PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<Abschied Radio>Agitation

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●甘美なる反乱
 練達。引き籠り内政を続けた結果、他国とは比べ物にならない科学力を手にした国家。しかし、その急速すぎる成長は、足下に微妙な歪みを作り出していた。優れた技術により作り出した発明品や芸術品を大陸各地に流して巨万の富を蓄えるものがいる一方、彼らの存在が吊り上げる各種の物価に喘ぎ苦しむ者がいる。ありていに言えば、他所に比べて持つ者と持たざる者の差が激しいのだ。幻想の農民は等しく農民だが、練達の市民はそうではない。
 だからこそ、頭上から響く誘惑の声に導かれざるを得ないのである。
「立ち上がれ市民! 汝らはこの練達という社会が作り出した構造によって抑圧されているのである! 全ては業突く張りな科学者たちが己の成果を市井に還元せず、ひたすら己の私腹を肥やすためだけに用いているからである! 今こそ彼らに銃を突きつけ、あらゆる者が練達の技術を享受できる世を作るべき時なのだ!」
 ガトリングを抱えた二足歩行のロボットが、アパートの屋上に立って道行く人々に向かって叫ぶ。その声は日々あくせくと暮らしている人々の中にある不満を揺らし、その心を惑わせる。
「立ち上がれ市民! 君達にも富を享受する権利がある!」
 最初はぼんやりと、あるいはどこか怯えたような顔でそのロボットを見上げていた市民達も、やがてその言葉に導かれるように声を上げ始めた。声にならぬ叫び。それは果たして本心から来るものか、ただ扇動に心を揺らされただけなのか、今は分からない。
 ただ明らかであるのは、人々が続々と家に引き上げ、銃やら刃物やら手にして戦う準備を進めようとしているという事だけだ。

●暴徒を鎮圧せよ!
 機械から呼び声が放たれ、暴徒達が闊歩する現場。その近くにローレットは野営地を作り、制圧の準備を進めていた。目標はシンプルである。いかがわしい言葉を撒き散らしている機械をぶち壊して、その声に惑わされている人々を解放する事。それだけである。イレギュラーズは防具を着込み、武器を担いで、遠目にも分かる練達の雑然と密集した都市を見上げた。
「暴走していても市民は市民なのです! やむを得ない犠牲もあるのですが、出来るだけ救ってあげてほしいのです!」
 駆け付けた『新米情報屋』、ユリーカ・ユリカ(p3n000003)はシンプルにそれだけ言い残し、どこかの戦場目指してどこかへ飛び出す。彼女の忙しさは、この事件の単純な大きさを示していた。

 のんびりしてはいられない。イレギュラーズは続々と練達へと乗り込んでいった。

GMコメント

●目標
 扇動機械を撃破する

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●ロケーション
 練達都市部。三階建て程度のアパートが無造作に立ち並び、路地がひどく入り組んでいます。
 見通しが利きにくいので、簡単に敵を見失ってしまいます。いくらか対策が必要でしょう。
 住民達は扇動機械に影響され暴徒化しています。

●敵
☆扇動機械×3
 シンプルに、周囲に扇動的な声明をばら撒く二足歩行の機械です。ただしこの機械自体にも十分な戦闘力が備えられており、油断は出来ません。また、脚や背中にブースタが存在し、屋上にはひとっ跳びで登れます。

・攻撃方法
→機関銃……弾丸を手当たり次第にばらまきます。扇状の範囲を纏めて薙ぎ払います。
→鉄拳……鉄の拳で周囲をぶん殴ります。射程は短いですが、食らうとぶっ飛ばされます。
→扇動……民衆を暴徒として動員してきます。同志よ、武器を持って立ち上がれ!

