シナリオ詳細
なくし物はなんですか?
オープニング
●ある日気づいたなくし物。
「ふんふふんふーん」
ある日のこと。
朝目覚めて身支度を調えていた『瑞花』アイラ(p3p006523)は傍と気づいた。
「あ、あれ? あれれ? ない、ない、です!」
アイスブルーの瞳を瞬かせて、何度も何度も確認するも、ない。
大切な蝶の髪飾りがないのだ。
「おかしい、です……どこかで、落としたのでしょうか?」
それからアイラは気になってしまい、髪飾りを探して幻想中を探し回った。
寝起きするベッドの下を隈無く探し、家に無いとわかると恋人のお家や、行きつけのお店、いつか入った森の奥なんかにも行ってみた。
けれど、どこを探しても髪飾りは見つからない。ないない、なのです。
「うぅ……どこへ、行ってしまったのでしょう?」
それから数日、ずっと探し求めて街を彷徨いあるくアイラは肩を落として歩いていた。
その時一枚のチラシが足下に引っかかった。思わず手に取ってみるとそこには――
「ああ!? これはっ!?」
そこには探し求めていた蝶の髪飾りや、知り合いのものが乗っていて、剰え『レア物あります』の文字。
販売されている。そう無くしたはずの髪飾りが、闇オークションに流されてしまっていたのだ。
「た、たいへん! ローレット、それから、えっとえっと、皆に知らせなきゃ!」
こうしてアイラのもたらした情報がローレットに届けられたのだった。
●
「なるほど、どこかで無くしたかと思っていたら、闇オークションに流されてしまっていたとはね」
『猫派』錫蘭 ルフナ(p3p004350)がアイラの話を聞いて、納得するように頷いた。
「ゆるせないな。恐らく拾ったのだろうけど、こうして闇オークションに流すなんてさ」
種族的な歴史から、そうして一方的に簒奪し利益を得ようという行為に嫌悪感を示す『揺蕩う瑠璃』ラピス(p3p007373)がいつもの大人しさから珍しく怒ってみせる。
「事件の匂いですね。これはきっちり皆さんの無くした物を回収するべきでしょう」
『探偵助手』アルズ(p3p003654)もまた自分の無くし物を取り返そうとやる気を見せた。
「しかしこのようなチラシを出しているところを見るに、結構大規模な組織のようで御座いますね。幻想のみならずこの世界は闇市が盛んですし、この手の地下組織は後を絶えませんね」
『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)がチラシを見ながらそう言葉を零す。幻の言うように表立った組織はまだまだいそうだが、今回はそんな中でも表に姿を現した連中だ。尻尾を掴めば潰すチャンスは巡ってくるというものだ。
「ちょうど幻想貴族も無くし物を探して依頼をだしていたようだ。アイラの依頼と一緒にして情報屋がひとまとめの依頼にしてくれたようだね。ついでだし、貴族様のも回収といこうじゃないか」
『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)の言うように、今回はアイラからの依頼であると同時に幻想貴族の依頼でもある。報酬は貴族が持ってくれるので、ただ働きの心配は要らないと言うわけだ。
「それじゃあ張り切って、いかないとね。オークションの開催日までは時間があるし、しっかりと準備もしていこう」
マルク・シリング(p3p001309)にそう促されて、集まった面々は頷いた。
「じゃあ、作戦会議ついでにお茶としようか。
……心配しなくても珈琲はださないよ。みんなとは普通にお喋りしたいしね。それに無くし物についても聞いてみたいし」
愛嬌ある笑みを浮かべた『Amore freddo』ルーフェル=フリーデン( p3p006187)はそういってお茶を入れる準備を始めた。
「よーし、絶対、取り戻しましょう!」
気合いを入れたアイラと仲間達の作戦会議が始まった。
- なくし物はなんですか?完了
- GM名澤見夜行
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2019年10月13日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談8日
- 参加費---RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●まずは情報収集
『瑞花』アイラ(p3p006523)が気づいたなくし物。気づけばイレギュラーズ達みんなのなくし物へと発展し、一行は闇オークション会場へと乗り込み奪い還すこととした。
「ボク、珍しく怒ってるんですよ」
頬を膨らませて怒りを露わにするアイラ。心優しい彼女が本気で怒ることは珍しい。それだけ闇オークションを運営する犯罪者達を許せないのだ。
アイラ、そして共に行動するイレギュラーズは、綿密な作戦を立てて闇オークション会場へと客を装って入場する。
堂々とチラシをバラ撒いていることからもわかるように、まるで捕まらないという自信があるようだ。まさか盗品の持ち主が来るとは思ってないのだろう。オークション参加者のチェックは杜撰だった。
なんの障害もなくオークション会場に入ったイレギュラーズ一行は、すぐに行動を開始する。
まずは何にしても会場の把握と、無くした持ち物の所在地を探すことだ。それに事前情報から確認されている主催や協力者、警備員たちの把握も必要だろう。客を装いつつ、それらの情報を入手するのだ。
