PandoraPartyProject

シナリオ詳細

いたぞ!! カボチャだ!!!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●追えー!!!

 その地域ではしばしば、こんな光景が見られると言う。

「どこ行きやがった!」
「くそ、逃げ足の速い奴め」
「絶対になんとしても捕まえるぞ!」
 おお!!! と野太い声が上がる。誰も彼もがやる気に燃えていた。その前をぴこぴこ横断するオレンジ頭に一同の視線が向く。
「……」
 ぴこぴこ。
「…………」
 ぴこぴこぴこぴこ……あっ向こう行った。
「……いたぞ! 追えー!!!」
 数拍遅れで追いかけ始めた男たちは追いつき拳を振り抜く。だがどこか可愛らしい動きで移動していたそれらは、姿に見合わぬ機敏な動きでひょいひょいと避けていった。
「この! この!」
「この鉄帝で逃げに逃げるとは情けないぞ!」
「くそ、当たらねー!!」
 鉄帝人の屈強な攻撃も、当たらなければ何ともない。ぴょこぴょこ跳ねるオレンジ頭が、楽しそうに笑みを浮かべた。

●I’ll trick you.
「これは?」
「ブラウが持ってきた依頼書。……大変らしいよ、この時期」
 テーブルに置かれていた羊皮紙を拾い上げる『焔の因子』フレイムタン(p3n000068)。その問いに答えた『Blue Rose』シャルル(p3n000032)が小さく肩を竦める。そして彼らの会話に思わず足を止めたあなたたち──イレギュラーズに気づくと、彼女は視線で依頼書を見るよう促した。
「鉄帝で出るお化け退治。アンタたちも興味があるなら見てみるといい」
 どれどれと近づくと、フレイムタンが全員に見えるよう羊皮紙を向ける。そこに書かれているのはいかにもこの時期らしいモンスターの情報だった。
「カボチャを頭に見立てて、目と鼻と口をくり抜いたような姿だそうだ。無害ではあるが、倒すと良い装飾になるのだ、と」
 何に対しての装飾か──なんて、言わずともわかるだろう。
「……ん? それ、無害なのに倒すんだ。てっきり何か被害が出ているのかと思ったんだけど」
「いや、……特にそのような内容はないな。飾りに使用したいがための依頼だろう」
 フレイムタンが依頼書をもう1度見返して、ゆるく頭を振る。ふぅんとシャルルは呟いた。
「ま、依頼は依頼だし。折角だから終わった後に装飾も手伝ってくれば? そこの──興味ありそうなフレイムタンも一緒に、さ」
「む、」
 名指しされたフレイムタンは彼女を見て目を瞬かせる。そして小さく咳ばらいをすると「……同行しよう」とイレギュラーズたちに告げた。

GMコメント

●成功条件
 お化けカボチャを20体倒し、回収する

●情報制度
 このシナリオの情報制度はBです。
 ここに書かれていることに嘘はありませんが、カボチャは猫のように気まぐれです。

●フィールド
 鉄帝市街。大通りがいくつかあるほか、縦横に細い通りがあります。
 天気は良好。隠れようと思えば人1人隠れられる場所はちらほら見受けられますが、その近くをお化けカボチャが通るとは限りません。

●お化けカボチャ×たくさん
 ハロウィンに置かれる装飾のようなモンスターです。
 中身は空洞で、目と鼻と口がくり抜かれています。壊さず倒せば装飾として使用可能です。不殺などで倒すとよいかと思います。
 ぴょこぴょこ飛び跳ねながら移動しますが、その動きに見合わず回避がとても高いです。ちなみにOP中では隠れようとして隠れているのではなく、ただ鉄帝人が見失っているだけです。
 敵意を感じると攻撃してきます。そんなに痛くありませんが、とてもいっぱいいます。どこから現れているのかわかりません。大小様々ですが、押し潰されないよう気を付けてください。
 尚、少なくとも日中は見かけるという証言を得ています。