☆暴徒
 扇動機械に動員された民衆です。殴りかかってきて鬱陶しいですが、保護対象なので注意しましょう。
 扇動機械の攻撃に巻き込まれて死んだりしますが、こちらから処分する事の無いように。

TIPS
・足を止めると暴徒に絡まれます。
・頭を取られるとばらまかれる弾丸を躱すのが困難になります。注意しましょう。
・リプレイは現着から。敵の声は聞こえますが、接敵はしていません。


影絵企鵝です。扇動と言えば……と思いましたがガチなのはマズいのでちょっと丸めにしてます。

という事でよろしくお願いします。

  • <Abschied Radio>Agitation完了
  • GM名影絵 企鵝
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年11月22日 22時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)
炎の守護者
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
レスト・リゾート(p3p003959)
にゃんこツアーコンダクター
シラス(p3p004421)
超える者
リナリナ(p3p006258)
シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)
ロクデナシ車椅子探偵
オジョ・ウ・サン(p3p007227)
戒めを解く者

リプレイ

●目覚める市民?
 練達のアパート街では、既に暴徒が列を成し、何処へともなく行軍を始めようとしていた。くすんだ空気の中を小鳥が一匹飛び、屋上の柵に降り立った。首を傾げる小鳥の眼には、屋上や十字路の真ん中で住民の扇動を声高らかに繰り返す機械の姿が映っていた。その視界を借りたレスト・リゾート(p3p003959)は、仲間達に振り返る。
「十字路の真ん中に一体、屋上に一体見えるわね~。ビシバシお仕置きして、花マルで解決しちゃいましょう~」
「おー! センドウ機械を破壊! あのうるさい機械3つの事だな!」
 リナリナ(p3p006258)は早速ジェットパックを背負って飛び上がった。街の中でも一番高い建物の屋上に陣取って、声に操られる住民の姿をじっと窺う。
「住民、センドウ機械の話、理解できて頭良いな! でも簡単に操られてて、寧ろ頭悪い気もする! ……結局どっちだ?」
 きょとんと首を傾げるリナリナ。その眼下では、盾を担いだ二人のイレギュラーズが住民達の群れへ駆け寄っていくところであった。
「罪なき市民を『盾』として使おうってのは、ちぃっと気に入らねぇなぁ」
 ゴリョウ・クートン(p3p002081)は民衆の眼前に立つと、力強く四股を踏んだ。構えた盾からは光が放たれ、アパートやアーケードを包み込む。目を血走らせた民衆が、肉切り包丁や護身用の拳銃を構えて振り返った。クートンは牙を剥き出しにやりと笑う。
「うっし、周りは気にせずやってきな!」
 先頭の男が言葉にならぬ声を喚きながら突っ込んでくる。チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)は深紅の外骨格を見せつけるように身を乗り出した。
「おまえたちの相手はこのオイラ、チャロロ・コレシピ・アシタがしてやる! 不満もモヤモヤも全部ぶつけてこい!」
 目の前の女がナイフを投げつけてくる。盾の反りで受け流し、チャロロは一歩一歩引き下がった。
「みんな、よろしく!」
「任せろ! ……ふざけた機械を作りやがって。早いところブチ壊してやるぜ」
 シラス(p3p004421)はその足に風の魔法を纏わせ、民衆の頭上をするりと跳び越える。その視線の先には、機関銃を構えた機械が口やかましく叫んでいる。
「取り戻せ! 富をあるべきところに!」
「うるっせぇなぁ!」
 彼は拳を固めて機械の懐へと飛び込んだ。機械は腕から蒸気を噴き出しながら殴りかかってくる。シラスはステップを踏んでその一撃を躱すと、拳に焔を纏わせて機械の胸元を殴りつけた。機械の身体に熱は届かなかったが、機械はレーザーポインターの光をシラスへ向け、ガチャガチャと押し寄せてきた。
「いたぜ、こっちだ!」
 放たれる弾丸を紙一重で躱しながら叫ぶ。
「おー! 行くゾ!」
 リナリナはジェットパックを噴かせて飛び出す。屋根の上に飛び上がろうとした機械の頭を、落下速も乗せた鋭い飛び蹴りで襲い掛かる。
「るら~! ここ通行禁止!」
 完全な不意打ち。頭に直撃を喰らった機械は、リナリナと共に地面へ墜落した。鈍い音が響き、装甲の一部が拉げる。リナリナは敵を踏み台にして再び上空まで飛び上がり、掘り出し物の剣を構えた。
「何言ってるか難しくてよくわからないし、うるさくて耳障りだからアウト!」

