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シナリオ詳細

<青海のバッカニア>低予算だけど映画を撮りたい!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●またの名を便乗商法と呼ぶ
「諸君は映画、というものをご存じかな?」
 海洋のとある詰所にて。シルクハットに燕尾服、丸く出っ張った腹と「如何にも」な出で立ちの初老の紳士が、片眼鏡をクイッと持ち上げながらあなた達に語る。
 その後ろでは何やらドカーン! やらバリーン! やら派手な音に声。ユリーカがその現物を見てはしゃいでいる所だ。
 あなたがそういった世界からの旅人、または練達で過ごした事があるならばよくご存じかも知れないが、映画(エイガ)は主に異世界の技術と文化であり、音声や映像を何らかの媒体に記録し、スクリーンに何度でも映せる優れものである。媒体から記録内容を複製すれば、同じものを大量に販売する事も出来る。
「つまり、何度も。何度でも好きなお芝居を見返せる、という事ですね」
「ざっくり言えば、そういう事になるね」
 練達ではそれなりに出回っているが、練達の外ではまだそこまで出回っている訳ではなく、特に深緑に在ったこの新人情報屋――プルサティラには、きわめて新鮮なものに思え、ユリーカと共にその画面を不思議そうに見つめていた。

 この老紳士、ロジャー・キネマトロープは異世界でその映画を撮っていたが、新作の撮影中、気が付いたらこの混沌に居たという。しばらくの間は先立つモノもなく作品を撮れない時期が続いていたが、海洋大号令の報を聴き、なけなしの手持ちをはたいて海洋へと渡った。
「何故かというとね。これは、私にとっても女王にとっても、非常に利のあるビジネスなんだ」
 前代未聞の熱に沸く海洋で海の映画を撮れば、ロジャーにとっては支援を受けられる可能性があり、海洋にとっては他国への宣伝と自国民の鼓舞となる可能性がある。上手くいけば、双方に利益が出る話だ。
「そんなこんなで、女王からの援助を取り付けるところまでは来れたのだが……」
 それでも、大事業に着手している海洋が割ける費用は決して多くない。予算的にも時間的にもギリギリで、最低限の形になった作品が一本撮れるかどうかという所だ。
 それでもロジャーは諦めない。
「報酬は売り上げから後払いになるが、どうか! ローレット諸君のお力を借りられないだろうか!」

●悪く言えば粗製濫造と言う
 ロジャーの用意した筋書きや撮影に使う道具は「海にモンスターが現れて大暴れする」モンスターパニック映画と呼ばれるもので、彼が得意としているジャンルだ。彼の過去作はかなりの数に上るが、どれもこういった系統であり、筋書きはきわめてシンプルな、いわゆる単純娯楽的な作品たちだった。
「しっとりと、情緒に訴えかけるような恋愛の話は無いか」と期待したプルサティラだが、「そんなものは無い」と返され、少し残念そうな顔をした。

 筋書きの方はともかくとして、用意された小道具を見てあなた達は絶句するか、「やっぱりね」と思うか、反応が大きく分かれるかも知れない。
 継ぎ接ぎが雑で質感の無い海洋生物の着ぐるみに、宣伝用のキービジュアルに使用する絵は中途半端に下手な手描き、怪物退治に使う銃は見るからにオモチャで安っぽく、全体的にクオリティが低い。
 このまま作れば色々な意味で「目を奪う」作品になるのは明らかだが、どうやらこの世界、酷い作品にも需要があるらしい。何故、と思うかも知れないが、混沌は広く、『異世界』も無数にある。そういう世界もあるのだ。

 あなた達の手腕をもってこの逆境をひっくり返し、唸る名作を撮るか。このまま酷い方向に突き進むか。
 どちらにせよ、映画というものは形にし、完成させてみない事には評価が出来ず、完成させることに意義があるのだ。
「そういう世界なのである」と、ロジャーは力強く言い切った。

GMコメント

ローレットのみんな! オラに映画を見せてくれ!!

