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シナリオ詳細

<黒鉄のエクスギア>弾幕を超えて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●遺跡内の死闘
「鉄帝の恥さらしがぁっ!!」
 軍人が駆ける。
 音より速い銃弾を鉄塊じみた剣で断ち割り、砕けた破片を押し退けるようにひたすら前へと進む。
「効いているッ、撃ち続けろッ」
「貴様も賊側かぁっ!!」
 兜の隙間から湯気が出る。
 電柱じみた柄が凄まじい力で悲鳴をあげ、速度を増した斬撃が銃弾の豪雨を削り取る。
 かつん、と軽い音がした。
 ベルトにみっしりと連なっていたはずの銃弾は全て消費され、高温の機関銃だけが賊の手元に残った。
「逃げッ」
 被弾でスクラップじみた全身鎧が平然と近づいて来る。
 血走った憤怒の瞳は生きる希望を否定するには十分過ぎる。
 賊達は、生き延びるため腰の剣を抜きあるいは個人用の火器を構えた。
「奴は遅いッ、削れ、削って殺せェッ」
 軍人が軽く身体を揺する。
 たったそれだけで装甲の角度を調節され、全ての銃弾が受け流された。
「死ぃ」
 鉄塊が旋回する。
 簡単ではあるが有効なバリケードが砕かれ、武器庫から持ち出された銃火器がガラクタと化す。
「ねぇ!」
 砕けた残骸が賊を襲う。
 骨と装甲が砕ける音に紛れて、断末魔の悲鳴が聞こえた。
「他の連中はどこに消えた」
 鉄帝軍人が残骸を見下ろし鼻を鳴らす。
 倒したのは6名程度。
 部隊ごとショッケンについているなら、後10名はいるはずだ。
「ぉふ」
 ぴゅー、と新鮮な血が噴き出した。
 視界が白黒に変わって大型剣が遺跡の床に落ちる。
 そんな鉄帝軍人を、遠くから見る目が2対あった。
「今がチャンスです。ヤりましょう」
「そんな余裕はないッ」
 小隊長が一言で斬り捨てる。
「ローレットも動いてるッ。1人2人殺しても無駄だ」
 だから古代兵器に賭けるのだ。
 武器庫から持ち出した兵器でコアルームの守りを固めれば、古代兵器が起動するまで持ち堪えることが出来るかもしれない。
 起動が出来ればスラムごと邪魔者を粉砕可能なはずだ。
 いずれにせよコアルームに辿り着くのが最優先だった。
 指揮官は、大型機関銃を運ぶ部下達を急かそうとして先程の軍人とは別の気配に気付く。
「イレギュラーズがこれほどとはな。2班、3班は十字砲火の準備をしろッ。急げッ!」
「弾ァ全部使っていいんですか?」
 機関銃が乱暴に下ろされ、その脇に大量の弾帯が積み上げられる。
「出し惜しみするなよッ、私は1班を率いてコアルームへ向かう!」
 見捨てるつもりの内心を一切顔には出さず、彼は堂々とした態度で遺跡の奥へと向かうのだった。

●数時間前
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が瞬きをして、もう一度最初から手紙を読んだ。
「拙いことになってるです」
 手紙は鉄帝軍……ショッケン・ハイドリヒ一派ではなくまともな鉄帝軍部隊からの物だ。
 発掘された兵器用の倉庫が荒らされ、兵器がいくつか持ち出されたらしい。
 窃盗犯が向かったのは、ショッケン一派が向かっているコアルームがある方向。
 彼等がショッケン一派である確率は非常に高い。
「ばーっ、って撃ってくる銃を持った人達がコアルームに向かってるです」
 これまでイレギュラーズに散々邪魔されたショッケン一派は、複数の意味で手段を選ばなくなっている。
「コアルームを占拠されるのは危ないです。防御に向いた兵器を持ち込まれたらもっと危なくなるです!」
 まともな鉄帝軍人が窃盗犯を追ってるらしいが、人格はまともでも脳味噌が筋肉過ぎて多分役には立たない。
「でも、助けられる人は出来れば助けてあげて欲しいのです」
 それもまた、本心からの願いであった。

