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シナリオ詳細

<Abschied Radio>かつてあこがれた、大きな空よ

完了

参加者 : 8 人

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オープニング

●探求
 練達(探求都市国家アデプト)の小島。湾岸にあるとある町。二人の男が、空を見上げている。
 ハンフリーとアーチボルトと言う。ハンフリーはすぐカッとなるような職人気質。アーチボルトは気の弱いひょろりとした抜け目ない人間。
 どちらも、研究者であった。
 正反対の2人は、同じ目標を向いていた。
「お、飛んでった」
 二人が見ていたのは推進力を得て飛んだ”ロケット”である。それはとても未熟なもので、へなへなと落っこちていく。
「ああ、また失敗だ」
 それでも失敗も織り込み済なのか、二人の男は笑った。
「なあ、いつか、飛べたらいいな」
「ああ……いいなあ」
 彼らはいわゆるロケット工学者であった。異世界の技術を何とか再現しようとしていた。片方が設計を、片方が操縦をになっていた。練達が国を挙げて行っている帰還のための研究と称して、それはいつしか空へのロマンとなっていた。こちらの方が本業と苦笑されるほど。
「空の向こうには何があると思う?」
「旅人によると、ウチュウ? とか。真っ白だったとか、平らな世界だったとか、たくさん」
「何があったら嬉しい?」
 こうして、若き日の彼らは夜通し議論し合った。

●そして、終わり
 研究のための資金が底をつき、二人はあまりロケットのことを話さなくなった。そんなある日のことだった。
「おい、お前、俺の設計図を売りやがったな!」
 ハンフリーはアーチボルトにつかみかかった。
「生活がかかっているんだ。分かってるだろう。きみだってもう何日薄い粥しか食べてないんだ?」
 ハンフリーは、かつての相棒が変わってしまったことを知った。
「ロケットは金にならないよ。もっといいことに使える。君だって奥さんに食べさせなきゃいけないし……なあ、もうすぐ生まれるんだろう。半額受け取ってくれ」
 ハンフリーが許せなかったのは、アーチボルトが言い訳もしなかったこと。悪びれずもしなかったことだ。
 受け取った額は半分よりは多かったろう。
 決裂だった。

「向こうのせがれとは話すんじゃねぇぞ」
 ハンフリーは死の床につきながら言った。「アーチボルトの連中とは、ぜったい話すな」どうしてなのか息子はいぶかしんだが、「卑怯者だからだ」と帰ってくるばかり。
 それはもう、数十年は前のこと……。

●確執
 いつからだろう。
 親、子、孫。数世代を経ても。
 時がたつにつれて、ハンフリー家とアーチボルト家の一族は憎しみあうようになっていた。
 ハンフリーのものはアーチボルトのものが手を差し伸べたのに、手を取らなかった大バカ者。
 アーチボルトのものは、ハンフリーのものを裏切った卑怯者。
 実業家として成功を収めつつあったアーチボルト家。職人の寄合として町をまとめ上げてきたハンフリー家。
 町は、ほとんど二つの派閥に分かれていがみ合っていた。
 先日、ハンフリー派の人間がアーチボルトの人間を衝動的にナイフで刺したのを皮切りに。
 ……異変が起ころうとしていた。


 いつからだろう。
 人を信じられなくなったのは。
 混線したノイズが告げる。
「……ザザ、ハンフリーのものは、アーチボルトの失墜をもくろんでいる……」
「……ザザ、アーチボルト、アーチボルトさえいなければ、くそっ……」
「……裏切り者、裏切り者、裏切り者……」
 住民たちは寝返りを打つ。
 気がおかしくなりそうだった。

●どっち派?
「ハンフリーかい? それともアーチボルト?」
『黒猫の』ショウ(p3n000005)はあなたたちに投げかけた。
「まあ、どっちってことはないだろう。見ての通り、その町はハンフリー派(職人派)とアーチボルト派(実業家)に分かれて争っている。『多世界評議会』以降練達北西部で、殺人事件が頻発しているのは知っているかい?」
 ショウは事件の記事をいくつか指し示した。
「町では住民たちがいがみ合い。二つの派閥がしょっちゅう衝突しあっている。殴り合いのけんかは日常茶飯事。ついこの前は死者まで出した。……原因を突き止めて、華麗に解決……とは簡単にいかないだろうさ。けれど、名探偵。頼りにしているよ」
 そう言ってショウは意味ありげに肩をすくめた。

