PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<青海のバッカニア>嵐の亡者たち

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●海上に響く脅威

 ゆったりとした穏やかな海。指定された航路を進む商船、過去に海賊が出没したとは言うが、すでに討伐されて安全は確保されている。
 長閑な航海ばかりが続き、今日もまた問題ない。
 そんな日常を今日もまた過ごすのだと、揺れる船の中で船員たちはのんびりとしていた。
 だが、そんな日常はあっさりと崩れ落ちるものである。

 ―――ドゥン

 鈍く、体全体に響くような砲撃の音。着水と同時に船が大きく揺れる。
「な、なんだぁ!?」
 慌てた船員たちが怒号と叫びをあげる。
 見張りの船員が悲鳴を上げた。
「か、海賊だ! 討伐されたはずの……!!」
「馬鹿な! どうなってんだ!?」
 双眼鏡の先に移るのは、討伐されたはずの海賊旗を掲げる船。
 だが、それはかつての凶悪さを感じさせず、旗も船体もボロボロになっており、どうして航海できているのかすら不明な状態だった。
「お、おいまさか……」
 だからこそ、気づく者達がいた。
 あれは冥界から戻ってきた脅威そのものだと。原理は不明だが、海底から這い上がった脅威であると。
「ゆ、幽霊船だ……!」
 船員の恐怖に呼応するように、急に周囲の気候までが歪みだす。
 嵐が吹き荒れ、雷が降り注ぐ。先ほどまでの平穏はどこへ行ってしまったのか、そんなことを考えている暇すらない。
「つ、積み荷を全部捨てて撤退だ! 情報だけでも持ち帰って……! 生き延びるんだ!!」
 船長の判断は、被害を最小限に抑える為の最善だったといわざるを得なかった。

●再び海に鎮めよう

「そんなわけで、アンタたちに依頼が回って来たってことさ」
 ローレットを通じてイレギュラーズに回ってきた依頼は海上に出現した幽霊船退治。
 その為にイレギュラーズを送ってきた物好きな船長は笑う。余程君達に信頼があるのだろう。

 大号令。
 その影響によって、こうした単純な航路確保の依頼もローレットに回ってきた。
 これからの為に、こういった安全を確保する下準備が必要になるのだろう。
 それはともあれ、海洋王国からの依頼を受けた君達は噂の幽霊船を目にすることになる。
「おっと、これ以上は難しいな。普通には近づけないねぇ」
 船に近づくだけで、海は荒れ、雷が降り注ぐ狂気の海域へと転じていく。
 情報によれば、船に乗る船長が呪われた剣を持ち、それが雷と嵐を呼び起こしているという話だ。
 船の大砲も不思議と生きており、砲撃してくる以上まともに近づくことができない。が、イレギュラーズ達ならば話は別だ。
 各々の手段でそれらをかいくぐり、船に飛び乗っていく無茶ができる。
 人によっては不満も出るだろうが依頼が依頼である以上、仕方のないことかもしれない。
「ひとまず待機場所と小舟なりは回すけど、あんま無茶させないでくれよ?」
 にっと笑う船長を横に、君達は依頼を開始する。
 なんにせよ、近づくのが難しいとはいうが君達ならば問題なくこの海を越えていけるだろう。
 様々な技術を生かして、イレギュラーズ達は海賊船へと駆けた。

GMコメント

 とてもお久しぶりだったり、初めましてだったりするでしょうか、トビネコです。
 久しぶりにシナリオを用意させていただきました、海といえば海賊、そして幽霊船……と、繋がるかはわかりませんが単純に暴れて頂ければ十分です。
 相手は思考もめちゃくちゃな亡霊海賊団。数は多いですが皆さまなら無事でしょう。
 依頼の参加、お待ちしております。


●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況について
 海洋の大海原、その一つの航路の真っただ中に発生した幽霊船。それを撃破するのが皆さんの目的です。
 OPでは船に乗り込むまでがありますが、皆さまの実力なら特にプレイングを頂かなくても無事に乗り込めます。
 という事で、幽霊船に乗り込んだ所からスタートとなります。

