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シナリオ詳細

宇宙船長屋の決闘

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●スラムのすみっこで
 ヴン、と勢いの良い音をたてて棒状の光が伸びる。
 一部の趣味人にとってはたまらぬ、光剣である。
「いいもの持ってるじゃねェか」
 自称不動産業者、どう見ても海賊崩れ男が大口を開けて笑う。
 尖った歯が鮫のようで、住処に押し入られたスラム住民が怯えて震えた。
「まさかこんなモンを隠し持ってるとはなァ?」
「し、知らない。本当に知らないっ」
 本当に知らなかった。
 すりこぎとして使っていた棒がこんな派手な武器だったなんて始めて知った。
 というか知っていれば売り飛ばして食い物を買っている。
「船長、どうします?」
「社長と呼べ社長と」
 元船長、現地上げ屋は、顎の髭をいじりながら真剣に考える。
「ちょっとなら懐に入れてもバレねぇだろ。おいお前等、家捜ししてお宝っぽいもン全部かき集めろ」
「へい!」
「原住民には立ち退き料を渡せよ?」
 小銭を取り出し住民へ弾く。
 1家族の1日分の食費にもならない、はした金だ。
「そんな、追い出されたら行くところが」
 勇気を振り絞って抗議しても、返ってくるのは嘲笑だけだ。
「ならこれもやるよ!」
 光の剣を振る。
 実体剣とは比べものにならないほど軽く、自称社長の腕力で以て高速で振り抜かれた。
 寸前でへたり込んだ住民の髪を焦がし、何故か太い支柱と装甲板に見えないこともない壁を通過する。
「はァ?」
「ひぃっ」
 光刃に当たった箇所が消えている。
 最初からそういう形だったかのように、柱は奇怪なオブジェとなり壁には線上の穴が開いている。
「こいつァ」
 元海賊の瞳で野心が燃え上がる。
 この力があれば、流れ流れて来たこの地でも成り上がれるかもしれない。
「てめェ等! このあたりから根こそぎ奪え、手ェ抜いたらぶッ殺すぞ!!」
 法のグレーゾーンで活動していた地上げ屋が犯罪者と化した瞬間である。
「運が向いてきたぜェ」
 光刃をうっとりと眺める。
 微かに明滅する光が、徐々に血の気が失せていく顔を不気味に照らす。
 刃の維持に体力だけなく魂的な何かが吸われていることにも、安全装置が壊れた武器がいつ爆発するか分からないことにも気付かず、己の栄光だけを夢見ていた。

●生死不問
「場所はここなのです」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が取り出したのは、粗大ゴミにしか見えない何か映した写真だった。
 あちこちが穴が開いて亀裂も多数。所々にある乾いた土は補修跡だろうか。
「強盗になった地上げ屋さんを倒して欲しいのです」
 場所は鉄帝首都のスラム街。
 その中でも外れにあり、畑も多くある土地だ。
「元は発掘現場らしいのです」
 珍しい物はいくつか出て来たが役に立つ物を見つけられず、本格的な発掘作業が行われる前に放置された場所だ。
 その後スラムの住民が住み込み現在に至る。
 利用価値が極めて低い場所のはずだ。
 が、地上げ屋が現れたり、地上げ屋が暴力で土地を奪おうとするのは不自然でもある。
「どんな理由があるのか知らないですがやり過ぎなのです」
 万一真っ当な理由があったとしても、一線を越えた凶悪犯に対する対処は決まっている。
「倒すの、お願いするです」
 必要なら殺してしまって構わない。
 そういう、討伐依頼だ。

GMコメント

 眼窩が凹み、肉が衰え、船長服がぶかぶかになった光剣使いとその部下達が相手です。
 刀身は濁った黄色です。
 真正面から戦えば大火力相手の苦しい戦いになるかもしれませんが、相手は注意力が低下しているので不意打ちは比較的容易です。