 アパートの屋上でも、日々をあくせく暮らす民衆目掛けて声を響かせる扇動機械。ジェットパックを背負ってその後を追いかけ、イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)は機械の目の前にすとんと降り立つ。
「貧困ってのは本人のドリョクだけじゃどうにもならないものだからね……」
 機械は機関銃を向け、弾丸の雨で辺りを薙ぎ払う。高度を一気に下げてやり過ごし、イグナートは背を向けて逃げる機械を追いかける。
「ヒトの弱みに付け込もうって機械は気に入らないね!」

 レストは小鳥と協力しつつ、路地の陰からこっそりと演説を続ける機械へ迫っていた。銃口を掲げて大演説をぶち上げる機械の背後に迫ると、彼女は鋭くリボンを投げつけた。深紅のリボンは生き物のように伸びて機体の足下に絡まり、その目を彼女へ引き寄せる。
「さぁ、こっちにいらっしゃいな」
 全身から蒸気を吐き出し、機械はずんずんと迫る。そのまま、不格好なほどに巨大な拳を叩きつけてきた。彼女が身構えた瞬間、その身体を光の鎧が包み込み、その威力を軽減する。
「機関銃もそうだが、むしろその一撃の方が脅威だ。ほどほどに距離を置きながら戦うようにしたまえ」
 車椅子を転がしながら、シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)はへらへらと言い放つ。その間にも機械はスピーカーから扇動の叫び声をばら撒き、次々と辺りの住民達を暴徒化させてイレギュラーズへとけしかけてきた。しかしシャルロッテにとっては物の数ではない。情けはかけても容赦する気はないからだ。青い宝石を掲げて、人の群れに雷を一発叩き込む。人々は一気にその身を引きつらせ、悲鳴を上げながらその場に引っくり返った。引き付けを起こす彼らを見下ろし、シャルロッテは眼を細める。
「痛いかね? 易々と扇動に乗った代償だよ、それは。耐えたまえ」
 あっさりと言い放ちながらも、彼女はじっと機械を見つめる。
(ふふ、欲しいな。……軍師としてこんなにも有用な機械は中々無い。用途を挙げればキリがない)
 しかし残念ながら今日の任務は鹵獲ではない。蔓を伸ばしてベランダにぶら下がり、オジョ・ウ・サン(p3p007227)もひょいひょい飛んで機械の頭上を取る。
「アハハー! ドウシドウシー! オジョウサンも同志デス! 一緒に歌イマショー!」
 機械が近くのアパートへと飛び上がろうとした瞬間を突いて、疑似餌の爆弾を破裂させる。爆風を頭からもろに喰らった機械は、ブースターを噴かせながらなんとか地面に着地した。それを見届けたオジョウサンは、さっさと蔓を巻き上げ、屋上の陰に身を潜める。何の変哲もないアヤシイ植物の振りをしながら、じっと様子を窺う。徹底して待ちの姿勢だ。
「あっちでもこっちでもヒトが動いてるのデス……」
 ぼんやり待っていれば暴徒が勝手にやってくる。口を開けて放っておけば、勝手に中へ入ってくる。
(……あ、アッチは食べちゃダメなんデスネ)
 と、そこまで考えたところで何とかオジョウサンは禁則事項を思い出したのだった。

