PandoraPartyProject

シナリオ詳細

猫缶強奪大作戦!!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●この世に愛のある限り
 秋も深まった頃となると木々の緑の中に紅葉の其れが混じ入り始めるもので、それは計算して並べ立てられた街路樹の類であっても例外ではなかった。
 景観、環境整備、そのような名目で植えられたそれらは自然のものと呼ぶには違和感があったが、木々そのものに罪はない。命の残り火のように赤く色づいていく様は街行く人々の視線を止めるには十分であるようだ。
 それはここ、練達の工業区画でも同じである。人はパンのみにて生くるにあらずとはどこの世界の誰の言葉だったか。何も、日がなベルトコンベアを眺めていればそれで人生を満足できるような変質者がいるわけではないのだ。
 …………いや、居るには居るか。
 商業区画で販売されていたフライドポテトを頬張りながら、少しだけこの世界という現実から目を離す。
 見上げた空は偶然にも雲ひとつなく、今日一日のこれからを祝福しているようにさえ感じられた。
 どこの工場も昼時であるのだろう。運搬機のエンジン音も聞こえず、少し肌寒くはあるが、のどかな時間である。
 なんとはなしに思いついて、ほう、と熱のこもった息を吐いて見たのだが、それは白くはならなかった。冬はもう少し先であるという証左だろう。ならばもう少しだけ、この静かな秋を満喫していたかった。
 しゃきーんしゃきーん。
 静かな秋終了。突如金属音と共に生産工場のシャッターに穴が空き、中から複数のフォークリフトが飛び出してきた。あの建物はたしか、猫缶の製造をやっていたはずだが。
「ふっ、またつまらぬものを切ってしまったぜ」
 走り去っていくフォークリフトの1台。その上にあぐらをかいて座る一匹の猫。
 手にした刀を鞘に戻しながら何かを呟いていたようにも見えたが、生憎と、フォークリフトが一目散に遠ざかっていってしまったせいで何を言っていたのか上手く聞き取れなかった。
 なんだったのだろう、あれは。
 思わずぽとりと落とした一本のポテト。ポイ捨ての罰金を受けてもたまらないとそれを拾おうとした矢先、穴の空いたシャッターからもうひとり飛び出してくる。
「畜生、やられた!」 
 つなぎを着た男だ。様子から見るに、工場の関係者なのだろう。
 こういう時、視線を向けているとろくな眼に合わない。とっととポテトを拾い上げて、その場を去ろうとしたのだが。
「おいアンタ!」
 遅かったらしい。こちらの姿を見て走り寄ってきたつなぎの男は、目の前で深く深く頭を下げた。
「アンタ腕が立ちそうだ、頼む! 今の見てただろう、盗られた猫缶を取り戻してくれないか!?」
 義を見てせざるもなんとやら。犯行現場を目撃していたのも事実だ。ため息をつきながら、容器を傾けて、残った少量のポテトを一気に平らげた。

GMコメント

皆様如何お過ごしでしょう、yakigoteです。
練達で猫缶が奪われました。
実行犯は数台のフォークリフトで猫缶が入ったコンテナを抱えて逃走中。今から走ればこれに追いつくことができるでしょう。
彼らに追いつき、猫缶を取り戻して下さい。

【エネミーデータ】
■猫ちゃんず
・フォークリフトに乗り込んだ二足歩行の猫達。どうやらブルーブラッドではなく、ウォーカーであるようだ。
・闇市で有り金使い果たして食うに困ったので工場を襲ったらしい。つまり今とってもお腹が空いている。
・はっきりと数えては居ないが、フォークリフトは4~5台だった。1台に頑張って乗っても3匹が限度だろう。
・ヘルメットと安全帯を装着した作業員姿のように見えた。頭部を守っているなら防御は高そうだ。

■『猫侍』鯵川 虎右衛門
・フォークリフトの上に乗っていた猫。三度笠をかぶり、道中合羽を羽織っている。虎を自称しているので、あんまりねこねこ言うと怒るかもしれない。
・鰹節以外は何でも切れると豪語する(豪語しているだけ)名刀『ニャン鉄剣』を持ち、天然ニシン流を使用するぞ。

