PandoraPartyProject

シナリオ詳細

Danse macabre

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●quartetto
「今回の依頼は、あまり気分が良いものではないかもしれないね」
 『黒猫の』ショウ(p3n000005)は小さく息を吐き、イレギュラーズへ資料を見せる。覗き込めば、それはある踊り子たちに関する内容だった。
「知っている人もいるのかな。彼女らは市井を中心に回りながら、踊りを披露しているんだ」
 幻想の有名人というほどではなくとも、町行く人々に聞けばそれなりに知っている。そんな彼女たちが今回のターゲットらしい。
「オーダーは彼女たちの『殺害』だ。それも、ただ殺すだけではいけないそうだよ」
 ショウがまた別の資料を見せる。それはこの依頼に関する詳細説明だ。
 依頼人は幻想のとある貴族。明確に誰それと書いてはいないが、おそらくそれなりの地位にいるのだろう。その下に書き綴られているのは──依頼人の『脚』に対する想い。
「いや、そこは読み飛ばしてくれて構わない。重要なのは依頼人がそれだけ脚に執着しているってことさ」
 今回の依頼で重要視されるべくは標的の『命』というよりは──『脚』だ。
「その依頼人は女性の脚を大変好んでいてね。彼女らの脚を綺麗なまま、手に入れたいそうだよ」
 最も、彼女ら自身も自衛手段を持っている。それが脚技となればやりにくいことこの上ない。それこそ私兵など使おうものなら傷つけかねないし、何より足がつく。
「ローレットならやれるだろうってさ。やれやれ、こちらとて大変出ないわけがないのにね」
 その苦労をするのは君たちだけれど、とショウは苦笑して。受けるのなら読むといい、と提示した資料をイレギュラーズの前へ押し出した。


●capriccio
 屋敷の、どこか。
 1人の貴族がアンティークの椅子に腰掛けて頬杖をついている。特に何をするわけでもなく、ただその空間に存在している。
 その貴族を取り囲むのは部屋の壁──ではなく、その前に並ぶ無数の脚。何かの薬品に付けられているのか、どの脚も綺麗なまま朽ちることなく保存されている。
 一般的に見ればたいそう悪趣味で、気分の悪くなるような部屋。けれど貴族にとっては最も安らぐ場所。
 つ、と貴族の視線がある場所へ向けられる。それは唯一足の置かれていない、壁の見える空間だ。

 ああ、もう直ぐだ。もう直ぐ、あそこが埋まる。

 にたりと笑った家族は、しかしすぐ表情を戻すと立ち上がった。何故なら、もう"普通"に戻る時間だから。ここを訪れるひと時は、普通である時間が積み重なるからこそ有るもの。
 つつがなく、何の疑問も抱かせず。ただの一貴族として振る舞う時間がやってくるのだ。

GMコメント

●注意事項
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、『幻想』における名声がマイナスされます。
 又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。

●成功条件
 標的の脚を傷つけず殺害する

●詳細
 夜間の襲撃です。
 ローレットの情報収集により、標的となる踊り子たちが泊まっている宿屋を突き止めています。
 宿屋の人間は買収されており、戦う間は別の場所に避難しています。

●ロケーション
 宿屋の中です。その日泊まっているのは標的の踊り子たちのみ。
 1F部分はフロントと食堂を兼ねており、早朝は清掃するため机や椅子を脇に寄せています。戦闘に支障はありません。
 2F部分は個室です。彼女らが思い思いに過ごしていますが、音は漏れやすく、外の音も聞こえやすいです。

●踊り子×6人
 人気の出始めた踊り子たち。どの踊り子も綺麗で滑らかな脚をしています。
 自衛手段として脚技に長けており、こちらが仕掛ければ応戦してくるでしょう。
 綺麗な脚は商売道具、出しているのは踊りの時のみ。それ以外の時は防具で覆い、傷つけぬようにしています。とはいえ、明確な意図を持って攻撃を加えれば傷が付くことでしょう。
 防御技術は低めですが、その生業ゆえか他のステータスはそこそこあります。特に命中と反応が高めです。また、連携的な動きも見せてくるようです。

●ご挨拶
 愁と申します。脚フェチの話を書くはずがどうしてこうなった。
 悪属性です。悪名が付くのでご注意ください。また、彼女らの脚に傷をつけたら殺しても失敗ですので、こちらもご注意ください。
 ちなみに防具はしていますが、ぴっちり素材なので足の線はバッチリ見えます。私はふくらはぎのラインと内太ももが特に好きです。
 ご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。

