PandoraPartyProject

シナリオ詳細

収穫祭が待ちきれなくて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ここの村人は大体パリピ
 他の村や町の事情はよく知らないけど、俺の住む此処、パロマ村の収穫祭はとにかく派手で騒がしい。
 ああいったノリがどうにも苦手で、この時期は少し憂鬱になる。
 単に喧しいのが嫌なだけか、混じれない自分へのコンプレックスか。そんな事を考えながら、カボチャ畑の脇をひとり歩けば。

「祭りだァーーーー!」
「パーリィだァーーーー!!」

 ……うわ、早速始めてる。
 と思ったが、恐らく違う。何しろ祭りは来月末だ。連中が祭り好きとはいえ、いくら何でも早過ぎる。例年先走りがちとは言っても、こんなに早かった事は無い。
 何にせよ俺には関係ないか。と、無視して道を急ごうとした時、スッと後ろに気配を感じ。振り返ってみれば――

「ヒャッハー! しょうねーん! 楽しんでるゥー!?」

 人の頭ぐらいあるカボチャ……が、2体!? 浮いてる!?

「ノリ悪いなァ!」
「お前もカボチャになるんだよォ!!」
 喋った!? しかも片方はえらい無茶ぶりしてきた!?
 ……と思ったら、次の瞬間。一瞬で、目の前が真っ暗になって――

「もが! もが!!」
 俺はそいつの言葉通り、収穫祭に狂喜乱舞し、倒れるまで踊り狂うカボチャ頭となってしまったのだ。

 疲れ果てた俺が気を失う直前、カボチャ越しに見た光景は、沈む夕日を背にごろごろ転がる、異様にデカいカボチャだった……

・・・・・・

●食欲の秋なのです
「もうすぐ収穫祭ですねっ! お祭りはとっても楽しみですけど……これはちょっと気が早過ぎるのです」
 ギルドのある一角には収穫祭風の装飾が施され、早くも祭りの空気が漂う。ユリーカを始めとして、有志でこのスペースを作ったとか。
「さてさて、今回の依頼なのですが……こんな感じのカボチャさん達が、畑で盛大なパーリィー……もとい、大暴れをしててですね」
 言いながら、ユリーカは南瓜のオブジェをテーブルの真ん中にどんと置く。顔が少し歪だ。彼女のお手製だろうか。
「ムードづくりは大事なのです! ……で、そのカボチャさん達のパーリィーがちょっとやり過ぎで、怪我人さんが出てしまって……まだ大ごとにはなってないので、今のうちに何とかして欲しい、との事ですっ」
 依頼人で被害者である青年の情報と、他の被害者を含め重傷者がほぼ出ていない辺りを考えると、問題のカボチャは単にお祭りしたいだけかも? と、ユリーカは所見を述べる。だがしかし、限度というものはある。嫌がる人間に無理強いするのも、勿論良くない。
「ですので、そこはきっちりお仕置き! して欲しいのです」 

「ああ、そういえば……」
 暴れるカボチャについて「それっぽい」旅人に聞いてみたところ、無力化すると普通のカボチャと同様、食用や加工用にも使えるとか。

「秋のお祭り、カボチャパイ、カボチャプディング……いいですよねえ……はっ!」
 甘い空想に浸ったところを慌てて誤魔化しつつ、駆け出しの情報屋はいつも通り元気よく、冒険者たちを送り出したのだった。

GMコメント

ハロウィンたのしみ!!!!!

