シナリオ詳細
<Despair Blue>テンコモリアイランド強行グルメツアー
オープニング
●テンコモリアイランドのモンゴリアンナマナマズ
ごうごうとうなる水流の中で、レーゲンは素早く身をかわしながら魔力砲撃を放った。
すぐそばを駆け抜けていく巨体。同行していた海兵隊がばくんと食いつかれ、そのまま飲み込まれていく。
短距離通信ピアスごしに仲間の悲鳴が聞こえ、レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)は顔をしかめた。
「このままじゃ全滅っきゅ! 一時退却するっきゅ! 中継基地まで戻って装備と人員を整えるっきゅ!」
「けど、どうやって逃げるんです!?」
たターンした巨大な物体がひげをばちばちとスパークさせる。
「あぶない!」
割り込んだベーク・シー・ドリーム(p3p000209)。放射状に放たれた電撃をうけ、びりびりとする体をこらえて相手をにらみつける。
側面にまわりこんだデイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)が魔術を連射してぶつけるが、得意の『ふしぎなちから』はひげから放たれるスパークによって中和され、届くのは純ダメージ衝撃のみ。
「あのヒゲをなんとかせんと妾の得意戦法が通じないのじゃ。こんな敵が待ち構えているとはの……」
「みなさん!」
「ぶひひぶひ!」
両腕をぱったぱたさせて呼びかけるメロンパン。
じゃなかった亀海種のキャメロンさん。
「これをみてください! 地上へつながるポータルです! これを使えば直通でこのダンジョン入り口まで脱出することができます。
大きさと魔力の流れからして一方通行かつ人間のみが使用可能なもののはず。私は詳しいんです!」
「キャメロンさん!」
「キャメロンぱん!」
「ぶひ!」
こりゃ好機とばかりに渦潮型ポータルへと泳いでいくベークたち。
彼らを逃がすまいと、巨大な狂王種モンゴリアンナマナマズが口を開いて突っ込んでくる。
「くう、こやつナマズのくせに高速で海を泳ぎおる!」
「逃げ切れないっきゅ!」
ここまでか! ナマズのごはんになる覚悟をきめかけた、まさにそのとき。
「みなさーーーん!」
うおーと言って割り込んだキャメロンがナマナマズにぱっくりいかれた。
「キャメロンさーーーーん!」
「キャメロンぱーーーーん!」
「ぶひーーーーー!」
もののついでにぺろっといかれる豚サラリーマン。
ベークたちは友に逃げ切ることのできなかった仲間に手を伸ばしながらも、ポータルへと吸い込まれていった。
●飲んで食べてのタイムアタック!
砂浜にすぽーんと放り出されたデイジー、レーゲン、ベーク、そして仲間たち。
「くっ……キャメロンさん、僕たちを逃がすために……」
「どうでもいいけど途中でずっと『キャメロンぱん』て言ってたの誰っきゅ? あと普通に混じってた豚さんはだれっきゅ?」
「豚は妾の豚じゃの」
三人は起き上がり、再びダンジョンの入り口を振り返った。
始まりはそう、キャメロンのあの一言であった。
もわもわもわーん(回想シーンが始まる音)
「絶望の青には不思議がいっぱいなのです」
ホワイトボードの前で、台の上にのってべしべしぼーどを叩くキャメロンがいた。
「常に渦がぐるぐるしてる海や真っ赤になったり黒くなったり雷がずっとなってたりとにかく常識では考えられないスポットだらけといってもいいでしょう。
ですので……」
べっとっ貼り付ける写真。
「とにかくおいしい野生動物ばっかりが住んでいる島だってあるのです! その名も、テンコモリアイランド!」
「テンコモリ……」
その場の全員が何言ってんだろうこのパンおいしそうだなホイップクリームはさんで食べたいなって思ったが、追い打ちをかけるようにキャメロンは叫んだ。
「絶望の青は常識では考えられないのです!」
かくして始まったテンコモリアイランド探索計画。
海洋王国でも指折りの貢献をはたした海種(と海種にめっちゃ似てるけど違うひと)であるところのデイジー、たいやきくん、レーゲン&グリュックの三人(三ユニット)を中心とした探索隊が結成され、お船でえんやこら島へのりつけ意気揚々と島へ上陸。
中でも特においしい動物が詰まっているという遺跡テンコモリダンジョンへ挑んだのだった。
「はじめはよかったんです。香りがよくていいダシのとれるタイラントホタテやアバレハマグリ。あれらの動物を狩って食べればみんなの士気もあがって外洋遠征もばりばりこなせる。そんな上質な拠点になるはずだったのですが……」
「世の中おいしい話ばかりじゃないっきゅ。強ければ強いほどおいしいって特徴から気づくべきだったっきゅ。よりおいしいものを求めれば、強いモンスターと遭遇するリスクがたかまるって……」