  • Danse macabre完了
  • GM名
  • 種別通常(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年10月24日 23時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)
同一奇譚
武器商人(p3p001107)
闇之雲
極楽院 ことほぎ(p3p002087)
悪しき魔女
ブーケ ガルニ(p3p002361)
兎身創痍
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
ジェック・アーロン(p3p004755)
冠位狙撃者
彼岸会 空観(p3p007169)
ピリム・リオト・エーディ(p3p007348)
復讐者

リプレイ

●闇を溶かしたような暗がりの中
 通りを1つ横切れば、そこはまだ明るく賑やかな酒場前だというのに──その宿屋が佇む通りは、酷く静かだった。いや、今日に限って静かにさせたのだ。
 暗がりに溶け込むように、宿屋の前へ集まるイレギュラーズたち。もちろん、泊まりに来たはずもない。面々の大半には何とも言い難い複雑な表情が浮かびがちだが、何はともあれ依頼は受けてしまった。遂行する他ない──のだが。
「はぁ~気持ち悪っ。足だけとか……」
 リアナル・マギサ・メーヴィン(p3p002906)には明確に嫌そうな表情が浮かんでいる。はぁ、とため息をつく様子からしても、彼女が決してこのオーダーに乗り気でないことは明白だった。それでも機導弓をしっかりと携えてくるあたり、ハイ・ルールには則るようだが。
「リカイはしがたいが、仕事はシゴトだからネ」
 小さく肩を竦め、静かな周囲へ響かぬようぼそぼそと喋るのは煤汚れたセーラー服に身を包む『ガスマスクガール』ジェック(p3p004755)。夜闇に紛れるライフルを携え、レンズ越しに辺りを注意深く見る。
(あのアタリは見えそうカナ)
 宿屋の窓が見える場所を見て、ジェックはリアナルを手招きした。その足元で2人の匂いをふんふんと嗅いでいるのは『闇之雲』武器商人(p3p001107)のカピブタだ。十分に匂いを嗅いだのか、ふいに武器商人を振り返ると「キュイッ」と鳴いてみせる。カピブタが近づいてきたのを見て、武器商人は宿屋へ視線を移した。
(……綺麗な脚、ね)
 その気持ちは分からなくも無い。それでも物騒だと思ってしまうのは致し方ないことだろう。
 さて、先ほど『面々の”大半”には何とも言い難い複雑な表情が浮かびがちだ』と言ったが──いるのだ。依頼主に理解を示し、共感する者も、少なからず。
「まさか私と同じ趣味を持つ方がいらっしゃるとは……しかも貴族ですかー」
 かの依頼主が綴った脚への想いを思い出す『《戦車(チャリオット)》』ピリム・リオト・エーディ(p3p007348)。その声音は脚に関すること故か、普段の薄っぺらい棒読みよりいくらか感情の色が見える。ちなみに全部読んだらしい。
(私の考えとは少し違いましたが、それでもこの方とは仲良くできそーですねー)
 貴族と言えば、お高くとまった連中といったイメージが先行しがちだ。それは全くの嘘ではないし、かといって完全に真実とも言えない。ピリムにとってこの貴族は後者であったということだろう。
「同じ趣味……蒐集癖、ですか」
 彼岸会 無量(p3p007169)はピリムの言葉を聞いて、その柔和な顔へ苦笑の色を混ぜる。
 蒐集癖。それは困ったもので、集めても集めても満ち足りることはない。それどころか、集めて求めて手の内に囲い込めば囲い込むほど、その思いは強く大きくなっていく。
(憐れなものです。依頼主も此度の足だけで終わり、とは成らぬのでしょう)
 今宵、6対の美しい脚を手に入れる依頼主。それでも新たな脚を欲せずにはいられない。貪欲なそれは底なし沼のようなものだろう。
(まあ、私はこの刀で切れれば其れだけで──)
 などと考えて、無量ははたと目を瞬かせる。そして今度こそ小さく苦笑した。
「……ふふ、大して変わらないですね。依頼主も、私も」
 そして貴女もかもしれない──と視線を向けられたピリムは感情の読めぬ瞳で1つ、瞬きをして。
「あんよなあ」
 と『兎身創痍』ブーケ ガルニ(p3p002361)がぽそりと呟く。小首を傾げて兎耳がひょこりと揺れる様は愛らしくもあるが、この依頼を受けるくらいだ。ただの可愛い兎ではないのだろう。
「強いて言うなら俺は脚より足の方が好きやけど……ってそないな戯言垂れ流してる暇あったら働かんとねえ」
 さらっと自らの好みを主張しつつ、ブーケがくるりと振り返る。たれた緑の瞳が、暗闇で妖しく光った気がした。

 ──ほな、行こうか?


