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シナリオ詳細

<青海のバッカニア>酷く胡乱なカプリッチョ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●バニーユ夫人の憧憬
「わたし、思うのです。あの広大なる海で風を受け、波飛沫を感じ、そして、鳥たちの声を聴く! ああ、素晴らしいとは思いませんか?」
 ドレスローブを揺らしてくるくると踊って見せるセイラ・フレーズ・バニーユ夫人にその傍らに立って居た鳥の仮面の男は「さあ」とだけ返した。
「女王陛下の号令を受け、国内は浮足立って居るのです。わたくしもあの海へと飛び出したい――そして、この目で絶望とも呼ばれたあの青き地平の向こうを見てみたいのです!」
「そうか」
「ええ。けれど、そうはいかないでしょう? 聡い貴方ならば分かるでしょう。わたしはバニーユ家の家長代理。この家を守らねばならぬのです。……だから、貴方を雇った」
「承知している。海洋は丁度、用もあったから此方としても声かけは有難い」
 淡々とバニーユ夫人に返した青年の名はマイセン・コール。彼は深緑に住まう幻想種でありながら各国を一つの目的の為に旅する傭兵だ。
 幻想や騒乱のあったラサ、そして『黄泉還り』が多発した天義には足を運んだが陽気で穏やかな海洋にはまだ訪れた事が無かったため目的の為には丁度いいと傭兵を探すバニーユ夫人の呼びかけに応じたのだそうだ。
 此度、海洋王国では国家を挙げての大事業が行われる。国力で言えば確りとした領土を保有する幻想国や鉄帝に劣り、外圧に悩まされる事が多かった。抜群の航海技術・海軍力で独立を保ってきたが、現状に満足できる訳がない。
 ――そんな彼らの夢。遥かな外洋の先にある新天地(ネオフロンティア)。国民を上げて『憧れ』とされるその場所。22年ぶりの大号令に国民は浮足立ち、そしてバニーユ夫人の様に貴族と呼ばれる立場の者とて胸をときめかせ高揚する。それこそが海洋王国の『大号令』なのである。
「何度となく外洋の攻略には失敗してきました。しかし、不可能を可能にする存在――あの『大いなる存在』をも退けて来たローレット――が共にあるならば、此度こそ! そう思って為らないのです。
 マイセン・コール。わたしの代わりにローレットと共に近海警備にあたってはくれませんか? まだ海上戦にも慣れぬ彼らをサポートし、そして、此度の熱に冷や水打つかの如き不届き者を捕縛してほしいのです」
 バニーユ夫人は海種の子供ばかりを狙い誘拐し他国に売り払う事や海洋内から生物を捕獲して他国へと売り払わんとする密輸グループの出航があるのだと告げた。
 彼らを捕縛し対処することで一つの事件が収束し、同時に洋上戦闘に不慣れであろうローレットの為にもなる事が見込まれる。
 大いなる海へ向かう小手調べだ。犯行グループの過半数を捕縛すれば今後の反抗の継続は不可能であろう。逃がしてもいいが、過半数は『対処した証』として捕縛して欲しいとバニーユ夫人はマイセンへと言い含めた。
「承知した。その代わり、仕事が終わったら俺は――姉さんを探しに行かせてもらう」
 言い淀んだが、確かにそう言った彼にバニーユ夫人は「わたしもお手伝いしましょう」と穏やかに、含みがある調子でそう言った。

GMコメント

夏あかねです。バニーユ夫人は皆さんにお願いしたいことがあるようです。

●成功条件
 マイセン・コールと共に密輸船の船員の過半数捕縛

●フィールド
 広大なる海です。海洋近海。船を1隻バニーユ家より貸し出されますがそれなりに大きく目立ちます。
 密輸船はカモフラージュした一般の貨物船として訪れます。船へと潜入し、密輸船の船員を捕縛してください。

●密輸船
 一般的な貨物船にカモフラージュされた無法者。主に海種をとっ捕まえて遠くに売り払うお商売をなさっています。また、近海で取れるパールなどを違法に採取しているようです。
 積み荷の確保は成功条件ではありませんが、幼い海種の子供などが積み荷に存在するようです。
 密輸船の中には船員が10名。全員が海種で泳ぎに優れます。

●船員*10
 海種でありながら『海種を売る事で商売になる』と考える無法者です。
 パールなども勝手に採取し売り払っています。全員が海種なので海中からの逃走も予測されます。
 戦闘スタイルは様々。しかし、回復手というよりも攻撃に特化しているように思われます。