・・・・・・

●目標
カボチャ全員の討伐(とっちめ)+お好みでその後処理

●ロケーション
幻想内、パロマという田舎村にあるカボチャ畑。時刻はお昼、良い秋晴れです。
村全体を挙げて収穫祭準備の真っ最中で、お祭りムードが漂っています。
既に注意が行き渡っており、畑に村人が入ってくる事はありません。

視界は広く開けており、カボチャの多くが収穫済みな事と、
さんざ転がったカボチャキングが意図せず地ならしをした結果、足場も良好です。

●敵

『カボチャキング』×1
 カボチャ連中のリーダー的存在です。その巨体には中身もびっしり。
 相手が「遊べる」者だと知れば、全力で遊ぼうとしてきます。
・賑やかにいこうぜ!:主行動1手分を使い、中確率で即席カボチャヘッドを1体、
 低確率でもう1体を追加で生み出します。1体目が出なければ2体目も出ません。
・特大カボチャローリング(巨体で転げ回ってひき潰します):物近列/ダメージ大
・エクストリームジャックオーランタン(火炎放射です):神中貫/ダメージ中【火炎】

『カボチャヘッド』×7(初期)
 人間の頭よりひと回り大きい程度のカボチャ群です。
 強さはキングにだいぶ劣りますが、後述の即席ヘッドと併せると数が多くてうざったいです。
・お前もカボチャになるんだよォ!(己を被せてきます):物至単/ダメージ小【混乱】【暗闇】
・お前ノリ悪くね!?(煽ってきます):神遠単/【怒り】【ダメージ0】
・エクストリームジャックオーランタン(キングの弱化版です):神遠単/ダメージ小

『即席カボチャヘッド』×増加分だけ
 キングが戦闘中にスキルで生成する即席のヘッドです。
 基本はカボチャヘッドと同じですが、即席の為か初期カボチャよりも能力は低く、
 特に耐久面はかなり劣ります。加工が簡単そうです。

★カボチャ共通の性質について
パーリー大好き、お祭り大好き。おつむも無く行動はしっちゃかめっちゃかですが、
ノリの悪いPCさんを狙ったり、スキルで煽ったりしてくる傾向があります。
倒した後は力を失い、普通のカボチャと同様に食べたり加工したり、お持ち帰りも可能です。

●情報精度
この依頼の情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。

・・・・・・

ノリノリの方はノリノリで、乗り気でない方も乗り気でない感じにノっていただければこれ幸いです。
今回もよろしくお願いします!

  • 収穫祭が待ちきれなくて完了
  • GM名白夜ゆう
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年10月19日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

フェリシア=ベルトゥーロ(p3p000094)
うつろう恵み
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
シラス(p3p004421)
超える者
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
アリーシャ=エルミナール(p3p006281)
雷霆騎士・砂牙
橘花 芽衣(p3p007119)
鈍き鋼拳
カイト(p3p007128)
雨夜の映し身
東門・カズミ(p3p007594)
月喰らい

リプレイ

●アーリーカボチャパーリィ
「随分とにぎやかですね……」
 爽やかな秋晴れの中、冒険者たちは緑豊かな道を行く。標的との距離はまだだいぶ離れているが、離れても分かるほどに騒がしい。異世界からやって来たばかりの『流転騎士』アリーシャ=エルミナール(p3p006281)にとっては、今回が初の任務だ。幻想の地は元居た世界とそこまでの差は無く、あの手の怪物と戦ったこと自体も初めてではないが、混沌で剣を振るうのは初めてだ。果たして大丈夫だろうか、不安はある。
「んー! 祭りとご馳走と殴り合いの香り! いーねいーね!」
「収穫祭かあ。いいねえ、楽しそうじゃんか!」
 メンバーで一・二を争うお祭り娘、『楽しく殴り合い』ヒィロ=エヒト(p3p002503)と、『月喰らい』東門・カズミ(p3p007594)は非常に乗り気だ。カズミはクールを信条としているが、賑やかなのもやぶさかでない。