●宿の中は明るいけれど
 音を立てずに開いた入り口は、夜闇にぼんやりと光を挿し込ませる。中は存外広く、2階へ続く階段までもやや距離を感じさせた。
 武器商人は仲間へ肩越しに、しぃと人差し指を当てて見せて。忍び足でゆっくりと宿屋へ入っていく。その後ろを黒い人影──決して影ではなく人の形をしているのだが、黒い──『果ての絶壁』オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)がついていく。
 階段をゆっくり上がっていくと、ようやく人の気配がした。個室らしき扉が6つ。会話らしき声も聞こえるから、誰かが他人の個室へ行っているのだろう。和やかで、就寝前の穏やかな空気がそこにはあった。
 それを一変させたのは破滅を思わせる呼び声。空気が凍り、何人かが飛び出して武器商人へ敵意を向ける。──だが、全員ではない。被せるようにオラボナの笑い声が響き、彼女らの敵意を深めていく。
 それでもやはり、開かなかった扉がある。その部屋にいる彼女らは確かに、2人の危険性を感じていた。感じて、けれど正常に判断できるからこそ、取った行動は異なった。
 窓を押し上げると、夜の涼しい風が頬を撫でる。同時に。

 ──オヤ、出てきたミタイだ。

 どこからかそんな声がして、同時に踊り子は脇腹を貫かれる痛みを感じた。その後に続こうとした踊り子は辛うじて灰色の一矢をかわす。

 ──抵抗しなければ命だけは取らぬのじゃが。どうする?

「どうするもこうするもあるもんか!」
 どこからか聞こえてきた別の声に、脇腹を撃ち抜かれた踊り子が顔を歪めながら叫ぶ。そして彼女らはすぐさま部屋へ引き返した。
 それを見送ったリアナルとジェックは、暫しして再び出てこないことを確認し。武器を下ろさぬまま、ちらりと視線を交錯させる。
「……マタ出てくるカナ」
 逃がさないことは絶対条件だが、できることならここで1人でも撃ち殺しておきたい。出来れば出てきてほしいものだが、リアナルはさてと小さく肩を竦めた。あの様子なら出てこないかもしれない、と。
「じゃが、もし出てくるようなら……起き上がらぬように撃ち殺すだけじゃよ」
 隙さえできれば格好の的だ。この場にいる2人であれば、片方を蜂の巣にすることなどあっという間だろう。
(……全く、嫌になるよ)
 そう思うのは、一体何に対してか。