●敵
 幽霊船に乗り込んでいる海賊クルーと、その当目となる船長です。
 敵の戦力比率は以下の通りです。

 ・幽霊船長
 幽霊船の船長で、呪われた剣を所持しているようです。
 この幽霊船が生まれた元凶であるのは確かで、彼とその剣を撃破することが今回の目的です。
 他のクルーと比べて相当に強く、単独で撃破は狙わない方がよいでしょう。
 ある程度肉体は残っており、知識も行動もほとんど人と同じです。

 武器は呪いの剣のみですが、この剣は周囲の天候を疑似的に操るようで、空から雷を降らすという荒業を使います。
 直撃すると、大きなダメージと電撃でしばらく動けなくなるので注意が必要です。

 ・クルー(剣)
 カットラスで武装した骸骨兵士です。数は8名。
 近接攻撃を得意としますが、特に特筆した技術は持ちません。
 亡者らしく特に思考もなく、真っ直ぐ突っ込んでくるだけです。容赦なくぶん殴りましょう。

 ・クルー(銃)
 生意気にも銃を使う骸骨兵士です。数は8名。
 マストに登ったり、離れた場所から射撃してきます。制度は雑です。
 ちょっとうっとおしいですが、気を付けていれば対処は簡単です。容赦なく蹴散らしましょう。

 ・その他
 船の基本機能を維持するための骸骨や幽霊たちです。
 特に大した力もないので無視しても問題ありません。

●幽霊船
 戦場となる幽霊船です。
 幽霊船長と呪いの剣により維持されているようで、どんなに船にダメージを与えても沈むことはありません。
 船の直接の破壊は無理と考えた方が良いでしょう。


 依頼の説明は以上となります。
 現世にしがみつく海賊たちを再び鎮圧し、今度こそ海に鎮めてあげましょう。
 無事の依頼達成をお待ちしております。

●重要な備考
 <青海のバッカニア>ではイレギュラーズ個人毎に特別な『海洋王国事業貢献値』をカウントします。
 この貢献値は参加関連シナリオの結果、キャラクターの活躍等により変動し、高い数字を持つキャラクターは外洋進出時に役割を受ける場合がある、優先シナリオが設定される可能性がある等、特別な結果を受ける可能性があります。
 『海洋王国事業貢献値』の状況は特設ページで公開されます。

  • <青海のバッカニア>嵐の亡者たち完了
  • GM名トビネコ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年12月15日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)
騎兵隊一番翼
ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)
旅人自称者
鶫 四音(p3p000375)
カーマインの抱擁
レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)
希うアザラシ
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)
我が為に
シラス(p3p004421)
竜剣
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫

リプレイ


 ゆらり、ゆらりと船はゆく。
 高らかに海を越える者達の歌声を響かせ。
 終わりのなき航海と共に、いつまでも、いつまでも。

「海に生き、そして海にとらわれた同輩……討伐されたということは、非公認の海賊だったのだろうが」
 黒翼を広げて甲板に降り立った『麗しの君』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)は過去に対処してきた幽霊船の事を思い出す。
 そして思う。この終わりのない航海に終止符を打つとしようと、せめてもの手向けになれば、と。
 レイヴンに続いてイレギュラーズ達が船に続々と降り立つと同時に、後方より冷たく響く絶望の歌が響き渡る。
 『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)が乗り込む仲間達を援護するように歌った歌は、不意の襲撃者に対して強襲を仕掛ける骸骨達への強烈な牽制となり、更なる一手を彼らに一切意識させていなかった。
「っきゅーーー!!」
 船に乗り込むや否や、『二心?二体っきゅ』レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)のうち、グリュックが天高く放り投げたレーゲンの口が輝く。
 次の瞬間、彼の口から光が線となって放たれ、船の上に一筋の光が駆けたかと思えばその閃光が爆裂を引き起こし、後方で銃を構えていた骸骨達が一斉に巻き込まれる。
 イレギュラーズ達の安全な乗り込みと先制の一撃。この一手で一斉に乗り込んだ者達に一切の被害はなく、そして攻撃に移る速度も迅速だった。
「さて、先制攻撃と行こうか。遠慮は無しだ」
 乗り込むと同時に速攻を書けるように『五行絶影』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は敵陣へと直進した。
 ユゥリアリアとレーゲンによって散らされた骸骨達だったが、素早く剣を構えた個体が2体汰磨羈の前へ飛び出してくる。
「喝ッ!!」
 直接対峙し、相手な剣を振りぬくより先に放った汰磨羈の喝撃。
「まだまだっ!」
 彼の攻撃は一手では終わらない。一撃、二撃。続けてはなった連続の怒号が重なった波となって前に飛び出した骸骨2体を吹き飛ばした。
 そんな汰磨羈の横を『旅人自称者』ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)がすり抜けていく。
 彼の目的は最前線に出る事ではなく、その奥に潜む船長を抑え込む事。わずかながら船から浮き上がり、攻撃によって怯み、意識が攻撃手の仲間に向いている横を抜けて駆け抜け魔力を練り上げ、赤い糸を作り出す。
 まだ距離は遠い、だが意識の外。この糸を結べばこちらの流れといわんばかりにヘイゼルは後ろを仲間に託し走っていくが、船長もただ接近を許すわけがない。
 構えた魔剣に、雷が奔り出す。
「させないぜ?」
 剣が振りぬかれるよりも早く、その剣に銃弾が着弾し雷が霧散する。
 亡者ながらに、その視線はヘイゼルではなく銃弾の主。後方で拳銃を構えたままの『ラド・バウD級闘士』シラス(p3p004421)に向けられた。
「その雷は少し封じさせてもらうぜ。だが、あんたを祓うのは後だ」
 船長の意識がそれた隙にヘイゼルが踏み込んだのを見届けたシラスは、当初の目的である雑魚殲滅に意識を向け、銃口を翻す。
 初手こそは一気呵成に攻め立てることによって相手を押し返してはいたものの、やはり数だけは相手が上。シラスが雑魚に意識を向けた時には、仲間たちはすでに混戦状態になっていた。
 多くの仲間達の戦術にあるのは、雑魚を纏めて吹き飛ばす。というものだが、こうまで乱戦になってしまうと仲間を巻き込む恐れもあり迂闊に打つことは出来ない。
「とはいえ、こっちは準備はあるぜ」
 この状況も予測しなかったわけではない。魔力で作り出した拳銃からいくつもの銃弾を撃ち放つ。
 一見狙いも何も定めていない味方ごと撃ちぬく為の攻撃に見えなくはないが、シラスの視界の中にはすでにもう倒すべき相手にだけ照準が定められていた。
「コンステラシオ。骨には効くだろ?」
 炸裂する魔力弾。貫くよりも衝撃を与える事に尖った弾丸が骸骨達の四肢を砕き、弾き飛ばす。
 混戦と化していた戦場から、相手がいなくなれば残ったレイヴンが動き出す。
「起動せよ、起動せよ、湧き立て我が魔力。渦巻き流れを成し我が敵を押し流せ」
 詠唱を進めていくと同時に、彼の周囲に凄まじいまでの魔力が高まり、その流れが彼の手の矢。弓に番えられた一点に集中していく。
 それに合わせるようにレーゲンが動く。
「やるっきゅ! っきゅ!」
「……吹き飛べ」
 黒翼の天使と空飛ぶアザラシという不思議な組み合わせだが、レーゲンの口から放たれるビームがレイヴンの放った強大な魔砲の矢を後押しするように飲み込み、光の魔力が乱戦から押し出された剣を持つ骸骨とその後方で狙いをつけていた銃を持つ骸骨の一団を纏めて飲み込み、一斉に吹き飛ばす。
 強烈な一撃が甲板の床板や手摺を吹き飛ばし、相手に強烈な一撃を与えるがそれだけの攻撃をすれば意識は向けられる。
 二人に合わせて一斉に放たれた銃弾。それぞれに回避や防御の姿勢を取り、被害は抑え込ていくも全てをカバーできるわけではない。
「おい、上から来るぞ!」
 汰磨羈の叫び。
 彼女が気付いて叫んだからこそ、二人はそれに対して防御の姿勢を取るがいくつかの弾丸は二人の胴を貫く。
「上からか……!」
 マストに登り、そこから射撃を繰り返す相手。高所にいるだけに厄介であり、即座に反撃に移りたいがダメージを負ったというのは厄介で、痛みが狙いを僅かながらブレさせてくれる上に、足場の安定もつかない。
 だが、そんな二人の耳に歌声が響く。ユゥリアリアが放ち続けている攻撃的な歌とは別の、癒しの音色。その調和の音色が耳に届くと同時に活力となり、体から痛みが消えていく。
「そこっ!」
 レイヴンの射撃がマストにしがみついていた骸骨の頭部を撃ちぬき、海まで吹き飛ばす。
「大丈夫です?」
「ああ、助かった」
 振り向いた先には『カーマインの抱擁』鶫 四音(p3p000375)の姿。彼女が奏でる癒しの音色は、誰かが傷ついた時を見計らって届くように意識されている。
 ゆえに、彼女がいる限り仲間の誰かが戦えなくなるという事はまずないだろう。
「と、ちょっと前に行きます。ヘイゼルさんを援護に」
「頼むっきゅ。こっちは任せるっきゅ!」
 前線では汰磨羈が剣を持った骸骨を吹き飛ばすのが見えるが、彼女も完全に無傷でやり過ごせているわけではない。
 そして一人で強敵を抑え込んでいるヘイゼルもまた同様にダメージが大きい。
 そんな彼女にレーゲンは治癒魔術による治療を開始する。戦いは優位に進んでいるも、いつ崩されるかわからない。元々が海賊である以上、油断も隙もない。
 だからこそ、彼らは詰みの一手を今か今かと、待つ。