GMコメント

●目標
・異変の原因を突き止め、破壊する。
・ハンフリー家とアーチボルト家の争いの拡大の抑止。

●事件の概要
 町に入ったとき「あなたはハンフリー派か? アーチボルト派か?」と聞かれるだろう。
この町はハンフリー派(職人派)とアーチボルト派(実業家)に分かれて争っている。中立を保つも良し、どちらかに肩入れするもよし。
 中には穏健派もいる。互いに恋人、友人がいるものもいる。表立って口に出すことはない。人々の表情は固く、怯えきっている。
 しばしば突発的な殴り合いが巻き起こる。

・ハンフリー派の特徴
鍛冶職人、技師など。
ロマンあふれる話が好き。技を一人で磨き続けるような人間が好きなようだ。昔気質の人間が多く、口が堅いとはいえ一度懐に入りこむと容易いかもしれない。
みんな血気盛ん。
もしくは自分の話を聞いてくれるような人間や、感嘆されるとちょっと弱い。
 一部の人間が拘留中。殴り合いのけんかを起こした仲間を釈放するように要求中。何人かは悪夢(ノイズ)にうなされている。
「仲間もそんなことはやる人間じゃない」「相手がよっぽど悪かったに違いない」と擁護している。

・アーチボルト派の特徴
商人など。
現実的でお金の話、商品の応用の話が好き。実は穏健派も多くあんまり戦いたくなかったりする傾向がある。
実用派。
ハンフリー派がケンカを売ってきたと思っている。何人かは悪夢(ノイズ)にうなされている。
「ハンフリー派がすべて悪い」「こちらはやり返しているだけ」

●登場(真相) ※PL情報です。
 拡声器<猜疑>……町の広間に設置してある放送用スピーカー。夕方になると懐かしいチャイム音で帰宅を促す。現在は故障中のようだ。
 無意識のうちに猜疑心を煽るようなノイズを発生させ、このスピーカーが住民たちの争いを拡大している。スピーカーは古いものだが、最近改修工事が入ったそうだ。
 だが、どちらの派閥も工事についての詳細を知らない。
 壊そうとすれば双方多少は反対するだろうが、理由があれば引き下がるだろう。

※不思議な力により、ギフトやその他の魔物を感知するようなセンサーの効力は薄れる。
 魔物が潜んでいるということは分かるかもしれないが、特定できない、といったような感じ。

 通常無力であるが、攻撃するとその特性をあらわにする。仲間同士の同士討ちを狙うほか、強烈な音で範囲攻撃を行う。

※この拡声器は、戦闘中に不安をあおるようなことを拡散します。プレイング指定可能。
一例です。
【アナタの隣にいるのは本当にナカマか?】
【人をコロシタことはあるか? 楽しいと思ったのではないカ?】

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
 とくにひっかけや大きな秘匿情報はありませんが、スピーカーの来歴についてなど謎です。

  • <Abschied Radio>かつてあこがれた、大きな空よ完了
  • GM名布川
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年11月25日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

サイズ(p3p000319)
妖精の守り手
シグ・ローデッド(p3p000483)
Knowl-Edge
リュグナー(p3p000614)
虚言の境界
シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)
死を齎す黒刃
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
嫉妬の後遺症
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫
岩倉・鈴音(p3p006119)
劫掠のバアル・ペオル
セレマ オード クロウリー(p3p007790)
性別:美少年

リプレイ

●二者択一、あるいは第三の道
「商人と職人がいがみ合ってる状況か……なかなか厄介だな……」
『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)は思案する。
「俺は両立してやってるが……今回は鍛冶屋として職人サイドの人たちを落ち着かせようと思う」
「わたくしは、アーチボルトに向かいますわー」
『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)は海洋の貴族の出身だ。商売人には顔が利くかもしれない。
「みなさまはー?」
「ひとまずアーチボルト」
『死を齎す黒刃』シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)はふうとため息をついた。
「ハンフリーにアーチボルト、二つの派閥の争いね。互いに譲れない一線はあるんだろうが、世代を経ても憎しみ合うってのは難儀な事だぜ」
「代々積み重なってしまった深い溝は、簡単には埋まらないものですわー。とはいえ少しづつでも、歩み寄っていけると良いと思いますー」
「すぐに仲良くさせるってのは難しそうだが、出来る限りのサポートはしてやらないとな」
「両家が過去に囚われて憎しみ合う悲しいお話……でも、それもここまで」
『お節介焼き』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)は祈るように胸の前で手を組み、微笑んだ。
「これは両家が再び手を取り合う良い機会なのだわ!」
「ふむ。……中々に興味深い事態が引き起こされているようだな」
『『知識』の魔剣』シグ・ローデッド(p3p000483)は静かに町を見下ろした。同じ風景を共有しながら、二通りの作りの町並みが眼前に広がる。
「過去の因縁が現在まで続く町か。生まれた時から刷り込まれた常識というものは、中々振り払えぬモノなのだろう。……だが、此度はやり過ぎたようだな」
『虚言の境界』リュグナー(p3p000614)は包帯の下から、その双眸で何かの思惑を見て取ったようだ。
「そこまで人の心を掻き立てる”何か”、成程……興味深い」