「最深部に脱出ポータルがあったのが不幸中の幸いじゃったのう」
仲間たちの脳裏に、脱出寸前に見たあの光景がよぎった。
自分たちをかばってナマナマズに食われたキャメロン(あと豚)……。
「このまま帰る、なんて選択はないですよね」
「当然っきゅ」
彼らはキャメロンが残した資料を開いた。
食われた人間が消化されるまでおよそ三日。
それまでに再びダンジョン最深部まで突入し、ナマナマズを倒してキャメロンたちを助け出すのだ。
食料もなにもかもを置いてきてしまったが……。
「なあに、ここは美味しい動物だらけのテンコモリダンジョン! 倒したモンスターを食べながらもりもり最深部を目指すのじゃ!」
- <Despair Blue>テンコモリアイランド強行グルメツアー完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別EX
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年02月16日 22時10分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(10人)
リプレイ
●名鯛焼ベーク
テレレッテレッテレッテレッッテーテーッテー
『僕の名前はベークシードリーム(日本語で鯛焼き)。ひょんなことから無人島迷宮の探索にでかけた僕らは巨大な狂王種ナマナマズに遭遇した。レベルがその辺のパン屋に劣るキャメロンさんとあとなんか知らない豚が食べられ絶体絶命。少ない日数から仲間を助ける見た目は鯛焼き頭脳はオトナ(意味深)名探偵ベーク!』
(OPソングと共にベークのパラパラダンスをお楽しみください)
「まって」
ぐおんって振り向く巨大鯛焼き。
もとい鯛焼きに見えるタイのディープシー『泳げベーク君』ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)。
いつもなんか当たり前みたいに描写してるけどホバリング技能はもってないから巨大な鯛焼きがヒレで二足歩行してるんだろうか。それともジェットパックで常にちょっと浮いてるんだろうか。後者だと楽しい。
タブレットでOPムービーを流そうとしていた『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)がなんじゃと言って振り返った。
「じっちゃんの名に賭けるほうが好みじゃったか?」
「そういう問題じゃないんだよなー」
僕ら時系列的にはつい昨日めちゃくちゃやばい目に遭ったはずだよねって顔(?)で、ベークはムービーを停止した。すげーキメキメのポーズで停止してるベークくんのキメ顔が挿絵される未来を僕は信じてます。
「キャメロンさんとあと確かデイジーさんのところの……」
「豚じゃな」
「そう豚さんが食べられちゃったじゃないですか。消化されるまえに一刻もはやく助けだそうってタイミングですよねいま」
「くっ……妾としたことが……!」
デイジーはタブレットを地面にバーンて叩きつけて粉砕すると膝から崩れ落ちて両手で顔を覆った。わなわなとふるえ、嗚咽を漏らしているようにも見える。
そばにふわーっておりてきた『猫さんと宝探し』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)が頭をなでようと手をかざす。
「で、デイジーさん……そうだよね、豚さんのことが心ぱ」
「ここにスイカちゃんを連れてきておけばデザートに西瓜も食べ放題じゃったのに!」
「そこじゃないんだよねー」
腕をひっこめて、ンーって顔をするアクセル。
「ガイドのキャメロンさんは今回の依頼人なわけだし、助けるのは義理としてもギルド条約としても重要なことなんじゃないかな」
「然様……」
『とってんぱらりの斬九郎』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)がシリアス100%な顔で振り返った。
アクセルの理知的な対応に同意すると共に人道としてそして忍道としてかくあるべき仕事を自らにも心がけているのだろう。
せっかくシリアスな顔してるので脳内でなに考えてるか覗いてみようね。
『あのメロンパンと豚は非常食ではなかったのでござるか……!?』
ごめんねシリアスとかいって。ごめんねかくあるべきとかいって。
「安心するでござる。幸い手元には鯛焼きと豚とアザラシが残っているでござる」
「ごめんまって何か話がすれ違ったきがする」
「ハッ!」
咲耶はぷるぷると首を振った。
「かたじけないでござる。空腹のあまり思考が麻痺していたようでござる。拙者ってばおちゃめさん」