 カンテラに青い炎がぼう、と留まる。重ね響く破滅の呼び声を発して、武器商人はぐるりと見回した。扉が全て開いたわけではないものの、視界に映る姿は6人。脇腹を押さえている者は、恐らく外からの狙撃に遭ったのだろう。
「……それじゃあ、行こうか?」
 ニタリと笑みを浮かべ、武器商人とオラボナは踵を返す。背後からの制止を物ともせず、階段を降りて1階へ。
「キュイッ」
 武器商人が降りてきたことで、1階にいたカピブタが外へ飛び出していく。2人が降りきった後すぐに、6つの影が軽やかに階段から飛び降りてきた──が。
「これは……、っ!」
 宿屋に入った時よりも、明らかに狭くなった階段と壁の距離。もともと清掃のためにと避けられていた机は倒され、まるで彼女らを阻害するバリケードのようだ。その隙間から一瞬見えた煌めきに、踊り子たちが逃げようと床を蹴る。『瓦礫の魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)の使役する精が放った砂嵐が、彼女らのいた場所に吹き荒れた。
「……はめられたってことね」
 1階に待ち受けるイレギュラーズたちの顔を見て、踊り子の1人が剣呑に呟く。
「ァー、運が悪かったな? その脚をいただきに来たぜ」
 パーツで言えば手が好きなことほぎは、そもそもそのパーツを切ってまで愛でたいとは思わない。だが、これも金のためだ。
「──やんごとなきお方の無聊を慰めるんやから、往生しぃや」
 踊り子の1人が背後を振り返る、よりも先にブーケの奇襲攻撃を食らう。一瞬だけ苦悶の表情になった踊り子は、まだまだ身軽な動作でブーケより距離を取った。
 そこはさらに続くはピリムの奇襲。防具に包まれた脚の線を見て、ピリムの体がざわりと騒めく。
「大人しくして下さいー、これから皆さん(の脚)はとあるお方のコレクションになるのですからねー」
 生き生きとしたピリムの様子に、踊り子たちが一様に引いた様子を見せる。彼女たちはオラボナは迎撃の構えをとり、口元を笑みに歪めた。
「貴様等の脚だが、我等『物語』には泥人形に視得るな。贋物の方が本物よりも美的に違いない」
「何ですって……?」
「莫迦らしい。技も輪郭も微妙だと説いて在るのだ。精々踊り果てるが好い」
 煽る言葉に踊り子たちが気色ばむ。そこへ深く踏み込んだのは無量。
「夜分遅くに申し訳有りません。一節、共に踊って頂けますか?」
 一刀が滑らかに。その動きが美しいのは、彼女たちの最期の舞踏会を映えあるものにするためか。
(とてもとても綺麗な、真紅の幕を下ろしましょう)
 それが彼女たちの大団円だ。
「思い通りになると思わないでよ──ねっ!」
 踊り子の1人がオラボナに向けて蹴り上げる。ひらりと躱せば、背後から風圧を感じて。とっさに体をひねったオラボナは包み込むように衝撃を受け止める。
「脚には思い出があるのだ。いい意味でも悪い意味でも」
「アンタの思い出に興味はないわ!」
 さらに攻撃を加えられるオラボナ。武器商人は視線鋭く彼女らを見ながら、再び破滅を呼ぶ声を上げる。
 不意にそこへ銃弾と灰色の矢が飛び込んだ。味方の横すれすれを通りすぎる雨のような弾幕は、床へ落ちる頃には赤を纏う。
「ヤア、さっきぶり」
「まだ抵抗するなら、容赦はしないのじゃよ」
 ガスマスクの少女と狐の少女による、外から援護射撃。その側で「キュイッ」と鳴くのは先ほど飛び出していったカピバラだ。
 ちっ、と女らしからぬ舌打ちをした踊り子は、まずはと2階で遭遇した2人へ襲いかかる。綺麗に軌跡を描いた脚に、無量が思わず小さな声を上げた。
「踊り子にしておくには勿体無い程の体術……蹴り上げる軌跡すら美しい」
 だからこそ依頼人は欲するのだろう。あの全てを物にせんとして。
 彼女たちの防具はそこまで耐久力のあるものには見えないし、当たれば手応えもある。だが、その脚は見た目以上に鍛え抜かれていると受け止める者たちは一様に感じただろう。
 青のカンテラがゆらりと揺れる。まだ灯火はともり続けている。
「さあさ、囲い込むで」
 ブーケが踊り子を壁際へと追い詰めていく。やりにくいといった顔をするのは、狙われている場所がわかるから。
 けれど、だからといって足掻くことを止めることなく。瞬間的に集められた視線にはブーケの足も多少もつれるもの。それを仕切り直すかのように、彼の足が再び幻惑のステップを踏む。
(自らの”武器”を差し出しても生きようとするのか、将又それでも護ろうとするのか。……どうやら前者のようですね)
 自らの武器よりも、自らの命を取った。その善悪を無量は問わない。いずれにしても、彼女の無量業は視界に捉えた者を斬らずして斬るものなのだから。
「我が殺意、その身に刻みましょう」
 切るべき線が見えるなら、そこに無用な力は不要。そこへめがけて振り下ろせば──滑らかに相手を両断する。
 力なく落ちた肉塊に、踊り子たちの殺意が無量へ瞬時に高まる。それを阻害するように、ジェックの弾幕が放たれた。
「味方には当てないサ。マカセテヨ」
 ガスマスクでこもる声は自信に満ち溢れる訳ではないが、さりとて自らを貶めるものでもなく。──ただ淡々と、事実を告げている。
「そういや、新鮮な方が良いんだろーか。身体ごと持ってくか?」
 ことほぎの悪意は踊り子たちの体を嬲らんと襲いかかり、その間にブーケがいや、と告げる。
「どうせ殺すんなら、脚以外はどうでもええんやない?」
 幻惑のこもったステップが踊り子たちを惑わし、フェアウェルレターが彼女たちを別れへ──そして死に誘っていく。
 不意に虫の脚が踊り子の1人へ絡みついた。小さく悲鳴を上げる彼女に、ピリムは心底嬉しそうな──狂気的な笑みを浮かべて絡みつく。
 綺麗で素敵て滑らかで綺麗な曲線を描く脚、嗚呼これだから集めることはやめられない、女性の脚は至高の存在だ!!!
 ピリムによって脚と胴体が綺麗に離れ、夥しい出血に踊り子が絶叫する。
 残る踊り子たちの注意を引きつける武器商人を庇うのはオラボナだ。その真っ黒な体は深淵を覗くかのようで、その体力は底なしにも思えてしまう。最も、べちゃりと叩きつけられるケーキが踊り子たちから体力を奪い取るのだから、無尽蔵では決してないのだろうけども。
 受け止めかわされ、倒したと思っても再び立ち上がるイルギュラーズたち。
 このままではラチがあかない──いいや、殺されると思ったのだろう。それは間違いではないし、どちらかといえば正しい選択だったと言える。だが強いて言うのなら、その決断を早めにすべきだったかもしれない。
 2人から注意の逸れた踊り子が外へ──ジェックとリアナルの方へ向かっていく。その眉間に容赦なく、慈悲なき一矢と死の凶弾が叩き込まれた。
「近距離ならネラえないと思ったカイ? 残念だったネ、サヨウナラ」
 呻き声1つなく。けれどガスマスクを睨みつけて、最後の女が地面へ伏した。