 図らずも三方に散らばった扇動機械。暴徒は彼らの声に連れられあちこちに散らばろうとしてしまう。チャロロは盾でその身を庇いつつも、彼らの目の前に立ち塞がった。押し寄せる暴徒をフルパワーで押し返す。
「通さないよ、こんな口車に乗って命を落としてほしくないからね!」
 角材を振り回し、火炎瓶まで投げてくる。保護結界が無ければ阿鼻叫喚の地獄絵図間違いなしだ。ゴリョウは鼻を鳴らすと、太鼓のように突っ張った腹を豪快に叩き鳴らした。
「この輝く富の如き金の鎧を見な! 腹の肥えた図体を見な! オメェらの敵は、ここにいるぜ!」
 金満デブの如き姿を見せつけ、ゴリョウは民衆を挑発する。その堂々たる態度は暴徒の勘にクリティカルヒットし、一斉に暴徒が押し寄せてきた。
「おお、そうだ。その調子で来い!」

●鎮圧せよ
 十分経っても、暴徒達による攻勢は激しさを増すばかりである。とにかく数が多すぎてキリがない。防御に優れるチャロロにとっても、まともに受け切れる数ではなくなってきた。
「みんなが戦ってるのに……ここで倒れてたまるか!」
 投げつけられたナイフを弾き落とし、チャロロは素早く構え直す。
「ちょっと痛いけど、ごめんよ!」
 申し訳なさそうに叫びつつ、チャロロは目の前の男に鋭く肘鉄を叩き込んだ。息を詰まらせ崩れる青年。暴徒達はそれを蹴倒す勢いで更に押し寄せてきた。ゴリョウは咄嗟に腕を伸ばし、倒れた青年の襟首を引っ掴んで壁際へ放りだす。
「ブハハハッ! こいつは中々ヘビーな戦場になってきたな! まあ俺達がここで食い止めきれれば何とかなるだろ!」
 ゴリョウは盾の表面から光を放ち、チャロロのボディに刻まれた損傷を修復する。ついでに自分の身体についた生傷も癒して、再び暴徒へと向き直った。
「さあ少年、もう一頑張りといこうや」
「うん!」

 ひしめくアパートの屋根を自在に飛び回り、せわしなく動き回る扇動機械。オジョウサンは屋上の陰に隠れたまま、捕食袋の中から取り出した疑似餌をその頭上から何度も降らした。最初は上手く隠れおおせていたが、遂に機械が彼女の存在に気づいた。両腕でその身を庇いながらオジョウサンへと突っ込んでくる。
「どっ、ドウシ! ドウシが来ているのデス!」
 オジョウサンは咄嗟に蔓を振り回し、眼前まで迫ってきた敵を打ち据え向かいのビルまで弾き飛ばした。しかしどうにも効き目が薄い。機械は銃を構えて狙いを定めてくる。オジョウサンは青褪めて叫んだ。
「オー! ヘルプミー!」
 オジョウサンが飛び跳ねながら逃げ出そうとした瞬間、イグナートが空高くから駆け付けた。機械が振り返るよりも早く、彼は胸いっぱいに息を吸い込んで叫ぶ。
「ぶっ飛べ!」
 彼の大喝は嵐へと変わり、機械を屋根の下へと吹き飛ばす。イグナートも屋根の柵を乗り越え、そのまま機械を追って路地裏へと飛び降りた。
「立ち上がれ……立ち上がれ立ち上がれ立ち上がれ」
 機械の何処かがいかれたようだが、それでも機械は機関銃の弾丸をばら撒き、拳をイグナートへ叩きつける。ギリギリのところでやり過ごしながら、彼は鋭い連続蹴りで機械をその場に釘付け、そのまま間合いを盗み取った。
「これでハカイする!」
 切り札は出し惜しみしない。全身の気を弾けさせながら、彼は鋭い正拳突きを繰り出した。だが、機械も右の拳を鋭く回転させながら彼の腹へと叩きつけた。
 機械の腰が真っ二つになる。しかし、イグナートも壁に叩きつけられてぐったりその場に崩れ落ちる。
「……な、何とか、片付いたか……?」
 混沌の力を解き放って、イグナートは起き上がる。見れば、機械はただのノイズを撒き散らし続けるだけになっていた。