●ハンフリーか、アーチボルトか
「ハンフリーだ」
 サイズの答えに男は満足げに笑み、もう片方の女は眉をひそめる。
「ハンフリーダネ」
『放課後のヴェルフェゴール』岩倉・鈴音(p3p006119)は片目をつむる。
「剣呑な雰囲気ダネ。お互い足引っ張ってちゃ空も飛べないよ。お姉さんが一肌脱いであげるよ」
 全部脱ぐとはいっていないケド。
 朗らかに笑う鈴音。町人二人は呆気にとられている。
(ナンダ、息が合うんジャナイ?)
「アーチボルト、ということにしておこうではないか」
 シグが答える。今度は女性の顔が輝き、男が悔しそうになった。
「アーチボルト、だ」
 シュバルツは答えた。
 おや、黒づくめの武闘派に思えて、話の分かる人間だ!
 この男こそハンフリー気質と見込んでいた男は言葉を失い、女性は顔を輝かせた。
「アーチボルト」
 メリルナートは言葉を続ける。
「の方に、お会いしたく思いますわー」
 メリルナートは紹介状を持っていた。
「ボクは真ん中です」
『性別:美少年』セレマ オード クロウリー(p3p007790)はにこやかに答えた。
「いや、どちらかに……」
「ボクは練達中央からやってきた学者です」
 セレマは礼儀正しく、しかしきっぱりと続ける。
「練達も『歴史』を抱き、教え伝えるべきです。あなた達の歴史とその技術を刻ませてください」
「中立だ」
「どちらも、なのだわ」
 リュグナーも、華蓮も、どちらかの味方を表明することはない。リュグナーは意図の読めない表情でかすかに笑い、華蓮は緩やかに首を振って中立を保った。

●どちらでもないからできること
「困っていることはないかしらー?」
 華蓮は、道行く人に呼び掛ける。
 どちらの派でもないことで、最初はだれも足を止めなかったが、まずは小さな手伝いから。何か困っていることはないか聞きまわり、目の前で転んだ子供の手当をしてやる。迷子を見つけては送り出し、徐々に知り合いを増やしていくのだ。
 コネクション。それが武器だ。
 リッチモンド・コネクションも加わり次第にそれは大きく広がる。
「ストレスが溜まってるのだわー」
 柔らかい態度で心を解きほぐし、超分析により不調の原因を探る。悩み事を相談する人間がちらほら現れた。華蓮に「頑張って」と言われれば、上手く行く気がする。柔らかな包み込むような母性。つい、口も軽くなろうというものだ。
「眠れないなら、これはいかがー?」
 ハーブティーを差し出す。
「具合が悪ければ薬もありますー」
 メリルナートがひょっこりと顔を出した。どちらかの陣営を名乗る人間を繋ぐのも、中立派の役目だ。

「すごいですね。ボクはこんなの初めて見ました」
 しみじみと職人の作品を眺め、セレマはその仕組みについて聞く。そういう態度をとられればつい口が軽くなってしまうというもの。
「で、あんたたちはどっちなんだ?」
 リュグナーは首を横に振った。
「生憎、我はまだこの町に詳しくなくてな……貴様の言うハンフリー派について教えて貰えるだろうか。それが素晴らしいモノなら、我も貴様側に属する可能性もあるやも知れぬぞ」
「むぅ……」
「貴様の対立派の者が何か仕掛けてきている可能性も有り得るだろう。最近、人の行動や町の変化等、何か変わったことは無かったか?」
「あいつらが一方的に……」
「本当に?」
 リュグナーは相手をまっすぐに見つめる。
 ハンフリー派は考え込んだ。