GMコメント

 銃弾が大量に飛んでくる戦いになります。
 威力はちょっと強い術程度ですので、真正面から飛び込んでも即死はしません。

●敵
『指揮官』×1
 ショッケン配下の鉄帝軍人です。
 情勢不利に気付きましたが逃亡は不可能と判断し、機関銃を盗んでコアルームへの籠城を企んでいます。
 治癒術と指揮能力に長けます。
 良質な剣も銃も装備していますが、本人は指揮を最優先します。
 戦闘開始時点では、部下の大部分を見捨てるつもりであることは露見していません。
 「後ろから来るぞッ」
 「厄介な地形だ……くそッ」
 「あのイレギュラーズは高火力だが脆い。攻撃を集中させろッ!」

『機関銃兵』×9
 大型の機関銃を装備した鉄帝軍人。本格的な取り調べを受けると重犯罪者にクラスチェンジします。
 装備しているのは遠近両方に対応した強力な兵器【物】【遠】【貫】【万能】ではあるのですが、持ち主の練度が足りず命中はかなり低いです。
 一応拳銃とナイフは持っています。
 「弾数で対抗しろッ」
 「畜生なんで俺がッ」
 「な、なんで当たらな……うわぁッ!?」

『重機関銃兵』×4
 特に大型の機関銃を装備した鉄帝軍人です。
 『指揮官』の腹心達で、『機関銃兵』より甘い汁を大量に吸ってきました。
 体力に優れていて、大威力の機関銃【物】【遠】【貫】【万能】を手に持ったまま操ります。
 しかしこの機関銃は設計ミスの発掘品のようで、3度目の使用からファンブルが急上昇、6度目の使用で90に達します。
 「了解ッ」
 「その程度の挑発に引っかかると思ってるのかッ」
 「熱ッ、馬鹿な、弾詰まり!?」

●他
『鉄帝軍人』×1
 戦場より少し南で倒れています。
 イレギュラーズが手当をすると気絶から回復して、重傷なのに勝手についてきて戦おうとします。
 放置すると戦闘終了後に目を覚ますので、面倒ごとを押しつけることも可能です。
 「ショッケンは未だ鉄帝軍人だと? 知るか部下ごとぶっ殺してやる!」

『機関銃』×いっぱい
 壊しても問題ありません。
 戦闘終了後、無事な『機関銃』が『鉄帝軍人』がショッケンと関係無い倉庫へ運びます。


●戦場
 1文字縦横10メートル。現地到着時点の状況。上が北。無風。遺跡内。
 abcdefghijk
1■■■□□■■■■×■
2■■■□□指□□□□□
3■■■□□■■■□■■
3■■■銃銃■■■礫■■
4■■■□□■■■□■■
5銃□□□□■■■□■■
6■■■□□■■■礫■■
6■■■□□礫礫礫礫■■
7■■■初初■■■■■■

□:遺跡。少し凸凹がありますが移動に支障はありません。天井まで10メートル。
■:遺跡。壁や巨大な歯車があり、歩行での通り抜けは困難。
礫:尖った瓦礫が大量に散乱しています。徒歩で移動する際、機動力半減。
×:コアルームへ向かうための扉。戦闘開始時点では開いていますが、通過後、自動的に強固な扉が降りてきます。

銃:1マスにつき『機関銃兵』3人が、十字砲火を浴びせようと待ち構えています。
指:『指揮官』と『重機関銃兵』が東に向かって移動中。装備が重いため機動力は1しかありません。
初:イレギュラーズの初期位置。各人が好きな位置を選択可能。


●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • <黒鉄のエクスギア>弾幕を超えて完了
  • GM名馬車猪
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年01月29日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