●目標
海洋を舞台にしたモンスターパニック映画を完成させよう!

美しいビーチに魔物が現れて人を襲い、それを何とか打ち倒す……というのが
ロジャーが仮組みしたストーリーでキービジュアルも既にありますが、
用意されたアイテムや設定、ストーリーの整合性などはすべてガン無視でよく
「とにかく形になればOK」で、高さで勝負するも低さで勝負するも自由との事です。
(キービジュアルのモンスターが出てこない、とかでもOKだとかです)

●必要そうなものリスト
過去の類似作品から情報屋の有志が(半ば死んだ目で)集めてきましたが、
いずれも必須ではないそうです。
新米情報屋「参考に……どうぞ……なのです」
幻想種の新人情報屋「まさか……まさか、あんな方法で倒せるなんて……」

 〇モンスターを倒す主人公×1人?
  色々な知恵と工夫をもってモンスターを倒す役柄です。色々なタイプが居るそうです。

 〇水着美女×何人でも
  なぜ海を舞台にするかというと、海洋事業の件もありますが
  「堂々と水着のおねーちゃんを撮れる」という理由も少なくないからです。
  生存率は基本的に低いですが、過去、モンスターを返り討ちにしたケースもあります。

 〇パリピの皆さん×何人でも
  ほぼ餌枠ですが、後に改心して主人公と意気投合する激アツ展開も偶にあります。
  アッサリ喰われるか、それとも……どう喰われるかが、作品のうまみのひとつです。

 〇モンスターの中の人orモンスターご本人様×何人でも
  ロジャーが用意した着ぐるみに入って貰いますが、自前で着ぐるみを作っても、
  むしろ自らモンスターになって人を襲っても、どちらでも良いそうです。
  モンスターの造形や暴れっぷり、殺しっぷり、倒し方が大きな見どころになりますので、
  自由な発想で暴れてみてください。

 〇その他の登場人物×何人でも
  その地の伝承に詳しい老人や、モンスターを生み出したマッドサイエンティストなどが
  よく出てきます。盛り上がるキャラを思いついたら、どんどん投入してOKだそうです。

 〇小道具づくりや持ち込み、舞台美術、脚本やナレーションなど×何人でも
  美術が得意な人ちょっと来て! と言いたいところですが、
  極端に酷い絵面で勝負する世界もあるそうです。

 〇それ以外×何人でも
  映画の盛り上げに必要そうな技術や小道具、アイデアをお持ちの方、全力で募集中です!

●NPC
どうしても足りない箇所にはロジャー本人や彼の身内(※全員素人)が入りますので、
皆さんは自由にお好きな役どころを選んでいただいて構いません。
基本的には撮影や裏方を担当していますが、ご指示があればそれに従って動きます。

他、『元・楽園の』プルサティラ(p3n000120)も呼べば手伝ってくれるそうです。
NPCの描写については、皆様のプレイングで触れられた分相応の登場になります。

●ストーリーについて
特別脚本やナレーションなどのご用意がなければ、既定路線通りのストーリーで
進むものとして判定・執筆を行います。
整合性などは無いなら無いで、ロジャーが編集で何とかしてくれるそうなので
(何とかなるとは言ってませんが)あまりガチガチに詰めていただかなくて大丈夫です。
公序良俗に反し過ぎる内容はマスタリングされますが、基本的には色々と自由です。
<この物語はフィクションです>

●情報精度:A
想定外の、あなた達の描いた状況以外は絶対に起こりません。芸術は爆発です。

●重要な備考
<青海のバッカニア>ではイレギュラーズ個人毎に特別な『海洋王国事業貢献値』をカウントします。
 この貢献値は参加関連シナリオの結果、キャラクターの活躍等により変動し、高い数字を持つキャラクターは外洋進出時に役割を受ける場合がある、優先シナリオが設定される可能性がある等、特別な結果を受ける可能性があります。『海洋王国事業貢献値』の状況は特設ページで公開されます。

この依頼においては、完成した映画のクオリティや話題性などがポイントになります。

・・・・・・・・・・・

ちょっと無茶ぶりになりますが、皆様のご参加を心よりお待ちしております!