「さきほどはハンフリーに会ったそうじゃないか」
「あくまで学者ですから」
 セレマは、次にアーチボルトの代表を訪ねていた。
 この町の歴史を教書にまとめることで「皆に街を知ってもらう」。それが、この麗しい少年の目的なのだという。
「アイツらが悪いことは分かり切ってると思うけどな」
「それも含めて、知ってもらうことが必要です。ボクたちはこの町で起きていることの背景を知る必要があります」
 一歩も引かない。そして、輝かんばかりの笑顔。この少年は、見かけによらずしたたかだ。自分の考えをしっかりと述べる。そして……どちらの味方でもない。
「よそ者のくせに、もうそんなところまで突き止めたのか」
「はい」
 ただの見た目が美しいだけの少年ではないようだ。資料館の館長は舌を巻いた。

●酒場での語らい
 鈴音はモンローウォークで町を闊歩する。
 しゃなりしゃなりと肩で風を切って歩く。
 アーチボルト派は眉をひそめるが、どうしてもスタイルの良い尻を見ずにはいられない。
「ハンフリーのお兄さん、なんか良イ場所ナイ?」
 一つの酒場にたどり着いた。
 ちょうど、シュバルツがいた。
「お兄さん、その装備どこで手に入れたんだい」
「ああ、これは」
 シュバルツは黒蝶真珠の来歴を語る。
「新しい武器、防具はやっぱり流行りがあるぜ。闇市に行ったことはあるか?」
 不意に、一人が大あくびをする。
「寝不足か?」

 鈴音は飾ってあった弦楽器を手に取る。一曲歌ってくれと乞われ、即興で差し出された品物を称賛する。帽子ブラシに、不思議な細工のビールサーバー。
「これ、どういう仕組みなんだ?」
 サイズは不思議な時計をひっくり返した。
「バラしてもいいぜ、戻せるんなら」
 酒場の主人からの挑戦状。……楽勝だ。
 鈴音が町の製品の匠さを歌えば一気に大盛り上がり。あちらこちらから酒、食べ物、おっと小さな細工品まで集まった。どこから来たのと問われれば、うまい具合にはぐらかす。
(謎とミステリアスな恋多き乙女よっ)
「うるさい」
 シュバルツといた、アーチボルトの人間がガタンと席を立った。ハンフリー派が怒鳴りつける。そこへ、サイズは割って入る。
「別に肩入れするわけじゃない。喧嘩して万が一職人としての腕を怪我したら大変だろ?」
 そういわれては悪い気はしない。
「みんな、最近イラついているんだ」
「えー、何々?」
 鈴音はずいと身を乗り出した。
「どんなカンジ?」
 鈴音は男の胸に手を当てる。どぎまぎした男は非常に怪しい空気になった。
「お姉さんに話してみ?」
「なんか変な音が聞こえて、頭痛がひどくて……」
「起きる時間帯はある? サイレンとかなる感じデスカァ?」
「例えば壊れた音声機械とかないのか?」
「えっーと……」

●知識を武器に
「私は研究者ではあるが、何よりも事実を重視し、その解析を行うのが仕事でな」
 シグは知識を求め、知識を好む。
「商人にとって、時間は金である。延々と浪費し続けるべき物ではないと思うのだがな」
「アイツらがケンカを売ってくるんだ」
「どのように?」
「さっきも似たようなことを聞かれたがなぁ……」
 シグは一つ一つ、主観を排除し、事実だけを抽出していく。その姿勢にいつのまにか魅せられていた。
「……ふむ。相手側が先に手を出してきたのは事実か。では、それに至るきっかけについては何か思い当る物はあるだろうか?」
 町を二つに分ける、「確執」。
「純粋な感情による争論ならば、今に始まった事でもあるまい。何故『今になって』かね?」
「あんた、さっきから聞いてれば」
 激昂する男に、シグはひるまずに問い詰める。
「ふむ。……私は事実を述べているだけなのだが、何故にそのように怒る必要がある?」
「それは……」
 シグは相手を観察した。
「……寝不足が人の怒りの一端である、とは聞く。お前さん、夜は眠れているかね?」
 いつから?
 町人たちは考え込んだ。