セララ(p3p000273)
魔法騎士
武器商人(p3p001107)
闇之雲
ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
優愛の吸血種
アト・サイン(p3p001394)
観光客
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)
戦神護剣
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
シャルティエ・F・クラリウス(p3p006902)
カモミーユの剣

リプレイ

●機関銃
 狐耳少女が剣呑な目つきになった。
 右手の太刀も左手の小太刀も妖刀めいた気配を発し、しかし2刀をあわせたより強い気配が背中の刃から立ち上っている。
 メカメカしい鞘に収まっている状態でこれだ。
 通路を封鎖する賊徒が直視すれば、精神の均衡を失い2度と元に戻れないかもしれない。
「これだからのし上がることしか頭にない腐った脳筋は嫌いなんだ」
 『時空を渡る辻斬り刀』紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)は、機関銃の銃口の向きと賊の視線から射程を計算する。
 移動しながら撃てるならかなり長射程。だがその場から動けないなら、紫電にとっては文字通り手の届く距離だ。
「撃ッ」
 ご、と風が押し退けられる音が響く。
 脆くなっていた床へ数メートル毎に小さな靴裏の形が刻まれる。
 紫電は9基の機関銃が形成するキルゾーンを瞬く間に走り抜け、洗練された力と殺意を2刀に込めた。
「今オレはとても機嫌が悪い」
 身体の速度が刃の速度に変わる。
 刃の軌道に敵はおらず、しかし紫電の生命力の一部を食らった刃が紅い稲妻を撒き散らす。
「悪いが、ここで全員、纏めて死んでもらうぞ」
 刃が乾いた空気を切り裂いて、雷と切れ味を1方向へ集中させた。
 賊の対応は間に合わない。
 機関銃の向きを変えることも出来ず、紅く薄く巨大な刃で以て6人纏めて切り裂かれた。
「良い武器だな。お前達には勿体ない」
 切り傷から流血する賊とは対照的に、斬撃が当たったはずの銃が傷つきはしたがまだ撃てそうだ。
 紫電と比べると欠伸が出るほどの遅さで、1箇所を封鎖していた6人が紫電1人に機関銃を向けようとしていた。
「紫電弐式に当たるのは止めてもらおうか。上司に見捨てられる職場を選んだのは君達自身なのだからね?」
 嘲りと上からの目線が絶妙に入り交じって機関銃兵の感情を逆撫でする。
 これが演技であってもなくても、『闇之雲』武器商人(p3p001107)が極めて危険であることがはっきりと分かる。
「挑発だ、のるなッ」
 重い機関銃を捨てたのは2人だけ。
 残り4人は、防御が薄いだけでなく酷く脆く見える武器商人を銃撃で殺そうとした。
 同種の重い音が4つ重なる。
 武器商人に着弾する度に、腰まで覆う銀髪が激しく揺れる。
 硝煙の臭いの中に死の気配が混じっていないことに気付くまで、10秒近くもかかってしまった。
「はは、やった、仕留めたぞォ!」
 別の場所でも弾幕が張られている。
 武器商人の技の射程外にいた3人が、1つしかない出口に立つイレギュラーズへ銃口を向けていた。
「あいたたたたた!」
 本気の痛みの声だ。
 一つ目の弾幕は辛うじて躱したが、2つめで左の手足の末端が吹き飛び3つめで脇腹が深く抉られた。
 賊徒は引き金を引きっぱなしだ。
 最初は一部の欠損だったのが中まで見えるようになり、その状態のまま『観光客』アト・サイン(p3p001394)がくるりと振り向いた。
「痛いじゃないか」
 傷口が消えていく。
 常人の何万倍かそれ以上の速度で、常人とは違って元通りに癒えていく。
「ひィ」
 機関銃兵の喉から声にならない悲鳴が漏れる。
 何の攻撃も受けていないはずなのに、アトに当てた2人が拳銃弾を浴びたかのような衝撃を受け顔色を悪くする。
「痛覚はあるんだよ? これ以上は武器商人の後ろに隠れたかったんだけど……」
 回復途中で剥き出しの目が微笑む。
「これ以上横から撃たれるのも面倒でね。僕の相手をしてもらおうか」
 アトが普通の人間に見える最も恐ろしい。
 鉄帝軍兵士として平均程度には訓練を受けていたはずの3人が、追い詰められパニックに陥ったただの人間として引き金を引き続ける。
「ここまで盛大に砕かれるのは珍しいね」
 血煙を柔らかな光が隠し、R18Gなものが薄い煙をあげて元に戻っていく。
 アトが回復と治療に専念している間も呪いじみた反撃は止まらない。
 逃げ道をアトに塞がれたまま、刃も銃弾も身体に当たっていないのに機関銃兵の命が削られ続ける。
「なんで、何だよその回復力ッ」
「いやまあ、肉食ってその場で足踏みしてれば大抵の観光客はこれぐらい回復するって。前の世界ではだけど」
 再生途中の傷口を指差す、3人が狂乱し端の1人が泡を吹き昏倒した。
「ローグのコも巧くやっているね」
 武器商人が立っている。
 コートの下には無残な死体があるはずなのに気配は最初と変わらない。
 足下の影を不気味に揺らしながら、一切の防御を考えずに無事な手を伸ばす。
「もう少し摂生すべきだと思うよ」
 賊の命を啜った武器商人が、心底不味そうに眉を寄せた。