  • <青海のバッカニア>低予算だけど映画を撮りたい!完了
  • GM名白夜ゆう
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2019年12月23日 22時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)
泳げベーク君
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
空歌う翼
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
リインカーネーション
マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)
黒鎖の傭兵
スノウ・ドロップ(p3p006277)
嗤うしかばね
ハッピー・クラッカー(p3p006706)
爆音クイックシルバー
ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)
ガトリングだぜ!
恋屍・愛無(p3p007296)
砂の幻

リプレイ

●今日も今日とて映画だよ
 陽光に煌めくラリマーの海に、白く輝く砂浜。混沌の海は多かれど、海洋王国の海はとりわけ美しい。
 多くの人々で賑わうビーチでは水着の男女がバレーを楽しんでおり、最下位の女子が何やら罰ゲームをさせられそうになっている所、リーダー格の男の背後に何かが迫る。
「ジョン……後ろ」
「あ?」
 ブチリ。
「うわああああ!?」
 男の肩越しに黒い触腕のようなものが伸びてきて、バレーのネットを突き破った。男は咄嗟にそれを避け、情けない声を上げながら、仲間を置いて我先にと逃げ出した。
 明らかに人の業ではない。あれはモンスターだ。男はどうにか岩場まで逃げ切ったが、置いてきた仲間は無事だろうか。
「……まあいいか。ファミリーも女も、俺にかかればまたすぐ見つか――」
 ブスリ。
「あ」
 杭状の黒いナニカが男の胸を貫き、ぐりぐりとかき回す。あまりの痛みに男は声を上げながらのたうち回り、やがて絶命。
 岩場の影では、正体不明の影が蠢いていた。

『時は20XX年――』

 壮大なストラディバリウスの調べと重厚なナレーションを伴って、この冒険譚のタイトルが画面下部手前から現れ、上部奥側に向かって流れる。

「……はろー海洋。私だよ。えーと、本日はお日柄もよく……」
「ふぅえぇーーい! 私たちの映画を視に来てくださって、ありがとうございまぁーーす!」
 今日は、海洋の援助を受けて制作された映画の先行上映会だ。出演者の『ウケる』スノウ・ドロップ(p3p006277)と、『爆音クイックシルバー』ハッピー・クラッカー(p3p006706)による舞台挨拶が行われている。
 海洋ではまだ比較的珍しいモノの上、タイトルが今話題の『海洋大号令』とくれば、海洋民の期待は推して知るべしという所で、国外からも多くの人々が詰めかけていた。
 先ほどの殺害シーンは映画の冒頭であり、魔物を担当したのは異形に定評のある『ラブ&ピース』恋屍・愛無(p3p007296)。正体不明の魔物やその残虐な殺し方、『猫さんと宝探し』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)が奏でる詩情たっぷりの音楽に乗せたオープニングはスケール感があり、掴みは非常に良好だ。
 いよいよ、作品タイトルが画面中央に鎮座する――

