PandoraPartyProject

シナリオ詳細

愛をうたう

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 その世界は様々なドラゴンによって成り立っていた。
 とある国では人間たちを脅かす恐怖の存在として。別の場所では、生活の糧となる貴重な食材として。小さなお姫さまを護る騎士として。人々の崇拝の対象として。
 そんな様々なドラゴンたちを世界に放っているのが、語り部と呼ばれる長寿種だった。
 彼等の言葉はドラゴンの栄養であり、与えられる物語によってドラゴンは姿を変える。
 怒りの話をすれば真っ赤な鱗と炎を纏ったドラゴンへ。
 悲しい話をすれば海に溶け込むような青い翼を持つドラゴンへ。
 楽しい話をすれば陽気で人懐っこいドラゴンへ。
 彼等は世界各地に散らばってドラゴンの卵を孵化しては時代を動かし、役目を終えると花の種となって眠りにつく。
 いつかまた育てるべきドラゴンの卵が現れるまで。

「長かった。長かったんだよ、愛しい我が子。こんなに小さかった君が、ここまで大きくなるまで途方もなく長かった。」
 見上げるほど大きな卵をしわがれた手が愛しさを持って撫でる。ボロボロのローブから覗く瞳の光は弱く、声も掠れていた。
「でも、あと少しなのに、君にあげられる話が、もうないんだ。」
 コトリと卵が揺れる。
 薄暗い洞窟の一番奥。一部だけ煙突のように伸びた天井の先からは陽の光が降り注いで卵を温めている。
 コト、コトリ。
「でも、大丈夫。安心してほしい。きっと誰かが私の願いに気づいてくれる。きっと誰かが君に世界を見せてくれる。愛しい我が子。愛されて産まれてくる君よ。きっと、何よりも美しいドラゴンになる、君よ。」
 声は途切れ、洞窟にはただただ静寂が訪れる。

 コトリと、卵が揺れた。



「異世界の危機にハッピーエンドを綴る為! 境界案内人・子羊、参上!」
 カウンターの上でビシッとポーズを決めた子羊が、10秒ほど静止したあと無言でカウンターを降りる。
 そうして何事もなかったかのような顔をして一冊の本を取り出した。
「今回みんなに紹介するお仕事は、ドラゴンの卵を孵化させよう!っていうお話だよ。」
 表紙には大きな卵と、それに巻き付く茨と散りかけた一輪の薔薇。
「ドラゴンって言っても戦闘になったりしないから大丈夫。産まれたらすぐに世界に、自分の役割が待つ場所へ飛んでいってしまうんだって。本当ならドラゴンの卵を孵化させる専門の種族がいるんだけれど……これは、語り部と呼ばれる種族の一人と、1つの卵のお話。」
 語り部が紡ぐ物語で育ち孵化を迎えるドラゴン。けれど世界に1つだけ、何十年何百年と物語を紡いでも孵化されない子がいた。
 長寿種である語り部は毎日毎日洞窟の奥で一人、ずっと愛情を注いで物語を紡いでいたけれどその寿命ももう尽きてしまう。
 このままでは孵化されないドラゴンをイレギュラーズのみんなで孵化させてほしいと子羊は言う。
「みんなには語り部と同じ『紡ぐ言葉が糧となる』能力が芽生えるよ。与える話は何でもいいけれど、でもこの語り部はずっと、愛を語ってきたんだって。」
 家族への愛情。恋人への愛情。好きなもの、好きなことへの愛情。
 その種類は問わないけれど、出来ればみんなにも愛を語って欲しい。
「洞窟にあるのはドラゴンの卵が一つだけ。みんなが語り部と出会う事はないけれど、きっと傍で見守ってくれてると思うから。」
 よろしくお願いしますと頭を下げてから、子羊は明るく笑った。

