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シナリオ詳細

メリージェリーブロッサムと妖精郷の門

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●『からっぽ旅行記』『タオヤメの娘』『黄金の桜』
「季節外れの桜が満開に咲く庭を知っている?
 薄紅色の花弁が雨のようにふいて、甘い桜花の香りに満たされたそこは、『タオヤメ・ダンジョン』と呼ばれているのよ」
 『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)はそう語って、皮のバインダーを手に取った。
 収められているのは本……の、ごく一ページである。
 もしあなたが混沌世界の稀覯本に詳しいなら、これが『からっぽ旅行記』という本の一ページであることが分かるだろう。
 ずっとむかし古い冒険者があちこちのダンジョンを旅して集めた知識を本にしたものだが、ほんの多くは失われバラバラのページになって世界のあちこちに散っているというものだ。世界各地にコレクターがおり、ページ単位で高値がつくとも。
 そんな高価な品なので、貸し出されなどしない。あくまで写しである。
 ……さて、ページに話を戻そう。
 ページに描かれているのは湖と黄金の桜。
 これがバミスヤシー山麓村に伝わるおとぎ話『タオヤメの娘』の地であるとして、研究家たちからはタオヤメ・ダンジョンと呼ばれた。
「『タオヤメの娘』のストーリーは本題から外れるから脇に置くわね。
 重要なのは今回の依頼内容。それは……」
「『黄金の枝』を桜のもとまで戻すのよ」
 と。
 身長30センチほどの妖精が、両手を腰に当てて堂々と言った。
「でもって、私を妖精郷アルヴィオンへ帰らせてちょうだい!」

 妖精はメリージェリーブロッサムと名乗る花の精霊種(グリムアザーズ)である。
 象徴的にも、蝶のような羽根のかわりに桜の花弁が背についている。彼女は羽根をぱたぱたとやってタンポポの綿毛めいて浮き上がると、イレギュラーズたちの目線の高さへと至った。
「友達はメージェって呼ぶわ。私が守ってた黄金桜花の『妖精郷の門(アーカンシェル)』……えっと、ソトの人はタオヤメ・ダンジョンって呼ぶのかしら? そこから金枝の鍵が奪われちゃったの。それを取り戻して貰って、元の位置に戻してもらおうと思ったんだけど……」
 そこまで言って、メージェはプルーへ振り返った。
「偶然というべきかしらね。枝はラサ元ザントマン派の商人が持っていて、私たちは戦いの折りにそれを意図せず回収しているわ。
 もっと言えば、枝をアーカンシェルから持ち帰ったのも、私たちだったみたいね。
 二年前にローレットが『黄金の枝』を獲得する依頼を受けて、それを達成しているわ」
「素敵な偶然よね! 枝の持ち主と、門まで行ったことのある人たちに直接依頼できるなんて。私ってなんてついてるのかしら!」
 枝を持ち去ったことに対して特に悪感情を抱いてはいないらしく、メージェは笑顔を覚えたばかりの赤子のごとく無邪気に笑った。
「だから、ここからの依頼はも~っとシンプルよね。
 私と一緒に門まで行けばいいだけ。そこに至るまでに襲ってくるモンスターを退けてくれれば、それでOKよ!」
 つまりは要人警護。
 対象は妖精。
 目的は妖精郷の門をあけること、だという。

 プルーは過去の資料を開いてみせた。
「幸いなことに資料は残っているわ。
 ただ、鍵が失われたことでモンスターが凶悪化している可能性があるから、当時と全く同じとは思わないこと。苦戦することだって、もちろんあるはずよ」
 気をつけて。もし作戦続行が難しいくらい人数が減ったなら、ちゃんと中断して戻ること。
 と、念を押してからプルーは資料を手渡してきた。
 そんな真剣さとは裏腹に、メージェはいっそうキャッキャと笑う。
「さあ出かけましょ! ソトの人と一緒に冒険なんてワクワクするわね!」

GMコメント

■オーダー
・妖精郷の門(アーカンシェル)までの護衛

 メリージェリーブロッサム(相性メージェ)を護衛して門まで連れて行きます。
 このときタオヤメ・ダンジョンを通過するため、道中凶悪化したモンスターの襲撃が頻繁に予想されます。

■制限時間
 タオヤメ・ダンジョンは『一年に一度しか開かない』とされる異空間であり、これ自体が巨大な門の一部であります。
 今回はメージェの導きで異空間に入ることまではできますが、しばらくすると入り口が閉じてしまいます。
 幸いにも過去の経験から閉じるまでの時間を計測できているので、危なくなったら即引き返すことで閉じ込められるのを防ぐことができます。

