
 ルウはフィーネの頭をなでると、後ろへとさげた。
 起き上がる騎士めがけ、さらなる突撃をしかけるためだ。

 氷の唱銃を連射しながら走るユゥリアリア。
 顔の横で水平に(横向きに)構えた銃での連射はぴったりとした命中精度で木馬騎士の馬へと着弾。キュキュンという音に圧縮された複数の唱(うた)が炸裂し、木馬が破壊された。
 転落をふせぎ着地した騎士が、剣と盾を供えてユゥリアリアへ突撃。
 彼女の防御が弱いことを見抜いてのチャージアタックだが……。
「残念。こっちは連携できるんだよ」
 突っ込んできた騎士の剣を鋼のグローブでつかみ取り、相手の力を利用してその場に転倒させるグレン。
 ユゥリアリアは彼の個性を活かし、グレンシールドの裏にかくれてさらなる射撃を続行した。
「レディの前なんでな。一丁カッコつけさせて貰うぜ!」
 騎士の猛攻を防御しつづけ、かつ自己治癒能力によって傷を塞いでいくグレン。
 が、それが通じるのは一対一のときだけだ。
 加勢にはいった別の騎士が突撃槍を投擲。
 腕に突き刺さったグレンはそのまま持っていた縦を飛ばされた。
「――ッ!」
「このままエスコート、よろしくお願いいたしますわねー。
 これでも多少荒っぽくても平気ですので、お気になさらずー」
 ガードをぬかれる。そう思ったグレンの脇へ、ユゥリアリアが躍り出た。
 唱銃を放り投げ、砕け散った銃の代わりに新たな詠唱を開始。手の中に生まれた氷の唱剣を握りこむと、木馬騎士へと突撃した。
 まさかの突撃に対応が遅れる騎士。
 腕で払おうとしたやさき、グレンがその腕をつかみ取った。
 氷の斬撃が、木馬騎士の胴体を切断していく。

 分断され、追い詰められる形になった木馬騎士たち。
 残る二体はアルメリアめがけて猛烈な突撃をしかけた。
「ちょっと、私狙いなの……!?」
 咄嗟に広げたマジックシールド
 騎士の剣を一本受け止めるが、木馬から飛んで背後へ回った騎士がアルメリアの背中を派手に切りつけた。
「――ッ! 調子に乗って……深緑の土を踏み荒らし、友人たる妖精を脅かした罪は重たいわよぉ……ッ!」
 至近距離で解き放つ電撃魔術の爆発。
 直撃をさけ、同時に飛び退く騎士たち。
 流れる血を治癒魔術でとめながら、アルメリアは息を整えた。
「ていうか、こいつらなんなのかしら。自然発生したモンスターって感じじゃあないわよね。人形だし。
 魔狼とかならまだわかるんだけど……謎だわ」
「捕まえて調べますか? その余裕はなさそうですが……」
 駆けつけたアリーシャがアルメリアの背を守るように構え、剣でサインを描いた。
「一気に行きます。まずはこちら側の一体を」
 そうつぶやくと同時にダッシュ。
 騎士は牽制のために剣を投擲してきたが、アルメリアが地面を殴りつけるようにして発動した魔術が大地を通して発動。地面から飛び出した石壁が騎士の剣を腕ごとカット。盛大に生まれた隙をついて、アリーシャが急速に距離をつめた。
 剣を覆うように生まれる幻。否、彼女が本来もつべき漆黒の刀身に白炎の刻印。グレートソード白炎剣がしっかりと握られ、騎士を真っ二つに切り裂いていく。
「もう一体!」
 くるりと転じて構えるアリーシャ。
 が、最後の一体となった騎士は木馬を猛烈に走らせ、落ちた血まみれの剣を拾ってその場から逃げ出してしまった。
 手のひらをかざし追撃の魔法を放とう……としたアルメリアだが、既にすっかり射程外のようだ。
「勝負あった……わねぇ」
 とろんとした蜜のような声が耳元でして、アルメリアははっとして振り返る。
 曼珠沙華の妖精が彼女の肩にこしかけて、キセルにぱちぱちと火をつけていた。
「……そうみたいね」
 構えをとくアルメリア。そういえば聞いてなかったわねと、ゲートと妖精を交互に見た。
「あなた、名前はなんて言うの?」
「ん、ん」
 どうだったかしら。と数秒おいて、ゲートのまわりにさく花を見た。
「manjusaka(マンジュシャカ)。『赤い花』――って意味の言葉、らしいわ」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――状況終了。依頼達成。

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