PandoraPartyProject

シナリオ詳細

不幸な手紙

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●不幸になる手紙
 なまえのわからない だれか へ

 これは ふこうになるてがみ です。
 もっていると ふこうな エネルギーが すいとられます。
 あなたに こううんが やってくることでしょう。

 しあわせを かんじたら これを だれかの ロッカーに いれます。


●チェーンレター
「こういうのが流行っているらしいよ」
 『黒猫の』ショウ(p3n000005)がテーブルへ広げたのは小さな羊皮紙だった。見ればまだ若干辿々しい字が綴られているものの、その紙は見ればわかるほどに年季が入っている。
「書いたのは俺じゃない……のは、もちろん分かっているだろうけど。親の世代に1度流行っていたらしくてね、これを見つけた子供たちが回して遊んでいるらしい」
 微笑ましいだろう? とショウに言われ、イレギュラーズたちは改めて視線を羊皮紙へ落とした。
『これを10にんにかいておくると、しあわせになれます!』
 この手紙を送って幸せになるなど、何の因果関係も存在しない。けれども子供たちは嬉々として手紙を送るのだろうし、イレギュラーズの中にも覚えがある者はいるだろう。
 でもさ、と続けたショウへ視線をあげると、彼は困ったような笑みを浮かべていた。
「中には悪意の困った手紙もあるわけだ。今回の依頼はその1通を『倒すこと』だよ」
 いつからか魔を宿したそれは、人の手を渡っていくごとにエネルギーを蓄えた。そしてついに命まで手にかけ始め、ローレットへ届けられたというわけだ。
「手紙を手にした人間は……いや、手にした一部の人間は実際に命を奪われてる」
 これが現物だ、とショウは別の羊皮紙を出した。イレギュラーズたちは視線を思わず彼へ向ける。
 手にした一部の人間は死んだと言っていた。なら、今それを持っているショウもまた──。
 それらや視線に気づいたショウは「かもしれないね」と肩をすくめてみせた。依頼主に説明された時には手遅れだったし、かと言って他の情報屋へ無闇に渡すのも危険だったのだ。
「そうならないように、君たちが退治してくれ。くれぐれも呪われてしまわないようにね」
 見るだけなら問題ないよ、と促されたイレギュラーズたちは渋々羊皮紙を見る。綺麗だったはずの羊皮紙は握り潰されたのかシワだらけで、文字の連ねてある箇所は何かわからない液体で汚されていた。ほぼ読めない、と言って差し支えない。
「君たちにはこれを持って、この街を出てすぐの場所にある森の小屋へ向かってもらう。外でも構わないけれど、まだ寒いだろうからね。
 手紙に潜むモンスターは夜が活動時間らしくてね。俺を追ってくる……のは困るけど、そうしようとするなら高確率でそこから出てくるはずさ」
 頼んだよ、とショウは手紙をイレギュラーズへ押し付k──渡したのだった。


●不幸■な■手紙
 なまえのわからない だれか へ

 これは ふこう■な■てがみ です。
 もっ■■■と ふこうな エネルギーが ■■■■■■■■
 あなたへ ■■■■■ やってくる■■でしょう。

 しあわせを かんじたら こ■■ ■■■■ ロ■■■■ ■■■す。

GMコメント

●成功条件
 モンスターの退治

●情報精度
 このシナリオにおける情報精度はAです。
 予想外の事態は起こりません。

●エネミー
・不幸な手紙
 手紙に潜んだ魔物。紙の表面から影のようなものが伸び、よく見ると歪んだ文字が浮き沈みしているように見えます。
 人間を見つけるとその影を伸ばして捕食のような行動を行います。かなり力をつけてきているようなので、イレギュラーズが戦える位置にいるならどこへでもその影を伸ばすことでしょう。
 BSにはとても強いようですが、機動力はありません。

・影喰らう:物超単:むしゃむしゃむしゃむしゃ!! HPを回復します。【万能】
・文字綴る:物超貫:浮き沈みしていた文字の1つが真っ直ぐに飛んでいきます。それはさながら手裏剣。【不吉】【万能】

●ロケーション
 夜の森小屋です。明かりはありますが、あまり明るくはなりません。遠距離以上に離れることはできません。
 外で戦うこともできますが、非常に視界が悪いです命中と回避にマイナス補正が入ります。距離は十分取ることができるでしょう。