●目標
 光剣使いから戦闘力を奪うこと。
 生死不問。


●戦場
 1文字縦横10メートル。現地到着時点の状況。上が北。晴れ。微風
 abcdefghijk
1□□□□□□□□□□初
2□□■■■■■□□□初
3□□■□□銃■□□□初
4□□■□光□■□□□初
5□□■銃■■■□□□初
6□□■□□□□□□□初
7□□□□□□□□□□初

□:平地。住民が勝手に畑として利用しています
初:平地。イレギュラーズの初期位置。各人が好きな位置を選択可能。
■:宇宙船っぽい物の残骸を利用した長屋。高さ3メートル。通り抜け困難。
光:ガラクタの山。光剣使いが、ガラクタを漁って2本目の光剣を探しています。
銃:平地。銃使いが疲れ果てて座り込んでいます。


●敵
『光剣使い』×1
 元は海賊船船長でした。
 剣の腕は優れていますが、経営能力も交渉能力も下の下。
 海での居場所が無くなり鉄帝のスラムに流れつきました。
 光剣の使用にこだわります。
 攻撃の種類は【神】【近】【貫】。
 強烈な【反動】があり、ファンブルも5割近く、しかし攻撃力は非常に高いです。

『銃使い』×12
 元船長に従い非道を働いてきた男達です。
 銃の扱いに長けています。
 攻撃の種類は【物】【遠】【単】。
 存在しない2本目の光剣捜索を長時間強いられたため、疲労で動きが鈍り注意力も散漫になっています。

 最初は射撃戦、次に光剣使いが突進して銃使いが援護という戦い方を好みます。


●他
『光剣』×1
 長年すりこぎとして使われていた物。
 厳重な安全装置が邪魔して起動出来ず、何より日用品にしか見えない見た目のため、掘り出された後も武器として認識されていなかった一品です。
 今回、元船長が乱暴に扱ったのが最後の一押しになり、古くなった安全装置が壊れて武器として使えるようになりました。
 安全装置が壊れる際に動力が暴走し、持ち主の魂的なものを燃料として勝手に吸い取っています。しかも今回の戦闘中に確実に爆発します。
 爆発の20秒前には非常に大きな音を出すようになり、あからさまに爆発しそうに見えるようになるので、イレギュラーズは爆発に気付けます。
 爆発の威力は通常時攻撃力の5割増し、効果範囲は平地であれば直径40メートル。爆発時に所持していると高確率で死にます。

『長屋』×1
 元は宇宙船だったかもしれない物。
 穴だらけで平べったくなっています。
 出入り口や窓があるのは、東側か南側だけです。
 頑丈な壁があるので隣の部屋には直接は向かえません
 『光剣』の爆発に耐えます。

『住民』×いっぱい
 避難済みです。
 敵がいなくなれば、必要な資材を自力でなんとか調達して生活を再建します。


●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 宇宙船長屋の決闘完了
  • GM名馬車猪
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年01月01日 21時40分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

サンディ・カルタ(p3p000438)
ラド・バウC級闘士
銀城 黒羽(p3p000505)
エト・ケトラ(p3p000814)
「国の」盾を説く者
豹藤 空牙(p3p001368)
忍豹
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
咲く笑顔
美咲・マクスウェル(p3p005192)
紫緋の一撃
湖宝 卵丸(p3p006737)
蒼蘭海賊団団長
ユースティア・ノート・フィアス(p3p007794)
夢為天鳴