『海洋怪獣大号令~怪奇生物vsゾンビvsアザラシvsサメ』

 なお、映画の内容は大号令とあまり関係は無い。


『事件の翌日、相変わらずなビーチの中で――』

 現場に残された手掛かり、黒くて粘性のあるナニカを頼りに独り怪物を追うのは『海のヒーロー』ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)扮する主人公だ。愛らしいアザラシがモンスターと戦う爽快アクションとの触れ込みで、このビジュアルが特に女性客の間で話題となっていた。
 パトロールを行うワモンの後ろには、『砂竜すら魅了するモノ』ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)が構える屋台がある。ずらり並ぶ屋台は、全てたい焼き屋だ。何故、と首を傾げた観客は少なくないが、一部の観客は「そういうもの」と気にしなかった。冒頭のナレーションも、経験者の彼が行っている。
 古めかしい本を手に屋台に並ぶ銀髪の少女と灰色の少年を意味深に映した後、視点は海側へ。
「ふぅいぇあ! 海だーー!」
「どうしたら……どうしましょう」
 真っ赤なビキニ(アーマー)の金髪美少女と素人丸出しの幻想種女性、ハッピーとプルサティラが映し出される。深緑育ちのプルサティラには海や水着の経験が無かったが、同席した愛無の「水着女子の人手が必要だ」という言葉に勇気を出した経緯がある。
 ハッピーの鮮やかなビキニ姿は男性客を魅了したが、これはアーマーであり、今から始まる激しい戦いへの備えなので何の問題も無い。しかし念の為、カップルでお越しの方は注意されたし。

 明るく賑わうビーチ、水着や水着などを重点的に映した後、突如空が黒雲に覆われる。 続けて響く轟音、雷鳴。嵐が来ては危ないと、ワモンが海水浴民への声かけに向かったところで、場面が切り替わる。
 轟く雷鳴や強まる風の中で一人、銀髪の少女――『サメ召喚士』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)が海を目の前にし、右手に古書を、左手にたい焼きを抱えながら何らかの呪文を唱え続ける。
 再びの雷光。たい焼きをもぐもぐしながら逆光越しに見えるその表情は、禍々しくも神々しい。美少女の悪い顔には一定の需要がある。アクセルが良い感じの角度から当てた閃光が、非常に良い仕事をしていた。
 更に呪文を続ければ、海が大きく轟き竜巻が生じる。そして、

「サメだーー!!」

 アクセルが奏でる爆音と共に、人を襲う種のサメが竜巻に乗って姿を現す。
 海物語の主役と言えばサメ。海に居なくともサメは主役。人気者の派手な登場に、海洋民が大いに沸き立つ。彼らは悩まされる側なのではと思うが、安全が保障された状態で見るモンスターは別腹らしい。彼らに限った話でもないが、人間とは不思議である。
 逃げ惑う人々と無惨に舞い散るたい焼き。波と竜巻に乗ったサメは立体的かつ素早い動きで、次々と人間やたい焼きを喰らっていく。
「やったわ、成功だわ! この伝承は正しかった!」
 現れたサメを見上げ、それが己の意のままに動く事に歓声を上げるスティア。そこに再び走る雷光。それと同時――ふかふかのアザラシと入れ替わりに、謎の覆面アザラシが現れた。
「何者!?」
「オイラは正義のヒーロー! とっかり仮面、参上だぜ!」
 真打ち現る。名乗りを上げた直後、背後で派手な爆発が生じた。どういう理由の爆発かは不明だが、盛り上がるので良しとされる。
「海の平和は、オイラが守る!」
 小さな身体の背には、大きなガトリング。発射準備は完了だ。海岸警備に置いていたビルドベースからも、ワモンを援護するように助っ人が現れた。

『説明しよう! これは≪錬金樹脂性感受稼働式式神素体≫を≪感覚接続式非接触操作台座≫で動かす武装システムである!』

 何だか凄そうなテクノロジーの解説が、男子のハートに火を点ける。
 ガトリングと援軍の猛攻がサメを追い込み、そのまま畳みかけんと攻勢を強めたところ。上から襲い掛かった巨大な何かが、鳴り物入りの援軍をあっさりと沈めてしまう。
 その正体はイカかタコか、はたまたエビか。しかし頭部はブリという『かくて我、此処に在り』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)が演じるキメラモンスターだ。
 突如現れたソレはタコの赤い腕で屋台を派手に破壊しつつ、イカの白い腕でサメを拘束する。思わぬ第三者の出現にサメ召喚士は戸惑うが、立て続けの派手なモンスター登場に、観客のテンションは爆上がりだ。
 今更ではあるが、映画は静かに見るのが基本的なルールである。しかし、この上映に限っては例外で、声を出して良い事になっている。
「確か、昨日出たヤツって触手がどうこう、だったかな……」
 ならば主犯はこちらの方、マカライトキメラだろうか。
 そんな事を考えている間に、サメとキメラが打ち合いを始める。サメの体当たりにマカライトが派手に仰け反るが、返し様にエビの尾で強烈なカウンターを見舞い、痛み分けに持ち込む。
 彼らの動きは非常に激しく、このままでは確実に一般人が巻き添えを喰う。状況がいまいち良く分からないが、避難するなら今のうちだ。
「ねーちゃん! 逃げるぞ!」
「まじ!? エスケィーープ!?」
 海のヒーローは人々を守るべく、近くに居たハッピーを伴って人々の避難を促しながら、一旦退く事とした。