●仲介者
(まぁ、さほど有名ではない実家なのですが、多少は役に立つはずですー)
 読みの通り、メリルナートは恭しくアーチボルトの屋敷に通される。
 貴族の紹介状が珍しいのか、相手は鼻高々である。
「今日はどのようなご用件で?」
「商品の開拓ですわー」
 商売の話と聞くや、目を輝かせる。
 ところで、と切り出す。
「なにか、変わったことはありませんでしたかー?」
 許可を得て、メリルナートは街の広間に馬車を止める。ちょうど、町の中心の位置。
 簡単な屋台だ。
(これで怪しまれづらいですわー)
 シュバルツとシグがやってくる。
「寝不足の人間が多いらしいな」
「それが、怒りを呼び起こしているのかもしれない」
 鈴音が、静かに佇んでいた。
 木鶏だ。手招きされ、宿に入っていく。

●真犯人
 イレギュラーズたちは、宿屋に集まっていた。

 両家の対立が特に激化表面化したのはいつ頃か、同時期に何か変化は無かったか。
 イレギュラーズたちの意見は一致した。
 街の雰囲気がピリピリして、ストレスを感じやすくなった時期。
(当たりなのだわ!)
「「放送用スピーカー」が改修工事の際、何者かによって改造された可能性がある」
 サイズが言った。
 改修工事の時期と争いが拡大した時期はぴったりと一致していた。
「街のスピーカーについて聞いてきたよ」
 セレマは資料を振った。この工事について、不思議なことにどちらも把握していないのだ。セレマに続いて、シグが続ける。
「どちらも相手がやったものと思っているのだ」
「『中立』の人たちに話を聞いたんだ」
「もし以前と同じラジオのノイズが原因ならば――」
 リュグナーは『騒音の破片』を取り出した。

 イレギュラーズは、広場にやってきた。
「拘留されてる仲間が心配ダヨネ。声が小さいと聞いてもらえないもんさ。なんか広場で拡声器あったけどアレつかえんの?」
 鈴音が探りを入れる。
「何をする気だ?」
「仲間解放を叫んでみたらどうかな?」
 さりげなく近寄っていく。
「あ、おい」
「あたりだ」
 リュグナーの騒音の破片が震えだす。
「しかしあれは……」
「ほう? 貴様の対立派の者がコレに何か仕込んだ可能性も無くは無いのだが、止めるという事は貴様の派か?」
 リュグナーは、相手を挑発する。
「そんなバカな」
「俺たちも違うぞ」
「そう、この者たちではない」
 不審な動きをしていた第三者。
 どちらでもない。ここに敵はいないのだ。
「先祖代々続く軋轢だ。そんな簡単に解決出来るようなモンじゃねぇのは分かるさ。でもよ、この先もずっと、終わりのない争いを続けるのか?」
 シュバルツは立ちはだかる。
「もしもお前らがこの争いを収めたいってなら……ハンフリーの奴らをいきなり信じろとは言わねぇさ。まずは俺らを、イレギュラーズを信じてくれねぇか?」
「……わかった……」
「アタシ、こーみえても練達製品のテレビもっててさ、調子悪いときは空手チョップで叩けばなおるんだよね。コイツもいけんじゃネ?」
「そんな適当な」
 多少のチョップでは反応しない。
 サイズはスピーカーに触れる。
「ここだ」
 新しく据え付けられたパーツを指す。