◇天然ニシン流
・このスキルを持つ者の物理攻撃力と命中をなんかもうびっくりするほど上げる。
・代わりに、どのような行動でも【弱点】【防無】を持つ攻撃を行えない。

【シチュエーションデータ】
・昼間の練達。工業地区。

  • 猫缶強奪大作戦!!完了
  • GM名yakigote
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年11月18日 22時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

Lumilia=Sherwood(p3p000381)
渡鈴鳥
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
アイリス・アニェラ・クラリッサ(p3p002159)
傍らへ共に
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
白秘夜叉
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
イージア・フローウェン(p3p006080)
白き鳳焔に護られし紫晶竜
御天道・タント(p3p006204)
きらめけ!ぼくらの

リプレイ

●秋空とかいいからフォークリフトを追いかけろ
 正直なところ、始めは引き受けるつもりもなかった。強盗団の用心棒なんざごめんだ。それも、闇市で自分たちの食い扶持までスッたってんだから目も当てられねえ。だが、話を聞いてみると、どうやら闇市で一攫千金を狙うよう唆されたらしい。やめてくれ、そういう眼には弱いんだ。

 青い空、白い雲。のんきにそんなものを眺めていた昼下がりは一体何処へやら。急遽降って湧いたものとはいえ、依頼は依頼である。敵は鈍足とは言え車両持ち。そうなれば自ずと急いたものになり、方針の確認も道中でと、皆が走り始めていた。
「実に興味深い種族、お近づきになりたい子たちです」
 予め逃走ルートを定めた明確な犯行計画。ぱっと見、猫の姿をしていたが、混沌の獣種とはまた異なるようだった。
 一体何処の世界から来たのだろう、『白綾の音色』Lumilia=Sherwood(p3p000381)の好奇心は尽きない。
「ですが、今回残念ながら犯罪グループであり、捕らえられ、法によって裁かれなければなりません。本当に残念ですが、依頼を遂行するとしましょう」
「猫缶をゲットしておキャット様にもてるチャンス到来ですわね!」
 正確にはその猫を懲らしめて猫缶を返すお仕事だと思われるが、『祈る暴走特急』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)の中ではそういうことであるらしい。まあ、お礼に少量を分けてはくれるかもしれないが。
「チャンスを運んで来てくれたと思えば、ポテト&ビールタイムを邪魔されたことくらい何でもありませんわー!」
「食べ物の恨みは恐ろしいんだぞ〜。大事な食べ物を盗んじゃう悪い子達にはおしおきが必要かな〜?」
 年がら空腹に悩まされている『年中腹ペコ少女』アイリス・アニェラ・クラリッサ(p3p002159)からすれば、食料の強奪とは許すことの出来ない悪であるようだ。
 それを除いても、強盗は大罪である。理由があるにせよ、捕まえねばならない。
「頑張って奪い返さないとね〜。私も食べてみたいし〜」
 …………猫缶を?
「空腹のお猫様。空腹は、辛いものですね」
 生きるためだと言うならば、死ぬ間際まで追い詰められたのだと言うならば、強奪すらも肯定されるべきだろうか。難しい問題だが、『守護天鬼』鬼桜 雪之丞(p3p002312)の心配事はそれとは少々異なるようだ。
「しかし、猫缶は、いけません。お猫様の愛らしい手では、缶を開けられないのでは」
 おなか空いたのに缶が開けられなくてかりかりしてるとこ想像してみよう。
 よし、缶切りは持ったか?
「こんな所で、猫達による猫缶強盗に遭遇するとはな」
『五行絶影』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は憤慨していた。事情は知らない。しかしどのような事情であれ、あのような剣の腕前をただ奪うだけの行為に消費させてはいけないのだ。
 洗練された腕を持つならば、それ相応の振る舞いをせねばならぬ。あの猫にはその自覚が足りないようだった。
「これは、同じ猫として灸を据えてやらねば」
「もぉ、のどかな秋のひと時withビールとポテトを楽しんでいたのに!」
『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)は幸せな人生の瞬間を邪魔されたことに怒っているようだ。
「……って、これうちのツェリくん(愛猫)御用達のメーカーじゃない。つまりここで助ければお礼に猫缶がもらえる!」
 1割を期待して財布を拾うような行為だなぁ。
「あっタント様もいるじゃない」
 そういうわけで、喉の準備はよろしいか。
「オーッホッホッホッ! 空腹は確かに辛いもの……しかし、かといって強盗を許すわけには参りません! であれば、このわたくし!」
『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)がぱちんと指を鳴らすと、それでは皆さんご一緒に、
  \きらめけ!/
  \ぼくらの!/
\\\タント様!///
「――は、あなた方の前に立ち塞がりますわー!」
 ポースを決める。何処からともなく拍手が聞こえる。そしてフォークリフトは遠ざかっていく。
「……つっ立っていないで追いかけねばですわー!」
「一般的なフォークリフトだろうし、追える、よね……?」
『白き鳳焔に護られし紫晶竜』イージア・フローウェン(p3p006080)も他の仲間も前を向いて走っているが、フォークリフトの姿はまだ見えない。道を逸れてはいないかと確認しながらではあるものの、そろそろ不安にもなってくる。
 と。
 角を曲がったところで、姿が見えた。流石に、現場姿でフォークリフトに乗った猫の集団がそうそう何組もいることはないだろう。
 獲物を見定め、より強く舗装された地面を蹴った。