「まだだいぶやられてるみたいだね、脳」
「そうよぉ! 一刻も早く進まなくちゃいけないわぁ!」
ビール瓶を右手に、ウォッカ瓶を左手に、両目をかっぴらいて振り返った『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)がカラッポになった瓶を地面にバーンて叩きつけてからすぐ近くのワモンとレーゲンを両脇にかかえてその谷間に顔を埋めた。
「もももふふもふもごごごごごふふ出張ゴリョウ亭!」
「落ち着くでござる。最後以外完全に人語を忘れてるでござる」
日々のストレスを酒とアザラシと料理で癒やそうとしているアーリアお姉さんである。たのむもっと癒やされてくれ。アザラシならあげるから。
「オイラが異次元から献上されてる!?」
「レーさんは貸し出しNGっきゅ!」
腕からぽいーんって飛び出す『海のヒーロー』ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)と『乗りかかった異邦人』レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)。
「やばいぜ。このままじゃアーリアさんが本当に酒とアザラシと競ロリバで休日を潰すだけの人になっちまう」
「誰か! イレギュラーズの中に料理人はいないっきゅ!?」
(野性的なBGMを脳内でかけてください)
黒いパンイチのオークが寸胴鍋を脇におき、革靴のヒモを結び、素肌に直接黒いクッキングジャケットをはおり――。
ファスナーをビッ!
フックをガガッ!
ジャケットのバレットホルダーに調味料瓶をシュッと差し込んでフックに薬瓶を結びつけ――。
胸ホルスターに包丁をザッ!
形態マジック着火器をガシャ! からの腰ホルスターにサクッ!
腕に、顔に、塗料で色を塗りつけ。
各種調理器具を手に取り最後に寸胴鍋を手に取り巨大な木べらを肩にかついだところで。
デーーーーーン
「俺がいるぜ」
フル装備クッキングコマンドーこと『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)が歩き出した。来年の水着全身図にいかがですか。
「私もいるよ」
高い柱の上に立って腕組みをしている『メイドロボ騎士』メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)。
「メートヒェン! なぜそんなスポーツマンガ中盤の世界大会編になって突如現れる覆面助っ人選手(実はヒロインの仮の姿)みたいな登場を!」
「私はいまでこそ鋼の脚をもつメイドだけど、元は鉄帝スラムの生まれ。サバイバル料理には一家言あるよ」
トウ! といって柱からジャンプして空中で派手に回転すると、無駄にコートを脱ぎ捨てて着地した。
そう、メートヒェン南海メイド水着フォームである。
かつて一世を風靡したメイド水着に実用性を付与したモテカワコーデ(パッド入り)でストリートの視線を釘付け☆
「誰かないま言わなくていい括弧書きをしたのは」
メートヒェンはにっこり笑って虚空に後ろ回し蹴り(マニアが喜ぶバックハンドブロウの使用シーン)を繰り出し痛ったあ!?
「自然界は弱肉強食、食べていいのは食べられる覚悟のある者だけか。
とはいえ、助けられる可能性があるのに見捨てるようなことは出来ないからね
消化されてしまう前に助け出そう」
「話は聞かせて貰いました」
『はじまりはメイドから』シルフィナ(p3p007508)が開いたドアに背を持たれ縁に脚をかけるようにして腕組み姿勢で振り返った。
「シルフィナ! なぜそんな敵の本拠地に乗り込もうとした時級にメインキャラに昇格されるライバルキャラみたいな登場の仕方を!?」
「このダンジョン攻略にメイド力は必須。長年ハウスメイドとして培ったわたしのメイド力が必要なはずです」
メイドらしい言動ってこういうコトじゃないと思うけどそれはそれとしてシルフィナは気合い一発メイド力をシュオンシュオンいわせながら言った。あと登場シーンのためだけに用意されたドアとドア縁がバタンって倒れた。
あとメイド力ってなんだよ。
シルフィナはヨーロピアンなメイド服をなびかせ、アタッシュケースを開いて各種キッチンナイフを取り出した。
「いかなる時でもお口に合う料理を作ることができる。それがメイドというものです」
「そうかなあ」
「そろそろ話もどしていいっきゅ?」
派手な登場シーン大喜利みたくなってきた場をしずめるため、レーゲンがヒレをぱったぱったやった。
「レーさんは借りを返せるアザラシっきゅ。
だからかばってくれたキャメロンさんと豚さんを絶対に助けるっきゅ!