「船を襲うのは生前の未練か、それとも御仲間を増やしたいのか」
 考えて、呟いても特に返事はない。
 ある程度知能は残っていても目の前にいるのは朽ち果てた亡者に変わりはない。
「さぁて……」
 ヘイゼルが踏み込む。糸を結びつける距離に踏み込む間に、後方から銃撃の援護が飛ぶ。この牽制がなければ張り付くのに相当手間はかかっただろう。
 しゅるりと音を立てて赤い糸が船長の腕に絡みつく。
「新鮮な生者は此方なのですよ」
 そのまま反撃の剣を躱し、とんと足を鳴らして距離をとる。
 ここからは、支援の数も減るだろう。だが、目の前の船長を抑え込み、有象無象を処理できれば勝ち。圧倒的な優位な環境に持っていける。
 容易に踏み込み、糸で結びつけられたこともあり、船長の注意は完全にヘイゼルへ向いた。ただ、一つ計算外な事があったとすれば、それは。
「……っ、速い」
 ただ単純な踏み込み。だというのに船長の一歩は思った以上に速い。
 純粋な技量だけではない。この揺れる船の傾き、勢い。それを利用した踏み込みがヘイゼルへ迫る。
 雷で派手に動くばかりかと思えば、純粋な技量で攻め込んでくる。生前はさぞ高い技量を誇り、この海を荒らしまわった海の猛者だったのだろう。
「この海はぁ……」
 迫る魔剣を短剣で受け、いなすもその斬撃と衝撃は殺しきれず肩口の肉が割け、ヘイゼルの鮮血が飛ぶ。
 繋いだ糸が相手から活力を奪い、傷はゆっくり癒えていくがやはり一人で抑え込むというのは負担が重く、雷は抑えられても単純な攻撃がヘイゼルを追い込んでいく。
「……っぐ」
 そんな戦いの中、船長に意識を向けていたヘイゼルの背に一撃の弾丸が突き刺さる。
 油断。いや、純粋に仕方のない状況だ。船長の猛攻を抑えながら、周囲からの射撃に等意識を割き続ける事はいっそ不可能に近いといえるだろう。
「お待たせしました。大丈夫ですか?」
 ふ、とヘイゼルの体が軽くなる。
 気づけば四音の姿が傍にあり、耳に心の安らぐ歌声が聞こえたかと思えばヘイゼルの傷が癒えていく。
「おかげで、まだやれそうです」
 癒しを終えた彼女は、そのまま仲間たちが吹き飛ばしてきた骸骨の残骸を拾い上げると、それを銃を持つ相手に対して投げつける事で斜線を塞ぎだす。
 なんともまぁ、無茶な対処法だが彼女が後ろに気を付けてくれるのであれば、ヘイゼルも戦闘に集中できるというもの。
「……いや、不味いですね」
 だが、船長は魔剣を構え、それを天高く掲げていた。
 シラスの講じた魔剣の能力の封印。それは力の為さない僅かなタイミングを狙い、彼は魔剣の魔力を持って雷鳴を引き起こす。
 轟く雷鳴。降り注ぐ轟音。閃光が船へと降り注いだ。