●ご挨拶
 実はホラーが嫌いな愁です。このOPを書いている間、しきりに背後を確認しました。怖いよぉ……。
 ちなみに手紙をどう扱ってもいつのまにか元どおりというホラー現象が起こるので、手紙を破ろうが燃やそうがお好きにどうぞ。夜には化けて出ます。
 ご縁がございましたら、よろしくお願い致します。

  • 不幸な手紙完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年03月09日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
ジル・チタニイット(p3p000943)
薬の魔女の後継者
七鳥・天十里(p3p001668)
シラス(p3p004421)
超える者
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
蒼穹の魔女
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
角灯(p3p008045)
ぐるぐるしてる

リプレイ

●31、33*20004*
 ランプの光が人の動きで頼りなげに揺れる。そこにかざされたのは1通の──誰に宛てられたわけでもない手紙。

「誰っすかこんな物騒な手紙書いちゃった人はっす!」

 『薬の魔女の後継者』ジル・チタニイット(p3p000943)の悲鳴とも思えるような叫びは、ほぼ全員の心情を代弁していた。
 広くも狭くもない小屋の中にはイレギュラーズたち。中心に置かれた簡素な机には彼らがショウに押し付けられt……渡された例の手紙が置かれている。
「どこでも生まれるもんだねーこういうホラーなやつって」
 ぐるりと外を見回り、状況を確認してから小屋へ入ってきた『ガンスリンガー』七鳥・天十里(p3p001668)が中も見回しながら呟く。元々大したものもなかったようだが、それでも戦闘の邪魔になりそうなものは『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)が隅の方へと寄せている。戦うのに差し支えはなさそうだ。
「ここに置いても大丈夫っすか?」
「うん、邪魔にはならないと思うよ」
 アレクシアの答えにジルは頷き、小皿を隅へことりと置く。盛られているのは清めの塩である。『にほん』なる場所より伝わった清めの儀式だとか。
「これで少しはマシになると思うっすよ」
 得意げな表情を浮かべるジルに、しかし『ラド・バウD級闘士』シラス(p3p004421)も得意げな表情で「これくらい楽勝だな」と手紙へ視線をくれる。
 結局のところ、この手紙から何かが現れるといったところだろう。けれどここにはイレギュラーズが8人──これだけの人数で囲まれてしまえば、例え魔種だったとしても打ちのめせようとも。
「……そういえばシラス君、もうおばけは大丈夫なの~?」
「その話ここでするのっ!?」
 しかしニマニマと含み笑いをしたアレクシアの言葉にシラスはぎょっと目を見開く。ついでに天十里もビクゥ!! と肩を跳ねさせた。思わず視線を向けた2人へ必死に笑顔で取り繕う天十里。
「……べ、別にちょっとホラー苦手とかそんなことないよ!」
「大丈夫だよ、シラス君も……」
「アレクシアこそっ……!」
 ねぇ? と言わんばかりの視線に反論しようとしたシラスだが、ふと冷静になる。
 あれ、アレクシアに弱点なんてあったっけ?
(俺ら結構付き合い長いのに……あっ悔しい、すごく悔しい!)
 これではまるで全然彼女のことを知らないみたいではないかと眉根を寄せるシラス。こんな場所でも他愛のない話をする2人に、戦闘前の張り詰めた空気が少しほぐれたことを感じて『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)は小さく笑みを浮かべた。その瞳には恐怖など欠片もなく──そう、彼こそがジルの叫びに心情を代弁されていない1人。
 目に見えないから、予測ができないから恐怖は湧き、膨れ上がる。それは呪いも霊的現象も同じだ。けれどそれは普段なら経験できないような体験ができるということだというのが本人の弁。その胸に宿るは好奇心である。
 そんな心のままに透視で汚れた文字の箇所を見てみたは良いが、その視界は紙を貫通して机を見せるだけ。どんな文字が書かれていたのかは見せてくれないらしい。
 小屋の隅っこで母上(母上じゃない)の愛情がこもったお弁当を食べた『ぐるぐるしてる』角灯(p3p008045)は準備万端。黒猫の情報屋が呪われているかもしれない、なんて嫌だから頑張って倒すのだと自らに活を入れて立ち上がる。
(……でも、これを10人くらいに書き写して送ったら、どうなるのかな)
 この手紙が溜めた不幸を、手紙にして名前の知らない誰かに押し付けたとしたら。もしかしてショウは助かるのかもしれない。
 けれど手紙は大半が滲んでいて、とてもではないが上手く読めたものではない。書き写すのは至難の業だろう。
(それに、ぜんぶが呪いの手紙になったら……呪いがねずみ算に増えてしまうの、おれでもわかるよ、うん、わかる、かも)
 やっぱり倒さなきゃと1人頷く角灯の後方では『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)が「こんなよく分からん遊び、誰が思いついたんスかね」とあきれた声を上げていた。
「始まりは悪趣味な悪戯の類だったんでしょうね」
「大体冗談半分であっちこっち回してんだろうけど、何が楽しいんだか」
 ため息をつく葵にゼファー(p3p007625)は小さく肩を竦め、手紙へアナザーアナライズをかけようとするリゲルの背を見る。
 小さなきっかけだったのだろうそれも、極まれば他人へ危害を加えるまでに至ってしまう。きっと誰もそんなことは思わなかったに違いない。
「なんかケタケタ笑い声が……き、気にしないっす。僕は気にしないっす!」
 どこからか聞こえ始めた笑い声にジルの目が泳ぐ。気にしているように見えるが、はてさて。
 臆する者、ものともしない者、様々ではあるが視線は一様に中心へ注がれている。この状況、十中八九こいつ(手紙)の仕業だろうと。
「ま、流石にこいつは悪戯で済む話じゃありませんし。さっさと叩きのめして片付けちゃいましょ?」
「そうだな。……さて、キックオフだ」
 リゲルの鑑定に触発されたか、手紙から文字が飛び出した──文字のような化け物が、飛び出した。