その為にもおいしく魔物を食べるっきゅ!」
おっ、このアザラシ話をまとめに入ったな。
……という気配を察したのかワモンが同じようにヒレをぱったぱったやった。
「くっそー!ナマズめー!
今度こそぶったおしてゴリョウのおっちゃんに料理してもらって美味しく食べてやるぜー!
ついでにキャメロンパンも助けるぞー! おー!」
「「おー!」」
イレギュラーズたちは思い思いの調理道具を持って、テンコモリダンジョンの入り口へとダッシュしたのだった。
●貝料理は出汁が決め手なとこあるよね
「TAIYAKIクラッシュ!」
説明しよう!
TAIYAKIクラッシュとはベークの新必殺技である!
具体的には前進をかっぴかぴに堅くしてからジェットの勢いで相手に向かって我が身を叩きつけることで攻撃とか反撃とかそういう次元じゃなくするのだ! あとたまに変な方向にすっとんでいくので外すときは外すぞ!
「ギャアアアアアアア!!」
デビルハマグリが悲鳴をあげて爆発四散。中身だけぽいーんと放出した。
「よいぞよいぞ、大量なのじゃ~」
ソラァといいながらのろいの爆弾をボッコンボッコン放り込んでくるデイジー。
「ウワアアアアアアア!?」
「ベークよ。お主を連れてきた真の理由を教えてやろう」
「それ前も聞きましたから!!!!」
「支援するよ! バイオリンビーム!」
アクセルがぴょいーんと飛び上がってバイオリンビームを放った。
説明しよう!
バイオリンからビームが出る!
相手は死ぬ!
「グワアアアアアア!?」
悲鳴をあげて爆発四散するタイラントサザエ。
「どうでもいいけど今から食べる敵が悲鳴上げて爆発するのって複雑だね」
「それでも食べるけどな!」
「世界は弱肉強食なのよぉ~」
アーリアは肩にワモンを担いでガトリン射撃の限りを尽くすと、大きく振りかぶってワモンを投擲。
頭からびっしり日本酒を浴びたワモンが敵陣に突っ込みボッて火がつくことでそれはもう大変なことになるんだよワモン以外が。
「なんでオイラだけが無事なんだ……」
「それは私が魔女だからよぉ」
ウッフンとセクシーなポーズで魔女っぽさをアピールしてみせるアーリア。
アザラシが燃えない理由をひとつも説明してないけどワモンはまあいっかといってデスシジミをちゅるちゅるすすった。
「古来からアザラシは武器だっきゅ!」
軽く無茶なこといいながら、グリュックにジャイアントスイングされたレーゲンがヒレをマジックチェーンソーにしてアポカリプスサザエを片っ端から八つ裂きにしていった。
「どうでもいいけどさっきから敵の名前なんなんでござるか」
ジェットきりもみ回転で突撃してくるデーモンホタテを刀でガッてはじくと、咲耶は二本指を立てて印をきった。
「忍法――帆立貝柱ノ術!」
ホタテの貝の隙間に刀をスッと通して内側のあの柱部分を軽く切断することで貝を強制的に開き内側のアレをスプーンですくうみたくしてシャッと取り外してかーらの柱部分から急速に水分を奪い去ってからっからにする咲耶の必殺技である。
「ご苦労様。あとは私たちに任せて貰おうか」
メートヒェンは強烈な後ろ回し蹴りでキラーアカガイを粉砕すると、どこからともなく電子ジャーを取りだした。
ダンジョンのほらよくあるじゃんあの足下についてるコンセント差し込み口。あそこにコンセントをさしてピッてやって一時間ほどお茶のみながら待ってたらほら聞こえてくるよアマリリスのメロディが。
「さあ皆、ご飯の時間だよ」
メートヒェンがジャーを開くと……なんということでしょう! アサリをふんだんにつかった炊き込みご飯ではありませんか。メートヒェンはそれを手に取ってにーぎにーぎってメイドおにぎりを作り始めた。
「貝といえばクラムチャウダー。そしてパスタですね」
シルフィナはダンジョンにほらいつも見るでしょあのIHヒーターの上に鍋を二つどどんと置くと片方ではパスタと貝を、もう片方ではクラムチャウダーをぐつぐつさせ始めた。