 真昼のビーチを駆け抜けたワモンとハッピーが行き着いたのは、深夜の墓地だった。場所と同時に時間まで移動した様子に一部の観客が戸惑ったが、アクセルが奏でる雰囲気たっぷり、恐怖を煽るBGMのおかげである程度流されたようだ。
「お墓ですかー! ……うぇ!?」
 ハッピーの足元に何かある。地面から腕が生え、彼女の足首を掴んでいたのだ。
「ふぅいぇああああーーーー!?」
 非現実的な光景に、大音量の悲鳴が上がる。呼応するように、ずるり、ぼこり。と。地面の下から腕と、腕の持ち主が這い出てきた。
「サメとタコ的な何かに追われてるんですってね。ウケる」
 それは遅れてやって来た協力者(ヒーロー)。実にヒロイックなゾンビ、スノウの登場だ。
 ゾンビもサメに劣らず、創作物の中では何かと人気者である。一部の観客がスノウの登場に歓喜し、大多数の観客が急過ぎる展開や転換に「あれ?」と声を漏らした。
「おまえ、一緒に戦ってくれるのか!?」
 スノウが訳知り顔で任せろと頷く。どうやら彼女は、海の魔物に詳しいようだ。仲間(パーリィー)が増える事に喜び騒ぐハッピーを傍らに、ワモンは出会ったモンスターの特徴を伝えてみる。
「ほうほう。竜巻に乗ったサメと、タコだかイカだか何だか分からないのが出たんですね」
「ああ、サメはそのままサメだろうけど、タコだかイカだかのあれは……あれ?」
 サメに続いて現れたマカライトはエビやらブリやらが混じって色彩豊か、強いて言うと赤っぽく、昨日現場に残っていた手掛かりは「黒いナニカ」だ。
 加えて、力任せ気味だったマカライトに比べると、昨日のモンスターの殺害方法からはある種の狡猾さを感じる。
「うーん、これは……」
 隠れた驚異の予感がする。体勢を整えたワモンは、新たに得た仲間と共に海岸へ急ぎ戻った。

 惨劇の現場に戻ってみれば生存者の姿は既になく、海上では先ほどのサメとキメラがいまだに激しく組み合っており、それ以外ではスティアの笑い声のみが響いている。
 そんな中で逃げ遅れたのか、灰色の少年がひとり、屋台の前に佇んでいた。
「きみ! ここは危ないよ。早く避難を……」
 ワモンが声をかけても少年は動じず、鉄板の上で焼かれっぱなしになっているたい焼きを掴んでは一口で丸呑み、一口で丸呑みしていく。
「少し遅かったな」
「! ワモンさん、こいつ多分アレです」
「アレ? って?」
「アレはアレで……」
 何かに勘づいたスノウがワモンに注意を促すが、時は少し遅く。
「――人間は多少逃がしてしまったが。たい焼きは、全て僕が頂いた」
 少年の足元から黒い何かが広がり、みるみるうちに画面を覆い尽くす。
「うわああああ!?」
 真っ黒な画面に、スノウの悲鳴だけが響く。やがて視界が開けると、ぶよぶよとした黒い異形の粘液を纏った少年の姿があり、槍状に変形した粘液がスノウの腹を貫いていた。
「……ほら、さっきの、お話の」
 しかし、スノウは腐ってもゾンビである。この程度なら掠り傷だ。そして、腐っていないゾンビは恐らくゾンビではない。
「そうか、お前が昨日の……真犯人!」
 サメとそれを呼んだ魔術師、キメラに加え、本来のターゲットまでもがワモンの前に立ちはだかる。どうあっても絶望という空気が流れるが、しかし。
「オイラ一人では、無理かも知れないけど……」
「ほら。私も居ますし」
「パーリィ!? パーリィしちゃう!?!?」
 スノウがカンフーめいた構えを取り、ハッピーは墓場で拾ったパイプ椅子を手に戦闘態勢を取る。そう、今のワモンは決して一人ではない。