 一方その頃、レストのリボン攻撃を逃れた機械がバタバタと路地裏やら屋根の上やら、ばたばたと逃げ回っていた。だがシャルロッテは動じない。のんびりとした電動車椅子の速度でも、着実に機械を追い詰めていた。
「君は跳んだり跳ねたり、隠れたり隠れなかったりが得意なようだが……軍師であると同時にボクは探偵なのだ。探偵の眼からは逃れられない。事件を解決する為の全ての情報は探偵の下に集まらねばならない。そう、『第八の戒』で戒められているのだよ」
 吟遊詩人のように朗々と一人語りを続けながら、屋上の陰に隠れようとする機械の姿をその目で捉えた。放たれた光が、機械に直撃する。
「今だよ、レスト君」
「はいはい。おばさんに任せてちょうだいね」
 空を駆けて機械の背後に回り込んだレストは、ブースターにリボンを縛りつけた。
「こらこらこら~、逃げちゃダメよ~」
 振り返った機械が銃弾を撒き散らす。パラソルを開いて銃弾をやり過ごしながら、レストはビルを挟んだ向こう側へと回り込み、その背中目掛けて衝撃波を叩きつけた。ブースターに僅かな亀裂が入り、黒いオイルが滴る。機械が振り返ったところに、再び彼女はリボンを放ち、その腕を絡め取る。
「さあ、これならどうかしら~?」
 レストは力任せにリボンを引っ張る。バランスを崩した機械はアパートの狭間に墜落した。逆噴射が出来なかった機械は墜落の衝撃で半壊する。
「ふう。とりあえずは一安心ね~……」
 彼女はその身に負った傷を癒しつつ、念入りに機械を破壊しにかかるのだった。

 扇動音声を撒き散らしながら逃げ回る機械。シラスとリナリナは共に飛んで追いかける。オフィス街との狭間に立つ背高なビルに降り立った機械は、いきなり振り返って機関銃を向けてきた。
「させるかよ!」
 シラスは宙を蹴って一気に加速し、機械へ肉薄する。そのまま両手両足に魔力を纏わせ跳び蹴りを見舞おうとしたが、機械も突如拳を振り抜いてきた。
「なっ……!」
 機械のスピーカーにシラスの蹴りが直撃するが、シラスも機械の拳を強か喰らう。機械は仰け反り、シラスは屋上の床に叩きつけられた。
「るらー! 置いてかれてるゾー!」
 しかしリナリナはシラスを追走するのが精一杯だった。シラスは何とか立ち上がろうとするも、そこへ容赦なく機関銃の弾丸が襲い掛かる。
「くそっ……」
 その場に膝をつくシラス。ようやく飛び込んできたリナリナは、大剣を振るって遠心力をつけ、渾身の「攻撃」を叩き込んだ。目に見えぬ一撃が、機体のブースターを叩き落とす。
「騒音禁止! センドウ機械アウト!」
 そのままリナリナは剥き出しになった配線へと飛びついた。鋭い歯で無理矢理噛み千切るが、激しい電流が走ってリナリナはびくりと震える。。
「び、ビリビリ!」
 機械は配線を切られ、リナリナは感電して動けない。その隙にシラスはパンドラの力を解き放って態勢を立て直し、飛び蹴りを放ってリナリナと機械を引き剥がす。
「大丈夫か?」
「おー、助かったゾ!」
「俺も助かった。……さて、さっさと決めちまうか」
 シラスは拳を固め、リナリナは大剣を担ぐ。二人の同時攻撃を叩き込まれた機械は、あっけなく毀れてその場に四散するのだった。

 機械は全て破壊され、街角に響き渡る声は消え去った。四方八方から殴られながらも、チャロロはじっと耐え忍んでいた。しかしそれも僅かの事、やがて人々はその手を止め、茫然とその場に立ち尽くすのであった。まるで自分達が何をしていたかもわからないかのように。
「終わった、かな……」
 チャロロは盾を放り出し、その場にぺたりと座り込む。身体のあちこちが悲鳴を上げていた。