「涼しくて冷えてきた体を暖めるスープは良いですよね!」
「いいセンスだぜ!」
ゴリョウはビッと親指を立て、圧力鍋の蓋をひらいた。
そうそこにあるのはザ・パエリア。
「沢山の種類の貝があったからな。華やかに全部入れたぜ!」
アサリにホタテにシジミにサザエ。ひとつだけでも美味い貝類がどっちゃり入ったゴリョウ特製貝パエリア(テンコモリバージョン)ができあがった。
「次は貝の天ぷら、それにアヒージョ。酒も進むぜ」
「ヤッホーーーーーーーーーーー!!」
ポン酒掲げたアーリアお姉さんが『今夜はパーリナーイ!』て頭痛の痛いことを言って飛び跳ねた。
いえーいといって飛び上がるアザラシと鳥とたこと鯛焼きと忍者。
●
「新鮮な貝の旨味が凝縮された米。見た目も華やかじゃが、口の中で広がる旨味は正に味の絢爛舞踏会じゃったの……」
ほくほく顔で昨晩の貝料理を語るデイジー。
その隣で、アーリアはとってもシリアスな顔で言った。
「油断しちゃあだめよぉ、デイジーちゃん。あそこは所詮ダンジョン浅層。中層におけるこの蟹ゾーンは複雑な迷宮で侵入者を迷わせながら蟹光線で焼く死と恐怖の階層なのよ」
「なので拙者地図をちゃんと書いておいたでござる」
そのまた隣で、巻物をシャッて広げる咲耶。
二度見するアーリア。
「『こんなこともあろうかと!』」
「こやつ、かつてないくらいジャストな使い方を……!」
「できる……!」
「そうときまれば一方的に爆殺よぉ~」
アーリアはビール瓶をケースごと持ってくると、透視で壁向こうを見てから壁をよじ登り上から各通路めがけてぼんぼん投げはじめた。
「見せてあげるわぁ、蟹迷宮が壊れる瞬間を!」
黒髪の蟹がバッてこっちをむき、壁をジグザグにジャンプしてよじ登ってくる。
「順路が分かれば迷宮なんてただの壁がおおいだけの部屋です!」
ベークも負けじとジェット噴射で壁の上によじ登り、蟹のはさみアタックに対抗した。
「魔種の攻撃をくらっても案外立ってる僕の耐久力を甘く見いたたたたたたたた!」
「たいやきーーーーーーーーーー!!」
今助けるぞーと言って大量にイワシを発射するワモン。
アクセルは羽ばたきながらジャンプすると、ワモンに続いてバイオリンを構えた。
「バイオリンミサイル!」
説明しよう。バイオリンでミの音を出すとミサイルでるじゃん? あれだよ。
蟹を壁から撃ち落とすと、グリュックにぶんなげてもらったレーゲンが『爆殺っきゅ!』とか言いながらクロスアームでダイブ&自爆。
アザラシ型の煙がボッてあがったかと思うと、ほっこほこに蒸し上がったカニができあがった。
「よっしゃあ蟹クリームコロッケだぜ!」
「殻は甲羅焼きにしましょう!」
「海老カツサンドもね」
壁をガッとよじ登って倒した蟹を回収しにかかるゴリョウ、シルフィナ、メートヒェン。
もうお気づきであろうか。
「この迷宮……壁登ったら楽勝でござるな!?」
「レッツ・クッキングターーーーイム!」
すげえイイ声で叫ぶと、ゴリョウはほぐした蟹の身をホワイトソースの中に美しく泳がせたものを衣で包んで油にドン!
お宅のダンジョンにもついてるっていうタイマーが『テレレッテレレッ』ていいはじめた段階であげれば揚げたてサックサクの蟹クリームコロッケのできあがりである。
「もちろんこれだけじゃあないぜ。車海老の炊き込みご飯つきだ!」
「ぷりっとした蟹の身ととろけるクリーム、そしてそれらを包むサクサクの衣が奏でる三重奏は豪奢なオーケストラにも負けぬハーモニーなのじゃ」
早速食べ始めてるデイジー。
「ここまですっかりおなかいっぱいなのじゃ。これでは保存食の出番がないのう……のうベークゥ!」
「僕の尻尾みて言うのやめてもっていいですかね!!!!」
「おっと、パン派にもしっかりサービスするよ」
メートヒェンが一緒にテレレッした海老カツを包丁ですぱすぱきって、コッペパンへと挟んでいく。千切りキャベツとタルタルソースもつけてな!