リプレイ

●いきなり攻城戦
 『魔眼の前に敵はなし』美咲・マクスウェル(p3p005192)は地面から数センチ浮いたまま、すだれすらない入り口から入って反対側の壁の前で止まる。
「何か言ったか?」
 犯罪者の声だ。
 透視能力を持つ美咲の瞳に、壁の向こうでへたり込む男達が映る。
 『楽しく殴り合い』ヒィロ=エヒト(p3p002503)の狐耳がぴんと立つ。
 ヒィロが見ているのはだらけた銃使いではなく痩せこけた剣使いで、ぶかぶかの船長服がゴミの中で動く度に目つきが厳しくなる。
 他人まで巻き込んで、破滅に向かう者特有の気配があった。
「さて、昔はできたんだけど……」
 美咲はこの世界に来る前の感覚を意識して思い出す。
 綺麗な黒い瞳が、美しくはあるが超常的に過ぎる原色に変わる。
「ここだと、どうかな……?」
 かつては外宇宙の環境に耐えた外壁の向こうへ、呪詛を送り込もうとして思わず瞬きをした。
「残念」
 神秘が形になる前に散った。
 外壁が邪魔するのか世界と術があわないのか分からないが、これ以上実験する時間はない。
「いィ女の気配がする」
「おめェそこまで頭が残念に」
 無音の空中移動と透視能力の組み合わせは特に有効で、こちらの存在は敵に気付かれてはいない。
 狐耳の向きが変わる。
 ヒィロは天井の一点を指差し別働隊の動きを伝え、美咲がひとつ頷いて開戦を決断した。
 魔石を軽く撫でて力を引き出す。
 茨を思わせる結界が美咲の周囲にじわりと広がる。
 ヒィロが大きく息を吸い、気合いと闘志を込めて壁の向こうの賊へと叩きつけた。
「来なよ弱虫ども!」
 かつての宇宙船が揺れる。
 細かなゴミがあちこちから落ち、雑な補修で塞がれていた穴が再度開く。
 賊は、振り返ることが出来たのはマシな方で、半数近くが座り込んだままイレギュラーズの襲撃を理解出来ないでいる。
「銃なんか捨ててかかってこい!」
「敵襲だッ!」
 銃使いだけでも10人を越えているのに、向き直って反撃できたのは3人だけだ。
 咄嗟で狙いの甘い射撃では壁の穴に銃弾を通す事も出来ず、残骸と化してもまだ強固な外壁に当てて跳弾を発生させる。
「オッケー、喰らえ! 痛い目みて、無駄な抵抗はやめるんだね!」
 呪いたっぷりの結界が壁の近くの銃使いを襲い、純粋な殺意の込められた視線が3人のうちの主導的な1人を刺し貫く。
「船長、敵でッ」
 言い終わる前に白目を剥く。
 受け身をとれるずに真正面から倒れれたのはが本当に痛そうだった。
「どうしたどうしたっ、ボクはまだ拳も使ってないよ。強い奴からかかってきなよ!」
 2つ、4つと増えてくる銃撃を超絶の防御技術で叩き落としながら、ヒィロは不敵かつ無邪気に挑発する。
 まずヒィロを仕留めようと銃口を壁の穴に差し込んだ銃使いが、凶悪な痛みに襲われ悲鳴をあげた。
「なんだ、この、茨はッ」
 苦しみ悶える犠牲者を見下ろす瞳が2つ。
 形は獣でも感じられる理性と精神は熟練の戦士のそれであり、美しい毛並みに包まれた名刀を思わせる筋肉が、四肢を滑らかに動かし宇宙船長屋の屋根を突破する。
「こやつら程度では、耐えられる術ではござらぬな」
 建物内の2人の連携は完璧に近く、時間を無制限に使えるならこのまま勝てそうだ。
 『忍豹』豹藤 空牙(p3p001368)は、4つ足でも気を抜けば足が切れそうな屋根で攻撃姿勢をとる。
「今宵は月が飢えているでござる」
 銃使い達は怒鳴り合うことで意思疎通を行い、高さ自体はせいぜい3メートルしかない長屋によじ登る。
 形が非常に複雑なので、銃を構えながらよじ登るのは不可能だ。
 無防備な姿勢で屋根によじ登ろうとして、四肢に力を溜めた空牙と目があった。
「覚悟するでござる」
 圧倒的有利な状況でも油断は皆無。
 屋根から身を乗り出す動作で1人の腕を凹ませ地上の2人の上半身に痛打を浴びせ、しかし地上には降りずに記憶していた進路で後退して屋根に戻る。
 発砲音が連続する。
 空牙を狙った銃弾が、微かな凹みを作ることも出来ずに屋根の端にぶつかってどこかへ飛んでいく。
「上は危ねェ! 建物を通って背後から」
 黒く逞しい前脚が真上から頭を打つ。
 逞しい銃使いが片手で頭を抑えてもう一方の手で銃を上に向けるがそこには何もいない。
「敵が多いうちは安全策でござる」
「てめェ、待ちやがれ!」
 空牙は複雑怪奇な形の屋根を利用し、不用意に近付いた銃使いをちくちくと削って数を減らすのだった。