●背後からの一撃
 酷く重い銃器を抱え、必死に走る兵士達。
 指揮する男は軽装ではあるが、五感全てを酷使しているので部下よりも消耗が激しい。
「止まれッ」
「やるね、気づいたんだ」
 悪意のない声が軽やかに響く。
 ショッケン配下の小隊長は、部下を叱咤して重機関銃の準備を命じる。
「スラムの人を犠牲になんてさせない!」
 埃臭い通路が急に華やかになる。
 荒い息と背後の戦闘音が耳に届いているのに、浮き立つ様なBGMが聞こえた気がした。
「皆の平和はボクが守る! 魔法騎士セララ参上!」
「てェ!」
 大型機関銃3つの銃撃を開始。
 銃身が甲高い音をたてて銃弾を吐き出し、断罪者が出てくるはずの場所を壁ごと削り取る。
 だがそこには既に誰もいない。
 『魔法騎士』セララ(p3p000273)はバックステップした場所から勢いをつけ、銃撃が止まったタイミングで改めて飛び込んだ。
 聖なるエネルギーを緻密に誘導して聖剣に蓄え。
「セララストラッシュ!」
 塹壕も土嚢もない陣地を、鮮やかな斬撃で切り裂く。
「1人だ。弾を惜しむなッ」
 指揮官を含めて酷い有様だがまだ倒れない。
 鉄帝軍の訓練は厳しく鉄騎種は頑丈なのだ。
「ふーん。部下に足止めさせて自分だけ逃げる気なんだ。ショッケンの部下は卑怯者だね!」
 銃弾より早く飛んできた殺気を読んで、弾幕が薄い場所へ移動。
 聖剣が鞭に見えるほどの高速斬撃で以て銃弾の大部分を打ち砕く。
「ボクのリーディングだと、そこの重機関銃の兵士さんも捨て駒だって。酷いね!」
「ハ、動揺させるつもりならもっと巧い嘘を……」
 図星をつかれた程度で動揺するほど甘い相手ではない。
 そして、反論をしなければ部下に疑われてしまう程度の相手だった。
 朱色で染め上げられたマントが、風もないのに華やかに翻る。
 銀の美しさと生身の生気を兼ね備えた銀髪がゆらりと揺れて、ほんのり赤く染まった先端が『愛の吸血鬼』ユーリエ・シュトラール(p3p001160)の蝙蝠羽を隠す。
「どの世界でも、似た様なひとが誰かを踏みつけてる」
 強者と弱者の優劣のみで判断し、弱者を貪る悪がいる。
 その末端が目の前の男達だ。
「覚悟なさい。どの世界でも、絶対に止めようとする人がいるんだから」
 細い手首に巻かれた鎖が緑の光を放ち、左手で真っ直ぐ構えた剣を美しくライトアップする。
「ッ」
 戦場で鍛えた勘で気付くが既に遅い。
 形は儀礼用の剣でも込められているのは一級の神秘であり、刀身から溢れ出る紅い魔力がユーリエの細い指に導かれて矢の形をとる。
「防げェ!!」
 部下の1人を盾にする。
 重機関銃を持つ3人より後ろにいるので部下には気付かれないが不審には思われる。
「命をどこまで馬鹿にするつもりなのっ!」
 鎖が赤に変わる。
 弦が存在感を増し兵士でも視認可能なほど濃くなる。
 そして、吸血鬼の必殺の矢が、鉄帝の信頼を足蹴にした部隊に襲いかかった。
 重厚な機関銃の上部が削り取られ。
 呆然とした兵士の右肩を貫通しても衰えず。
 指揮官が躱せぬと判断して胸の前で重ねた両腕に直撃。そこで砕けはしたが骨に多数の罅を入れさせた。
「どこぞの正規軍かッ」
 悲鳴は堪えたが冷や汗が止まらない。
 指揮官は重傷者を乱暴に脇に退け、己の手で機関銃を構えた。
 イレギュラーズの移動と対応の速度が速すぎる。
 時間をかけて狙って当てる間に負けると判断。機関銃の得意を押しつける戦法を選ぶ。
「平行に撃てッ」
 曳光弾の光が3つの直線を描く。
 躱すだけなら簡単かもしれないが賊に攻撃しようとすれば難度が急上昇だ。
 光の線が1つ、唐突にねじ曲がった。
 焦って動揺する部下を宥めながら、隊長は重い銃弾を弾くそれを凝視する。