「うおー! これどうやっても美味いやつだぜ!」
「オイラこういう食べ歩き系グルメ大好きー!」
「レーさんも片手で食べれるご飯は大好物っきゅ!」
ワモンがレーゲンと一緒にひれをばったんばったんやり、アクセルが文字通りっていうか物理的に舞い上がったりした。
「このメニューの並び……ハッ、次はお酒のつまみメニューでは!」
敏感に察した咲耶が振り返ると、シルフィナが『然様でございます』って顔ででけー蟹の甲羅を差し出した。
あのホテルとかで鍋物でてくる時下で燃えてるちっちゃい燃料であぶりつつ、醤油と酒で蟹の身を焼く。
死ぬほどうめーやつじゃんこれ。
「お姉さんここに住むわぁ」
「落ち着いてください。先に進みますよ」
アーリアが焼酎と一緒に甲羅焼きをつまつましつつ、この世の春みてーな顔をしている。むりからぬ。
だが先へ進まねばならぬのだ。ちょっと忘れ始めてきたけど、キャメロンパンとなんかの豚を助けるためにここまで来てるんやで?
「キャメロンさん……あなたのことは必ず助けてみせます。ね、レーゲンさん!」
「きゅ!!」
●ナマナマズはナマのナマズである!
「バイオリンドリル!!!!」
出たー! アクセルセンパイのバイオリンドリルやー!
バイオリンでドの音を出すとドリルが出るんやー!
「でないよ!!!!!!!!!!!!」
ついに常識が勝ったアクセルセンパイがドリルハンドのおもちゃを足下にベッて投げ捨てた。
ここはテンコモリダンジョン最下層。ナマナマズ水域である。
飛び込むといきなり巨大モンスターナマナマズが電気をびりびりして食らいついてくるエリアである。
アクセルが美しいバイオリンの旋律を奏でると、音符型のエネルギー体が次々に生まれてナマナマズへと飛んでいく。
どうして水中出バイオリンがひけるのとか聞くな。
「流石にナマズの調理法は学んで来ませんでしたので……」
シルフィナはアタッシュケースを開くとペティナイフとパン切りナイフをそれぞれ取り出し、海中を泳ぎ回るナマナマズめがけて次々と投げ始めた。
「ここは戦闘(素材採取)にせいをだすことにしましょう」
キッチンナイフが突き刺さったところで更にケースから牛刀、冷凍包丁、サーモンナイフ、骨スキ包丁、出刃包丁、柳刃包丁、中華野切、蛸引、ふぐ引、麺切り包丁、関西式鰻裂き包丁などなどありとあらゆるキッチンナイフを一斉に取り出すとそれぞれ指の間に沢山挟み次々に投擲していく。特に麺切り包丁が凶悪。
「ナマァー!?」
こんだけ沢山包丁を投げつけられた経験がたぶん無かったんだとおもう。ナマナマズは悲鳴をあげて彼女から逃げ始めた。
「逃がさないわぁ」
アーリアはすぐそばで泳いでいたベークをむんずと掴んだ。
「あの」
「ナマズは食欲旺盛、つまりベークくんに釘付けなはず!」
「あの!?」
アーリアは『そ~おれ~』とママさんバレーみたいな声を出してベークをジャイアントスイングからのスロー。
ぬあーつって回転しながら飛んでいく巨大鯛焼手裏剣。
「腹が減っていようが関係ない。今宵の捕食者は我々であり、その腹の中にいるキャメロンさんとついでに豚は返していただく――そして今日こそ喰われるわけにはいきm」
ぱくっといかれた。
「ベーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーク!!!!!」(←ここ予告映像)
ココナマナマズ体内!