●依頼が成功したそのあとは。
 町への飾りつけを手伝えます。回収したお化けカボチャを設置する他、何か案があればプレイングに記載してください。
 ただし、あくまでも依頼が成功することを前提としています。失敗しないよう、全力で依頼に取り組んでください。

●友軍
『焔の因子』フレイムタン
 ローレットに所属するグリムアザースの青年。そこそこ戦えます。
 プレイングにて指定があった場合、無理のない範囲であれば希望に沿う形で動くこととなります。

●ご挨拶
 愁と申します。皆様今月の準備はよろしいですか?
 カボチャは天ぷらにして塩をかけて食べるのが大好きです。このカボチャたちも、飾った後は美味しく頂かれることでしょう。
 ご縁がございましたら、よろしくお願い致します。

  • いたぞ!! カボチャだ!!!完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年11月14日 22時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
無敵鉄板暴牛
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
リナリナ(p3p006258)
仄 火燐(p3p007317)
メインヒロイン
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
レイクフォレスト・ラザ・エイフラム(p3p007656)
多分脱ニートした
桐神 きり(p3p007718)

リプレイ


「ふーむ。普通のカボチャではなく、わざわざモンスターを倒して用意するのか」
 鉄帝らしいといえばらしい、と『五行絶影』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は置かれていたカボチャの装飾をつつく。ちなみにこれは奇跡的に捕まえた1体目だそうだ。
 つんつん、つんつん。
 倒されたカボチャはうんともすんとも言わず、ただのカボチャ飾りとなって行儀よくその場に鎮座している。
 それを物珍しげに見ているのは『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)と『焔の因子』フレイムタン(p3n000068)の2人。精霊種の青年は焔に名を呼ばれて視線を向けた。
「こうやって一緒にお仕事するの初めてだよね、頑張ろうねフレイムタンくん!」
「ああ。よろしく頼む」
 小さく微笑んだフレイムタンが頷く。その傍ら、桐神 きり(p3p007718)はきょろ、と周囲を見渡して。
 よく見えるその視界に映るのは人、人、人。
「この時期になると、あちらこちらで忙しそうにしてますねー」
 沢山の人間が忙しなく行き交うのは日々の常。けれどよくよく見れば、ここぞとばかりに季節モノの商品を売りさばく商人や、それを買う住人たち。そして──。

 ──またいなくなったぞ!
 ──探せ! 何としても捕まえるんだ!

 人混みに紛れて、そんな声も聞こえてくる。イベントの差し迫った切迫感、と言うべきか。……もしかしたら、鉄帝人のプライドか何かが諦めさせないのかもしれないが。
(私もイベント事は大好きなんで、たまにはこういう事に貢献してみるのも良さそうです)
 この時自分はこんな準備をしたのだ、と思いながら楽しむのもまた一味違った面白さがあるだろう。
「こんな時こそイレギュラーズの出番! 町の皆様のファントムナイトの為にも全力で参りましょう!」
 『無敵鉄砲暴象』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)がやる気に満ちた声で、そしてわくわくした表情でぎゅっと両の拳を握る。
 でも、とその言葉に続いた『虹を齧って歩こう』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)はうーん、と首を傾げてみせた。
「毎年のことなのに特に傾向と対策とかないのかな……」
 今年も、去年も、その前も。ああやってただ追いかけ回しているのは成長が見られない、というか──いや。
(これもまた1つのお祭り騒ぎってことですかね?)
 そういうことなら話は別だ、とウィズィは不敵な笑みを浮かべた。カボチャに負けるわけにはいかない。何としても捕獲し、装飾になってもらおうではないか!
「でも、特に悪い事をしたり迷惑をかけてるわけじゃないのに倒さなくちゃいけないのって、ちょっとやりにくいよね……」
 焔が眉尻を下げて呟く。そこに込められているのは少しばかりの罪悪感。
 そう、カボチャはただ生きているだけである。生き ているだけでヒトに捕まり、倒され、装飾にされるのだ。
「仕方ないさ。受けた以上、俺たちはこの仕事を達成しなきゃならないんだろう?」
 そう告げるのは街中では異質な──イレギュラーズの中にあればそれほどでもないが──仮面をつけた男。レイクフォレスト・ラザ・エイフラム(p3p007656)である。
「無辜の南瓜君、許したまえよ」
 これから狩られるであろうカボチャたちに許しを請うレイクフォレスト。そう、このオーダーは必ずクリアしなければならない。だって──。
(俺はこの初仕事を機に脱ニートするのだよ)
 空中庭園へ召喚され、森を出てしまった以上ニートではいられない。いられないなら働くしかない、のである。
「アレ、八口(はちぐち)ウィーンの装飾的存在! いっぱい捕まえる!!」
 『おにくにくにく』リナリナ(p3p006258)がやる気に満ちた顔で頷く。まずはすべきことの再確認が大事だ。
「頭部のカボチャ部分、壊さないよう狩る! 今回のお仕事、コレでOK?」
「ハイ! 大丈夫ですよ!」
 リュカシスがにっこり笑い、リナリナがむんっと気合いを入れる。やることがわかっていれば、あとは為すのみだ。