●マイセン・コール
各地を旅する幻想種の青年です。深緑より幻想に嫁いだ姉が消息を絶った事で彼女を探して世界各国を旅しています。
耳飾りは姉と分け合ったものの片割。鳥の仮面とフードを着用しています。
その戦闘スタイルは前線に立つ苛烈そのものです。
傭兵としてバニーユ夫人に雇われているようですが……。

●セイラ・フレーズ・バニーユ
アホウドリの飛行種。白から黒に変わる髪と翼が印象的なご夫人です。
貴族派バニーユ家の家長代理です。
早くに当主たる夫を亡くし大層悲しむ様を、歌声で旦那様を射止めたという社交界の噂より『嘆きのセイレーン』と呼ばれています。
朗らかで陽気な性質を持つ彼女はソルベ・ジェラート・コンテュールなどをよく揶揄って居たりしますがバニーユ家の代表としてしっかりと務めているようです。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●重要な備考
<青海のバッカニア>ではイレギュラーズ個人毎に特別な『海洋王国事業貢献値』をカウントします。
 この貢献値は参加関連シナリオの結果、キャラクターの活躍等により変動し、高い数字を持つキャラクターは外洋進出時に役割を受ける場合がある、優先シナリオが設定される可能性がある等、特別な結果を受ける可能性があります。『海洋王国事業貢献値』の状況は特設ページで公開されます。

 よろしくお願いいたします。

  • <青海のバッカニア>酷く胡乱なカプリッチョ完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年12月04日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
セララ(p3p000273)
魔法騎士
レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
蒼の楔
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
祈りの先
クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)
幻灯グレイ
ロゼット=テイ(p3p004150)
虹の橋を歩む者
エル・ウッドランド(p3p006713)
イカダ漂流チート第二の刺客
カンベエ(p3p007540)
大号令に続きし者

リプレイ


 囂々と音たて進む客船の上で『名乗りの』カンベエ(p3p007540)は潮風を受け、きょろりと周囲を見回した。
「バニーユ様から借りた船、大きいで御座いますねえ!」
 意識を研ぎ澄ませるように助け呼ぶ声を探すカンベエは周囲に不審船はないものかと注意を払い、セイラ・フレーズ・バニーユ夫人の所有する船で近海を往く。
 海の男が海洋国で不義理を行う等許せぬとカンベエは敵に情けは必要ないのだと堂々と言い放つ。
「はははははははは。また人売りかこんちくしょう、なに?
 ラサの……身内の恥共がご機嫌に商売してたから真似しようって話?」
『月光』ロゼット=テイ(p3p004150)の苛立ちは近頃、ラサでも多発した『奴隷』というキーワードに起因したものであろうか。奴隷商売というものは古来から存在し、多種と共存する以上は切っても切り離せないものだが――表層は冷静に保たんとするロゼットでも虫のいい話ではない。
「奴隷……ですか」
 命というモノを蔑ろにする行為には『イカダ漂流チート第二の刺客』エル・ウッドランド(p3p006713)とて眉を顰めずには居られまい。救わんと願うが為に船に乗り込んだエルはゆっくりと指を組み合わせた『祈る暴走特急』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)の横顔をちらりと見遣った。
「――主よ、私に勇気を。どうか私達に、子供たちを救う力をお与え下さい」
 ヴァレーリヤの胸に過ったのは一抹の過去。司教は主へと祈りを捧げながらゆっくりと旗を広げた。揺れる旗を潮風靡かせてずんずんと進むバニーユ夫人の客船。あからさまに目立つようにと細工されたそれが『囮』であることを感じ取りマイセン・コールは「作戦を確認したい」と『魔法騎士』セララ(p3p000273)へと声をかけた。意図的にマイセンとの関りを忌避していた『黄昏き蒼の底』十夜 縁(p3p000099)は自身で準備した小型船に乗り込み奇襲の準備を進めている。
 先ずは奇襲作戦を成功させるために意図的に目立っているのだと告げたセララはふと、仮面の奥で海を確かめるように眺めるマイセンに首を傾いだ。
「マイセンはどんな理由で各国を回ってるのかな? 困りごとがあればローレットに依頼してね。ボク達頑張っちゃうから!」
「……それは力強い。俺は――姉を、探しているんだ。俺と同じ、雫石のイヤリングを付けた只一人の姉を」
 人探し。勿論、ローレットの得意分野だ。セララは成程、と頷いて、この仕事が終わったらマイセンの手伝いも出来るだろうかと青々とした海を眺めた。