「う……僕は一体どうなって」
「怪物に食べられてしまったようですね。さ、立って」
ナイスミドル紳士がベークの手をひいて立ち上がらせた。
「ここはヤツの体内です」
「あなたは……ハッ、それより早くここを出ないと!」
「お待ちを。ムリに脱出してもまたヤツに喰われるだけ。で、あれば……」
「あえて内部から叩くっきゅ!」
レーゲンは『ブルーノートディスペアー』をぱらぱらーってめくってナマナマズとめっちゃ似てる狂王種のページを開いてベッと叩いた。
「レーさんのマジックチェーンソーで胃の中をズタズタにするっきゅ」
「言葉にすると滅茶苦茶怖いわねぇ」
アーリアはそう言いながらそっとワモンの尻尾をつかんだ。
「えっ、何するんだ? なんでオイラの尻尾――」
「せーの」
レーゲン&ワモンによるダブルアザラシミサイルが発射された。
ウワーと言いながらナマナマズへ飛ばされたアザラシコンビはそのままぱっくんされた後……。
内側でものすごい勢いでドコドコ暴れ回った。
「!?!?!?!?!?」
誰だって食べたばっかのもんがおなかんなかで暴れたら驚く。
「いまじゃー! アナセマデストロイ!」
デイジーは空中に筆ペンで『ふしぎなちからでしぬことになる』って書いてからエイッてやってナマナマズへシュート。同じくアーリアも『よいごしのかねはもたない』って書いてシュート。
合わさった闇深きなんかがナマナマズに命中し、いろんなモノがどっちゃどちゃにナマナマズをさいなみ始めた。
「これは好機!」
咲耶は『始末斬九郎』を抜刀すると巧みなドルフィンキックで水をかきわけポンポンペインしてるナマナマズへと急接近。
からの自らを巨大な回転ノコギリにかえた斬撃でナマナマズの髭を切断した。
「これで抵抗力はカットされたでござる! もはや敵が飯のおかずにしか見えぬでござる。腹が鳴ってはしょうがない。さぁさぁ、とっとと早く拙者等の飯になるが良い!」
抵抗力を失ったナマズなどもはやまな板の上の鯉(鯉なのか鯰なのか)。
ここぞとばかりにBSをテンコモリにしたところで、メートヒェンが鋭いドリルキックをたたき込んだ。
ドムンとおなかにめり込むメートヒェンキック。
と同時に内側からベーク、ワモン、レーゲンがまとめてポーンと飛び出してきた。
「ナッ、ナマーーーーーーーーー!!」
断末魔の声をあげ、ナマナマズは盛大に血を吐き……そしてついに動かなくなったのであった。
こうしてテンコモリダンジョンは攻r
「クッキンターーーーーーーーーーーーイム!!」
巨大な包丁を振りかざしたゴリョウが、最下層の水域から引っ張り上げたナマナマズの巨体を中階層の広いとこにどんと放り投げた。
「貝! 蟹! といきてナマズが最下層にいるなら調理するにきまってんだろ! ナマズってのは伝統的ないい食材なんだぜ」
今日よく考えたら料理シーンしかないゴリョウ。
ここへ来て最大の見せ場である。
ボスにとどめを刺す人はいるけど倒した後に喰うって。
「そんなわけで、まずはシンプルに蒲焼きだ!」
たっぷりタレをつけて両面焼きにした巨大な蒲焼き。
よく食堂とかにあるトレーとおんなじサイズの一枚焼きが瓦みてーに詰まれていく。
当然ご一緒するのはゴリョウ自慢の混沌米である。
ジャーで炊きたてのご飯をよそい、全員車座になってそれぞれお箸とお椀を持った。
真ん中には冗談みたいに大量に詰まれた蒲焼き。
「デザートにメロンパンとたい焼きもついてとても満足なツアーだったのじゃー。のう豚ぁ!」
「ブヒイ!」
デイジーはご飯を冗談みたいに山盛りにして、豚を椅子にして優雅に食べ始めた。
その横でもももももってご飯をほっぺにつめこんで軽くリスみたいになってるワモン。
「まさかナマズがこんなに美味いとは知らなかったぜ」
「オイラも。いくらでもご飯が食べられるよね!」
アクセルはお行儀よくちょこちょこつまみながら、シルフィナやメートヒェンが用意してくれたお吸い物をずずっとやった。
「キャメロンさん、このタイミングで逃げませんか」
「気が合いますね僕もそれを言おうと思ってました」
そーっと逃げようとするベークとキャメロン。その尻尾をグイッと掴むアーリア。
「美味しそうなパンと鯛焼きねぇ。赤ワインと合いそうだわぁ」
「ひい! アーリアさん酔ってる!? まってください僕たちこうみえて骨も鱗もあるんでsウワーーーーーー!?」
ベーク少年がアーリアお姉さんに食べられちゃう(あえてエロチックな表現をしました)。
レーゲンとグリュックはそんな様子をかるくスルーしつつ、横の咲耶と一緒に蒲焼きの味をひたすら堪能していた。
すると。メートヒェンがスッとバスケットを取り出した。
「皆、この二日でとった食材がまだ有効だってことを忘れてはいないかな」
「それはまさか!」
「ここまでの伏線っきゅ!?」
同時に振り返る咲耶とレーゲン。
メートヒェンが取り出したのはアサリのおにぎりと海老カツサンドである。
「美味しいご飯には美味しい汁物が欠かせません」
更にシルフィナが湯を沸かしほっこほこに煮た蟹汁を作り始めた。
「今日は良き日になりました」
「そうだね。みな美味しく、そして無事に攻略を終えることができた」
そう、ゆえにこう書き記すべきであろう。
めでたし、めでたし!