「何、飛び道具が卑怯などと言うつもりはないであります」
 『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)は決して無傷ではない。
 腕装甲は被弾の角度によっては銃弾により擦り傷が出来る。
 被弾時の衝撃で骨格に負担がかかり、振動を抑える筋肉だって疲労する。
「良い銃だな。使えるものは使うべきだ」
 だが本来受けるべきダメージの3分の1も受けていない。
 銃弾の豪雨を防ぎながら、全く速度を落とさず距離を詰める。
「“遣える”ならな」
 小柄なエッダが、物理的には見上げながら見下した。
 雑な腕と雑な指揮しか出来ない部隊には勿体ない。
 増長の報いは命で償えと言われた気がして、まだ籍は鉄帝軍にある3人が怯え、3つの銃口をエッダ1人に向けた。
 銃弾が3倍になっても鉄帝メイドを削り切るには足りない。
 そして、銃弾が飛ばなくなった場所を選んで『帰ってきた牙』新道 風牙(p3p005012)が突っ込んで行く。
「見つけたぞ、セコい真似しやがって!」
 殺意に限りなく近い赤黒いオーラが漏れて、ポーニーテールにした髪が勢いよく揺れている。
 風刃は本気で怒っている。
 賊といえ9人の部下が使い捨てにされたのが非常に、気に入らない。
「お前等はここで止める!」
 倍速や3倍速ほどの速度はないが、通常の基準では上限近いレベルで早くて速い。
 賊は狙いの変更も防御の準備も出来ないまま風刃に近づかれ、飛び越えられた。
「なァ!?」
 風刃は前後反転して着地。
 無防備な3つの背中目がけて両手持ち大剣を振るう。
 大きく重いはずなのに一息での薙ぎ払いだ。
 見た目よりは威力は低く、しかし込められた『気』の質は特上。
 直撃を受けた賊は『気』を振り払うことが出来ず、一番傷が浅かった機関銃兵が全く動けなくなる。
「何を驚いているんだ。ショッケンとかいうヤツの起こす騒動は、普通に暮らしてる人たちへの巻き添えが大きすぎる」
 普段は人間同士の諍いに首を突っ込まない者も介入してくるのは当然だろうと態度で語り、動けはするが鈍くなってしまったもう1人から『気』を奪い力を回復する。
「合流するッ、射撃を続けながら後退をッ」
 ここまで追い込まれても賊達の攻撃力は健在だ。
 2つの銃口がイレギュラーズすら貫通する銃弾を途切れなく吐き出す。
「その力も騎士の剣と同じく民を守るもの筈なのに……!」
 『 Cavaliere coraggioso』シャルティエ・F・クラリウス(p3p006902)の悲痛な叫びは銃声の中でもはっきり聞こえた。
 曳光弾が明後日の方向へ弾ける。
 通常弾が堅い物に負けて砕ける音と火花が連続する。
 シャルティエの構える漆黒の盾は、全てを防いでなお健在だった。
「騎士として、国や民を踏みにじる君達ショッケン一派許す訳にはいかない! 目論見は必ず此処で挫いてみせる!」
 シャルティエは鉄騎種でもなく鉄帝人でもない。
 なのに指揮官級重鎧姿が力でも態度でも似合っていて、指揮官が胸中に沈めていた劣等感を疼かせる。
「狼狽えるなッ! 銃を脆い奴に向けろォ!!」
 狙いが雑になってしまっても構わない。
 心に刺さる名乗り口上を放置すれば、銃撃がほとんど効かない相手に部下が攻撃してしまい今でも低い勝ち目が激減してしまう。
「私欲に走り責務を忘れた軍人になんて」
 シャルティエが盾の角度を調節。狙いの甘い銃撃を盾の表面で滑らせる。
 同時に右手の剣の握りを変えて、銃撃と銃撃の切れ目に憎悪の刃を滑り込ませた。
 肉を裂き骨を断つ。
 機関銃から手を離して胸を抑えても血は止まらない。
「負ける気はありませんよ……!」
 敵は1人倒れて、残った大型機関銃は2基だ。