●表からこんにちは
「静かなのはいいが速度がな」
 『ド根性ヒューマン』銀城 黒羽(p3p000505)は、並の鎧より遙かに強靱な闘気をまとって小声でぼやいた。
「ったく、面倒臭ぇことしやがって」
 独特な形の長屋周辺には、発掘の際に出たゴミらしき物が散らばっている。
 そして、見るだけで頑丈さが分かる長屋外壁に、真新しく巨大な切れ目が4つ5つあった。
「なんかこう、なんかな……」
 既にここは戦場なのに、『アニキ!』サンディ・カルタ(p3p000438)は呆れと困惑が混じった表情を浮かべている。
 戦場の中心は宇宙船にしか見えない。
 サンディなら、堅実なやり方でも諸々の元手になる程度の金には換えられるだろう。
「要領の悪い連中か? それで生き延びてるんだから武力だけはあるのかもな」
 己の気配をイレギュラーズではなくスラムにあわせる。
 その上でぼろぼろの布を1枚羽織ると、スラムに溶け込みすぎて黒羽でも目を離すと見失いそうだ。
「敵の主力は任せるぜ」
 黒羽はそう呟き闘気の操作に集中する。
 膨大かつ高密度な闘気も、複数の鎖の形にして数十メートル伸ばすとさすがに細く薄くなる。
「何だァこれ巻きついて……」
「素手で勝てる相手かよ! 走る暇があるなら銃を使えッ」
 生き方も在り方も違い過ぎる黒羽の闘気に絡みつかれ、見た目よりはずっと強いはずの元海賊が滅茶苦茶に走り出したり動きが極端に鈍くなる。
 それでも鎖を躱す者もいる。ここが戦場だとようやく認識し、甘さと油断の抜けた顔で静かに引き金を引いた。
 闘気の鎧が揺れた。
 特に頭部付近は闘気に直撃した際の衝撃で激しく波打ち黒羽の頬が外気に触れる。
 黒羽は怯えるどころか感心したように笑い、闘気の鎖第二陣を宇宙船長屋目がけて解き放つ。
「あの黒い男に集中攻撃だッ! 壁向こうの奴と違って少しは効くッ!」
 鎖に足を取られながら、銃口を揃えて容赦のない銃撃を浴びせる。
 5つの銃声が重なり合う。
 敵の注意を惹きつけている間も回避行動を行っているのに、数を活かした攻撃により5のうち4まで命中して闘気を削る。
 そこまでしても半分も削れていない。
 だがこれほどのダメージを短時間で回復するのは不可能だ。
 極一部の例外を除いて。
「愚かね、度し難い程に愚かだわ」
 可愛らしい小柄な少女が、吐き捨てるように呟いた。
 赤い瞳が何故が闇のように見え、視力には優れる銃使いの背に汗が浮かぶ。
「あなた達、元海賊ね? 今は強盗かしら」
 暗い炎を思わせる力が『「国の」盾を説く者』エト・ケトラ(p3p000814)を中心に広がり黒羽の闘気に触れる。
 エトのと力で闘気の乱れが整えられ、銃使いの決死の攻撃で削ったはずの防壁が急激に回復した。
「船長ッ、遊んでないで前に出てくれッ」
 再装填の手つきは高度な技術を感じさせ、エトへ狙いを変えた銃口は全く揺れない。
 くすくすと、儚い努力を可愛がる上位者の笑いが響いた。
 並程度の軍人なら即死確実の銃撃が、回復した闘気によって防がれる。
「狐の威を借る性根もそうだけれど、ただ力に溺れる考えの無さもまた目障り」
 射撃技術の素晴らしさと腐った性根を見比べ、エトは冷たい笑みを浮かべる。
 少女にしか見えない外見には似合っていないはずなのに、あまりに違和感がなさ過ぎた。
「魔性の類いかッ」
「防ぐということ鉛玉をが効くってことだ。撃ち続ッ」
 元副長の言葉が不自然に途切れた。
 圧倒的な格を感じさせる槍が振り抜かれ、1人の喉と2人の足を抉った穂先から血が飛び散る。
「このガキ……イレギュラーズかッ!」
 至近距離の相手には難しいはずの銃撃を、生き残りが慣れた様子で実行する。
「甘く見られたもんだな?」
 サンディは、へっ、と楽しげに笑って固い地面を滑るように横へ。
 牽制の銃撃も止めの一撃も全て外れて地面に小さな穴を開ける。
 短時間とはいえ警戒せず観察したサンディには、次にどうするかも全ても分かる程度の連携だ。
「余所見も好きなの?」
 はるか遠くから雷が飛来する。
 近頃は脅し中心で重厚な防具を避けるようになった彼等では防ぐことも出来ず、皮膚だけでなく肉まで焼かれて悲鳴をあげる。
「笑わせてもらったけどもう十分」
 敵の気配を数えて、癒やし優先から攻撃優先へ切り替える。
「わたくし、甘ったるいのは見た目と善良な人にだけなの。愚図な悪人は精々良い夢を見て死んで頂戴?」
「船長ッ」
 闘気を突破出来ないまま、地面と水平に飛ぶ雷に撃たれ倒れていった。