●フォークリフトの上で自称虎は
 結局、ため息交じりに引き受けうことになっちまった。金も期待できない相手だっていうのに、どうしてこんな連中が頼りに来るんだか。しかしこいつらは良いやつだ。博打で身銭を投げちまうような馬鹿どもだが、俺を虎だと信じてくれた。そうさ、俺は虎なのさ。

「いやに早ぇおつきだ」
 フォークリフトまでもう少し、そんな距離になると、車上から一体の影が見えた。
 三度笠をかぶり、道中合羽を羽織った猫である。これが、『猫侍』鯵川 虎右衛門であるのだろう。
「見逃しちゃあ、くれねえよな」
 虎右衛門は腰の刀に手をそえ、鯉口を切って構えをとった。
「ほいじゃ、お天道様が見ちゃいるが、いっちょ悪事といこうかい」

●その剣は眼にも映らぬ
 虎ってのは孤独なもんだ。孤高と言っても良い。だが、たまにはこうして、誰かに頼られるのも悪かねえや。

「うおおおーー!!!」
 フォークリフトと並走するヴァレーリヤ。にゃんだにゃんだと驚く猫を隣に、彼女はそれを取り出した。
「そ、それは……ねこじゃらし!!」
 そう、猫を惑わせる禁断のアイテムねこじゃらしである。
 特殊な精神鍛錬を積んでいなければその魅力に抗える猫は存在しないとされる魔道具だ。
 ふりふり、ふりふり。
 たしっ、たしっ。
 それは作業着を着た猫も例外ではない。振られたねこじゃらしに思わずフォークリフトを停車し、ねこじゃらしへとねこぱんち、ねこぱんち。
 さらにヴァレーリヤは一旦距離を取ると、小さな箱を地面においてまた猫じゃらしをふりふり、ふりふり。
「そ、それは……ちょうどいいサイズの箱!!」
 そう、猫がついつい入りたくなっちゃう禁断のアイテム丁度いいサイズの箱である。
「おーっほっほ、これぞ全ての猫を飲み込む非情の罠!分かっていても抗えない死の誘惑に震えなさい!」
 ヴァレーリヤは猫じゃらし片手にただの箱の前で勝ち誇った。