※メタ的に言うと、探索や戦闘に時間をかけすぎると自動的に引き返し依頼失敗扱いになります。行方不明扱いにはならないのでご安心ください。
 またメタ的救済措置として制限時間を厳密に設定していません。
 漠然と『立ち止まってゆっくり休憩ができない』『合流や一時帰還をしてる余裕は無い』くらいに考えてください。あまり探索に時間がかかりすぎるようだと失敗判定のリスクが生じます。

・空間のねじれ
 タオヤメ・ダンジョンは枯れた桜木が大量に並ぶ森に見えます。
 木につけた印や空を飛んでの見回りや地図を書いての行軍は意味を成さず、おそらく空間があちこち歪んでつながっており正しい順路で進まなければいつまでも迷ってしまうという作りになっているようです。(同じ理由で、空にはみえない壁があり飛んでショートカットすることはできないようです)
 メージェは『門からソトへ』の順路を正しく理解しているので皆さんにとっての帰還は楽ですが、逆に『ソトから門へ』の順路は枝を喪失したことで歪んでしまいわからないそうです。
 ですので、しばらくはいったりきたりを繰り返すことになるでしょう。
(順路をある程度試せば理解できるようになるので、特別工夫はいらないでしょう。ひとつひとつの戦闘が長引かないようにだけ注意しましょう)

■エネミーデータ(序盤~中盤)
 やや凶悪化したモンスターたちです。
 過去のデータから若干の修正をしていますが、全体的にレベルが上がっているとのことです。

●花ウサギ
 毒の香りをさせるウサギ。二足歩行をする。
・短所:HP、命中
・戦闘力:とても低い
・使用スキル
 毒矢(神遠単【猛毒】)

●草ガエル
 鞭のような草を操るカエル。二足歩行をする。
・短所:HP、防御技術
・戦闘力:とても低い
・使用スキル
 草鞭(物至単【足止】【崩れ】)

●歩き桜(ウォークブロッサム)
 桜に擬態して襲ってくるモンスター。
・戦闘力:普通
・使用スキル
 枝で殴る(物近列)
 迷いの香り(神遠列【不吉】)

■エネミーデータ(終盤)
 黄金の桜に近づく段階で、以下のモンスターと遭遇します。
 ここからは事前情報にないメタ情報になります。
 遭遇したところで『なんだこいつは?』『情報にないぞ?』といったリアクションをとってもいいですし、見た目や動きから『こいつはこういう奴だな』と推察するロールプレイをしてもかまいません。

・????
 獅子の頭、山羊の角、蝙蝠の翼、蛇頭の尾、熊の爪――をもった獣です。
 低空ではありますが飛行能力をもち、物理攻撃に優れます。
 牙やツメは鋭く攻撃には『出血系』のBSが必ずついています。
 このモンスターは非常に強力ですが、皆で力を合わせれば踏ん張れるでしょう。
 そして、このモンスターはある程度のダメージをうけると撤退していきます。
※深追いしてもいいですが、今回の場合依頼失敗リスクが増大します

■『妖精郷の門(アーカンシェル)』
 妖精郷アルヴィオンへと続く門。
 メージェの話によると『そこから来た者』しか入ることが出来ない。
 要は今回メージェしか通れない門。
 厳密には桜のそばにある湖が門であり、ここへ飛び込むことでアルヴィオンへと帰ることができるらしい。

 枝を戻し門の再起動を確認したら、メージェは帰り道を教えてくれるのでこの時点で依頼成功。終了扱いとなります。

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • メリージェリーブロッサムと妖精郷の門完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年03月06日 22時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)
白き寓話
アリーシャ=エルミナール(p3p006281)
雷霆騎士・砂牙
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹
フィーネ・ヴィユノーク・シュネーブラウ(p3p006734)
薊の傍らに
蟻巣虻 舞妃蓮(p3p006901)
お前のようなアリスがいるか
ポムグラニット(p3p007218)
慈愛のアティック・ローズ
ゼファー(p3p007625)
祝福の風