「へぇ……オークション開始前に商品の紹介があるんですか。なるほど、それで目当ての商品を決めるのですね」
話を聞くフリをして、情報を引き出す『揺蕩う瑠璃』ラピス(p3p007373)。オークションの手順を確認したことで、なくし物が人の手に渡る前に行動することができると知れた。商品紹介が終わった後はオークション本番まで保管庫に仕舞われるだろう。狙うとすればオークションが始まる直前かな、とラピスは思った。
「しかし、人の良さそうな顔をして、よくもまあ盗品を堂々とオークションに出せる物だな。深緑絡みの方の悪の商人は純粋に悪党だったけど、こっちは裏表使い分けてる分質が悪い」
主催の顔を確認しながら『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)が小声でぼやく。目立たぬように持ち込んだ木の板を会場隅に置いて、オークション会場の封鎖準備を行っていく。
サイズ的にザントマン絡みで深緑とラサが騒がしい最中の依頼だ。悪の商人繋がりということで、嫌でも目に付く話ではあった。スケール感としては大分小物であるのだが、ザントマン騒動に便乗しているように見えるのも仕方の無い話である。
「色々と豪奢な商品を扱っているのですから、きっと警備は厳重なので御座いましょう? せっかくの商品が盗まれるようなことがあれば、落胆を隠しきれませんからね」
さりげなく主催に尋ねる『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)。装着したサイバーゴーグルは十分に幻の人相をごまかしているようだった。機嫌の良い主催はベラベラと情報を漏らしてくれる。
「もちろんですとも。強固なロックを掛けておりますからな。盗みに入る物などいやしませんでしょう。……はて、貴方どこかでお見かけしたような?」
「うふふ、気のせいで御座いましょう」
名声の高さというのは中々侮れないもので、その点しっかりと対策していたおかげで潜入がバレると言うことはなかったようだ。
「強固なロック……ね、どんなものか確認しようじゃないか」
幻の手に入れた情報を元に、『猫派』錫蘭 ルフナ(p3p004350)がファミリアーのネズミを使って確認作業に入る。
裏へと消えた主催を追わせていけば、一枚の扉が目に入った。
「……強固なロック?」
扉はなんとも貧相な南京錠一つで閉じられていただけだった。元が盗んだものばかりだ、商品に対する思い入れがなさすぎる。ついでに言えば、ロックしている南京錠もどこかから盗んできた物なんじゃないか、とルフナは思った。
この分ならイレギュラーズの力があればすぐに保管庫には入れるだろう。大きな障害がないというのは、好材料だ。
「警備も聞いていた通りそう多くはありませんね。これならちょっと無理しても大丈夫でしょうか?」
興奮して会場内を見回るおのぼりさんを演じる『探偵助手』アルズ(p3p003654)は、警備の人間の位置を確認しながら、自分が待機すべき場所を探す。
狙撃が武器のアルズだ。待機場所は良く吟味すべきだと理解している。たとえ進入禁止の場所まで行ったとしても、興奮して迷い込んだアピールをすれば、なんとかなるものだ。それに主催達の浮ついた機嫌に当てられて警備もゆるゆるなのがよくわかる。そのまま油断し続けてもらいたいものだと思った。
「黄金のラッパ……黄金のラッパっと、ああ、やっぱりでるようだね安心した」
商品一覧が記載されたカタログを確認し、マルク・シリング(p3p001309)がほっと息を吐いた。
それは然しも狙いの商品が販売されることに安堵しているように見えて、周囲の不審を買わない演技だ。
出品されるであろう順番を確認し、客席の一番前の列、その端に着席して商品の紹介を待つことにした。
(自分のなくし物も重要だけど、貴族さんの物も大切な依頼だからね)
ついでと言わず、注力するのは真面目そうなマルクらしいと言えた。
そのようにイレギュラーズが情報を収集するなか、一足先に行動を開始していたものがいた。
フォーマルなワインレッドのドレスに身を包んだ『Amore freddo』ルーフェル=フリーデン(p3p006187)だ。内心恥ずかしい気持ちを抑えつつも、見事に着こなして、然も貴族の買い物と言わんばかりだ。
「黄金のラッパ? まぁそれはどのようにして仕入れたのかしら?」
ルーフェルは興味を持ったように柔和に話しかける。相手は主催の協力者と思われる人物だ。上機嫌に口軽く、実にありそうな作り話をひけらかす相手を前に、内心ほくそ笑む。間違いない当たりだと確信した。
ルーフェルはそのまま協力者を裏口へと連れ出して、裏取引でもしようかという雰囲気をだし油断させると、瞬く間にフロストチェインで拘束し、その口にガムテープを貼った。
「しばらくはそこで頭を冷やしているといいよ」
一目に付かないところへと運び出し戯けてそう言って、次なる協力者を狙いにいく。
事前情報では協力者は五名いると言うことだった。その内三名を同様の手口で拘束することに成功した。
(これ以上は……ちょっと難しいかな)
商品紹介の時間が近づき、主催側も慌ただしくなってきた。無理をすれば作戦が破綻してしまうので、ここは大人しくするのが吉であろう。
地下空間が一層暗くなり、ステージのライトアップが強くなる。
主催が高らかに声をあげて、商品紹介の時間が来たことを告げた。
(ボクらの宝物……ちゃんとありますように……!)