●過去からの刃
 まるで足下が無くなったような、唐突に現実感が消える感覚だった。
 『夢幻の迷い子』ユースティア・ノート・フィアス(p3p007794)が腰の左右に下げた剣を意識する。
 小さな煌めきが彼女の目元を撫でて、意識が消えた過去に持って行かれるのを防いだ。
「大丈夫、いける」
 『蒼蘭海賊団団長』湖宝 卵丸(p3p006737)が耳をすませながら得物を腕にとりつけた後、微かに眉を寄せて小首を傾げた。
「……ちょっと待って」
 エコーロケーションは壁の向こうをくっきりはっきり認識出来る様なスキルではないが、壁向こうでこれだけ特徴的な行動をしているなら話は別だ。
「あれれ、畑の中からなんか棒状の物が」
 卵丸自身棒読みだと思う。
 先程から嫌な予感が凄くするのでその影響もあるのかもしれない。
「これは凄いお宝かもしれないんだぞっ」
 自称海賊な実質湖賊なので、この言葉には迫力があった。
 ヴン、と聞き慣れぬ音がする。
 ユースティアが両手で2剣を鞘から抜いて、無いはずの記憶がもたらす疼きに耐える。
「どこだァ?」
 異様な強度を持つはずの長屋外壁に赤い線が生じる。
 外宇宙に耐える素材を焼き切るエネルギーが、実体の無い刃を構成している。
「俺の剣、どこだァ!」
 赤い線が増え3角形が完成。
 何かが欠けた怒号をBGMに、三角が内側から蹴り倒され地面にぶつかり乾いた砂煙が生じる。
「蒼蘭海賊団団長、湖宝卵丸参上、勝負だ宇宙海賊!!」
 早口を問答無用で叩きつけ、薄汚い黄色の刃が再度振るわれるより早く卵丸が踏み込んだ。
 熱い魂が大きなドリルを高速で回転させ、煌めく浪漫が虹色の光を供給しドリルの威力を備えた斬撃を水平に飛ばす。
 ゴミ捨て場で拾われてきた家具では止めることなど不可能で、船長服を来た痩せこけた男の腹へ情け容赦なく突き刺さる。
「ドコダァ!」
 肉を斬った感触があった。
 鉄が焼ける臭いに混じって血臭が感じられる。
 だが元船長は痛みを感じていないかのように前へ跳び、薄汚い黄色の光刃を振り下ろす。
「こんな、所でっ」
 己の言葉で己の声のはずなのに別人のようだ。
 柄の握り方が、四肢の動かし方が、それぞれほんの少しずつ変わって速度が数割上がる。
 ユースティアがそこまで見事な回避をしても不十分だった。
 超高速の光刃が彼女の左肩を掠め、痛みを脳が拒絶するほどの傷を負わせる。
「かすり傷でっ!?」
 卵丸が顔を引き攣らせる。
 ユースティアは十分に強く、先程の動きは特に素晴らしかった。
 なのに致命傷一歩手前だ。敵攻撃の威力は間違いなくとんでもなく高い。
「海上海賊の戦い方を見せてやる」
 敢えて回転衝角は使わず刃仕込みのマントで腕を狙う。
 光刃発生器に触れる程度に一瞬マントが巻き付き、そのタイミングで卵丸が発生器に手を伸ばす、ふりをした。
「これは俺のものだッ」
 痩せこけた男が激高する。
 殺すためではなく光刃を守るために光刃を振り回す。
 速度も威力も最上級だが的外れな行動であり当たるものも当たらない。
「過去の栄華に縋り、貪欲に求める者。其の在り方を、否定はしません」
 ユースティアの動きは元に戻っている。
「忘却されたものを追い求める私も、似た様なもの」
 痛みに耐え、敵の動きを読み、隙をついて踏み込み一突きして即跳び下がる。
「なればこそ、他者を踏み躙る行為は看過出来ません」
 ユースティアはまだ限界ではない。
 しかし、銃使い達は既に限界だ。
 誘き寄せられ、分断され、最大の戦力である元船長と引き離されているので当然だ。
「あなたは、ここで終わりです」
 外壁を迂回したイレギュラーズが、前と後ろから元船長へ殺到した。