リプレイ

●この花束にあふれた世界で
「おはなのようせいさん? ぐりむあざーす?
 わたしは ばらのぐりむあざーすよ。
 あえてうれしいわ。よろしくね」
 両手を伸ばした『ゆるふわ薔薇乙女』ポムグラニット(p3p007218)の指先に、桜花の妖精メリージェリーブロッサムはぴょんと飛び乗った。
「外の世界にも妖精はいるって聞いたけど、本当だったのね。あなたの出身はどこ? 銀の森かしら」
 妖精達が仲良くする光景を前に、『お道化て咲いた薔薇人形』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)はどこかほっこりとした表情でいた。
「また妖精さんが困っているのね……ええと、迷宮の先へ。タオヤメダンジョン、だったかしら? 大変ね、帰れないのはつらいものね」
「つまりは要人警護というわけですか」
 『流転騎士』アリーシャ=エルミナール(p3p006281)はスーツのタイを締め直すと背筋を伸ばした。
「情報によれば、タオヤメ・ダンジョンを探索できる時間は限られているとか。時間も限られているのであれば、急いだほうが良さそうですね」
「護衛というのは中々気を遣うが、成功させる為に気張るとしますかね」
 『真実穿つ銀弾』クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)も装備していたガンエッジの具合を軽く確かめてから、ぽんと柄を叩いてみせる。
「準備は?」
「ばっちりよ」
 ゼファー(p3p007625)も愛用の槍の具合を軽く確かめてから、槍の矛先カバーや担ぐための斜めがけバンドを鞄へと押し込んだ。
「要人警護なんて云うから、どんな厳ついお話かと思えば、やって来たのはとっても可愛らしいお客さんでした。と……。
 ふふ。あの子がお家にちゃんと帰れる様に頑張りませんとね?」

 タオヤメ・ダンジョン。
 絵本に語られる『手弱女の娘』というおはなしを由来とするダンジョンで、ウラシマ現象のおこる場所としても知られる。
 今回はそうならないための準備をし、妖精の導きによって本来開かないはずの時期にダンジョンへの道を開くという形で探索を開始した。

「前は『黄金の桜』も力が沢山あったから、この辺も満開の幻影が広がっていたんだけどね」
 そう語るメージェが指さすさきには、枯れた桜の木がいくつもいくつも広がっていた。
「おおお……」
 目を見開いて手を合わせる『支える者』フィーネ・ヴィユノーク・シュネーブラウ(p3p006734)。
「妖精さんと桜の樹、そして妖精郷に続く湖の門!
 どこからどうみても、お伽噺の一幕ではないですか! 流石は無辜なる混沌、素敵な場所があったものです!」
 ひとしきり興奮してから、コホンと咳払いをしてすまし顔に戻る。
「申し訳ありません、少々浮かれてしまいました」
「むりもないね。この状況でワクワクするのは、僕も同じだよ」
 『魔風の主』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)がおっとりと微笑み、そしてフィンガースナップと共に小さなイグニッション用魔方陣を起動した。
「ストレリチアと出会ったあの日から、ずいぶん妖精達を見かけるようになったね。ご縁が出来てとても嬉しいよ。必ず門まで送り届けるからね」
「なるほど」
 『お前のようなアリスがいるか』蟻巣虻 舞妃蓮(p3p006901)は虚空に向かってねじれるような角度で振り返って『アリスだ』と述べてからすぐにもとの姿勢に戻った。
「妖精郷の門とやらにも近づいてはみたいが、それはそれとして奇々怪々な迷宮の類はそれ単体で好ましい」
 杖をとんと地に着けて、拳に光を宿す舞妃蓮。
「時は金なり。早速、始めるとしよう」