 ――畜生、と言葉にせぬ儘に縁は吐き出した。
 日常が崩れるのはあっという間だ。それは、彼の心に刺さる棘と同じだった。マイセンを一目見た時に縁はそう実感した。彼の耳に飾られたイヤリングにコールという姓を聞いて、浮かんだのは失意の只中に有った女の顔。
(……あぁ、やっぱり俺はどうしようもねぇ馬鹿だ、リーデル。
 二十二年前……丁度前回の大号令があったあの日から――いつかこんな日が来ることを、頭の奥では覚悟していた筈なのに……卑怯で最低な俺はまた、誤魔化す方法ばかり考えてるんだ)
 かた、と指先が震える。それは彼の動揺を現している。不断な飄々とし、心を水底に沈めている縁の表面化した動揺を感じ取りながら『蒼の楔』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)と『幻灯グレイ』クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)は何も言わなかった。
 誰も彼も、心に何かを抱えている。一抹の不安は何時しか大きくなることだってあるだろう。クローネはその雪のように白い地震の指先を見下ろして小さく息を吐く。
「……ああ、寒い……寒空の下に冷海の上だとは……暑いのより慣れとるとはいえ、ねぇ……。
 ……密輸船に乗った方々も良くやるもんッスよ……私なら寒さといつ取り締まられるかという恐怖で手も動かない」
「どんな時でもクソ野郎は寒さ暑さよりも自分の欲求を優先するって事だな。
 俺は正義の味方って柄じゃねぇ。糞野郎をヤるついでに積み荷を奪いに来ただけだ」
 空飛ぶ海鳥を伴いながらレイチェルは自身の懐で時刻む懐中時計の秒針の音を感じ取る。面倒な事にバニーユ夫人は『捕縛』を申し出た。
「あー、分かってるさ。敵は生け捕りだろ?」
 ため息交じりに吐き出したその声は、確認を込め眼前に存在する船を捉えていた。