「ヒャーッ! アニキーッ! お客様だぜーッ!」
「ナンダッテー!」
 今回の標的、カボチャヘッドの一体が冒険者たちの接近に気づいて歓喜の声を上げ、カボチャ達の主がぐるりとこちらを向く。
「と、とても元気のよくて、やんちゃさんのカボチャです……ね?」
 距離が近付けば近づくほど、やたらと大きい声がキンキンに響く。『うつろう恵み』フェリシア=ベルトゥーロ(p3p000094)は、特徴的な海種の耳を抑えながら苦笑した。
「というか、ワタシを差し置いて騒ぐのはズルい!」
 お祭りで騒ぎたいのはわかるけど、迷惑になることはダメだよ! ……と、ヒィロと並ぶお祭り娘『鈍き鋼拳』橘花 芽衣(p3p007119)が前に出る。本音の方が口に出てしまったが、特に問題は無い。
「オー! あんちゃんのグラサン? イカス仮装だネーッ!」
「おっと、こいつぁグラサンでも仮装でもないぜ? 気は少々早いが――遊んで貰おうか」
 装甲で固めた両腕を仰々しく広げたのは『雨夜の惨劇』カイト(p3p007128)。鉄騎種のようにも見えるが、彼も異世界からの来訪者だ。幻想ではあまり見ない雰囲気の装甲は、カボチャ受けも良好のようだ。
「メンゴメンゴ! カボチャ、っていうかオイラ達あげっから許してチョ!」
 と言って、キングがぽんっと小さなヘッドを1体生み出す。
「いやいや、そんな(Treat)のあるワケねーじゃん」
「中身はびっしりでも、頭は軽いわけね。今出したのは、全部が軽そうだけど」
 農家の被害を考えれば放置厳禁、と『魔眼の前に敵はなし』美咲・マクスウェル(p3p005192)が、発生した即席のヘッドと慣らされた畑の様子を確かめつつ頷く。
「ああ、盛り上がってるにしても度が過ぎちまえば迷惑になるしな。そーいう盛り上がり方はクールじゃねえ」
 装飾のされた二本のダガーを構えつつ、カズミがクールに睨みを効かせるが。

「……なんて建前も嘘ではないがーー!!」
「え、建前!?」
「突撃お前が晩御飯! 旬の食材ゲットするよ、ヒィロ!」
「うんっ! 暴れ南瓜って、秋って感じするよね!」
 収穫だー! と勢いよく駆け出すふたり。一瞬呆気にとられたカズミが慌てて続き、フェリシアも「あわわ……!」とそれを追った。

「では……行きますか」
 アリーシャが空間にサインを描き、騎士の鎧を身に纏う。
 幻夜でも開かれる恐ろしいTrick(いたずら/さんげき)の時間が今、幕を開けた――