●迷宮を抜けて
 草をムチのようにしならせる草ガエル。
 腕に絡みつくツタを引っ張って、ウィリアムはもう一方の腕を突き出した。
「倒せそうなやつから狙っていくから、連携は任せるよ」
 『吸魂魔刃』の魔法が起動し、草ガエルに突き刺さった円錐型魔方陣からエネルギーを吸収しはじめるウィリアム。
 ヴァイスは『白い代に城の跡』を発動させ、巻き付いた茨で草ガエルを切り裂いた。
 難なく倒せる……が、休んでいる暇はない。
 ヴァイスたちは頷きあい、地面に掘り返したような印を素早くつけながら走って行く。
「――」
 途中でぴくりと敵意に反応するヴァイス。毒の香りを纏い、木でできた剣を振りかざして襲いかかる花ウサギをとらえた。
「そっちよ!」
「任せて」
 ヴァイスやウィリアムを飛び越えるほどの勢いで飛び出し、花ウサギを上から踏みつけにするゼファー。
 木の陰から奇襲をしかけようと飛び出した新たな花ウサギたちの棍棒がゼファーに叩きつけられる……が、ゼファーは器用にヒットする位置をずらしてダメージを軽減。素早く槍と蹴りを繰り出し、花ウサギたちを打ち払った。
「行ったり来たりのトライアンドエラー。
 これは根気がたっぷり要る感じねー。そのうえ襲撃を度々挟むわで忙しないったらもう!」
「けど、なんとなく感覚はつかめてきたよ」
 ウィリアムが追撃の魔法で花ウサギを消し飛ばし、『こっちだ』と指で示した。
「このあたりの植物は問いかけに応えない……というより、応える力がないみたいだ。君もそれは感じてるんだろう、ヴァイス?」
「そう、ね」
 桜の枯れ木はもとより、野草や風や、あらゆるものと意思疎通ができるという彼女の能力をもってしてもタオヤメ・ダンジョンは応えてくれなかった。
 例えるなら食品サンプルを口に含んでいるかのような、もしくはリアルな人形に話しかけているかのような、そんな感覚があった。
「考えるのは後です。まずは移動しながらでも回復を」
 フィーネが『魂の回生』を用いてゼファーたちの傷を治療……していると、すぐ近くで異音を感知した。
 咄嗟に飛び退くフィーネ。桜に化けていたウォークブロッサムがねじり合わせた太い枯れ枝を振り込み、先ほどまでフィーネがいた地面を盛大にえぐり取っていった。
「大きいやつが出たな。回復支援を頼む」
 クロバは間に割り込んでガンエッジをトリガーオン。
 爆裂魔術が刃を走り、ウォークブロッサムの腕をチェーンソーのごとき連続炸裂によって切り落とした。
「よし――うお!?」
 直後、新たにはえた腕によって殴りつけられ吹き飛ぶクロバ。
 草地の上をおかしな角度で回転しながら飛ぶが、途中で地面に剣を突き立てて強制ブレーキ。
 そんな彼の後ろから助走をつけた舞妃蓮がぴょんと彼を飛び越え、振りかざした拳をやや強めに発光させた。
「そう動き回るな。花を青く塗り替えるぞ」
 ぽむんというファンシーな音によってたたき込まれたパンチが、すさまじい爆発力になってウォークブロッサムを殴り倒した。
「なるほど奇々怪々、だな。偵察に出した小鳥と接続が途絶えた」
 などと言いながら杖を振り、クロバの治癒を開始する舞妃蓮。
 一方で、戦いの気配を察知したのか複数の花ウサギや草ガエルが集まってくる。
「質はともかく、数で邪魔をされると面倒ですねぇ」
 飛びかかる花ウサギの槍を剣で払いながら、アリーシャはちらりとメージェの方を見た。
 孫子兵法第十三計『打草驚蛇』。ひとやものを見せしめにすることで敵を牽制する計略がある。
 アリーシャはそれを思い浮かべたが、メージェのようにふわふわした依頼人の前でするものでもないなと考えを飲み込んだ。
「けれど きっと もうすぐよ」
 ポムグラニットはツタのムチを放つ草ガエルたちの攻撃を茨のムチで切り裂くと、彼らの足下からはやした無数の茨でカエルたちを捕らえ、そして地面にずるずると引きずり込んでいった。
「さきを いそぎましょ」
 黄金の桜が近づいている。
 そんな感覚が、彼らには確かにあった。
 言葉にできぬ……桜の呼び声とでもいうような、そんな感覚として。