作戦開始の前に、しっかりと確認しなくてはと、アイラは強い眼差しをステージに向けた。
●これは誰の物?
「さぁさぁ、どんどん参りますよ! よく見ていって吟味してくださいね!」
ご機嫌な主催が次の商品をステージへと並べていく。
「次はこちら! さる貴族が手放した黄金のラッパです!」
(手放したんじゃなくて、盗んだんでしょうが……!)
現れたラッパをよく見て覚える。間違いなくこれが貴族から依頼されたラッパに違いなかった。
商品はどんどん出てきてはステージ裏の保管室に戻される。
「次はこちら、なんとも高級そうな万年筆! 実はこれ王室が調印を結んだときに使用されたもので――」
(いいえ、それは僕が探偵様から貰った物です……なんてテキトーな話を吹き込んでいるのですか)
アルズは自分の持ち物であることを確認する。傷がついたりはしてないようで、その点は胸を撫で下ろした。
「こちらは蝶をあしらった髪飾りです! かのバルツァーレク領主が追い求めたという幻の一品になります!」
「それボクの!」と思わず声に出しそうになるアイラはグッと我慢して隣に立つ客に話しかける。
「ボ……ごほん、私はあの蝶の髪飾りを狙っているんです。あなたは?」
「私はあの万年筆が気に入ったね。書き心地はどんなものだろう? 落札するのが楽しみだよ」
それはアルズの物だと思い思わず手にしていたグラスを落としそうになる。
「おっと。もう、ちゃんと持ってないとダメだよ?」
それをフォローしてラピスが微笑む。恋仲にあることを知らせるように寄り添って、会話を続ける。ステージにはとても大きな宝石が登場していた。
「僕、宝石に目が無いんです。ほら、これなんて凄いじゃないですか」
美しい天藍石(ラズライト)。ラピスは語る。その美しさは、まるで――命が宿っているようだと。
「次は美しい白金の指輪です! 古代遺跡から発掘されたにもかかわらずこの美しさ――」
(よくもまあ、嘘を塗り固められる物だね……)
それはお守りとして貰ったルーフェルの指輪だ。疾うの昔に捨ててしまおうだなんて思ったこともあったが、許されるのであれば、まだ持っていたいという気持ちは残っていた。
「なんだか高そうな物が続いてるって? 安心して下さいこういったものもありますよ」
登場したのは猫の抱き枕だ。可愛さに客席の場が和む。
「……」
イレギュラーズの一人は、気が気でないようではあったが。
「こういうのもあります。異世界人が持ち込んだ古書です。中の記述は確認していませんが、これは貴重な資料になりますよ!」
(読まれて困る事はあまり書いていないけど……今年の夏に失恋した事は、あまり、見られたくない、かな……)
自身の”日記”を公開されそうになるという気持ちは、想像に耐えがたいものだろう。幸いなことは主催側は装丁にばかり目が行って、対して中身に興味を持っていなかったと言うところか。マルクはホッと小さく息を吐いた。
「数が少なくなってきましたが、最後まで注目下さい!