●天高く、なんだか肥ゆる秋
「よーし、テメーら昼飯になりな!」
 真っ先に敵陣に飛び込んだのは『夜闘ノ拳星』シラス(p3p004421)。彼はいつでも、どんな仕事でも全力、加えて今は食欲の秋、そして今日はハラペコだ。
「よう、カボチャ頭! ダンスの相手探してんのか?」
「おうおう、少年! 一緒にパーリィしてくれるのかい!?」
「おうよ、付いて来れるか?」
 地面を蹴って高く跳び、至近のヘッドを踏み台にしてもう一段跳躍。そこから大きく捻りを加えつつ、落下しながら蹴りを見舞う。
「……シビレるゥー!!」
 打撃のショックとアクロバティックな動きが、キングの巨体を震わせた。
「よーし! ボクも行くぞー!」
 シラスに続いてヒィロが飛び出す。やれるもんならやってみろ! と、めいっぱいの元気がヘッド達の注意を引きつけた。
「ワオワオー! お嬢ちゃんもカボチャになろうよゥー!」
 ヘッドの一体が見舞った体当たりが直撃し、カボチャ頭になってしまうが彼女はいたって丈夫、この程度では怯まない。
「ヒィロ! 右、右!」
「おっけおっけ!」
 視界を奪われたり、熱中し過ぎる事があっても大丈夫。後ろから頼れるお姉さん、美咲が的確に指示を飛ばしてくれるのだ。カボチャは被せが甘かったのか、すぐに逃れる事が出来た。
「えへへ、楽しいねー!」
「いいなあー! ねえねえ、ワタシも混ぜてよ!」
 このお祭りに私を呼ばないとは何事だ! と、芽衣も威勢よく名乗りを上げ、カボチャ達のテンションは「ヒューッ!」と、うなぎ登りだ。
「あ、あんまりカッカしすぎないように……ですよ?」
 少し離れた場所からフェリシアが奏でる優しいバラードが、一部仲間の上がり過ぎたテンションを落ち着ける。賑やかなのは良い事だが、「やり過ぎ」での事故は出来るだけ避けたい。どうかお怪我に気を付けて……と、祈りを込めて。
 一方ではアリーシャが、生まれたばかりの即席ヘッドを両手剣で切り伏せたところ。
(確かに即席分は柔らかい。しかし、これが混沌の枷、ですか――)
 異世界からの旅人は、混沌による制限を受けると聞いた。ならばまずは着実に、冷静に。元々の世界とでどれだけの差が出るのか、見極めながらヘッドを狙い、手ごたえでそれを確かめていく。
「ふむ、ここは無礼講だな! 盛り上がっていこうぜ!」
 カズミも負けじと、二本のナイフでヘッドを攻める。盛り上がってもクールさは忘れないのが、大人のパーリィだ。
「黒猫に睨まれたかのようなTrickを味わってくれよ、我慢できない甲斐性なし共?」
 続けて、カイトの両腕から放たれた雨粒のようなTrick(レーザー)がキングを襲う。演技の事もあるだろうが、彼のテンションは高いのか低いのか、いまひとつ掴みづらい。しかし、そのTrick自体は有効に働いた。思い切り転げ回る筈だったキングは思ったように転がれず、「ウェーーーイ!!」と奇声を発しながら、至近のシラスへの体当たりのみに留まった。

「さぁ お ど れ」
 満を持してとうとう、美咲の魔眼、薔薇の結界が開かれる。ヒィロと芽衣が一ヶ所に固めたヘッドの付近一帯に、腐食の呪いが、カボチャのみを選んで広がる。
「お前が、ご飯に、なるんだよ――!」
 後で美味しくいただく事も「視野に入れて」。一番美味しいのはそう、腐る手前なのだ。

●じょうずに焼けました
 初手のぶつかり合いが終わる。ハラペコ達の本格的な猛攻は、いよいよここからだ。
「野外パーティなら派手に行こうよ!」
「今日のご飯になっちゃえー!」
 爆炎と暴風がカボチャ達に炸裂する。ヘッドを引きつけていた芽衣とヒィロを中心に広がった派手な衝撃はさながら花火やクラッカーのようで、お祭りムードを華やかに彩る。
 喰らったカボチャは瀕死だが「イーネイーネ!」とご満悦だ。ノリに生きてノリに散る、それが彼らの在り方なのだ。
「よっしゃーーー! テンション、上ガってきたァーーー!!」
 カボチャの主が、明るくいこうと「最大火力のランタン」を点した。狙われたのはアリーシャ。大きな剣で、どうにか受けきる。
「ランタンにしては、ちょっとやり過ぎです……」
 大乱の中にあった時なら、この程度の攻撃はものともしなかった。しかしやはり、混沌の枷は重いか。ここで踏み止まれたのは、己を過信しなかったからこそ。
「大丈夫……ですか?」
 咄嗟にフェリシアが回復を飛ばす。彼女自身も注意深く立ち回っていた事と、美咲が全体に払っていた注意のおかげで、ランタンの被害は最小限に留まった。
「有難うございます……まだ、やれます」
 呼吸を整え、再び剣を握ったところ。一匹のヘッドが、アリーシャの元にやって来て。
「ねえねえ! おねいさーん! ちょっとノリ悪くなーい!?」
「……」
 煽ってくる。ノってしまえば思うツボだ。しかし、こいつの声と顔は――とりわけ勘に障る。
「…………」
 アリーシャの中で、何かが切れた。
「お望みとあらば――」
 斬ってみせましょう。
 一閃。異界の騎士を煽ったヘッドは、ぱかーんと良い音を立てて真っ二つに割れた。