 正面切ってゆくバニーユ夫人の船。どうせならば思いっきり目立ってやれというヴァレーリヤはゆっくりと天使の翼を象った魔術戦用メイスを構えた。メイスより吹きあがった焔の気配、司教は慣れ親しんだ聖句を淡々と口にする。
「――主よ、天の王よ。この炎をもて彼らの罪を許し、その魂に安息を。どうか我らを憐れみ給え」
 大いなる炎と共に、海上を往く船へと飛び込む一撃に、ぴたり密輸船の動きが止まる。確かに聞こえる助けての声を耳にしてカンベエは堂々たる声音を響かせた。
「人身売買、道理もなければ義理もなし。かような行為を誰が見過ごしましょうか!」
 注意引く様に、その声音を響かせる彼の背後より、聖剣ラグナロクを手に光翼のブーツで空を駆るセララが正面切って密輸船へと飛び込んでゆく。
「輝く魔法にみんなの笑顔! 魔法騎士セララ参上!
 悪い海賊はボクが討伐しちゃうよ! 諦めて大人しく捕まるんだね!」
「敵襲――ッ!」
 騒めく密輸船に乗り込む様に、オーダーは生け捕りであると口にしてマイセンが前線へと飛び込んだ。
「御天道様が許そうがこのカンベエが、許さぬ!!」
 堂々たるカンベエへと視線が向く。彼はぐるりと周囲を見回した。積み荷となる海種たちもいるだろう。彼らの為に水と食料、防寒具の準備を怠らずにいたカンベエは何があっても万全だと襲い来る不届き者を受け止める。
「しばく、めっちゃしばく、いますぐしばく。おめーらめっちゃしばいて簀巻きにすんぞオラーーーーー」
 苛立ったように声上げたロゼットは聖なる光を放ちその視界を晦ませる。眼前より来る相手に夢中になっている海賊たちへ向け、背後より飛び込むは絶対不可視の刃。
 牙を覗かせ笑うレイチェルの一撃に『認識外』からの攻撃だと慌てふためく海賊たちにクローネの唇が三日月に歪んでゆく。
「……前の船に気取られてる間がチャンスッスね……惑え惑え、奇襲に驚いて混乱してくれればこっちの仕事も楽ッスよ……」
 疫病振りまく呪いの如く、クローネが与えたカタレプシーは海賊の体を硬直させる。振りまく其れに合わさるは縁の名乗り口上。
「……気分はどうです? 船上で医者にもかかれず、疫病にかかる気分と言うのは……」
「悪かろうよ。さて、……海賊じゃねぇが、一応言っておくかね。
 ――この船の荷物、ひとつ残らず頂いていくぜ。…………我ながら、似合わねぇ台詞だ」
 海賊。その言葉を取れば特異運命座標も密輸船も同じ立場だ。しかし、特異運命座標達は海洋王国の大号令に則り私掠許可を女王より発行される。海賊は海賊でも『正規の海賊』。国家に認められし存在と言えるだろう。
「――俺らは正規海賊。相手は子供を売り捌く正真正銘の屑だ、派手にヤろうぜ?」
 海賊たちの攻撃の手が分断される。不意を打たれたとする海賊の一人の意識を刈り取ったレイチェルたちの向こう側、盾役として聖なる光を以て攻撃重ねるロゼッタが苛立ちを露わにしていた。
「この者、やはり身内の恥の類似案件は赦せまじ。
 ぺりって剥いだらどろっとしたものが溢れ出てくる自覚が大変ありしもの!」
 怒りの外れた海賊の攻撃を受け止めながらも、防御技術を生かすロゼッタはその攻撃を受け止め続けた。体に刻まれた痛みに眉をしかめるロゼッタの背後、 ブルー・インパクトを構えたエルが首傾ぐ。
「こう言うのって……鉄床作戦と言うのでしたっけ?」
 マイセンやカンベエの動きを邪魔せぬよう。前線立ち回る彼らの背後から、足止め狙い海賊を撃ち続ける。流れ弾の様に飛び込む攻撃に軽く意識が眩めども、エルは海賊たちに刻みつけたい痛みがあると懸命に立ち回る。
(彼等には他者が負う痛みや恐怖を感じない、感じられない……だから深傷を負って少しでも知ればいいと思う)
 ――同種を売り物として考えるというならば。それはカンベエが感じた苛立ちと同じだ。エルの支援を受けながら、ぴょこんと跳ねたセララがにんまり笑う。
 その身体に沁み込んだ独自の技能を使用して、放て! セララストラッシュ!
 大地を切り裂き、海を割り、そして――と漫画表現ならばぴったりな聖なる剣戟を放った彼女の頭の上でリボンが揺れる。
「さあ! 此処からどこにも逃がさないよ! 逃げようっとしてもムダだー!」
 空飛ぶ魔法剣士の魔力で構成されたスカートが海風に揺れる。ステップ踏む様に踊るセララの背後で祈り捧げるヴァレーリヤの紡ぐ聖句は只、主の慈悲の如く衝撃波を広げていく。
「主よ、慈悲深き天の王よ。彼の者を破滅の毒より救い給え。
 毒の名は激情。毒の名は狂乱。どうか彼の者に一時の安息を。永き眠りのその前に」
 苛烈なる激情の如く海賊を吹き飛ばす。宣教の心得は只、司教足る者パワーとガッツが必要なのだと教えていた。理想に捧げた魂は時に肉体を凌駕する。その理想が間違いだとしても、だ。
 ヴァレーリヤがちらりと見遣れば海賊の攻撃をその身受け止めるロゼッタの足元が震える。『どんなに幸せだったかしら』と過ぎた日々を思い浮かべながらその身に満ちた技能を慈悲の光に変えて、癒しを与えるヴァレーリヤが祈り捧ぐ。
 ――前進せよ。恐れるなかれ。主は汝らを守り給わん――
 ヴァレーリヤが聖句を口にすれば縁の表情が僅かに歪む。その脳裏に浮かぶのは美しい女の面影。