「――よし! みんな、行こう!!」

「おっけぇーーい! おらぁああああー!!!!」
「海豹牙斗燐具武放猛怒(アザラシガトリングぶっぱなすモード)!」
 我先にとロケットに乗って突っ込むハッピーを後押しするように、ワモンは渾身のアザラシパワーを込めてガトリングを放つ。全弾を浴びたマカライトが大きく転倒し、ブリの頭からイワシが飛び出す。三匹ほどイワシが飛び出た後、本体のキメラはぴたりと動かなくなった。
「やったか!?」
 まずは一体――
「――……」
 何事もなかったかのように、マカライトがのそりと起き上がる。無数の触腕で壊れた屋台を次々と鷲掴みにし、そのまま大きく旋回。それは暴風さえも伴って、一帯を、サメや愛無をも巻き込み、吹き飛ばし、地面に海面にと叩き付ける。
「わー」
「スノウさん!」
 出遅れたスノウが巻き込まれ、あっさりと吹き飛ばされて何処かへと消えた。早くも仲間の一人を失いワモンは戸惑うが、ハッピーは止まらない。
「私のパリピ力はEXF100のFB0だ! こんなもんで、私のパリピ魂は止められな――」
 一度でダメならもう一度。仲間の仇、マカライトへ向けてロケットでぱーっと突撃し――
「わぎゃー!!!」
「ハッピーさん!?」
 スティアが操るサメが絶妙なタイミングで飛来し、ぱっくりとハッピーを丸呑みしていった。
 戦果に気を良くしたスティアが勢いに乗り、一気にワモンを撃たんと魔術を編むが、何やら様子がおかしい。
「……あれ?」
 サメが思い通りに動かない。慌てて古文書を見直す。呪文や手順は間違っていないはず。しかし、
「伝承が合っているとは限らない」
 黒蛇の形をとった愛無が、武器を失ったスティアに迫る。これは拙いと退散を試みるスティアの足を、何かが掴んで動きを止めた。
 スノウの腕だ。
 マカライトに倒されたかと思ったスノウが、いつの間にかスティアの足下、背後へと迫り、その自由をがっちりと奪う。
「は、放しなさい! あなたも無事じゃ済まないわよ!」
「それもまたいとおかし」
 これでは怪物共の良い的で、食べてくれと言わんばかりだ。先ほどまでスティアに従っていたサメが、掌を返して彼女に迫る。スノウはそのまま動かず、確実にスティアを道連れとする構えだ。
「スノウさん! 無茶はやめるんだ!」
 ワモンの叫びに、スノウは親指を立て、これ以上ない笑顔で返す。
「私、ゾンビですから」
 彼女は目論見通り、スティアもろとも、頭からサメに丸呑みされていった。

「ハッピーさん……スノウさん……くそっ! 絶対に許さねえっ!」
 ワモンの全身に漲る闘気。正義の怒りが燃え上がる。
「――みんな! オイラに力を貸してくれ!!」
 犠牲となった人々、ハッピー、スティアといった人々の想いが、ワモンの背のガトリングに集まる。姿はなくとも、心はワモンと共に在る。

「「「「驚天動地! パンドラフィニッシュ!」」」」

 声にならない叫びが号砲となって愛無を、マカライトを、サメを貫いた。
 愛無が爆ぜ、マカライトが爆ぜ、大きな爆発が立て続けに起こる。
 視界が晴れた後には倒れたサメと怪生物の残骸らしきもの、囂々と上がる炎と煙だけが残った。