 ぐわりと大きな音が響き渡った。

●対決
「下がってろ」
 サイズが素早く飛び出した。
 不吉な声の圧を潜り抜ける。鍛冶妖精のブラットギフト。複製された青い鎖が、相手に思い切り巻き付いた。
 一度は相手が払ったが、もう一度。素早い連撃。決まった。
「よし……」
 狙うべきは分かっている。あのパーツ。ただの拡声器には本来は不要なはずのパーツ。
「気をしっかりと持つのだわ」
【……か】
 スピーカーのノイズがはっきりとした言葉を帯びた。
【何もかも平凡で一人で戦えもしない、足を引っ張っているとは思わないか?】
 華蓮はぎりと唇を噛んだ。白梟の誇りは、誰にも覆すことができない。
「五月蝿いのだわっ! レオンさんが声をかけてくれる、仕事を任せてくれる、誉めてくれる。これに勝る証明があるものですか!」
 自分の役割は、仲間を助けること。怒りに任せて力を振るうここではない。
 神子饗宴を行う鈴音に、華蓮が天使の歌を歌う。
「イカれた拡声器に負ける訳にはいかないね」
 鈴音の式符・毒蛇が拡声器に噛みついた。
「ノイズの混乱? アタシ心配しないので!」
 素早く散開したメリルナート。哀切のソネットが響き渡る。
 美しく静かな歌声だ。人魚の歌声。小さくありながら、張り裂けるようなノイズとは対照的に、敵を捕らえて届く。
【婚約者を告発したのは、自分に咎が及ぶのを恐れたためではなかったか?】
 ささやき声。
 凍り付くように、動きが、止まる。
 しかし、それは数拍に過ぎない。
 止まるな。
 氷水晶の騎槍旗を頭に打ち付ける。意識がはっきりする。
――うるせぇよ俺と彼奴の関係に口を出すんじゃねぇ。
 歌姫の誓いを、胸に。手を組み、なおも歌った。
 シュバルツの影が変形する。縦に延び、刃となる。
 黒影刃[血蛭]。恐ろしく鋭い斬撃がコードをちぎった。
 悲鳴のようなノイズ。胸元に垂れ下がる逆十字のペンダントが揺れた。『死を齎す黒刃』……彼がそう評されるのも頷ける。
【ソイツラハ、仲間、ト言エルノカ?】
「無論、私の周りの者は『仲間』ではない。……単にお前さんを破壊するという共同の目的を持った協力者ではある」
 スピーカーのノイズを、シグはせせら笑う。
 ブレイクフィアー。その程度の唆しなど、戯れにもならない。
「残念ながらお前さんのその問いかけは、扇動者としては二流……いや、三流か。何ら利をちらつかせずに煽るだけで、何故人が真に動いてくれると思うかね?」
【周りは嘘つき、すぐ裏切る。良い顔をしているのは今だけ】
「……黙れ。今は、目の前の依頼の完全遂行が最優先だ」
 リュグナーの放ったソウルストライクは、まっすぐに敵を貫いた。
「下がっていてください」
 セレマのバリア・システムが町人への攻撃をはじいた。子供らしいあどけなさは消え去り、どこか慣れ切った表情をしている。
 身体を引いて踵を鳴らし、死霊弓で魔力を束ねる。
 優雅に。汗をかくのは自分の仕事ではない。だから遠くから、これが自分のポジションだ。
 一撃。

 リュグナーの影が不自然に膨らむ。
 アガレスの閉鎖。それは地獄の大侯爵の力。黒く半透明な鎖が、そして、同時に赤黒いボティスの蛇影が、スピーカーの声を止める。
 影に重なるように、シュバルツの影が交差する。黒い影がリュグナーの攻撃と重なり、打ち砕く。
 鈴音は超分析で相手の技を理解し、打ち破った。
「不安を煽ってきても動けない格下の呪物の言うことに耳を貸す必要はない」
 メタルウィル。妖精の血で染まった金属の鎌に宿った意志。歩んできた記憶。サイズは意味をなさない罵りとなったノイズを切り捨てる。
 外装が、剥がれ落ちていく。
 メリルナートは歌唱を止めた。終奏の艶華、零れ落ちた血の氷の槍。一撃、氷の華が咲いた。
「はい」
 セレマのSPDが降り注ぎ、傷を癒す。
 舞台は整った。
 シグの身体が浮き上がる。足先から剣に姿を変え、注ぎ込まれる願い。相手の破壊を願い……。
  異想狂論「流星滅望剣」。
(武器か)
「知識」を司る魔剣「ローデッド」。サイズはシグの中に自分と似たものを見る。
 爆発するようにスピーカーは膨れ上がり、断末魔を奏でた。

●修繕への第一歩
 かくして、拡声器は動かなくなった。
「終わったのか」
「まだだ」
 サイズは必要なパーツを換装する。
「怪しいパーツは取り外して、機械パーツに変える」
 目の前で職人技を見せられては、だまってはいられない。ハンフリーが手を貸した。
「パーツが足りない」
「これはもう作られていない」
「探せばあるんじゃないか?」
 サイズが商人を見やる。調達くらいはできるだろう?
(ああ、これこそが……)
 華蓮は微笑んだ。
 二者が協力し、直っていく。
 広場には、新たな拡声器が据え付けられる。……両者の手によって。
「ノイズが消えたんだからロケットに専念してね(はぁと」
 鈴音が微笑んだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108) [重傷]
氷雪の歌姫

あとがき

推理&サーチ&デストロイ!
正体の分からない敵との戦い、お疲れ様でした!
争いのもととなったスピーカーは破壊され、そればかりか、新しい象徴として生まれ変わり、今度こそ両者はともに歩んでいけるかもしれません。
時間はかかるかもしれませんが、それでも明らかに第一歩です。
ご縁がありましたら、また一緒に冒険いたしましょうね!

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