 ヒィロと芽衣によるヘッドたちの引き付けと、キングを引き受けて踊るシラスに、的確な誘導の上で叩き込まれる美咲の範囲攻撃。即席で生まれたヘッドもまた、カズミとアリーシャの遊撃で即座に割られ。キングはカイトの妨害もあり、大技の連打がなかなか出来ない。
 運よく残ったヘッドが飛び出し、大人しそうなフェリシアをカボチャにしてやろうと迫る。気づいたカズミがその前に立ちはだかり、土の上に叩き落とした。カズミのガードを受けたフェリシアは、仲間の傷や上がり過ぎたテンションを癒し、場を整えていく。
 圧倒的なパーティの圧倒的な連携、そして食欲の前にヘッドは次々と割られていき、とうとう残るはキングのみとなった。
「スッゲ! マジぱねっ!!」
 仲間は全員割られたものの、残ったキングその人(?)は、派手なパーリィにご満悦のようだ。そしてカイトや美咲の懸念通りに耐久力が高く、まだまだ割れそうにない。しかし、それでも残るはあと一体。
「ほらほら、楽しく遊ぼ?」
 あそぼ、と書いて殴り合お、と読ませるのはヒィロだ。シラスと共に、キングの注意を引きつけ続ける。どちらと遊べば、と迷うキングに、シラスの拳が炸裂。中身がびっしり詰まっている、そんな手ごたえと音がした。
「……どうよ、俺様の拳は痺れるだろう?」
 派手に動き回っていたシラスが荒く息を吐きながら、それでも余裕と言わんばかりに「魅せる」。
 キングが呆けたところに重ねて、芽衣の跳び蹴りが勢いよく爆ぜた。カボチャはそのままだと切り難いから、叩いて柔らかくしておこう。後の事まで、きっちり考えた上での一撃だ。
「おっしゃ! 俺もいっちょやってやろうか!」
 生まれた余裕を攻撃に回し、カズミがキングの至近へと肉薄する。この一打も、カボチャを「仕込む」のに一役買った。
 畳みかけるように、カイトが放つは雨夜の呪術。キングに蓄積していた見えないダメージが、その内側で爆ぜる。さて、だいぶ柔らかくなっただろうか。
「そろそろいいね。美咲さん、いくよ!」
「了解!」
 ヒィロが闘志を狐火に込め、キングをこんがりと焼きにかかった。いい匂いがするが、お楽しみはまだお預けで。不可思議なその火自体に殺傷力は無いが、本命はここからだ。
「そのチャラけた魂……だけを、砕いてあげる」
 美咲の切り札、闇色の視線が炸裂する。その威力に驚いたキングは「ヒャー!」と、悲鳴か歓喜か分からない大声を張り上げた。あと一歩で「仕上がる」。
「――もらった!」
 シラスが零の領域、極限の集中状態で手刀を放った。必殺であり不殺の一撃が、キングの巨体を損なう事なく止めを刺す。
「……へへっ、今日のパーティーの王様はこの俺だぜ!」
 シラスが得意げに宣言する。随分と興が乗って派手に動いた所為で、全身泥だらけだ。
 その一撃で巨大なカボチャは力を失い、ずしんと地面を響かせて土の上を転がり。
「オイシクタベテネ……」
 やがて動かなくなった。
 動かなくなったカボチャ達は、もう元には戻らない。しかし、彼らの表情はどこか満ち足りている……ように見えた。