練達より生み出された稀少金属(レアメタル)です! これは中々手に入りませんよ」
(煽ってるけど手に入れられる正規ルートはあるし、最悪誰かに買われても買い直せる、か)
サイズはアイテムのことよりも、恩を感じているアイラの助けになりたいと感じていた。手を尽くし、必ず皆の品物を取り返そうと気合いを入れる。
「さあ、最後となりました。こういった場で出るものには無くてはならない超レアなアレの登場です! さあ見て下さい! かのアーベントロート家が血眼になって探したと言われる、蝶が羽ばたくパンツです!!」
額縁に入れられた蝶の形をしたパンツが登場する。ざわざわとする客席では「闇市で一体いくらになるんだ?」などと相場情報のやりとりがなされていた。
(うふふ……なんで鑑賞とかされなきゃいけないんでしょうね……)
ニッコリと微笑む幻は口の端から血を流しそうだ。以前パンティ・キャッツ二世なる怪盗に奪われたパンツが巡り巡ってこんなところに出てくるなんて。
「さあ、一度商品達には退場してもらい、すぐにオークションを初めて行きましょう、まずはこの商品、子ロリババアコロリの登場です!」
流れるようにオークションが始まる中、イレギュラーズ達は動き始めた。
●摘発だー!
オークションが始まり会場は盛り上がりを見せていく。
ルフナは仲間達の動きを悟られぬように、オークションに参加して注目を浴びながら会場全体の視線を誘導した。
注意が逸れた。それが合図だ。
「さて、始めるとしようか――!」
ルーフェルが警備員に近づきファイアフライを目の前で瞬かせる。
「……おっと、入り口で人を待たせているんだった」
ルーフェルの仕掛けと同時にマルクが入口へと向かい、取っ手を針金で結び封鎖。
「仕掛けますよ――!」
会場の片隅で気配を遮断するアルズが警備兵を狙う挑発めいた発砲を行う。
破裂音に会場全体が騒然となる。
ルーフェルが目を眩ました警備兵を見えない糸で拘束して転倒させた。
「な、なんだ? なにがおきて――!?」
主催が状況について行けず混乱すると、アイラ、ラピス、ルフナがステージ裏の保管室へと向けて走り出した。
「あ! なんだお前達は!」
「待てそっちには商品が!」
「おっと、そっちは追わせないよ」
三人を追おうとする主催達をサイズが足止めする。血によって固められた鎖が主催達の足に絡みつき転倒させたのだ。サイズはさらに逃げられないようにと裏口を用意していた木の板で封鎖する。鍛冶スキルを持つサイズならではの早業だ。
状況に混乱する中、残る協力者が逃げようと入口に駆けるが、そこには入口を封鎖したマルク、そして逃がしはしないと大仰に礼をする幻がいる。
「くそっ当局のガサ入れか!」
「ガサ入れでは御座いませんが、盗んだものは全て返して頂きます。そう、僕のパンツ! 闇市に流した分も全部!!!」
悲痛な面持ちの幻はしかし動きは実に高起動だ、逃げようとする協力者を瞬く間にノックアウトし拘束する。
「警備の連中が動き出した。ここからが本番だね」
客が動きを止めるなか、腕っ節に自信のありそうな警備兵が動き出す。
「いいぞそいつらを捕まえてしまえ!」
主催の一人が声を上げる。
「捕まるのはそっち。盗品で金儲けなんてやることがセコイんだよー」
「盗品をオークションに掛けたんだ。当然、逮捕される覚悟はあるよね?」
商品が盗品だということが知らされると会場に留まる客達が騒ぎ始める。
「ええいだまれだまれ! お前達は一人も逃さんぞー!」
「それはこちらのセリフ。皆さんの大切なものを盗んだのは許さないよ?」
「さて、それでは始めましょうか。オークションでは御座いませんが大捕物の活劇舞台に御座います」
幻のセリフを合図に、戦いが始まった!