●666222221115
 ──この商品、売れ行きがどうもなぁ。
 ──財布どこへやったっけ。落としちゃったかな……。
 ──うわーん! いたいよー!

 手紙の主へ集まってくる、不幸なエネルギー。吸い取ってしまえば主には幸運がやってくる。
 幸運になったら次の人へ。不幸を蓄えて、またその次へ。ずっとずっとそうだったはずなのに──。

 不幸を寄越せ。フコウを寄越せ。
 もっとタクわえてツヨクなるんダ。
 アあ、手放そうとシタナ? 手バナそウトシたな?

 コロシテヤル!! ギャハハハハハハ!!!


●81、2222288855446
 軽やかな動きで散開しながら、天十里は目立つ2丁のリボルバーを構える。シリンダーごと赤熱化させ、打ち出す銃弾には燃え上がるような意思を込めて。影のようなそれに飲み込まれ、その実当たっていはいないのか──とも思われたが、現れる歪んだ文字たちは不快を表すかのようにうごめいていて。
(弾は当たるみたいだね)
 これで銃弾が効かなかったら、と一種の懸念を抱いていた天十里は小さく口端に笑みを浮かべた。影の前では本気モードになったリゲルが空気すら凍てつかせんとする剣の舞で手紙へ挑む。
 アナザーアナライズで視たものを思い出せばパニックにもなってしまいそうだが、そこは深呼吸で務めて冷静に。相手へ隙を与えるなどあってはならない。剣に一瞬視線をやれば、いつも通りな自分がそこに映っていて。
「大丈夫だ、負けはしない!」
 真っすぐな目で手紙を射抜くリゲル。別方向からシラスが魔力を指先へ纏わせ、影を抉りにかかる。大証と言わんばかりに自らを削り、対価として防御などものともせず命そのものを掠め取らんとする魔力の爪だ。
「……別に、おばけが苦手なわけじゃないさ」
 ぼそりと呟かれたのは先ほどのアレクシアに対する反論。なんならこれまでだって幽霊でもゾンビでもこの手で退治してきたのである。そういうもの自体への苦手意識はない。
 ……と言ってみても良かったのだが、先ほどはあまりにもシラスに分が悪かった。今は戦いが始まったこともあって、すっかりアレクシアからは顔を背けている状態である。最も、戦闘が終われば2人はきっと元通りなのだろう。
「──《フェニカラム・ヴァルガーレ》」
 アレクシアの言葉に、魔力に反応して意思の力が黄色の花弁を形作る。小さな其れは真っすぐに、彼女の意思を示すかのように影へと撃ち出されていった。そこに宿るは──幸福。
「自分で言うのも何だけど、私は今とっても幸せだと思ってる!」
 彼女の言葉に、影へ痛みを与えた意思の魔力に。影がゆらりとうごめきアレクシアを『見る』。そこには真っ黒な影と時折浮かぶ文字ばかりであるはずなのに、どうしてか見られているとアレクシアは確信した。彼女に対して一瞬引くような動きにジルがすかさず声を上げる。
「手裏剣来るっす。気をつけて下さいっす!」
 ぶん、と影が前へしなると同時に吐き出される何か。アレクシアの周囲に展開された桜花弁の障壁がそれの勢いをいくらか緩和する。服の袖を裂き、肌に赤い線を走らせて後ろの壁に刺さった『ふ』の字はゆらりと揺れて霧散した。
 その影の背後からゼファーが迫る。ひとふりの槍を手に、とんと床を蹴って。
「さぁて、適度に愉しませて貰おうじゃないの。手紙風情が私を不幸に出来るってンなら、やってみなさいな」
 火焔へと変わった闘気を槍ごと振り下ろす。出し惜しみなんて言葉は存在しない。最も離れた小屋の壁に近い場所から角灯が狙いすまし、狙い撃つ。動きを縫い留めんとする弾丸が敵へ吸い込まれていく中、ジルはアレクシアの近くまで移動しながら彼女の傷を癒した。
「倒すまで気張って下さいっす!」
「もちろん! 向こうが倒れるまで、倒れないように頑張るよ!」
 武器を構えるアレクシア。影はゆらゆらとアレクシアやゼファーの方をあちらへこちらへ。どちらを狙うべきか、考えてでもいるように。
(目に付いたやつをまばらにか、それとも弱そうな奴を集中的にか……と思ったが)
 敢えて仲間と敵の行動を観察していた葵は、つとその目を細めた。彼女たちの言動で思い当たるものといえば──幸せ、不幸。そんなワードか。
「それじゃあ、こっちも動き出すとするっスよ」
 影へ向けて手をかざす。葵の魔力は青きコウモリの形を取り、白い尾を引いて空中を羽ばたいていった。