 静けさの戻った1階はひどく汚かった。整えられていた机や椅子は乱れ、床には赤溜まりができ、そして壁までその惨状は広がっている。
(身体と引っ付いてんならそっちの方が後の処理がやりやすいか、とも思ったが……)
 ことほぎは床に転がる遺体を見て「ダメだこりゃ」と呟く。まだマシなものもあるが、半分は上半身が見るも無残であった。
「とりあえず五体揃えられんならそーしとこうぜ。脚だけ欲しけりゃ勝手に切るだろ」
 もう手遅れであれば仕方がないが、出来ることなら下手に弄ってお眼鏡に叶わないという事態を避けたい。
 エンバーミングのためにも、と運ぶ部位をまとめるように移動させていると、リアナルがおもむろに運べないそれの元にしゃがみ込む。
「……ま、本当、貴族に関わるとロクなことにならないよね。できれば一生関わりたくないよ」
 そこに含まれるは同情か、憐憫か。今夜何度目かのため息をついて、リアナルは立ち上がった。
「あ、ついでにイーゼラー様の所にも捧げて差し上げますねー……むしゃむしゃ……」
 床にぼたりと落ちていた肉塊を迷うことなく口にするピリム。そして下半身だけとなった遺体には、いつものような処置を施す。
(さて、これで家に……じゃなくて依頼者に届けましょーかねー………軽く頬擦り程度なら大丈夫かな……)
 いやいやだってこんな素敵な脚をコレクションにしてしまうなんて羨ましいとしか思えないじゃないですかその前に少しくらい私が楽しんだってバチは当たらないはずだってこの脚を目にして何もしないとか無理じゃないですか!!!
 そっと頬擦りするピリム。今の言葉が全部口から漏れていて、これまでにないくらい表情豊かな彼女に周囲の面々は──まあそれぞれ"らしい"反応だったと言えよう。
「さて、ソロソロ行くかな?」
 ジェックが宿屋の外を気にしながら扉を開けると、清涼な風が室内の生臭い空気をかき混ぜる。しばらくこの匂いは取れなさそうだが──嗚呼、朝には清掃が入るのだった。きっと大丈夫だろう。
「さあ、痛まぬ内に届けましょう」

 数分後。そこには何者の姿もなく──ただ無残な肉塊と、おびただしいほどの赤黒いシミ。そして濃厚な死の匂いが残っていた。

成否

成功

MVP

ブーケ ガルニ(p3p002361)
兎身創痍

状態異常

ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)[重傷]
同一奇譚

あとがき

 お疲れ様でした。
 結果を見ればわかっていただけると思いますが、依頼主は皆様の持ってきた脚にとても満足されたようです。

 ダッチラビットの貴方へ。オーダーを意識し、彼女らの動きをよく予想したプレイングでした。今回のMVPをお贈りします。
 チャリオットの貴女へ。脚良いですよねわかります。ふふ。称号をお贈りしています。

 それではまたのご縁がございましたら、よろしくお願い致します。

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