●なくし物、見つけた
ステージの裏へと抜け出したアイラ、ラピス、ルフナの三人は保管室へと向けて走る。
「戦闘班の皆は、大丈夫でしょうか……」
心配そうに呟くアイラにラピスが頷く。
「きっと大丈夫。僕らは僕らの仕事をしよう」
「……うん!」
力強く頷いたアイラのアイスブルーの瞳が保管室と、その前に立つ警備兵の一人を捉えた。
「おっと、こっちに一人いたようだね。邪魔だよ――!」
「なんだ貴様等――うわっ!!」
ルフナの操る死霊術が姑獲鳥を生み出して業風を巻き起こす。油断しきっていた警備兵は為す術なく吹き飛ばされて昏倒した。
「こいつは拘束しておくからアイラはロックを」
「うん、任せて」
頼り無い南京錠のロックをフロストチェインで縛り上げて引っ張れば、すぐに壊れて保管室の扉が開いた。
三人は中へと身を滑らせる。
闇の中に瞳の輝きが灯る。明かりはほとんどないが、暗視能力のおかげでなくし物は見つけられそうだった。
「レアメタルに、装丁のしっかりした古書、万年筆に白金の指輪……そ、それとパンツ……」
みんなのなくし物を一つ一つ見つけていく。大切なものだ、今度こそ無くさないようにしよう。
「そうそう貴族さんのラッパも……あ、もしかしてこれは、ラピスの宝物?」
アイラは天藍石を前にラピスに尋ねる。
「……うん。この宝石はね――僕の、親友だったんだ」
「親友――」
ラピスの表情を見てアイラは胸がどきりとした。
「全部見つけたかー? そろそろ戻って皆の加勢にいかないと」
「う、うん。もう……大丈夫」
みんなのなくし物は見つけたと、アイラは言う。けれど肝心のアイラの髪飾りをまだ見つけてなかった。
アイラは皆の物が第一優先だと言うが、ラピスはそれをお見通しだ。きっと優しいから、自分のを諦めてしまうに違いなかった。だから――
「アイラ。君の大事な物、忘れちゃ駄目だよ。ほらこれ」
「あっ……ラピス、ありがとう」
なくし物は見つかった。三人は会場で戦う仲間達と合流し、残る主催達を捕まえるために奮闘するのだった。
「よし、これで全部かな。しかし懐にも盗品を隠してるとは、油断ならない奴等だなー」
主催、警備兵、協力者をすべて捕縛し、調べ上げれば着服した盗品が出るわ出るわで、サイズは呆れかえった。
「根が深そうな問題で御座いますね……闇市にもきっとまだ流していたことで御座いましょう」
帰ってきたパンツを握りしめ、幻は静かに呟く。これだけ盗品を集めていたのだ、闇の流通ルートは多岐に渡るはずだろう。
「でもよかったよ、皆のなくし物が無事で」
「ええ、僕の万年筆も無事に戻ってきました」
日記を手にするマルクと、万年筆の状態を確かめるアルズが、安堵のため息をついた。
「この身から離れ……それでもやっぱり戻ってきた。まだ手放す必要はなさそうかな。縁が繋がっている限りは、ね」
白金の指輪を光に照らし、ルーフェルは目を細める。思い出の品というのは良くも悪くも傍にあって欲しいもののはずだ。
「あぁ、怖かった……」
警備兵との戦いを思い出して思わず瞳を潤ませるアイラ。そんなアイラにラピスが戯けていう。
「泣いてる?」
「な、泣いてなんかないです……!」
目元を擦ったアイラは安堵に微笑んで、仲間にお礼を言った。
そして、不意に視線がルフナに向かった。
「そういえばルフナさんは何を?」
「僕は何を取り返したのかって?
ばーか。僕は盗まれるような間抜けじゃないし」
視線がルフナの背後で隠れ切れていない、猫の抱き枕へ行く。
「……ああ、この猫の抱き枕は、可愛かったしあんなところに残すのも可哀想だから貰ってきただけだよ。他意は無いし。
――何その顔! 勘違いするんじゃない、そんなんじゃないから!」
ルフナの宝物も見つかったようで、イレギュラーズは笑い合うのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
依頼お疲れ様でした。
MVPはマルクさんに贈ります。おめでとうございます。
リクエストありがとうございました!
またよろしくお願い致します。
GMコメント
こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
シナリオリクエストありがとうございました。
無くし物はなんですか? 見つけにくい物ですか?
それより皆と闇オークションを潰しにいきましょう。
●達成条件
無くし物を取り返す。
貴族の無くし物(黄金のラッパ)を取り返す。
●情報確度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は起きません。
●このシナリオについて
闇オークションに乗り込んで無くし物を取り返します。
潜入してオークションに参加してもよし、頃合いを見て暴れ回ってもよし、どんな手段もオールオッケーです。
依頼の参加者は全員無くし物をしています。自分が何を無くしたのか宣言しておくとよいでしょう。
無くし物はオークションに出品される際にモデルが身につけたり、なんらかのアイテムと一緒に展示されたり、あるいは傭兵が手にしているかもしれません。
色々想定してみても良いですし、おまかせでも大丈夫です。
●闇オークション主催側について
主催が三人、警備兵が五人、戦闘能力のない協力者が五名います。
協力者を除けば、それなりに危ない橋を渡ってきた連中で戦闘能力はそこそこですが、逃げ足が速いです。
協力者は放置しておくと、邪魔してくるかも知れません。
●戦闘地域について
薄暗い地下施設が舞台となります。
それなりに広い場所となり、戦闘行動は取りやすいでしょう。
薄暗いので無くし物を探すのに明かりは必要そうです。
そのほか、有用そうなスキルやアイテムには色々なボーナスがつきます。
皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
宜しくお願いいたします。
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