 そんなわけで。
「よっし、手早く回収しちゃいますよー!」
 えい、えい、おー!
 ウィズィの掛け声とともに、いくつもの拳が空へ突き上げられた。




「フレイムタンくん、精霊さんたちに聞き込みするの手伝ってくれないかな?」
 焔の言葉に、もちろん否やの返事はなく。ならば道を行きかう者へ聞き込みをしようと名乗り上げたのは汰磨羈とレイクフォレスト、ウィズィ、そして『メインヒロイン』仄 火燐(p3p007317)だ。
 人々から情報を集めつつ、汰磨羈はふぅむと頤に手を当てる。
 結果として、人からは予想以上に情報があった。なんというか、どこにでもいそうなレベルで情報が集まった。ではその情報はというと。
「トリックオアトリートならぬ、トリックアンドトリックだな。いや、向こうに悪戯をしている気はないのだろうが」

 突然カボチャが降って湧いた。
 カボチャにびっくりして逃げたら大群で追い掛け回された。
 カツラをカボチャに盗まれた。
 でも追いかけたらひたすら逃げるし攻撃は躱されて疲れた。超疲れた。
 等々。

 つまるところ、比較的会えるし会ったら悪戯されるということになる。この場所で見つからないのは、比較的人の通りが多いからか。
「植物たちはよくわからないようだな。なら、高所から探してみるか」
 自然会話で受け取った情報は『オレンジ沢山、よく通る』といった内容で。通り過ぎてどちらへ行ったのかわからない、ということらしい。
 レイクフォレストは個性的な鳴き声を上げるマンモスの上に乗り、周囲を見回す。ここなら比較的色々なものが見えるから、あとは移動に気を付ければ大丈夫だろう。
 そこへ──大きな、とても大きな、声。
「通りまぁああああす!!!!」
 真白な毛並みが靡く、優美な牝馬が道を駆ける。その上で声を上げているのはウィズィであった。カボチャをいち早く見つけんと走り回りながらウィズィは情報収集も共に行う。
「カボチャ知りませんかカボチャ!」
「あっちで見たよー」
「あっち!? ありがとーございまっす!」
「悪戯されないよう気を付けて!」
 あっという間に走り去っていったウィズィ。彼女の起こした風が遅れてふわりとやってきた。あまりの速さに誰もがぽかんと口を開ける他なく。
「……あ、どうだった?」
 はっと我に返った焔がフレイムタンに聞くと、彼は何とも言えぬ表情を浮かべた。
「よく見る、とは言うが……どこへ行っても、見つけられると」
「ああ、やっぱりそうなんだ」
 その口調は『こっちも同じだよ』と言いたげだ。
 伝承などがあるのだろうかと聞き込みをしていた火燐は残念そうに小さくため息を漏らす。まったくもってそんなものはなく、いきなりこの季節にだけ湧きだしたのだそう。
 よって、あのカボチャたちがどこからやってきたのか。誰が中身をくり抜いてしまったのか。夜はどこにいるのかなど、全てが未知である。。
(何を食べるかもわからない、ってことだけど……多分、食べないんだよね?)
 いや、あながちそうとは言い切れない。だってここに、いそいそと準備している者がいるのだから──。