NMコメント

桃缶です。
どうぞよろしくお願いします。

◆依頼内容
ドラゴンの卵に愛を語り孵化させる。
どんな愛でも構いません、家族愛、友愛、恋愛、博愛、好きなことを好きなように語って下さい。

◆場所
とある洞窟の一番奥です。
みなさんが降り立つ場所もそこであり、そこから移動する事もありません。
煙突のように伸びた天井から陽の光が降り注ぐ場所に見上げる程大きな卵が一つ置いてあります。
それ以外の場所も十分な広さがありますが、語り部の生活に関する形跡は何もありません。
卵の傍らにはボロボロのローブに包まれた真っ赤な薔薇が一輪あります。


以上となります。
みなさまと共にハッピーエンドを綴れますように。

  • 愛をうたう完了
  • NM名桃缶
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年02月09日 21時40分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (4人)

チック・シュテル(p3p000932)
埋れ翼
マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)
黒鎖の傭兵
赤羽・大地(p3p004151)
未来を、この手で
ユースティア・ノート・フィアス(p3p007794)
夢為天鳴

リプレイ


 薄暗い洞窟の中、この世界に降り立った4人の前にある大きなドラゴンの卵は、時折コトリと揺れては生きている事を感じさせた。降り注ぐ光は暖かく、傍らに落ちた薔薇は訪問者を歓迎するように見守っている。
「紡ぐ言葉が糧となる、語り部の力。凄く素敵で、一時とは言え其の奇跡に携われる事は、誇らしくもあります。」
 物腰の柔らかな優しい声で『夢為天鳴』ユースティア・ノート・フォアス(p3p007794)はそっと卵に近づいた。微笑むように細めた紫色の瞳は慈しみに満ちている。
「私の紡ぐ言葉が、何かを動かすほどのものかは、自信が有りませんが。幼子が産声を上げる一助となれる様、誠心誠意、紡がせて頂きます。」
 ただ話すだけも勿体ないと、ユースティアは卵の身嗜みを整えようと思っていた。周囲を掃除し、時折揺れる卵を傷つけない様に注意しながら拭いていく。そんなユースティアに手伝うと手を伸ばした『かくて我、此処に在り』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)。手の届かなかった上部を撫でるように拭きながらそっと掌を殻に当ててみる。
(生き生き生きて生の始めに暗く…この後何だったか。まぁこいつにはまだ早い話か。)
 触れた側面は温かく、命の鼓動を感じさせた。
「兎も角友人達の話位しか話すことないし、口下手だから悪いがあまり期待しないでくれよ?」
 チャリと上半身から垂れた鎖が音を立てる。虚ろにも見える黒い瞳で卵を見つめるその横で『ホンノムシ』赤羽・大地(p3p004151)も静かに息づく命に寄り添うように背を預けて座り込んだ。手にしたハードカバーを膝の上に置いて語りかけるように言葉を紡ぐ。
「愛……愛?か。やる事はそう難しくはないと思うけど、話す内容に迷うな……。本を読み聞かせてやってもいいけど、どうせなら経験が伴ったことの方が、卵の中のキミにもよく伝わるだろうか。」
「この世界の……ドラゴン。……話す事によって、色んな子になる……なんて。御伽噺、みたい。」
 同じように反対側へ座り込んで背を預けた『埋れ翼』チック・シュテル(p3p000932)が幼子を包む揺り籠のようにその背に生えた柔らかな真白の翼を押し当てて囁く。少しでも温かさが伝わればいいなと思いながら。
「……それじゃあ、語り部……っていう人達は。……おとうさん、おかあさん……っていう、存在になる……のかな。難しい話は……出来ないと思う、けれど。同じくらい、優しい愛を……貰っていた気が、する。今日は……いつもみたいに、歌……じゃなくて。言葉で。伝えられる様に、頑張る……ね。」
 洞窟に静かに響く優しい声。誰もが語り部の愛を引き継ぎ、孵化の手助けとなれるよう気遣いと慈しみに溢れた言葉を糧として与えようとしている。
 紡がれる愛を期待するように、卵がコトリと揺れた。