●祭りの痕
 止血剤を塗った包帯を巻きながら、イグナートは機械の残骸を並べてじっと目を凝らしていた。爆薬の類は見つからなかったが、特に有益そうなものも見当たらない。
「ふむ……今回の事件は何かウラがありそうだよね」
 イグナートは機械の電脳部分を拾い上げる。
「とりあえず、これを調べたら何かわからないかな……」
 自分にはとんと検討が付かないが、ギルドに持ち込めば調べる伝手があるだろう。そう決めつけて、彼は電脳を革袋へと放り込んだ。

 一方、十字路の真ん中ではチャロロとゴリョウが胡坐をかき、市民達に取り囲まれていた。
「ぶはははッ、満足したかい? たまにゃ発散したくなる時もあるよな!」
「いえ。……この度は何とお詫びを申し上げたら……」
 一人の男が申し訳なさそうに呟くが、ゴリョウは豪快に笑い飛ばし、その腹をぽんと叩いた。
「いやいや、良い修行になったぜ!」
「練達の上の人たちも、もうちょっと市民の事を考えてくれればいいんだけどね……」
 チャロロは半ば呆れたように呟く。機械の扇動だからこの場は収まったが、本物の暴動に発展したらこれではすまない。ゴリョウも爪で顎を掻く。
「まぁなぁ。ただ、練達の奴らは良くも悪くも技術開発に一生懸命なんだよな。特に悪い事して私腹を肥やそうとか、そういう事で頭がいっぱいな連中が国を牛耳ってるわけじゃないからな……」
「国の運営に無責任だからこうなってる……のかな。もう少し頑張って欲しいところだけどなあ……」

 レストはその頃、主にシャルロッテにぼこぼこにされた人々を一列に並べていた。
「は~い、怪我しちゃった人は一列に並んでくださいね~」
 彼女は治癒の力で人々の傷を塞いでいく。シラスは気を失ったままの人々を背中に担ぎ、そんなレストの前へと運んでいく。
「ほら、気をしっかり持てよ。あのお姉さんが治療してくれっから……」
「うぐ……」
「おいおい。随分派手にやられたな……誰だよ……」
 市民は呻くばかり。どうやら応える元気も無さそうである。

 屋根の上に座ったリナリナはぺっぺと辺りに唾を吐き続けていた。しかし、舌の痺れた感触と、銅の何とも言えないえぐみが口の中に残りっぱなしだ。
「うえー……口の中身が最悪だゾ。もう扇動機械、食べない!」
 リナリナは頬を膨らませると、何処からともなく取り出したマンモの肉を口いっぱいに頬張るのだった。

 市民達が傷の手当てを受けている間に、オジョウサンは軽快に飛び跳ねながら飛び散ったガラス瓶の破片や刃物、銃器を鞭で掃き集めていた。
「保護結界がアルと、後カタヅケが少しダケで済んデいいデスネ!」
 一生懸命働くオジョウサンの横で、シャルロッテはにやにやしながら機体の残骸に向き合っていた。
「やれやれ。そのまま使うことは敵わなかったが……この優れた技術は貴重だ。その断片だけでも利用できないものか……」
 シャルロッテは周囲をこっそり窺いつつ、機体の電脳やスピーカーに手を伸ばして懐へこっそり隠していく。自分で何とか出来なくても、それなりの伝手はある。必ずやモノにしてみせると彼女は内心で誓っていた。
 そしてそれを見ていたオジョウサン。しばらく首を傾げていたが、やがてシャルロッテの真似をして、機体の残骸を一つ拾い上げて捕食袋の中へと放り込んだ。
「扇動機械、ゴチソーサマデス!」
「む……?」

 かくして、下町の扇動機械事件はひとまず終結したのであった……



 おわり


 どうなったかは御想像にお任せ。

成否

成功

MVP

ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク

状態異常

なし

あとがき

お世話になっております。影絵企鵝です。
この度はご参加ありがとうございました。

二人で人波を抑え込む姿は素晴らしかったです。特に立派なお腹を見せつけたゴリョウさんは……というわけでMVPをさしあげます。

これからもご縁がありましたらご参加ください。

ではでは。

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