「さて。この辺りなら良いでしょうか」
 カボチャを追いかけるためには、まず目標を探し出さねばならない。
 きりは高い場所から街を見下ろす。道を行きかう人々も、何やら追い掛け回している屈強な男たちも、そして此度依頼を共にした仲間たちもよく見えた。その輪郭に重なってぼんやりと見える体温は、季節にしては暖かな日差しによってちょっと高めだ──なんて思っているところで、1人がなにやら蹲っている様子が見える。具合が悪いわけではなさそうだが。
「……色々出してます、ね?」
 何をしているのだろう──きりにそう思わせたのはリュカシスだった。
 もちろん何も考えていないわけではなく、むしろ沢山考えてきた。お化けカボチャの生態を調べた彼の作戦はと言えば。
「これで引っかかってくれると良いのですが」
 じゃん、と広げたのは甘いお菓子にホットミルク、ペットフード、玩具のお化けカボチャ。全てはお化けカボチャが興味を持つだろうかと持ってきた品である。
 ではそれをどうするのかと言うと、細い道の入り口に設置する。そして近くに呼び出したファミリアーの小鳥も待機させる。
「ここで待っていてくださいネ」
 リュカシスの言葉にピチチ、と鳴く小鳥。あとはひたすら待つのみであった。
「あ、ボクもカボチャ持ってきたんだ。顔を彫って置いてみていいかな?」
「ハイ、もちろん!」
 焔とリュカシスの言葉が聞こえるわけではないけれど、その行動からああ罠か、と理解したきりは視線を別の場所へ移す。そこにはリナリナと──追いかけられるカボチャたちの影。
「あ、いた」
 皆にも知らせねば──きりは仲間たちの元へと駆けて行った。

「カボカボ、素早い! ただ追う、コレダメ!」
 むぅ、とリナリナは口を尖らせていた。
 カボチャたちを発見したリナリナは捕獲のために近づいた──のだが、一定以上近づくと一斉にバラけて逃げられてしまう。それは隙間に逃げ込んだり、高い屋根へ上ったり。そうしてリナリナの手が届かぬ場所で、彼女をじっと見ているのだ。
 かといって、彼らへ遠くから攻撃するのも1人では悪手となる。一斉に向かってこられては捕まえるどころではない。
 ──というわけで、リナリナは考えた。それはもう、考えた。
 物陰に潜み、即席ストローとシャボン液でシャボン玉を飛ばす。猫のように気まぐれで、沢山悪戯をするカボチャたちならばきっと──。
(きた! きた!)
 ぴょこぴょこするカボチャたちが気づき、シャボン玉へ近づく。距離を見計らったリナリナはカボチャめがけて襲い掛かった。
 不意打ちの攻撃に転がるカボチャ。無事に1体だけ釣ることができ、倒すこともできた。
「おー、カボカボの好奇心を刺激して近寄らせる! コレいける! いっぱい捕まえるゾッ!」
 ストロー片手に拳を振り上げるリナリナ。けれど──ちょっぴり思うのは。
(リナリナ、最後にデカいボスカボチャ出て来る気がする!)
 そんな敵の影であった。