●少し早めの収穫祭を
 ごろごろ転がるカボチャ達を運んで仕分けをしつつ、お楽しみタイム……のその前に。
 作業場があった方がいいかもと芽衣が言い、美咲が同意して陣地を構築(陣地構築)。テントを張れば、お祭り気分だ。
「よし、捌くぞ」
「ああ! パンプキンパイとか、美味そうだな」
 美咲とカズミが慣れた手つきで調理器具を光らせるその横で、包丁を持ったまま硬直しているのはアリーシャ。
「ええと、ほ、ほら。私、手持ちが大剣ですから……あ!!」
 守る為に大きな剣を振るう彼女は、細やかな作業は不慣れ……と言った傍から、自分の指をざっくり切ってしまう。
「わ、わ……! 大丈夫、ですか……!?」
 向こう側でランタンを作っていたフェリシアが異変に気付いて慌てて駆け寄り、咄嗟に治癒魔術を施し、事なきを得た。
「……かたじけないです」
「あの、ご、ご無理はなさらず……お手伝いしましょうか?」
「お、おねがいします……」
「だいじょぶだいじょぶ、適材適所ってやつだよ! あ、ボクは食べる専門でーす!」
 さあ来いと、テーブルで待ち構えるのは食べる班のヒィロとシラスだ。
「うーむ……俺は基本Trick専業者だし」
「まあまあ。つれない事言わないで。……結構なはらぺこが居るわけだし」
「そうだよー、じゃんじゃん作ってバクバク食べようよ!」
 特にヒィロの胃袋は宇宙だ、故に調理班の人手が欲しい。戸惑うカイトを、美咲と芽衣が調理場に引き入れる。
「――しゃあねぇなァ?」
 ……本気モードに火が付いたようだ。カイトは何処からか計量器具を持ち出し、何やら正確に測り始めた。

 ほどなくして、一品目が運ばれてくる。栄養満点、パンプキンサラダだ。
「う……」
 それを見て、シラスが固まった。
「じ、実はカボチャ食べられない……野菜、苦手で……」
「そういう事なら、こっちはどうだ?」
 横からカイトが差し入れたのはカボチャを練り込んだスイーツ、クッキーとプディング。甘党なカイトの、趣味の逸品だ。
「! お菓子! それなら大好き! ……ん、美味しい!」
「あ、あの……お茶も、淹れてきました。喉に詰まらせたら、大変です……」
 フェリシアの気遣いがここでも光る。紅茶にも勿論、カボチャを使ってフレーバーを添えて。美咲が焼いたパイとの相性も抜群だ。別添えにしたミルクと生クリームは、お好みで。
「んー、どれも美味しー!」
 あれもこれもとヒィロが手を付け、もりもりと平らげていく。
「美咲さん、半分こしよ!」
「勿論!」
「フェリシアさんも! もっと食べなよー! 細いんだから!」
「は、はい……いただきます」
 倒した(採れた)カボチャの量は相当で、料理もかなりの量が作られたが、余る心配は無さそうだ。 

「自分で採ったモンで作って食べる。うん、乙なもんだ」
 カズミとフェリシアが作ったランタンに火が灯り、賑やかな中にしっとりとしたムードが混ざる。
「ほうほう、イイ感じじゃん?」
 カイトが甘いパイを頬張りながら、揺れる灯りをゴーグル越しに見つめた。その表情は伺えないが、声色は上機嫌だ。
「大人の祭りはクールに楽しむ。……ランタンも、この位の火加減がいいってもんさ」
 愛しの月に贈ったなら、どんな顔をするだろう。そんな事も少しだけ考えながら。

 少しずつ日が傾いてくる。料理にランタン、余す事なくお祭りに使われたカボチャ達が、暮れなずんでいく空に微笑んだ――ような気がした。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

ご参加、誠にありがとうございました!
余すことなくメチャクチャ楽しんでいただけて、メチャクチャ嬉しかったです!
カボチャ達も喜んでいるでしょう。

またご縁がありましたら、どうぞよろしくお願いいたします。

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