●ジャバウォック、キマイラ、マンティコア
「門はもうすぐよ。時間にも余裕があるし、ここまでくればもう安心ね。休憩でもする?」
 メージェがそんなふうに言って桜の枝に腰掛けた、その途端。
 ごおうという音と共に大柄なモンスターが飛びかかってきた。
 メージェを狙ったらしき獅子の爪は、割り込んだゼファーと舞妃蓮によって防がれる。
 が、防いだことによる衝撃で二人とも派手に吹き飛ばされていった。
 それもウォークブロッサムの打撃とは比べものにならないほどの勢いで、途中にあった桜の幹を一本まるごと粉砕。二人は身体を丸めて衝突のダメージをこらえると、あえてぐるんと身をひねって着地。
「痛いな。首が落ちたらどうする」
「だいぶ強いのが出てきたわね? 見た目からして情報になかったけど……」
「え、え、知らないわよあんなの。アナタたちの友達かなにか!?」
 木の陰にサッと隠れていたメージェが顔を出す。
「ローレットもくせ者揃いだが、あんなともだちはあいにくいないな」
「黙って通してくれる様子でもないですし……ここは本気で行く必要がありそうですね」
 クロバは両腰にさしていたガンエッジをそれぞれ抜いて交差させると、差し込んでいた魔術をトリガーオン。
 一方でアリーシャは頭上にサインを描き戦闘装束を召喚。
 素早く装着された鎧に光が走り、光は剣を伝って大剣へと変化した。炎の刻印がギラリと光り、二人は同時に走り出す。
「昔妹に頼まれて探した童話の本でアレに似た怪物の話を見た事があるんだ――名はジャバウォック、ホント思い出してみればそっくりな奴だったよ確か」
「ジャバウォック? マンティコアに似ていますが微妙に違いますか。
 どちらにせよ、排除しない限り目的地には行けそうもありませんね」
 二人の斬撃は未確認敵対生物へと直撃――したように見えたが、長く伸びた蛇のような尻尾が魔術のシールドを形成し二人の斬撃をすんでのところで止めていた。
「魔術障壁だと?」
「離れて」
 ウィリアムが魔方陣を多重起動。筒状に束ねた無数の増幅魔方陣を通過させたエネルギー放射が未確認敵対生物へと発射される。
「もう、悪戯しちゃダメじゃない! 一緒にいくわよ!」
 同時に、ヴァイスもまたバラ色の魔術砲撃を開始。
「……きめら かしら? ひとりなのに にぎやかねぇ」
 別の方向へと回り込んだポムグラニットが赤い薔薇の花びらを散らして発射。
 三人の砲撃が未確認敵対生物を包み込む……が、強く咆哮をあげることで弾き飛ばし、ピンポイントでフィーネめがけて突っ込んできた。
「――ッ!」
 両手を突き出し、拒絶の障壁を作り出すフィーネ。
 それを食い破ろうと爪でひっかき切り裂き始める未確認敵対生物に、フィーネは半歩後退した。
「所謂キマイラ、でしょうか?
 なんだか特徴が多すぎるような気もしますけれど……ある意味お伽噺の住人ではありますが、本来メージェさん達妖精さんとは毛色が違う存在のような気が致しますね……」
「一人一人がただ攻撃をぶつけているだけじゃダメだ。連携攻撃を仕掛けるんだ」
 ウィリアムはヴァイスに再び合図を送ると、今度は炎の魔術を行使した。
 大きく広げた魔方陣から炎の波を放つウィリアム。
 意図を察したヴァイスは己の身より茨を発生させ、未確認敵対生物へと解き放った。
 炎が包み、茨が巻き付く。
 それを振り払おうと暴れる未確認敵対生物に、ポムグラニットが自らの力をそしぎこんだ。
 巻き付いた茨に無数の赤い薔薇が咲き乱れ、未確認敵対生物の生み出す魔術エネルギーが相殺されていった。
 魔術能力を相殺されてもまだ爪と牙があるとばかりに食らいつく未確認敵対生物。
 ゼファーは自らの腕を相手の顎に押し込む形でガードし、ポムグラニットやフィーネを遠ざけた。
「奇妙な格好。少なくとも仲良くなれる様なタイプじゃぁないってことは分かるわ。ここはお引き取り願いましょ」
 手刀に炎を纏わせると、未確認敵対生物の右目めがけてたたき込む。
 ぼうっと音を立てて燃え上がる炎。えぐり取られる右目。
 フィーネは自らの精神感応領域を拡大すると、クロバやアリーシャたちにむけて頷いた。
「私には、ささやかなお手伝いしかできませんから……」
「なにを言うんだ、百人力じゃないか」
「同時攻撃で一気にいきましょう」
「乗った」
 舞妃蓮が杖をくるくると回して地面に突き立て、徒手空拳の構えをとった。
「あのヌエだかキメラだかマンティコアだか、もしかしたらジャバウォックだかなんだかを追い払うのだろう。『無作法な通せんぼ』に手痛い学習をさせてやろう」
 危険を察知しゼファーから飛び退く未確認敵対生物。
 が、それを逃すまいと舞妃蓮が高機動ダッシュで回り込み、脇腹にパンチをたたき込んだ。
 ぐらりとよろめく未確認敵対生物。舞妃蓮は巻き込まれないように飛び退き、クロバたちに『やれ』とジェスチャーした
「アリーシャ!」
「合わせます、どうぞ」
 同時に飛び込むクロバとアリーシャ。
 二人の斬撃が交差し、未確認敵対生物の尻尾からのびていた蛇を切り落とした。
 大きく吠え、翼を広げて飛び立つ未確認敵対生物。
 反撃を警戒して構えたゼファーたちだが、しかし……未確認敵対生物はそれ以上戦闘することなくその場から逃亡してしまった。
「なんとか、片付いたわね」
 ゼファーは腕にがっつりとついた噛み跡を布でぬぐい、ながれた血を止血しはじめた。

●黄金の桜
 道中大変なめにはあったものの、こうして一同はメージェを黄金の桜へと送り届けることができた。
「ありがとう、みんな! そのうち私のとっておきの場所にご招待してあげるわ。楽しみにまっててね!」
 そう言うと、メージェは門の向こうへと消えていった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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