 さて、各々の情報収集の甲斐もあって──少しずつ、カボチャを追いかけるイレギュラーズの姿が見え始めた。
(明るいうちにカタを付けましょう!)
 夜は出てこないかもしれないと懸念するリュカシス。お菓子に興味を示したカボチャをファミリアーの視界越しに捕らえ、仲間にも知らせる。
「うおおおー! 待て待て待てーー!!!」
 追いかけるリュカシス、気づくカボチャ。きりが後ろから彼へバラードを奏でて支援する。逃走劇には飽きが入らないよう、それとなく罠を設置した道へ追い込んでいく。徐々に距離が近づき、攻撃も届くというころにくるりとカボチャが2人の方を向いた。その後ろからやってきたのは大量のカボチャ。そして──。
「見つけたぁああ!!今すぐとっちめてやるぅうう!!」
 街を駆けまわっていたウィズィだった。その強き眼光がカボチャたちを竦ませんとそのオレンジを捕らえる。
 さらには合流した火燐の名乗り口上と──嗚呼、きっと彼女には狙われやすい何かがあるのだろう。カボチャたちが一斉に火燐を押しつぶさんと襲い掛かる。
 カボチャの素早さと数がモノを言うか、それともイレギュラーズの猛攻がこの場を制するかの戦いだ。
 一方、ここにいないメンバーもまた。
「すまない、俺は1人で南瓜と戦うのが怖い。助けてくれ」
 真顔で──仮面で見えないけれど──汰磨羈へ助けを求めるレイクフォレスト。多勢に無勢なので正解だろう。
 任せろ、と汰磨羈は鋭い眼光と共に声を張り上げた。
「逃げてばかりの腰抜けカボチャめ。中身が空っぽなら、度胸もスカスカか!」
 この言葉にはカボチャも反応した。一斉に汰磨羈を向き、襲いにかかる。それはレイクフォレストの煽りなど必要ないほどで、ならばと不殺を心掛けた威嚇術でカボチャを狙う。
「いた!」
 そこへ現れた焔は、交戦の様子を見ると組技で加勢にかかる──が。
(うぅ、やっぱり何とかならないかな)
 飾りにするためだけに倒すなんて、という葛藤があった焔。ダメ元でカボチャたちへと語りかける──この季節だけの飾り係として働いてもらえないか、と。その交渉が成立するのなら、来年以降も楽になるかもしれない。
 くるりと焔を見たカボチャは、しかしケラケラと笑いを浮かべ。焔の元へ跳ねてくるとその頭に飛び乗った。
「!?」
 わっしゃわっしゃと焔の髪を乱し、嬉々として飛び降りるカボチャ。──交渉決裂、である。
「大丈夫か?」
「うん! こうなったら仕方ない、ちゃんと倒して連れて行こう!」