●殲滅
 武器商人が引きつけているので紫電は攻撃に専念可能だ。
 通常時でも凶悪な威力が全力攻撃で強化され、無残な死体が2つ増えた。
「っと、そろそろ裏側にあいつらも回り込んだかな?」
 アトがフードの位置を調節するとクロークか揺れる。肌まで回復した肌を隠し防御も回復させた。
「やってられるかァッ!!」
 生き残りの兵全員が機関銃を捨て逃げ出した。
 元来た道は戻れず、奥へ続いているはずの道を駆けていく。
 武器商人は己の傷はそのままに、町中を散歩するときのような軽い足取りで逃亡兵を追う。
 丁度、指揮官と兵が鉢合わせするところで追いついた。、
「今までいい夢は見れたろう? だから後は、蕩ける様に甘美な破滅で最後を彩ろうじゃないか。ね?」
 前髪で目が隠れた武器商人の顔に、人間のはずなのに人間には思えない異様な笑みが浮かぶ。
「ヒヒヒ……! 野心高いのは結構な事だが、起動に『儀式』なんてモノが必要な古代兵器が扱い切れるとは限らないのにね。可愛いなァ」
 これでもオブラートに包んだ表現である。
 ショッケンとその配下の無様さを愛でているのが分かってしまい、普通の悪人でしかない指揮官以下数名が顔を青くする。
 エッダが奥への道を塞ぐ。
「本当はね、ボクはとっても怒ってるんだよ。国を守る軍人さんが国民を犠牲にするなんて!」
 ぷんすこ! と怒るセララが指揮官を足止めしつつ聖剣を旋回させる。
「君達の根性、ボクが叩き直してあげる!」
 慈悲の聖剣技は死は与えないが痛みは与える。
 この痛み程度、彼等がスラムにもたらそうとしていた痛みと悲劇と比べれば万分の1以下だ。
 重機関銃兵はもう引き金を引く力もないのに苦痛だけが続く。
 捕まれば最低でも死ぬまで重労働な指揮官が剣で突破を試み、自由に飛ぶシャルティエによって阻まれる。
 なお、今回飛行した数人から、同じ種類の甘い香りが微かにした。
「いい加減諦めろ!」
 風刃自身の速度が剣の威力に変わる。
 試合でも名誉を賭けた戦いでもないので後ろから斬るのもきっとOKだ。
 指揮官の方から背中にかけてばっさり斬って深刻なダメージを与える。
 鍛えた身体が大きく揺れて、受け身もとれずに真横に倒れた。
「降伏しろ!」
 兵士はまだ迷っている。
 指揮官の強さとしぶとさをまだ信じている。
「止まらないならこちらも止まれませんよ」
 ユーリエの鎖が指揮官の首へ巻き付く。
 いつもで折れるという脅迫であり、死ぬのも活かすのもイレギュラーズ次第という事実の通告でもあった。
「うッ」
 ぎりぎり死なない程度に癒やされた指揮官が目を覚ます。
 怪我と疲労で力が入らず、抵抗は勿論動くことも困難だ。
 震える声で降伏を申し出る。部下達も完全に心が折れ、その場に倒れるようにうずくまるのだった。