 降り注ぐ雷。だが、それは全てがイレギュラーズ達に降り注いだわけではなかった。
 集中して降り注ぐのは、船の中心に存在する巨大マスト。
「うまくいったようだね」
 ドン、と。音を立てて甲板に飛び降りたのは『ゲーム上手』ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)。彼の背で崩れ落ちるマストには幾重にも巻きつけられたロープのようなものが見える。
「即席だったが機能した様だ。他のマストも同様に」
 万能金属を彼の技術で加工し、紐状に加工したもの。すなわち、簡易的なアースワイヤーが巻きつけられたマストに対して雷鳴が誘導されたのだ。
 降り注ぐ雷は他のマストに対しても次々と降り注ぎ、そのマストに登って戦闘を行っていた銃を持つ骸骨達は次々に雷に撃たれ手崩れ落ちていく。
「大戦果だね。残りもまともって一気にやっちまおうぜ」
「うむ。まとめて仕留める」
 バタバタと落下した骸骨達は、手近な距離にいたラルフに向けて一斉に群がってくるも、これはラルフにとっては好機でしかない。 引き付けに引き付けたタイミングで全身全ての力を自身の左腕に収束させ、それを一気に解き放つ。暴虐的な魔力が腕から解き放たれ、群がる骸骨達が消し炭となっていく。
 難を逃れた連中もまた、シラスが放った銃弾から逃れることは出来ず、その頭部を撃ちぬかれると同時に崩れ落ちていく。
「行きますわよー!」
 自棄になったか、それとも突っ込むしかできないのか。突っ込んできた骸骨に対してユゥリアリアが軽く詩を歌えば。それは青い衝撃となって骸骨を吹き飛ばす。
 無論これも、作戦の一手。
「行かせませんわ」
 逃げようとしてるのか、それとも散開しているのか。だがそれは関係なく、口ずさんだ旋律が離脱していこうとする骸骨に届き、その移動しようとする気概を削ぎとってその場で棒立ちさせていく。
 同時に合わせて、彼女の気力もまた癒えていく。まとめて吹き飛ばすための準備は整いだす。
「おらぁっ! 後は任せるぞ!」
 汰磨羈が吠える。誘導され、一か所にまとめられた相手が彼女の喝がさらに別の方向へと吹き飛ばす。
 まるでまとめてピンボールの球にされたかの様にごろごろと転がった骸骨達は、奇麗に一直線に並ぶ。
 その先にはヘイゼルと船長。すなわち、全ての敵を巻き込める位置。
「まとめてだ、上手く避けてくれよヘイゼル……!」
「やっとですか。頼みますよ」
 船長の剣戟をすんでのところで躱し、転がりながらそのまま甲板に伏せたヘイゼル。その真上をレイヴンの放った矢が飛んでいく。
 注意深く船長を意識していた彼は、魔剣に魔力が集まり出すのを見逃してはいない。
「そら、塩代わりだ。纏めて喰らって成仏しろ!」
「海の藻屑にしてやるっきゅーーー!」
 骸骨達を貫きながら、剣に矢がぶつかると同時にその魔力の集中を妨害した後から汰磨羈が練り上げた霊気がレーゲンの吐いたビームを纏って、加速する光の刃となって船を両断する勢いで貫いた。
 この一撃。想定以上の火力に船長は魔剣を持って受け止めるも、その勢いを殺しきれずに剣を大きく上にかち上げられる。
「後に託すつもりでしたが、後詰めになってしまったようですねー?」
 残った雑兵は僅か数体。ユゥリアリアが術式を展開すると同時に、骸骨の足元が凍結。そのまま本体までが凍結していく。
 続けざまに放つ冷気の魔力が残った相手を凍てつかせ、骸骨氷像が出来上がると同時に、銃撃と剣撃が突き刺さり粉砕する。
「よし」
 今の一撃で全ての雑魚は片付いた。ヘイゼルはどうだ、といわんばかりに汰磨羈が駆け、シラスが銃口を向ける。
「なるほど。剣を掲げる事で、雷を降らす、と」
 剣戟をいなし、躱し。しかし全てを捌けずにある程度は身に受けながら、冷静にヘイゼルは魔剣の解析を完了させていた。