 ──数刻の間、悲鳴に怒号と町はひどく賑やかで。その後には20体のカボチャと、疲れた顔のイレギュラーズがそこにいた。



 汰磨羈が1つずつカボチャの丁寧に汚れをぬぐい、脇へ置いていく。大小様々だから、かける時間もそれぞれだ。
「これを料理の器に加工するのも、面白そうだな?」
 なかなか斬新で、色鮮やかな器になることだろう。
 綺麗になったカボチャを拾い集め、あちこちへ届けるのは火燐。まずは大通りと広場から。
「はい、置いておくよ」
 カボチャの装飾を道の隅にごろごろ、と置いて息をつき。火燐はカボチャを抱えて次の場所へ。元の姿ならいざ知らず、今の身長では高い場所への飾り付けには関われない。
(もっと手伝えたら良かったんだけどね)
 今ないものを嘆いても仕方がない。できるところから──カボチャを運んで、終わったら低所の飾り付けだ。
「あそこの看板に吊り下げられますか?」
 きりが指差したのは宿屋と思しき看板。レイクフォレストは頷いてカボチャを受け取る。相変わらず個性的な鳴き声を上げるマンモスの上に乗ると、レイクフォレストは看板にカボチャをそっと被せた。
(南瓜よ、人々の楽しい思い出の一部となるのだ)
 来たるファントムナイトに想いを馳せて。マンモスから降りると、飾り付けのカボチャをまた興味深げに眺めるフレイムタンの姿。
「フレイムタンくん、南瓜は好きかい?」
「む。……そうだな。嫌いではない」
 しみじみと自らの手元を見たフレイムタンに、レイクフォレストは小さく笑みを浮かべる。──仮面で見えないが。
「俺は引き籠り中に母が作ってくれた、南瓜料理を思い出したよ」
 甘いカボチャ。煮ても焼いてもスープにしても美味しいけれど、あの味は家で母が作るからこその味。
 脱ニート前にほんの少しばかり、家に帰りたくなってきたかもしれない。いいや帰らないけれども。自ら生きていかなければ。
(こうして狩ったり食べたりして、俺達は生きるための栄養や金を貰っているわけだ)
 これまでしてこなかった行為は思う以上に大変だった。そして学んだ──常に感謝の精神、大事。
「フレイムタンくん、そこにそのカボチャを乗せられる?」
 焔からの言葉にフレイムタンは顔を上げ、指定された場所を見る。問題ない、と彼は腕を伸ばした。
「これでどうだ」
「うーんと……もう少し右かな?」
 遠くから配置を確認する彼女の声を背に、フレイムタンはカボチャの位置をずらす。
「それで大丈夫! ありがとう!」
「ああ。……それにしても、ここにいる人数が少なく思えるが」
 振り返ったフレイムタンは、ふと周りを見渡した。どう見ても一緒にやってきたイレギュラーズ全員ではない。
「他の人は広場に行ってるみたいだよ。ボクたちも行く? 飾りつけもいくつか見られるんじゃないかな!」
「ああ、そうしようか」
 そうして2人が赴く広場はと言えば。
 リュカシスがよいしょ、と大きなカボチャを持ち上げて地面へ置く。次は中ほどのものを。その次は小さいものを。
「……できました! カボチャタワー!」
 高らかな言葉とともに、周囲でたむろしていた子供たちがわっと騒ぐ。僕も私も、とあちこちで捕まえられたカボチャを持ち上げ始め、リナリナもうずうず。
「カボカボタワー、リナリナもつくるゾッ!」
 自分も乗せようと手ごろなカボチャを手に取ったウィズィは、不意にハッと手元を見下ろした。
 手ごろな、本当に『良いサイズ』といったカボチャ。倒すときに手加減を間違えたのか、底が抜けてしまっている。

 そう、囁かれた気がしたのだ──私を被って、と。

 すぽっと頭に被ればやはり丁度良いサイズ。ウィズィを見上げた子供たちが楽しそうに彼女を指差す。
「カボチャおばけだー!」
「にげろー!」
 こうなれば悪ノリしない理由がない。
 ふっふっふと笑い声を上げたウィズィは次の瞬間、子供たちへ襲いかかった。
「がおー! くそれずおばけだぞー!!」
「きゃー!」
「追いかけっこか? リナリナも走る! 走る!」
 悲鳴をあげ、楽しそうに逃げ惑う子供たち。リナリナがその勢いに飛び込んで一緒に逃げる。──ウィズィの言葉の意味を理解しているものは、おそらくいない。多分。きっと。


 こうして日もいよいよ暮れてきて。この季節のために用意された蝋燭がカボチャの中に設置され、灯される。
 ふわふわと光るカボチャ。町の住民は夕餉の支度と家へ帰って。

 ぴこぴこ、ぴこぴこぴこ。

 誰もいない道を、ボールのように跳ねながらオレンジ頭が進んでいく。そしてふと振り返って──にしし、と笑った。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした、イレギュラーズ。
 カボチャとわいわいする所も、カボチャでわいわいする所も、とても楽しく書かせて頂きました。皆様にも楽しんで頂けたら幸いです。

 また、最後に現れたオレンジ頭より──また来年遊んでね、だそうです。

 またのご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。

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