「不吉も不幸もあっちいけーっす!」
 ジルが即座に仲間たちの不吉な空気を打ち払う。その視界の隅では小皿に盛った塩が徐々に黒く染まっているのだが──うん、気にしない気にしない。
 リゲルの剣が振られるたび、彼のギフトで放たれる明かりが揺れる。状態付与が難しい相手と言えど、完全に防ぎきれるわけでもなく──葵はコウモリ型エネルギー弾からシルバーのサッカーボールへすかさず攻撃手段を変え、休む暇なく強烈な無回転シュートを放った。そこはすかさず力を溜めていた天十里がさらなる攻撃の布石を打つ。
 ダメージの入った影はその体をよじり、細くして太くして、何かをこらえるようにぎゅっと縮こまる。
 次の瞬間、アレクシアの視界を一面の黒が覆った。
「アレクシア!」
 シラスが叫ぶ。影がひっこめば、そこには防御結界でいくらか凌いだアレクシアの姿。彼女の手にはペンがあるものの、その瞳には書き足した文字が潰されていく様が見えていた。
「誰かアレクシアのフォロー行けないっスか!」
「大丈夫、まだやれるよ!」
 咄嗟にシラスが放った治癒魔術と、ジルの治療を受けながらも頼もしい仲間の言葉。葵をはじめとしたイレギュラーズたちはそれを受けて再び影の方を見る。うねるその影はゼファーへと標的を変えるが、彼女は軽やかな身のこなしで影の突進を避けた。そしてすかさず火焔の闘気を叩き込むと影にちらちらと火が移る。実際に燃えているわけでなくても、それ相応の熱さと痛みを感じているはずだ。……この影が痛みというものを感じるのかは不明であったが。
 影はおそらく困惑し、混乱していることだろう。どうして、何故捕食できないのかと。より正確に言うなら『何故捕食しているのに傷が癒えないのか』と。
「むしゃむしゃ食らうとは、文字通り化け物だな!」
 浮き出た文字を一刀両断するリゲル。さらに影へ角灯が正確に援護射撃を打ち込む。それは確実なる死へ影を誘っていく必殺の弾丸だ。
(手紙本体は、射抜かないように……)
 万が一化けて出てこられたら困る。そうならないように絶対撃ち抜かない。あくまで狙うのは手紙から出てきている魔物だ。
「どくどくの手紙になっちゃえっす!」
 ジルが手に精製したのは羽を模した結晶。毒を含んだそれを、影へ思いっきり投げつける。それは表面に浮かんだ文字とぶつかり硬質な音を立てた。
 そんな中、主に影の攻撃を受けていたアレクシアとゼファーもまた反撃する。
(一昔前じゃあこんな風に大勢の仲間と戦えるなんて思ってもみなかった)
 アレクシアが過ごしていた、深緑での暮らしでは得ることのなかったもの。そしてこの手紙を倒すことで救われる誰かがいることもまた然り。
 何より、とアレクシアはシラスへ視線を向けた。大切な友達と、肩を並べていられるから。
「不幸にできるものならしてみなさいってね!」
 不屈の精神で立ち上がるアレクシア。手元の魔術書を光源に、自らの力で傷を癒す。
「勝ち負けではないけれど。負けていられないわね」
 ゼファーもまた肉薄し、心身ともに砕く一撃を放つ。ボコボコと文字を浮かばせては消えて、歪な形を変える影は無作為に捕食しようとするが──それよりも彼らの殲滅速度は早かった。
「自分を不幸だなんて思っちゃいないし、ましてやこんなモンに頼って幸福を手にしよう、だなんて思いもしませんし」
 ねぇ? と向けられた槍の矛先が文字を砕く。サッカーボールが影へとのめり込んで。
「もうちょっとっすよ、気張っていきましょう!」
 回復を施しながらジルが戦意をあげる。影は逃げ出したいと言うように体をうねらせ、シラスはすかさず立ちはだかった。
「逃がさねえ、ここで仕留める!」
 窓や扉の前にもさりげなく天十里たちが移動し、何があっても逃さない構えだ。
「まー動かないなら逃げられないと思うけど」
 シリンダーをこれ以上なく熱くして、撃ち出す1発。葵は音速の如き速さで踏み込むとそれを威力へと変換する。
「殺るか殺られるかならば……勝つのは俺達だ!」
 リゲルの銀閃が文字を断ち切り、それ以上文字が浮かばなくなる。ただただ、ボコボコと影が収縮を繰り返すだけ。
 そこへ追い討ちするように角灯の放った必殺の球が吸い込まれて──その影もまた、霧散した。