「お疲れ様です、もう終わりますよ」
 四音の癒しがヘイゼルを癒す、癒し続ける。彼女の癒しに注力する行動がなければ、ヘイゼルは限界を超えて倒れていただろう。
「ところで、何か心残りでもあるんですか?」
 ずっと気にかかっていた。船長やこの海賊たちが化けて出た理由。
 だが、問いかけても彼はうめき声をあげるだけ。いや、違う。
「こ、ろ、せ?」
 呻きながら、腐り落ちた顔が動いた。
「ああ、そういう」
 化けて出た理由も、この船を動かす理由も、全て魔剣だ。
 あの呪われた魔剣に触れ、滅び、そして今ここに帰ってきた。
「そういう事か、なら!」
 遠慮はいらない、全力で手向けとしよう。ヘイゼル自分と繋がった赤い糸を手繰り寄せるように船長に向けて駆ける。
 相手は剣を天に掲げる。だが、誰一人として雷に対する備えは取らない。
「こんなこともあろうかと、ってな」
 ラルフが懐から取り出した何かを天高く放り投げる。
 それは磁石。電気を引き寄せる性質を持つそれは、上空で雷を受け、弾け飛びながらも雷を四方に散らす。
「さて、やっちまいな」
 先ほどの一撃で全身にかかった負荷を抑えながら、駆ける仲間達に檄を送る。
 あの魔剣は持ち帰れるようなものではない、ここで破壊するしかないと分析できたこともそれを後押しした。
「大人しく死んでろ、って思ったが。大人しく砕けてもらうが正しかったか」
 シラスが船長ではなく剣そのものに狙いを絞り、精神力の弾丸を撃ち放つ。
 寸分狂わぬ弾丸は剣に続けて叩き込まれ、亀裂がゆっくりと広がっていく。
「本当ですわね。これをもって、鎮魂歌としましょう」
 歌に合わせて魔力が冷気となり、船長の体を凍てつかせていく。
「大丈夫。これでゆっくり眠ってください」
「さっさと成仏してくれよな?」
 挟み込むように展開した汰磨羈の剣とヘイゼルの短剣が凍てついた船長の体に突き刺さる。
 それと同時に、彼の体はゆっくりと崩れ落ち、その手から魔剣が離れる。離れたはずだった。
「まて!」
 まだ、魔剣は動いた。
 手を離れた魔剣が独りでに宙を舞い、雷を纏う。天に向いた刃が雷鳴を引き起こす。
 だが、それが完遂しきる前にその刀身に銃弾が突き刺さり、雷が霧散する。
「言ったろ、大人しく死んどけって」
「これで終わりっきゅ」
 銃撃を放ったシラスの横から、放り投げられたレーゲンが自身のヒレから噴き出る魔力を回転させながら刃とし、チェーンソーの如く魔剣にぶつかった。
 強烈な一撃。それを受けた魔剣はばきりと音を立て、そして両断され、砕かれ、粉砕された。
 そして、同時に。暗雲は張れ、温かい日差しが海を照らした。

 後日。
 船の調査を終えて一冊の日誌が見つかったという。
 大航海の末に、伝説の秘宝を手にして雷を操る剣を手にした。
 だが、宝も剣も、奪い奪われ、人の怨嗟に呪われていた。
 だから俺達は海を旅し続けよう。いつも通り、海賊として、滅びを迎えて全て海に鎮めてしまえるように。

 彼らの最期の願いは船と共に沈む事。
 旅を終え、海に沈んだ船は今、何を想うのだろうか。

成否

成功

MVP

ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)
旅人自称者

状態異常

なし

あとがき

お待たせしました。無事依頼は完遂、幽霊船は撃破され呪いの魔剣も無事に破壊出来ました。
凄まじい範囲攻撃ラッシュでした……おかげで雑魚たちほとんど何もできずに大半沈んでいます。

いつも話には原因を用意していますが、小さいながらも気にかけて頂けているのは本当にうれしく思います。
海に鎮んだ彼らに今は、鎮魂歌を。

PAGETOPPAGEBOTTOM