●軍人
 イレギュラーズが倒したのとは別の機関銃兵の亡骸の近くに、ほとんどスクラップの全身鎧……に見える鉄帝軍人が倒れている。
「この人頑張ってくれたんだ」
 この鉄騎種がいなくてもイレギュラーズは賊に追い付き全滅させていた。
 それでも、まともであろうとする鉄帝軍人がいるのは心強い。
 だからシャルティエは気合いを入れて警戒をする。
「元気すぎて酔いそうな血」
 マントを裂いて止血を行ったユーリエが思わずぼやいていた。
 覚醒はすぐだ。
「ショッケンの馬鹿どもはどこだぁ!!」
 軍人が凄まじい加速で上体を起こし、愛用の大型剣に手を伸ばしたつもりが床で突き指した。
「奇怪な攻撃をぉっ」
 混乱している訳ではなく、これが通常運転である。
「イレギュラーズ、エッダ・フロールリジであります。鉄帝軍の方とお見受けする」
「む」
 両手で兜のズレを直す。
「敵は?」
「既に」
「出遅れたかっ」
 戦闘後の気配を纏った8人を羨ましげにみつめる。
 そして改まった態度で名と所属を述べ、賊の処理について礼を言った。
「私は奥へ向かう。諸君は、賊の生き残りがいるなら軍に運んで欲しい」
 エッダが咳払いをした。
 1度流れた血は戻らない。
 治癒術で傷口は塞がったようだが、このまま行かしたら戦闘になる前に死にかねない。
「盗まれた品よね? ……危険な兵器なら壊そうとも思ったけど」
 ユーリアが無事な機関銃を見て、気の毒そうな表情になる。
「大型の方は酷い出来ですよ。今回は不具合が表に出る倒しましたが」
 アトが肩をすくめる。
 様々な兵器を見た記憶はあるが、ここまで酷い品は久しぶりだ。
 武器商人もこれは売れないと太鼓判を押した。
 使えないの? と目で問う軍人。
 通常型なら使い方と改造次第では? と目で答えるエッダ。
 軍人は、機関銃が思ったより重要でなかった事に気付いて大きく肩を落とした。
「いずれにせよ、持ち出された銃は鉄帝の財産であります。回収出来る物は回収して……ひと段落ついたら、ことの顛末でも見物に行くでありますか?」
 機関銃の残骸を真面目腐った顔で眺めていた軍人が、壊れた機械のように静止する。
「だ、誰を殴ればいいのかな?」
 エッダが微かにうつむく。
 装備から見て指揮官級のはずなのにこの頭の軽さ。ちょっとどころでなく恥ずかしい。
 ショッケンのような外道が今まで捕まらなかった理由が、分かった気がした。

成否

成功

MVP

武器商人(p3p001107)
闇之雲

状態異常

なし

あとがき

 今回登場した鉄帝軍人は、特に駄目な感じの鉄帝軍人さんです。

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