●大爆発
 光刃を手に逃走を始めた男の足を、地面すれすれを飛ぶように駆ける空牙が狙う。
 咄嗟に足を引いて躱すが長屋の外へ逃げることも出来なくなる。
「槍が疼いてやがる。混沌の外で因縁があったのかもなっ」
 ゲイボルグ・レプリカを蛇の如くうねらせ光剣の腕を狙う。
 光刃の迎撃は迅速だが、前後左右をイレギュラーズに囲まれた状態では防御に集中仕切れず穂先に追いつけない。
「だ、がァ!」
 腹から抜かれた槍を追いかけ超高速の突きを放つ。
 これは相打ちかと半ば覚悟を決めたサンディを、黒羽が追い抜き闘気でガードする。
 光刃を防ぐために闘気が凄まじい勢いで減っていく。
 指一本分踏み込みが深ければ、ただではすまなかったはずだ。
「元の世では名の知られた剣なのでしょうけど」
 エトが治癒術を使いつつ目を細める。
 振るわれる度にヴンという音が大きくなり、今では音だけで武器になるほど五月蠅い。
 氷雪の力を纏う刃が背後から狙う。
 元船長は前転じみて飛び込みぎりぎりで回避、毒々しい黄色の光刃を大きく伸ばしてユースティアと他数名を切断しようとする。
「ボクが防ぐ!」
 ヒィロが荒れ果てた部屋を踏破する。
 一房長い毛が元の位置に戻るより早く、美しい騎士甲冑で包まれた腕を舞わして破滅の気配に触れ、逸らす。
 桁外れの防御技術を持つヒィロなのに痛みは凄まじい。
 だがリスクを冒した甲斐はあり、大きく逸れた刃が無意味に天井を裂く。
「今だよ、美咲さん!」
 虹の魔眼が一つの色を選ぶ。
 光刃にあらゆるものを捧げていた魂から最後の余力が奪い取られ、光の刃が薄くなりそして不安定に明滅する。
 元船長の上体が揺れる。黄色い光刃が美咲に向かい、ヒィロが防いで傷みに表情を歪めた。
「欲望に駆られて、命まで落とすな」
 卵丸が再度マントを使って腕と光刃発生器を狙う。
 二度目であり元船長が少し高さを下げることで回避するが、卵丸の動きは先程より明らかに速い。下がった発生器目がけて全力のドリルを繰り出した。
「轟天GO!」
 元船長指がへし折れ、曲がってはならない方向へ曲がる。
 すりこぎにしか見えない発生器が手から落ちて薄い敷物に当たり、ぺきりと破滅的な音をたてた。
「これは……まずいでござる!!」
 空牙の本能が最大級の警告を発する。
 外で倒れている賊もの異常に気付き、しかし何が異常なのか気付けず騒いでいる。
「俺の、武器ィ」
 元船長が手を伸ばそうとして受け身もとれずに床に落ちる。