 ――私、とっても幸せだわ。
 不運ばかりだったこの世界だけれど……けれど、まだ救いの手が伸ばされたのだもの――

 それは、ヴァレーリヤが抱える『理想』に似て、そして、縁の水底深くに存在する心のかたちもにていた。女の面影から逃れる様に首を振る。過ぎた理想はもはや遠く、『今』を生きる者はその為に歩まねばならぬのだと言う様に。
「くそ」と海賊の声がその思考を遮った。
 水中へと逃げる海賊へ「逃がすかよ」とぼやいた縁が海へ飛び込み追い縋る――フリをした。
 海へと入れば思いだす。あの日、緩やかに動き『俺を見た』あの青い瞳。美しいコバルトブルーに深海の如き狂気を孕んで、唇が揺れ動いたのだ。どうして、と。
 時を同じくざぶりと飛び込んだのはレイチェル。その唇から牙を覗かせて笑った彼女は獲物を狩る猟犬の様に海賊の服をがしりと掴む。
「吸血鬼でも気合いと根性で流水克服出来るンだぜ? ――って事で。獲物は1匹たりとも逃がさねぇよ」
 吸血鬼は流水が苦手とはよく言ったもので。クローネはロープで海賊を捕縛しながら寒いと小さく震えて見せる。ヴァレーリヤが張り巡らせた網はまるで漁だ。包囲網を張り巡らせれば、その中で一人足りとも逃がしはしないというかのようだ。
 陽動作戦の甲斐もあり、不意を突いた事で捕縛を効率的に行う特異運命座標達の前でマイセンが刃を振るう。前線戦うアタッカーたる彼に「君はここで戦うよりやるべきことがあるんでしょう?」と声かけたロゼッタは引くに適する塩梅を見逃すなと声かける。
「……ああ」
 他に目的を持つマイセンはひとまずはバニーユ夫人に雇われただけなのだろう。最も、バニーユ夫人の雰囲気よりマイセンにとっても利のある契約を結んでいるようなのだが……。
(どういう目的かはセララさん達との会話を聞いてりゃわかるもんで御座いますが、姉探しにバニーユ夫人が噛んでるってのもおかしな話ですね!)
 首を捻るカンベエは後々にでもその理由も分かるものかと海賊たちを相手取った。数の減ってきた海賊たちの中、癒しを与えるヴァレーリヤの支えのおかげもあって特異運命座標の消耗もそれほど大きくはない。
「……寒さに震えてたのなら良かったですね……直ぐに恐怖で震えて寒さを忘れるでしょうよ……――逃がしはしませんよ」
 銃の音に獣は竦む。クローネの言葉は地這いずる蛇が如くその身を竦ませた。足先にまでぴちゃり、と音を立てる様に寄り添う危機の気配に海賊の悲鳴が上がれば、それを遮る様にカンベエの一撃が投じられる。
 輝かんばかりの光と共に傷を負いながらも懸命に戦うロゼッタの苛立ちは確かな形となって海賊へと届いただろう。
 クソ野郎と吐き捨てたレイチェルは逃がすまいとくん、と海賊の首根っこを引っ張った。姿勢を崩し船の中へと転がった彼の目の前に輝かんばかりの刃が降り注ぐ。影を作るは兎を思わせる耳二つ。
「喰らえー!」
 セララの渾身の一撃が海賊の脳天へと直撃し、その意識を刈り取った。


 すぐにでも逃げて帰りたいと言う様に任務の完了を以て縁はそっとその場を後にする。
「イレギュラーズ、海上でも大活躍! いっぱい宣伝してね」
『魔法騎士セララ』の冒険譚もついに『絶望の青』編がやってきただろうか。これを楽しみにする同業者も多いという。堂々たる戦いぶりをアピールする彼女の傍らで捕縛した海賊を眺めたレイチェルは肩を竦める。
「悪人となりゃ殺しちまいたいが――」
「仕事で生け捕りと言われましたら仕方ありませんわ。子供達を救えただけで良しといたしましょう」
『積み荷』の姿を確認しながらそう言ったヴァレーリヤにレイチェルは頷く。傷を負っていたロゼッタやエルの解放を行いながらカンベエは『積み荷』の頭をぐりぐり撫でる。
「こんな場所とはおさらば。家に帰って、寝床でゆっくりとお休みになられると宜しい」
 暖かな食事や防寒具を手渡して、バニーユ家の家令たちに積み荷の対応を頼む彼の背を眺め、見事に捕縛を果した海賊たちの姿を確認しながらクローネはふと、その積み荷の中に紛れ込む宝飾類を眺める。
「……さて……そういえば私達は大号令…私掠の許可が出ていたのでしたね。
 ……折角なら積荷は全部頂きたい所……違法品や子供以外は持って帰っても良いのですかねー」
「まあ。違法品であるかもわかりませんし、可愛い海賊さん達にはまたお仕事をあっせんするという事で許しては貰えないでしょうか」
 くすりと笑い、クローネへと近寄ったバニーユ夫人は柔らかに髪を靡かせてそう言った。また、という言葉にぱちりと瞬く。これから『私掠許可を持つ特異運命座標』は忙しくなるのだろう。
 何せ、大号令。これから目指すはあの大いなる海なのだから。
「セララ――さん」
 活躍を本にして配り歩くセララの背中に話しかけたマイセンは「暫く此処で、姉を探す」と言った。ローレットに何かあれば頼んでねと笑い掛けていた彼女は首傾ぐ。
「それは、海洋に『手がかりがある』ってこと?」
「……雇い主――バニーユ夫人が、そう言っていた。『私も手伝う』と」
 だから、しばらくはこの国に居ると、呟いてマイセンは青々とした海を眺めた。
 ざざん、ざざんと静寂に響いたその音は――

成否

成功

MVP

なし

状態異常

ロゼット=テイ(p3p004150) [重傷]
虹の橋を歩む者
エル・ウッドランド(p3p006713) [重傷]
イカダ漂流チート第二の刺客

あとがき

 お疲れさまでしたイレギュラーズ!
 マイセンくんについてはまた――……という事でしょうか。

 またお会い致しましょう。

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