 囲むようにそれぞれ卵に寄り添い、鼓動を感じ乍ら互いにそっと目配せする。それでは、と最初に言葉を落としたのはユースティアだ。
「愛のお話、ですか。ん、と。愛かどうか、少し不安ですが。」
 一言前置きを置いて、思い出すように目を閉じる。
「私は何処から来たのか忘れてしまって、気付いた時には独りで真っ暗な場所に居ました。怖くて、けれど行く先もわからなくて。」
 脳裏に浮かぶ孤独や恐怖。もしかしたらそれは今、語り部を失ってしまった卵が感じているものかもしれない。共感するように揺れた卵に微笑みを返し、言葉を繋ぐ。
「歩き出せずにいた私を見付けてくれたのは、優しい目をした動物たちでした。怯える私を慰めてくれた子、光差す場所に導いてくれた子。彼らが、私に新しい想いをくれました。怖いものはたくさん有るけれど、あの日貰った温もりが有るから、歩いて行けるのだと想います。」
 夜から朝になるように。冬から春になるように。心に広がった温かさを愛と呼ぶならば。
「――アナタは、これから世界に飛び出して、アナタの役目を全うするのでしょう。怖いもの、悲しいこと、許せないもの。たくさん、目にする事でしょう。だから、其の時に。アナタにたくさんの愛情をくれた方の事を、想い出して下さい。アナタの中に根付くものが、きっと、アナタを支え導いてくれるはずだから。」
 彼女を救い背を押してくれた動物たちからの優しい愛がゆっくりと卵へ注がれる。
「それでは俺からも話をしよう。」
 ユースティアの言葉が止まったのを聞き届け、今度は大地が口を開いた。言葉の中で時折変わる口調はまるでこの場に二人いるように聞こえる。
「具体的にハ、この赤羽の昔話を聞かせてやろウ。友を、家族を、皆を愛せ、という話は語り部がしてくれたろうからな。……別にナルシスト、という訳じゃないけどナ。」
 傍らに置かれた薔薇をちらりと見やった目は優しく、ふうと一息置いて言葉を繋ぐ。
「俺はナ、他人を愛せなかったんダ。俺ハ、俺を失うのが怖くっテ、他人を食い潰して生き延びてきタ……俺以外に大切な者がなかったかラ、躊躇いなくそんな事をしてたのサ。今も、俺達は死ぬのは怖いけれど……今では共に戦場に立つ仲間を失うのも、怖い。」
 いつの間にか仲間を大切に思う気持ちが芽生えていた。と大地は思う。それはきっと周囲からの信頼や過ごした時間がそうさせるのだろう。
「俺の首を断った、あの兎。彼女と混沌で戦ってから、猶更そう思うようになってきた。」
 声に少しだけ滲む仄暗い感情。けれど、今思い出すのは柔らかな場所と感情をくれた仲間たちの姿だ。
「俺や仲間の死を遠ざけるためなら、なんだって俺はやるつもりだ。死ねば、失えば、何もかも終わり。その怖さを、俺は知ってしまっている。少なくとも共に立つ味方には、それを味わってほしくない。」
 ここで静かに孵化を待つドラゴンにもいつかきっと、そんな相手が出来ると信じて。
「俺のこれは、愛とは違うのかもしれない。だけド、お前は一人じゃなイ、必ず共に戦ってくれる味方がいル。どうかお前も、仲間のために戦える、優しき竜になれるように祈っているよ。だけド、自分もぞんざいに扱うんじゃねぇゾ? お前が傷ついて悲しむやつだっているだろうからナ。ずっと、ずっとお前のそばにいた語り部も、そうだったはずだ。」
 仲間と過ごす事で得た温かな気持ちが伝わるようにと願う心がゆっくりと卵に注がれる。コトリと満足そうに揺れた卵を見上げ、大地はバトンを渡すように隣のマカライトを見た。その視線を受けて、静かに頷いて言葉を紡ぐ。
「親の顔も覚えてなく、育ての祖父母には感謝はすれど、やはり友人以上に気を使う奴等はほぼいない。俺の友人達は何奴も此奴もクセのある奴ばかりでな。必ず何処かで捩くれてる。特に最も仲の良い奴らは底抜けにだ。」
 信頼と絆があるからこそ、マカライトの言葉は辛辣に見えて穏やかだった。言葉にすれば簡単に脳裏に浮かぶ友人たちの姿。
「傭兵の心構えを教えてくれた師匠のリーダーは時々飯を奢らないと拗ねて話にならないし腹を減らしたら色々齧り出す。何時も物腰の柔らかいサブリーダーは一度スイッチが入ったら満足するまで打たないと逆ギレしてくる。カラカラ笑って場を和ませる後輩1号は女に痛い目見せられて泣きついてくるし。冷静に物事を見る後輩2号は全員に対して無表情で毒に暴言を吐く。」
 それでも何処か寂しげに聞こえるのは、それが思い出の中にあるからだろうか。
「正直ロクな人間ではない奴等ばかりだが、一緒に笑って、泣いて、草臥れて酒を飲んでまた笑う良い奴らだ。……お陰で離れて二年位も経ってて最近堪えてる感じがする。でも、だからこその友人達だ。馬鹿騒ぎを思い出せば立ち上がれるし、生きるのを諦められない。奴らへの信頼……親愛は、自分の道を照らしてくれるから。」
 マカライトはそっと自分の胸元を握るように押さえ、頭を殻の側面に預けて小さく笑った。
「外に出れたら友人を作るといい。喧嘩をしてもまた笑って居られる友人を。」
 どんな逆境にあっても彼を支えてくれる友人たちへの信頼と親愛がゆっくりと卵に注がれる。聴き入っていた目を開けて、最後だと顔を上げたのはチックだ。
「…おれが話す、のは。家族から貰った…愛の、こと。……家族、と言っても。…おかあさんとか、おとうさんは…いなくて。でも…たった一人。弟が、いたんだ。」
 たどたどしく紡がれる言葉だが、響く音は歌うように真っ直ぐで。
「弟は…おれより、「きちんと」していて……とても良い子、でね。優しくて…誰と話すのも、上手で。おれに対しても…そうだった。幾つか、時が経って。……やっぱり、家族…だから。かな。大事にしなくちゃ…とか。幸せに、なってほしい…とか。思うように、なって。…誰かの為に、っていう。温かい、気持ち。……これが、おれの教えてもらった…愛。」
 家族だからこそ時に反発し、けれど幸せを願ってしまうのだろう。ドラゴンにとってそれは語り部という存在に他ならない。
「……語り部は、いなくなっても。ちゃんと、君の事を…見守っていたと、思う。それは、ほら。寄り添っている…薔薇の花が、一番…知ってる筈。花に篭められた…想いを、君は…きっと知って。今度は、伝える役目に…なるのかな。どうか…君が、人々に。世界に……深く、愛される子で…あります様に。」
 願うように。祈るように。歌うように紡がれる家族への愛がゆっくりと卵に注がれる。