 アイリスもまた、フォークリフトを停めるべく猫の気を惹いていた。
「結構美味しいよ〜。食べてみたくはないかな〜?」
 用意したのは猫向きの加工食品だ。知性のある猫を通常の動物と同じ様に見ていいかは不明だが、猫缶を欲していたのだから、食べられるものにそう違いはないだろう。
 アイリスは自分の手のひらにある口でその一部を咀嚼してみせる。良い子は猫用の食事をお腹に入れないように。種族が違うと消化できるものも違うんだからな。
「あ、あれはなんニャ?」
「し、しらにゃい。猫缶じゃにゃい。でも、美味しそうにゃ」
 元々お腹が空いていて缶詰工場を狙ったのだ。目の前にご馳走を置かれて飛びつかぬはずもない。
 停車するフォークリフト。
 その視線はアイリスの手にある加工食品に向けられている。
 ふらふら、ふらふら。
 惑わされるようにゆっくりと近づいていく猫。アイリスが距離を取れば、猫たちもまたそれについていった。

「おいでませおいでませ。缶詰より、鮭は如何でしょう」
 雪之丞が用意したものは鮭の刺し身である。
「お、おさかにゃ!」
「そんにゃ、ほんもの!?」
 猫たちにとって、猫缶が平時に食べるコンビニ弁当なら、魚はボーナス時に食べに行く高級の焼肉店のようなもの。それも刺し身となればブルジョアの味であることは間違いなかった。あ、今限りなく適当なこと言ってます。
「おさしみ、おさしみ……」
「かゆ、うま……」
 それはさながらゾンビに如く。雪之丞が刺し身を乗せた皿を右にやれば視線は右に、左にやれば視線は左に。
 ふいー、ふいーっと、視線が釣られていく様が面白く、しばらく遊んでしまったが、その徐々に近づいていき、目の前に皿を置いた。
 夢中で刺し身にかぶりつく猫。美味しい美味しいと、咽び泣くようにしながらご馳走にありついている。
 その姿を見ていると、雪之丞の中で何かの欲求がふつふつと湧き上がり、口を開いた。
「叶うなら、その毛並みを少し――」

「あぶにゃい!!」
 急ブレーキ。と言ってもフォークリフトでそれほどの速度が出ているわけでもなく、心持ちキキーッて音がしたような気分にだけなって停車した。
「あぶにゃいのはそっちにゃ! なんで急に停めたにゃ!?」
「だって、だってあれが……」
「あ、あれは……マタタビ!!」
 そう、道端に落ちていたのはイージアが撒いたマタタビであった。猫を酔わせてしまうとされるアレである。こうして並べると、猫って純血の吸血鬼くらい弱点多いな。
「フォークリフトって資格免許要るって聞きましたがたぶん持ってませんよね!?」
 追いついたイージアが声を荒げると、流石の猫たちも臨戦態勢。ふしゃーっと構えて威嚇する。
 しかしマタタビがどうしても気になるのか、そっちをちらちら、ちらちら。
 まるで戦闘に集中できていないようで、あっさりとイージアの接近を許すと、その首根っこを掴み上げられてしまった。
「おのれ、にゃんという巧妙な罠を……」
「何にせよ窃盗罪と無免許運転ですよね」

「なんてぇざまだ。まあ腹減って盗っ人やろうってんだ、こんなもんかもなぁ」
 次々とフォークリフトを停車し、捕まっていく猫たちに、虎右衛門は大きなため息をついた。
「それでも用心棒を引き受けてやるって啖呵切っちまったんだ。先も見えてるが尻尾巻くわけにも――」
「そこのお侍さん!」
 頭を掻く虎右衛門に、アーリアが声をかけた。
 昼間だと言うのにアルコールが入っているのか、頬はほんのりと赤く、フォークリフトを追いかけていたため息も少し荒くなっている。種族の違う虎右衛門の目から見ても、それは思わず直視を憚られるほど色気があった。
「流石ねこ……虎さんねぇ、強いわぁ」
「い、いや、敵に褒められちまったってよ……」
 近づいてくるアーリアに、思わず眼を逸して答える虎右衛門。
「すごいわねぇその剣、なんでも切れちゃいそう」
「いや、その……」
「センスいいわよねぇ、切れないものなんてないでしょ?」
「お、おうよ。ニャン鉄剣は鰹節以外に切れねえものはねえのさ」
 ほう、それはいいことを聞いた。