 それでも発生器に伸ばす腕はゾンビのようにも見えた。
「俺の意地にかけて、てめぇは此処で死なせねぇ」
 言葉とは逆に慎重な手つきで、黒羽が元船長を抱え上げた。
 いわゆる山賊担ぎだが、捕まった時点で重罪が確定している男に対するやり方としては極めて穏便だ。
「あなた達の頭は逃げたわよ。死ぬつもりなら止めないけど」
 エトが言い終わる前に賊達が逃げ出す。
 既に事切れた仲間も運んでいるのに気付き、エトの目がほんの少しだけ穏やかになった。
 イレギュラーズも長屋から離れる。
 ヴンヴンと五月蠅い音はますまる大きくなり。
 発信器が放置された部屋の窓や隙間から、濁りきった黄色の光がどぎつく放たれた。
「伏せろ!」
「耳を閉じて口を開いて。来るよっ」
 視界が黄色一色に染まる。
 音は既に揺れでしかなく、いきなり地面が揺れて体が1センチから数センチ浮いて再度地面に戻る。
 そしてようやく、光と揺れが収まった。
「死ぬんなら罪を償って、そして死ね」
 黒羽が起き上がり、庇っていた元船長を見下ろす。
 微かな呼吸はあるが目に光も動きも無い。
 生きるための活力が、爆散した剣に根こそぎ吸い取られたのかもしれない。
「え」
 ユースティアが驚き口に手を当てた。
 生き残った賊が、宇宙船長屋に来るまでは普通の業者であると語ったのだ。
 長屋で一線を越えたとはいえ、それ以前でも間違いなく乱暴だった。
 乱暴でも、鉄帝では通じていたのだ。
「力の使い方って、難しいよね……」
 ヒィロががおーと威嚇する。
 こっそり逃げようとしていた賊が逃走を諦めへたり込む。
「理解できないものを、そのまま使おうとかするから……自身の力の定義もできないから、自滅すんのよ」
 美咲がちらりと遠くを見る。
 慌てた様子の鉄帝軍人と、廃品じみた補修資材を運ぶ長屋住人がこちらへ向かって走って来る。
「だよね。……強者が上に立って、力なき者の盾になって国を未来に導いていく。そういうのが鉄帝での「力」なんじゃないかな!」
 ヒィロは頑張って前向きに考える。
 そんな彼女を、美咲が優しげな目で見つめていた。

成否

成功

MVP

美咲・マクスウェル(p3p005192)
紫緋の一撃

状態異常

ユースティア・ノート・フィアス(p3p007794) [重傷]
夢為天鳴

あとがき

圧倒的でした。

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