●388811159
「……終わった?」
「みたいだね」
 角灯の言葉にアレクシアが頷く。リゲルが再びアナザーアナライズで調べるが、そこには何も存在しないようだった。
(様々な人の想いを吸い取ってきたんだろうが……怨念と共に消えてしまったのだろうか)
 手紙はすでに真っ白で、ここにどんな思念があったのかすら読み取ることはできない。リゲルは手紙の浄化と世の幸せ、平穏を願って胸元で十字を切った。

 ──が、何にせよ『元・不幸な手紙』なので。

「倒した後なら、手紙も処分できるのかな?」
「こんなフザけたのはさっさと破っちまえばいいんスよ」
「燃やして地面にでも埋めちゃいましょう」
 初めから天十里に葵、ゼファー。後ろではジルも控えている。
 最後まで徹底的に。手紙は破られ銃弾で穴だらけにされ燃やして残った灰は土の中へ。何もないならば元に戻るなんてホラー展開もないだろう。
「こういう時何って言うんすかね。えーと、ああそう、こっくりさんこっくりさん……」
 ジルがどこぞで身に着けてきた間違った知識で供養する。何か違うものを引き寄せてしまいそうだが、幸いにしてこの付近に『そういったモノ』はいないようだ。
「こういう危ないものは消しちゃうのが1番だよね!」
「ええ。始めたのは何処のロクでもない奴なのやら、ね」
 やれやれと肩の力を抜くゼファー。ぱんぱん、と手をはたいた天十里はあたりを見る。外は視界が悪く、夜闇の中から何が出てきてもおかしくなさそうだ。うん、早いところローレットへ──明かりのある場所へ帰ろうか。

成否

成功

MVP

ジル・チタニイット(p3p000943)
薬の魔女の後継者

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした、イレギュラーズ。ショウも呪い殺されることがなくて何よりです。
 ちなみにOP最後の章、読める文字だけ繋げると呪いのメッセージです。私はもう読まないぞ(震え声)
 リプレイの章タイトルもある法則で書かれています。良ければ読んでみて下さい。こちらは怖くないです。

 それではまたのご縁がございましたら、よろしくお願い致します。

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