 虎右衛門の真骨頂は、激烈なまでの剣速と豪腕である。
 一太刀一太刀が目視できぬほど素早く、また鉄をもあっさりと切り裂く程の威力を備えているのだ。
 こういう手合を相手にすると、チームの回復と補助を担当する者としては戦々恐々とせざるを得ない。ルミリアにしても同じことだった。
 味方の速度を上げてる詩曲を奏でても、圧倒的な剣閃への決定打には難しい。治療行為を行ってはいるものの、虎右衛門の剣をまともに受けてしまえば戦場からはさらざるを得ない。そこから復帰させることは叶うべくもなく、それだけの一撃必殺の威力を持った剣術は厄介だった。
 自身もまた、虎右衛門の立ち回りに巻きこまれぬよう間合いを計り続けている。舗装された道ですらあっさりと切り裂くその剛剣は、先から嫌というほど眼に染み付いていた。
 そんなとき、仲間から手渡しされるものがあった。なんだろうと目を向ければ、鰹節である。どうやら、敵の剣はこれを切れないらしい。よく持ってたなこんなの。

「そこのお猫! 三度笠のお猫! いっぱしのお猫として強盗なんて恥ずかしくないですの! お猫ならお猫らしく可愛さで勝負すべきですわー!」
「誰が猫でえ! こちとら虎だってんだ!!」
「……え? 虎? オーッホッホッホッ! こんなプリチ~な虎などおりませんわよ!」
「虎だっつってんだよ!!!」
 虎右衛門の剛剣を自由に振るわれては非常に厄介だと、タントは猫侍の気を惹きつける。
 正直、白兵距離で立ち回るタントにしても、虎右衛門の持つ刀身は見えていない。あまりに早すぎるために動体視力で追うことも敵わないためだ。
「強情なお猫ですわねー! まだ虎などと言いますの!?」
 なんとか受け、いなし、流してはいるものの、見えない背中で冷や汗が止まらない。虎右衛門の剣技は死の予感が近すぎるのだ。
 一歩踏み込まれる間合い。より近く、より速く。避けることの叶わぬ最速の居合。
 それを見た誰もがタントの胴が泣き別れになると予感した、しかし。
「またつまらぬものを……何!?」
「必殺! 鰹節バリヤー!」

「まだだ、鰹節があるからって退いたんんじゃ、虎のメンツも潰れちまうってもんよ!」
 虎右衛門の剣は鰹節を切ることが出来ない。致命的な弱点とも言えるが、しかしそれ以外は切れるのだ。身を翻し遊撃的に動こうとした虎右衛門の前に、汰磨羈が立ち塞がる。
「あくまで虎というか。ならば!」
 汰磨羈の両手にオーラが集まっていく。右手に肉球のオーラを。そして、左手にも肉球のオーラを。なんかこう属性合体みたいなことはしない。どっちも肉球オーラで倍々的に効果を高め合うのだ。
 猛烈な勢いで溜まっていくエネルギー。これを最後の勝負と見たのだろう。虎右衛門は抜き放っていた剣を鞘に収めると、鯉口を切った姿勢のまま汰磨羈へと吶喊する。
「鰹節以外、切れねえものはねえんだよ」
「この一撃で、猫の力と誇りを思い出すがいい」
 巨大な肉球圧力。そのぷにぷに感と神速の剣がぶつかり合う。
「いざ――」
「――尋常に!!」
「天然ニシン流――影星」
「奥義――肉球嵐!!!」

●どこ吹く風
 お勤め終えたらよ、また気まぐれにどっかいくかね。なあに、気ままなもんさ。

 捕まえた猫たちが警邏の者にしょっぴかれていく。
 彼らはあまり悲壮な顔をしてはいなかった。なんだかんだ、イレギュラーズ達がご飯をくれたのもあるし、あと運良く用意されていた鰹節ももらってお腹がいっぱいになれたのだ。
 空腹で困らなければ、彼らもまた罪を犯すことはないだろう。
 缶詰工場の業者に感謝され、お礼にと報酬とは別に猫缶をいくつか頂いた。
 さて、それじゃあ散歩をやり直そう。
 まずは、ポテトの屋台を見つけるところから。

 了。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

おなかもふもふさせてくれたらしい。

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