 ーーーピシッ
 ーーパキンッ

 4人がそれぞれ語り終えたと同時に響いた音に、彼等はそっと距離を取って卵を見上げた。最初は小さく弱く、けれどだんだんど広がる罅と音に息を飲む。
「綺麗……。」
「凄いな。」
 チックとマカライトが感嘆の声を漏らす。それは降り注ぐ陽の光を浴びてキラキラと輝いている。
「まるで虹、だ。」
 鱗の一枚一枚が宝石のように様々な色を放つ虹色のドラゴン。沢山の愛を糧に産まれた、希望の象徴のような姿に大地も目を見開いて見つめた。
『キュルル……。』
 殻を破り終えたドラゴンがまだ小さな体を精一杯伸ばして翼を広げる。旅立つのだと気づいたユースティアが咄嗟に足元に駆け寄った。
「どうか、これを。ずっとあなたを待っていた方です。」
 拾い上げた一輪の薔薇を恭しく差しだせば、ドラゴンは分かっていると頷くように大きな口先で薔薇を咥えた。

 バサリと音を立ててドラゴンが飛び立つ。トンネルを抜け、世界に虹を掛けるように空を行く。語り部と4人の愛を注がれて育ったドラゴンはきっと、この世界に沢山の愛を届けるだろう。

成否

成功

状態異常

なし

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