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
おなかがすきましたね!?
そしてテンコモリアイランドには絶望の青攻略に向けた中継基地が建設されます。
これから貝と蟹が食い放題だぜ!
GMコメント
■オーダー
三日をかけてダンジョンを攻略し、最深部にすまう狂王種タイラントナマナマズを倒せ!
そして仲間をかばってぱっくんされたキャメロンぱん(あと豚)を助け出すのだ!
■テンコモリダンジョン
このダンジョンは三つの階層に分かれています。
第一の貝ゾーン、第二の蟹ゾーン、そして第三のナマナマズゾーン。
それぞれものすごく広大なダンジョンだが、一日ずつかけて攻略していこう。
そのあいだ絶対おなかがすくので、倒したモンスターを調理して美味しく食べよう。
●食事ボーナス
より強いモンスターを調理した時、そして調理の腕がよかった時、味方全員にHPおよびCTボーナスがつきます。
逆に質素な食事やワンパターンな食事など、いろいろ手を抜くとペナルティがついてしまいます。
あとどうしても困ったらたいやき先輩の尻尾とかを食べることで割とつよめのボーナスを得ることができます。
●モンスター
ダンジョン内のモンスターは強ければ強いほどおいしい!
ので、倒したあとちゃんと調理すれば食べることができます。
雑に食おうとすると寄生虫リスクとかがあるので注意です!
また、特に強いタイプのモンスターはこっちをかなり早い段階から察知して敵意バリバリで近づいてくるので、レーゲンさんあたりのエネミーサーチが有効です。
●第一階層:貝ゾーン
岩をくりぬいたようなひろーい洞窟がつづいており、膝までつかる程度の浅い水場があちこちに広がっています。
ホタテやアサリ、ハマグリやサザエのモンスターが大量におり、侵入者をアサリ爆発やジェットハマグリタックル、サザエドリルなどの結構物理的な手段で攻撃してきます。
●第二階層:蟹ゾーン
岩場はすっかりなくなり、漆喰の壁やヒカリゴケの天井によるひろーい空間に出ます。
透過の難しい壁によって迷路状態になっており、これをいい具合に攻略しつつ次の階層を目指しましょう。
蟹ゾーンには甲殻類系モンスターが多数生息しており、蟹ビームを放つ蟹ドールやファイヤーシャコ。サイクロン車エビやブリザードミジンコなど状態異常攻撃を得意とする神秘型モンスターが多数生息しています。
●ナマナマズゾーン
このエリアだけが海底ゾーンです。
水中戦闘が必須ですが、全員に海中戦闘装備が支給されておりデフォルトで『水中行動(微弱)』がかかります。
これより強いアイテムやスキルがあればより有利に戦闘することができます。
ナマナマズは高いHPと攻撃力をもつ狂王種で、相手に突撃したり食らいついたり、ヒゲから放つ電撃で範囲攻撃をしかけたりします。
またヒゲがあるうちは特殊抵抗が200とかいみわかんない数字になるので、BSを通すにはまずヒゲを破壊しなければなりません。
また、あえておなかんなかに入って強力な攻撃をしかけると最大HP比の割合ダメージを与えることができます。(ただし消化速度が上がるので戦闘終盤のトドメに使いましょう)
■NPC解説
・キャメロンぱん(キャメロン・ブレッド)
どうみてもメロンパンにしかみえない亀系海種。
たいやきさんのお友達なのか知り合いなのか少なくとも他人とは思えねえ。
『絶望の青』について研究しているらしく今回の探索に専門家としてついてきてくれたがナマナマズに喰われた。消化されるまえに助けだそう!
・資本主義社会の豚
デイジーさんちの豚
もとは異世界のサラリーマンだったらしいが召喚されてからこっち、自分が豚に見えるというギフトのせいで豚生活が長い。(ギフト的にはベークさんの同類と言ってもかごんではないな!?)
しかも豚としてデイジーに買われているのでもはや豚のプロ。
今回気分で連れてこられて巻き添えでナマナマズに喰われた。
かわいそうなので助けてあげよう。
■■■アドリブ度■■■
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。(主にモンスターの詳細や数などですが、プレイングで直接メタを張らなくてもOKなラインえす)
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