「ちくしょう……ちくしょう!」
 海の平和を取り戻すも、失ったものはあまりに大きい。ほんの少しの間だったけど、共に戦った大切な仲間。騒がしくも楽しいあの子は、もう居ない。サメの前に崩れ落ち、大粒の涙を流すと。

 ――ぞぶり、ぞぶり。

 サメの中からか。鈍い音する。
「え、まさか……」
 あれだけの犠牲を払ってやっと仕留めたサメが、まだ生きている? 
 絶望に目の前が暗くなりかけたワモンが見た光景は、思わず目を疑うものだった。
 サメの腹に穴が開いていく。血と内臓で真っ赤な穴の中、何かがちらちらと蠢くのが見える。
 次の瞬間。

「復活ぅぅぅーーーー!!」

 盛大にサメの腹を割りながら、スノウとハッピー、スティアまでもが姿を現した。
「え!? みんな、生きて……!?」
「だって幽霊だもん!」
「そうだったの!?」
 最後に明かされる、水着パリピの驚愕の事実。
「私もソンビですし。食い破りなんてお手のものです」
 スノウが自分を喰らったサメをもぐもぐしつつ答える。
「ご、ごめんなさい、もうしません……」
 大失敗の上に命を落としかけたスティアはすっかり項垂れ、己の行いを心から悔いて頭を垂れた。
「……あれ?」
 サメから少し離れた場所で、いつの間にか、巨大なたい焼きが打ち上げられていた。マカライトの暴風に巻き込まれたのだろうか。
「巨大なたい焼きは確か、海の祝福……と、古文書に書いてあったような」
「たい焼きって事は、食べれるんですよね」
「ひゃっほー! たい焼きパーリィーだー!」
 しっとりとした曲を背景に、生き残った三人は海の恵みを囲みつつ、絆を深めたのであった。

●練達シネマ通信第45号より
『海洋新作映画先行上映会レポート』
 キュートなアザラシのヒーローが海の怪物と戦う爽快アクション映画だ。可愛いもふもふからサメ、ゾンビ、名状困難系などの定番モンスター、水着美女、やけに壮大なBGMまで「盛れば盛るほど良い」的な思想で出来た作品である。
 ここだけならよくあるB級映画だが、なんと、戦闘シーンの描写は特殊撮影の類を一切使わず、死に難い特異運命座標の性質を存分に振るい、すべてを出演者の体当たりで撮影した点が特筆に値する。その上でモンスターは造形や殺し方まで個性豊かで迫力も満点、加工なしのリアルなアクションが光る。ラストシーンでは特に体を張ったと、出演者の一人、ベークさんからのコメントも届いている。
 海洋勢の評価も良好で、遠征に積んでいきたいという声もある。練達での発売日は〇日――

 以上が練達でのレポートである。Z級は回避できたかと、マカライトが胸を撫でおろしたのだった。
 大号令の時期に行われたこのプロジェクトは充分な黒字となったが、ご覧の通り、内容は大号令とほぼ関係が無い。
 後からそこに気が付いた観客は再び首を傾げたが、「慣れている」者はそういうものだと頷いていた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

ベーク・シー・ドリーム(p3p000209) [重傷]
泳げベーク君
マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007) [重傷]
黒鎖の傭兵
恋屍・愛無(p3p007296) [重傷]
砂の幻

あとがき

山盛りモリモリ映画の撮影、お疲れ様でした!
結構な無茶ぶりとぶん投げをしてしまいましたが、個性豊かなモンスターから水着美女まで
美味しい要素を色々入れていただいて、ありがとうございました。

色々と無茶をされた方が重傷を負っております。無茶された方は、お大事になさってください。
またご縁がありましたら、よろしくお願いいたします。

そういえば、マカライトさんが仰っていた「Z級」が何なのか分からない方は、
検索してみると面白いですよ!!!!!!

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